【解決手段】記憶部30に、三次元の物体モデルにおける複数の基準3D特徴点31及び複数の基準3D参照点32を予め記憶する。位置合わせ手段41は、顔領域画像から抽出した複数の抽出特徴点と複数の基準3D特徴点31との二次元空間及び三次元空間の少なくとも一方におけるずれが最小となるように、顔領域画像が表す顔の三次元形状の向き及び形状の少なくとも一方を補正するパラメータを位置合わせパラメータとして求める。参照点位置決定手段42は、位置合わせパラメータを用いて顔領域画像に、複数の基準3D参照点32を射影して、顔領域画像の複数の参照点の各々の位置を求める。
前記位置合わせ手段は、前記パラメータを用いて前記基準3D特徴点を前記入力物体画像に射影した基準2D特徴点と、該基準2D特徴点に対応する前記抽出特徴点との画像上における位置ずれが最小となるよう前記位置合わせパラメータを求める請求項1に記載の参照点位置決定装置。
前記位置合わせ手段は、前記パラメータを用いて前記抽出特徴点を三次元空間に逆投影した直線と、該抽出特徴点に対応する前記基準3D特徴点と、の三次元空間における距離の総和を用いて、前記ずれが最小となるよう前記位置合わせパラメータを求める請求項1に記載の参照点位置決定装置。
前記参照点位置決定手段は、前記位置合わせ手段によって求められた前記複数の抽出特徴点の各々の三次元位置と、前記複数の基準3D特徴点の各々の三次元位置とに基づいて、前記複数の基準3D参照点に対応する、前記入力物体画像が表す物体の三次元形状における複数の3D参照点を求め、
前記位置合わせパラメータを用いて前記入力物体画像に、前記複数の3D参照点を射影して、前記入力物体画像の複数の参照点の位置を求める請求項4記載の参照点位置決定装置。
前記複数の基準3D参照点を、前記三次元の物体モデルの略正対する位置にある平面上に均等間隔に配置した点を前記三次元の物体モデルの三次元形状に逆投影することにより得られたものとした請求項6記載の参照点位置決定装置。
前記複数の基準3D参照点を、前記物体の画像特徴が変動することが予め予想される位置については前記基準3D参照点を配置しないように設定されたものとした請求項5又は請求項7に記載の参照点位置決定装置。
前記参照点位置決定手段によって求められた前記複数の参照点の位置に基づいて、前記入力物体画像から、登録物体画像と照合するための特徴量を抽出する特徴量抽出手段を更に含む請求項1〜請求項8の何れか一項に記載の参照点位置決定装置。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本実施の形態では、出入管理システムに本発明を適用した場合を例に説明する。
【0022】
<システム構成>
以下、部屋の入口の出入を管理するための出入管理システム100の設置例を模式的に示した
図1と、本発明を適用した出入管理システム100の概略構成を示した
図2を参照し、本発明の実施の形態の構成を説明する。
【0023】
(出入管理システム100)
出入管理システム100は、撮像装置1、電気錠制御装置2、および顔画像認証装置3を有する。
図1に示す模式図では、撮像装置1、電気錠制御装置2、および顔画像認証装置3が部屋の出入口付近に配置されている。
図1に示すように、撮像装置1は、入口101に通じる通路を撮影領域として撮影できるように入口101の近傍の壁面または天井に、撮影方向をやや下方へ向け、入口101に通ずる通路側へ向けた状態で取り付けられる。これにより、撮像装置1は、進行方向102に沿って入口101に向かう人物110を撮像することができる。
【0024】
顔画像認証装置3は、電気錠制御装置2を介して電気錠104を制御することにより部屋の入口101の出入を管理する。入口101には、扉103が設けられ、扉103には電気錠104が設けられる。電気錠104は、顔画像認証装置3により施錠及び解錠の制御が可能となっている。電気錠104は、扉103を常時施錠しており、顔画像認証装置3にて通行が許可された人物であると認証できれば一定時間(例えば5秒)のみ解錠される。なお、電気錠104は、解錠され扉が開けられた後、扉が閉じて一定時間が経過すると、自動的に施錠される。
【0025】
以下、
図2を参照して、顔画像認証装置3について詳細に説明する。
図2は、本発明を適用した出入管理システム100の概略構成を示す図である。
【0026】
(撮像装置1)
撮像装置1は、
図1に示したように所定の撮影領域を撮影する監視カメラである。撮像装置1は、顔画像認証装置3と接続され、取得した入力画像を顔画像認証装置3へ出力する。
【0027】
(電気錠制御装置2)
電気錠制御装置2は、顔画像認証装置3と接続され、顔画像認証装置3からの信号に従って、電気錠104を施錠又は解錠する。
【0028】
(顔画像認証装置3)
顔画像認証装置3は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro−Processing Unit)、周辺回路、端子、及び各種メモリなどから構成され、撮像装置1が撮影した人物の顔画像を認証し、入口101の通行を許可された人物であると認証されれば電気錠制御装置2に対して電気錠104の制御信号を出力する。顔画像認証装置3は、機能的には、顔画像取得部10、出力部20、記憶部30、及び画像処理部40から構成される。以下、顔画像認証装置3の各部について詳細に説明する。
【0029】
(顔画像取得部10)
顔画像取得部10は撮像装置1と接続され、撮像装置1が撮影した入力画像から、人物の顔を含む顔領域画像を抽出し、画像処理部40に出力する。前記入力画像に複数の人物顔が撮影されている場合は、順次顔領域画像を抽出し、画像処理部40に出力する。
【0030】
なお、顔領域画像の抽出方法は従来から多数提案されており、適宜公知の方法を採用すれば良い。例えば、顔画像を学習した識別器と呼ばれるフィルタにて抽出する方法や、入力画像の二値化エッジ画像を生成し、当該エッジ画像において顔の形状である楕円形状部分を顔領域画像とする方法を採用すれば良い。
【0031】
(出力部20)
出力部20は、外部の接続機器である電気錠制御装置2と接続されたインターフェース及びその制御回路である。出力部20は、画像処理部40から人物についての認証成功を示す信号を受け取ると、接続されている電気錠制御装置2に対して認証成功の旨を示す信号を出力する。
【0032】
(記憶部30)
記憶部30は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の半導体メモリ、又は磁気記録媒体及びそのアクセス装置若しくは光記録媒体及びそのアクセス装置などを有する。記憶部30は、顔画像認証装置3を制御するためのコンピュータプログラム及び各種データを記憶し、画像処理部40との間でこれらの情報を入出力する。各種データには、基準3D特徴点31、基準3D参照点32、及び入口101の通行を許可されている登録者の登録顔画像33が含まれる。
【0033】
(基準3D特徴点31)
基準3D特徴点31は、人物の顔の器官である「右目」、「左目」、「鼻」、及び「口」と、それぞれの器官に対応した「目尻」、「目頭」、「上瞼中心」、及び「下瞼中心」など、標準的な人物顔の3次元形状上の位置である。
【0034】
図3に、標準的な人物顔の3次元形状300上に配置した基準3D特徴点31の模式図を示す。例えば、
図3のように、標準的な人物顔の3次元形状300の重心を原点とし、水平軸であるX軸301、鉛直軸であるY軸302、及び奥行き軸であるZ軸303を備えた直交座標系を採用し、部位として「右目」の特徴たる「目尻」の3次元座標(x
1、y
1、z
1)を、「右目」及び「目尻」と対応付けて基準3D特徴点31として記憶部30に記憶している。なお、標準的な人物顔の3次元形状300が、物体モデルの一例である。
【0035】
基準3D特徴点31の数について特に制限はないが、人物の顔の器官の端や輪郭上などの2次元顔画像においても特徴的な画像特徴が得られる位置に配置する。
図4に、正面を向いた標準的な人物顔の3次元形状300(前記X軸301、Y軸302、Z軸303に対する回転角が0°の状態)に対して基準3D特徴点を配置した例を示す。この例では、20点の基準3D特徴点が配置されている。
【0036】
なお、前記標準的な人物顔の3次元形状300については、基準3D特徴点31を求める際にのみ用意されていればよく、記憶部30に常時記憶しておく必要はない。
【0037】
(基準3D参照点32)
基準3D参照点32は、前記標準的な人物顔の3次元形状300上に、均等かつ顔全体に配置された点の位置である。
【0038】
図5に、正面を向いた標準的な人物顔の3次元形状300(前記X軸301、Y軸302、Z軸303に対する回転角が0°の状態)に対して、X軸301の方向とY軸302の方向で規定される平面、すわなち、標準的な人物顔の3次元形状300の略正対する位置にある平面上に、例えば1cm間隔で均等かつ顔全体に配置した点を、標準的な人物顔の3次元形状300に射影することにより得られた、基準3D参照点32の例を示す。この例では160点の基準3D参照点が配置されている。例えば、左上の基準3D参照点を第1番目として、右下に向けてラスタ走査順にシリアル番号を付与し、第n番目たる基準3D参照点の3次元座標(X
n、Y
n、Z
n)を、シリアル番号nと対応付けて基準3D参照点32として記憶する。基準3D参照点32の数については特に制限はないが、基準3D特徴点31が配置されている顔の器官周辺だけでなく、頬の部分等、人物の顔の器官が存在しない場所にも配置することが望ましい。例えば、器官周辺の基準3D特徴点31の補間点や補外点にも、基準3D特徴点31を配置するようにしてもよい。
【0039】
なお、
図6に示すように、装飾品の着脱や表情変動によって画像特徴が変動することが予想される顔部位については参照点を配置しない構成にしても良い。
図6の例では、眼鏡の着脱、および口の開閉を想定し、目の周辺および口の中心部分に参照点を配置していない。
【0040】
(登録顔画像33)
登録顔画像33は、予め出入を許可された人物の顔画像であり、入力された顔画像との認証に使用する。1枚または複数枚の顔画像が記憶される。
【0041】
(画像処理部40)
画像処理部40は、メモリ、その周辺回路及びそのマイクロプロセッサなどのいわゆるコンピュータにより構成され、顔画像取得部10から取得した顔画像に対し記憶部30を参照しながら各種処理を実行し、その処理結果を出力部20に出力する。画像処理部40は、位置合わせ手段41、参照点位置決定手段42、及び顔照合手段43を有する。画像処理部40の各手段は、マイクロプロセッサ上で動作するソフトウェアにより実現される機能モジュールである。
【0042】
(位置合わせ手段41)
位置合わせ手段41は、顔画像取得部10にて取得した顔領域画像の顔特徴点位置と、記憶部30に記憶している基準3D特徴点31の位置合わせを行う。
【0043】
具体的には、位置合わせ手段41は、前記顔領域画像の顔特徴点と、基準3D特徴点31を前記顔領域画像に射影した基準2D特徴点が十分に近くなるように、前記直交座標系内で標準的な3次元形状300の位置や顔向きなどを調整し、少なくとも前記X軸301、Y軸302、及びZ軸303に対する並進(T
x,T
y,T
z)と回転角(R
x,R
y,R
z)とスケーリングパラメータsを、前記顔領域画像の位置合わせパラメータとして得る。
【0044】
基準3D特徴点31の前記顔領域画像への射影については、一般的な方法を採用すれば良い。例えばピンホールカメラモデルであれば、第n番目の基準3D特徴点31の3次元座標を(x
n、y
n、z
n)とすると、第n番目の基準3D特徴点31を前記顔領域画像に射影した位置(x
n´、y
n´)は、並進(T
x,T
y,T
z)と回転角(R
x,R
y,R
z)とスケーリングパラメータsとを用いて、式(1)で表すことができる。
【0045】
【数1】
(1)
ただし、
ここで、Tは、転置を表す。
【0046】
図7は、顔領域画像700から抽出した顔特徴点701と、基準3D特徴点31を顔領域画像に位置合わせパラメータ
で射影した基準2D特徴点702の例を示す。ここで、顔特徴点701は、個人の顔画像から抽出した特徴点となる為、標準的な人物顔の3次元形状300上に配置された基準3D特徴点31を射影した基準2D特徴点702とは、完全に一致した位置とはならない。したがって、前記位置合わせパラメータ
は、顔特徴点701と基準2D特徴点702の位置ずれを最小にするパラメータとして求められる。
【0047】
位置ずれについては、公知の様々な方法で定量化すれば良く、例えば、顔特徴点701と基準2D特徴点702の対応する各々の特徴点間で距離を求め、距離の総和を、位置ずれとしても良い。また、顔領域画像700から抽出した顔特徴点701と、基準3D特徴点31との三次元空間における位置ずれが最小となるように位置合わせパラメータを求めても良く、この場合には、例えば、顔特徴点701を3次元空間に逆投影した直線と、対応する基準3D特徴点31との距離の総和を位置ずれとしても良い。
【0048】
また、前記顔領域画像の顔特徴点を抽出する為には、公知の様々な手法を用いることができる。例えば、前記顔領域画像に対してエッジ抽出処理を行って周辺画素との輝度差が大きいエッジ画素を抽出し、エッジ画素の位置、及びパターンなどに基づいて求めた特徴量が、目、鼻、及び口などの部位について予め定められた条件を満たすか否かを調べて各部位の位置を特定することにより、各顔特徴点を抽出することができる。また、エッジ抽出処理を行ってエッジ画素を抽出する代わりに、ガボール変換処理あるいはウェーブレット変換処理を行って、異なる複数の空間周波数帯域で局所的に変化の大きい画素を抽出してもよい。さらに、顔の各部位に相当するテンプレートと顔領域画像700とのテンプレートマッチングを行って顔の各部位の位置を特定することにより、顔特徴点を抽出してもよい。
【0049】
さらには、例えば特開2014−178862号公報で開示されている特徴点抽出方法を用いることで、前記顔領域画像の位置合わせパラメータとして、並進(T
x,T
y,T
z)と回転角(R
x,R
y,R
z)、スケーリングパラメータsだけでなく、前記顔領域画像が表す顔の3次元形状の形状パラメータを抽出し、顔領域画像の顔特徴点の各々の三次元位置を求める。
【0050】
具体的には、まず、個人の顔形状の違いと顔の向き変動を表現できる3次元形状モデル上に配置した、複数の基準3D特徴点に対応する3D特徴点と、3D特徴点毎の部位画像情報とを予め持つ。また、位置合わせパラメータである、並進(T
x,T
y,T
z)と回転角(R
x,R
y,R
z)、及びスケーリングパラメータsを用いて、3次元形状モデルのパラメータの初期値を設定する。
【0051】
3D特徴点毎に、3次元形状モデルの形状パラメータおよび向きを用いて当該3D特徴点を顔領域画像上に投影した位置での画像情報と、当該3D特徴点の部位画像情報とを参照することで3D特徴点の適合度を表す局所尤度を算出し、その総和で全体の3D特徴点の適合度たる尤度を求める。3D特徴点の配置は、前記3次元形状モデルの形状パラメータ、および向きによって決定されるため、前記尤度が最大となるように前記3次元形状モデルの形状パラメータ、位置および向きを摂動させることで、2次元顔画像に尤も適合する3D特徴点の配置を求め、顔領域画像の顔特徴点の各々の三次元位置とし、また、このときの3次元形状モデルの形状パラメータ、位置および向きを取得する。
【0052】
(参照点位置決定手段42)
参照点位置決定手段42は、位置合わせ手段41が出力した位置合わせパラメータを用いて、記憶部30に記憶される基準3D参照点32を前記顔領域画像に射影し、前記顔領域画像上の2D参照点の位置を決定する。
【0053】
基準3D参照点32の前記顔領域画像への射影については、基準3D特徴点31の射影と同様に一般的な方法を採用すれば良い。例えばピンホールカメラモデルであれば、第n番目の基準3D参照点32の3次元座標を(X
n、Y
n、Z
n)とすると、第n番目の基準3D参照点32を前記顔領域画像に射影した2D参照点の位置(X
n´、Y
n´)は、位置合わせ手段41で求めたと回転行列
と並進ベクトル
とスケーリングパラメータsを用いて式(2)で表すことができる。
【0054】
【数2】
(2)
上記式(2)の右辺は、基準3D参照点32を、顔領域画像が表す顔の向きと大きさに合わせた三次元形状モデルの回転・並進位置における3D参照点に変換した結果を表している。すなわち、上記式(2)は、基準3D参照点32を、顔領域画像が表す顔の三次元形状における3D参照点に変換し、当該3D参照点を顔領域画像上に射影した2D参照点の位置を求めることを表している。
【0055】
図8は、位置合わせ手段41で求めた位置合わせパラメータ
を用いて、式(2)にて基準3D参照点32を顔領域画像700上に射影した2D参照点801の例を示す。
図8に示すように、顔領域画像700の顔向きに合わせて2D参照点801が配置される。
【0056】
なお、前記位置合わせ手段41において、例えば、特開2014−178862で開示されている特徴点抽出方法を用いることで、前記顔領域画像の位置合わせパラメータである並進(T
x,T
y,T
z)、回転角(R
x,R
y,R
z)、及びスケーリングパラメータsだけでなく、前記顔領域画像の顔特徴点の各々の三次元位置を求めている場合は、顔特徴点の各々の三次元位置と、形状パラメータ、位置、及び向きとを用いて、前記顔領域画像の特徴点位置にフィッティングした2D参照点の位置を求めるようにしてもよい。
【0057】
以下、前記顔領域画像の特徴点位置にフィッティングした2D参照点を得る手順を、
図9及び
図10の模式図を参照して説明する。
図9は、顔領域画像の顔特徴点の各々の三次元位置である3D特徴点901と、位置合わせ手段41で位置合わせパラメータとして求めた並進(T
x,T
y,T
z)と回転角(R
x,R
y,R
z)を用いて座標変換した基準3D特徴点31を表している。ここで、3D特徴点901は、個人の顔画像から抽出した特徴点となる為、標準的な人物顔の3次元形状300上に配置された基準3D特徴点31とは、完全に一致した位置とはならない。
【0058】
基準3D特徴点31と基準3D参照点32は、いずれも標準的な人物顔の3次元形状300上に配置された点であるので、基準3D特徴点31が前記3D特徴点901の位置に移動するように、薄板スプライン変換などの既知のワーピング手法を用いて基準3D参照点32を変位させると、
図10に示すように個人の特徴点位置に合わせた摂動3D参照点1001が得られる。
【0059】
参照点の摂動の様子が分かりやすいように、顔向きを正面にして、すなわち並進及び回転角をいずれも0として示したワーピングによる参照点の変位結果を
図11に示す。この図では、基準3D特徴点31、基準3D参照点32、3D特徴点901、及び摂動3D参照点1001の配置を示している。
図11では特徴点、参照点の配置がわかりやすいように、目や鼻などの顔の器官を模式的に表したが、実際には、参照点位置決定手段42では基準3D特徴点31、基準3D参照点32、3D特徴点901、及び摂動3D参照点1001の各点情報のみが扱われる。
【0060】
図11に示した基準3D特徴点31と3D特徴点901の抽出結果を比較すると、標準的な人物顔の3次元形状よりも、眉毛と目の間隔がやや狭く、鼻がやや上に位置し、かつ、口もやや小さいという個人特徴があることがわかるが、前記ワーピング手法によって、基準3D特徴点31が前記3D特徴点901の位置に移動するようにワーピングさせることで、前記個人特徴を反映した摂動3D参照点1001が得られることが示されている。
【0061】
摂動3D参照点1001の前記顔領域画像への射影については、基準3D特徴点31の射影と同様に一般的な方法を採用すれば良い。例えばピンホールカメラモデルであれば、上記式(2)における第n番目の基準3D参照点32の3次元座標を(X
n、Y
n、Z
n)に代えて、第n番目の摂動3D参照点1001の3次元座標(X
n´´、Y
n´´、Z
n´´)を用い、回転行列
と並進ベクトル
とスケーリングパラメータsに代えて、3次元形状モデルの形状パラメータ、回転および並進から得られるものを用いることで、第n番目の摂動3D参照点1001を前記顔領域画像に射影した2D参照点の位置(X
n´、Y
n´)を得ることができる。
【0062】
(顔照合手段43)
顔照合手段43は、顔画像取得部10が抽出した顔領域画像と、記憶部30に記憶されている全ての登録顔画像33を照合する。
【0063】
以下、顔照合手段43における照合処理を詳細に説明する。顔照合手段43は、参照点位置決定手段42で決定した前記顔領域画像700上の2D参照点801と、記憶部30に記憶されている登録顔画像の2D参照点について、対応する参照点同士の類似度を求める。参照点同士の類似度は、当該参照点周辺の局所領域画像から特徴ベクトルを求め、その類似度をもって算出する。局所領域画像から特徴ベクトルを求め類似の程度を算出する方法については、例えば、局所領域内の各画素の輝度や色の相違度を用いるなど、種々様々な公知の方法が利用できるので、詳細の説明は省略する。そして、顔照合手段43は、対応する参照点同士の類似度の総和が最大となる登録顔画像を選択し、当該類似度の総和が認証閾値以上である場合に、顔領域画像700に写っている顔が当該登録顔画像に対応する登録者の顔であると判定する。
【0064】
なお、画像処理部40は、前記顔領域画像700から2D参照点801を決定するのと同様の方法で、位置合わせ手段41及び参照点位置決定手段42の各処理により、記憶部30に記憶されているすべての登録顔画像33についての2D参照点を決定しておく。あるいは、画像処理部40は、顔領域画像を照合する度に、前記顔領域画像700から2D参照点801を決定するのと同様の方法により、各登録顔画像についての参照点を決定してもよい。
【0065】
顔照合手段43は、登録者の顔であると判定すると、出力部20に認証成功を示す信号を出力し、電気錠制御装置2に対して解錠制御を行う信号を出力させる。
【0066】
<顔画像認証装置の動作>
以下、
図12に示したフローチャートを参照しつつ、本発明を適用した顔画像認証装置3による認証処理の動作を説明する。なお、以下に説明する動作は、入力画像を1つ取得するごとに実行される。また、記憶部30に記憶されているすべての登録顔画像33についての2D参照点が、予め決定されて、記憶部30に記憶されている場合を例に説明する。
【0067】
最初に、顔画像認証装置3の顔画像取得部10は、撮像装置1が撮影した入力画像を取得する(ステップS101)。そして、顔画像取得部10は当該入力顔画像から顔領域画像を抽出する(ステップS102)。顔画像取得部10は、1つ以上の顔領域画像が抽出されたか否かを判定し(ステップS103)、顔領域が全く抽出されなかった場合には以降の処理を行わず、認証処理を終了する。一方、1つ以上の顔領域画像が抽出された場合、顔画像取得部10は、ステップS104に処理を移行させる。
【0068】
以下のステップS104〜S109の処理は、顔画像取得部10が抽出した顔領域画像ごとに行われる。
【0069】
位置合わせ手段41は、顔領域画像上の特徴点位置に基づき、基準3D特徴点31の位置合わせパラメータ
を求める(ステップS104)。次に、参照点位置決定手段42は、位置合わせ手段41が出力した位置合わせパラメータ
を用いて基準3D参照点32を顔領域画像上に射影し、2D参照点の位置を決定する(ステップS105)。
【0070】
次に、顔照合手段43は、参照点位置決定手段42が決定した2D参照点周辺の局所領域画像と、記憶部30に記憶された全ての登録顔画像の2D参照点周辺の局所領域画像からそれぞれ特徴ベクトルを求めて類似度を算出し(ステップS106)、局所領域画像の類似度の総和が最も高くなる登録顔画像を選択する(ステップS107)。選択された登録顔画像における局所領域画像の類似度の総和が認証閾値以上である場合(ステップS108)、顔領域画像に写る人物の顔は、当該登録顔画像に対応する登録者の顔であると判定し、出力部20に認証成功を示す信号を出力する(ステップS109)。認証成功を示す信号が出力部20に出力された場合、出力部20から電気錠制御装置2に対して解錠制御を行う信号が出力される。一方、選択された登録顔画像における局所領域画像の類似度の総和が認証閾値未満である場合、顔照合手段43は、特に処理を行わない。
【0071】
全ての顔領域画像についてステップS104〜109の処理が終わると、画像処理部40は、一連のステップを終了する。
【0072】
以上説明してきたように、本発明の実施の形態に係る顔画像認証装置は、入力画像から得られる顔領域画像から抽出した複数の抽出特徴点と複数の基準3D特徴点との二次元空間又は三次元空間の少なくとも一方における位置ずれが最小となるよう、位置合わせパラメータを求め、位置合わせパラメータを用いて顔領域画像に、複数の基準3D参照点を射影して、顔領域画像の複数の参照点の位置を求めることにより、顔向きに依らずに、顔領域画像全体から特徴を抽出するための参照位置を安定して決定することができる。
【0073】
また、顔領域画像の特徴ベクトルを算出する為の局所領域位置を決定する参照点を、当該顔領域画像の顔向きに合わせて決定することができる。さらには、目鼻口といった器官の周辺だけでなく、頬や額等の肌部分にも、顔向きに合わせて参照点を配置することができる。本発明の実施の形態によって決定した参照点周辺の局所領域画像から特徴ベクトルを求め、当該特徴ベクトルの類似度で入力顔画像と登録顔画像の照合を行うことで、正面向き以外の顔画像でも、目鼻口といった器官の周辺だけでなく、頬や額等の肌部分の類似の度合いを評価することが可能となり、精度良く認証を行うことができる。
【0074】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態では、顔画像取得部10は、撮像装置1が撮影した入力画像を処理して、画像処理部40へ出力するが、ハードディスク等の媒体から入力画像を取得し、顔領域画像を抽出した上で画像処理部40へ出力してもよい。
【0075】
また、本実施の形態では、認証結果を通行の可否に使用するので電気錠制御装置2へ認証結果を出力しているが、一般公衆回線や携帯電話回線などの通信回線を介して、認証結果を監視センタ装置などの外部装置へ出力してもよい。また、外部装置への出力とせずに、認証結果を表示するランプを顔画像認証装置3に設けておき、認証結果を通行者に知らせてもよい。
【0076】
また、本実施形態では、基準3D特徴点31として、眉毛について左右の眉中心、左目及び右目のそれぞれについて目頭、目尻、上瞼中心及び下瞼中心と、鼻について鼻尖点、鼻下点、及び左右の鼻側および鼻下側と、口について上唇中心上端、下唇中心下端、及び左右の口角点の20箇所を記憶するものとしたが、この例よりも少数または多くの特徴点を設定しても良い。
【0077】
また、位置合わせ手段41で、位置合わせパラメータ
だけでなく、詳細な3D特徴点901が得られる場合には、参照点位置決定手段42において、基準3D特徴点31と3D特徴点901の位置関係に基づき、基準3D参照点32の位置を摂動させた摂動3D参照点1001を求め、摂動3D参照点1001を顔領域画像に射影することで2D参照点を決定しても良い。
【0078】
また、本実施形態では、基準3D特徴点31、基準3D参照点32、3D特徴点901、摂動3D参照点1001の位置や、回転、並進を表す座標系として直交座標系を採用したが、基準3D特徴点31、基準3D参照点32、3D特徴点901、摂動3D参照点1001の位置や、回転、並進を表すことができれば、種々の座標系を採用できる。
【0079】
また、本実施形態では、位置合わせ手段41で、位置合わせパラメータ
を求めた後に、3次元形状モデルの形状パラメータ、位置および向きと、詳細な3D特徴点901とを得る場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。位置合わせパラメータ
を求めずに、特開2014−178862号公報で開示されている特徴点抽出方法を用いて、3次元形状モデルの形状パラメータ、位置および向きと、詳細な3D特徴点901とを得るようにしてもよい。更に、顔の向きが予め分かっている場合には、3次元形状モデルの形状パラメータ、位置と、詳細な3D特徴点901とだけを得るようにしてもよい。例えば、顔の向きが正面であることを予め分かっている場合である。
【0080】
また、顔照合手段43は、対応する参照点同士の類似度の総和が最大となる登録顔画像を選択し、顔領域画像700に写っている顔が当該登録顔画像に対応する登録者の顔であるか否かを判定する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、顔照合手段43は、対応する参照点同士及び対応する特徴点同士の類似度の総和が最大となる登録顔画像を選択し、顔領域画像700に写っている顔が当該登録顔画像に対応する登録者の顔であるか否かを判定するようにしてもよい。
【0081】
また、顔画像認証装置に本発明を適用する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、入力された顔画像が表わす顔の状態を推定する装置に、本発明を適用してもよい。この場合、入力された顔画像について決定された2D参照点の特徴量から、顔の状態を推定するようにすればよい。
【0082】
また、入力された顔画像の2D参照点を決定する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、顔以外の形状を有する物体を表す画像の2D参照点を決定するようにしても良い。例えば、車を表す画像の2D参照点を決定するようにしても良い。
【0083】
以上のように、当業者は本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。