特開2017-180624(P2017-180624A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-180624(P2017-180624A)
(43)【公開日】2017年10月5日
(54)【発明の名称】回転体保持装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 32/04 20060101AFI20170908BHJP
   F16C 32/06 20060101ALI20170908BHJP
【FI】
   F16C32/04 Z
   F16C32/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-67282(P2016-67282)
(22)【出願日】2016年3月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000103644
【氏名又は名称】オイレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光
【テーマコード(参考)】
3J102
【Fターム(参考)】
3J102AA01
3J102AA02
3J102BA02
3J102BA19
3J102DA07
3J102DA12
3J102EA02
3J102EA06
3J102EA18
3J102EA23
(57)【要約】
【課題】回転体を、所定の領域で安定して保持するとともに、回転体の回転中心軸線を中心として自転させつつ、任意の軌道で公転させることができる回転体保持装置を提供する。
【解決手段】
回転体保持装置Rは、基体1と、回転体2とを備える。基体1は、多孔質プレート11と、磁極が回転中心軸線a方向を向く環状の基体側磁石12とを有する。回転体2は、回転体側プレート20と、磁極が基体側磁石12と異極対向するように配置された環状の回転体側磁石21とを有する。回転体側プレート20の基体1側の面には、縁部に向かって延び、回転中心軸線aから径方向に延びる線に対して少なくとも一部において傾斜している通気溝20bを形成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体(1)と、前記基体(1)上に配置された回転体(2)とを備え、
前記基体(1)は、前記回転体(2)に対向するように配置された多孔質プレート(11)と、磁極が前記回転体(2)の回転中心軸線(a)方向を向くように配置された環状の基体側磁石(12)とを有し、
前記回転体(2)は、非磁性材料で形成された回転体側プレート(20)と、前記回転体側プレート(20)の前記基体(1)側に、磁極が前記基体側磁石(12)と異極対向するように配置された環状の回転体側磁石(21)とを有し、
前記多孔質プレート(11)は、前記回転体(2)側以外の面から前記回転体(2)側の面に連通する気孔を有し、
前記回転体側プレート(20)の前記基体(1)側の面には、前記回転体(2)の縁部に向かって延び、且つ、前記回転体(2)の回転中心軸線(a)から径方向に延びる線に対して少なくとも一部において傾斜している通気溝(20b)が形成されていることを特徴とする回転体保持装置。
【請求項2】
請求項1に記載の回転体保持装置であって、
前記基体側磁石(12)及び前記回転体側磁石(21)は、中心軸線を中心とする回転対称性を有する形状であることを特徴とする回転体保持装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の回転体保持装置であって、
前記基体側磁石(12)又は前記回転体側磁石(21)に代わり、環状の磁性体を用いていることを特徴とする回転体保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体を自転させつつ、任意の軌道で公転可能に保持する回転体保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浮上機構と拘束機構とを組み合わせることによって、保持対象とそれを保持する機構との間で摩擦力を作用させることなく、保持対象の移動や回転を行うことが可能な保持装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の保持装置では、浮上機構として、エアベアリングを採用している。そして、そのエアベアリングから保持対象に向かって気体を放出することによって、その物体を浮上させている。
【0004】
また、特許文献1に記載の保持装置では、拘束機構として、保持対象を磁性材料で形成したものや、エアベアリングと対向するように保持対象に磁性体を配置するとともに、エアベアリングの保持対象側とは反対側に磁石を配置したものを採用している。そして、磁石とエアベアリングと保持対象とを通る閉じた磁束線を形成することによって、保持対象が所定の高さ以上に浮上しないように、保持対象を拘束している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−002241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の従来の保持装置では、保持状態においては、保持対象と保持装置とは、一体的に移動や回転を行うものとして構成されている。すなわち、従来の保持装置では、保持対象のみに移動や回転を行わせるためには、別途設けた移動機構等によって、保持対象に、磁石による拘束力を超える力を加える必要があった。そのため、保持対象のみを移動や回転を行わせた場合、その挙動が不安定になってしまうおそれがあった。
【0007】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであり、保持対象である回転体を、所定の領域で安定して保持するとともに、回転体の回転中心軸線を中心として自転させつつ、任意の軌道で公転させることができる回転体保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の回転体保持装置は、基体(1)と、前記基体(1)上に配置された回転体(2)とを備え、前記基体(1)は、前記回転体(2)に対向するように配置された多孔質プレート(11)と、磁極が前記回転体(2)の回転中心軸線(a)方向を向くように配置された環状の基体側磁石(12)とを有し、前記回転体(2)は、非磁性材料で形成された回転体側プレート(20)と、前記回転体側プレート(20)の前記基体(1)側に、磁極が前記基体側磁石(12)に異極対向するように配置された環状の回転体側磁石(21)とを有し、前記多孔質プレート(11)は、前記回転体(2)側以外の面から前記回転体(2)側の面に連通する気孔を有し、前記回転体側プレート(20)の前記基体(1)側の面には、前記回転体(2)の縁部に向かって延び、且つ、前記回転体(2)の回転中心軸線(a)から径方向に延びる線に対して少なくとも一部において傾斜している通気溝(20b)が形成されていることを特徴とする。
【0009】
上記のように構成されている本発明の回転体保持装置では、基体(1)の多孔質プレート(11)の回転体(2)側以外の面に気体が供給されると、その気体は、多孔質プレート(11)の気孔を通じて、多孔質プレート(11)の回転体(2)側の面から(すなわち、回転体側プレート(20)に向かって)放出される。そして、回転体(2)は、その放出された気体によって押し上げられて、気体による押し上げる力と回転体側磁石(21)及び基体側磁石(12)による吸着力とが均衡している位置まで浮上する。
【0010】
その結果、回転体(2)の回転において、回転体側プレート(20)と多孔質プレート(11)との間の摩擦力が作用しなくなる。
【0011】
また、回転体側プレート(20)の基体(1)側の面には、回転体(2)の縁部に向かって延び、且つ、回転体(2)の回転中心軸線(a)から径方向に延びる線に対して少なくとも一部において傾斜している通気溝(20b)が形成されている。そのため、多孔質プレート(11)から気体が放出された際には、その気体が通気溝(20b)に沿って回転体(2)の縁に向かって流れる。
【0012】
その結果、その気体から、回転体(2)に対して、回転体(2)の回転中心軸線(a)を中心として所定の方向に自転させる力が加えられるとともに、回転中心軸線(a)に対して垂直な方向に移動させる力が加えられる。
【0013】
さらに、回転体側磁石(21)及び基体側磁石(12)は、異極対向するように配置された環状の磁石である。そのため、両磁石は、一方の環と他方の環とが単一領域で重なり、一方の環の孔に他方の環と重なっていない領域(第1領域)が存在し、他方の環の孔に一方の環と重なっていない領域(第2領域)が存在するように、2つの磁石の中心軸線が外れた状態であり、かつ、後述するように磁気エネルギーが極小値となる状態で、相互に拘束される。
【0014】
すなわち、両磁石は、回転体側磁石(21)が基体側磁石(12)の環から離間する方向(すなわち、両磁石の中心軸線に対して垂直な方向のうちの所定の方向のみ)に対して、相互に拘束され得る。
【0015】
これは、上記の状態において、回転体側磁石(21)及び基体側磁石(12)の一方の環の当該重なり領域、回転体側磁石(21)及び基体側磁石(12)の他方の環の当該重なり領域、他方の環の外側、一方の環の孔の第1領域、一方の環の当該重なり領域の順に通る閉じた磁束線と、一方の環の当該重なり領域、他方の環の当該重なり領域、他方の環の孔の第2領域、一方の環の外側、一方の環の当該重なり領域の順に通る閉じた磁束線とが形成されると考えられる。そして、上記の状態で、磁束密度の極小化が図られ、磁気エネルギーが極小値となり、安定した状態となるためであると推察される。
【0016】
その結果、回転体(2)には、気体によって生じた回転中心軸線(a)に対して垂直な方向に移動させる力と、回転体側磁石(21)が基体側磁石(12)の環から離間する方向(すなわち、両磁石の中心軸線(a)に対して垂直な方向のうちの所定の方向のみ)に対して拘束する力とが加わる。
【0017】
そのため、回転体(2)は、基体側磁石(12)の環に沿って移動する(すなわち、基体側磁石(12)の中心軸線(a1)に対して公転する。)。このとき、基体側磁石(12)の形状を変更することにより、公転軌道を任意に設定することができる。
【0018】
したがって、本発明の回転体保持装置によれば、回転体(2)を、素材同士の摩擦力が作用しない状態で、回転体(2)の回転中心軸線(a)を中心として自転させつつ、任意の軌道で公転させることができる。
【0019】
また、本発明の回転体保持装置においては、前記基体側磁石(12)及び前記回転体側磁石(21)は、中心軸線を中心とする回転対称性を有する形状であることが好ましい。
【0020】
このように構成すると、回転体側磁石(21)及び基体側磁石(12)は、それらの中心軸線が一致している状態では、中心軸線が一致するように(すなわち、それらの中心軸線に対して垂直な全ての方向に対して)、相互に拘束され得る。
【0021】
これは、上記の状態において、回転体側磁石(21)及び基体側磁石(12)の一方の環、回転体側磁石(21)及び基体側磁石(12)の他方の環、他方の環の外側、一方の環の外側、一方の環の順に通る閉じた磁束線と、一方の環、他方の環、他方の環の内側、一方の環の内側、一方の環の順に通る閉じた磁束線とが形成されると考えられる。そして、上記の状態では、磁束密度の極小化又は最小化が図られ、磁気エネルギーが極小値又は最小値となり、安定した状態となるためであると推察される。
【0022】
その結果、回転体側磁石(21)及び基体側磁石(12)の中心軸線が一致している状態では、回転体(2)は、それらの中心軸線を中心として自転するだけであり、公転しない。
【0023】
したがって、基体側磁石(12)と回転体側磁石(21)とを円環状に構成した場合には、基体側磁石(12)の中心軸線(a1)と回転体側磁石(21)の中心軸線とをずらす方向又は一致させる方向に移動させるだけで、自転及び公転という回転運動と、自転のみという回転運動を切り替えることができるようになる。
【0024】
また、本発明の回転体保持装置においては、前記基体側磁石(12)又は前記回転体側磁石(21)に代わり、環状の磁性体を用いていることが好ましい。
【0025】
このように、一方の磁石に代わり磁性体を用いても、同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1実施形態に係る回転体保持装置の概略構成を示す斜視図であり、図1Aは自転のみの状態を示し、図1Bは自転及び公転状態を示す。
図2図1の回転体保持装置の中心軸線方向の断面図であり、図2Aは自転のみの状態を示し、図2Bは自転及び公転状態を示す
図3図1の回転体保持装置の回転体の裏面図。
図4】変形例に係る回転体保持装置の回転体の裏面図。
図5図1の回転体保持装置の自転及び公転状態を示す平面図であり、図5Aは第1状態、図5Bは第2状態、図5Cは第3状態、図5Dは第4状態を示す。
図6】変形例に係る回転体保持装置の自転及び公転状態を示す平面図であり、図6Aは第1状態、図6Bは第2状態、図6Cは第3状態、図6Dは第4状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、実施形態に係る回転体保持装置について説明する。
【0028】
まず、図1図4を参照して、回転体保持装置Rの構成について説明する。
【0029】
図1に示すように、回転体保持装置Rは、基体1と、基体1上に配置された円板状の回転体2と、不図示の給気機構と、不図示の移動機構を備えている。
【0030】
なお、本発明の回転体は、必ずしも円板状である必要はなく、基体1側の面が略平坦な形状であれば、どのような形状であってもよい。
【0031】
図2に示すように、基体1は、基体側プレート10と、基体側プレート10と回転体2との間に配置された多孔質プレート11と、多孔質プレート11の中央部に配置された環状の基体側磁石12とを有している。
【0032】
基体側プレート10の内部には、浮上用給気経路10a及び駆動用給気経路10bが形成されている。給気機構によって供給された気体の一部は、浮上用給気経路10aを介して、多孔質プレート11の裏面に供給される。また、給気機構によって供給された気体の他の一部は、駆動用給気経路10b及び環状の基体側磁石12の孔を介して、後述する回転体2の通気溝20bに供給される。
【0033】
なお、基体側プレート10は、多孔質プレート11と一体化してもよい。また、浮上用給気経路10a及び駆動用給気経路10bの形状は、図示したものに限定されるものではない。例えば、浮上用給気経路10aは、多孔質プレート11の回転体2側の面以外の面から回転体2側の面に向かって気体を導くことのできる形状であればよい。
【0034】
多孔質プレート11は、その回転体2側以外の面から回転体2側の面に連通する微細な多数の気孔(不図示)を有している。そのため、浮上用給気経路10aを介して多孔質プレート11の裏面に気体が供給されると、その気体は、その気孔を通じて、多孔質プレート11の回転体2側の面から(すなわち、回転体2に向かって)放出される。
【0035】
基体側磁石12は、磁極が回転体2の回転中心軸線a方向を向くように配置されている。また、基体側磁石12は、回転体2が自転のみをする状態(図1Aの状態)においては、その中心軸線a1が回転体2の回転中心軸線aと一致するように配置されている。すなわち、環状の基体側磁石12は、回転体2の回転中心軸線aを中心とする回転対称性を有している。
【0036】
回転体2は、円板状の回転体側プレート20と、回転体側プレート20の基体1側に配置された環状の回転体側磁石21とを有している。
【0037】
回転体側プレート20は、非磁性材料で形成されている。回転体側プレート20の基体1側の面には、回転体側磁石21を配置するための凹部20aと、凹部20aと回転体2の外部とを連通する複数の通気溝20bとが形成されている。
【0038】
凹部20aは、基体側磁石12と対向する位置に設けられている。凹部20aの深さは、回転体側磁石21の軸方向の厚さよりも僅かに深く形成されている。そのため、凹部20aに回転体側磁石21が配置された状態では、駆動用給気経路10b及び環状の基体側磁石12の孔を介して供給された気体は、回転体側磁石21の基体1側の面と基体側磁石12の回転体2側の面との間を通って、通気溝20bに流入する。
【0039】
図3に示すように、通気溝20bは、回転体側プレート20の縁部に向かって延び、且つ、回転体2の回転中心軸線aから径方向に延びる線に対して少なくとも一部において傾斜している。そのため、多孔質プレート11から放出された気体や駆動用給気経路10b及び環状の基体側磁石12の孔を介して供給された気体は、通気溝20bに沿って流れ、回転体側プレート20の縁部から回転体2の外部へと放出される。
【0040】
通気溝20bに沿って気体が流れる際には、その気体から、回転体2に対して、回転体2の回転中心軸線aを中心として所定の方向に自転させる力が加えられるとともに、回転中心軸線aに対して垂直な方向に移動させる力が加えられる。
【0041】
また、通気溝20bの幅は、回転体2の回転中心軸線aから回転体側プレート20の縁部に近づくほど先細りとなっている。これは、回転体2の回転速度を制限するためである。
【0042】
なお、回転体2の回転速度を制限しない場合(すなわち、高速回転させる場合)には、図4に示す変形例のように、通気溝20bの幅を、回転体側プレート20の縁部に近づくほど拡がるようにすればよい。また、通気溝20bの幅を均一にした場合にも、先細りにした場合に比べて、回転体2の回転速度は速くなる。
【0043】
また、通気溝20bの深さが深いほど、回転体2の回転速度は速くなる。これは、通気溝20bを通る気体の量が増えるほど、回転体2に加えられる力が増加するためである。
【0044】
回転体側磁石21は、回転体側プレート20の凹部20aに、基体側磁石12と異極対向するように嵌め込まれている。すなわち、回転体側磁石21は、基体側磁石12と対向する位置に設けられている。回転体側磁石21は、環状であり、その中心軸線は、回転体2の回転中心軸線aと一致している。すなわち、回転体側磁石21は、回転体2の回転中心軸線aを中心とする回転対称性を有している。
【0045】
なお、基体側磁石12及び回転体側磁石21のいずれか一方に代わり、磁性体で形成した環状の部材を用いてもよい。
【0046】
移動機構(不図示)は、回転体2の側面に当接し、その中心軸線aが基体側磁石12の中心軸線a1と一致している状態(図1A参照)と、一致していない状態(図1B参照)とを切り替えるように移動させる。具体的には、浮上している状態の回転体2を、基体側磁石12と回転体側磁石21との吸着力に反して、回転体2の回転中心軸線aに垂直な方向に移動させる。
【0047】
次に、図1図2及び図5を参照して、回転体保持装置Rにおける回転体2の回転について説明する。なお、図1図2及び図5において、短い矢印は回転体2の自転方向を示し、長い矢印は回転体2の公転方向を示す。
【0048】
図1Aに示すように、回転体保持装置Rでは、回転体2の回転中心軸線aと基体側磁石12の中心軸線a1とが一致した状態で、給気機構によって気体が供給されると、回転体2は、その気体による押し上げる力と基体側磁石12による吸着力とが均衡している位置まで浮上する。
【0049】
その結果、回転体2の回転において、回転体側プレート20と多孔質プレート11との間の摩擦力が作用しなくなる。
【0050】
このとき、回転体側磁石21及び基体側磁石12は、中心軸線が一致するように(すなわち、それらの中心軸線に対して垂直な全ての方向に対して)、相互に拘束される。
【0051】
これは、回転体側磁石21及び基体側磁石12の一方の環、回転体側磁石21及び基体側磁石12の他方の環、他方の環の外側、一方の環の外側、一方の環の順に通る閉じた磁束線と、一方の環、他方の環、他方の環の内側、一方の環の内側、一方の環の順に通る閉じた磁束線とが形成されると考えられる。そして、上記の状態では、磁束密度の極小化又は最小化が図られ、磁気エネルギーが極小値又は最小値となり、安定した状態となるためであると推察される(図2A参照)。
【0052】
その結果、回転体側磁石21及び基体側磁石12の中心軸線が一致している状態では、回転体2は、それらの中心軸線を中心として自転するだけであり、公転しない。
【0053】
一方、図1Bに示すように、回転体保持装置Rでは、回転体2の回転中心軸線aと基体側磁石の中心軸線a1とがずれた状態でも、給気機構によって気体が供給されると、中心軸線が一致している状態と同様に、回転体2は、その気体による押し上げる力と基体側磁石12による吸着力とが均衡している位置まで浮上する。
【0054】
その結果、回転体2の回転において、回転体側プレート20と多孔質プレート11との間の摩擦力が作用しなくなる。
【0055】
しかし、このとき、回転体側磁石21及び基体側磁石12は、一方の環と他方の環とが単一領域で重なり、一方の環の孔に他方の環と重なっていない領域(第1領域)が存在し、他方の環の孔に一方の環と重なっていない領域(第2領域)が存在するように、2つの磁石の中心軸線が外れた状態であり、かつ、後述するように磁気エネルギーが極小値となる状態で、相互に拘束される。
【0056】
すなわち、中心軸線が一致した状態とは異なり、回転体側磁石21及び基体側磁石12は、回転体側磁石21が基体側磁石12の環から離間する方向(すなわち、両磁石の中心軸線に対して垂直な方向のうちの所定の方向のみ)に対して、相互に拘束される。
【0057】
これは、回転体側磁石21及び基体側磁石12の一方の環の当該重なり領域、回転体側磁石21及び基体側磁石12の他方の環の当該重なり領域、他方の環の外側、一方の環の孔の第1領域、一方の環の当該重なり領域の順に通る閉じた磁束線と、一方の環の当該重なり領域、他方の環の当該重なり領域、他方の環の孔の第2領域、一方の環の外側、一方の環の当該重なり領域の順に通る閉じた磁束線とが形成されると考えられる。そして、上記の状態で、磁束密度の極小化が図られ、磁気エネルギーが極小値となり、安定した状態となるためであると推察される(図2B参照)。
【0058】
その結果、回転体2には、気体によって生じた回転中心軸線aに対して垂直な方向に移動させる力と、回転体側磁石21が基体側磁石12の環から離間する方向(すなわち、両磁石の中心軸線aに対して垂直な方向のうちの所定の方向のみ)に対して拘束する力とが加わる。そのため、回転体2は、基体側磁石12の環に沿って移動する(すなわち、基体側磁石12の中心軸線a1に対して公転する。)。
【0059】
具体的には、回転体保持装置Rでは基体側磁石12として円環状の磁石を用いているので、図5に示すように、回転体2は、図5Aに示す第1状態、図5Bに示す第2状態、図5Cに示す第3状態、図5Dに示す第4状態を順に繰り返すようにして、自転しつつ公転するようになる。
【0060】
このとき、回転体2の公転軌道は、基体側磁石12の形状によって規定される。そのため、例えば、図6に示すように、基体側磁石12として矩形の環状の磁石を用いれば、回転体2は、図6Aに示す第1状態、図6Bに示す第2状態、図6Cに示す第3状態、図6Dに示す第4状態を順に繰り返すようにして、自転しつつ公転するようになる。
【0061】
すなわち、回転体保持装置Rでは、基体側磁石12の形状を変更することにより、公転軌道を任意に設定することができるようになっている。
【0062】
以上説明したように、回転体保持装置Rによれば、回転体2を、素材同士の摩擦力が作用しない状態で、回転体2の回転中心軸線aを中心として自転させつつ、任意の軌道で公転させることができる。
【0063】
以上、図示の実施形態について説明したが、本発明はこのような形態に限られるものではない。
【0064】
例えば、上記実施形態では、回転体保持装置Rは、不図示の移動機構によって、回転体2が自転のみをする状態(図1A参照)と、回転体2が自転及び公転をする状態(図1B参照)とを切り替え可能に構成している。しかし、本発明の回転体保持装置は、切替手段を省略し、回転体が自転及び公転をする状態のみを実現できるように構成してもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、基体側磁石12及び回転体側磁石21は、中心軸線を中心として回転対称性を有する円環として形成されている。これは、回転体2の回転中心軸線aと基体側磁石12の中心軸線a1とが一致した状態において、回転体2の自転を滑らかなものとするためである。ただし、本発明における回転対称性を有する形状とは、円環に限定されるものではない。例えば、多角形状でもよい。
【符号の説明】
【0066】
1,3…基体、2…回転体、10…基体側プレート、10a…浮上用給気経路、10b…駆動用給気経路、11…多孔質プレート、12…基体側磁石、20…回転体側プレート、20a…凹部、20b…通気溝、21…回転体側磁石、a…回転体2の回転中心軸線、a1…基体側磁石12の中心軸線、R…回転体保持装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6