【課題】光源からのレーザー光が試料に至るまでの間に生じる損失および試料からの反射光がカメラに至るまでの間に生じる損失を抑制することができる分光測定装置を提供することである。
【解決手段】全反射ミラー6とダイクロイックミラー7とがレーザー光L1の光軸上に配置されており、レーザー光源2からのレーザー光L1が、全反射ミラー6のピンホール6aを通過して試料Sに照射され、試料Sに照射されたレーザー光L1によって励起される光がダイクロイックミラーに反射されて分光器10に入射され、観察用照明光源14からの観察用照明光L3が、全反射ミラー6に反射されてレーザー光L1の光軸に観察用照明光L3の光軸を一致させた状態で試料Sに照射され、試料Sから反射した観察用照明光L3が、その光軸をレーザー光L1の光軸に一致させた状態で全反射ミラー6に反射されて観察用カメラ13に入射される。
前記分割された複数のビームによって照射位置毎に励起される光が前記ダイクロイックミラーに反射されて前記分光器に入射され、各照射位置の分光をそれぞれ測定する請求項2に記載の分光測定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、光源からのビームが試料に至るまでの間に生じる損失および試料からの反射光がカメラに至るまでの間に生じる損失を抑制することができる分光測定装置、特にラマン分光測定装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、分光測定装置は、試料に照射して光を励起するビームの照射位置を画像によって認識可能な分光測定装置であって、所定波長のビームを発振するビーム光源と、分光器と、観察用カメラと、観察用照明光源と、ピンホールが形成されている全反射ミラーと、前記所定波長のビームのみを透過させるダイクロイックミラーと、を備え、前記全反射ミラーと前記ダイクロイックミラーとが前記ビームの光軸上に配置されており、前記ビーム光源からのビームが、前記全反射ミラーのピンホールを通過して試料に照射され、前記試料に照射されたビームによって励起される光が前記ダイクロイックミラーに反射されて前記分光器に入射され、前記観察用照明光源からの観察用照明光が、前記全反射ミラーに反射されて前記ビームの光軸に前記観察用照明光の光軸を一致させた状態で前記試料に照射され、前記試料から反射した観察用照明光が、その光軸を前記ビームの光軸に一致させた状態で前記全反射ミラーに反射されて前記観察用カメラに入射されるものである。
【0008】
分光測定装置は、ビーム分割手段と、レンズと、をさらに備え、前記ビーム分割手段と前記レンズとが前記ビームの光軸上に配置されており、前記ビーム光源からビームが、ビーム分割手段によって複数のビームに分割され、前記分割された複数のビームが、レンズによって前記全反射ミラーのピンホール位置で集束されるものである。
【0009】
分光測定装置は、前記分割された複数のビームによって照射位置毎に励起される光が前記ダイクロイックミラーに反射されて前記分光器に入射され、各照射位置の分光をそれぞれ測定するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
分光測定装置においては、ビームの光軸上に配置された全反射ミラーとダイクロイックミラーとによってビームが遮蔽されない。また、試料から反射した光の光軸上に配置された全反射ミラーのピンホール以外の部分で反射される試料から反射した光が観察用カメラへ入射される。これにより、ビーム光源からのビームが試料に至るまでの間に生じる損失および試料から反射した光がカメラに至るまでの間に生じる損失を抑制することができる。
【0012】
分光測定装置においては、ビームが複数のビームに分割されてもビームの光軸上に配置された全反射ミラーとダイクロイックミラーとによってビームが遮蔽されない。これにより、ビーム光源からのビームが試料に至るまでの間に生じる損失および試料から反射した光がカメラに至るまでの間に生じる損失を抑制することができる。
【0013】
分光測定装置においては、分割された複数のビームが試料に照射され、各照射位置から発生する光がダイクロイックミラーによって分光器に入射される。これにより、光源からのビームが試料に至るまでの間に生じる損失を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
初めに、
図1から
図4を用いて、分光測定装置であるラマン分光測定装置の一実施形態であるラマン分光測定装置1について説明する。なお、本実施形態において、分光測定装置としてラマン分光測定装置1について具体的に説明するがこれに限定するものではなく、蛍光分光測定装置等の様々なビームを用いる分光測定装置においても同様である。
【0016】
図1に示すように、ラマン分光測定装置1は、試料Sにビームの一種であるレーザー光L1を照射することで試料Sから発生するラマン散乱光L2を検出するものである。ラマン分光測定装置1は、レーザー光源2、レーザー光用第1レンズ3、レーザー光用第2レンズ5、全反射ミラー6、ダイクロイックミラー7、結像レンズ8、ラマン用結像レンズ9、ラマン分光器10、ハーフミラー11、観察用結像レンズ12、観察用カメラ13および観察用照明光源14を具備している。
【0017】
レーザー光源2は、ラマン散乱光L2を発生させるためのレーザー光L1を発振するものである。レーザー光源2は、所定波長のレーザー光L1を発振する。本実施形態において、レーザー光源2は、短波長(400nmから600nm)レーザー光L1を発振するものとする。なお、本実施形態においてレーザー光源2の媒質は、短波長のレーザー光L1を発振するものであればよい。
【0018】
レーザー光用第1レンズ3は、入射された光線を平行光線にするレンズである。レーザー光用第1レンズ3は、レーザー光源2からのレーザー光L1が入射されるように、レーザー光L1の光軸上にレーザー光源2と隣り合うように配置されている。
【0019】
ビーム分割手段であるマイクロレンズアレイ4は、入射されたレーザー光L1を複数のレーザー光に分割するものである。マイクロレンズアレイ4は、マイクロレンズが格子状に形成されている。マイクロレンズアレイ4は、レーザー光用第1レンズ3からのレーザー光L1が入射されるように、レーザー光L1の光軸上にレーザー光用第1レンズ3と隣り合うように配置されている。マイクロレンズアレイ4は、入射されるレーザー光L1を複数の光路に分割してマイクロレンズアレイ4から出射するように構成されている。なお、本実施形態において、ビーム分割手段がマイクロレンズアレイ4から構成されているがこれに限定するものではなく、回折光学素子やマルチ光ファイバなどの光路分割光学系であればよい。
【0020】
レーザー光用第2レンズ5は、入射されたレーザー光L1を集束させるレンズである。レーザー光用第2レンズ5は、マイクロレンズアレイ4からのレーザー光L1が入射されるように、レーザー光L1の光軸上にマイクロレンズアレイ4と隣り合うように配置されている。レーザー光用第2レンズ5は、入射される複数の光路に分割されたレーザー光L1が所定の集束位置Pを通過するようにレーザー光用第2レンズ5から出射するように構成されている。
【0021】
全反射ミラー6は、入射されたレーザー光L1を反射するものである。全反射ミラー6は、中央にピンホール6aが形成されている。全反射ミラー6は、レーザー光用第2レンズ5からのレーザー光L1が入射されるように、レーザー光L1の光軸上にレーザー光用第2レンズ5と隣り合うように配置されている。また、全反射ミラー6は、レーザー光用第2レンズ5を透過した複数の光路に分割されたレーザー光L1の集束位置Pとピンホール6aの中心とが重複するように配置されている。つまり、全反射ミラー6は、複数の光路に分割されたレーザー光L1が全反射ミラー6のピンホール6aの中心で集束して全反射ミラー6と干渉することなくピンホール6aを通過するように構成されている。
【0022】
本実施形態において、全反射ミラー6は、レーザー光L1の光軸に対して45度の傾斜角度になるように配置されている。全反射ミラー6は、レーザー光L1の光軸に対して90度の方向から全反射ミラー6に向かって出射された光線をレーザー光L1の光軸と一致するように全反射ミラー6のピンホール6a以外の部分で反射させるように構成されている。一方、全反射ミラー6は、レーザー光L1の光軸方向から全反射ミラー6に向かって出射された光線をレーザー光L1の光軸に対して90度の方向に全反射ミラー6のピンホール6a以外の部分で反射するように構成されている。なお、本実施形態において、全反射ミラー6、ダイクロイックミラー7およびハーフミラー11の配置角度は、それぞれ45度、90度に限定されるものでは無く、機器構成上の適する配置にすればよい。
【0023】
波長選択ハーフミラーであるダイクロイックミラー7は、所定の波長のみを選択的に透過させるものである。本実施形態において、ダイクロイックミラー7は、レーザー光L1の波長である短波長の光線のみを選択的に透過するように構成されている。ダイクロイックミラー7は、全反射ミラー6のピンホール6aを通過したレーザー光L1が入射するように、レーザー光L1の光軸上に全反射ミラー6と隣り合うように配置されている。また、ダイクロイックミラー7は、レーザー光L1の光軸に対して45度の傾斜角度になるように配置されている。つまり、ダイクロイックミラー7は、長波長であるラマン散乱光L2をレーザー光L1の光軸に対して90度の方向に反射するように構成されている。
【0024】
結像レンズ8は、レーザー光L1の焦点を合わせるレンズである。結像レンズ8は、ダイクロイックミラー7からのレーザー光L1が入射するように、レーザー光L1の光軸上にダイクロイックミラー7と隣り合うように配置されている。また、結像レンズ8は、試料Sに照射されるレーザー光L1の照射点から発生するラマン散乱光L2が結像レンズ8の試料S側から入射される。
【0025】
ラマン用結像レンズ9は、ラマン散乱光L2を集光してラマン分光器10に集光するレンズである。ラマン用結像レンズ9は、ダイクロイックミラー7からの光線が入射するように、レーザー光L1の光軸に対して90度の位置にダイクロイックミラー7と隣り合うようにして配置されている。つまり、ラマン用結像レンズ9は、ダイクロイックミラー7によってレーザー光L1の光軸に対して90度の方向に反射されたラマン散乱光L2が入射するように配置されている。
【0026】
ラマン分光器10は、ラマン散乱光L2からラマンスペクトルを検出するものである。ラマン分光器10は、例えばマルチ光ファイバ、回折格子、エリアセンサとレンズ、ミラー等から構成されている。ラマン分光器10は、ラマン用結像レンズ9からのラマン散乱光L2が入射するように、ラマン用結像レンズ9の光軸上にラマン用結像レンズ9と隣り合うように配置されている。
【0027】
ハーフミラー11は、光線のうち一部分を透過させて残りを反射させるものである。ハーフミラー11は、全反射ミラー6で反射される光線が入射するように、レーザー光L1の光軸に対して90度の位置に全反射ミラー6と隣り合うように配置されている。また、ハーフミラー11は、レーザー光L1の光軸に対して45度の傾斜角度になるように配置されている。つまり、ハーフミラー11は、全反射ミラー6によって反射された光線の光軸に対して90度の方向に光線を反射させる。
【0028】
観察用結像レンズ12は、観察用カメラ13に集光するレンズである。観察用結像レンズ12は、ハーフミラー11によって反射された光線が入射するように、レーザー光L1の光軸に対して平行な方向にハーフミラー11と隣り合うようにして配置されている。観察用結像レンズ12は、観察用カメラ13に集光するように構成されている。
【0029】
観察用カメラ13は、レーザー光L1の照射位置と試料Sの状態と観察するものである。観察用カメラ13は、CCDカメラ等から構成されている。観察用カメラ13は、観察用結像レンズ12からの光線が入射するように観察用結像レンズ12と隣り合ってレーザー光L1の光軸と平行な方向に配置されている。観察用カメラ13は、レーザー光L1の照射点および試料Sの表面状態を視認することができる。
【0030】
観察用照明光源14は、観察用照明光L3を発生させるものである。観察用照明光源14は、全反射ミラー6に観察用照明光L3を照射するように、レーザー光L1の光軸に対して90度の位置にハーフミラー11と隣り合うように配置されている。観察用照明光源14は、観察用照明光用レンズ14a、ハーフミラー11を介して全反射ミラー6に向かって観察用照明光L3を出射するように構成されている。
【0031】
このように構成されるラマン分光測定装置1は、レーザー光源2から照射されるレーザー光L1がマイクロレンズアレイ4によって複数の光路に分割された状態で試料Sに照射される。合わせて、ラマン分光測定装置1は、観察用照明光源14からの観察用照明光L3が全反射ミラー6を介して試料Sに照射される。レーザー光L1の照射により試料Sから発生したラマン散乱光L2は、ダイクロイックミラー7によってラマン分光器10に入射される。一方、観察用照明光源14から試料Sに照射された観察用照明光L3は、試料Sに到達すると試料Sからの反射した光(以下、単に「反射光L4」と記す)になる。試料Sからの反射光L4は、全反射ミラー6に反射されて観察用カメラ13に入射される。
【0032】
次に、
図2を用いて、ラマン分光測定装置1におけるレーザー光L1の光路について具体的に説明する。
【0033】
図2に示すように、ラマン分光測定装置1は、レーザー光源2で発振されたレーザー光L1(薄墨部分参照)がレーザー光用第1レンズ3に入射される。レーザー光L1は、無限遠にある点光源からの平行光線としてレーザー光用第1レンズ3から出射される。レーザー光用第1レンズ3から出射されたレーザー光L1は、マイクロレンズアレイ4に入射される。レーザー光L1は、複数の光路に分割されてマイクロレンズアレイ4から出射される。マイクロレンズアレイ4から出射された複数の光路に分割されたレーザー光L1は、レーザー光用第2レンズ5に入射される。
【0034】
複数の光路からなるレーザー光L1は、全反射ミラー6のピンホール6a位置で集束するようにレーザー光用第2レンズ5から出射される。レーザー光用第2レンズ5から出射されたレーザー光L1は、全反射ミラー6と干渉することなくピンホール6aを通過する。全反射ミラー6を通過したレーザー光L1は、ダイクロイックミラー7に入射される。短波長レーザー光であるレーザー光L1は、長波長を反射するダイクロイックミラー7に反射されることなく透過する。ダイクロイックミラー7を透過したレーザー光L1は、結像レンズ8に入射される。レーザー光L1は、光線毎に試料Sの表面に集光するように結像レンズ8から出射される。レーザー光L1は、試料Sの複数の箇所に照射される。これにより、レーザー光L1は、試料Sの照射箇所からその分子構造に応じたスペクトルを有するラマン散乱光L2を発生させる。
【0035】
このように、ラマン分光測定装置1は、レーザー光L1が複数の光路に分割されてもレーザー光用第2レンズ5によって集束されて全反射ミラー6のピンホール6aを干渉することなく通過するように構成されている。また、ラマン分光測定装置1は、ラマン散乱光L2を反射するダイクロイックミラー7によってレーザー光L1の一部が反射されないように構成されている。つまり、ラマン分光測定装置1においては、レーザー光L1の光軸上に配置された全反射ミラー6とダイクロイックミラー7とによってレーザー光L1が遮蔽されない。これにより、光源からのレーザー光L1が試料Sに至るまでの間に生じる損失を抑制することができる。
【0036】
次に、
図3を用いて、ラマン分光測定装置1におけるラマン散乱光L2の光路について具体的に説明する。
【0037】
図3に示すように、ラマン分光測定装置1は、試料Sに短波長レーザー光L1(
図2参照)を照射することで試料Sの照射箇所から長波長のラマン散乱光L2がそれぞれ発生する。ラマン散乱光L2は、結像レンズ8に試料S側から入射される(以下、結像レンズ8にラマン散乱光L2が試料S側から入射される場合、単に「試料S側レンズ8」と記す)。すなわち、複数の光路からなるラマン散乱光L2は、試料S側レンズ8に入射される。ラマン散乱光L2は、試料S側レンズ8から出射される。
【0038】
試料S側レンズ8から出射されたラマン散乱光L2は、ダイクロイックミラー7に入射される。長波長のラマン散乱光L2は、長波長を反射するダイクロイックミラー7によって反射される。すなわち、複数の光路からなるラマン散乱光L2は、がダイクロイックミラー7によってラマン用結像レンズ9に入射される。ラマン散乱光L2は、ラマン分光器10の入射面に結像するようにラマン用結像レンズ9から出射される。これにより、試料Sのレーザー光L1照射箇所からそれぞれ発生したラマン散乱光L2は、ラマン分光器10によって照射箇所毎にラマンスペクトルが検出される。
【0039】
このように構成することで、ラマン分光測定装置1は、複数の光路に分割されているレーザー光L1によって複数の光路からなるラマン散乱光L2が発生してもダイクロイックミラー7によってのラマン散乱光L2のみをラマン分光器10にむかって反射させる。つまり、ラマン分光測定装置1においては、発生した複数の光路からなるラマン散乱光L2をラマン分光器10に入射させることができる。これにより、ラマン散乱光L2がラマン分光器10に至るまでの間に生じる損失を抑制することができる。
【0040】
次に、
図4を用いて、ラマン分光測定装置1における観察用の光路について具体的に説明する。
【0041】
図4に示すように、ラマン分光測定装置1は、ハーフミラー11に向かって観察用照明光源14から観察用照明光L3が出射される。観察用照明光L3は、その一部がハーフミラー11を透過して全反射ミラー6に向かって出射される。全反射ミラー6に向かって出射された観察用照明光L3は、レーザー光L1の光軸と一致するように全反射ミラー6のピンホール6a以外の部分で反射される。全反射ミラー6で反射された観察用照明光L3は、レーザー光L1の光軸に沿って長波長を反射するダイクロイックミラー7に入射される。観察用照明光L3は、短波長領域の光のみがダイクロイックミラー7を透過して結像レンズ8に入射される。ダイクロイックミラー7を透過した観察用照明光L3の短波長領域の光は、試料Sの表面に集光するように結像レンズ8から出射される。
【0042】
レーザー光L1(
図2参照)と観察用照明光L3の短波長領域の光は、試料Sに照射されるとともに試料Sの表面に反射する。レーザー光L1と観察用照明光L3の短波長領域の光との試料Sからの反射光L4は、結像レンズ8に試料S側から入射される。すなわち、試料Sからの反射光L4は、試料S側レンズ8に入射される。試料Sからの反射光L4は、無限遠にある点光源がからの光線として試料S側レンズ8から出射される。
【0043】
試料S側レンズ8から出射された試料Sからの反射光L4は、長波長を反射するダイクロイックミラー7に入射される。短波長領域の光である試料Sからの反射光L4は、ダイクロイックミラー7を透過する。すなわち、試料Sからの反射光L4は、全反射ミラー6に向かって出射される。全反射ミラー6に向かって出射された試料Sからの反射光L4は、全反射ミラー6によってハーフミラー11に向かって反射される。試料Sからの反射光L4は、その一部がハーフミラー11によって観察用カメラ13に向かって反射される。
【0044】
このように構成することで、ラマン分光測定装置1は、試料Sからの反射光L4がダイクロイックミラー7によって反射されないように構成されている。また、ラマン分光測定装置1は、試料Sからの反射光L4が全反射ミラー6のピンホール6a以外の部分で反射される。つまり、マン分光測定装置においては、レーザー光L1の光軸上に配置された全反射ミラー6とダイクロイックミラー7とによって試料Sからの反射光L4が阻害されない。これにより、試料Sからの反射光L4がカメラに至るまでの間に生じる損失を抑制することができる。なお、本実施形態において、観察用照明光源14からの観察用照明光L3と試料Sからの反射光L4とはハーフミラー11によって同じ光軸になるように構成されているがこれに限定されるものではなく、観察用カメラ13と観察用照明光源14とを一体的に構成してハーフミラー11を省略した構成でもよい。
【0045】
次に、
図5と
図6とを用いて、ラマン分光測定装置1における観察用カメラ13の画像Vおよびラマン分光器10の検出結果について説明する。
【0046】
図5(a)に示すように、観察用カメラ13(
図4参照)は、反射光L4から画像Vを生成する。画像Vには、試料Sとレーザー光L1の照射点s1・s2・s3・・・s16が同時に表示されている。さらに画像Vには、試料Sのうち物質Saの部分と物質Sb(薄墨部分)の部分とが表示されている。
図5(b)に示すように、ラマン分光測定装置1のラマン分光器10は、例えばマルチ光ファイバ、回折格子、エリアセンサとレンズ、ミラー等から構成されている。ラマン分光測定装置1は、レーザー光L1の照射点s1・s2・s3・・・s16からのラマン散乱光L2を、マルチ光ファイバ15の一端である二次元配列部分で受光する。ラマン分光測定装置1は、マルチ光ファイバ15の一端で受光した2次配列を1次元配列に変換してマルチ光ファイバ15の他端から回析格子に出射する。出射された1次元配列に変換されたラマン散乱光L2が回折格子を介してエリアセンサに導かれるように構成されている。これにより、ラマン分光測定装置1は、複数の照射点s1・s2・s3・・・s16のラマン分光スペクトルをラマン分光器10で測定することができる。
【0047】
図6に示すように、ラマン分光器10は、照射点のラマン散乱光L2(
図3参照)のラマンスペクトルを出力する。
図6は照射点s1から照射点s5についてのラマンスペクトルを示す。照射点s1から照射点s5のうち照射点s4と照射点s5との波形の傾向およびピーク位置が照射点s1から照射点s3の波形の傾向およびピーク位置と異なる。この結果より、ラマン分光測定装置1は、照射点s1から照射点s3(
図5(a)における黒点位置)における試料Sを構成している物質Sbと、照射点s4と照射点s5(
図5(a)における白点位置)における試料Sが構成している物質Saと、が異なる物質であることを示すことができる。このように、ラマン分光測定装置1は、複数の照射点s1から照射点s16の試料Sの表面状態とラマン散乱光のラマンスペクトルとを同時に確認することができる。
【0048】
以上、ラマン分光測定装置の一実施形態であるラマン分光測定装置1は、複数の光路に分割したレーザー光L1を試料Sの照射する構成としているがこれに限定されるものではない。また、レーザー光L1の光路を基準として、レーザー光源2側の位置に観察用の光路が設けられ、試料S側の位置にラマン散乱光L2の光路が設けられているがこれに限定するものではない。ラマン分光測定装置1は、レーザー光L1の光路を基準として、全反射ミラー6を用いて観察用の光路を合流させ、ダイクロイックミラー7を用いてラマン散乱光L2の光路を合流させる構成であればよい。上述の実施形態は、代表的な形態を示したに過ぎず、一実施形態の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。