【実施例】
【0046】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0047】
(実施例1:グルテン試料(E1)の製造)
回転ドラム式燻製装置(300L容量)を用いて、40kgの小麦粉由来の粉末グルテン(水分含量:10質量%以下、タンパク質含量;75質量%以上)を、25℃で60分間燻煙した。なお、燻煙材としては、オークのスモークチップ1kgを用いた。これにより、燻煙処理されたグルテンを得た。この燻煙処理されたグルテンに対し、他の成分を添加することなく、そのままグルテン試料(E1)として使用した。
【0048】
(実施例2〜4:グルテン試料(E2)〜(E4)の製造)
燻煙時間を60分間の代わりに、それぞれ120分間、240分間および360分間としたこと以外は実施例1と同様にして燻煙処理されたグルテンを得、これをそのままグルテン試料(E2)〜(E4)とした。
【0049】
(比較例1:グルテン試料(C1)の製造)
燻煙処理を行うことなく粉末グルテン自体を、実施例1〜4の物性改変剤との比較のために用い、これをグルテン試料(C1)とした。
【0050】
(評価1:加熱ゲルの破断強度の測定)
実施例1で得られたグルテン試料(E1)および水を1:2の質量比となるように混合し、この混合物を、50mlの遠沈管に詰め、90℃にて40分間加熱してゲル化させた。得られた加熱ゲルから直径25mmおよび厚さ10mmのサンプル片を作製し、この加熱ゲルの破断強度を、レオメーター(株式会社島津製作所製;Ez−test)により測定した(測定条件:貫入速度100mm/分、直径5mm球型治具を使用)。得られた破断強度曲線を
図1に示す。
【0051】
同様に、実施例2〜4で得られたグルテン試料(E2)〜(E4)および比較例1のグルテン試料(C1)について、実施例1と同様にして加熱ゲルのサンプル片を作製し、それらの破断強度を測定した。得られた破断強度曲線をそれぞれ
図1に示す。
【0052】
図1に示すように、実施例1および2のグルテン試料から得られた加熱ゲルは、他と比較して柔らかく伸展性に富むゲルであった。また、実施例3および4のグルテン試料から得られた加熱ゲルは、他と比較して比較的脆いものであった。さらに、比較例1の結果を比較して、実施例1〜4の各グルテン試料から得られたゲルは、燻製処理によって全く異なる破断強度曲線を示していたことがわかる。
【0053】
(評価2:グルテン試料の保水性)
植物性たん白の日本農林規格(昭和五十一年九月十一日 農林省告第八百三十八号)に準拠して、グルテン試料の保水性(吸水性)を以下のようにして測定した。
【0054】
実施例1〜4および比較例1のグルテン試料(E1)〜(E4)および(C1)のそれぞれを、10gずつ採取し、これらをそれぞれ100mlの熱水に添加し、10秒間撹拌し、その後室温になるまで放冷した。次いで、これらを1000Gにて5分間遠心分離し、そして分離した水を取り除いて、内容物の質量を測定した。これにより、吸水前の質量(10g)に対する吸水後の質量(g;測定値)の比を算出し、これを保水量とした。実施例1〜4および比較例1のグルテン試料(E1)〜(E4)および(C1)のそれぞれについて、得られた結果を
図2に示す。
【0055】
図2に示すように、実施例1〜4で得られたグルテン試料(E1)〜(E4)は、いずれも比較例1のグルテン試料(C1)と比較して、1.4倍以上の優れた保水性を示していた。特に、燻煙処理の時間が240分間までの実施例1〜3のグルテン試料(E1)〜(E3)については、燻煙時間に応じて保水性も上昇する傾向にあったことがわかる。
【0056】
(評価3:グルテン試料の保油性)
グルテン試料の保油性(吸油性)を以下のようにして測定した。
【0057】
実施例1〜4および比較例1のグルテン試料(E1)〜(E4)および(C1)のそれぞれを、サラダ油と1:1の質量比となるように混合し、これらの混合物を、50mlの遠沈管にそれぞれ30gずつ分注し、85℃にて60分間加熱し、その後一晩静置して油層とグルテン層とを分離させた。分離した油層を取り除き、グルテン層側の内容物の質量を測定した。これにより、加熱前の質量(30g)に対する加熱かつ油層除去後の質量(g;測定値)の比を算出し、これを保油量とした。実施例1〜4および比較例1のグルテン試料(E1)〜(E4)および(C1)のそれぞれについて、得られた結果を
図3に示す。
【0058】
図3に示すように、実施例1〜4で得られたグルテン試料(E1)〜(E4)は、いずれも比較例1のグルテン試料(C1)と比較して優れた保油性を示していた。特に、実施例1〜4で得られたグルテン試料(E1)〜(E4)の保油性は、燻煙処理に要した時間が長いほど、上昇する傾向にあったことがわかる。
【0059】
(評価4:グルテン試料の遠心分離後の保油保水性)
グルテン試料の遠心分離後の保油保水性(吸油吸水性)を以下のようにして測定した。
【0060】
実施例1〜4および比較例1のグルテン試料(E1)〜(E4)および(C1)のそれぞれを、水およびサラダ油と1:2:1の質量比となるように、まずはグルテン試料と水とを混合して充分撹拌した後に、当該油を添加して混合し、これらの混合物を1000Gで5分間遠心分離した。次いで、分離した油層および水層を除去し、残留するグルテン層側の内容物の質量を測定した。これにより、遠心分離前のグルテン試料の質量に対する遠心分離後の質量(g;測定値)の比を算出し、これを遠心分離後の保油保水量とした。実施例1〜4および比較例1のグルテン試料(E1)〜(E4)および(C1)のそれぞれについて、得られた結果を
図4に示す。
【0061】
図4に示すように、実施例1〜4で得られたグルテン試料(E1)〜(E4)は、燻煙処理に要した時間の多少に関わらず、いずれも比較例1のグルテン試料(C1)と比較して優れた保油保水性を示していたことがわかる。
【0062】
(評価5:グルテン試料の焼成後の保油保水性)
グルテン試料の焼成後の保油保水性(吸油吸水性)を以下のようにして測定した。
【0063】
実施例1〜4および比較例1のグルテン試料(E1)〜(E4)および(C1)のそれぞれを、水およびサラダ油と1:2:1の質量比となるように、まずはグルテン試料と水とを混合して充分撹拌した後に、当該油を添加して混合した。これらの混合物を小判形に成形し、それぞれコンベクションオーブンで180℃にて20分間焼成した後、直ちに分離した油層および水層を除去し、残留する焼成グルテンの質量を測定した。これにより、焼成前のグルテン試料の質量に対する焼成後の質量(g;測定値)の比を算出し、これを焼成後の保油保水量とした。実施例1〜4および比較例1のグルテン試料(E1)〜(E4)および(C1)のそれぞれについて、得られた結果を
図5に示す。
【0064】
図5に示すように、実施例1〜4で得られたグルテン試料(E1)〜(E4)は、燻煙処理に要した時間の多少に関わらず、いずれも比較例1のグルテン試料(C1)と比較して優れた保油保水性を示していたことがわかる。
【0065】
(実施例5:加工食品(ハンバーグ)の製造(1))
以下の表1に示す食品素材に対し、比較例1、実施例1および実施例2で得られたグルテン試料(C1)、(E1)および(E2)を1.5質量部の割合で添加し、1個あたり50gのハンバーグタネに分け、これらをコンベクションオーブン(180℃、20分間)で通常の焼き加減になるまで焼成してハンバーグを得た。さらに、これらのグルテン試料を添加していない食品素材のみからなるハンバーグ(無添加)も得た。
【0066】
【表1】
【0067】
次いで、得られた各ハンバーグの質量を測定し、これにより、焼成前の質量に対する焼成後の質量(g;測定値)の比を百分率([焼成後(g)/焼成前(g)]×100(%))で算出し、これらを焼成後の歩留まりとした。さらに、得られたハンバーグを一旦急速冷凍し、その後電子レンジ(1000W)で1分30秒かけてレンジアップした。このハンバーグについて、当該技術分野における専門家パネル5名が食し、「肉粒感」、「ジューシー感」および「穀物臭」の3項目について、JIS Z9080:2004(官能評価分析−方法)に準拠して、マグニチュード推定(ISO 11056)により、以下表2〜4に記載のように各5段階尺度の基準に従って評価し、各評価結果を集計して、これらを当該専門家全員の合意による最終結果の点数として調整かつ決定した。また、円卓法により、各グルテン試料を添加した際の特徴を記録した。
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
【表4】
【0071】
さらに、上記レンジアップ後のハンバーグの質量を測定し、これにより、レンジアップ前の質量に対するレンジアップ後の質量(g;測定値)の比を百分率([レンジアップ後(g)/レンジアップ前(g)]×100(%))で算出し、これらをレンジアップ後の歩留まりとした。得られた評価を表5に示す。
【0072】
【表5】
【0073】
表5に示すように、実施例1および2で得られたグルテン試料(E1)および(E2)を添加したハンバーグは、無添加および比較例1のものと比較して歩留まりが高く、かつ肉粒感およびジューシー感が高得点を示して優れており、その一方で穀物臭は低く懸念すべきものではなかったことがわかる。特に、燻煙処理に要した時間がより長い実施例2のグルテン試料を用いた場合は、ハンバーグのジューシー感が最も高かったと評価されており、当該グルテン試料がハンバーグの食感向上に大きな影響を及ぼしていたことがわかる。
【0074】
(実施例6:加工食品(粒状大豆タンパク質入りハンバーグ)の製造(2))
以下の表6に示す食品素材を用いたこと以外は、実施例5と同様にしてハンバーグタネを作製し(グルテン試料は実施例5と同様にして1.5質量部添加した)、かつ実施例5と同様にして焼成およびレンジアップした。
【0075】
【表6】
【0076】
得られたハンバーグについて、当該技術分野における専門家パネル5名が食し、「肉粒感」、「ジューシー感」および「穀物臭」の3項目について、実施例5と同様の基準に従って評価し、各評価結果を集計して、これらを当該専門家全員の合意による最終結果の点数として調整かつ決定した。また、円卓法により、各グルテン試料を添加した際の特徴を記録した。
【0077】
得られた評価を表7に示す。
【0078】
【表7】
【0079】
表7に示すように、実施例1および2で得られたグルテン試料(E1)および(E2)を添加した、粒状大豆タンパク質入りハンバーグは、無添加および比較例1のものと比較して歩留まりが高く、かつ肉粒感、ジューシー感および穀物臭の全てにおいて優れたものであったことがわかる。
【0080】
(実施例7:加工食品(中華饅頭)の製造(3))
以下の表8に示す食品素材に対し、比較例1、実施例1および実施例2で得られたグルテン試料(C1)、(E1)および(E2)を2質量部の割合で添加し、1個あたり40gの中種に分け、これらを50gの中華饅頭の皮で包み、ホイロ(温度40℃、湿度60%)内に40分間配置し、その後15分間かけて蒸し上げる(温度100℃)ことにより中華饅頭を得た。
【0081】
【表8】
【0082】
次いで、得られた中華饅頭について、当該技術分野における専門家パネル5名が食し、「空洞」(皮と中種との間の空間)および「肉汁」の2項目について、JIS Z9080:2004(官能評価分析−方法)に準拠して、マグニチュード推定(ISO 11056)により、それぞれ表9および10に記載のように各5段階尺度の基準に従って評価し、各評価結果を集計して、これらを当該専門家全員の合意による最終結果の点数として調整かつ決定した。また、円卓法により、各グルテン試料を添加した際の特徴を記録した。
【0083】
【表9】
【0084】
【表10】
【0085】
得られた評価を表11に示す。
【0086】
【表11】
【0087】
表11に示すように、実施例1および2で得られたグルテン試料(E1)および(E2)を添加した中華饅頭は、比較例1のものと比較して空洞および肉汁の両方において優れたものであったことがわかる。特に、燻煙処理に要した時間がより長い実施例2のグルテン試料を用いた場合は、中華饅頭の肉汁が非常に多いと感じられており、当該グルテン試料が中華饅頭の物性改変に大きな影響を及ぼしていたことがわかる。
【0088】
(実施例8:加工食品(鶏肉団子)の製造(4))
以下の表12に示す食品素材に対し、比較例1、実施例1、実施例2および実施例3で得られたグルテン試料(C1)および(E1)〜(E3)を1質量部の割合で添加し、1個あたり30gの鶏肉団子タネに分け、これらを蒸し器(温度:90℃)で9分間蒸し上げて鶏肉団子を得た。
【0089】
【表12】
【0090】
次いで、得られた各鶏肉団子の質量を測定し、これにより、蒸し上げ前の質量に対する蒸し上げ後の質量(g;測定値)の比を百分率([蒸し上げ後(g)/蒸し上げ前(g)]×100(%))で算出し、これらを蒸し後の歩留まりとした。さらに、得られた鶏肉団子を一旦急速冷凍し、その後4分間ボイルした。この鶏肉団子について、当該技術分野における専門家パネル5名が食し、JIS Z9080:2004(官能評価分析−方法)に準拠して、マグニチュード推定(ISO 11056)により、表13に示す「柔らかさ」および表2に示す「肉粒感」の2項目について、各5段階尺度の基準に従って評価し、各評価結果を集計して、これらを当該専門家全員の合意による最終結果の点数として調整かつ決定した。また、円卓法により、各グルテン試料を添加した際の特徴を記録した。
【0091】
【表13】
【0092】
さらに、上記ボイル後の鶏肉団子の質量を測定し、これにより、ボイル前の質量に対するボイル後の質量(g;測定値)の比を百分率([ボイル後(g)/ボイル前(g)]×100(%))で算出し、これらをボイル後の歩留まりとした。得られた評価を表14に示す。
【0093】
【表14】
【0094】
表14に示すように、実施例1〜3で得られたグルテン試料(E1)〜(E3)を添加した鶏肉団子は、蒸し上げまたはボイルのいずれの調理方法を用いた場合であっても、比較例1のものと比較して歩留まりが高く、かつ柔らかさおよび肉粒感の両方において優れたものであったことがわかる。特に、燻煙処理に要した時間がより長い実施例2や3のグルテン試料を用いた場合は、鶏肉団子の柔らかさが向上し、当該グルテン試料が鶏肉団子の食感向上に大きな影響を及ぼしていたことがわかる。
【0095】
(実施例9:加工食品(多加水食パン)の製造(5))
対照区およびグルテン添加区について、以下の表15に示す食品素材を計量し、混合した。なお、グルテン添加区については3種類のサンプルを準備し、各サンプルに、グルテンとして比較例1、実施例1または実施例2で得られたグルテン試料を使用した。
【0096】
【表15】
【0097】
次いで、この混合物を、ホームベーカリー(三洋電機株式会社製SPM−KP1)に入れ、小麦食パンコースを選択して焼き上げることにより、多加水食パンを得た。
【0098】
得られた多加水食パンについて、当該技術分野における専門家パネル5名が食し、JIS Z9080:2004(官能評価分析−方法)に準拠して、マグニチュード推定(ISO 11056)により、表16に示す「弾力」、表17に示す「口溶け」、および上記表4に示す「穀物臭」の3項目について、各5段階尺度の基準に従って評価し、各評価結果を集計して、これらを当該専門家全員の合意による最終結果の点数として調整かつ決定した。また、円卓法により、各グルテン試料を添加した際の特徴を記録した。
【0099】
【表16】
【0100】
【表17】
【0101】
得られた評価を表18に示す。
【0102】
【表18】
【0103】
表18に示すように、実施例1および2で得られたグルテン試料(E1)および(E2)を添加した多加水食パンは、弾力、口溶けおよび穀物臭のすべてにおいて比較例1の試料を添加したものやグルテン無添加(対照区)のものと比較して優れた結果を示していた。特に所定時間をかけて燻煙処理したグルテンを用いることにより(実施例1および2)、多加水食パンの口溶けが向上し、明らかに当該食パンの物理的性質が改変されていたことがわかる。
【0104】
(実施例10:加工食品(鶏唐揚げ)の製造(6))
以下の表19に示す成分をそれぞれ混合することにより、実施例1のグルテン試料(E1)を分散させた複数のピックル液P1〜P5を調製した。また、実施例1のグルテン試料(E1)を分散させることなく、表19に示す成分で構成される、ピックル液PC1(対照区用)を調製した。さらに、実施例1のグルテン試料(E1)の代わりに比較例1のグルテン試料(C1)を添加した、表19に示す成分で構成されるピックル液PC2(対照区用)を調製した。
【0105】
【表19】
【0106】
次いで、鶏のムネ肉を40gの大きさにカットし、上記で得られたピックル液P1〜P5のそれぞれに9℃で1.5時間かけてタンブリング(ムネ肉:ピックル液=100:25(質量比))し、液切りを行った。タンブリング前後の各試験区のムネ肉の質量を測定し、これにより、タンブリング前の質量に対するタンブリング後の質量(g;測定値)の比を百分率([タンブリング後(g)/タンブリング前(g)]×100(%))で算出し、これらをタンブリング後の歩留りとした。そして、タンブリングを終えたムネ肉を、表20に示すバッター配合を用いてバッターリングを行い、それぞれ175℃で4.5分間フライして鶏唐揚げを作製した。さらに、上記ピックル液P1〜P5の代わりにピックル液PC1またはPC2を用いたこと以外は上記と同様にして、ムネ肉から鶏唐揚げ(無添加)を作製した。
【0107】
【表20】
【0108】
得られた鶏唐揚げを急速冷凍し、その後電子レンジ(1000W、50秒間を2回)でレンジアップした。この鶏唐揚げについて、当該技術分野における専門家パネル5名が食し、JIS Z9080:2004(官能評価分析−方法)に準拠して、マグニチュード推定(ISO 11056)により、表21に示す「衣の結着性」について、各5段階尺度の基準に従って評価し、各評価結果を集計して、これらを当該専門家全員の合意による最終結果の点数として調整かつ決定した。得られた結果を表22に示す。
【0109】
【表21】
【0110】
【表22】
【0111】
表22に示すように、上記実施例1のグルテン試料(E1)を含有するピックル液P1〜P5のいずれを用いた場合も、鶏唐揚げの衣の結着性が、無添加および比較例1のものと比較して大幅に向上していたことがわかる。また、比較例1の試料を添加したピックル液は、調製時にグルテンが分散することなくダマを形成していた。さらに、タンブリング後もダマ状のままで鶏肉表面に付着しており、グルテンが均一に分散せず、かつ鶏肉に浸透していなかった。このことは、タンブリング前後の歩留りの結果にも現れており、実施例1の試料を添加したピックル液でタンブリングしたムネ肉は、溶解したグルテンと水が浸潤し歩留りが向上することが示された。
【0112】
(実施例11:加工食品(うどん)の製造(7))
以下の表23に示す食品素材に対し、比較例1、実施例1および実施例2で得られたグルテン試料(C1)、(E1)および(E2)を2質量部の割合で添加し、麺の切刃は麺厚2.5mmとし、No.9角型を用いて製麺することにより、うどんを作製した。さらに、これらのグルテン試料を添加していない食品素材のみからなるうどん(無添加)も得た。
【0113】
【表23】
【0114】
次いで、得られたうどんを、それぞれ沸騰水の中で14分間茹で、充分に湯切りした後、冷水で洗浄し、氷水で1分間しめて、茹でうどんを作製した。この茹でうどんについて、当該技術分野における専門家パネル5名が食し、「硬さ」および「弾力」の2項目について、JIS Z9080:2004(官能評価分析−方法)に準拠して、マグニチュード推定(ISO 11056)により、以下表24および25に記載のように各5段階尺度の基準に従って評価し、各評価結果を集計して、これらを当該専門家全員の合意による最終結果の点数として調整かつ決定した。また、円卓法により、各グルテン試料を添加した際の特徴を記録した。得られた結果を表26に示す。
【0115】
【表24】
【0116】
【表25】
【0117】
【表26】
【0118】
表26に示すように、実施例1および2で得られたグルテン試料(E1)および(E2)を添加したうどんは、硬さおよび弾力の両方において比較例1の試料を添加したものやグルテン無添加(対照区)のものと比較して優れた結果を示していた。また、実施例1のグルテン試料(E1)と比較して、燻煙時間を延長して得られた実施例2のグルテン試料(E2)を用いた場合、うどんの硬さおよび弾力がさらに向上していたことがわかる。
【0119】
一方、上記で得られた各茹でうどんの物性について、株式会社島津製作所製Ez−testにより楔形治具を使用し、貫入速度100mm/分で測定した。結果を
図6に示す(なお、
図6中、実施例1の試料を用いて得た茹でうどんを「実施例1」として表し、実施例2の試料を用いて得た茹でうどんを「実施例2」として表し、比較例1の試料を用いて得た茹でうどんを「比較例1」として表し、そしてグルテン無添加(対照区)の茹でうどんを「無添加」として表す)。
【0120】
図6に示すように、無添加および比較例1の結果に比べて、実施例1および2の結果は、うどんに治具を押し込んだ場合に得られる荷重(N)が増加する傾向を示した。このことは、実施例2の試料を用いた茹でうどんが最も硬く、次いで、実施例1の試料を用いた茹でうどん、比較例1の試料を用いた茹でうどん、およびグルテン無添加(対照区)の茹でうどんの順に硬さが低下していたことがわかる。