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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-181187(P2017-181187A)
(43)【公開日】2017年10月5日
(54)【発明の名称】衝突試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 7/08 20060101AFI20170908BHJP
   G01M 17/007 20060101ALI20170908BHJP
【FI】
   G01M7/00 H
   G01M17/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-66089(P2016-66089)
(22)【出願日】2016年3月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074332
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100114432
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 寛昭
(74)【代理人】
【識別番号】100138416
【弁理士】
【氏名又は名称】北田 明
(72)【発明者】
【氏名】北村 政裕
(57)【要約】
【課題】テスト車両をガイドレールに対してオフセットした状態での牽引時に、ガイドローラの軸受を損傷してしまうことを抑制することができる衝突試験装置を提供する。
【解決手段】一対の突出端部111A,112Aを有するガイドレール11と、一対の突出端部111A,112Aに係合して案内される複数のガイドローラを有しテスト車両を牽引するための駆動力が伝達されるドーリー12とを備え、ドーリー12は、ガイドレール11の車幅方向の中心に対してテスト車両の車幅方向の中心が車幅方向で位置ずれした状態でテスト車両をドーリー12に連結部材を介して連結するためのオフセット冶具127を備えている衝突試験装置であって、ドーリー12は、テスト車両をオフセットした状態で衝突試験を行う時に、複数のガイドローラに作用するスラスト力を受けるためのスラスト力負担車輪130,131を備えている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テスト車両の衝突試験用の走行路に配置され車幅方向で間隔を置いて位置する一対の突出端部を有するガイドレールと、該ガイドレールの一対の突出端部に係合して案内される複数のガイドローラを有し前記テスト車両を牽引するための駆動力が伝達されるドーリーとを備え、前記ドーリーは、前記ガイドレールの車幅方向の中心に対して前記テスト車両の車幅方向の中心が車幅方向で位置ずれした状態で該テスト車両を該ドーリーに連結部材を介して連結するためのオフセット冶具を着脱可能に備えている衝突試験装置であって、
前記ドーリーは、前記オフセット冶具によりテスト車両をオフセットした状態で衝突試験を行う時に、前記複数のガイドローラに作用するスラスト力を受けるためのスラスト力負担車輪を備え、前記スラスト力負担車輪は、前記一対の突出端部のそれぞれに配置され該各突出端部を挟んで上下に位置する上側車輪及び下側車輪を備え、前記複数のガイドローラそれぞれの上下幅寸法を、前記上下方向で対向する上側車輪の下端と下側車輪の上端との間隔よりも大きく設定していることを特徴とする衝突試験装置。
【請求項2】
前記ドーリーは、前記複数のガイドローラを備えたドーリー本体と、前記ドーリー本体に連結され前記スラスト力負担車輪を備えたユニット部とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の衝突試験装置。
【請求項3】
前記ユニット部が、前記ドーリー本体の前端部に連結される前側ユニット部と、該ドーリー本体の後端部に連結される後側ユニット部とを備えていることを特徴とする請求項2に記載の衝突試験装置。
【請求項4】
前記車幅方向で隣り合う2個の上側車輪と一体回転する第1回転軸及び前記車幅方向で隣り合う2個の下側車輪と一体回転する第2回転軸を備え、前記第1回転軸及び前記第2回転軸のそれぞれが、ニードルベアリングにより回転自在に支持されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の衝突試験装置。
【請求項5】
前記第1回転軸及び前記第2回転軸のそれぞれが、前記ニードルベアリングと玉軸受とにより回転自在に支持されていることを特徴とする請求項4に記載の衝突試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テスト車両をドーリーのオフセット冶具に連結することによりガイドレールに対してオフセットし、そのオフセットしたテスト車両を牽引して被衝突物に衝突させることで衝突試験を行う衝突試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記衝突試験装置を構成するドーリーは、ガイドレールに係合してドーリーをガイドレールに沿って案内するための複数のガイドローラを備えている。各ガイドローラは、上下方向の軸心回りに回転するように構成されている。
【0003】
また、前記ドーリーの左右方向中心に、フックを備えており、このフックにテスト車両の牽引用のワイヤーを引っ掛け、ドーリーに駆動力を伝達することによりテスト車両を牽引し、所定の走行速度に達したテスト車両を被衝突物(衝突用の壁体の他、車両も含む)に衝突させて衝突試験を行うようにしている。その牽引の際に、ドーリーがテスト車両の重心よりも下方に位置しているため、ドーリーにスラスト力が働いてドーリーを浮上させる力が作用する。前記スラスト力が、ドーリーに備えるガイドローラの軸受に作用すると、軸受を損傷してしまうことがある。そのため、ガイドレールを挟んで上側と下側とに位置する上側車輪と下側車輪とをドーリーに備えて、牽引時に作用するスラスト力を上側車輪と下側車輪とで受け止めるように構成したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平6−9360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、上側車輪と下側車輪とで牽引時に作用するスラスト力を受け止める構成になっているものの、ガイドローラの鍔部にもスラスト力が作用する構成になっている。そのため、ガイドローラのみでスラスト力を受ける構成に比べて、ガイドローラの軸受に作用するスラスト力を軽減することができる。しかし、上記特許文献1では、テスト車両をガイドレールに対してオフセットしていない状態で発生するスラスト力を想定している。これに対して、テスト車両をガイドレールに対してオフセットした状態で牽引すると、オフセットした距離に応じたモーメントがガイドローラに加わることになる。そのため、オフセットしていない状態に比べて大きなスラスト力が発生し、その大きなスラスト力を受けることまで特許文献1では考慮されていない。その結果、テスト車両をガイドレールに対してオフセットした状態での牽引時に、ガイドローラが大きなスラスト力を受けて、ガイドローラの軸受を損傷してしまう不都合を発生していた。
【0006】
そこで本発明は、テスト車両をガイドレールに対してオフセットした状態での牽引時に、ガイドローラの軸受を損傷してしまうことを抑制することができる衝突試験装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の衝突試験装置は、テスト車両の衝突試験用の走行路に配置され車幅方向で間隔を置いて位置する一対の突出端部を有するガイドレールと、該ガイドレールの一対の突出端部に係合して案内される複数のガイドローラを有し前記テスト車両を牽引するための駆動力が伝達されるドーリーとを備え、前記ドーリーは、前記ガイドレールの車幅方向の中心に対して前記テスト車両の車幅方向の中心が車幅方向で位置ずれした状態で該テスト車両を該ドーリーに連結部材を介して連結するためのオフセット冶具を着脱可能に備えている衝突試験装置であって、前記ドーリーは、前記オフセット冶具によりテスト車両をオフセットした状態で衝突試験を行う時に、前記複数のガイドローラに作用するスラスト力を受けるためのスラスト力負担車輪を備え、前記スラスト力負担車輪は、前記一対の突出端部のそれぞれに配置され該各突出端部を挟んで上下に位置する上側車輪及び下側車輪を備え、前記複数のガイドローラそれぞれの上下幅寸法を、前記上下方向で対向する上側車輪の下端と下側車輪の上端との間隔よりも大きく設定していることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、オフセット冶具によりテスト車両をオフセットした状態で衝突試験を行う時に、複数のガイドローラに作用するスラスト力をスラスト力負担車輪、つまり各突出端部を挟んで上下に位置する上側車輪及び下側車輪で受けるとともに、複数のガイドローラそれぞれの上下幅寸法を、上下方向で対向する上側車輪の下端と下側車輪の上端との間隔よりも大きく設定することによって、複数のガイドローラに作用するスラスト力を上側車輪及び下側車輪で受けつつ、複数のガイドローラがガイドレールの突出端部に対して上下方向に移動するだけで、複数のガイドローラの軸受にスラスト力を受けることがない。従って、複数のガイドローラの軸受の損傷を確実に抑制することができる。
【0009】
また、本発明の衝突試験装置は、前記ドーリーが、前記複数のガイドローラを備えたドーリー本体と、前記ドーリー本体に連結され前記スラスト力負担車輪を備えたユニット部とを備えていてもよい。
【0010】
上記構成によれば、ドーリーが、ドーリー本体と、ドーリー本体に連結されるユニット部とを備えることによって、テスト車両をオフセットしない状態で牽引する場合は、スラスト力負担車輪を備えたユニット部を連結しないでドーリー本体のみでドーリーを構成することができる。また、テスト車両をオフセットした状態で牽引する場合は、大きなスラスト力を受けることができるように、ドーリー本体にスラスト力負担車輪を備えたユニット部を連結してドーリーを構成することができる。よって、衝突試験の牽引する形態に応じてドーリーの構成を容易に変更することができる。
【0011】
また、本発明の衝突試験装置は、前記ユニット部が、前記ドーリー本体の前端部に連結される前側ユニット部と、該ドーリー本体の後端部に連結される後側ユニット部とを備えていてもよい。
【0012】
上記構成によれば、前側ユニット部と後側ユニット部とをドーリー本体に連結することで、ドーリーが前後方向に浮上しようとする浮上力を軽減することができる。
【0013】
また、本発明の衝突試験装置は、前記車幅方向で隣り合う2個の上側車輪と一体回転する第1回転軸及び前記車幅方向で隣り合う2個の下側車輪と一体回転する第2回転軸を備え、前記第1回転軸及び前記第2回転軸のそれぞれが、ニードルベアリングにより回転自在に支持されていてもよい。
【0014】
上記構成によれば、第1回転軸及び第2回転軸のそれぞれが、ニードルベアリングにより回転自在に支持されているため、各回転軸に作用する軸方向の荷重を良好に受け止めることができる。
【0015】
また、本発明の衝突試験装置は、第1回転軸及び前記第2回転軸のそれぞれが、前記ニードルベアリングと玉軸受とにより回転自在に支持されていてもよい。
【0016】
上記構成によれば、第1回転軸及び第2回転軸のそれぞれが、ニードルベアリングと玉軸受とにより回転自在に支持されているため、各回転軸に作用する軸方向の荷重をニードルベアリングにより受け止めるとともに、各回転軸に作用する径方向の荷重を玉軸受により受け止めることで、各回転軸に作用する軸方向の荷重及び径方向の荷重の両方を良好に受け止めることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、各突出端部を挟んで上下に位置する上側車輪及び下側車輪で受けるとともに、複数のガイドローラそれぞれの上下幅寸法を、上下方向で対向する上側車輪の下端と下側車輪の上端との間隔よりも大きく設定することによって、テスト車両をガイドレールに対してオフセットした状態での牽引時に、複数のガイドローラの軸受を損傷してしまうことを抑制することができる衝突試験装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の衝突試験装置の概略平面図である。
図2】同衝突試験装置の概略縦断正面図である。
図3】ドーリーの斜視図である。
図4】ガイドレールにドーリーを係合させた状態を示す斜視図である。
図5】ドーリーの縦断側面図である。
図6】ドーリーの平面図である。
図7図5におけるA−A線断面図である。
図8】ドーリーに備えるガイドローラの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1及び図2に、本発明の衝突試験装置1を示している。衝突試験装置1は、テスト車両Aの衝突試験用の走行路Rに配置されている。また、衝突試験装置1は、車幅方向で間隔を置いて位置する(この実施形態では、突き合わせられる)一対の突出端部111A,112Aを有するガイドレール11と、ガイドレール11の一対の突出端部111A,112Aに係合して案内される複数(ここでは4個)のガイドローラ121,122,123,124(図5図6参照)を有するドーリー12とを備えている。図1において、テスト車両Aを前方から見たときのテスト車両Aの左側を左側とし、テスト車両Aを前方から見たときのテスト車両Aの右側を右側とし、テスト車両Aの走行方向を向いた側を前側とし、テスト車両Aの走行方向とは反対側を後側として説明する。
【0020】
ガイドレール11は、コの字状の溝形鋼からなる左右一対のレール体111,112を、開口部が対向する状態で左右方向に所定間隔を置いて配置することによって、上側に位置する前記一対の突出端部111A,112Aが間隔を置いて突き合わされた状態になる。一対の突出端部111A,112Aは、水平でフラットな上面111a,112aと、左右方向外方側に向かうほど下方に位置するテーパー面となる下面111b,112bとを有する板状部から構成されている。
【0021】
ガイドレール11の内部には、テスト車両Aを牽引するための無端状のワイヤーロープ13が配置されている。このワイヤーロープ13の往き側の第1ワイヤーロープ部13Aがドーリー12に備えている咬合体125にクランプされ(図2参照)、戻り側の第2ワイヤーロープ部13Bがウィンチ等の駆動手段(図示せず)に接続されている。これにより、駆動手段からの駆動力がワイヤーロープ13に伝達されることによって、ドーリー12がガイドレール11に沿って移動し、テスト車両Aが牽引される。尚、咬合体125と第1ワイヤーロープ部13Aとのクランプは、ドーリー12に備えている2つのトリガレバー126,127(図1参照)が走行路R上に配置された2つのストライカ(図示せず)にそれぞれ衝突することによって、解除されるようになっている。解除された後のドーリー12は、走行路R上に配置された制動停止装置(図示せず)に衝突して停止する。ここでは、テスト車両Aを牽引する索状体として、鋼製のワイヤーロープ13を用いているが、金属製のチェーンでもよく、テスト車両Aを牽引する時に破損しない強度を有するものであれば、どのような索状体であってもよい。
【0022】
ドーリー12は、ガイドレール11の左右方向の中心Gに対してテスト車両Aの左右方向の中心Cが左右方向で位置ずれした状態でテスト車両Aをドーリー12にワイヤー(連結部材)21を介して連結するためのオフセット冶具127を着脱可能に備えている。このオフセット冶具127は、頂部が左右方向右側に向いた平面視ほぼ6角形状の板状に構成され、頂部にワイヤー21を引っ掛けることができる側面視ほぼコの字状のフック部127Aを備えている。このフック部127Aは、図2に示すように、前方へ突出する上下一対のワイヤー支持部127a,127bを備え、上側のワイヤー支持部127aの前後寸法を、下側のワイヤー支持部127bの前後寸法よりも長くしている。このようにフック部127Aを構成することによって、後述する牽引走行中のドーリー12にクランプされている第1ワイヤーロープ部13Aがクランプ解除された時に、ドーリー12に逆方向(後方向)の加速度が作用して、ドーリー12とテスト車両Aとの間隔が短くなり、フック部127Aからワイヤー21が外れてしまうことを抑制することができる。
【0023】
また、ドーリー12には、図3に示すように、オフセットしないで衝突試験を行う場合(テスト車両Aの左右方向の中心Cとガイドレール11の左右方向の中心Gとが一致又はほぼ一致する状態で衝突試験を行う場合)に、前記ワイヤー21を引っ掛けてテスト車両Aを引っ張ることができる左右一対の係止片を有する第2のフック128をドーリー12の左右方向の中心に位置する状態で備えている。尚、第2のフック128に引っ掛けられたワイヤー21を解除するためのエスケープメント129を更に備えている。尚、図4では、第2のフック128及びエスケープメント129を取り外した状態を示している。
【0024】
図1及び図4に示すように、オフセット冶具127のドーリー12への取付側基端部の前後方向中央部に、前記第2のフック128(図3参照)との接触を回避するために前後方向に長い開口127Kが形成されている。また、前記オフセット冶具127のドーリー12への取付側基端部の前後方向前後端部のそれぞれに、着脱用の左右一対の固定ボルトB,B(図4では省略している)の軸部が貫通する左右方向に長い長孔127N,127Nが形成されている。これら長孔127N,127Nを利用して、ドーリー12に対するオフセット冶具127の左右方向の位置を調整することで、ドーリー12に対するテスト車両Aの左右方向のオフセット量を調整することができる。
【0025】
また、ドーリー12は、図5及び図6に示すように、前記4個のガイドローラ121,122,123,124を備えたドーリー本体12Aと、ドーリー本体12Aに着脱自在に連結される前後のユニット部12B,12Cとを備えている。前後のユニット部12B,12Cのそれぞれには、オフセット冶具127によりテスト車両Aをオフセットした状態で衝突試験を行う時に、4個のガイドローラ121,122,123,124に作用するスラスト力を受けるための左右のスラスト力負担車輪130,131を備えている。ここでは、前後のユニット部12B,12Cをドーリー本体12Aにボルト等の締結手段により着脱自在に構成しているが、係合手段により着脱自在に構成してもよいし、場合によっては、溶接等により前後のユニット部12B,12Cをドーリー本体12Aに取り外し不能に連結してもよい。
【0026】
前記のように、ドーリー12が、ドーリー本体12Aと、ドーリー本体12Aに着脱自在に連結される前後のユニット部12B,12Cとを備えることによって、テスト車両Aをオフセットしない状態で牽引する場合は、スラスト力負担車輪130,131を備えた前後のユニット部12B,12Cを連結しないでドーリー本体12Aのみでドーリー12を構成することができる。また、テスト車両Aをオフセットした状態で牽引する場合は、大きなスラスト力を受けることができるように、ドーリー本体12Aに左右のスラスト力負担車輪130,131を備えた前後のユニット部12B,12Cを連結してドーリー12を構成することができる。よって、衝突試験の牽引する形態に応じてドーリー12の構成を容易に変更することができる。また、前側ユニット部12Bと後側ユニット部12Cとをドーリー本体12Aに連結することで、ドーリー12が前後方向に浮上しようとする浮上力を軽減することができる。尚、前記のようにテスト車両Aをオフセットした状態で牽引すると、オフセットした距離に応じたモーメントが発生するため、オフセットしない状態で牽引する場合に比べて大きなスラスト力が発生することになる。
【0027】
図3図6に示すように、前側のユニット部12Bに備える左側のスラスト力負担車輪130は、左側の突出端部111Aに配置され左側の突出端部111Aを挟んで上下に位置する上側車輪1301及び下側車輪1311を備えている。また、前側のユニット部12Bに備える右側のスラスト力負担車輪131は、右側の突出端部112Aに配置され右側の突出端部112Aを挟んで上下に位置する上側車輪1301及び下側車輪1311を備えている。これに対して、後側のユニット部12Cに備える左側のスラスト力負担車輪130は、左側の突出端部111Aに配置され左側の突出端部111Aを挟んで上下に位置する上側車輪1301及び下側車輪1311を備えている。また、後側のユニット部12Cに備える右側のスラスト力負担車輪131は、右側の突出端部112Aに配置され右側の突出端部112Aを挟んで上下に位置する上側車輪1301及び下側車輪1311を備えている。
【0028】
前記後側のユニット部12Cに備える上側車輪1301及び下側車輪1311について図7に基づいて詳述する。尚、図7は、後側から見た断面図であるため、前側から見た断面図に対して左右が逆(反対)になっている。右側の上側車輪1301は、後側のユニット部12Cを構成する金属製のブロック体12C1の上部に左右方向から貫通して回転自在に支持される第1回転軸132に一体的に形成される右側の車輪本体1301Aと、右側の車輪本体1301Aの外周を覆うように着脱自在に取り付けられる車輪カバー1301Bと、を備えている。左側の上側車輪1301は、第1回転軸132の左端から一体的に左側へ延びる小径の突出部132Aの螺軸部132Nに螺合する螺子部1302Nを備えた左側の車輪本体1302Aと、左側の車輪本体1302Aの外周を覆うように着脱自在に取り付けられる車輪カバー1302Bと、を備えている。また、左側の下側車輪1311は、後側のユニット部12Cを構成する金属製のブロック体12C1の下部に回転自在に支持される第2回転軸133に一体的に形成される左側の車輪本体1311Aと、左側の車輪本体1311Aの外周を覆うように着脱自在に取り付けられる車輪カバー1311Bと、を備えている。右側の下側車輪1311は、第2回転軸133の右端から一体的に右側へ延びる小径の突出部133Aの螺軸部133Nに螺合する螺子部1312Nを備えた右側の車輪本体1312Aと、右側の車輪本体1312Aの外周を覆うように着脱自在に取り付けられる車輪カバー1312Bと、を備えている。
【0029】
前記のように、車輪カバー1301B…を車輪本体1301A…に着脱自在に取り付けられているので、車輪カバー1301B…が摩耗した場合に、摩耗した車輪カバー1301B…を車輪本体1301A…から取り外して新しい車輪カバー1301B…を取り付けることにより、上側車輪1301又は下側車輪1311全体を交換するよりも、コスト面及び交換作業面のいずれにおいても有利になる。また、下側車輪1311の車輪カバー1311B,1312Bの外周面1311b,1312bが、突出端部111A又は112Aの下面111b,112bのテーパー面に平行となるように左右方向外側ほど下方に位置する傾斜面になっている。従って、下側車輪1311が浮き上がった時に、突出端部111A又は112Aの下面111b,112bに下側車輪1311の車輪カバー1311B,1312Bの外周面1311b,1312bが面接触できるようにしている。また、右側の上側車輪1301の車輪本体1301Aが右端部に右側ほど先細りとなる先細り部を備えているのに対して、左側の上側車輪1301の車輪本体1302Aが先細り部を備えていない形状、つまり図7に示す断面形状が長方形状になっているため、左右両端部における重量バランスが取れていない。このため、下側車輪1311において上側の左右の車輪を反対(逆)に配置することで重量バランスが崩れないようにしている。また、右側の上側車輪1301の車輪本体1301Aと左側の上側車輪1301の車輪本体1302Aは、ネジ形状で結合されており、走行中の左側の上側車輪1301の車輪本体1302Aの回転方向が右側の上側車輪1301の車輪本体1301Aに対して締まる方向になるよう、右側に上側車輪1301の車輪本体1301Aを配置し、左側に上側車輪1301の車輪本体1302Aを配置している。これに対して、突出端部111A,112Aの下面111b,112bに接触して回転する下側車輪1311の回転方向が上側車輪1301と反対(逆)方向になるため、左側に下側車輪1311の車輪本体1311Aを配置し、右側に下側車輪1311の車輪本体1312Aを配置している。尚、前記前側のユニット部12Bに備える上側車輪1301及び下側車輪1311も、前記後側のユニット部12Cに備える上側車輪1301及び下側車輪1311と同様であるため、説明を省略する。
【0030】
4個のガイドローラ121,122,123,124は、上下端に鍔部t1,t2を有する回転体から構成され、かつ、上下軸芯回りで回転自在にドーリー本体12Aに取り付けられている。図8にガイドローラ122を示している。また、図6に示すように、4個のガイドローラ121,122,123,124のうちの右側の2個のガイドローラ121,124が右側の突出端部112Aに係合し、左側の2個のガイドローラ122,123が左側の突出端部111Aに係合している。また、右側の2個のガイドローラ121,124がドーリー本体12Aの前後端部に配置され、左側の2個のガイドローラ122,123のうちの前側のガイドローラ122が、右側の前側のガイドローラ121よりも後側に配置され、左側の2個のガイドローラ122,123のうちの後側のガイドローラ123が、右側の後側のガイドローラ124よりも前側に配置されている。従って、左側の前後のガイドローラ122,123の間隔よりも右側の前後ガイドローラ121,124の間隔が大きくなっている。
【0031】
また、各ガイドローラ121の上下幅寸法W(図8参照、ガイドローラ122の上側の鍔部t1の下端からガイドローラ122の下側の鍔部t2の上端までの寸法)を、上下方向で対向する上側車輪1301,1302の下端と下側車輪1312,1311の上端との間隔L(図7参照)よりも大きく設定している。
【0032】
また、各ガイドローラ122は、図8に示すように、ドーリー12に上下方向に取り付け支持された支持棒137に、2個の玉軸受138,138と1個のニードルベアリング139を介して回転自在に支持されている。2個の玉軸受138,138が上下端部にそれぞれ配置され、2個の玉軸受138,138間にニードルベアリング139が配置されている。ニードルベアリング139は、支持棒137の外周側に周方向に沿って配設される複数のニードルコロ(図示せず)と、複数のニードルコロを保持する保持器139Aとを備えている。各玉軸受138は、内輪138Aと、外輪138Bと、内輪138Aと外輪138Bとの間に介装される複数のボール138Cとを備えている。尚、上側の玉軸受138とニードルベアリング139の上端部との間及び下側の玉軸受138とニードルベアリング139の下端部との間のそれぞれには、スペーサ140を備えている。
【0033】
図7に示すように、第1回転軸132及び第2回転軸133のそれぞれが、2個のニードルベアリング134,134と2個の及び玉軸受135,135とにより回転自在に後側ユニット部12Cのブロック体12C1に支持されている。2個の玉軸受135,135が、2個のニードルベアリング134,134の外側に配置されている。このように、第1回転軸132及び第2回転軸133のそれぞれが、ニードルベアリング134,134と玉軸受135,135とにより回転自在に支持されているため、各回転軸132,133に作用する軸方向の荷重及び径方向の荷重の両方とも良好に受け止めることができる。
【0034】
各ニードルベアリング134は、第1回転軸132及び第2回転軸133の外周側に周方向に沿って配設される複数のニードルコロ(図示せず)と、複数のニードルコロを保持する保持器134Aとを備えている。各玉軸受135は、内輪135Aと、外輪135Bと、内輪135Aと外輪135Bとの間に介装される複数のボール135Cとを備えている。尚、ニードルベアリング134と玉軸受135との間にスペーサ136が介在されている。
【0035】
前記構成されたドーリー12を用いてテスト車両Aを牽引して衝突対象物に衝突させる場合について説明する。テスト車両Aのワイヤー21をオフセット冶具127に引っ掛けることによって、ガイドレール11の左右方向の中心Gに対して所定距離だけ位置をずらせた位置にテスト車両Aの左右方向の中心Cを位置させた状態でテスト車両Aをセットする。この状態から、ウィンチ等の駆動手段を駆動することによって、第1ワイヤーロープ部131が引っ張られて、テスト車両Aがオフセット冶具127を介して牽引走行する。このとき、複数(4個)のガイドローラ121,122,123,124に作用するスラスト力F(図2参照)を、上側車輪1301及び下側車輪1311で受けつつ、複数のガイドローラ121,122,123,124がガイドレール11の突出端部111A,112Aに対して上下方向に移動するだけで、複数のガイドローラ121,122,123,124の軸受、ここでは2個の玉軸受138,138及び1個のニードルベアリング139にスラスト力を受けることがない。従って、複数のガイドローラ121,122,123,124の軸受(2個の玉軸受138,138及び1個のニードルベアリング139)の損傷を確実に抑制することができる。前記のように牽引されて走行中のドーリー12にクランプされている第1ワイヤーロープ部13Aがクランプ解除された後、被衝突物にテスト車両Aが衝突する。被衝突物としては、固定壁の他、テスト車両Aに衝突させる第2のテスト車両であってもよい。この第2のテスト車両は、テスト車両Aとは反対側から牽引して走行させることになる。
【0036】
尚、本発明に係る衝突試験装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0037】
前記実施形態では、ドーリー12が、複数(4個)のガイドローラ121,122,123,124を備えたドーリー本体12Aと、ドーリー本体12Aに連結されスラスト力負担車輪130,131を備えた前後のユニット部12B,12Cとを備えた構成であったが、複数(2個以上であれば何個でもよい)のガイドローラを備えたドーリー本体12Aに直接スラスト力負担車輪130,131を取り付ける構成であってもよい。
【0038】
また、前記実施形態では、4個の上側車輪1301とこれに上下方向で対向する4個の下側車輪1311の合計8個の車輪をドーリー12に備えたが、2個の上側車輪1301とこれに上下方向で対向する2個の下側車輪1311の合計4個の車輪をドーリー12に備えてもよい。この場合、ドーリー12の前後方向ほぼ中央部に配置してもよいし、ドーリー12の前後方向中央部よりも前方寄り又は後方寄りに配置してもよい。
【0039】
また、前記実施形態では、第1回転軸132及び第2回転軸133のそれぞれを支持する軸受として、ニードルベアリング134と玉軸受135の両方を備えた構成であったが、いずれか一方のみを設けてもよい。また、ニードルベアリング134及び玉軸受135の個数は、自由に変更できる。
【符号の説明】
【0040】
1…衝突試験装置、11…ガイドレール、12…ドーリー、12A…ドーリー本体、12B…前側ユニット部、12C…後側ユニット部、12C1…ブロック体、13…ワイヤーロープ、13A…第1ワイヤーロープ部、13B…第2ワイヤーロープ部、21…ワイヤー、111,112…レール体、111A,112A…突出端部、111a,112a…上面、111b,112b…下面、121,122,123,124…ガイドローラ、125…咬合体、126,127…トリガレバー、127…オフセット冶具、127A…フック部、127K…開口、127N…長孔、127a…上側のワイヤー支持部、127b…下側のワイヤー支持部、128…第2のフック、129…エスケープメント、130,131…スラスト力負担車輪、132…第1回転軸、133…第2回転軸、132A,133A…突出部、132N,133N…螺軸部、134…ニードルベアリング、134A…保持器、135…玉軸受、135A…内輪、135B…外輪、135C…ボール、136…スペーサ、137…支持棒、138…玉軸受、138A…内輪、138B…外輪、138C…ボール、139…ニードルベアリング、139A…保持器、140…スペーサ、1301,1302…上側車輪、1301A,1302A…車輪本体、1301B,1302B…車輪カバー、1302N,1312N…螺子部、1311,1312…下側車輪、1311A,1312A…車輪本体、1311B,1312B…車輪カバー、1311b,1312b…外周面、A…テスト車両、B…固定ボルト、C…テスト車両の左右方向の中心、F…スラスト力、G…ガイドレールの左右方向の中心、L…間隔、R…走行路、t1,t2…鍔部、W…上下幅寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8