【解決手段】本発明の顔画像認証装置1は、顔画像摂動手段43、摂動類似度算出手段45、統合類似度算出手段46を有する。顔画像摂動手段43は、入力顔画像をロール角方向に所定の角度ずつ摂動、すなわち回転させた摂動顔画像を生成し、摂動類似度算出手段45は、登録顔画像との摂動類似度をその角度ごとに求める。統合類似度算出手段46は、最高の摂動類似度の角度を摂動中心角度に選び、さらに摂動中心角度を含む範囲の角度にて求められた摂動類似度から統合類似度を計算することで、傾いた眼鏡の影響を排除して認証する。その際、摂動中心角度近傍の角度にて求められた摂動類似度を統合類似度の計算には用いず、さらに角度変化に対する摂動類似度の変化の様子を参照するのが好適である。
前記統合類似度算出手段は、前記判定用範囲を、前記摂動中心角度との差が前記上限角度よりも小さい下限角度以下の範囲を除外して設定し、前記統合類似度を求めることを特徴とした請求項1に記載の顔画像認証装置。
前記統合類似度算出手段は、前記判定用範囲の摂動角度について算出された前記摂動類似度の平均を前記統合類似度として求めることを特徴とした請求項1または2に記載の顔画像認証装置。
前記統合類似度算出手段は、前記摂動中心角度との差が前記上限角度よりも小さい角度以下である前記摂動角度について算出された前記摂動類似度の平均値と前記判定用範囲の摂動角度について算出された前記摂動類似度の平均値との差が大きいほど前記統合類似度を小さく補正することを特徴とした請求項1から3のいずれか1項に記載の顔画像認証装置。
前記統合類似度算出手段は、前記判定用範囲の摂動角度について算出された前記摂動類似度の分散が大きいほど前記統合類似度を小さく補正することを特徴とした請求項3または4に記載の顔画像認証装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を出入管理システムに適用した場合の一実施形態について図を参照しつつ説明する。
図1は、本実施の形態にかかる顔画像認証装置が適用された出入管理システムが設置され、運用される様子を示す模式図である。
図1に示すように、顔画像認証装置1は、電気錠制御装置3を介して不図示の電気錠を制御することにより部屋の入口4の出入を管理する。撮像装置2は、入口4に通じる通路を撮影領域として撮影できるように入口4の近傍の壁面または天井に、撮影方向をやや下方へ向け、その通路側へ向けた状態で取り付けられる。これにより撮像装置2は、進行方向6に沿って入口4に向かう人物5を撮像することができる。
【0016】
撮像装置2は、例えば、2次元に配列され、受光した光量に応じた電気信号を出力する光電変換素子(例えば、CCDセンサ、C−MOSなど)と、その光電変換素子上に撮影領域の像を結像するための結像光学系を有する。撮像装置2は、撮影領域内を通行する人物5の顔を順次撮影できるように人物の進行方向6の略正面に設置される。そして撮像装置2は、所定の時間間隔(例えば、200msec)ごとに、撮影領域を撮影して入力画像を取得する。入力画像は、グレースケールまたはカラーの多階調の画像とすることができる。本実施形態では、入力画像を、横1280画素×縦960画素を有し、RGB各色について8ビットの輝度分解能を持つカラー画像とした。ただし、入力画像として、この実施形態以外の解像度及び階調を有するものを使用してもよい。撮像装置2は、顔画像認証装置1と接続され、取得した入力画像を顔画像認証装置1へ出力する。
【0017】
電気錠制御装置3は、不図示の電気錠を制御する制御装置である。電気錠制御装置3は、顔画像認証装置1と接続され、顔画像認証装置1からの信号に従って、電気錠を施錠又は解錠する。電気錠は、入口4を常時施錠としており、顔画像認証装置1が人物5を通行許可された正当な権限を有すると判定すると、顔画像認証装置1から解錠の信号を受け、例えば5秒のみ解錠する。その後、人物5が入口4を通行するか、一定時間経過後(例えば5秒後)に自動的に施錠する。
【0018】
顔画像認証装置1は、CPU、MPU、周辺回路、端子、各種メモリなどから構成され、撮像装置2が取得した入力画像から、人物5の顔画像を抽出後、認証し、人物5が入口4の通行を許可された人物であると認証されれば電気錠制御装置3に対して電気錠(不図示)の解錠制御信号を出力する。
顔画像認証装置1は、顔画像取得部10、出力部20、記憶部30、画像処理部40から構成される。以下、顔画像認証装置1の各部について
図2を参照して詳細に説明する。
【0019】
画像取得部10は、撮像装置2と接続されるインターフェース回路、例えばビデオインターフェース及びオーディオインターフェースあるいはユニバーサル・シリアル・バスといったシリアルバスに準じるインターフェース回路を有する。画像取得部10は、撮像装置2から入力画像を取得して画像処理部40へ出力する。なお、本実施形態では、画像取得部10は、撮像装置2が撮影した順に入力画像を画像処理部40へ出力するが、ハードディスク等の媒体から入力画像を撮影時刻の古い順に取得し、画像処理部40へ出力するようにしてもよい。
【0020】
出力部20は、外部の接続機器である電気錠制御装置3と接続するインターフェース及びその制御回路である。そして出力部20は、画像処理部40から人物についての認証成功を示す信号を受け取ると、接続されている電気錠制御装置3に対して解錠制御を行う信号を出力する。また、出力部20は、不図示の認証結果表示ランプと接続され、画像処理部40から人物についての認証成功、認証失敗を示す信号を受け取ると、その認証結果に応じて当該認証結果表示ランプを点灯または消灯させてもよい。あるいは、ネットワーク接続することとして、認証結果を遠隔地に設置された監視センタ装置へ出力するようにしてもよい。
【0021】
記憶部30は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の半導体メモリ、又は磁気記録媒体及びそのアクセス装置若しくは光記録媒体及びそのアクセス装置などを有する。記憶部30は、顔画像認証装置1を制御するためのコンピュータプログラム及び各種データを記憶し、画像処理部40との間でこれらの情報を入出力する。
各種データには、入口4の通行を許可されている登録者の氏名、登録者ID及び登録顔画像等の登録者データ31が含まれる。
【0022】
登録者データ31の一部である登録顔画像は認証処理に用いられる。顔画像そのものが記憶されてもよいが、予め特徴量を成分とする特徴量ベクトルを求めておき記憶しておく。顔画像そのものが記憶されている場合は、特徴量を成分とした特徴量ベクトルを認証処理のたびに求める。登録顔画像と特徴量ベクトルの両方が記憶されてもよい。登録顔画像が記憶される場合には、後述する特徴点が登録作業の際に設定された上で登録されるのが好適である。
一人分の登録者データ31には1枚または複数枚分の登録顔画像または特徴量ベクトルを用意する。
記憶部30には、撮像装置2が取得した入力画像から人物5の画像を抽出する際の背景差分処理に用いるために、撮影領域が無人のときに取得した背景画像を記憶してもよい。
【0023】
画像処理部40は、例えば、いわゆるコンピュータにより構成され、撮像装置2から取得した入力画像に対し記憶部30を参照しながら各種処理を実行し、その処理結果を出力部20に外部へ出力させる。そのために画像処理部40は、顔検出手段41、摂動中心点算出手段42、顔画像摂動手段43、特徴量算出手段44、摂動類似度算出手段45、統合類似度算出手段46、認証判定手段47を有する。
画像処理部40の各手段は、マイクロプロセッサ、メモリ、その周辺回路及びそのマイクロプロセッサ上で動作するソフトウェアにより実装される機能モジュールである。これらの手段を、ファームウェアにより一体化して構成してもよい。また、これらの手段の一部または全てを、独立した電子回路、ファームウェア、マイクロプロセッサなどで構成してもよい。以下、画像処理部40の各手段について詳細に説明する。
【0024】
顔検出手段41は、画像取得部10から入力された入力画像から人物5の顔部分を検出して入力顔画像とし、正規化の後に摂動中心点算出手段42に出力する。
顔部分の検出は、従来から提案されている周知の方法を適宜採用すればよい。例えば、記憶部30に予め背景画像を記憶しておいて、画素ごとに入力画像と一定以上の差がある変化領域を人物5の全身の領域として抽出し、その変化領域内部にてエッジを抽出して二値化し、楕円形状を検出する一般化ハフ変換を作用させて顔部分から入力顔画像を切り出せばよい。あるいは多数の顔画像を学習データとして用意し、統計的な学習処理により顔部分を直接抽出する識別器を構築して用いてもよい。
【0025】
そして顔検出手段41は、検出した入力顔画像から周知の手法にて特徴点を抽出する。特徴点を抽出した結果を
図3に示す。
図3には、入力顔画像300について●印に示すように右目中心301、左目中心302、鼻尖点303、口点304などから抽出された特徴点が合計20点について示されている。
顔検出手段41は、抽出された特徴点を用いて入力顔画像の正規化処理を行う。そのために右目中心301と左目中心302を結んだ直線を考え、その直線が予め決めておいた長さになるように入力顔画像を拡大縮小する。
【0026】
摂動中心点算出手段42は、顔検出手段41にて検出された入力顔画像を後述する顔画像摂動手段43にて摂動させる際の中心となる摂動中心点を算出する。本発明においては、摂動とは顔画像についてのロール角方向の回転を意味する。
摂動中心点算出手段42は、
図3の入力顔画像300に定義された座標系(不図示)において、顔検出手段41が抽出した特徴点からいくつかを選び、その座標値の平均値から摂動中心点305を求める。例えば右目中心点301、左目中心点302、鼻尖点303、口点304を用いればよい。全ての特徴点を用いてもよい。求めた摂動中心点305の座標情報および入力顔画像300を顔画像摂動手段43に出力する。
【0027】
顔画像摂動手段43は、入力顔画像300を摂動中心点305を中心に画像のロール角方向に所定の摂動角だけ回転させた摂動顔画像を生成する。
本発明でいうロール角方向について、
図1を用いて説明する。
図1において、撮像装置2と人物5の顔との位置関係を踏まえたXYZ座標系を定義している。
X軸は人物5の顎から頭頂に向けて、Y軸は人物5の左耳から右耳に向けて、Z軸は撮像装置2から人物5の顔の表側を通り後頭部に向けて定義される。各軸はそれぞれ互いに直交しており、3次元直交座標系となっている。本発明でいうロール角方向とは、Z軸の周りでの回転であり、矢印7に示す方向を正と定義する。
【0028】
図4を用いて摂動顔画像を説明する。
図4(a)には、入力顔画像300に、摂動の基準となる正中線307が重ねて示されている。正中線307は顔の表面の左右方向の中央に、額から顎にかけて定義される基準線であり、本実施の形態では、既に特徴点の一部として抽出されている鼻根点306、鼻尖点303、口点304を結んだ直線として定義される。
図4(a)のように、回転処理を行わず顔検出手段41にて検出されたそのままの状態を摂動角度が0度と定義し、時計回りを正の角度とする。
【0029】
そして
図4(b)に示すように、顔画像摂動手段43は、摂動中心点305を中心に最大の摂動限界角度まで所定の刻みごとに摂動角度308だけに回転させ、それぞれの摂動角度の顔画像を摂動顔画像309として求める。
摂動限界角度は、顔画像認証技術において登録顔画像との照合処理を行う意味のある、人の顔らしい範囲として定義することができる。または、人の首の関節の可動範囲を考慮し、胴体や脚が直立の状態にて最大限頭部を左右方向に傾けられる角度から決めても良い。
あるいは、後述する特徴量算出手段44にて用いる特徴量としてHoG特徴量を採用した場合には、直線成分の回転方向の分解能に基づいて決定してもよい。すなわち一般的なHoG特徴量は1回転を8方向に分割して、22.5度ごとのエッジ強度をヒストグラム化して特徴量とするが、登録顔画像と入力顔画像との逆回転方向のずれを考慮して、その半分である11.25度を摂動限界角度の最低値とし、同一人物の登録顔画像と入力顔画像ならば同一人物と認証される最大の摂動角度を実験的に求め、摂動限界角度の最大値に設定すればよい。例えば摂動限界角度の最大値が実験的に20度と求められた場合、本実施の形態では摂動限界角度を±15度とする。
また摂動角度は1度刻みで変化させることとする。処理速度や精度との関係から刻みを1度よりも粗くても細かくても良い。
【0030】
特徴量算出手段44は、摂動類似度算出手段45にて摂動顔画像と登録者データ31の登録顔画像との類似度計算に用いる特徴量を、摂動顔画像309から算出する。
特徴量は、
図5に例を模式的に示すように、エッジの強度やエッジの方向に基づくものを好適なものとして用いることとする。本実施の形態では、ガボールウェーブレット特徴量500や、HoG特徴量501、周波数スペクトル(不図示)など顔画像認証の分野では周知のものを適宜選択して用いることとする。
【0031】
特徴量算出手段44は、顔検出手段41が抽出した各特徴点、本実施の形態では20点について、それぞれの特徴点を中心に所定の大きさの小領域を定義し、当該小領域内部の画像から特徴量を求めることとする。小領域の大きさは用いる特徴量ごとに可変とすることができ、例えばHoG特徴量では32×32画素とすることができる。
または特徴量算出手段44は、特徴点を中心にした小領域内部の画像からのみならず、摂動顔画像から全ての特徴点を含み、共通の形と大きさにて眉毛から鼻、顎付近にかけて切り出した矩形領域全体から特徴量を求めてもよい。
特徴量算出手段44は、求めた特徴量を成分とする特徴量ベクトルを生成して、記憶部30の一時記憶領域に記憶させるとともに、摂動類似度算出手段45に出力する。
【0032】
摂動類似度算出手段45は、摂動顔画像から求めた特徴量ベクトルと、記憶部30に記憶されている各登録者の特徴量ベクトルとの類似度を、摂動角度を異ならせた摂動顔画像ごとに求めて、その登録者のその摂動角度における摂動類似度として記憶部30に一時記憶させる。特徴量ベクトルどうしの類似度の算出方法は周知の方法でよく、0で除算しないよう留意しつつL2距離の逆数として定義すればよい。
さらに摂動類似度算出手段45は、摂動類似度の最大値にて全ての摂動類似度を除算することにより最大1になるよう正規化する。
そして摂動類似度算出手段45は、記憶部30に記憶されている登録者データ31ごとに同様の処理を行う。
【0033】
統合類似度算出手段46は、記憶部30に一時記憶されている摂動類似度を統合して、入力顔画像の人物と登録顔画像の人物が一致するか否かを判定するための統合類似度を算出する。本実施の形態では、摂動類似度の統合は平均処理とする。別の実施形態において統合類似度算出手段46は、摂動類似度の分散値を求めてその分散値に応じた係数を摂動類似度の最高値から減算したり、除算して統合して
もよい。
この際、統合類似度算出手段46は、単純に全ての摂動類似度を用いるのではなく、以下のような処理にて統合類似度を求める。
図6を用いて説明する。
図6(a)には、摂動角度に対する摂動類似度の変化について、本人どうしの場合が符号800の実線グラフにて、他人どうしの場合が符号810の一点鎖線のグラフにて示されている。
【0034】
ここで、摂動角度が0度付近の摂動類似度を参照して統合すると、必ずしも他人どうしの統合類似度よりも本人どうしの統合類似度が高くなるとは限らない。
これは
図6(b)に示す登録顔画像710において、登録作業時に登録者が気づかない程度に眼鏡711が向かって時計方向にわずかに傾いているのに対し、
図6(c)に示す入力顔画像720では逆に眼鏡721が向かって反時計方向にわずかに傾いている場合に発生する。
すなわち、登録顔画像710と入力顔画像720が同一人物のものであっても、摂動角度が0度では摂動類似度が最高にはならず
図6(a)に示すように、摂動角度が数度の場合に最高値801をとることがある。
よって他人どうしの摂動類似度811と比較すると、摂動角度が0度付近の摂動類似度の統合では誤った認証結果につながりかねない。
【0035】
そこで統合類似度算出手段46は、記憶部30に記憶されている各登録者の摂動角度ごとの摂動類似度を参照して登録者ごとに摂動類似度の最高値を特定し、最高値が算出された摂動角度をその登録者の摂動中心角度として決定する。
そして統合類似度算出手段46は、各登録者ごとの摂動類似度について摂動中心角度から一定範囲の摂動類似度を統合する。これにより、
図7に示すように、仮に摂動中心角度では本人どうしの摂動類似度の最高値801の方が他人どうしの摂動類似度の最高値811よりも低くても、摂動中心角度を中心にした一定範囲を統合することにより本人の統合類似度の方が高くなり本人棄却が防止できることになる。
【0036】
さらに、統合類似度算出手段46は、摂動類似度の統合処理にあたり、用いる摂動類似度の範囲を以下のように限定する。
図8を用いて説明する。
図8(a)に示すように、統合類似度算出手段46は、摂動中心角度600を中心とし上限角度605を設定し、さらに上限角度605よりも小さな下限角度604を設定して、下限角度604から定まる特定範囲602に含まれる摂動角度について求められた摂動類似度は統合類似度の算出には用いず、下限角度604と上限角度605から定まる判定範囲603に含まれる摂動角度を用いて統合類似度を求めることとする。
【0037】
これは、
図7からわかるように、摂動類似度は、最高値を示す摂動中心角度から摂動角度が大きくなるほど下がっていく。これは本人どうしであっても、眼鏡にしても鼻や口などの部位にしても、互いの位置がずれると類似しないことになるためである。
本人どうしの摂動類似度800は摂動角度が摂動中心角度から離れると値は緩やかに下がっていく。これは、摂動類似度は顔画像の各部分から求められた特徴が合わせられているが、摂動類似度の値に影響を与える眼鏡のフレームから抽出されるエッジ情報に基づく類似度が下がっても、顔の他の部位からの類似度は下がりにくく、全体として摂動角度が大きくなっても類似度は高いままを維持する傾向にあるからである。
これに対し、他人どうしの摂動類似度810は、摂動角度が摂動中心角度から離れるほど値が急激に下がる傾向にある。これは、仮に摂動中心角度における摂動類似度が本人よりも高くなっても、摂動角度が大きくなると類似度に影響を与える眼鏡のフレームから抽出されるエッジ情報に基づく類似度が下がることに加え、顔の他の部位からの類似度は他人であるが故に当然値は下がるからである。
【0038】
従って、統合類似度算出手段46における統合類似度の算出にあたっては、登録顔画像と入力顔画像とで顔の傾きが揃った状態と想定される摂動類似度が最大の摂動中心角度をまず特定して、
図8(a)に示すように、その摂動中心角度から一定の範囲に含まれる摂動角度から求められた摂動類似度を統合するのが望ましいが、例外として特定範囲602に含まれる摂動角度から求められた摂動類似度は統合に用いず、判定範囲603に含まれる摂動角度から求められた摂動類似度を統合するのが好適となる。
【0039】
上限角度605は、本人どうしであれば摂動類似度が十分高い値を維持する範囲として実験的に決定するものする。本実施の形態では摂動中心角度600から±10度とする。計算負荷を考慮してより狭くしてもより広くしてもよい。または正の回転方向と負の回転方向のいずれかに偏って入力画像の顔が傾きやすい理由があるならば、その方向には大きめの範囲を設定するのが好適である。さらには摂動中心角度600から正の回転方向または負の回転方向のみを設定して計算量削減を図ってもよい。
特定範囲602を定める下限角度604は、摂動中心角度600における摂動類似度と大差が無い摂動類似度が求められる範囲とし、本実施の形態では摂動中心角度600から±2度とする。摂動中心角度のみとしてもよく、さらに広い範囲としてもよい。
【0040】
本実施の形態では、統合類似度算出手段46は、判定範囲603に含まれる摂動角度について求められた摂動類似度を平均して統合類似度を求めることとしているが、摂動類似度の平均をそのまま後述の認証判定手段47にて用いるのではなく、本人と他人との峻別の性能向上を図るため、求められた統合類似度にさらに重み付けをすることも好適である。
例えば判定範囲603に含まれる摂動角度について求められた摂動類似度の分散値を求め、その値が大きいほど、統合類似度を小さくすべく0に近い1未満の正数を重みとして乗算する。これは、
図7の他人どうしの摂動類似度810からわかるように、他人の場合には摂動角度が摂動中心角度から離れるほど、摂動類似度が急激に小さくなり、その変化が大きいほど他人らしいと考えられるからである。
【0041】
または、同様な理由により特定範囲602に含まれる摂動角度について求められた摂動類似度の平均値と、判定範囲603に含まれる摂動角度について求められた摂動類似度の平均値との差が大きいほど、統合類似度を小さくすべく0に近い1未満の正数を重みとして乗算してもよい。前者の平均が仮に高くても、後者の平均が低いと他人らしいと考えられるからである。特定範囲602に限らずそれに代えて、摂動類似度の平均値を求める範囲を摂動中心角度に近い狭い角度の範囲としてもよい。
あるいは、統合類似度を小さくするために、一旦求められた統合類似度から所定の正の定数を減算してもよい。
さらには、特定範囲の摂動角度から求められた摂動類似度の影響が小さいことが予見される場合には統合類似度の計算から除外せず、
図8(b)のように、判定範囲601を上限角度605から定めてもよい。
【0042】
認証判定手段47は、統合類似度算出手段46が算出した統合類似度を所定の認証閾値と比較し、超えている場合には登録顔画像の人物と入力顔画像の人物が同一人物であると判定し、その旨を出力部20に出力する。
統合類似度が認証閾値を超える登録者が複数の場合には、統合類似度が最高の人物とする。
【0043】
以下、
図9に示すフロー図を用いて本発明にかかる顔画像認証装置の動作を説明する。
ステップS100にて、画像取得部10は、撮像装置2から人物5が写った入力画像を取得し、画像処理部40の顔検出手段41に出力する。
ステップS110にて、顔検出手段41は、入力画像から人物5の顔部分が写った入力顔画像を検出する処理を行う。顔が検出されなかった場合には、処理をステップS100に戻し(ステップS120のNoの分岐)、顔が検出された場合には処理を次のステップS130に移す(同じくYesの分岐)
【0044】
ステップS130にて、顔検出手段41は、
図3に示したように入力顔画像から特徴点を公知の方法にて抽出する。本実施の形態では20点を抽出する。
ステップS140にて、摂動中心点算出手段42は、抽出された特徴点の一部または全部を用いてその座標値の平均から摂動中心点305を求める(
図3参照)。
ステップS150とステップS160は、正および負の摂動限界角度の範囲内で、所定の刻みごと、例えば1度ごとに繰り返し行われる。
ステップS150にて、顔画像摂動手段43は、摂動中心点305を中心に入力顔画像を摂動(回転)させ、摂動顔画像を生成する(
図4参照)。
ステップS160にて、特徴量算出手段44は、摂動顔画像における特徴点それぞれを中心にした小領域からHoG特徴量などの特徴量を算出し、特徴量ベクトルを求め記憶部30に一時記憶する。
【0045】
ステップS170からステップS190は、記憶部30に記憶されている登録者データ31ごとに処理される。
ステップS170にて、摂動類似度算出手段45は、ステップS160にて求められた摂動角度ごとの特徴量ベクトルと、処理対象となっている登録者の特徴量ベクトルとの類似度を求め、記憶部30に一時記憶させる。
ステップS180にて、統合類似度算出手段46は、記憶部30に記憶されている摂動類似度の最大値を特定し、それに対応する摂動角度を摂動中心角度として決定する。
【0046】
ステップS190にて、統合類似度算出手段46は、摂動中心角度を基準に、
図8を用いて説明したように、判定範囲603に含まれる摂動角度についての摂動類似度を統合して統合類似度とする。摂動類似度の平均を統合類似度とすることができる。
そして統合類似度算出手段46は、登録者データ31ごとに求められた統合類似度を認証判定手段47に出力する。
【0047】
ステップS200にて、認証判定手段47は、登録者データ31ごとに求められた統合類似度のうち、最高値を特定し、それが予め定めた認証閾値を超えるか否かを調べる。超えない場合は(Noの分岐)、人物5は登録者ではないとして特に信号を出力することはせず、処理をステップS100に戻す。すなわち電気錠(不図示)は施錠が維持されるため、人物5は入口4を通行することはできない。
統合類似度の最高値が認証閾値を超える場合には(Yesの分岐)、認証に成功したとして認証判定手段47は、その旨を出力部20に出力し、出力部20は電気錠を解錠するよう電気錠制御装置3に信号を出力する(ステップS210)。
これにより人物5は入口4を通行でき、入口4が閉じられると一定時間後に再度施錠され、処理をステップS100に戻す。
【0048】
なお、ステップS150〜ステップS190では、一旦全ての摂動角度に対して摂動顔画像を求めてから、登録者データごとに統合類似度を求めることとしているが、計算の順番としてこれに代え、1つの摂動顔画像を求めるたびに登録者データそれぞれとの摂動類似度を計算して記憶部に記憶し、統合類似度を求めてもよい。
【0049】
これまで述べてきた実施の形態では、エッジ情報に基づくことを条件とした特徴量、例えばHoG特徴量などを適宜用い、摂動により本人どうしに比べると他人どうしでは摂動角度が大きくなると類似度が下がることを利用して本人と他人との判別を行うとしていた。さらに特徴量の設計に工夫を加えることもできる。
例えば様々な条件で取得された顔画像を学習データとして収集しておき、“Graph Embedding and Extensions: A General Framework for Dimensionality Reduction”,IEEE TRANSACTIONS ON PATTERN ANALYSIS AND MACHINE INTELLIGENCE, VOL. 29, NO. 1, JANUARY 2007(Shuicheng Yan他)に開示されている方法によって、特徴量を投影した特徴量算出空間において、顔の向きや照明、年齢などの条件が変化することに対する、本人どうしの特徴量の変化、すなわち個人内変動よりも、他人どうしの特徴量の変化、すなわち他人間変動が小さくなるよう学習処理によって特徴量算出空間が形成されるのが好適である。
すなわち学習データにロール角方向の角度が異なる顔画像を含めておくことで、摂動角度が大きくなることによる類似度の変化が本人どうしよりも他人どうしの方が大きくなるようにすることができる。
【0050】
また本実施の形態では、入力顔画像を摂動させるものとして説明してきたが、それに代わり登録顔画像を摂動させることとしても、全く同じ手順にて認証処理ができる。この場合、記憶部に記憶される登録者データは、摂動中心点が求められている登録顔画像、または摂動限界角度までの全ての摂動角度ごとの特徴量ベクトルを予め記憶しておくのが好適である。