【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)放送日 平成27年10月16日 放送番組 テレビ東京「WBS ワールドビジネスサテライト」 (2)開催日 平成27年11月19日〜平成27年11月20日 集会名 第9回日本電磁波エネルギー応用学会シンポジウム 主催者 特定非営利活動法人 日本電磁波エネルギー応用学会 (3)放送日 平成27年11月29日 放送番組 TBSテレビ「この差って何ですか?」
【解決手段】電子レンジ1は、被加熱物10を収容する加熱室2と、マイクロ波を発振するマイクロ波発振部3と、マイクロ波発振部3から発振されたマイクロ波出力を加熱室2に放射する複数の給電部5とを備え、給電部5が、加熱室2の少なくとも底面2a側又は天面側のいずれか一方の面側に、平面状に配設されるとともに、給電部5から放射されるマイクロ波出力を給電部5毎に制御する。
前記画像データをタッチパネル式の表示画面を有する画像表示装置に表示し、前記画像表示装置の表示画面上で指定した範囲に対応して位置する前記給電部にマイクロ波出力が分配されるように、前記制御部によって前記分配部からの出力を制御する請求項3に記載の電子レンジ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る電子レンジの好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0011】
[第一実施形態]
まず、本発明の第一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る電子レンジの概略を示す説明図であり、その構成を模式的に示している。また、
図2は、本実施形態に係る電子レンジの要部の概略を示す斜視図であり、加熱室内部を正面側の斜め上方から斜視して示している。
【0012】
これらの図に示すように、電子レンジ1は、被加熱物10を収容する加熱室2と、マイクロ波を発振するマイクロ波発振部3と、マイクロ波発振部3から発振されたマイクロ波出力を分配する分配部4と、分配部4で分配されたマイクロ波出力を加熱室2に放射する複数の給電部5と、分配部4から給電部5への出力を制御する制御部6と、加熱室2の底面2a側を撮像する撮像部7とを備えている。
【0013】
マイクロ波発振部3は、半導体素子を用いた発振回路、例えば、ハートレー型発振回路、又はコルピッツ型発振回路などを用いて構成することができる。
【0014】
分配部4は、例えば、ウィルキンソン型分配器などを用いて構成することができる。また、分配部4は、分配されたマイクロ波出力を増幅して出力するための増幅回路などを必要に応じて備えることもできる。
【0015】
給電部5は、例えば、マイクロストリップアンテナ(パッチアンテナ)などの平面アンテナを用いて構成することができる。また、給電部5は、反射波を吸収するアイソレーターなどを必要に応じて備えることもできる。
【0016】
本実施形態において、給電部5は、加熱室2の底面2a側(当該底面2aの下方)に平面状に配設される。
複数の給電部5を加熱室2の底面2aの下方に平面状に配設するにあたり、例えば、
図2に示すように、これらを所定の間隔で格子状に配列することができるが、これに限定されない。給電部5の配列は、それぞれの給電部5から放射されるマイクロ波が互いに干渉して打ち消し合うことなく、底面2aに置かれた被加熱物10を加熱できるように、それぞれの給電部5から放射されるマイクロ波の波長や出力などに応じて適宜調整することができる。配設する給電部5の数も、底面2aの広さなどに応じて適宜調整することができる。
なお、
図2では、加熱室2の底面2aの下方に平面状に配設された給電部5を、それらを透視したかくれ線(破線)で示している。
【0017】
撮像部7は、CCD、CMOSなどの撮像素子を用いて構成することができる。また、撮像部7は、加熱室2の底面2a側を撮像できるように加熱室2の天面などに取り付けられおり、加熱室2の底面2aに置かれた被加熱物10を撮像する。
【0018】
撮像部7が被加熱物10を撮像した撮像データは、タッチパネル式の表示画面を有する画像表示装置8に表示させるようにすることができる。
図1では、持ち帰り用の弁当を被加熱物10として、かかる弁当が画像表示装置8の表示画面に表示された例を示している。
【0019】
本実施形態では、撮像部7が撮像した撮像データに基づいて、制御部6によって分配部4から給電部5への出力が制御され、給電部5から放射されるマイクロ波出力が給電部5毎に制御されるように、電子レンジ1を構成することができるが、その制御の一例を以下に説明する。
【0020】
例えば、使用者が被加熱物10を加熱室2に収容すると、撮像部7は、加熱室2の底面2aに置かれた被加熱物10を撮像し、その撮像データが画像表示装置8の表示画面に表示される。
そして、使用者は、画像表示装置8の表示画面に表示された被加熱物10の画像を見て、表示画面上の被加熱物10の温めたい部分を指でなぞるなどして、その範囲を指定する。
なお、
図1では、画像表示装置8の表示画面上で指定した範囲を一点鎖線で示している。
【0021】
このようにして、画像表示装置8の表示画面上で被加熱物10の温めたい部分を範囲指定すると、制御部6は、表示画面上で範囲指定された位置情報により、その範囲に対応して位置する給電部5にマイクロ波出力が分配されるように、分配部4からの出力を制御して、給電部5から放射されるマイクロ波出力を給電部5毎に制御する。
なお、
図1では、画像表示装置8の表示画面上で指定された範囲に対応して位置する給電部5からマイクロ波が放射されるイメージを矢印で示している。
【0022】
これにより、被加熱物10の温めたい部分の直下に位置する給電部5からマイクロ波が放射され、被加熱物10の温めたい部分を選択的に部分加熱し、被加熱物10の温めたくない部分は加熱されないようにすることができる。その結果、コンビニエンスストアなどで販売されている持ち帰り用の弁当を温める際に、温めてから食するのが好まれるものだけを温めて、温めずに食するのが好まれるものは温まらないようにすることが可能になる。
【0023】
特に図示しないが、電子レンジ1は、サーモグラフィーを備えることもできる。サーモグラフィーによって測定された被加熱物10の温度変化に応じて、給電部5から放射されるマイクロ波出力を制御したり、マイクロ波発振部3のON/OFFを制御したりすることで、被加熱物10を選択的に部分加熱するにあたり、温めたい部分の温度が適温となるように適宜調整することができる。
【0024】
本実施形態において、画像表示装置8は、電子レンジ1が備えるようにしてもよいが、使用者が所有するスマートフォン又はタブレット端末など、タッチパネル式の表示画面を有する携帯情報端末を画像表示装置8として利用するようにしてもよい。
【0025】
後者の場合には、電子レンジ1は、かかる携帯情報端末と接続するインターフェースを備えることができる。その接続方式は、ブルートゥース、又は無線LANなどを介した無線による接続であってもよく、ユニバーサル・シリアル・バスなどを介した有線による接続であってもよい。そして、使用者が所有する携帯情報端末に、その表示画面に撮像部7が撮像した撮像データを表示するとともに、表示画面上で指定した範囲に対応して位置する給電部5にマイクロ波出力が分配されるように、制御部6が分配部4からの出力を制御して、給電部5から放射されるマイクロ波出力を給電部5毎に制御するアプリケーションソフトウェアをインストールすることで、使用者が所有する携帯情報端末による電子レンジ1の操作を可能にすることができる。
【0026】
以上、本発明の第一実施形態について説明したが、本実施形態にあっては、次のような変更実施も可能である。
【0027】
上記した例では、被加熱物10の温めたい部分の直下に位置する給電部5からマイクロ波が放射され、その以外の給電部5からはマイクロ波が放射されないようにしているが、これに限定されない。
例えば、被加熱物10中に、水分量が多くマイクロ波によって加熱され易いものと、水分量が少なくマイクロ波によって加熱され難いもとが混在する場合には、前者に放射されるマイクロ波の出力を弱くして、後者に放射されるマイクロ波の出力を強くするというように、給電部5から放射されるマイクロ波の強弱を制御することもでき、このための出力制御回路を必要に応じて備えることもできる。
【0028】
また、上記した例では、画像データを画像表示装置8の表示画面に表示し、その表示画面上で指定した範囲に対応して位置する給電部5にマイクロ波出力が分配されるように、制御部6によって分配部4からの出力を制御して、給電部5から放射されるマイクロ波出力を給電部5毎に制御しているが、これに限定されない。
例えば、種々の被加熱物10について、形状、大きさ、加熱したい部位の位置などの情報を制御部6に予め記憶させておき、撮像部6が撮像した撮像データに基づいて被加熱物10を特定し、特定された被加熱物10の加熱したい部位に位置する給電部5にマイクロ波出力が分配されるように、制御部6によって分配部4からの出力を制御して、給電部5から放射されるマイクロ波出力を給電部5毎に制御すこともできる。
また、画像認識技術により、被加熱物10の加熱したい部位を特定して、その部位に位置する給電部5にマイクロ波出力が分配されるように、制御部6によって分配部4からの出力を制御して、給電部5から放射されるマイクロ波出力を給電部5毎に制御すこともできる。
このように実施した場合には、画像表示装置8は不要である。
【0029】
さらに、被加熱物10を加熱する際に、マイクロ波を放射させる給電部5を使用者が設定するなどしてし、その設定に基づいて給電部5にマイクロ波出力が分配されるように、制御部6によって分配部4からの出力を制御して、給電部5から放射されるマイクロ波出力を給電部5毎に制御することもできる。
このように実施した場合には、撮像部7が撮像した撮像データに基づかなくても選択的な部分加熱が可能となり、撮像部7は不要である。
【0030】
また、上記した例では、複数の給電部5が一つの分配部4に接続されて、分配部4から給電部5への出力が制御部6によって制御されるようにしているが、これに限定されない。
二以上の分配部4を備えるようにして、それぞれに給電部5を振り分けてもよく、分配部4を省略して、複数の給電部5のそれぞれにマイクロ波発振部3を一対一で直結、又は増幅回路や出力制御回路などを介して接続して、給電部5から放射されるマイクロ波出力を給電部5毎に制御することもできる。
【0031】
また、従来のマグネトロン方式の電子レンジと複合化して、一台の電子レンジで、被加熱物の選択的な部分加熱と、被加熱物の全体的な均一加熱とを必要に応じて使い分けられるようにすることもできる。
【0032】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について説明する。
図3は、
図2に対応させて、加熱室内部を正面側の斜め上方から斜視した本実施形態に係る電子レンジの要部の概略を示す斜視図である。
【0033】
本実施形態では、
図1及び
図2に示す例に加えて、加熱室2の天面側に昇降可能な可動板2bを設け、かかる可動板2bの背面側にも給電部5を平面状に配設している。可動板2bの背面側に配設した給電部5は、加熱室2の底面2aの下方に配設した給電部5と同様に分配部4に接続されて、分配部4からのマイクロ波出力が制御部6によって制御され、給電部5から放射されるマイクロ波出力が給電部5毎に制御される。
【0034】
特に図示しないが、可動板2bは、例えば、ボールネジなどを利用した機械式の駆動機構や、エアシリンダーなどを利用した流体圧式の駆動機構などにより、加熱室2の天面側の待機位置と、加熱室2の底面2aに置かれた被加熱物10に近接する位置との間を昇降可能とすることができる。そして、加熱室2の底面2aに置かれた被加熱物10を撮像部7が撮像するのを妨げないように、可動板2bには、図示しないのぞき穴を設けておくことができる。
【0035】
本実施形態の電子レンジ1により、撮像部7が撮像した撮像データに基づいて、被加熱物10を選択的に部分加熱する場合の例を説明するに、使用者は、前述した第一実施形態で説明したのと同様にして、画像表示装置8の表示画面上で、被加熱物10の温めたい部分を範囲指定する。
【0036】
そして、被加熱物10を選択的に部分加熱するに際して、可動板2bは、被加熱物10に近接する位置に下降し、可動板2bの背面側に配設した給電部5と、加熱室2の底面2aの下方に配設した給電部5とのそれぞれについて、制御部6は、表示画面上で範囲指定された位置情報により、その範囲に対応して位置する給電部5にマイクロ波出力が分配されるように、分配部4からの出力を制御して、給電部5から放射されるマイクロ波出力を給電部5毎に制御する。
【0037】
これにより、被加熱物10の温めたい部分を選択的に部分加熱し、被加熱物10の温めたくない部分は加熱されないようにすることができるが、本実施形態では、被加熱物10の上下に位置する給電部5からマイクロ波が放射されるため、被加熱物10が厚みのあるものであっても、その温めたい部分を厚み方向にむらなく選択的に部分加熱することが可能となる。
【0038】
以上、本発明の第二実施形態について説明したが、本実施形態にあっては、次のような変更実施も可能である。
なお、本実施形態にあっても、前述した第一実施形態で説明した変形例と同様に変更実施できるのはいうまでもない。
【0039】
上記した例では、加熱室2の天面側に昇降可能な可動板2bを設けているが、加熱室2の底面2a側に昇降可能な可動板を設けて、かかる可動板に給電部5を平面状に配設することもできる。すなわち、加熱室2の底面2aの下方に給電部5を平面状に配設するのに代えて、加熱室2の天面の上方に給電部5を平面状に配設するとともに、加熱室2の底面2a側に昇降可能な可動板を設け、その背面側に給電部5を平面状に配設するようにしてもよい。
【0040】
このような態様とした場合には、被加熱物10を選択的に部分加熱する際に可動板を上昇させて、その上に置かれた被加熱物10を加熱室2の天面に近接させる。そして、底面2a側と天面側のそれぞれに配設された給電部5のうち、被加熱物10の加熱したい部分の上下に位置する給電部5からマイクロ波が放射されるように、分配部4からの出力を制御部6が制御して、給電部5から放射されるマイクロ波出力を給電部5毎に制御するようにすればよい。このようにしても、厚みのある被加熱物10の温めたい部分を厚み方向にむらなく選択的に部分加熱することが可能である。
【0041】
また、上記した例では、可動板2bの背面側に給電部5を平面状に配設しているが、給電部5は、可動板2bの表面側(被加熱物10と対向する面側)に露出していなければよく、可動板の2b内に埋設された状態で配設することもできる。
【0042】
また、
図4に示すように、加熱室2の底面2aの下方に配設した給電部5を省略してもよい。この場合、加熱室2の底面2aの下方に給電部5を配設するのに代えて、加熱室2の底面2aの下方には、特許文献2に開示された従来の電子レンジのように、マグネトロンから発振されて、導波管を伝搬してきたマイクロ波を加熱室内に放射する回転アンテナを備えることもできる。これにより、従来のマグネトロン方式の電子レンジと複合化して、一台の電子レンジで、被加熱物の選択的な部分加熱と、被加熱物の全体的な均一加熱とを必要に応じて使い分けることが可能になる。
【0043】
本実施形態では、上記した点が第一実施形態と異なり、それ以外の点については第一実施形態と共通するので、重複した説明は省略する。
【0044】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態について説明する。
図5は、本実施形態に係る電子レンジの概略を示す説明図であり、
図6は、その使用例を示す説明図である。
【0045】
前述した第二実施形態では、加熱室2の天面側又は底面側に昇降可能な可動板2bを設け、かかる可動板2bに給電部5を平面状に配設しているが、本実施形態では、これに加えて、加熱室2の側壁部2cを水平方向に移動可能とし、かかる側壁部2cにも給電部5を平面状に配設している。
【0046】
なお、
図5では、給電部5の図示を省略しているが、給電部5は分配部4に接続されて、分配部4からのマイクロ波出力が制御部6によって制御され、給電部5から放射されるマイクロ波出力が給電部5毎に制御されるのは、前述した第一及び第二実施形態と同様である。加熱室2の側壁部2cを水平方向に移動可能とし、かかる側壁部2cに給電部5を平面状に配設した点以外は第二実施形態と共通するので、重複した説明は省略する。
【0047】
このように構成された本実施形態の電子レンジ1は、温めたい部分と、温めたくない部分とが高さ方向上下に位置する被加熱物10を選択的に部分加熱する場合に有効であり、例えば、海鮮丼などのように、米飯の上に、魚介類の刺身などを盛り付けた丼ものを被加熱物10とする場合であっても、米飯だけを選択的に部分加熱することができる。
【0048】
具体的には、
図6に示すように、側壁部2cを水平方向に移動して被加熱物10に近接させて、米飯などの温めたいものに対向して位置する給電部5からマイクロ波が放射されるように、分配部4からのマイクロ波出力を制御部6が制御して、給電部5から放射されるマイクロ波出力を給電部5毎に制御するようにすれば、米飯などの温めたいものだけを温めることができる。
なお、
図6では、米飯に対向して位置する給電部からマイクロ波が放射されるイメージを矢印で示している。
【0049】
なお、本実施形態の電子レンジによっても、
図1に被加熱物10として示すような弁当を温める際には、前述した第一及び第二実施形態で説明したのと同様にして、その選択的な部分加熱が可能であるのはいうまでもない。さらに、本実施形態にあっても、前述した第一及び第二実施形態で説明した変形例と同様に変更実施できるのもいうまでもない。
【0050】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることはいうまでもない。