【解決手段】ダストカバー(50)は、ハウジング(40)に形成された、ピニオンシャフト(204)が貫通する開口(47)を覆い、ピニオンシャフト(204)が貫通する貫通孔(71)の縁に形成された孔縁部(70)、及び孔縁部(70)と硬さが異なり、開口(47)を覆う本体部(80)を備えている。
前記孔縁部を構成する孔縁部材料、及び、前記本体部を構成する本体部材料は、(i)共に樹脂成分及びゴム成分を含み、前記樹脂成分と前記ゴム成分との配合比が互いに異なっているか、又は、(ii)一方が、樹脂成分及びゴム成分を含み、他方が、樹脂成分を含み、ゴム成分を含まない、請求項1に記載のダストカバー。
前記孔縁部材料及び前記本体部材料は、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコン系樹脂、アミド系樹脂、及びカーボネート系樹脂から選択される少なくとも一種類の樹脂を共に含む、請求項2に記載のダストカバー。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔実施形態1〕
本発明の一実施形態に係る操舵装置1について
図1を参照して説明する。
【0014】
図1は、車両の操舵装置1の概略構成の一例を模式的に示す模式図である。
図1に示すように、操舵装置1は、運転者による操舵操作を受け付ける操舵部10、及び、操舵部10が受け付けた操舵操作に応じて車輪400を転舵する転舵部20を備えている。
【0015】
また、操舵装置1の例として、
図1に示すように、操舵部10と転舵部20とが常時機械的に接続されたものを例に挙げたが、これは本実施形態を限定するものではなく、操舵装置1は、例えばステアバイワイヤ方式(SBW:Steer-By-Wire)の操舵装置であってもよい。
【0016】
(操舵部10)
図1に示すように、操舵部10は、操舵部材102、ステアリングシャフト104、第1の自在継手106、及び中間シャフト108を備えており、操舵部材102、ステアリングシャフト104、及び中間シャフト108は、互いにトルク伝達可能に接続されている。ここで、「トルク伝達可能に接続」とは、一方の部材の回転に伴い他方の部材の回転が生じるように接続されていることを指し、例えば、一方の部材と他方の部材とが一体的に成形されている場合、一方の部材に対して他方の部材が直接的又は間接的に固定されている場合、及び、一方の部材と他方の部材とが継手部材等を介して連動するよう接続されている場合を少なくとも含む。
【0017】
本実施形態においては、ステアリングシャフト104の上端は、操舵部材102に固定され、操舵部材102と一体的に回転する。また、ステアリングシャフト104の下端と、中間シャフト108の上端とは、第1の自在継手106を介して互いに連動するように接続されている。
【0018】
なお、「上端」とは、運転者の操舵操作に応じた操舵力の伝達経路において上流側の端部(すなわち、入力側の端部)のことを指し、「下端」とは、操舵力の伝達経路において下流側の端部(すなわち、出力側の端部)のことを指す(以下同様)。
【0019】
また、操舵部材102の例として、
図1に示すように、円環状のステアリングホイールを例に挙げたが、これは本実施形態を限定するものではなく、運転者による操舵操作を受け付けることができるものであれば他の形状や機構を有するものであってもよい。
【0020】
(転舵部20)
一方、転舵部20は、
図1に示すように、第2の自在継手(自在継手)202、ピニオンシャフト(入力軸、シャフト)204、ピニオンギヤ206、ラックバー(転舵軸)208、タイロッド210、及びナックルアーム212を備えており、中間シャフト108、ピニオンシャフト204、及びピニオンギヤ206は、互いにトルク伝達可能に接続されている。なお、本実施形態では、ピニオンシャフト204を、シャフトとして構成しているが、ピニオンシャフト204の代替物として、中空のパイプを使用してもよい。
【0021】
本実施形態では、ピニオンギヤ206は、ピニオンシャフト204の下端に固定され、ピニオンシャフト204と一体的に回転する。中間シャフト108の下端とピニオンシャフト204の上端とは、第2の自在継手202を介して互いに連動するように接続されている。
【0022】
ラックバー208は、ピニオンギヤ206の回転に応じて車輪400を転舵させるための構成であり、ラックバー208には、ピニオンギヤ206と噛み合うラック歯が形成されている。
【0023】
なお、
図1では図示を省略したが、転舵部20は、ピニオンシャフト204の下端側、ピニオンギヤ206、及びラックバー208を収容するステアリングギヤボックスのハウジングを備えている。
【0024】
上記のように構成された操舵装置1では、運転者が操舵部材102を介した操舵操作を行うと、ピニオンギヤ206が回転し、ラックバー208の軸方向に沿って、ラックバー208が変位する。これにより、ラックバー208の両端に設けられたタイロッド210、及び、タイロッド210に連結されたナックルアーム212を介して、車輪400が転舵される。
【0025】
なお、
図1に示す例では、ピニオンシャフト204とラックバー208との間の操舵力の伝達をピニオンギヤ206及びラック歯によって行う構成を例に挙げたが、これは本実施形態を限定するものではなく、ピニオンシャフト204とラックバー208との間の操舵力を伝達できるものであれば、他の構成であってもよい。
【0026】
図2は、本実施形態に係る転舵部20の構成の一例を示す斜視図である。
図1に示したピニオンシャフト204の下端側、ピニオンギヤ206、及びラックバー208は、
図2では、ステアリングギヤボックスのハウジング40(以下、単にハウジング40という)に収容されている。また、タイロッド210のラックバー側の一部は、ダストブーツ44に収容されている。
【0027】
ハウジング40には、ピニオンシャフト204が突出(貫通)する開口47(
図4参照)が形成されており、この開口47は、ピニオンシャフト204に組み付けられたダストカバー50によって覆われている。
【0028】
また、ダストカバー50から突出するピニオンシャフト204の突出部分には、ダストカバー50と一体の位置決め部60が取り付けられている。ピニオンシャフト204の突出部分には、ピニオンシャフト204の軸方向に沿って延伸するセレーション(不図示)が形成され、位置決め部60は、当該セレーションに噛み合うようにして、ピニオンシャフト204に固定される。なお、セレーションは、歯又は溝の構成とすることができる。
【0029】
また、
図2に示すように、第2の自在継手202は、中間シャフト108の下端に固定され中間シャフト108と一体的に回転する第1のジョイントヨーク22、ピニオンシャフト204の突出部分に取り付けられる第2のジョイントヨーク26、及び、第1のジョイントヨーク22と第2のジョイントヨーク26とを連結するジョイント部24を備えている。
【0030】
第2のジョイントヨーク26には、接続孔28、接続孔28の延伸方向に沿って形成されたスリット(不図示)、及び当該スリットを横断するように形成された貫通孔32が設けられている。また、接続孔28の内側面には、接続孔28の延伸方向に延伸し、ピニオンシャフト204の突出部分のセレーションに噛み合うセレーションが形成されている。
【0031】
第2のジョイントヨーク26とピニオンシャフト204とを接続する際には、スリットに位置決め部材60が嵌入するよう周方向の位置決めを行った状態で、ピニオンシャフト204の突出部分を接続孔28に挿入する。また、ピニオンシャフト204の突出部分が接続孔28に挿入された状態で、第2のジョイントヨーク26に設けられた貫通孔32にボルト34を貫通させ螺子止めすることによって、第2のジョイントヨーク26がピニオンシャフト204に対して固定される。
【0032】
続いて、
図3及び
図4を参照して、本実施形態に係るダストカバー50について具体的に説明する。
【0033】
図3は、本実施形態に係るダストカバー50を示す斜視図である。
【0034】
(ダストカバー50)
ダストカバー50は、ピニオンシャフト204(
図1参照)が突出する開口47を覆うものである。ダストカバー50において、孔縁部70は、ピニオンシャフトが貫通する貫通孔71の縁に形成されている。そして孔縁部70は、ピニオンシャフト204の周方向に形成された凹部に嵌合するように構成されている。
【0035】
本体部80は、孔縁部70に対して一体に接合されており、開口47を覆う構成である。なお、本体部80には、孔縁部70から径方向外側に向かって形成された複数のリブ81が設けられており、これらのリブ81によってダストカバー50の強度が向上する。なお、本実施形態において、リブ81は必須の構成ではなく、ダストカバー50にリブが設けられていない構成としてもよい。なお、リブ81は本実施形態に係る本数に限定されるものではない。
【0036】
(位置決め部60)
本実施形態では、本体部80の上面側には、ピニオンシャフト204に接続される第2の自在継手202の位置決めのための位置決め部60が設けられている。
【0037】
位置決め部60は、冠部62、突出部63、及び噛合部66を備えている。位置決め部60は、剛性を有する材料から構成されることが好ましく、本体部80と同一の材料から構成されることがより好ましい。
【0038】
冠部62は、ピニオンシャフト204(
図1参照)の第2の自在継手202側の端部に外側から嵌められる円環状の部位である。
【0039】
突出部63は、本体部80と冠部62とを連結する平板状の部位であり、ピニオンシャフト204の径方向外側に突出している。突出部63は、第2のジョイントヨーク26(
図2参照)とピニオンシャフト204とが接続される際に、第2のジョイントヨーク26のスリットに嵌入する。また、突出部63には、切欠き65が形成されている。この切欠き65は、ピニオンシャフト204に形成された凹部204c(
図4参照)と共に貫通孔を形成し、この貫通孔をボルト34(
図2参照)が貫通する。
【0040】
噛合部66は、ピニオンシャフト204の軸方向に形成されたセレーション溝に噛み合う。
【0041】
このように、位置決め部60は、ピニオンシャフト204及び第2のジョイントヨーク26の両方に対して位置精度高く固定される。これにより、ピニオンシャフト204の中心点と、第2の自在継手202の中心点を合わせることができる。換言すれば、位置決め部60は、ピニオンシャフト204に接続される第2の自在継手202の位置決めのために、ピニオンシャフト204に取り付けられる。
【0042】
尚、本実施形態において、ダストカバー50に位置決め部60を設けることは必須の構成ではなく、ダストカバー50とは別体で、位置決め部60と同等の構成を有する位置決め部材を設けてもよい。ダストカバー50に位置決め部60を設けることによる効果については後述する。なお、ダストカバー50と位置決め部60とを一体とした場合であっても、位置決め部60を、孔縁部70の材料及び本体部80の材料とは異なる材料で構成してもよい。
【0043】
図4は、
図3に示すAA線矢視断面図である。
【0044】
図4に示すように、ピニオンシャフト204の突出部分は、ピニオンシャフト204の軸方向に沿って延伸する複数のセレーション溝が形成された第1のセレーション部204a(セレーション溝)及び第2のセレーション部204b(セレーション溝)を備えており、第1のセレーション部204aと第2のセレーション部204bの間には、周方向に沿って凹部204cが形成されている。
【0045】
また、ピニオンシャフト204は、軸受72を介して、ハウジング40に対して回動可能に支持されている。また、
図4に示すように、軸受72から見て、ハウジング40の開口47側には、ラバー等の柔軟性を有する素材を用いた防塵シール74が配置されており、これにより、ハウジング40の開口47からの水分や埃等の流入が抑制される。更に、本体部80の裏面には、ハウジング40側に向けて立ち上がる円環上の防塵リブ54dが設けられている。また、防塵リブ54dと防塵シール74との間の領域76は、グリースで満たされている。これにより、ハウジング40の開口47からダストが流入することがより好適に抑制される。なお、本実施形態に係るダストカバー50において、防塵シール74及び防塵リブ54dは必須の構成ではなく、これらを備えていない構成であってもよい。
【0046】
また、
図4に示すように、ピニオンシャフト204において、ダストカバー50の装着位置には周方向に沿って凹部204eが形成されており、ダストカバー50の貫通孔71はこの凹み部204eに外側から嵌められている。換言すれば、ダストカバー50の装着位置におけるピニオンシャフト204の外径は、第1のセレーション部204a及び第2のセレーション部204bの外径よりも小さい。これによりピニオンシャフト204の軸方向に沿ったダストカバー50の位置が規制される。
【0047】
また、
図4に示すように、ピニオンシャフト204は、凹部204e、及び凹部204eの一部として段差部204fを有しており、この段差部204fに、ダストカバー50の裏面における貫通孔71の縁が当接する。これにより、ダストカバー50の、ピニオンシャフト204の端部204dから遠ざかる移動が好適に規制される。すなわち、ピニオンシャフト204の周方向に設けられた凹部204eに、ダストカバー50の孔縁部70が嵌合している。
【0048】
なお、
図4には図示していないが、ピニオンシャフト204の内部にトーションバーを配置すると共に、ピニオンシャフト204の周囲にトルクセンサーを配置することによって、操舵トルクを検出し、検出した操舵トルクに応じて車輪の転舵をアシストする構成としてもよい。ただし、これは本実施形態を限定するものではない。
【0049】
本実施形態において、本体部80は孔縁部70よりも硬さが高く設定されている。換言すれば、本体部80の方が孔縁部70よりも剛性が大きく、孔縁部70の方が本体部80よりも弾性が大きい。より具体的には、孔縁部70のショア硬さは、本体部80のショア硬さよりも低くなるように設定されている。なお、本体部80及び孔縁部70のショア硬さは、例えば、ASTM2240又はISO7619で規定されるショアAが10/15以上(なお、「/15」とは、15秒放置後確認を意味する。以下同じ。)、ショアDが50/15以下の範囲とすることができ、より好ましくは、例えば、本体部80のショア硬さをショアA60/15以上、孔縁部70のショア硬さをショアA60/15未満としてもよい。
【0050】
このように、本実施形態では、ダストカバー50を、一体に接合された本体部80及び孔縁部70という二つの部分によって構成し、孔縁部70よりも本体部80の方が硬くなるように形成する。これにより、シール性と捲り難さとを両立させることができる。
【0051】
すなわち、ピニオンシャフト204に、ダストカバー50を組み付けるとき、ピニオンシャフト204の周方向に形成された凹部204eに、孔縁部70を嵌め込む(入れ込む)必要がある。そのため、孔縁部70の硬さを柔らかくして、弾性(変形性及び復元性)を与えることにより、ダストカバー50のピニオンシャフト204への組み付け性を向上させることができ、結果的にシール性を向上させることができる。逆に、孔縁部70の硬さが硬いと、ダストカバー50のピニオンシャフト204への組み付けが困難になる。
【0052】
また、ダストカバー50は、高圧水を用いて洗浄される場合がある。そのため、本体部80の硬さを硬くして、剛性を与えることにより、高圧水を受けてもダストカバー50が捲れることを抑えることができる。
【0053】
このように、本体部80及び孔縁部70において好適な硬さが異なるため、ダストカバー50を二つの部分によって構成し、孔縁部70よりも本体部80の方が硬くなるように形成することにより、シール性と捲り難さとを両立させることができる。
【0054】
なお、孔縁部70を構成する材料(以下、「孔縁部材料」とも記載する。)及び本体部80を構成する材料(以下、「本体部材料」とも記載する。)は特に限定されず、例えば、各種樹脂、各種ゴム、又は樹脂とゴムとの組み合わせを適宜配合して構成することができる。
【0055】
例えば、一実施形態において、孔縁部材料及び本体部材料は、(i)共に樹脂成分及びゴム成分を含み、樹脂成分とゴム成分との配合比が互いに異なっているか、又は、(ii)一方が、樹脂成分及びゴム成分を含み、他方が、樹脂成分を含み、ゴム成分を含まないものであり得る。このように構成することで、孔縁部70及び本体部80の硬さを容易に調整することができる。
【0056】
孔縁部70及び本体部80のそれぞれに含まれる樹脂成分としては、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコン系樹脂、アミド系樹脂、及びカーボネート系樹脂等を挙げることができる。
【0057】
孔縁部70及び本体部80それぞれに含まれるゴム成分としては、例えば、非ジエン系ゴム等を挙げることができる。非ジエン系ゴムとしては、例えば、ブチルゴム(B)、エチレン・プロピレンゴム(EPM)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)、ウレタンゴム(U)等を挙げることができる。好ましい非ジエン系ゴムとしては、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)を挙げることができる。
【0058】
また、孔縁部70及び本体部80を構成する好適な材料の一例として、樹脂成分に、架橋したゴム成分が分散した海島構造を有する複合材料TPV(Thermoplastic Vulcanizate)が挙げられる。
【0059】
また、孔縁部70及び本体部80それぞれに含まれる添加剤は特に限定されず、例えば、充填剤、可塑剤、着色剤、安定剤、離型剤、難燃剤、助剤等を適宜配合してもよい。
【0060】
また、好ましくは、孔縁部材料及び本体部材料は、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコン系樹脂、アミド系樹脂、及びカーボネート系樹脂から選択される少なくとも一種類の樹脂を共に含んでいる。これにより、孔縁部70と本体部80との親和性を向上させることができる。これにより、孔縁部70と本体部80との間で剥がれが生じることを抑制することができる。
【0061】
本実施形態に係るダストカバー50の製造方法としては、孔縁部70と本体部80とを二色成形することが好ましい。一実施形態において、ダストカバー50は、金型内で、まず、本体部80を成形した後、同じ金型内で、孔縁部70を成形することにより製造することができる。最初に、硬い本体部80を成形することにより、次の成形を行うときに、最初に成形した部分が壊れることを避けることができる。
【0062】
<本体部80が位置決め部60を備えていることの効果>
本体部80が位置決め部60を備えていることの効果について説明する。レイアウト等の問題により、ハウジング40からのピニオンシャフト204の突出長さが短く、凹部204eの軸方向の長さを十分にとれない場合がある。その場合、凹部204eにおける嵌合によってダストカバー50がピニオンシャフト204に固定される力が十分でなく、ピニオンシャフト204とダストカバー50との相対的な回転が生じ、異音が発生する虞がある。特に、低温状態において、領域76のグリースの粘度が増大すると、ダストカバー50の回転に対する抵抗力が大きくなり、ピニオンシャフト204とダストカバー50との相対的な回転が生じ易くなる。
【0063】
これに対し、本実施形態では、本体部80が位置決め部60を備えている。位置決め部60の噛合部66は、ピニオンシャフト204の軸方向に形成されたセレーション溝に噛み合っているため、本体部80が位置決め部60を備えていることにより、ピニオンシャフト204とダストカバー50との相対的な回転を抑制することができる。これにより、異音発生を抑えることができる。
【0064】
さらに、本体部80が位置決め部60を備えていることにより、組み付け性が向上する。
【0065】
〔実施形態2〕
上述したように、本発明は、ダストカバー50を、一体に接合された本体部80及び孔縁部70という二つの部分によって構成し、孔縁部70よりも本体部80の方が硬くなるように形成するという構成によって、シール性と捲り難さとの両立という効果を得るものであり、その構造は、
図4に示した構造に限定されない。
【0066】
例えば、
図5は、本発明の実施形態2に係るダストカバーの断面図であり、
図5に示すように、孔縁部70は、ダストカバー50の裏面側(ハウジング側)において、ダストカバー50の外周側に延びていてもよい。これにより、孔縁部70と本体部80との接合部の表面積を大きくすることでき、孔縁部70と本体部80との接合強度を高めることができる。言い換えると、孔縁部70と本体部80と接触面積を大きくすることで、孔縁部70と本体部80との間で剥がれが生じることをより抑制することができる。
【0067】
〔実施形態3〕
上述したように、ダストカバーとは別体で、位置決め部材を設けてもよい。
図6は、実施形態3に係るダストカバーの構成例を示す斜視図である。
【0068】
図6(a)は、本実施形態に係るダストカバー501及び位置決め部材503の概略構成を示す斜視図である。ダストカバー501は、位置決め部60を備えておらず、替わりに、位置決め部材503と嵌合するための第一嵌合部502を備えていること以外は、実施形態1に係るダストカバー50と同等の構成を備えている。また、位置決め部材503は、第一嵌合部502と嵌合するための第二嵌合部504、冠部505、ピニオンシャフトの径方向外側に突出する突出部506、及びピニオンシャフトの軸方向に形成されたセレーション溝に噛み合う噛合部507a、507bを備えている。そして、第二嵌合部504を第一嵌合部502に嵌合させることで、ダストカバー501に位置決め部材503を固定することができる。これにより、実施形態1に係るダストカバー50と同等の効果を得ることができる。
【0069】
また、
図6(b)は、本実施形態に係るダストカバー521及び位置決め部材523の概略構成を示す斜視図である。ダストカバー521は、位置決め部60を備えておらず、替わりに、位置決め部材523と嵌合するための第一嵌合部522を備えていること以外は、実施形態1に係るダストカバー50と同等の構成を備えている。また、位置決め部材523は、第一嵌合部522と嵌合するための第二嵌合部524、冠部525、ピニオンシャフトの径方向外側に突出する突出部526、及びピニオンシャフトの軸方向に形成されたセレーション溝に噛み合う噛合部527a、527bを備えている。そして、第二嵌合部524を第一嵌合部522に嵌合させることで、ダストカバー521に位置決め部材523を固定することができる。これにより、実施形態1に係るダストカバー50と同等の効果を得ることができる。
【0070】
また、
図6(a)及び(b)に示すように、位置決め部材503(523)とダストカバー501(521)とが別体である場合、位置決め部材503(523)をさらに硬い材料で構成することができる。位置決め部材503(523)をさらに硬い材料で構成した場合、ピニオンシャフト204と第2の自在継手202(第2のジョイントヨーク26)とを接続する際の作業性を向上することができる。
【0071】
〔実施形態4〕
以上の実施形態では、ステアリングギヤボックスにおける入力軸が突出する開口を覆うダストカバーについて説明したが、本発明に係るダストカバーはこれらに限定されない。例えば、ステアリングギヤボックスにおけるラック軸、タイロッド等が突出する開口を覆うダストブーツ(ダストカバー)も本発明の範疇である。
【0072】
以下、図面を参照して、本実施形態に係るダストブーツについて説明する。なお、以下では、本実施形態に係るダストブーツは、実施形態1において説明した操舵装置に組み込まれているものとして説明するが、本実施形態に係るダストブーツは、任意の操舵装置に組み込まれ得る。
【0073】
図7は、本実施形態に係るダストブーツ(ダストカバー)44を示す斜視図である。
図8は、本実施形態に係るダストブーツ44周辺の構成を示す断面図である。
図8に示すように、ダストブーツ44は、ハウジング40に形成された開口46を覆っている。
図8の(a)は、ラックバー(シャフト、パイプ)208と一体的に動くタイロッド(シャフト、パイプ)210が開口46を貫通している構成を示し、(b)は、ラックバー208が開口46を貫通している構成を示す。なお、本実施形態はこれらの構成に限定されず、ラックバー208、又は、ラックバー208と一体的に動く任意のシャフト又はパイプが開口46を貫通している構成であればよい。また、ラックバー208及びタイロッド210は、シャフトであってもよいし、パイプであってもよい。
【0074】
図7に示すように、ダストブーツ44には、貫通孔44dが形成されており、ダストブーツ44は、貫通孔44dの縁に形成された孔縁部44a、開口46を覆う本体部44b、及び、ハウジング40に取り付けられる取付部44cを備えている。
図8の(a)に示す構成では、貫通孔44dを貫通するものはタイロッド210であり、孔縁部44aは、タイロッド210に取り付けられる。また、
図8の(b)に示す構成では、貫通孔44dを貫通するものはラックバー208であり、孔縁部44aは、ラックバー208に取り付けられる。
【0075】
本実施形態では、孔縁部44a及び取付部44cは、本体部44bよりも硬さが高く設定されている。より具体的には、孔縁部44a及び取付部44cのショア硬さは、本体部44bのショア硬さよりも高くなるように設定されている。孔縁部44a、本体部44b及び取付部44cのショア硬さは、例えば、ショアAが10/15以上、ショアDが50/15以下の範囲とすることができ、より好ましくは、例えば、孔縁部44a及び取付部44cのショア硬さをショアA60/15以上、本体部44bのショア硬さをショアA60/15未満としてもよい。
【0076】
このように、本実施形態では、本体部44bよりも孔縁部44a及び取付部44cの方が硬くなるように形成する。これにより、孔縁部44aの剛性を利用して、孔縁部44aを、ラックバー208、タイロッド210等に容易に取り付けることができる。また、取付部44cの剛性を利用して、取付部44cをハウジング40に容易に取り付けることができる。一方、本体部44bを柔らかくすることにより、ステアリングの動き(ラックバー208、タイロッド210等の変位)に好適に追従させることができる。
【0077】
なお、孔縁部44a、本体部44b、及び取付部44cを構成する材料は、特に限定されず、実施形態1における孔縁部材料又は本体部材料と同様の材料を用いることができる。
【0078】
〔実施形態5〕
また、ダンパにおいて、ピストンロッドが突出する開口を覆うダストカバーも本発明の範疇である。以下、図面を参照して、本実施形態に係るダンパのダストカバーについて説明する。
【0079】
図9は、本実施形態に係るダストカバー310を示す斜視図である。
図9の(a)及び(b)は、ダストカバー310の形状のバリエーションをそれぞれ示している。
図10は、本実施形態に係るダンパ300の構成を示す断面図である。
図10では、
図9の(a)に示す形状のダストカバー310をダンパ300に組み込んだ構成を示しているが、本実施形態はこれに限定されない。
【0080】
ダンパ300は、ダストカバー310の他に、コイルスプリング311、ピストンロッド(シャフト、パイプ)312、ピストンバルブ313、接続部材314、及び、ケース(ハウジング)315を備えている。ピストンロッド312は、アウターシェル315に形成された開口316を貫通しており、ダストカバー310は、開口316を覆っている。なお、ピストンロッド312は、シャフトであってもよいし、パイプであってもよい。
【0081】
ダストカバー310には、ピストンロッド312が貫通する貫通孔310dが形成されており、ダストカバー310は、貫通孔310dの縁に形成された孔縁部310a、開口316を覆う本体部310b、及び、ケース315に取り付けられる取付部310cを備えている。孔縁部310aは、接続部材314を介してピストンロッド312に取り付けられる。なお、ダストカバー310が
図9の(b)に示すような形状を有している場合、孔縁部310aは、ピストンロッド312に直接取り付けられてもよい。
【0082】
本実施形態では、孔縁部310a及び取付部310cは、本体部310bよりも硬さが高く設定されている。より具体的には、孔縁部310a及び取付部310cのショア硬さは、本体部310bのショア硬さよりも高くなるように設定されている。孔縁部310a、本体部310b及び取付部310cのショア硬さは、例えば、ショアAが10/15以上、ショアDが50/15以下の範囲とすることができ、より好ましくは、例えば、孔縁部310a及び取付部310cのショア硬さをショアA60/15以上、本体部310bのショア硬さをショアA60/15未満としてもよい。
【0083】
このように、本実施形態では、本体部310bよりも孔縁部310a及び取付部310cの方が硬くなるように形成する。これにより、孔縁部310aの剛性を利用して、孔縁部310aを、接続部材314又はピストンロッド312に容易に取り付けることができる。また、取付部310cの剛性を利用して、取付部310cをケース315に容易に取り付けることができる。一方、本体部310bを柔らかくすることにより、サスペンションの動き(ピストンロッド312の変位)に好適に追従させることができる。
【0084】
なお、孔縁部310a、本体部310b及び取付部310cを構成する材料は、特に限定されず、実施形態1における孔縁部材料又は本体部材料と同様の材料を用いることができる。
【0085】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。