【解決手段】レーザ光を発生させて投光するレーザダイオード10と、レーザダイオード10が投光したレーザ光、および、外部からの光が通過する光透過性の筐体窓と、筐体窓を通過して入射する光を検出するフォトダイオード20と、レーザ光の非照射時にフォトダイオード20が検出する受光レベルを表す非照射時受光レベルが、正常時のノイズレベルよりも低下していると判断したことに基づいて、筐体窓に汚れが付着していると判断する汚れ判断部83とを備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、装置外部の物体で反射して生じた外部反射光を受光する受光センサを用いて、筐体窓に汚れが付着しているか否かを判定する。筐体窓に汚れが付着しており、その汚れで反射して生じた反射光は、光路長が短いので減衰が少ない。そのため、受光強度が高いので、受光センサが飽和してしまう可能性がある。
【0007】
受光センサが飽和する場合としては、筐体窓の照射光が通過する範囲の全部に汚れが付着している場合に限らない。照射光が通過する範囲の一部に汚れが付着している場合にも、その汚れによる反射光で受光センサが飽和してしまう可能性がある。
【0008】
照射光の一部が筐体窓の汚れにより反射して受光センサが飽和しても、照射光の残りは外部へ照射され、外部へ照射された照射光が外部の物体で反射して生じた反射光が受光センサに到達する場合があるが、汚れにより反射光の飽和現象が起きていると、物体からの反射光もそれに融合してしまい、結果として物体からの反射光を検出できない時間(センシング不可能時間)が生じる恐れがある。したがって、照射光を照射せずに筐体窓の汚れを検出する技術が望まれる。
【0009】
本発明は、この事情に基づいて成されたものであり、その目的とするところは、照射光を照射せずに筐体窓の汚れを検出できるレーザレーダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は独立請求項に記載の特徴の組み合わせにより達成され、また、下位請求項は、発明の更なる有利な具体例を規定する。特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0011】
上記目的を達成するための請求項1に係る発明は、レーザ光を発生させて投光する投光部(10)と、投光部が投光したレーザ光、および、外部からの光が通過する光透過性の筐体窓(3)と、筐体窓を通過して入射する光を検出する受光部(20)と、レーザ光の非照射時に受光部が検出する受光レベルを表す非照射時受光レベルが、正常時のノイズレベルよりも低下していると判断したことに基づいて、筐体窓に汚れが付着していると判断する汚れ判断部(83)とを備えるレーザレーダ装置である。
【0012】
本発明によれば、非照射時受光レベルが正常時のノイズレベルよりも低下しているか否かにより、筐体窓に汚れが付着しているか否かを判断する。非照射時受光レベルを用いているので、照射光を照射せずに筐体窓の汚れを検出できる。
【0013】
請求項2に係る発明では、投光部は、周期的にレーザ光を投光し、
汚れ判断部は、投光部がレーザ光を投光した後にレーザ光が外部の物体で反射して生じた反射光を受光する可能性がある期間である受光期間と、次の受光期間の間をレーザ光の非照射時として、判断を行う。
【0014】
この発明では、受光期間と次の受光期間との間に受光部が検出した受光レベルを非照射時受光レベルとして用いるので、物体検出の影響を受けずに筐体窓に汚れが付着しているか否かをより正確に判断できる。
【0015】
請求項3に係る発明では、投光部が投光したレーザ光を、照射方向を変化させつつ装置外部に照射するとともに、レーザ光を照射する方向に対応して、受光部が検出する反射光の角度範囲である受光視野範囲を走査する走査部(50、60)を備え、汚れ判断部は、走査部が受光視野範囲を走査している状態で、互いに異なる受光視野範囲において非照射時受光レベルを比較し、相対的に非照射時受光レベルが低下している受光視野範囲があると判断した場合、非照射時受光レベルが正常時のノイズレベルよりも低下していると判断する。
【0016】
この発明によれば、受光視野範囲を走査している間の非照射時受光レベルを互いに比較する。筐体窓に汚れが付着している部分が受光視野範囲に含まれていると、受光視野範囲の非照射時受光レベルは、汚れにより、筐体窓に汚れが付着していない受光視野範囲の非照射時受光レベルよりも低下する。したがって、受光視野範囲を走査し、互いに異なる受光視野範囲における非照時受光レベルを比較することで、筐体窓に汚れが付着しているかを判断できる。
【0017】
また、このように、異なる受光視野範囲における非照射時受光レベルを比較すれば、装置外部の明るさの影響を受けにくくなる。したがって、本発明によれば、天候等により、装置外部の明るさが変化しても、精度よく、筐体窓に汚れが付着しているか否かを判断できる。
【0018】
請求項4に係る発明では、レーザ光が筐体窓を通過するときのサイズを投光スポットサイズとし、受光部に受光される反射光が筐体窓を通過する大きさである受光視野サイズとしたとき、汚れ判断部は、受光視野範囲を全走査角度範囲に渡り走査したうちで非照射時受光レベルが最も高い範囲に基づいて、正常時のノイズレベルを決定し、非照射時受光レベルが、正常時のノイズレベルに受光視野サイズに対する投光スポットサイズの比を乗じた値以上に、正常時のノイズレベルから低下している場合に、相対的に非照射時受光レベルが低下していると判断する。
【0019】
非照射時受光レベルは、受光視野サイズに対する、汚れが付着している面積の比率に応じて低下し、投光の影響は受けない。しかし、筐体窓に汚れが付着していると、投光するレーザ光も汚れにより遮られる。よって、筐体窓に付着している汚れの大きさが、投光スポットサイズ以上になれば、物体検出性能に大きく影響する。一方、投光スポットサイズよりも小さい汚れであれば、物体検出性能に与える影響は小さい。
【0020】
そこで、本発明では、受光視野範囲を全走査角度範囲に渡り走査したうちで非照射時受光レベルが最も高い範囲に基づいて正常時のノイズレベルを決定する。そして、非照射時受光レベルが、正常時のノイズレベルに、受光視野サイズに対する投光スポットサイズの比を乗じた値以上に、正常時のノイズレベルから低下しているか否かを判断する。これにより、投光スポットサイズ以上の大きさの汚れが付着しているか否かを判断できる。よって、物体検出性能に大きく影響を与えるサイズの汚れが筐体窓に付着しているか否かを精度よく判断できる。
【0021】
請求項5に係る発明では、汚れ判断部は、相対的に非照射時受光レベルが低下している受光視野範囲を、筐体窓に汚れが付着している角度範囲であるとする。これにより、筐体窓のどこに汚れが付着しているかを決定することもできる。
【0022】
請求項6に係る発明では、汚れ判断部は、筐体窓に汚れが付着していない状態においてレーザ光の非照射時に受光部が検出する受光レベルよりも低いレベルにノイズ閾値を設定し、ノイズ閾値よりも非照射時受光レベルが低い場合に、非照射時受光レベルが正常時のノイズレベルよりも低下していると判断する。
【0023】
レーザ光を投光していないとき、筐体窓に汚れが付着していなければ、受光レベルは、外部の明るさに応じたレベルになる。このレベルはノイズレベルであり、筐体窓に汚れが付着していない正常時に検出される非照射時の受光レベルである。そこで、本発明では、ノイズ閾値を、筐体窓に汚れが付着していない状態においてレーザ光の非照射時に受光部が検出する受光レベルよりも低いレベルに設定する。
【0024】
受光視野範囲の筐体窓に汚れが付着していると、その汚れに遮られて、筐体窓を通過する外部光の光量が低下する。よって、受光視野範囲の筐体窓に汚れが付着していないときよりも、非照射時受光レベルが低下する。よって、本発明のように、非照射時受光レベルとノイズ閾値とを比較することで、筐体窓に汚れが付着しているか否かを判断することができる。
【0025】
請求項7に係る発明では、投光部が投光したレーザ光を、照射方向を変化させつつ装置外部に照射するとともに、レーザ光を照射する方向に対応して、受光部が検出する反射光の角度範囲である受光視野範囲を走査する走査部(50、60)を備え、汚れ判断部は、非照射時受光レベルがノイズ閾値よりも低くなった受光視野範囲を、筐体窓に汚れが付着している角度範囲であるとする。このようにすれば、筐体窓のどこに汚れが付着しているかを決定することもできる。
【0026】
請求項8に係る発明では、汚れ判断部は、同じ受光視野範囲に対して、予め設定された時間以上、継続して非照射時受光レベルが正常時のノイズレベルよりも低下していると判断したことに基づいて、筐体窓に汚れが付着していると判断する。
【0027】
筐体窓に付着している汚れは拭き取られない限り、付着したままである。そのため、ある受光視野範囲における非照射時受光レベルが正常時のノイズレベルよりも低下した原因が、筐体窓に付着した汚れであれば、その後も継続的に、その受光視野範囲における非照射時受光レベルは正常時のノイズレベルよりも低下する。
【0028】
一方、非照射時受光レベルが正常時のノイズレベルよりも低下した原因が、人等の移動体によりできた影が筐体窓に投影されたためであれば、移動体が移動することにより、その受光視野範囲における非照射時受光レベルは正常時のノイズレベルに戻る。
【0029】
よって、本発明のようにすれば、人等の移動体によりできた影が筐体窓に投影された場合にも、筐体窓に汚れが付着していると誤判定してしまうことを抑制できる。
【0030】
請求項9に係る発明では、汚れ判断部は、受光視野範囲を全走査範囲に渡り複数回走査して、汚れが付着している角度範囲を複数回決定し、汚れが付着している角度範囲が移動していなければ、当該範囲を汚れが付着している角度範囲として確定させる一方、汚れが付着している角度範囲が移動していれば、当該範囲は汚れが付着している範囲ではないとする。
【0031】
筐体窓に付着した汚れは移動しない。したがって、筐体窓に汚れが付着しているのであれば、汚れが付着しているとした角度範囲は変化しないはずである。よって、汚れが付着しているとした角度範囲が移動している場合には、人等の移動体によりできた影が筐体窓に投影されたことにより、汚れが付着している角度範囲に誤って決定してしまったと推定できる。そこで、本発明では、汚れが付着している角度範囲が移動していれば、当該範囲は汚れが付着している範囲ではないとする。これにより、人等の移動体によりできた影が筐体窓に投影されたことにより、汚れが付着していると誤判定してしまうことを抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
<第1実施形態>
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、第1実施形態のレーザレーダ装置1は、屋外に設置されて、このレーザレーダ装置1の監視エリア内を移動する物体までの距離や方位を検出する。検出すべき対象としている物体(以下、検出対象物体)は、人、車などの移動体である。監視エリアは、たとえば、レーザレーダ装置1の位置を半円の中心とする半径30メートルの略半円形のエリアである。
【0034】
レーザレーダ装置1は、筐体2および筐体窓3により形成される装置内部空間に、レーザダイオード10、フォトダイオード20などが収容されている。筐体2は、筐体窓3が取り付けられる部分が開口する箱型の形状である。
【0035】
筐体窓3は、光透過性部材で構成されており、筐体2に取り付けられている。筐体窓3が取り付けられている水平面周りの範囲は、レーザレーダ装置1の正面方向を中心として、走査角度範囲あるいは走査角度範囲よりも大きい角度範囲である。走査角度範囲は、本実施形態では190度である。なお、レーザレーダ装置1の正面方向は、筐体窓3を2等分する垂直断面においてレーザレーダ装置1の内部から筐体窓3に向かう方向である。
【0036】
投光部であるレーザダイオード10は、パルスレーザ光(以下、照射光L0)を投光する。受光部であるフォトダイオード20は、筐体窓3を通過してこのフォトダイオード20に入射する光を検出し電気信号に変換して出力する。この電気信号の大きさは、フォトダイオード20が受光した光の光量を表しているので、フォトダイオード20が出力する電気信号を受光信号とし、受光信号の大きさを受光レベルとする。フォトダイオード20に入射する光としては、照射光L0が装置外部の物体で反射されて生じた反射光L1や太陽光などがある。
【0037】
レーザダイオード10の光軸上にはコリメートレンズ30および穴あきミラー40が設けられている。コリメートレンズ30は、レーザダイオード10が投光した照射光L0を平行光に変換する。
【0038】
穴あきミラー40は、平板状であって、レーザダイオード10の光軸上に、その光軸に対し所定角度で傾斜して配置されている。穴あきミラー40の下側の面は反射面41となっている。反射面41の角度は、反射光L1をフォトダイオード20の方向へ反射できる角度となっている。
【0039】
穴あきミラー40の中心には、上下方向に貫通する貫通穴42が形成されている。この貫通穴42がレーザダイオード10の光軸上に位置するように、穴あきミラー40は配置されている。
【0040】
穴あきミラー40を通過する照射光L0の光軸上には、回転ミラー50が設けられている。回転ミラー50は、レーザダイオード10の光軸方向に延びる中心軸を中心として回動可能に配設される。
【0041】
回転ミラー50は、貫通穴42を通過した照射光L0の経路上に配置される平面反射部51と、その平面反射部51が固定される凹面反射部52とを備える。平面反射部51は、貫通穴42を通過した照射光L0が照射される面が平面かつ鏡面になっており、貫通穴42を通過した照射光L0を偏向して、筐体窓3から装置外部に向けて照射する。
【0042】
筐体窓3を通過するときの照射光L0の通過面積は、コリメートレンズ30の特性などにより調整できる。以下、筐体窓3を通過するときの照射光L0の通過面積を投光スポットサイズとする。投光スポットサイズは、たとえば、7〜10mmφである。
【0043】
凹面反射部52は、反射光L1が入射する面が凹面かつ鏡面になっている。この形状により、凹面反射部52は、筐体窓3の一定範囲を通過した反射光L1を偏向して、反射光L1を反射面41に集光する。反射面41に集光された反射光L1は、その反射面41でフォトダイオード20の方向へ反射される。よって、上記一定範囲を通過した反射光L1がフォトダイオード20に受光されることになる。
【0044】
以下、この一定範囲、すなわち、フォトダイオード20に受光される反射光L1が筐体窓3を通過する範囲を受光視野とし、受光視野の大きさを受光視野サイズとし、受光視野の水平角度範囲を受光視野範囲とする。受光視野の形状は、たとえば円形である。また、受光視野サイズは、たとえば、30〜40mmφである。
【0045】
受光視野サイズは前述の投光スポットサイズに比較して大きい。この理由は、検出対象物体の表面で拡散反射して生じた反射光L1を受光できるようにすることで、物体検出感度を高くするためである。
【0046】
モータ60は、回転軸61を回転させることで、回転軸61と連結された回転ミラー50を回転駆動する。この回転軸61はモータ60の回転軸であるとともに、回転ミラー50がこの回転軸61の回転により回転させられるので、回転ミラー50の回転軸になっている。モータ60により回転ミラー50が回転させられている状態で、この回転ミラー50に照射光L0が逐次入射すると、照射光L0は、回転ミラー50の回転に応じて照射方向を変化させしつつ(すなわち走査されつつ)、装置外部に照射される。また、回転ミラー50が回転させられると、照射方向とともに、受光視野範囲も変化させられる。よって、回転ミラー50とモータ60は走査部に相当する。なお、走査方向は水平方向である。
【0047】
回転角度位置センサ62は、回転軸61の回転角度位置、すなわち回転ミラー50の回転角度位置を検出する。この回転角度位置センサ62には、ロータリーエンコーダなど、回転軸61の回転角度位置を検出しうるものであれば様々な種類のものを使用できる。
【0048】
回路部70は、筐体2の内部の要素であるレーザダイオード10、フォトダイオード20、モータ60、回転角度位置センサ62と接続されている。また、回路部70は、レーザレーダ装置1の外部に配置されたコントローラ90とも接続されている。回路部70の構成は
図2を用いて後述する。
【0049】
コントローラ90は、レーザレーダ装置1の状態を監視する装置である。また、コントローラ90は、レーザレーダ装置1の制御を行うようになっていてもよい。このコントローラ90は家屋内に設置される。
【0050】
次に、回路部70の構成を説明する。回路部70は、
図2に示すように、LD駆動回路71、増幅器72、モータ駆動回路73、記憶部74、制御部80を備えている。LD駆動回路71は、レーザダイオード10を駆動させる回路である。増幅器72は、フォトダイオード20が出力した受光信号を、一定の増幅率で増幅して制御部80に出力する。モータ駆動回路73は、モータ60に電流を出力してモータ60を回転させる回路である。記憶部74は、書き換え可能な構成であり、受光レベルを一時的に記憶するためなどに用いられる。
【0051】
制御部80は、CPU、ROM、RAM、ASIC、CPLD、コンパレータ等の回路を備えている。制御部80は、たとえば、CPUが、RAMの一時記憶機能を利用しつつ、ROMに記憶されているプログラムを実行するなど、回路の一部または全部を使用することで、
図2に示すように、投光制御部81、測距部82、汚れ判断部83として機能する。
【0052】
投光制御部81は、回転角度位置センサ62から入力される信号に基づいて回転ミラー50の回転角度位置を判断しつつ、その回転ミラー50が一定速度で回転するようにモータ駆動回路73を制御する。さらに、投光制御部81は、LD駆動回路71に発光指令を出力して、レーザダイオード10にレーザ光をパルス状に一定周期で発生させる。回転ミラー50が一定速度で回転していることから、レーザ光を一定周期で発生させることにより、照射光L0は一定角度毎に装置外部に照射される。この一定角度は、たとえば0.25度である。
【0053】
測距部82は、照射光L0を発光してから受光信号を検出するまでの時間から、監視エリア内に存在する検出対象物体までの距離を算出する。また、照射光L0を照射したときの回転ミラー50の回転角度位置から、検出対象物体が存在する方位を決定する。
【0054】
汚れ判断部83は、照射光L0の非照射時にフォトダイオード20が検出する受光レベルを表す非照射時受光レベルに基づいて、筐体窓3に汚れが付着しているか否かを判断する。本実施形態では、非照射時は、周期的に照射光L0を照射している状態において、照射光L0を照射した後に反射光L1を受光する可能性がある期間である受光期間と、次の受光期間との間を非照射時とする。
図3には、受光期間と非照射時を図示している。
【0055】
非照射時の開始時点すなわち受光期間の終了時点は、照射光L0を照射した時点から、ノイズレベル距離に存在する外部物体からの反射光L1を受光する可能性がある期間が経過した時点である。ここで、ノイズレベル距離は、外部物体からの反射光L1の強度がノイズレベルまで低下する距離であり、具体的な距離は、照射光L0の強度、ノイズとするレベルに基づいて、予め設定される。受光期間の終了時点は、次の照射光L0を照射する時点である。
【0056】
図4に示すように、昼間であれば、非照射時には、太陽光が筐体窓3を通過して装置内部に入り、凹面反射部52で反射され、
図4には図示しないフォトダイオード20に検出される。
図5は、受光視野範囲となる筐体窓3に汚れが付着していない場合における、非照射時の時間帯を拡大して示す図である。このときの受光レベルは、正常時のノイズレベルである。
【0057】
ここで、
図6に示すように、筐体窓3に汚れ100が付着した場合を考える。筐体窓3に汚れ100が付着すると、太陽光の一部は汚れ100で遮られて、筐体窓3を通過しない。
図6に示す一点鎖線は、汚れ100により遮られて、筐体窓3を通過できない太陽光を概念的に示している。
【0058】
汚れ100により太陽光が通過できない部分が受光視野に含まれていると、
図7に示すように、非照射時受光レベルが、正常時のノイズレベルよりも低下する。このことを利用して、汚れ判断部83は、筐体窓3に汚れ100が付着しているか否かを判断する。
【0059】
汚れ判断部83の処理は、
図8、
図9を用いて説明する。
図8は、非照射時受光レベルを記憶する処理であり、受光期間よりも短い周期で周期的に実行する。ステップ(以下、ステップを省略)S1では、受光期間が経過したか否かを判断する。受光期間が経過したことは、非照射時の開始を意味する。このS1の判断は、照射光L0を照射した時点からの経過時間で判断する。この判断がNOであれば
図8の処理を終了する。一方、S1の判断がYESであればS2へ進む。
【0060】
S2では、増幅器72が出力した信号を取得して非照射時受光レベルとする。すなわち、本実施形態では、増幅器72により増幅された後の値を、フォトダイオード20が検出する受光レベルを表す値として用いる。また、回転角度位置センサ62が検出した回転角度位置に基づいて、このときの受光視野範囲を決定する。そして、これら受光視野範囲と非照射時受光レベルとを対応付けて記憶部74に記憶する。
【0061】
続くS3では、投光タイミングとなったか否かを判断する。この判断がNOであればS2に戻り、再び、受光視野範囲と非照射時受光レベルを記憶する。このS2、S3の繰り返しにより、受光期間と受光期間との間の1つの非照射期間における、受光視野範囲と、その受光視野範囲に対する非照射時受光レベルとが逐次記憶される。S3の判断がYESであれば
図8の処理を終了する。
【0062】
図9は、受光視野範囲を全走査角度範囲に渡り走査する毎に実行する。なお、走査角度範囲は前述したように、本実施形態では190度である。照射角度ピッチが0.25度であれば、全走査角度範囲の走査が行われる間に、760回、
図8の処理が実行されて受光視野範囲と非照射時受光レベルとが記憶部74に記憶される。
【0063】
S11では、受光視野範囲が全走査角度範囲に渡り1回走査されたうちで、非照射時受光レベルが最も高いレベル範囲を決定し、このレベル範囲を正常時のノイズレベルの範囲とする。筐体窓3に全面に汚れ100が付着していない限り、非照射時受光レベルが最も高いレベル範囲は、筐体窓3に汚れ100が付着していない受光視野範囲であると考えられる。そこで、受光視野範囲が全走査角度範囲に渡り走査されたうちで、非照射時受光レベルが最も高いレベル範囲を決定するのである。このレベル範囲は、たとえば、最も高い受光レベルから一定値低下したレベルまでとする。また、最も高い受光レベルに1よりも小さい、0.9などの予め設定した係数を乗じた値を、レベル範囲の下限としてもよい。
【0064】
続くS12では、S11で決定した正常時のノイズレベル範囲に基づいて、汚れ判断受光レベルを決定する。本実施形態では、正常時のノイズレベル範囲の下限、および、受光視野サイズに対する投光スポットサイズの比を用いて汚れ判断受光レベルを決定する。
【0065】
具体的には、正常時のノイズレベルの下限に、受光視野サイズに対する投光スポットサイズの比を乗じた値を算出する。そして、この値を正常時のノイズレベルの下限から引いた値を汚れ判断受光レベルとする。
【0066】
このようにして汚れ判断受光レベルを決定する理由を説明する。この汚れ判断受光レベルは、非照射時受光レベルと比較する値であり、筐体窓3に汚れ100が付着しているか否かを判断するために用いる。非照射時受光レベルは、受光視野に占める汚れ100が付着している面積の比率に応じて低下する値であり、投光の影響は受けない。
【0067】
しかし、筐体窓3に汚れ100が付着していると、受光時だけでなく、照射光も汚れ100により遮られる。筐体窓3に付着している汚れ100の大きさが、投光スポットサイズ以上になれば、物体検出性能に大きく影響する。一方、投光スポットサイズよりも小さい汚れ100であれば、物体検出性能に与える影響は小さくなる。
【0068】
そこで、正常時のノイズレベルの下限に、受光視野サイズに対する投光スポットサイズの比を乗じた値を算出し、この値を正常時のノイズレベルの下限から引いて汚れ判断受光レベルとする。このようにして汚れ判断受光レベルを決定すると、投光スポットサイズ分の汚れが付着していることを判断できる。
【0069】
図10は、
図8の処理により記憶部74に記憶された一回分の全走査角度範囲についての、受光視野範囲と非照射時受光レベルとを示すグラフである。この
図10に、S11で決定する正常時のノイズレベル範囲とS12で決定する汚れ判断受光レベルを例示している。
【0070】
S13では、受光視野範囲が全走査角度範囲に渡り1回走査されたうちで、非照射時受光レベルがS12で決定した汚れ判断受光レベル以下となっている区間を汚れ付着区間に決定する。
図10には、このS13で決定した汚れ付着区間を例示している。
【0071】
この汚れ付着区間は、正常時のノイズレベルよりも有意に受光レベルが低下していると判断した区間であり、また、受光視野範囲を走査している間に検出される非照射時受光レベルが相対的に低下していると判断した区間を意味する。
【0072】
受光視野範囲を走査している間は、装置外部の明るさの変化は少ないと考えられる。よって、非照射時受光レベルが相対的に低くなる原因は、筐体窓3に汚れ100が付着しているからであると推定できる。そこで、非照射時受光レベルがS12で決定した汚れ判断受光レベル以下となっている区間を汚れ付着区間とする。
【0073】
S14では、S13で決定した汚れ付着区間に基づいて、汚れ付着受光視野範囲を決定する。汚れ付着受光視野範囲は、筐体窓3に汚れ100が付着している受光視野範囲を意味する。
図10は、図示の便宜上、曲線により、受光視野範囲に対する非照射時受光レベルを示している。しかし、実際に記憶部74に記憶されるデータは、受光視野範囲とそれに対応する非照射時受光レベルであるので、離散的なデータである。また、受光視野範囲は、一定の角度範囲を持っており、走査角度ピッチは受光視野範囲よりも小さい角度であるので、記憶部74に記憶されている受光視野範囲は、互いに重複する角度範囲になっている。したがって、S13で決定した区間は、直接的には、汚れ付着受光視野範囲を表していない。そこで、このS14で、S13で決定した汚れ付着区間に基づいて、汚れ付着受光視野範囲を決定するのである。たとえば、連続する汚れ付着区間の両端の受光視野範囲を決定し、その2つの受光視野範囲の最小値から最大値までを汚れ付着受光視野範囲に決定する。
【0074】
S15では、S14で決定した汚れ付着受光視野範囲、および、筐体窓3に汚れ100が付着していることを、コントローラ90に通知する。この通知を取得したコントローラ90は、たとえば、筐体窓3に汚れ100が付着していること、および、汚れ付着受光視野範囲を、所定の表示部に表示する。
【0075】
以上、説明した第1実施形態では、
図8の処理により、非照射時受光レベルを全走査角度範囲に渡り記憶しており、
図9のS11で正常時のノイズレベル範囲を決定する。この正常時のノイズレベル範囲に基づいて決定した汚れ判断受光レベルと非照射時受光レベルを比較することで、筐体窓3に汚れ100が付着しているか否かを判断している。つまり、非照射時受光レベルを用いて、筐体窓3に汚れが付着しているか否かを判断している。したがって、照射光を照射せずに筐体窓3の汚れ100を検出できる。
【0076】
さらに、本実施形態では、
図8の処理により、
図3に図示したように、非照射時受光レベルを、照射光L0を照射した後に反射光L1を受光する可能性がある期間である受光期間と次の受光期間との間の非照射時に検出する。よって、物体検出に影響を与えずに、筐体窓3に汚れ100が付着しているか否かを判断できる。
【0077】
また、本実施形態では、
図9の処理により、受光視野範囲を走査している間の非照射時受光レベルを比較して、相対的にレベルが低くなっている受光視野範囲に、筐体窓3に汚れ100が付着していると判断する。このように、異なる受光視野範囲における非照射時受光レベルを比較することで、装置外部の明るさの影響を受けにくくなる。よって、天候等により、装置外部の明るさが変化しても、精度よく、筐体窓3に汚れ100が付着しているか否かを判断できる。
【0078】
また、本実施形態では、受光視野範囲を全走査角度範囲に渡り走査したうちで非照射時受光レベルが最も高い範囲を正常時のノイズレベル範囲としている(S11)。そして、正常時のノイズレベル範囲に対する下限に受光視野サイズに対する投光スポットサイズの比を乗じた値を算出し、その値を正常時のノイズレベル範囲の下限から引いて汚れ判断受光レベルとしている(S12)。この汚れ判断受光レベル以下の非照射時受光レベルがある場合に、筐体窓3に汚れ100が付着していると判断することになる。このようにすることで、投光スポットサイズ以上の大きさの汚れ100が付着しているか否かを判断できる。筐体窓3に付着している汚れ100の大きさが投光スポットサイズ以上になると、物体検出性能に与える影響が大きくなる。よって、本実施形態では、物体検出性能に影響を与える大きさの汚れ100が筐体窓3に付着しているか否かを精度よく判断できる。
【0079】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態を説明する。この第2実施形態以下の説明において、それまでに使用した符号と同一番号の符号を有する要素は、特に言及する場合を除き、それ以前の実施形態における同一符号の要素と同一である。また、構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分については先に説明した実施形態を適用できる。
【0080】
第2実施形態では、汚れ判断部83は、
図9の処理に代えて
図11の処理を実行する。
図11の処理では、まず、
図9と同じS11〜S14を実行する。続くS15Aでは、S14で決定した汚れ付着受光視野範囲を、記憶時刻とともに記憶部74に記憶する。
【0081】
S16Aでは、記憶部74から、一定時間、継続して汚れ付着受光視野範囲となっている受光視野範囲を抽出する。一定時間、継続して汚れ付着受光視野範囲となっている受光視野範囲を抽出するために、今回、S14で決定した汚れ付着受光視野範囲と、一定時間以上前に、記憶部74に記憶した汚れ付着受光視野範囲とを比較する。そして、抽出した受光視野範囲を、汚れ付着受光視野範囲として確定させる。
【0082】
一定時間は、移動体によりできた影が筐体窓3に映り込んだことにより非照射時受光レベルが低下した状態を、筐体窓3に汚れ100が付着したと誤判定してしまうことを避けるための時間である。一定時間を長くすればするほど誤判定を抑制できる一方、汚れ100が付着していると判断するまでの時間は長くなる。これらを考慮して、一定時間は適宜設定する。
【0083】
続くS17Aでは、S16Aで確定させた汚れ付着受光視野範囲、および、筐体窓3に汚れ100が付着していることを、コントローラ90に通知する。なお、もちろん、S16Aで確定させた汚れ付着受光視野範囲がない場合には、S17では通知を実行しない。
【0084】
この第2実施形態では、一定時間以上、継続して非照射時受光レベルが正常時のノイズレベルよりも低下している受光視野範囲を、汚れ付着受光視野範囲として確定させる(S16A)。受光視野範囲における非照射時受光レベルが正常時のノイズレベルよりも低下した原因が、筐体窓3に付着した汚れ100であれば、その後も継続的に、その受光視野範囲における非照射時受光レベルは正常時のノイズレベルよりも低下する。一方、非照射時受光レベルが正常時のノイズレベルよりも低下した原因が、人等の移動体によりできた影が筐体窓3に投影されたためであれば、移動体が移動することにより、その受光視野範囲における非照射時受光レベルは正常時のノイズレベルに戻る。
【0085】
したがって、この第2実施形態のようにすれば、人等の移動体によりできた影が筐体窓3に投影された場合に、筐体窓3に汚れ100が付着していると誤判定してしまうことを抑制できる。
【0086】
<第3実施形態>
第3実施形態では、汚れ判断部83は、
図9の処理に代えて
図12の処理を実行する。
図12の処理では、まず、
図9と同じS11〜S14を実行する。続くS15Bでは、S14で決定した汚れ付着受光視野範囲を、記憶時刻とともに記憶部74に記憶する。
【0087】
S16Bでは、汚れ付着受光視野範囲が移動しているか否かを判断する。この判断は、今回のS14で決定した汚れ付着受光視野範囲と、記憶部74に記憶されている、一定時間以上前の汚れ付着受光視野範囲とを比較して行う。ここでの一定時間は、第2実施形態のS16Aと同じでよい。
【0088】
比較の結果、汚れ付着受光視野範囲が同一範囲であれば、汚れ付着受光視野範囲は移動していないと判断し、汚れ付着受光視野範囲に同一でない範囲があれば、汚れ付着受光視野範囲は移動していると判断する。この判断がYESであればS17Bに進み、汚れ付着受光視野範囲に汚れ100は付着していないと判断する。
【0089】
一方、S16Bの判断がNOであればS18Bに進む。S18Bでは、筐体窓3に汚れ100が付着していると判断し、S14で決定した汚れ付着受光視野範囲を、汚れ付着受光視野範囲として確定させる。続くS19Bでは、S14で決定した汚れ付着受光視野範囲、および、筐体窓3に汚れ100が付着していることを、コントローラ90に通知する。
【0090】
この第3実施形態では、汚れ付着受光視野範囲が移動しているか否かを判断する(S16B)。そして、汚れ付着受光視野範囲が移動していなければ、当該範囲を汚れ100が付着している受光視野範囲として確定させる(S18B)。一方、汚れ付着受光視野範囲が移動していれば、当該範囲は汚れ100が付着している範囲ではないとする(S17B)。よって、第3実施形態でも、人等の移動体によりできた影が筐体窓に投影されたことにより、汚れ100が付着していると誤判定してしまうことを抑制できる。
【0091】
<第4実施形態>
これまでに説明した第1〜第3実施形態では、実際に検出した非照射時受光レベルに基づいて正常時のノイズレベル範囲を決定し、この正常時のノイズレベル範囲に基づいて汚れ判断受光レベルを決定していた。これに対して、第4実施形態では、汚れ判断受光レベルに代えて、予め設定したノイズ閾値を用いる。このノイズ閾値は、筐体窓3に汚れ100が付着していない状態において検出する受光レベルよりも低いレベルに設定している。このノイズ閾値の値を決定する際には、作業者が筐体窓3に汚れが付着していないことを確認した状態で受光レベルを検出する。
【0092】
第4実施形態では、汚れ判断部83は、
図9の処理に代えて
図13の処理を実行する。
図13の処理において、S21では、受光視野範囲が全走査角度範囲に渡り1回走査されたうちで、ノイズ閾値以下の非照射時受光レベルを決定する。
【0093】
続くS22では、非照射時受光レベルがノイズ閾値以下となっている受光視野範囲を汚れ付着受光視野範囲に決定する。なお、第4実施形態では、非照射時受光レベルがノイズ閾値以下である場合に、非照射時受光レベルが正常時のノイズレベルよりも低下していると判断していることになる。S23では、S22で決定した汚れ付着受光視野範囲、および、筐体窓3に汚れ100が付着していることを、コントローラ90に通知する。
【0094】
この第4実施形態では、非照射時受光レベルとノイズ閾値とを比較することで、筐体窓3に汚れ100が付着しているか否かを判断する。ノイズ閾値は予め設定した値であることから、簡単な処理で、筐体窓3に汚れ100が付着しているか否かを判断できる。
【0095】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の変形例も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。
【0096】
<変形例1>
第4実施形態でも、予め設定された時間以上、継続して非照射時受光レベルが正常時のノイズレベルよりも低下しているか否かを判断してもよい。この場合、S22で汚れ付着受光視野範囲を決定した後、第2実施系形態におけるS15A〜S17Aを実行する。
【0097】
<変形例2>
第4実施形態でも、汚れ100が付着している角度範囲が移動していれば、当該範囲は汚れ100が付着している範囲ではないと判断してもよい。この場合、S22で汚れ付着受光視野範囲を決定した後、第3実施形態におけるS15B〜S19Bを実行する。
【0098】
<変形例3>
図9のS12では、正常時のノイズレベルの下限に、受光視野サイズに対する投光スポットサイズの比を乗じた値を算出し、この値を正常時のノイズレベルの下限から引いて汚れ判断受光レベルとしていた。しかし、正常時のノイズレベルの下限に代えて、正常時のノイズレベルの平均値や中間値を用いてもよい。また、受光視野サイズに対する投光スポットサイズの比に代えて、他の1未満の数値を用いてもよい。
【0099】
<変形例4>
これまでの実施形態では、非照射時を、周期的に照射光L0を照射している状態における受光期間と次の受光期間との間としていた。しかし、照射光L0の周期的な照射を一時的に中止し、照射光L0の照射を中止している期間を非照射時としてもよい。
【0100】
<変形例5>
前述の実施形態では、走査角度範囲を190度としていたが、走査角度範囲は、360度、180度など、190度以外であってもよい。