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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-180690(P2017-180690A)
(43)【公開日】2017年10月5日
(54)【発明の名称】緩衝器
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/50 20060101AFI20170908BHJP
   F16F 9/34 20060101ALI20170908BHJP
   F16F 9/348 20060101ALI20170908BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20170908BHJP
   B62K 25/08 20060101ALI20170908BHJP
【FI】
   F16F9/50
   F16F9/34
   F16F9/348
   F16F15/02 C
   B62K25/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-69421(P2016-69421)
(22)【出願日】2016年3月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000146010
【氏名又は名称】株式会社ショーワ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】池田 大輔
【テーマコード(参考)】
3D014
3J048
3J069
【Fターム(参考)】
3D014DD02
3D014DE02
3D014DE13
3D014DE22
3J048AD06
3J048BF13
3J048CB22
3J048EA16
3J069AA46
3J069AA53
3J069AA64
3J069EE32
3J069EE66
(57)【要約】
【課題】車体に発生する自励振動に対するライダーの乗り心地を改善する。
【解決手段】フロントフォーク(11A)は、減衰力発生装置(28)と同位相に振動すると共に減衰力発生装置(28)と連通される圧側流路孔(44a)、中間流路孔(44b)、及び伸側流路孔(44c)が形成された流路孔形成部(30)と、減衰力発生装置(28)に発生した自励振動に応じて減衰力発生装置(28)と異なる位相で振動して、前記少なくとも3つの流路孔のうちの2つを連通させる流路変更部(31)とを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動油が封入されたシリンダと、
該シリンダ内に摺動自在に嵌装されたピストンと、
該ピストンに連結されて前記シリンダの外部へ延出されたピストンロッドと、
前記シリンダ内に前記ピストンロッドが進入する場合に前記ピストンロッドの進入体積分の油量を補償する油溜室と、
前記シリンダ内の前記ピストンの摺動によって生じる前記作動油の流れに応じて減衰力を発生させる減衰力発生部を有する減衰力発生装置とを備えた緩衝器であって、
前記減衰力発生装置と同位相に振動すると共に前記減衰力発生装置と連通される少なくとも3つの流路孔が形成された流路孔形成部と、
前記減衰力発生装置に発生した自励振動に応じて前記減衰力発生装置と異なる位相で振動して、前記少なくとも3つの流路孔のうちの2つを連通させる流路変更部とをさらに備え、
前記流路変更部は、前記減衰力発生部の上流側を、前記流路孔のうちの2つを介して前記油溜室と連通させること
を特徴とする緩衝器。
【請求項2】
前記減衰力発生部は、前記シリンダの外部に設けられていること
を特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項3】
前記減衰力発生部は、
圧側行程時に減衰力を発生させる圧側減衰バルブと、
前記圧側行程時に前記圧側減衰バルブの下流側となる位置に設けられた圧側チェックバルブと、
伸側行程時に減衰力を発生させる伸側減衰バルブと、
前記伸側行程時に前記伸側減衰バルブの下流側となる位置に設けられた伸側チェックバルブとを備え、
前記油溜室は、前記圧側減衰バルブの下流側かつ前記圧側チェックバルブの上流側と連通されると共に前記伸側減衰バルブの下流側かつ前記伸側チェックバルブの上流側と連通され、
前記圧側行程時には前記圧側減衰バルブを通る作動油が前記圧側減衰バルブの上流側から分岐して前記流路孔を通って前記油溜室と連通し、
前記伸側行程時には前記伸側減衰バルブを通る作動油が前記伸側減衰バルブの上流側から分岐して前記流路孔を通って前記油溜室と連通すること
を特徴とする請求項1又は2に記載の緩衝器。
【請求項4】
前記減衰力発生装置は、前記圧側行程時に前記圧側減衰バルブの上流側に設けられる圧側室と、前記伸側行程時に前記伸側減衰バルブの上流側に設けられる伸側室と、前記圧側行程時における前記圧側減衰バルブの下流側かつ前記圧側チェックバルブの上流側と連通されると共に前記伸側行程時における前記伸側減衰バルブの下流側かつ前記伸側チェックバルブの上流側と連通される中間室とを有し、
前記中間室は、前記油溜室と連通され、
前記少なくとも3つの流路孔のうちの1つが、前記圧側室と連通される圧側流路孔であり、
前記少なくとも3つの流路孔のうちの他の1つが、前記中間室と連通される中間流路孔であり、
前記少なくとも3つの流路孔のうちのさらに他の1つが、前記伸側室と連通される伸側流路孔であり、
前記圧側行程時に、前記圧側流路孔と前記中間流路孔とが連通されることにより、前記圧側室と前記中間室が選択的に連通され、
前記伸側行程時に、前記伸側流路孔と前記中間流路孔とが連通されることにより、前記伸側室と前記中間室が選択的に連通されること
を特徴とする請求項3に記載の緩衝器。
【請求項5】
前記流路変更部は、前記流路孔形成部と摺動自在に設けられる摺動部と、前記摺動部に取り付けられるおもりと、前記おもりの両側にそれぞれ設けられた2つの弾性体とを有し、
前記おもりが、前記2つの弾性体の振動により前記減衰力発生装置の振動と異なる位相で振動すること
を特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の緩衝器。
【請求項6】
前記減衰力発生装置の自励振動が発生しない場合に、前記摺動部により前記圧側流路孔と前記中間流路孔との連通が遮断されると共に前記伸側流路孔と前記中間流路孔との連通が遮断されること
を特徴とする請求項4に記載の緩衝器。
【請求項7】
前記流路変更部は、前記減衰力発生装置に隣接して設けられること
を特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の緩衝器。
【請求項8】
前記流路変更部の固有振動数は、前記減衰力発生装置の自励振動が発生する固有振動数と異なること
を特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動油の流れに応じて減衰力を発生させる減衰力発生装置を備えた緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
二輪自動車のフロントフォークには、例えば特許文献1(特開2015-140822号公報)に開示されるものがある。このフロントフォークは、アウタチューブにインナチューブを摺動自在に嵌合させ、アウタチューブとインナチューブとの内部にダンパを内装する。このダンパは、ダンパシリンダとロッドとからなり、ロッドに設けられたピストンによりシリンダの中の油室が区画される。ピストンの動きによりダンパシリンダの中の作動油が減衰力発生部に流通する。減衰力発生部は、二つのバルブユニットを有する。この二つのバルブユニットの間の中間室が、ロッドのダンパシリンダへの進入体積を補償する油溜室と連通する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-140822号公報(2015年8月3公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
二輪自動車は、一般的に、カーブを曲がる際に、車体を横に傾けながら走行する。その際に路面の凹凸から受ける衝撃をフロントフォークで吸収するが、フロントフォーク自体に振動が生じ、乗り心地が悪化することがある。
【0005】
この自励振動に基づく乗り心地の悪化の問題を解決するために、自励振動発生時に運転者に伝わる振動が低減するように減衰力を低く設定する対策が考えられる。
【0006】
しかしながら、自励振動発生時に減衰力を低く設定すると、通常走行時も減衰力が低いままになるので操縦安定性が低下してしまうことから、乗り心地と操縦安定性を両立させることは容易ではなく、ライダーの好みで調整するようになる。
【0007】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、自励振動発生時の乗り心地を、通常走行時の操縦安定性を確保しながら改善することができる緩衝器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明に係る緩衝器は、作動油が封入されたシリンダと、該シリンダ内に摺動自在に嵌装されたピストンと、該ピストンに連結されて前記シリンダの外部へ延出されたピストンロッドと、前記シリンダ内に前記ピストンロッドが進入する場合に前記ピストンロッドの進入体積分の油量を補償する油溜室と、前記シリンダ内の前記ピストンの摺動によって生じる前記作動油の流れに応じて減衰力を発生させる減衰力発生部を有する減衰力発生装置とを備えた緩衝器であって、前記減衰力発生装置と同位相に振動すると共に前記減衰力発生装置と連通される少なくとも3つの流路孔が形成された流路孔形成部と、前記減衰力発生装置に発生した自励振動に応じて前記減衰力発生装置と異なる位相で振動して、前記少なくとも3つの流路孔のうちの2つを連通させる流路変更部とをさらに備え、前記流路変更部は、前記減衰力発生部の上流側を、前記流路孔のうちの2つを介して前記油溜室と連通させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、車体に発生する自励振動に対するライダーの乗り心地を改善する緩衝器を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(a)は、実施形態1に係るフロントフォークの外観を模式的に示す正面図である。また、(b)は、その側面図である。
図2】上記フロントフォークの断面図である。
図3】実施形態1に係るフロントフォークに設けられた減衰力発生装置の構成を説明するための断面図である。
図4】上記フロントフォークに設けられた流路孔形成部及び流路変更部と上記減衰力発生装置との間の関係を説明するための断面図である。
図5】上記流路変更部の作動原理を説明するための図である。
図6】上記フロントフォークの圧側行程時における作動油の流れを示す油圧回路図である。
図7】上記フロントフォークの圧側行程時における流路変更部の動作を示す一部断面図である。
図8】上記フロントフォークの伸側行程時における作動油の流れを示す油圧回路図である。
図9】上記フロントフォークの伸側行程時における流路変更部の動作を示す一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0012】
(実施形態1)
(フロントフォーク11Aの全体構成)
図1(a)は、フロントフォーク11Aの外観を模式的に示す正面図である。また、(b)は、その側面図である。図2はフロントフォーク11Aの断面図である。
【0013】
フロントフォーク11Aは、略円筒形状のアウタチューブ23と、アウタチューブ23の内周面に挿入される略円筒形状のインナチューブ22と、インナチューブ22の車軸側に配置されてインナチューブ22を取り付ける車軸ブラケット37と、アウタチューブ23の車体側に配置されてアウタチューブ23に取り付けられるキャップ部36と、車軸ブラケット37に取り付けられてインナチューブ22の内側に配置され、作動油が封入されるシリンダ24と、キャップ部36に取り付けられてシリンダ24に挿入されるピストンロッド26と、ピストンロッド26の車軸側に連結されてシリンダ24内を軸方向に沿って摺動するピストン25とを備えている。
【0014】
シリンダ24の車体側の端部にピストンロッド26が貫通してインナチューブ22の内周面と当接するロッドガイド32が設けられる。ロッドガイド32は、インナチューブ22の内周面とシリンダ24の外周面との間に形成される環状油室33と、ロッドガイド32の車体側に形成されるエア室38とを区画する。ロッドガイド32の車体側に円筒形状のスプリングカラー40aが設けられる。キャップ部36とスプリングカラー40aとの間にコイルスプリング40が装着される。ピストン25は、シリンダ24内のロッド側油室34とピストン側油室35とを区画する。ロッド側油室34と環状油室33とを連通する連通孔39がロッドガイド32に形成される。
【0015】
フロントフォーク11Aは減衰力発生装置28を備える。減衰力発生装置28は、シリンダ24内のピストン25の摺動によって生じる作動油の流れに応じて減衰力を発生させる。減衰力発生装置28は、車軸ブラケット37に配置される。
【0016】
シリンダ24のピストン側油室35と減衰力発生装置28内の後述する圧側室51(図3)とを連通する連通孔41と、環状油室33と減衰力発生装置28内の後述する伸側室52(図3)とを連通する連通孔42とが車軸ブラケット37に形成される。
【0017】
フロントフォーク11Aには油溜室27が設けられる。油溜室27はシリンダ24内にピストンロッド26が進入する場合にピストンロッド26の進入体積分の油量を補償する。油溜室27は、車軸ブラケット37の減衰力発生装置28に隣接する位置に配置される。油溜室27はフリーピストン56を有する。フリーピストン56は油溜室27を気室27aと油室27bとに区画する。減衰力発生装置28内の後述する中間室53(図3)と油溜室27とを連通する連通孔43が車軸ブラケット37に形成される。
【0018】
(減衰力発生装置28の構成)
図3は、減衰力発生装置28の構成を説明するための断面図である。フロントフォーク11Aは減衰力発生装置28を備える。減衰力発生装置28は例えばシリンダ24の外側に配置される。減衰力発生装置28は、略円筒形状を有しており、その内部に、シリンダ24内のピストン25の摺動によって生じる作動油の流れに応じて減衰力を発生させる減衰力発生部29を有する。減衰力発生部29は、圧側行程時に減衰力を発生させるために略円柱形状に形成された圧側バルブユニット54と、伸側行程時に減衰力を発生させるために略円柱形状に形成された伸側バルブユニット55とを有する。
【0019】
圧側バルブユニット54の伸側バルブユニット55と反対側に圧側室51が形成される。伸側バルブユニット55の圧側バルブユニット54と反対側に伸側室52が形成される。圧側バルブユニット54と伸側バルブユニット55との間に中間室53が形成される。
【0020】
圧側行程時に圧側バルブユニット54の圧側流路57を通って圧側室51から中間室53に流れる作動油により減衰力を発生する圧側減衰バルブ50aが、圧側バルブユニット54の中間室53側に設けられる。圧側行程時に伸側バルブユニット55の圧側流路58を通って中間室53から伸側室52に作動油を流すための圧側チェックバルブ50bが、圧側行程時における圧側減衰バルブ50aの下流側であって、伸側バルブユニット55の伸側室52側に設けられる。
【0021】
伸側行程時に伸側バルブユニット55の伸側流路59を通って伸側室52から中間室53に流れる作動油により減衰力を発生する伸側減衰バルブ50cが、伸側バルブユニット55の中間室53側に設けられる。伸側行程時に圧側バルブユニット54の伸側流路60を通って中間室53から圧側室51に作動油を流すための伸側チェックバルブ50dが、伸側行程時における伸側減衰バルブ50cの下流側であって、圧側バルブユニット54の圧側室51側に設けられる。
【0022】
圧側室51は、シリンダ24のピストン側油室35(図2)と連通する。伸側室52は、ロッド側油室34と連通する。中間室53は、前述した油溜室27(図2)と連通する。
【0023】
(流路孔形成部30の構成)
図4は、フロントフォーク11Aに設けられた流路孔形成部30及び流路変更部31と減衰力発生装置28との間の関係を説明するための断面図である。
【0024】
フロントフォーク11Aは円筒状の流路変更筐体49を備える。流路変更筐体49は減衰力発生装置28に隣接して、車軸ブラケット37に取り付けアーム(不図示)を介して設けられる。流路変更筐体49の側面に流路孔形成部30が設けられる。流路孔形成部30には、減衰力発生装置28の圧側室51と作動流路61aを通って連通する圧側流路孔44a(流路孔)と、中間室53と作動流路61bを通って連通する中間流路孔44b(流路孔)と、伸側室52と作動流路61cを通って連通する伸側流路孔44c(流路孔)とが流路変更筐体49の軸Jの方向に沿ってこの順番に形成される。
【0025】
(流路変更部31の構成)
流路変更筐体49は、減衰力発生装置28に発生した自励振動に応じて減衰力発生装置28と異なる位相で振動して、圧側流路孔44aと中間流路孔44bと伸側流路孔44cのうちの2つを連通させる流路変更部31を有する。
【0026】
流路変更部31は、流路孔形成部30と軸Jの方向に沿って摺動自在に設けられる摺動部45と、摺動部45の流路孔形成部30と反対側に取り付けられるおもり47と、おもり47の両側にそれぞれ設けられた弾性体48とを有する。弾性体48は、例えば、コイルばねにより構成され、流路変更筐体49に取り付けられておもり47を支持する。
【0027】
摺動部45には、圧側流路孔44aと中間流路孔44bとを連通させるために設けられた連通溝46aと、中間流路孔44bと伸側流路孔44cとを連通させるために設けられた連通溝46bとが形成される。連通溝46aと連通溝46bとの間の溝にピストンリング62が装着される。ピストンリング62は連通溝46aと連通溝46bとを区画する。
【0028】
減衰力発生装置28の自励振動が発生しない場合に、図4に示すように、摺動部45はピストンリング62により中間流路孔44bを塞ぐ位置に配置される。従って、摺動部45により圧側流路孔44aと中間流路孔44bとの連通が遮断されると共に伸側流路孔44cと中間流路孔44bとの連通が遮断される。
【0029】
流路変更部31の固有振動数は、減衰力発生装置28の自励振動が発生する固有振動数と異なる。
【0030】
(フロントフォーク11Aの動作)
(流路変更部31の作動原理)
図5は、流路変更部31の作動原理を説明するための図である。波形S1により振幅が表される自励振動が減衰力発生装置28に発生すると、流路孔形成部30も減衰力発生装置28と同位相で振動する。弾性体48により支持されたおもり47に取り付けられた摺動部45は、波形S2により表される振幅で流路孔形成部30に対して逆位相で振動する。
【0031】
例えば、時刻T1では、図4に示される態様において下向きに摺動部45が摺動し、連通溝46aが、圧側室51に繋がる圧側流路孔44aと中間室53に繋がる中間流路孔44bとを連通させる。このため、圧側行程時における減衰力が低下する。そして、時刻T2では、上向きに摺動部45が摺動し、連通溝46bが、中間室53に繋がる中間流路孔44bと伸側室52に繋がる伸側流路孔44cとを連通させる。このため、伸側行程時における減衰力が低下する。
【0032】
(圧側行程時における動作)
図6は、フロントフォーク11Aの圧側行程時における作動油の流れを示す油圧回路図である。図7は、フロントフォーク11Aの圧側行程時における流路変更部31の動作を示す断面図である。図3図4で前述した構成要素と同一の構成要素に同一の参照符号を付している。これらの構成要素の詳細な説明は繰り返さない。図3等で説明した圧側減衰バルブ50a、圧側チェックバルブ50b、伸側減衰バルブ50cおよび伸側チェックバルブ50dは、油圧回路図用の記号で示されている。
【0033】
圧側行程において、ピストンロッド26がシリンダ24に進入すると、ピストン側油室35内の作動油A1はピストン25によって押し出されて、減衰力発生装置28へ供給される(図6では作動油A1を実線の矢印で示す)。
【0034】
ピストン側油室35から減衰力発生装置28へ供給された作動油A1は、主に圧側減衰バルブ50aおよび圧側チェックバルブ50bを経由して、ロッド側油室34へ流れ込む。作動油A1が圧側減衰バルブ50aを通過するときの流路抵抗により、圧側減衰力が発生する。
【0035】
また、圧側減衰バルブ50aを通過した作動油A1の一部は、中間室53(図3にも示す)から油溜室27へ流れ込む。これにより、ロッド側油室34へ進入したピストンロッド26の進入体積分の作動油が補償される。
【0036】
減衰力発生装置28に発生した自励振動を表す図5の波形S1が時刻T1において圧側に変位すると、摺動部45は、減衰力発生装置28と同位相で振動する流路孔形成部30とは逆位相で変位し、図6において流路孔形成部30に対して下側に摺動する。このため、連通溝46aが圧側流路孔44aと中間流路孔44bとを連通させる。すると、圧側減衰バルブ50aの上流側で作動油A2が作動油A1から分岐して、圧側流路孔44a、連通溝46a、中間流路孔44b、及び中間室53を経由して油溜室27に流れる(図6では作動油A2を一点鎖線の矢印で示す)。この結果、作動油が圧側減衰バルブ50aを迂回するため、圧側行程時における減衰力が低下する。
【0037】
(伸側行程時における動作)
図8は、フロントフォーク11Aの伸側行程時における作動油の流れを示す油圧回路図である。図9は、フロントフォーク11Aの伸側行程時における流路変更部31の動作を示す断面図である。図3図4で前述した構成要素と同一の構成要素に同一の参照符号を付している。これらの構成要素の詳細な説明は繰り返さない。
【0038】
伸側行程において、ピストンロッド26がシリンダ24から退出すると、ロッド側油室34内の作動油A3はピストン25によって押し出されて、減衰力発生装置28へ供給される(図8では作動油A3を点線の矢印で示す)。
【0039】
ロッド側油室34から減衰力発生装置28へ供給された作動油A3は、主に伸側減衰バルブ50cおよび伸側チェックバルブ50dを経由して、ピストン側油室35へ流れ込む。作動油A3が伸側減衰バルブ50cを通過するときの流路抵抗により、伸側減衰力が発生する。
【0040】
また、伸側減衰バルブ50cを通過した作動油A3と、ロッド側油室34から退出したピストンロッド26の退出体積分の油溜室27からの作動油が中間室53で合流し、ピストン側油室35に流れる。
【0041】
減衰力発生装置28に発生した自励振動を表す図5の波形S1が時刻T2において伸側に変位すると、摺動部45は、減衰力発生装置28と同位相で振動する流路孔形成部30とは逆位相で変位し、図8において流路孔形成部30に対して上側に摺動する。このため、連通溝46bが伸側流路孔44cと中間流路孔44bとを連通させる。すると、伸側減衰バルブ50cの上流側で作動油A4が作動油A3から分岐して、伸側流路孔44c、連通溝46b、及び中間流路孔44bを経由して中間室53に流れる(図8では作動油A4を二点鎖線の矢印で示す)。この結果、作動油が伸側減衰バルブ50cを迂回するため、伸側行程時における減衰力が低下する。
【0042】
(1−4.変形例)
本実施形態では、減衰力発生装置28がシリンダ24の外部に設けられる例を示した。しかしながら本発明はこれに限定されない。減衰力発生装置28はシリンダ24の内部に設けるように構成してもよい。
【0043】
また、本実施形態では、シリンダ24に直接ピストン25が摺動する構造で示しているが、本発明はこれに限定されない。シリンダがなく、例えば、フロントフォーク11Aのインナチューブ(図示せず)にピストン25が直接摺動する構造であってもよい。この場合は、該インナチューブが本発明のシリンダに該当することとなる。
【0044】
さらに本実施形態では、3つの流路孔(圧側流路孔44a、中間流路孔44b、伸側流路孔44c)を流路孔形成部30に形成する例を示したが、本発明はこれに限定されない。流路孔形成部30に形成する流路孔は4つ以上でもよい。
【0045】
また、流路変更部31が、減衰力発生装置28に隣接して設けられる例を示したが、本発明はこれに限定されない。流路変更部31は減衰力発生装置28から離れた位置に設けられてもよい。
【0046】
また、摺動部45が流路孔形成部30に対して逆位相で振動する例を示したが、本発明はこれに限定されない。摺動部45は流路孔形成部30に対して異なる位相で振動すればよい。
【0047】
(1−5.フロントフォーク11Aの効果)
以上のように、本実施形態に係るフロントフォーク11Aは、作動油が封入されたシリンダ24と、シリンダ24内に摺動自在に嵌装されたピストン25と、ピストン25に連結されてシリンダ24の外部へ延出されたピストンロッド26と、シリンダ24内にピストンロッド26が進入する場合にピストンロッド26の進入体積分の油量を補償する油溜室27と、シリンダ24内のピストン25の摺動によって生じる作動油の流れに応じて減衰力を発生させる減衰力発生部29を有する減衰力発生装置28とを備えたフロントフォーク11Aであって、減衰力発生装置28と同位相に振動すると共に減衰力発生装置28と連通される少なくとも3つの圧側流路孔44a、中間流路孔44b、及び伸側流路孔44cが形成された流路孔形成部30と、減衰力発生装置28に発生した自励振動に応じて減衰力発生装置28と異なる位相で振動して、圧側流路孔44a、中間流路孔44b、及び伸側流路孔44cのうちの2つを連通させる流路変更部31とをさらに備え、流路変更部31は、圧側減衰バルブ50aの上流側を、圧側流路孔44a、中間流路孔44bを介して油溜室27と連通させ、又は、伸側減衰バルブ50cの上流側を、伸側流路孔44c、中間流路孔44bを介して油溜室27と連通させる。
【0048】
これによれば、流路変更部31が、減衰力発生装置28に発生した自励振動に応じて減衰力発生装置28と異なる位相で振動して、圧側流路孔44a、中間流路孔44b、及び伸側流路孔44cのうちの2つを連通させることにより、圧側減衰バルブ50aの上流側を、圧側流路孔44a、中間流路孔44bを介して圧側減衰バルブ50aの下流側と連通させ、又は、伸側減衰バルブ50cの上流側を、伸側流路孔44c、中間流路孔44bを介して伸側減衰バルブ50cの下流側と連通させる。これにより、流路変更部31による3つの流路孔のうちの2つと他の2つとの選択が自励振動に応じて繰り返され、圧側減衰バルブ50a、伸側減衰バルブ50cの上流側の作動油の選択的な流通又は遮断が繰り返される。このため、減衰力を急激に抑えるのではなく、徐々に選択的に抑えることができる。これにより、減衰バルブを迂回することで減衰力を低下させ吸収性を良くして、ライダーの乗り心地が改善される。
【0049】
また、フロントフォーク11Aは、減衰力発生部29は、シリンダ24の外部に設けられている。
【0050】
減衰力発生部29がシリンダ24の外部に設けられているので、減衰力発生装置28と連通される少なくとも3つの流路孔が形成された流路孔形成部30、圧側減衰バルブ50a、伸側減衰バルブ50cの上流側を、圧側流路孔44a、中間流路孔44b、及び伸側流路孔44cのうちの2つとを介して油溜室27と連通させる流路変更部31のレイアウトが容易になる。
【0051】
また、フロントフォーク11Aでは、減衰力発生部29は、圧側行程時に減衰力を発生させる圧側減衰バルブ50aと、圧側行程時に圧側減衰バルブ50aの下流側となる位置に設けられた圧側チェックバルブ50bと、伸側行程時に減衰力を発生させる伸側減衰バルブ50cと、伸側行程時に伸側減衰バルブ50cの下流側となる位置に設けられた伸側チェックバルブ50dとを備え、油溜室27は、圧側減衰バルブ50aの下流側かつ前記圧側チェックバルブ50bの上流側と連通されると共に伸側減衰バルブ50cの下流側かつ伸側チェックバルブ50dの上流側と連通され、圧側行程時には圧側減衰バルブ50aを通る作動油が圧側減衰バルブ50aの上流側から分岐して圧側流路孔44a、中間流路孔44bを通って油溜室27と連通し、伸側行程時には伸側減衰バルブ50cを通る作動油が伸側減衰バルブ50cの上流側から分岐して伸側流路孔44c、中間流路孔44bを通って油溜室27と連通する。
【0052】
上記構成によれば、簡単な構造で減衰力発生部29を実現することができる。
【0053】
また、フロントフォーク11Aでは、減衰力発生装置28は、圧側行程時に圧側減衰バルブ50aの上流側に設けられる圧側室51と、伸側行程時に伸側減衰バルブ50cの上流側に設けられる伸側室52と、圧側行程時における圧側減衰バルブ50aの下流側かつ圧側チェックバルブ50bの上流側と連通されると共に伸側行程時における伸側減衰バルブ50cの下流側かつ伸側チェックバルブ50dの上流側と連通される中間室53とを有し、中間室53は、油溜室27と連通され、少なくとも3つの流路孔のうちの1つが、圧側室51と連通される圧側流路孔44aであり、少なくとも3つの流路孔のうちの他の1つが、中間室53と連通される中間流路孔44bであり、少なくとも3つの流路孔のうちのさらに他の1つが、伸側室52と連通される伸側流路孔44cであり、圧側行程時に、圧側流路孔44aと中間流路孔44bとが連通されることにより、圧側室51と中間室53が選択的に連通され、伸側行程時に、伸側流路孔44cと中間流路孔44bとが連通されることにより、伸側室52と中間室53が選択的に連通される。
【0054】
上記構成によれば、簡単な構造で流路孔形成部30を実現することができる。
【0055】
また、フロントフォーク11Aでは、流路変更部31は、流路孔形成部30と摺動自在に設けられる摺動部45と、摺動部45に取り付けられるおもり47と、おもり47の両側にそれぞれ設けられた2つの弾性体48とを有し、おもり47が、2つの弾性体48の振動により減衰力発生装置28の振動と異なる位相で振動する。
【0056】
上記構成によれば、流路変更部31が、自励振動する減衰力発生装置28及び流路孔形成部30の位相と異なる位相で振動する。このため、自励振動と流路変更部31との互いの振動が時間と共に互いに相殺される。この結果、減衰力発生装置28の自励振動の影響を抑制することができる。
【0057】
また、フロントフォーク11Aでは、減衰力発生装置28の自励振動が発生しない場合に、摺動部45により圧側流路孔44aと中間流路孔44bとの連通が遮断されると共に伸側流路孔44cと中間流路孔44bとの連通が遮断される。
【0058】
上記構成によれば、減衰力発生装置28の自励振動が発生しない場合は、減衰力発生部29による減衰力が通常通り発生する。
【0059】
また、フロントフォーク11Aでは、流路変更部31は、減衰力発生装置28に隣接して設けられる。
【0060】
上記構成によれば、流路変更部31と減衰力発生装置28とが隣接するので、流路孔形成部30、流路変更部31、及び減衰力発生装置28をコンパクトなレイアウトに構成することができる。
【0061】
また、フロントフォーク11Aでは、流路変更部31の固有振動数は、減衰力発生装置28の自励振動が発生する固有振動数と異なることが好ましい。
【0062】
上記構成によれば、流路変更部31の固有振動数と減衰力発生装置28の自励振動の固有振動数が異なることにより、それぞれの振動が相殺することはあっても共振することはない。このため、自励振動の影響を確実に抑えることができる。
【0063】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
11A フロントフォーク(緩衝器)
24 シリンダ
25 ピストン
26 ピストンロッド
27 油溜室
28 減衰力発生装置
29 減衰力発生部
30 流路孔形成部
31 流路変更部
44a 圧側流路孔
44b 中間流路孔
44c 伸側流路孔
45 摺動部
47 おもり
48 弾性体
50a 圧側減衰バルブ
50b 圧側チェックバルブ
50c 伸側減衰バルブ
50d 伸側チェックバルブ
51 圧側室
52 伸側室
53 中間室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9