特開2017-182940(P2017-182940A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2017182940-燃料電池システム 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-182940(P2017-182940A)
(43)【公開日】2017年10月5日
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20170908BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20170908BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20170908BHJP
   F24H 1/00 20060101ALI20170908BHJP
   F24H 1/18 20060101ALI20170908BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20170908BHJP
【FI】
   H01M8/04 Z
   H01M8/00 Z
   H01M8/04 J
   H01M8/04 P
   F24H1/00 631A
   F24H1/18 B
   F24H1/18 D
   H01M8/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-64804(P2016-64804)
(22)【出願日】2016年3月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110685
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 方宜
(72)【発明者】
【氏名】竹本 真典
(72)【発明者】
【氏名】迫田 純
(72)【発明者】
【氏名】筒井 大視
【テーマコード(参考)】
3L122
5H026
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
3L122AA02
3L122AA12
3L122AA28
3L122AA33
3L122AA34
3L122AA65
3L122AB01
3L122AB12
3L122AB22
3L122AB30
3L122AD05
3L122AD06
3L122BB02
3L122BD02
3L122BD04
3L122BD05
3L122GA01
5H026AA06
5H126BB06
5H127AA07
5H127AB02
5H127AB23
5H127AC07
5H127AC15
5H127BA05
5H127BA12
5H127BB02
5H127DC45
5H127DC93
5H127GG03
5H127GG10
(57)【要約】
【課題】燃料電池の廃熱を用いた温水製造を優先しつつ、簡易な構成で所望箇所へ出湯可能な燃料電池システムを提供する。
【解決手段】温水タンク2内の貯留水は、加温装置6により加温される。循環路3は、ユースポイントに向けて温水を取り出し可能な温水取出部8を有し、循環ポンプ7により温水タンク2との間で温水を循環させる。給水タンク4は、温水タンク2より高所に設置される。貯湯タンク5は、温水タンク2より高所であるが給水タンク4より低所に設置され、給水タンク4と給水路21を介して接続される一方、温水タンク2と温水路22を介して接続され、燃料電池10の廃熱を用いて貯留水が加温される。給水タンク4から貯湯タンク5への給水と、貯湯タンク5から温水タンク2への給水とは、それぞれ水頭圧差を利用してなされる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加温装置により貯留水を加温可能な温水タンクと、
ユースポイントに向けて温水を取り出し可能な温水取出部を有し、循環ポンプにより前記温水タンクとの間で温水を循環させる循環路と、
前記温水タンクより高所に設置される給水タンクと、
前記温水タンクより高所であるが前記給水タンクより低所に設置され、前記給水タンクと給水路を介して接続される一方、前記温水タンクと温水路を介して接続され、燃料電池の廃熱を用いて貯留水が加温される貯湯タンクとを備え、
前記給水タンクから前記貯湯タンクへの給水と、前記貯湯タンクから前記温水タンクへの給水とは、それぞれ水頭圧差を利用してなされる
ことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
前記給水タンクは、貯留水の水位を設定水位に維持するための水位制御器を備え、
前記貯湯タンクは、密閉型タンクであり、
前記給水タンクと前記貯湯タンクとを常時連通しておくことで、前記貯湯タンクから前記温水タンクへの給水に伴い、その給水と同量の水が、前記給水タンクから前記貯湯タンクへ送水される
ことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記温水タンクは、密閉型タンクであり、
前記給水タンクから前記貯湯タンクへの給水と、前記貯湯タンクから前記温水タンクへの給水とは、それぞれ少なくとも、前記給水タンクと前記ユースポイントとの間に発生する水頭圧差を利用してなされる
ことを特徴とする請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記温水タンクは、開放型タンクであり、
前記給水タンクから前記貯湯タンクへの給水と、前記貯湯タンクから前記温水タンクへの給水とは、それぞれ前記給水タンクと前記温水タンクとの間に発生する水頭圧差を利用してなされる
ことを特徴とする請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記循環ポンプは、前記燃料電池により発電された電力を使って駆動される
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記貯湯タンクには、下部に、前記給水タンクからの給水路が接続され、上部に、前記温水タンクへの温水路が接続されている
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池の廃熱を用いて温水を製造する燃料電池システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、温水タンク内の貯留水を、たとえば蒸気ヒータのような加温装置により加温しておき、その温水をユースポイントに取り出し可能なシステムが知られている。一方、下記特許文献1に開示されるように、燃料電池(6)の廃熱を用いて温水を製造することも知られている。この特許文献1に記載の発明では、貯湯タンク(50)内の貯留水が、熱交換器(32,46,71)に循環されて燃料電池のオフガスにより加温されると共に、温水供給管(62)により外部に出湯可能とされる([0005]、[0008]、[0020]−[0022])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−216819号公報([0005]−[0025]、図4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池の廃熱を用いた温水製造は、発電時の廃熱を利用するので省エネルギで低コストである。従って、燃料電池の廃熱を用いた温水製造を優先できれば好適であるが、それをいかに簡易に実現するかについて課題がある。また、燃料電池の廃熱を用いて製造した温水をユースポイントまで送水する際、それをいかに簡易に実現するかについて課題がある。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、簡易な構成で、燃料電池の廃熱を用いた温水製造を優先しつつ、所望箇所へ出湯可能な燃料電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、加温装置により貯留水を加温可能な温水タンクと、ユースポイントに向けて温水を取り出し可能な温水取出部を有し、循環ポンプにより前記温水タンクとの間で温水を循環させる循環路と、前記温水タンクより高所に設置される給水タンクと、前記温水タンクより高所であるが前記給水タンクより低所に設置され、前記給水タンクと給水路を介して接続される一方、前記温水タンクと温水路を介して接続され、燃料電池の廃熱を用いて貯留水が加温される貯湯タンクとを備え、前記給水タンクから前記貯湯タンクへの給水と、前記貯湯タンクから前記温水タンクへの給水とは、それぞれ水頭圧差を利用してなされることを特徴とする燃料電池システムである。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、循環路に温水を循環させておくことで、循環路の温水取出部から温水を迅速に取り出すことができる。また、貯湯タンク内の貯留水を燃料電池の廃熱を用いて加温しておき、その貯湯タンク内の温水を温水タンクへの給水として利用することができる。これにより、温水タンクの側において、一から加温装置によって加温する必要がない。しかも、給水タンクから貯湯タンクへの給水と、貯湯タンクから温水タンクへの給水とを、それぞれ水頭圧差を利用して容易に実施することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記給水タンクは、貯留水の水位を設定水位に維持するための水位制御器を備え、前記貯湯タンクは、密閉型タンクであり、前記給水タンクと前記貯湯タンクとを常時連通しておくことで、前記貯湯タンクから前記温水タンクへの給水に伴い、その給水と同量の水が、前記給水タンクから前記貯湯タンクへ送水されることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システムである。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、水頭圧差を用いて、貯湯タンクから温水タンクへの給水に伴い、その給水と同量の水を給水タンクから貯湯タンクへ送水することができる。従って、給水タンクから貯湯タンクへの給水を制御する必要がない。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記温水タンクは、密閉型タンクであり、前記給水タンクから前記貯湯タンクへの給水と、前記貯湯タンクから前記温水タンクへの給水とは、それぞれ少なくとも、前記給水タンクと前記ユースポイントとの間に発生する水頭圧差を利用してなされることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池システムである。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、給水タンクから貯湯タンクへの給水と、貯湯タンクから温水タンクへの給水とを、それぞれ少なくとも、給水タンクとユースポイントとの間に発生する水頭圧差を利用して、自動的に行うことができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、前記温水タンクは、開放型タンクであり、前記給水タンクから前記貯湯タンクへの給水と、前記貯湯タンクから前記温水タンクへの給水とは、それぞれ前記給水タンクと前記温水タンクとの間に発生する水頭圧差を利用してなされることを特徴とする請求項2に記載の燃料電池システムである。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、給水タンクから貯湯タンクへの給水と、貯湯タンクから温水タンクへの給水とを、それぞれ給水タンクと温水タンクとの間に発生する水頭圧差を利用して、自動的に行うことができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、前記循環ポンプは、前記燃料電池により発電された電力を使って駆動されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の燃料電池システムである。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、燃料電池により発電された電力を用いて、循環ポンプを低コストに運転することができる。
【0016】
さらに、請求項6に記載の発明は、前記貯湯タンクには、下部に、前記給水タンクからの給水路が接続され、上部に、前記温水タンクへの温水路が接続されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の燃料電池システムである。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、貯湯タンク内に温度成層を形成して、貯湯タンクの上部から比較的高温の水を優先して、温水タンクへ供給することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、簡易な構成で、燃料電池の廃熱を用いた温水製造を優先しつつ、所望箇所へ出湯可能な燃料電池システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施例の燃料電池システムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例の燃料電池システム1を示す概略図である。
【0021】
本実施例の燃料電池システム1は、温水を貯留する温水タンク2と、この温水タンク2との間で温水を循環させる循環路3と、温水タンク2より高所に設置される給水タンク4と、この給水タンク4から温水タンク2への給水系統に設けられ、温水タンク2より高所であるが給水タンク4より低所に設置される貯湯タンク5とを備える。
【0022】
温水タンク2は、給水タンク4から貯湯タンク5を介して給水された水を貯留する。温水タンク2は、本実施例では、密閉型タンク(つまり大気開放されないタンク)とされる。
【0023】
温水タンク2内の貯留水は、加温装置6により加温可能とされる。加温装置6は、本実施例では温水タンク2に設けられるが、場合により循環路3(たとえば循環ポンプ7と温水取出部8との間)に設けられてもよい。加温装置6は、本実施例では蒸気ヒータから構成されるが、場合により電気ヒータまたはバーナなどから構成されてもよい。いずれにしても、温水タンク2内の貯留水(または循環路3内の循環水)の温度に基づき加温装置6を制御することで、温水タンク2内の貯留水(または循環路3内の循環水)の温度を目標温度に維持することができる。なお、温水タンク2内に温度成層(上部ほど高温で下部ほど低温の状態)を形成する場合、温水タンク2の所定高さの温水温度に基づき加温装置6を制御することができる。
【0024】
循環路3は、ユースポイントに向けて温水を取り出し可能な温水取出部8を有し、循環ポンプ7により温水タンク2との間で温水を循環させる。図示例では、温水タンク2の上部と下部とが循環路3で接続されており、その循環路3には循環ポンプ7の他、一または複数の温水取出部8が設けられている。
【0025】
循環ポンプ7を作動させると、温水タンク2内の貯留水は、循環路3を介して、再び温水タンク2へ戻される。温水タンク2に対する循環路3の接続位置の設定により、循環ポンプ7の作動中、温水タンク2内の貯留水を撹拌して水温の均一化を図ることができ、あるいは、温水タンク2内の貯留水の撹拌を抑制して温度成層の形成を図ることができる。なお、循環ポンプ7は、燃料電池システム1の作動中、典型的には、常時運転を継続する。
【0026】
温水タンク2内の貯留水は、循環路3の温水取出部8から、所望により適宜の配管を介して、各種のユースポイントへ出湯可能とされる。すなわち、ユースポイントの出湯口が開けられると、その出湯口から外部へ出湯することができる。ユースポイントは、特に問わないが、たとえば、家庭用の燃料電池システムの場合、カラン、シャワーまたは浴槽などとされ、業務用の燃料電池システムの場合、各種温水利用機器(例えば、厨房での温水利用)とされる。
【0027】
給水タンク4は、貯湯タンク5ひいては温水タンク2への給水を貯留する。給水タンク4は、本実施例では、開放型タンク(つまり大気開放されたタンク)とされる。給水タンク4には常温水(典型的には市水)が供給可能とされ、給水タンク4への給水を制御することで、給水タンク4内は設定水位に維持される。具体的には、給水タンク4は水位制御器9を備え、この水位制御器9により、給水タンク4内は設定水位に維持される。水位制御器9は、特に問わないが、本実施例では、定水位弁(ボールタップ式の副弁により主弁を作動させる給水弁)とされる。
【0028】
貯湯タンク5は、給水タンク4からの給水(そして温水タンク2への給水となる水)を貯留する。貯湯タンク5は、本実施例では、密閉型タンク(つまり大気開放されないタンク)とされる。貯湯タンク5内の貯留水は、燃料電池10の廃熱を用いて加温されると共に、温水タンク2へ供給可能とされる。
【0029】
燃料電池10は、周知のとおり、原燃料(図示例ではガス管11からのメタンガスを主成分とする都市ガス)と水(水蒸気)とを改質器(図示省略)において水蒸気改質反応させることにより水素を生成し、その水素と空気中の酸素とをセルスタック(図示省略)において化学反応させて発電する装置である。発電した電気は、インバータで交流電流に変換され、各種の電気機器へ供給される。また、燃料電池10では、発電時に熱を生じるので、その熱を用いて、貯湯タンク5内の貯留水が加温される。なお、燃料電池10の種類は、特に問わない。本実施例では、固体酸化物形(SOFC)が用いられるが、たとえば固体高分子形(PEFC)などを用いてもよい。
【0030】
前述したとおり、貯湯タンク5は、燃料電池10の廃熱を用いて貯留水が加温される。典型的には、燃料電池10のオフガス廃熱を用いて、貯湯タンク5内の貯留水が加温される。つまり、燃料電池10における発電時、セルスタックや改質器からはオフガス(排ガス)が排出されるが、そのオフガス廃熱を用いて、貯湯タンク5内の貯留水を加温する。あるいは、これに代えてまたはこれに加えて、セルスタックの冷却器において、セルスタックからの廃熱を回収して、貯湯タンク5内の貯留水を加温する。
【0031】
燃料電池10のオフガス廃熱で貯湯タンク5内の貯留水を加温するために、本実施例では、燃料電池10側のオフガス熱交換器12と、貯湯タンク5側の貯留水加温熱交換器13とが、循環液回路14で接続されている。循環液回路14は、オフガス熱交換器12と貯留水加温熱交換器13との間で、循環液(たとえば水)を循環させる。具体的には、貯留水加温熱交換器13からの循環液は、送り路14aを介してオフガス熱交換器12へ供給され、オフガス熱交換器12を通過後の循環液は、戻し路14bを介して貯留水加温熱交換器13へ戻される。送り路14a(または戻し路14b)に設けた循環液ポンプ15を作動させることで、循環液回路14内に循環液を循環させることができる。燃料電池10の運転中(つまり発電中)、循環液ポンプ15は作動を継続する。
【0032】
オフガス熱交換器12では、燃料電池10の廃熱を用いて、循環液が加温される。本実施例では、オフガスと循環液とを混ぜることなく熱交換して、オフガスの冷却を図ると共に循環液を加温する。
【0033】
貯留水加温熱交換器13では、オフガス熱交換器12からの循環液を用いて、貯湯タンク5内の貯留水が加温される。本実施例では、貯留水と循環液とを混ぜることなく熱交換して、貯留水の加温を図ると共に循環液の冷却を図る。
【0034】
なお、本実施例では、貯湯タンク5内に貯留水加温熱交換器13を設置して、循環液と貯留水とを間接熱交換したが、場合により、貯留水加温熱交換器13の設置を省略して、貯湯タンク5内の貯留水自体をオフガス熱交換器12との間で循環させてもよい。つまり、貯湯タンク5内の貯留水を、送り路14aを介してオフガス熱交換器12に供給して、オフガス熱交換器12においてオフガス廃熱を用いて加温し、戻し路14bを介して貯湯タンク5へ戻す循環を繰り返してもよい。
【0035】
ところで、送り路14aには、ラジエータ16を設けておくのが好ましい。図示例では、送り路14aには、貯留水加温熱交換器13からオフガス熱交換器12へ向けて、ラジエータ16と循環液ポンプ15とが順に設けられる。所望時にラジエータ16の冷却ファン17を作動させることで、オフガス熱交換器12へ供給する循環液を空冷することができる。これは、燃料電池10において、いわゆる水自立を実現するためである。
【0036】
つまり、オフガス熱交換器12においてオフガスを露点温度以下に冷却して、オフガス中の水分を凝縮させ、その凝縮水を前記改質器へ再供給(つまり水自立)するには、循環液の温度が高まり過ぎるのを防止する必要がある。そこで、本実施例では、ラジエータ16を設けて、オフガス熱交換器12へ供給する循環液温度を第一目標温度以下に維持する。具体的には、送り路14aには、ラジエータ16の出口側に第一温度センサ18が設けられ、その検出温度を第一目標温度(たとえば40℃)に維持するように、冷却ファン17のモータがインバータ制御される。
【0037】
一方、戻し路14bには、本実施例では、流量調整弁19が設けられている。流量調整弁19の開度を調整することで、循環液回路14内の循環流量を調整することができる。ここでは、戻し路14bには、オフガス熱交換器12の出口側に第二温度センサ20が設けられ、その検出温度を第二目標温度(たとえば60〜75℃)に維持するように、流量調整弁19の開度が調整される。これにより、貯留水加温熱交換器13へ供給する循環液温度を所定温度に維持して、貯湯タンク5内の貯留水を所望温度に加温することができる。なお、循環液回路14の循環流量を調整する手段は、流量調整弁19に限らず、たとえば循環液ポンプ15をインバータ制御するなどしてもよい。
【0038】
貯湯タンク5は、給水タンク4と給水路21を介して接続される一方、温水タンク2と温水路22を介して接続される。貯湯タンク5内の貯留水は、前述したとおり、燃料電池10の廃熱を用いて加温されるが、その際、貯湯タンク5内には温度成層(上部ほど高温で下部ほど低温の状態)が形成される。従って、この温度成層を乱さないために、貯湯タンク5には、図示例のように、下部に、給水タンク4からの給水路21が接続され、上部に、温水タンク2への温水路22が接続されるのが好ましい。
【0039】
また、給水路21と温水路22とは、所望によりバイパス路23で接続されてもよい。この場合、給水タンク4からの水を、貯湯タンク5を介して温水タンク2へ供給するか、貯湯タンク5を介さずにバイパス路23を介して温水タンク2へ供給するかを切替可能に構成される。そのために、図示例では、給水路21には、バイパス路23との分岐部より下流に給水弁24が設けられる一方、温水路22には、バイパス路23との合流部より上流に温水弁25が設けられる。さらに、バイパス路23には、バイパス弁26が設けられる。
【0040】
給水弁24、温水弁25およびバイパス弁26は、本実施例では手動弁である。そして、通常、バイパス弁26が閉じられ、給水弁24および温水弁25が開かれた状態に維持される。従って、給水タンク4内の水は、バイパス路23を介することなく、給水路21を介して貯湯タンク5へ供給され、貯湯タンク5内の水が、温水路22を介して温水タンク2へ供給される。
【0041】
一方、所望時には、バイパス弁26を開ける一方、給水弁24および温水弁25を閉じた状態とすることができる。この場合、給水タンク4内の水は、貯湯タンク5を介することなく、バイパス路23を介して温水タンク2へ供給される。たとえば、貯湯タンク5や循環液回路14などをメンテナンスする際、バイパス弁26を開ける一方、給水弁24および温水弁25を閉じた状態としておけばよい。その場合、温水タンク2には給水タンク4から直接に給水可能であると共に、温水タンク2において加温装置6にて温水を製造可能であるから、ユースポイントへの湯切れを防止することができる。
【0042】
前述したとおり、貯湯タンク5は、温水タンク2より上方に設置され、給水タンク4は、貯湯タンク5よりも上方に設置される。つまり、下方から上方へ向けて、温水タンク2、貯湯タンク5および給水タンク4が順に設けられる。図示例では、燃料電池システム1は、二点鎖線で示されるように、実質的に二階建て以上の建物に設置され、温水タンク2は貯湯タンク5より下の階に設置され、給水タンク4は貯湯タンク5よりも上の階に設置される。たとえば、貯湯タンク5が1階に設置され、温水タンク2が地階に設置され、給水タンク4が屋上に設置される。
【0043】
次に、本実施例の燃料電池システム1の作用(運転)について、説明する。
本実施例の燃料電池システム1では、給水タンク4から貯湯タンク5への給水と、貯湯タンク5から温水タンク2への給水とは、それぞれ水頭圧差を利用してなされる。具体的には、次のとおりである。
【0044】
前提として、本実施例では、前述したとおり、温水タンク2および貯湯タンク5は、密閉型タンクである一方、給水タンク4は、開放型タンクである。また、温水タンク2より上方に貯湯タンク5が設置され、貯湯タンク5より上方に給水タンク4が設置されている。そして、給水タンク4、貯湯タンク5および温水タンク2は、給水路21と温水路22とを介して、常時連通されている。従って、給水タンク4からの給水は、給水路21、貯湯タンク5、温水路22、温水タンク2および循環路3を満たし、ユースポイントの出湯口を開くと、水頭圧差により出湯口へ自動的に出湯される。しかも、その出湯分と対応した量の水が、給水タンク4から順次下方へ、水頭圧を利用して送水されることになる。言い換えれば、ユースポイントにおける出湯時、貯湯タンク5から温水タンク2への給水に伴い、その給水と同量の水が、給水タンク4から貯湯タンク5へ送水されることになる。
【0045】
ところで、本実施例の場合、温水取出部8は循環路3に設けられ、その循環路3には循環ポンプ7が設けられている。従って、循環ポンプ7の作動中、温水取出部8を介してユースポイントにて出湯する場合、上述した水頭圧差に加えて、循環ポンプ7の吐出圧も寄与することになる。特に、図示例のように、循環ポンプ7が温水取出部8(ひいてはユースポイント)よりも上方位置に配置される場合、上述した水頭圧差を用いる分、循環ポンプ7の作動エネルギを軽減することができる。いずれにしても、本実施例では、給水タンク4から貯湯タンク5への給水と、貯湯タンク5から温水タンク2への給水とは、それぞれ少なくとも、給水タンク4とユースポイントとの間に発生する水頭圧差を利用してなされる。
【0046】
以上のような給排水とは別に、燃料電池10の運転に伴い、燃料電池10の廃熱が循環液回路14を介して、貯湯タンク5内の貯留水を加温する。その際、所定温度(たとえば70℃)を目標値として、貯湯タンク5内の貯留水は加温される。そして、その温水が、温水タンク2への給水に用いられる。従って、温水タンク2において一から加温装置6で温水を製造する場合と比較して、燃料電池10の廃熱を用いて温水タンク2への給水を予熱しておくことで、省エネルギで低コストに温水を製造することができる。
【0047】
また、温水タンク2内の貯留水は、加温装置6により目標温度に維持される。この加温目標温度は、貯湯タンク5内の加温目標温度と同一でもよいし、貯湯タンク5内の加温目標温度よりも高温であってもよい。
【0048】
ところで、循環ポンプ7は、燃料電池10により発電された電力を使って駆動されるのが好ましい。このことは、循環ポンプ7に限らず、循環液ポンプ15などについても同様である。さらに、温水タンク2に設けた加温装置6が電気ヒータから構成される場合、その電気ヒータは、燃料電池10により発電された電力を使って駆動されてもよい。いずれにしても、商用電源に代えて、安価な都市ガスを使って燃料電池10により発電された電力を用いることで、低コストに運転することができる。また、商用電源から新たに配線するよりも、各種ポンプなどに比較的近い場所から、容易に給電することも可能となる。
【0049】
本発明の燃料電池システム1は、前記実施例の構成(制御を含む)に限らず、適宜変更可能である。特に、加温装置6により貯留水を加温可能な温水タンク2と、この温水タンク2内の温水を循環させると共にユースポイントに向けて温水を取り出し可能な温水取出部8を有する循環路3と、温水タンク2より高所に設置される給水タンク4と、温水タンク2より高所であるが給水タンク4より低所に設置される貯湯タンク5とを備え、貯湯タンク5は、給水タンク4と温水タンク2とに接続されると共に燃料電池10の廃熱を用いて貯留水が加温され、給水タンク4から貯湯タンク5への給水と、貯湯タンク5から温水タンク2への給水とがそれぞれ水頭圧差を利用してなされるのであれば、その他の構成は適宜に変更可能である。
【0050】
たとえば、前記実施例では、温水タンク2は、密閉型タンクにより構成されたが、場合により、開放型タンクにより構成されてもよい。その場合、温水タンク2内の水位を設定水位に維持するように、貯湯タンク5から温水タンク2への給水を制御すればよい。たとえば、給水タンク4の場合と同様に、温水タンク2にもボールタップ式の定水位弁を設ければよい。あるいは、バイパス路23との合流部よりも下流側の温水路22に、給水制御弁を設けて、温水タンク2内の水位に基づき給水制御弁の開閉を制御すればよい。
【0051】
温水タンク2が開放型タンクである場合、ユースポイントでの出湯に伴う温水タンク2への給水時、給水タンク4から貯湯タンク5への給水と、貯湯タンク5から温水タンク2への給水とは、それぞれ水頭圧を利用してなされる。つまり、給水タンク4と温水タンク2との間に発生する水頭圧差を利用して、給水タンク4から貯湯タンク5を介して温水タンク2へ、自動的に給水することができる。
【0052】
なお、温水タンク2が開放型タンクの場合でも、温水タンク2の水面よりもユースポイントが下方に配置されていれば、温水タンク2からユースポイントへの出湯を、温水タンク2とユースポイントとの間に発生する水頭圧差を利用して行うことができる。もちろん、温水取出部8への循環路3に循環ポンプ7が設けられている場合、その吐出圧によっても出湯は円滑になされる。
【0053】
また、前記実施例では、貯湯タンク5は、密閉型タンクとされたが、場合により開放型タンクとされてもよい。その場合、温水タンク2を開放型タンクとする場合と同様にして、貯湯タンク5内の水位を設定水位に維持するように、給水タンク4から貯湯タンク5への給水を制御すればよい。貯湯タンク5が開放型タンクの場合、給水タンク4から貯湯タンク5への給水は、給水タンク4と貯湯タンク5との間に発生する水頭圧を用いてなされる。また、貯湯タンク5から温水タンク2への給水は、温水タンク2が開放型タンクの場合には、貯湯タンク5と温水タンク2との水頭圧差を用いてなされ、温水タンク2が密閉型タンクの場合には、貯湯タンク5とユースポイントとの間の水頭圧を用いてなされる。
【符号の説明】
【0054】
1 燃料電池システム
2 温水タンク
3 循環路
4 給水タンク
5 貯湯タンク
6 加温装置
7 循環ポンプ
8 温水取出部
9 水位制御器
10 燃料電池
11 ガス管
12 オフガス熱交換器
13 貯留水加温熱交換器
14 循環液回路(14a:送り路、14b:戻し路)
15 循環液ポンプ
16 ラジエータ
17 冷却ファン
18 第一温度センサ
19 流量調整弁
20 第二温度センサ
21 給水路
22 温水路
23 バイパス路
24 給水弁
25 温水弁
26 バイパス弁
図1