【解決手段】掃引光源と、掃引光源の出力光の一部に所定の遅延時間差を与えて干渉させ補助干渉信号として出力する補助干渉計と、掃引光源の出力光の一部を被測定光ファイバに入力すると共に被測定光ファイバからの反射光と掃引光源の出力光の一部を干渉させ測定干渉信号として出力する測定干渉計と、補助干渉信号を用いて測定干渉信号に対して掃引光源の波長掃引の非線形を補正する線形化部と、線形化部の出力信号をフーリエ変換して周波数領域の信号を出力するフーリエ変換部と、を有する光周波数領域反射測定装置において、線形化部は各々異なる遅延時間を持つ複数の線形化部を有し、フーリエ変換部は複数の線形化部の出力信号に対してそれぞれ異なる重みをつけて加算しフーリエ変換された結果を出力する重み付き加算・フーリエ変換部を有する。
波長掃引された光を補助干渉計と被測定光ファイバを含む測定干渉計とに入力し、前記補助干渉計の出力信号を用いて前記測定干渉計の出力信号に対して波長掃引の非線形を補正する線形化処理を行なった後、フーリエ変換して周波数領域の信号を出力する光周波数領域反射測定方法において、各々遅延時間の異なる複数の線形化処理を行ない、複数の線形化処理された信号を重み付き加算し、フーリエ変換して周波数領域の信号を出力する
光周波数領域反射測定方法。
【背景技術】
【0002】
以下に基本構成を説明する。関連技術では、光周波数領域反射測定法(Optical Frequency Domain Reflectometry; OFDR)を用いた光ファイバの歪みや温度の測定が行なわれている。関連技術に係る光周波数領域反射測定法の基本構成を
図1(a)に示す。
【0003】
掃引光源1は時間に対して光周波数が直線的に変化するように波長掃引された光を出力する。測定干渉計4は、入力された光を2つに分岐し、一方の光を被測定光ファイバに入力する。そして、被測定光ファイバからの反射光と他方の光(基準光)とを合波して出力する。例えば、
図1(b)に示すように、入力光を光カプラ41aで2つに分岐し、一方の光を光サーキュレータ42aの第1端子に入力する。光サーキュレータ42aの第1端子に入力された光は第2端子から出力され、被測定光ファイバ43aに入力される。
【0004】
被測定光ファイバ43aからの反射光は光サーキュレータ42aの第2端子に入力され、第3端子から出力される。光サーキュレータ42aの第3端子から出力された光と、光カプラ41aで分岐した他方の光(基準光)とを光カプラ45aで合波して出力する。
【0005】
測定干渉計4から出力される光を受光器11に入力し、光の強度に比例した電気信号に変換する。ここで被測定光ファイバ43aからの反射光と基準光の干渉によるビートが電気信号として出力される。受光器から出力される電気信号はA/D変換器12によりディジタル信号に変換され、フーリエ変換部60にてフーリエ変換が行なわれる。
【0006】
図2(a)に示すように、被測定光ファイバ43aにa点,b点,c点の3つの反射点を想定し、被測定光ファイバ43aの近端o点からの距離をL
a,L
b,L
cとする。光カプラ41aから被測定光ファイバ43aの近端o点で反射して光カプラ45aまでの距離と、光カプラ41aから光カプラ45aまでの基準光の距離を等しくすると、被測定光ファイバ43aのa点で反射した光は基準光に比べてt
a=2nL
a/cだけ時間が遅れて光カプラ45aで合波される。
【0007】
ここでnは被測定光ファイバ43aの屈折率、cは光速である。同様にb点,c点で反射した光はt
b=2nL
b/c,t
c=2nL
c/cだけ時間が遅れる。基準光の光周波数ν
r,a点からの反射光の光周波数ν
a,b点からの反射光の光周波数ν
b,c点からの反射光の光周波数ν
cは
図2(b)のようになる。掃引光源1の出力光の単位時間当たりの光周波数変化量をSとすると、a点からの反射光と基準光の干渉によるビート周波数f
aは式1のように示される。同様にb点およびc点からの反射光と基準光の干渉によるビート周波数f
bおよびf
cは式2及び3となる。
【数1】
【数2】
【数3】
【0008】
式1〜3によって、受信信号をフーリエ変換すると、
図2(c)のように距離L
a,L
b,L
cに比例した周波数f
a,f
b,f
cのビート信号が観測される。なお、各点での反射率は十分小さいと仮定し、多重反射は無視している。以上のように、光周波数領域反射測定法によって、被測定光ファイバからの反射の長手方向の分布を測定することが出来る。
【0009】
線形化処理を含む構成を以下に説明する。光周波数領域反射測定法では、時間に対して光周波数が直線的に変化する波長掃引光源が必要であるが、実際の光源では直線からのずれが存在する。特に機械的に波長を掃引する外部共振器レーザの場合は完全に直線的に光周波数を変化させることが難しい。
【0010】
例えば、時間に対して光の波長が直線的に変化する掃引や、光の波長が正弦波的に変化する掃引の場合がある。正弦波的な掃引の場合は、正弦波のうちの比較的直線に近い領域のみを使用することにより、直線に近い掃引を得ることが出来るが、使用可能な波長範囲が狭くなる問題があった。このため、被測定光ファイバを含む測定干渉計とは別の補助干渉計を用意し、波長掃引の非線形を補正する手法が従来から提案されている。
【0011】
線形化処理を含む光周波数領域反射測定法の構成を
図3(a)に示す。光分岐部2は、掃引光源1からの光を2つに分岐し、補助干渉計3と測定干渉計4にそれぞれ入力する。補助干渉計3は、入力された光を2つに分岐し、それぞれ異なる遅延時間を与えて合波する。例えば、
図3(b)に示すように、入力光を光カプラ31aで2つに分岐し、一方は所定の長さの遅延ファイバ32aを経由し、他方は遅延ファイバ無しで、それぞれ光カプラ34aに入力され合波される。
【0012】
線形化部として機能する線形化手段5は、補助干渉計3の出力信号を用いて測定干渉計4の出力信号に対して掃引光源1の非線形を補正する線形化処理を行なう。例えば、
図3(c)に示すように、補助干渉計3の出力を受光器11’で電気信号に変換すると掃引速度に比例した周波数の正弦波のビート信号が得られる。サンプリングタイミング算出部として機能するサンプリングタイミング算出手段13は、前記正弦波の位相が一定間隔となるタイミングを出力する。例えば、コンパレータで前記正弦波のゼロクロス点を検出すると、コンパレータ出力の立上りは前記正弦波の位相が2πの間隔となる。
【0013】
測定干渉計4の出力を受光器11で電気信号に変換し、サンプリング部として機能するサンプリング手段15は、サンプリングタイミング算出部として機能するサンプリングタイミング算出手段13の出力に所定の遅延時間δtを付加したタイミングでサンプリングし、ディジタル信号に変換する。
図3(c)では、サンプリングタイミング算出手段13の出力に応じてサンプリング手段15でA/D変換する構成を示したが、一定のサンプリング周波数で測定干渉計4の出力をA/D変換した後にディジタル処理にてサンプリングタイミング算出手段13の出力に応じたリサンプリングを行なう構成でも同様の効果が得られる。
【0014】
また、サンプリングタイミング算出手段13についても補助干渉計3の出力信号をA/D変換した後にディジタル処理にて正弦波の位相が一定間隔となるタイミングを検出するようにしても良い。ディジタル処理でサンプリングタイミングを算出する場合、位相間隔を2π以外にすることも容易に出来る。
【0015】
線形化手段5の動作は、定性的には、掃引速度が速い場合は補助干渉計3の出力のビート周波数が高くなり、高頻度で測定干渉計4の出力信号をサンプリングし、掃引速度が遅い場合は補助干渉計3の出力のビート周波数が低くなり、低頻度で測定干渉計4の出力信号をサンプリングすることによって、掃引速度が一定の場合に相当する測定信号を得る。
【0016】
定量的には、遅延時間をδt=τ/2に設定すると1次の誤差項がキャンセルされ、掃引速度の非線形による誤差が低減する(例えば、非特許文献1を参照。)。ここで、τは補助干渉計3の2つの光路の遅延時間差である。以降、非線形掃引による1次の誤差項のみを取り扱う。線形化手段5の出力をフーリエ変換部60でフーリエ変換し、光周波数領域反射測定法の測定結果を得る。
【0017】
以下に光周波数領域反射測定法の応用の一例を説明する。被測定光ファイバのレイリー散乱または被測定光ファイバに設けられたファイバブラッグ回折格子(FBG)によって長手方向に連続的に光が反射すると共に、被測定光ファイバの長手方向に歪みが加わると、レイリー散乱またはFBGによる反射光の位相が変化する。このため、光周波数領域反射測定法によって得られた周波数領域のビート信号の位相を観測することにより、被測定光ファイバの微小な歪みの長手方向の分布を測定することが出来る。
【0018】
関連技術では、複数のコアを持ったマルチコアファイバを使用して被測定光ファイバの位置または形状を測定する方法が示されている(例えば、特許文献1を参照。)。特許文献1においても、レーザー監視ネットワーク中の干渉計からの信号を用いて質問器ネットワークからの信号に対してレーザーの掃引の非線形を補正するようになっており、微小な歪みを精度良く測定するために掃引の非線形補正が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
光周波数掃引が直線でない場合において発生する誤差は非特許文献1の手法によって補正することが出来る。しかしながら、非特許文献1の手法によって補正できるのは特定の遅延時間に限られる。
【0022】
つまり、所定の長さの被測定光ファイバの歪み分布を測定する場合は、特定の遅延時間に対応する被測定光ファイバの特定の位置においてのみ誤差を補正することができ、それ以外の位置では誤差を補正する効果が低くなる問題があった。特に被測定光ファイバが長い場合、特定の位置から遠く離れた位置では誤差が大きくなるという問題があった。
【0023】
前記課題を解決するために、本発明は、被測定光ファイバの広い範囲にわたって波長掃引の非線形を補正することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記目的を達成するため、本発明では、遅延時間の異なる複数の線形化処理を行ない、複数の線形化処理された信号を重み付き加算し、フーリエ変換して周波数領域の信号を出力する。
【0025】
具体的には、本発明に係る光周波数領域反射測定装置は、
波長掃引された光を出力する掃引光源と、
前記掃引光源の出力光の一部に所定の遅延時間差を与えて干渉させ補助干渉信号として出力する補助干渉計と、
前記掃引光源の出力光の一部を被測定光ファイバに入力すると共に前記被測定光ファイバからの反射光と前記掃引光源の出力光の一部を干渉させ測定干渉信号として出力する測定干渉計と、
前記補助干渉信号を用いて前記測定干渉信号に対して前記掃引光源の波長掃引の非線形を補正する線形化部と、
前記線形化部の出力信号をフーリエ変換して周波数領域の信号を出力するフーリエ変換部と、を有する光周波数領域反射測定装置において、
各々異なる遅延時間を持つ複数の前記線形化部を有し、
前記フーリエ変換部は前記複数の線形化部の出力信号に対してそれぞれ異なる重みをつけて加算しフーリエ変換された結果を出力する重み付き加算及びフーリエ変換部である。
【0026】
本発明に係る光周波数領域反射測定装置では、
前記重み付き加算及びフーリエ変換部の重みは、
前記複数の線形化部の各遅延時間に対応した前記掃引光源の波長掃引の非線形による誤差が極小となる前記被測定光ファイバ上の各位置の間において前記被測定光ファイバ上の位置に対して直線的に変化する重み特性であってもよい。
【0027】
本発明に係る光周波数領域反射測定装置では、
前記複数の線形化部は、
異なる遅延時間を持つ第1の線形化部と第2の線形化部とであり、
前記重み付き加算及びフーリエ変換部は、
前記第1の線形化部の出力信号と前記第2の線形化部の出力信号とに対してそれぞれ異なる重みをつけて加算しフーリエ変換された結果を出力してもよい。
【0028】
本発明に係る光周波数領域反射測定装置では、
前記補助干渉計からの出力光を補助電気信号に変換する受光器と、
前記補助電気信号を一定のサンプリング周波数で補助ディジタル信号に変換するA/D変換器と、
前記補助ディジタル信号の位相が一定間隔となるサンプリングタイミングを算出するサンプリングタイミング算出部と、
前記サンプリングタイミングに第1の遅延時間を付加して第1のサンプリングタイミングを算出し、前記サンプリングタイミングに第2の遅延時間を付加して第2のサンプリングタイミングを算出する遅延時間付加部と、
前記測定干渉計からの出力光を測定電気信号に変換する受光器と、
前記測定電気信号を一定のサンプリング周波数で測定ディジタル信号に変換するA/D変換器と、
前記第1のサンプリングタイミングに従って前記測定ディジタル信号をリサンプリングして第1の測定ディジタル信号を出力する第1のリサンプリング部と、
前記第2のサンプリングタイミングに従って前記測定ディジタル信号をリサンプリングして第2の測定ディジタル信号を出力する第2のリサンプリング部と、
前記第1の測定ディジタル信号と前記第2の測定ディジタル信号とに対してそれぞれ異なる重みをつけて加算しフーリエ変換された結果を出力する重み付き加算及びフーリエ変換部と、を有してもよい。
【0029】
本発明に係る光周波数領域反射測定装置では、
前記補助干渉計からの出力光を補助電気信号に変換する受光器と、
前記補助電気信号の周波数に比例した周波数のサンプリングクロックを生成するサンプリングクロック生成部と、
前記サンプリングクロックに第1の遅延時間を付加して第1のサンプリングクロックを出力する第1の遅延器と、
前記サンプリングクロックに第2の遅延時間を付加して第2のサンプリングクロックを出力する第2の遅延器と、
前記測定干渉計からの出力光を測定電気信号に変換する受光器と、
前記測定電気信号を前記第1のサンプリングクロックに従って第1の測定ディジタル信号に変換する第1のA/D変換器と、
前記測定電気信号を前記第2のサンプリングクロックに従って第2の測定ディジタル信号に変換する第2のA/D変換器と、
前記第1の測定ディジタル信号と前記第2の測定ディジタル信号とに対してそれぞれ異なる重みをつけて加算しフーリエ変換された結果を出力する重み付き加算及びフーリエ変換部と、を有してもよい。
【0030】
本発明に係る光周波数領域反射測定装置では、
前記補助干渉計からの出力光に第1の遅延時間を付加する第1の遅延ファイバと、
前記補助干渉計からの出力光に第2の遅延時間を付加する第2の遅延ファイバと、
前記第1の遅延ファイバからの出力光を第1の補助電気信号に変換する第1の受光器と、
前記第2の遅延ファイバからの出力光を第2の補助電気信号に変換する第2の受光器と、
前記第1の補助電気信号から第1のサンプリングクロックを生成する第1のサンプリングクロック生成部と、
前記第2の補助電気信号から第2のサンプリングクロックを生成する第2のサンプリングクロック生成部と、
前記測定干渉計からの出力光を測定電気信号に変換する受光器と、
前記測定電気信号を前記第1のサンプリングクロックに従って第1の測定ディジタル信号に変換する第1のA/D変換器と、
前記測定電気信号を前記第2のサンプリングクロックに従って第2の測定ディジタル信号に変換する第2のA/D変換器と、
前記第1の測定ディジタル信号と前記第2の測定ディジタル信号とに対してそれぞれ異なる重みをつけて加算しフーリエ変換された結果を出力する重み付き加算及びフーリエ変換部と、を有してもよい。
【0031】
本発明に係る光周波数領域反射測定装置では、
前記補助干渉計からの出力光を補助電気信号に変換する受光器と、
前記補助電気信号の周波数に比例した周波数のサンプリングクロックを生成するサンプリングクロック生成部と、
前記測定干渉計からの出力光に第1の遅延時間を付加する第1の遅延ファイバと、
前記測定干渉計からの出力光に第2の遅延時間を付加する第2の遅延ファイバと、
前記第1の遅延ファイバからの出力光を第1の測定電気信号に変換する第1の受光器と、
前記第2の遅延ファイバからの出力光を第2の測定電気信号に変換する第2の受光器と、
前記第1の測定電気信号を前記サンプリングクロックに従って第1の測定ディジタル信号に変換する第1のA/D変換器と、
前記第2の測定電気信号を前記サンプリングクロックに従って第2の測定ディジタル信号に変換する第2のA/D変換器と、
前記第1の測定ディジタル信号と前記第2の測定ディジタル信号とに対してそれぞれ異なる重みをつけて加算しフーリエ変換された結果を出力する重み付き加算及びフーリエ変換部と、を有してもよい。
【0032】
本発明に係る光周波数領域反射測定装置では、
前記サンプリングタイミング算出部は、
前記補助ディジタル信号を複素ディジタル信号に変換するディジタルフィルタと、
前記複素ディジタル信号の位相を算出する位相算出部と、前記位相が一定間隔となるタイミングを算出するタイミング算出部と、を有してもよい。
【0033】
本発明に係る光周波数領域反射測定装置では、
前記サンプリングクロック生成部は、
前記補助電気信号と所定の電圧とを比較して前記サンプリングクロックを出力するコンパレータであってもよい。
【0034】
本発明に係る光周波数領域反射測定装置では、
前記第1のサンプリングクロック生成部は、前記第1の補助電気信号と所定の電圧とを比較して前記第1のサンプリングクロックを出力するコンパレータであり、
前記第2のサンプリングクロック生成部は、前記第2の補助電気信号と所定の電圧とを比較して前記第2のサンプリングクロックを出力するコンパレータであってもよい。
【0035】
本発明に係る光周波数領域反射測定装置では、
前記重み付き加算及びフーリエ変換部は、
前記第1の測定ディジタル信号に第1の重み特性をかけ第1の遅延時間調整を行なう第1の時間領域フィルタと、
前記第2の測定ディジタル信号に第2の重み特性をかけ第2の遅延時間調整を行なう第2の時間領域フィルタと、
前記第1の時間領域フィルタの出力と前記第2の時間領域フィルタの出力とを加算する加算器と、
前記加算器の出力をフーリエ変換するフーリエ変換部と、を有してもよい。
【0036】
本発明に係る光周波数領域反射測定装置では、
前記重み付き加算及びフーリエ変換部は、
前記第1の測定ディジタル信号をフーリエ変換する第1のフーリエ変換部と、
前記第2の測定ディジタル信号をフーリエ変換する第2のフーリエ変換部と、
前記第1のフーリエ変換部の出力信号に第1の重み特性をかけ第1の遅延時間調整を行なう第1の周波数領域フィルタと、
前記第2のフーリエ変換部の出力信号に第2の重み特性をかけ第2の遅延時間調整を行なう第2の周波数領域フィルタと、
前記第1の周波数領域フィルタの出力信号と前記第2の周波数領域フィルタの出力信号とを加算する加算器と、を有してもよい。
【0037】
具体的には、本発明に係る光周波数領域反射測定方法は、
波長掃引された光を補助干渉計と被測定光ファイバを含む測定干渉計とに入力し、前記補助干渉計の出力信号を用いて前記測定干渉計の出力信号に対して波長掃引の非線形を補正する線形化処理を行なった後、フーリエ変換して周波数領域の信号を出力する光周波数領域反射測定方法において、各々遅延時間の異なる複数の線形化処理を行ない、複数の線形化処理された信号を重み付き加算し、フーリエ変換して周波数領域の信号を出力する
。
【0038】
なお、上記各発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、被測定光ファイバの広い範囲にわたって波長掃引の非線形を補正することができる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。これらの実施の例は例示に過ぎず、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0042】
図4に本発明における光周波数領域反射測定装置の基本構成を示す。光周波数領域反射測定装置は、掃引光源1と、光分岐部2と、補助干渉計3と、測定干渉計4と、重み付き加算・フーリエ変換手段6と、第1の線形化手段51と、第2の線形化手段52と、を備える。
【0043】
掃引光源1は出力光の波長を掃引する。波長の掃引は単発でも良く、所定の周期での繰返し掃引でも良く、図示しない外部からのトリガ信号に応じた掃引でも良い。また、掃引方向は長波長から短波長への掃引でも、短波長から長波長への掃引でも良く、両方向の掃引を利用しても良い。例えば、回折格子を用いた外部共振器レーザにおいて、回折格子またはミラーの角度を変えて共振波長を変えることにより発振波長を掃引することが出来る。
【0044】
光周波数領域反射測定方法では、時間に対して光の周波数が完全に直線的に変化する掃引が理想であるが、実際には直線からのずれが存在する。例えば、時間に対して光の波長が直線的に変化する掃引や、光の波長が正弦波的に変化する掃引の場合がある。正弦波的な掃引の場合は、正弦波のうちの比較的直線に近い領域のみを使用することにより、直線に近い掃引とみなすことが出来る。
【0045】
光分岐部2は、掃引光源1からの光を2つに分岐し、補助干渉計3と測定干渉計4にそれぞれ入力する。ここでは、光分岐部2で2つに分岐した後、補助干渉計3と測定干渉計4でそれぞれさらに2分岐するという構成を示しているが、これに限られるものではなく、分岐の順序を逆にしたり、一度に4分岐したりする構成でも良い。
【0046】
補助干渉計3は、入力された光を2つに分岐し、それぞれ異なる遅延時間を与えて合波する。例えば、
図10(a)に示すように、入力光を光カプラ31aで2つに分岐し、一方は所定の長さの遅延ファイバ32aを経由し、他方は遅延ファイバ無しで、それぞれ光カプラ34aに入力され合波される。合波の際には2つの光の偏波が直交しないようにする必要があり、2つの光の偏波を合わせるのが望ましい。
【0047】
光ファイバや光カプラを偏波保持ファイバで構成すると、同一偏波で2つの光を合波することが出来る。偏波保持ではないファイバで構成する場合は
図10(b)に示すように偏波コントローラ33aを用いて2つに分岐した光のうちの少なくともどちらか一方の光の偏波を調整する。
【0048】
また、
図10(c)に示すように、入力光を光カプラ31bで2つに分岐し、一方は所定の長さの遅延ファイバ32bを経由し、他方は遅延ファイバ無しで、それぞれミラー35a,36aで反射して同経路を逆方向に伝搬し、光カプラ31bで合波され、入力側と別のポートから光を出力する構成も可能である。
【0049】
この構成においても、光ファイバや光カプラを偏波保持ファイバで構成すると、同一偏波で2つの光を合波することが出来る。偏波保持ではないファイバで構成する場合は
図10(d)に示すように偏波コントローラ33bを用いて2つに分岐した光のうちの少なくともどちらか一方の光の偏波を調整する。または
図10(e)に示すようにファラデーミラー35b,36bを用いることにより、偏波保持ファイバや偏波コントローラを使用することなく合波時の偏波を合わせることが出来る。
【0050】
測定干渉計4は、入力された光を2つに分岐し、一方の光を被測定光ファイバに入力する。そして、被測定光ファイバからの反射光と他方の光(基準光)とを合波して出力する。例えば、
図11(a)に示すように、入力光を光カプラ41aで2つに分岐し、一方の光を光サーキュレータ42aの第1端子に入力する。光サーキュレータ42aの第1端子に入力された光は第2端子から出力され、被測定光ファイバ43aに入力される。被測定光ファイバ43aからの反射光は光サーキュレータ42aの第2端子に入力され、第3端子から出力される。光サーキュレータ42aの第3端子から出力された光と、光カプラ41aで分岐した他方の光(基準光)とを光カプラ45aで合波して出力する。
【0051】
図11(b)のように、光サーキュレータ42aの代わりに光カプラ42bを用いても良い。また、
図11(c)のように、入力光を光カプラ41bで2つに分岐し、一方の光を被測定光ファイバ43aに入力し、他方の光をミラー46aに入力する。被測定光ファイバ43aからの反射光とミラー46aからの反射光(基準光)を前記光カプラ41bで合波し、入力側と別のポートから光を出力する構成も可能である。
【0052】
また、
図11(d)のように、入力光を光カプラ41cで2つに分岐し、一方の光を被測定光ファイバ43aに入力し、他方の光(基準光)と、被測定光ファイバ43aで反射され光カプラ41cを経由した光とを光カプラ45bで合波して出力する構成も可能である。
【0053】
補助干渉計の場合と同様に、合波の際には2つの光の偏波が直交しないようにする必要があり、偏波保持ではないファイバで構成する場合は
図11(e),(f),(g),(h)に示すように偏波コントローラ44a,44b,44cを用いて2つに分岐した光のうちの少なくともどちらか一方の光の偏波を調整する。
【0054】
被測定光ファイバ43aを伝搬中に光の偏波が変化する場合は、被測定光ファイバ43a上の反射位置によって反射光の偏波が異なる。この場合、
図12(a)に示すように測定干渉計4からの出力光を偏光ビームスプリッタ47aで互いに直交する2つの偏波に分離し、それぞれを受光する偏波ダイバーシティ方式が用いられる。
【0055】
この時、基準光が偏光ビームスプリッタ47aの偏光方向と直交しないようにする必要があり、基準光が偏光ビームスプリッタ47aでほぼ1対1に分離されるのが望ましく、少なくとも基準光の経路を偏波保持ファイバで構成するか、もしくは
図11(e),(f),(g),(h)の構成により基準光の偏波を偏波コントローラで調整する。
【0056】
偏波ダイバーシティ方式では、偏光ビームスプリッタ47aに入力される基準光の偏波を調整すれば良いので、偏波コントローラ44a,44b,44cは光カプラ41a,41b,41cの前に配置しても良く光カプラ45a,41b,45bの後に配置しても良い。例えば、
図11(e)の偏波コントローラ44aを光カプラ41aの前に配置すると
図12(b)、光カプラ45aの後に配置すると
図12(c)のようになる。
【0057】
掃引光源の光周波数が時間的に非線形に変化することにより、測定干渉計4の被測定光ファイバ43aの所定の位置からの反射光と基準光との干渉によるビート周波数が時間的に変化する。第1の線形化部として機能する第1の線形化手段51は、補助干渉計3からの出力を用いて測定干渉計4の被測定光ファイバ43aの所定の位置からの反射光と基準光との干渉によるビート周波数が一定になるようにサンプリングする。
【0058】
具体的には、補助干渉計3からの出力のビート周波数に比例した周波数で測定干渉計4の出力のビート信号をサンプリングする。即ち、補助干渉計3からの出力のビート信号の正弦波の位相が一定間隔となる時間で測定干渉計4の出力のビート信号をサンプリングする。第2の線形化部として機能する第2の線形化手段52も同じ構成であり、補助干渉計3からの出力のビート信号の正弦波の位相が一定間隔となる時間で測定干渉計4の出力のビート信号をサンプリングする。
【0059】
ここで、第1の線形化手段51と第2の線形化手段52は、補助干渉計3からの出力信号と測定干渉計4からの出力信号の相対時間差が異なる値に設定されている。具体的には、補助干渉計3からの出力信号と測定干渉計4からの出力信号の少なくともどちらか一方を遅延する構成になっており、両方を遅延させる場合はその遅延時間差が第1の線形化手段51と第2の線形化手段52で異なっている。
【0060】
重み付き加算及びフーリエ変換部として機能する重み付き加算・フーリエ変換手段6は、第1の線形化手段51からの出力信号と第2の線形化部として機能する第2の線形化手段52からの出力信号とを、被測定光ファイバ43aの位置によって異なる重みをつけて加算して、フーリエ変換した結果を出力する。
【0061】
例えば
図14(a)に示すように、第1の線形化手段51からの出力信号に対して所定の周波数特性を持った第1の時間領域フィルタ25をかけ、第2の線形化手段52からの出力信号に対して別の周波数特性を持った第2の時間領域フィルタ26をかけて両者を加算し、加算された信号をフーリエ変換して出力する。第1の時間領域フィルタ25と第2の時間領域フィルタ26の周波数特性の振幅が被測定光ファイバ43aの位置に応じた重みに対応する。
【0062】
図14(b)に示すように、第1の線形化手段51からの出力信号をフーリエ変換した後に第1の周波数領域フィルタ77をかけ、第2の線形化手段52からの出力信号をフーリエ変換した後に第2の周波数領域フィルタ78をかけて両者を加算して出力することも可能である。
【0063】
時間領域フィルタは畳み込み演算が必要であるのに対して、周波数領域フィルタは乗算で済むためフィルタの演算量は少ないが、フーリエ変換が2回必要になる。第1の周波数領域フィルタ77の係数と第2の周波数領域フィルタ78の係数の振幅が被測定光ファイバ43aの位置に応じた重みに対応する。
【0064】
また、第1の線形化手段51からの出力信号と第2の線形化手段52からの出力信号の遅延時間差を調整する機能を備える場合もある。この場合、掃引光源1の光周波数の掃引の非線形が大きい時間領域において、非線形によって発生する第1の線形化後の誤差項と第2の線形化後の誤差項が逆相になり互いに打ち消し合うように第1の線形化手段51からの出力信号と第2の線形化手段52からの出力信号の遅延時間差を設定することが望ましい。
【0065】
この遅延時間調整は、第1の線形化手段51からの出力信号と第2の線形化手段52からの出力信号の少なくともどちらか一方に、整数サンプル分の遅延やサンプル間を補間してサンプリング間隔未満の遅延を付加する遅延時間調整部として機能する遅延時間調整手段を挿入することで実現できるが、時間領域フィルタまたは周波数領域フィルタに遅延時間調整を含めることも出来る。
【0066】
時間領域フィルタに遅延時間調整を含める場合は時間領域フィルタの周波数特性の位相傾斜、周波数領域フィルタに遅延時間調整を含める場合は周波数領域フィルタの係数の位相傾斜が遅延時間に対応する。遅延時間調整と重みづけは加算の前に行なう必要があるが、それ以外は任意に順序を入れ替えることができ、種々の実施形態が可能である。
【0067】
例えば
図14(c)のように、遅延時間調整71,72、重みフィルタ73,74、加算27、フーリエ変換60の順に処理してもよく、遅延時間調整71,72と重みフィルタ73,74の順序を逆にしてもよく、遅延時間調整71,72と重みフィルタ73,74を1つの時間領域フィルタ25,26で実現しても良い。
図14(d)のように、フーリエ変換75,76、遅延時間調整79,80、重み乗算81,82、加算83の順に処理してもよく、遅延時間調整79,80と重み乗算81,82の順序を逆にしてもよく、遅延時間調整79,80と重み乗算81,82を1つの周波数領域フィルタ77,78で実現しても良い。
【0068】
また、
図14(e)のように、遅延時間調整71,72、フーリエ変換75,76、重み乗算81,82、加算83の順に処理してもよく、
図14(f)のように、重みフィルタ73,74、フーリエ変換75,76、遅延時間調整79,80、加算83の順に処理しても良い。同様に、第3の線形化部として機能する第3の線形化手段を設けて遅延時間の異なる3つの信号に対して重み付き加算・フーリエ変換を行なうことも可能であり、複数の線形化手段を設けて遅延時間の異なる複数の信号に対して重み付き加算・フーリエ変換を行なう構成に拡張することも可能である。
【0069】
(第1の実施形態)
図5を用いて本発明を実施するための第1の形態を説明する。掃引光源1,光分岐部2,補助干渉計3,測定干渉計4は
図4の基本構成と同じである。補助干渉計3からの出力光は受光器11’で電気信号に変換される。受光器11’は光の強度に比例した電流または電圧を出力するものであり、補助干渉計3で合波された2つの光の干渉によるビート信号が出力される。
【0070】
補助干渉計3では遅延時間の異なる2つの光が合波されるため、光源の光周波数掃引レートに比例した周波数の正弦波信号が得られる。受光器11’からの信号をA/D変換器12’に入力し、一定のサンプリング周波数でディジタル信号に変換する。瞬時位相算出部17では、A/D変換器12’の出力から正弦波のビート信号の瞬時位相を算出する。タイミング算出部18では、前記瞬時位相が一定間隔となるタイミングをサンプリングタイミングとして出力する。
【0071】
瞬時位相算出部17は、
図13(a)のように、正弦波ビート信号をヒルベルト変換(62)し、虚数単位jをかけ、正弦波ビート信号と加算して複素数とし、複素数の位相を算出(63)する構成である。実際には、
図13(b)のように、ヒルベルト変換をFIRフィルタ65で実現すると遅延が生じるため、実部の経路に遅延64を挿入して実部と虚部の遅延時間を合わせる必要がある。そして、実部と虚部の値から逆正接関数66によって瞬時位相を算出することが出来る。
【0072】
もしくは、
図13(c)のように、少なくとも正弦波のビート信号に対応する正の周波数領域を通過し、正弦波のビート信号に対応する負の周波数領域を遮断する複素係数のFIRフィルタ67を用いて、同様に瞬時位相を算出することも可能である。タイミング算出部では、瞬時位相が例えば−πからπまでの値に折り返されていることを考慮して前記瞬時位相が一定間隔となるタイミングを検出する。もしくは、前記瞬時位相の折り返しを復元した後に復元された位相が一定間隔となるタイミングを検出するようにしても良い。
【0073】
瞬時位相算出部17とタイミング算出部18からなるサンプリングタイミング算出手段13では、位相間隔が2πに限定されず任意の位相間隔に設定することが可能であり、被測定光ファイバの長さや補助干渉計3内の遅延時間差などの設計自由度が増すという利点がある。
【0074】
サンプリングタイミング算出手段13は、
図13(d)に示すように、正弦波ビート信号がゼロクロスするタイミングを算出(68)し、サンプリングタイミングとして出力するようにしても良い。ゼロクロスタイミングを算出する方法では、サンプリング周波数は正弦波ビート信号の周波数の2倍またはそれを分周した整数分の1の周波数に限られる。
【0075】
サンプリングタイミング算出手段13からの出力に第1の遅延時間21および第2の遅延時間22を付加し、それぞれ第1のサンプリングタイミングと第2のサンプリングタイミングとして出力する。一方、測定干渉計4からの出力光は受光器11で電気信号に変換される。受光器11は光の強度に比例した電流または電圧を出力するものであり、被測定光ファイバからの反射光と基準光との干渉によるビート信号が出力される。
【0076】
受光器11から出力された電気信号は、一定のサンプリング周波数でA/D変換(12)されてディジタル信号に変換され、第1のリサンプリング部23と第2のリサンプリング部24に入力される。第1のリサンプリング部23は第1のサンプリングタイミングで示される時刻の信号を第1のディジタル信号として出力する。第2のリサンプリング部24は第2のサンプリングタイミングで示される時刻の信号を第2のディジタル信号として出力する。
【0077】
各サンプリングタイミングで示される時刻はA/D変換器12のサンプリングの時刻と一致するとは限らないため、各リサンプリング部23,24はA/D変換されたディジタル信号を補間して出力する。具体的には、各サンプリングタイミングで示される時刻付近の有限個のA/D変換されたディジタル信号からFIRディジタルフィルタを用いて補間された信号を算出する。
【0078】
第1のディジタル信号は第1の時間領域フィルタ25に入力され、第2のディジタル信号は第2の時間領域フィルタ26に入力され、各フィルタの出力を加算(27)する。そしてフーリエ変換(60)を行ない、その結果を出力する。以上のように、
図5の形態では、補助干渉計3からの出力光が入力される受光器11’,A/D変換器12’,サンプリングタイミング算出手段13、および測定干渉計4からの出力光が入力される受光器11,A/D変換器12は、第1の遅延時間21と第2の遅延時間22の違いに依存しないため、
図4の第1の線形化手段51と第2の線形化手段52で共用している。
【0079】
これにより、部品点数の増加を抑えつつ本発明の効果を得ることが可能である。例えば、第1の遅延時間付加21,第2の遅延時間付加22,第1のリサンプリング部23,第2のリサンプリング部24,第1の時間領域フィルタ25,第2の時間領域フィルタ26,加算27をソフトウェア処理で実施すると、受光器やA/D変換器等のハードウエアを増加することなく本発明を実施することが可能である。特に特許文献1のような1つの補助干渉計と複数の測定干渉計を有する多チャネル測定装置に適用する場合は、受光器やA/D変換器を増加する必要がない利点が大きい。
【0080】
(第2の実施形態)
図6を用いて本発明を実施するための第2の形態を説明する。掃引光源1,光分岐部2,補助干渉計3,測定干渉計4,受光器11,11’,重み付き加算・フーリエ変換手段6は第1の形態と同じである。補助干渉計側の受光器11’から出力される電気信号は、コンパレータ29に入力され、正弦波信号のゼロクロス点に対応したサンプリングクロックに変換される。
【0081】
つまり、受光器11’から出力される電気信号は正弦波信号であるため、コンパレータを用いて、A/D変換器のサンプリングクロックに適した矩形波信号に変換している。A/D変換器のサンプリングクロックとして正弦波信号を入力可能な場合は、コンパレータ29を省略することも可能である。
【0082】
コンパレータ29から出力されたサンプリングクロックを第1の遅延器35および第2の遅延器36に入力し、異なる遅延時間が付加され、それぞれ第1のサンプリングクロックと第2のサンプリングクロックとして出力する。なお、コンパレータ29と遅延器35,36の順序を逆にすることも可能であり、その場合はコンパレータが2個必要となる。
【0083】
サンプリングクロック生成部として機能するサンプリングクロック生成手段19は、
図15(a)に示すコンパレータ29のみの構成以外に、
図15(b)に示すようにコンパレータ29の出力を分周器等の周波数変換部として機能する周波数変換手段30により周波数を変えてサンプリングクロックにしてもよく、
図15(c)に示すようにPLL(位相ロックループ)等の周波数変換手段30’により周波数を変えてコンパレータ29に入力しサンプリングクロックを生成してもよい。
【0084】
サンプリングクロックを物理的に遅延させる遅延線では、負の遅延時間を付加することが出来ない。負の遅延時間が必要な場合は、測定干渉計側に遅延ファイバまたは遅延線を追加して補助干渉計側の遅延時間が正になるようにすればよい。第1のサンプリングクロックおよび第2のサンプリングクロックは、それぞれ第1のA/D変換器37および第2のA/D変換器38のサンプリングクロックとして用いられる。
【0085】
第1のA/D変換器37では、測定干渉計側の受光器11から出力される電気信号を第1のサンプリングクロックに従って標本化し第1のディジタル信号に変換する。第2のA/D変換器38では、測定干渉計側の受光器11から出力される電気信号を第2のサンプリングクロックに従って標本化し第2のディジタル信号に変換する。
【0086】
以上のように、
図6の形態では、補助干渉計3からの出力光が入力される受光器11’,コンパレータ29、および測定干渉計4からの出力光が入力される受光器11は、第1の遅延時間と第2の遅延時間の違いに依存しないため、第1の線形化手段51と第2の線形化手段52で共用している。これにより、部品点数の増加を抑えつつ本発明の効果を得ることが可能である。
【0087】
本構成は、第1の形態におけるサンプリングタイミング算出手段13とリサンプリング部23,24が不要で演算量を少なくできる特長を持つ。しかし、測定干渉計側のA/D変換器が2個必要となるため、特許文献1のような1つの補助干渉計と複数の測定干渉計を有する多チャネル測定装置に適用する場合は、ハードウェア規模が大きくなる。
【0088】
(第3の実施形態)
図7を用いて本発明を実施するための第3の形態を説明する。掃引光源1,光分岐部2,補助干渉計3,測定干渉計4,受光器11,A/D変換器37,38,重み付き加算・フーリエ変換手段6は第2の形態と同じである。補助干渉計3からの出力光は光分岐部2’で2つに分岐され、一方は第1の遅延ファイバ39に入力され、他方は第2の遅延ファイバ40に入力される。
【0089】
第1の遅延ファイバ39と第2の遅延ファイバ40は長さが異なる。第1の遅延ファイバ39および第2の遅延ファイバ40からの出力光は、それぞれ第1の受光器46および第2の受光器47で電気信号に変換され、それぞれ第1のサンプリングクロック生成部として機能する第1のサンプリングクロック生成手段48および第2のサンプリングクロック生成部として機能する第2のサンプリングクロック生成手段49で第1のサンプリングクロックおよび第2のサンプリングクロックに変換され、それぞれ第1のA/D変換器37および第2のA/D変換器38にサンプリングクロックとして入力される。
【0090】
第1のサンプリングクロック生成手段48および第2のサンプリングクロック生成手段49は、例えばそれぞれ第1のコンパレータ53および第2のコンパレータ54で構成される。A/D変換器のサンプリングクロックとして正弦波信号を入力可能な場合は、第1のコンパレータ53および第2のコンパレータ54を省略することも可能である。第1のサンプリングクロック生成手段48および第2のサンプリングクロック生成手段49は、
図15のように分周器やPLL等の周波数変換手段30,30’を併用することも可能である。
【0091】
第1の遅延ファイバ39および第2の遅延ファイバ40では、負の遅延時間を付加することが出来ない。負の遅延時間が必要な場合は、測定干渉計側に遅延ファイバまたは遅延線を追加して補助干渉計側の遅延時間が正になるようにすればよい。第1のA/D変換器37および第2のA/D変換器38以降の構成は第2の形態と同じである。
【0092】
以上のように、
図7の形態では、測定干渉計4からの出力光が入力される受光器11のみを第1の線形化部として機能する第1の線形化手段51と第2の線形化部として機能する第2の線形化手段52で共用している。第2の形態における電気信号の遅延器35,36と比較して、第3の形態における遅延ファイバ39,40の方が長い遅延時間を低損失で実現できるという特長を持つ。
【0093】
(第4の実施形態)
図8を用いて本発明を実施するための第4の形態を説明する。第4の形態は、第3の形態における第1の遅延ファイバ39と第2の遅延ファイバ40を測定干渉計側に挿入した構成であり、掃引光源1,光分岐部2,補助干渉計3,測定干渉計4,重み付き加算・フーリエ変換手段6は第3の形態と同じである。補助干渉計3からの出力光は、第2の形態と同様に、受光器11’で電気信号に変換され、コンパレータ29に入力されて、サンプリングクロックに変換される。
【0094】
サンプリングクロック生成手段19は、
図15のように分周器やPLL等の周波数変換手段30,30’を併用することも可能である。測定干渉計4からの出力光は、光分岐部2’’で2つに分岐され、一方は第1の遅延ファイバ39’を経て第1の受光器46’に入力されて第1の電気信号に変換され、第1のA/D変換器37に入力されて前記サンプリングクロックに従って第1のディジタル信号に変換される。
【0095】
光分岐部2’’で分岐された他方は第2の遅延ファイバ40’を経て第2の受光器47’に入力されて第2の電気信号に変換され、第2のA/D変換器38に入力されて前記サンプリングクロックに従って第2のディジタル信号に変換される。第1の遅延ファイバ39’と第2の遅延ファイバ40’は長さが異なる。A/D変換器のサンプリングクロックとして正弦波信号を入力可能な場合は、コンパレータ29を省略することも可能である。
【0096】
第1の遅延ファイバ39’および第2の遅延ファイバ40’では、負の遅延時間を付加することが出来ない。負の遅延時間が必要な場合は、補助干渉計側に遅延ファイバまたは遅延線を追加して測定干渉計側の遅延時間が正になるようにすればよい。第1のA/D変換器37および第2のA/D変換器38以降の構成は第2の形態と同じである。
【0097】
以上のように、
図8の形態では、補助干渉計3からの出力光が入力される受光器11’とサンプリングクロック生成手段19を第1の線形化手段51と第2の線形化手段52で共用している。第2の形態における電気信号の遅延器35,36と比較して、第4の形態における遅延ファイバ39’,40’の方が長い遅延時間を低損失で実現できるという特長を持つ。
【0098】
(第5の実施形態)
図9を用いて本発明を実施するための第5の形態を説明する。第5の形態は、第1の遅延ファイバと第2の遅延ファイバを補助干渉計側と測定干渉計側の両方に挿入した構成であり、掃引光源1,光分岐部2,補助干渉計3,測定干渉計4,重み付き加算・フーリエ変換手段6は第4の形態と同じである。補助干渉計3からの出力光は、第3の形態と同様に、光分岐部2’で2つに分岐され、一方は第1の補助干渉計用遅延ファイバ39に入力され、他方は第2の補助干渉計用遅延ファイバ40に入力される。
【0099】
第1の補助干渉計用遅延ファイバ39および第2の補助干渉計用遅延ファイバ40からの出力光は、それぞれ第1の補助干渉計用受光器46および第2の補助干渉計用受光器47で電気信号に変換され、それぞれ第1のサンプリングクロック生成手段48および第2のサンプリングクロック生成手段49で第1のサンプリングクロックおよび第2のサンプリングクロックに変換され、それぞれ第1のA/D変換器37および第2のA/D変換器38にサンプリングクロックとして入力される。
【0100】
測定干渉計4からの出力光は、光分岐部2’’で2つに分岐され、一方は第1の測定干渉計用遅延ファイバ39’を経て第1の測定干渉計用受光器46’に入力されて第1の電気信号に変換され、第1のA/D変換器37に入力されて前記第1のサンプリングクロックに従って第1のディジタル信号に変換される。
【0101】
光分岐部2’’で分岐された他方は第2の測定干渉計用遅延ファイバ40’を経て第2の測定干渉計用受光器47’に入力されて第2の電気信号に変換され、第2のA/D変換器38に入力されて前記第2のサンプリングクロックに従って第2のディジタル信号に変換される。第1の補助干渉計用遅延ファイバ39と第1の測定干渉計用遅延ファイバ39’の長さの差は、第2の補助干渉計用遅延ファイバ40と第2の測定干渉計用遅延ファイバ40’の長さの差と異なるように設定されている。
【0102】
補助干渉計用遅延ファイバ39,40と測定干渉計用遅延ファイバ39’,40’の長さの大小関係により正負いずれの遅延時間差も設定可能である。第1のA/D変換器37および第2のA/D変換器38以降の構成は第4の形態と同じである。以上のように、
図9の形態は、補助干渉計用受光器46,47,サンプリングクロック生成手段48,49,測定干渉計用受光器46’,47’,A/D変換器37,38のいずれも第1の線形化手段51と第2の線形化手段52で共用せずに2系統用意した構成であり、ハードウェア規模は最も大きくなる。
【0103】
以下に遅延時間の設定を具体的に説明する。補助干渉計の2つの光路のファイバ長(反射型の場合は往復のファイバ長)をL
a,L
b,測定干渉計の基準光の光路のファイバ長(反射型の場合は往復のファイバ長)をL
r,測定干渉計の被測定光ファイバ側の光路のファイバ長が基準光の光路のファイバ長L
rと等しくなる被測定光ファイバ上の位置をz=0とする。その他の補助干渉計側の遅延時間と測定干渉計側の遅延時間は等しいとする。
【0104】
被測定光ファイバ上の位置zで反射した光の光路のファイバ長は2z+L
rとなるので、補助干渉計のビート信号の遅延時間t
ab,測定干渉計において被測定光ファイバ上の位置z
1で反射した光と基準光とのビート信号の遅延時間t
1r,測定干渉計において被測定光ファイバ上の位置z
2で反射した光と基準光とのビート信号の遅延時間t
2rは、以下の式4〜6で表される。
【数4】
【数5】
【数6】
【0105】
ここで、nは光ファイバの屈折率,cは光速である。被測定光ファイバ上の位置z
1およびz
2において非線形掃引による誤差がゼロになるように補助干渉計側に付加する第1の遅延時間δt
1および第2の遅延時間δt
2は式7〜10となる。なお、測定干渉計側に遅延時間を付加する場合は逆符号になる。
【数7】
【数9】
【0106】
以下に重みの設定を具体的に説明する。掃引の非線形によって発生する第1の線形化後の誤差項ψ
1,第2の線形化後の誤差項ψ
2は式11及び12で表される。
【数11】
【数12】
【0107】
ここで、zは被測定光ファイバ上の距離であり、第1の線形化の遅延時間は被測定光ファイバ上の距離z
1において非線形掃引による誤差がゼロになるように設定し、第2の線形化の遅延時間は被測定光ファイバ上の距離z
2において非線形掃引による誤差がゼロになるように設定するものとする。ここで、次式13及び14のように誤差項がゼロになるように第1の線形化後の信号にr
1(z),第2の線形化後の信号にr
2(z)の重みをつけて加算する。これより重みr
1(z),r
2(z)を求めると式15及び16となる。
【数13】
【数14】
【数15】
【数16】
【0108】
重みr
1(z),r
2(z)を図示すると
図16(a)のようになる。z<z
1およびz>z
2の領域ではr
1(z)とr
2(z)の符号が異なるため、加算ではなく減算になり雑音の影響が大きくなる。このため、
図16(b)のようにr
1(z)とr
2(z)の最小値を0に制限することも可能である。この場合、z
1≦z≦z
2の領域で非線形誤差がゼロになり、z<z
1の領域では第1の線形化後の信号と等しく、z>z
2の領域では第2の線形化後の信号と等しくなる。また、z
1をゼロ、z
2を被測定光ファイバ長z
Lと等しく設定すると、
図16(c)のようになり重みは常に正の値となる。
【0109】
本手法ではz
1≦z≦z
2の領域で非線形誤差がゼロになるように設計するため、
図17(a)のように被測定光ファイバの測定範囲の外側にz
1,z
2を配置しても良いが、高次の非線形誤差等が残る場合がある。
図17(b)のように被測定光ファイバの測定範囲の両端にz
1,z
2を配置する方が高次の非線形誤差等が低減するので望ましい。また、
図17(c)のように被測定光ファイバの測定範囲の両端よりも内側にz
1,z
2を配置し、高次の非線形誤差等の最大値を低減するようにしても良い。
【0110】
線形化手段が3系統の場合、条件式が2つで変数が3つになるので一意に定まらず様々な場合が可能となる。例えば、重みr
1(z),r
2(z),r
3(z)を
図18(a)のように設定することが出来る。3系統の場合においても、
図18(b)のように重みの最小値を0に制限することも可能であり、
図18(c)のようにz
1をゼロ、z
3を被測定光ファイバ長z
Lと等しく設定することも可能である。
【0111】
しかし、1つの線形化手段の出力を使用する距離範囲は非線形掃引による誤差がゼロになる点の近くにすることが望ましい。例えば第1の線形化手段の出力は、距離z
1の付近で使用するのが望ましい。これより、z≧z
2の領域でr
1(z)=0,z≦z2の領域でr
3(z)=0として、第1の線形化手段の出力はz<z
2でのみ使用し、第3の線形化手段の出力はz>z
2でのみ使用するようにすると、重みr
1(z),r
2(z),r
3(z)は
図19(a)のようになる。
【0112】
z
2はz
1とz
3の中点(z
1+z
3)/2に設定しても良いが、z=0から離れるほど高次の非線形誤差が大きくなるので、
図18(a),
図19(a)のようにz
2>(z
1+z
3)/2に設定してなるべく遠距離の高次の非線形誤差が小さくなるように設定することも出来る。
【0113】
この場合においても、
図19(b)のようにr
2(z)の最小値を0に制限することも可能であり、
図19(c)のようにz
1をゼロ、z
3を被測定光ファイバ長z
Lと等しく設定することも可能である。また、2系統の場合と同様に、被測定光ファイバの測定範囲の外側にz
1,z
3を配置しても良いが、被測定光ファイバの測定範囲の両端にz
1,z
3を配置する方が望ましく、被測定光ファイバの測定範囲の両端よりも内側にz
1,z
3を配置するようにしても良い。同様にして、複数系統の場合に拡張することが出来る。