特開2017-183353(P2017-183353A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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  • 特開2017183353-誘電体薄膜素子 図000009
  • 特開2017183353-誘電体薄膜素子 図000010
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-183353(P2017-183353A)
(43)【公開日】2017年10月5日
(54)【発明の名称】誘電体薄膜素子
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/33 20060101AFI20170908BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20170908BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20170908BHJP
   H01G 4/12 20060101ALI20170908BHJP
   C30B 29/22 20060101ALI20170908BHJP
【FI】
   H01G4/06 102
   H01L27/04 C
   H01G4/12 394
   C30B29/22 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-64309(P2016-64309)
(22)【出願日】2016年3月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(72)【発明者】
【氏名】原田 祥典
(72)【発明者】
【氏名】大槻 史朗
(72)【発明者】
【氏名】小須田 正則
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 翔太
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 和子
【テーマコード(参考)】
4G077
5E001
5E082
5F038
【Fターム(参考)】
4G077AA03
4G077AB02
4G077BC42
4G077DA11
4G077HA11
5E001AB01
5E001AC08
5E001AD00
5E001AH03
5E001AH08
5E001AH09
5E001AJ02
5E082AA20
5E082AB01
5E082BC01
5E082BC11
5E082BC14
5E082BC39
5E082BC40
5E082EE05
5E082EE23
5E082EE26
5E082EE37
5E082FG03
5E082FG26
5E082FG42
5E082MM23
5E082MM24
5E082PP03
5E082PP09
5E082PP10
5F038AC05
5F038AC15
5F038AC17
5F038AC18
5F038EZ01
5F038EZ02
5F038EZ14
5F038EZ17
5F038EZ20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】誘電体薄膜素子に関し、比誘電率を高く維持しつつ、静電容量の良好なDCバイアス特性を示す誘電体薄膜素子及びその誘電体薄膜を有する誘電体素子を提供する。
【解決手段】支持基板1と、支持基板上に形成された第一の電極3と、第一の電極上に形成されたBaTiOを主成分とする誘電体薄膜5と、誘電体薄膜上に形成された第二の電極4と、を有する誘電体薄膜素子において、誘電体薄膜が、(110)面または(111)面に配向した結晶群を含み、結晶群が、第一の電極と第二の電極に接する柱状結晶Aと、第一の電極と第二の電極のいずれか一方のみに接する結晶Bとから成り、誘電体薄膜主面に対して垂直方向の切断面全体の面積をS、結晶群が占める面積をS(A+B)とした場合、S(A+B)/S≧65%であることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と、前記支持基板上に形成された第一の電極と、
前記第一の電極上に形成されたBaTiOを主成分とする誘電体薄膜と、
前記誘電体薄膜上に形成された第二の電極と、
を有する誘電体薄膜素子において、
前記誘電体薄膜が、(110)面または(111)面に配向した結晶群を含み、
前記結晶群が、
前記第一の電極と第二の電極に接する柱状結晶Aと、
前記第一の電極と第二の電極のいずれか一方のみに接する結晶Bと
から成り、
前記誘電体薄膜主面に対して垂直方向の切断面全体の面積をS、前記結晶群が占める面積をS(A+B)とした場合、S(A+B)/S≧65%であることを特徴とする誘電体薄膜素子。
【請求項2】
前記誘電体薄膜主面に対して垂直方向の切断面における前記結晶Bが占める面積をSとした場合、前記S(A+B)とSとの関係が
0.30≦S/S(A+B)≦0.90
であることを特徴とする請求項1に記載の誘電体薄膜素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体薄膜を備える薄膜コンデンサ等の誘電体薄膜素子に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の多機能化に伴い、電子機器に含まれている電子回路基板には様々な機能の追加が望まれている。そのため、電子回路基板に実装される電子部品の個数は、多くなる傾向にある。このため、電子部品の実装密度を向上させることが強く望まれている。
【0003】
その要求の回答の一つとして、電気回路基板内に電子部品を埋め込むことが提案されている。電子回路基板に多く実装されている電子部品の一つに、従来の積層セラミックコンデンサがある。しかしながら、この積層セラミックコンデンサを電気回路基板内に埋め込む場合、積層セラミックコンデンサの厚み及びセラミックスという性質からくる脆性に起因して、埋め込みの工程において発生する応力により、積層セラミックコンデンサにクラックが発生したり、埋め込んだ部分の電気回路基板が変形したりする等の問題があった。
【0004】
これらの問題は、従来の積層セラミックコンデンサの中で、極小な形状を用いた場合でも解消することは困難であった。そのため、電気回路基板内への埋め込み用のコンデンサとして、積層セラミックコンデンサより薄い低背なコンデンサが望まれている。低背なコンデンサとしては、従来、薄膜コンデンサが知られている。
【0005】
薄膜コンデンサは、小型、高性能の電子部品としてデカップリングコンデンサなどの用途で広く利用されている。薄膜コンデンサとしては、高い静電容量を要求されるため、誘電体薄膜は比誘電率が高いことが薄膜コンデンサを設計する上で不可欠な特性となる。しかし、従来の比誘電率が高い誘電体薄膜は,直流電圧を印加した際の比誘電率の変化率が高い(DCバイアス特性が悪い)ことが問題となっていた。
【0006】
この問題に対し、特許文献1では、マクロな自発分極を持たないためDCバイアス特性に優れ、かつ高い比誘電率であるPb(Mg1/3Nb2/3)O(PMN)に、反強誘電体であるためDCバイアス特性に優れたPbZrOを固溶させることで、高い比誘電率でDCバイアス特性に優れた誘電体薄膜を作製する技術が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、(Ba、Sr)TiO(BST)であっても特定の組成範囲に制御し、(100)面と(110)面の回折線ピーク強度の比を特定の範囲に制御することにより、良好な温度特性で、かつ200〜500程度の比誘電率を示し、リーク電流密度の低い誘電体薄膜についての技術が開示されている。特許文献2においては、DCバイアス特性については言及されていないものの、比誘電率が500程度のため、DCバイアス特性の良好であることが予想される。
【0008】
また、前記特許文献2と同じBSTを用いた技術として、熱処理により(111)面に配向させ、誘電体層を構成する誘電体結晶粒子が厚み方向に長い柱状結晶である誘電体層を有する可変容量コンデンサにおいて、誘電体層の酸素の格子欠陥を抑制することで誘電損失を低減している技術が特許文献3に開示されている。
【0009】
特許文献4には、第1電極および第2電極間にペロブスカイト構造を有する結晶性誘電体薄膜を備えた半導体装置であって、前記結晶性誘電体薄膜の柱状結晶部分に結晶性が不連続となる不連続面を少なくとも有することを特徴とする誘電体薄膜を形成することにより、単位容量を維持しつつ、逆バイアス領域でのリーク電流を低減して耐圧を向上させた技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−188679号公報
【特許文献2】特開2006−128657号公報
【特許文献3】特開2002−329787号公報
【特許文献4】特開2007−234726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1では、組成にPbが存在するために、原料として例えばPbO、PbO、Pbなどを用いなければならず、生産工程において、これら原料の環境への拡散が起こりうる。近年では環境との調和が求められており、Pbを使用せず、同様な特性を得ることが望まれている。
【0012】
また、特許文献2、特許文献3に記載されている誘電体薄膜では、比誘電率が500程度までしか得られず、市場から要求されている静電容量の高い薄膜コンデンサを得ることが困難である。なお、特許文献3は、可変容量コンデンサに使用される誘電体薄膜であるため、DCバイアス特性が悪い、言い換えると直流電圧を印加した際の比誘電率の変化率が高いことが必要となる特殊な使用例である。
【0013】
特許文献4は、柱状結晶部に必ず不連続面を有するとともに、結晶部も多結晶体で構成されているため、高い比誘電率を得ることが困難となる。このため、高い比誘電率と良好なDCバイアス特性を両立することが出来ない。 本発明は、このような実状に鑑みてなされ、高い比誘電率と、良好なDCバイアス特性とを有する誘電体薄膜を備えた誘電体薄膜素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の誘電体薄膜素子は
支持基板と、前記支持基板上に形成された第一の電極と、
前記第一の電極上に形成されたBaTiOを主成分とする誘電体薄膜と、
前記誘電体薄膜上に形成された第二の電極と、
を有する誘電体薄膜素子において、
前記誘電体薄膜が、(110)面または(111)面に配向した結晶群を含み、
前記結晶群が、
前記第一の電極と第二の電極に接する柱状結晶Aと、
前記第一の電極と第二の電極のいずれか一方のみに接する結晶Bと
から成り、
前記誘電体薄膜主面に対して垂直方向の切断面全体の面積をS、前記結晶群が占める面積をS(A+B)とした場合、S(A+B)/S≧65%であることを特徴とする。
【0015】
ここで、本発明の特徴の一つである柱状結晶について説明する。
本発明の柱状結晶とは、誘電体薄膜の主面に対し、垂直方向の切断面で観察した場合、第一の電極と第二の電極に接している厚み方向に長い結晶粒子のことであること意味している。そのため、第一の電極または第二の電極に対して、完全に垂直ではなく、電極に対して±5°程度傾斜している場合もある。また、本発明の柱状結晶は、(110)面または(111)面どちらか一方に優先配向しており、その柱状結晶には、不連続の部分、つまり配向面が異なる箇所を有しないことも特徴の一つとなっている。
【0016】
上記に示したような柱状結晶Aと結晶Bを、前記化学式BaTiOを主成分した材料で形成し、更に、(110)面または(111)面どちらか一方に優先配向させ、更に、前記柱状結晶Aと結晶Bの面積S(A+B)が前記誘電体薄膜主面に対して垂直方向の切断面全体の面積をSに対して、S(A+B)/S≧65%に制御することで、高い比誘電率と良好なDCバイアス特性とを両立できることを可能とした。本発明者らは、このような効果が得られる要因を次のように考えている。
【0017】
前記誘電体薄膜が、BaTiOを主成分する柱状結晶の結晶構造を備え、更に、前記柱状結晶が(110)面または(111)面どちらか一方に優先配向していることで、分極軸が、電圧印加方向と垂直および水平と、異なる分極方向を持つことになり、電界方向に束縛される双極子の量を低減することができる。また、前記第一の電極と第二の電極のいずれか一方のみに接する結晶Bとを備えることで、結晶群がそれぞれ電極に対して傾斜している場合もある。このため、分極方向が一様に定まらない。その結果、高い比誘電率と良好なDCバイアス特性を得ることが可能となったものと考えている。
【0018】
また、本発明の望ましい態様としては、
前記誘電体薄膜主面に対して垂直方向の切断面における前記結晶Bが占める面積をSとした場合、前記S(A+B)とSとの関係が
0.30≦S/S(A+B)≦0.90とすることで、比誘電率を維持したまま、更に、良好なDCバイアス特性を実現することが可能となる。
【0019】
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、高い比誘電率と、良好なDCバイアス特性とを有する誘電体薄膜を備えた誘電体薄膜素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る薄膜コンデンサの断面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る誘電体薄膜の結晶構造概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図表を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0023】
<薄膜コンデンサ10>
図1は、本発明の一実施形態に係る誘電体薄膜素子の一例としての、薄膜コンデンサ10の断面図である。薄膜コンデンサ10は、支持基板1の表面に積層された第一の電極3と、第二の電極4、及び第一の電極3と第二の電極4の間に設けられた誘電体薄膜5とを備えている。支持基板1と第一の電極3の間に、支持基板1と第一の電極3の密着性を向上させるために下地層2を備える。支持基板1は、薄膜コンデンサ10全体の機械的強度を確保する機能を有する。
【0024】
薄膜コンデンサ10の形状に特に制限はないが、通常、直方体形状とされる。またその寸法にも特に制限はなく、厚みや長さは用途に応じて適当な寸法とすればよい。
【0025】
<支持基板1>
図1に示す支持基板1を形成するための材料はとくに限定されるものではなく、単結晶としてはSi単結晶、SiGe単結晶、GaAs単結晶、InP単結晶、SrTiO単結晶、MgO単結晶、LaAlO単結晶、ZrO単結晶、MgAl単結晶、NdGaO単結晶や、セラミック多結晶としてはAl多結晶、ZnO多結晶、SiO多結晶や、Ni、Cu、Ti、W、Mo、Al、Ptなどの金属や、それらの合金などによって支持基板1を形成することができるが特に限定されるものではない。支持基板1は、材質によってその比抵抗が異なる。比抵抗が低い材料を支持基板1として使用する場合、そのまま使用すると支持基板1側への電流のリークが薄膜コンデンサ10の電気特性に影響を及ぼすことがある。そのため、支持基板1の表面に絶縁処理を施し、使用時の電流が支持基板1へ流れないようにする場合もある。例えば、Si単結晶を支持基板1として使用する場合においては、支持基板1の表面を酸化させてSiO絶縁層の形成を行うことや、支持基板1表面にAl、SiO、Siなどの絶縁物を形成してもよい。その場合、支持基板1への絶縁が保てればその絶縁層の材料や膜厚は限定されないが、膜厚は0.01μm以上が好ましい。0.01μm未満では絶縁性が保てないため、絶縁層の厚みとして好ましくない。支持基板1の厚さは、薄膜コンデンサ全体の機械的強度を確保することができれば、とくに限定されるものではないが、たとえば、10μm〜5000μmであることが好ましい。10μm未満の場合は機械的強度が弱くなり、5000μmを超えると電子部品の小型化には適さない大きさとなってしまう。
【0026】
本実施形態において、図1に示す薄膜コンデンサ10は、好ましくは、絶縁処理を施した支持基板1表面に、下地層2を有している。下地層2は、支持基板1と第一の電極3の密着性向上を目的として挿入される。一例として、第一の電極3にCuを使用する場合には下地層2はCrを、第一の電極3にPtを使用する場合にはTiを下地層2として挿入することが一般的である。
【0027】
密着性向上を目的としていることから、前記材料に限定されるものではなく、また支持基板1と第一の電極3の密着性を保つことが出来れば、下地層2は省略しても良い。
【0028】
<第一の電極3>
第一の電極3を形成するための材料は、導電性を有していれば良く、例えば、Pt、Ru、Rh、Pd、Ir、Au、Ag、Cu、Niなどの金属や、それらの合金、又は導電性酸化物などを用いることができる。そのため、コストや誘電体薄膜5を熱処理するときの雰囲気に対応した材料を選択すればよい。誘電体薄膜5は大気中の他、不活性ガスであるNやAr、またO、不活性ガスと還元性ガスであるHの混合ガスで熱処理を行うことが出来る。第一の電極3の膜厚は電極として機能すれば良く、0.01μm以上が好ましい。0.01μm未満の場合、導電性が悪くなることから好ましくない。また、支持基板1に電極として使用可能なCuやNi、Pt等や酸化物導電性材料など電極と同一の材料を選択することも出来る。
【0029】
第一の電極3の形成後に、下地層2と第一の電極3との密着性向上と、第一の電極3の安定性向上のために熱処理を行ってもよい。熱処理を行う場合、昇温速度は好ましくは10℃/分〜2000℃/分、より好ましくは100℃/分〜1000℃/分である。熱処理時の保持温度は、好ましくは400℃〜800℃、その保持時間は、好ましくは0.1時間〜4.0時間である。上記の範囲を超えると、密着不良の発生、第一の電極3の表面に凹凸が発生することで、誘電体薄膜5の誘電特性の低下が生じやすくなる。
【0030】
<誘電体薄膜5>
誘電体薄膜5は、BaTiOを主成分とする誘電体薄膜であるが、BaTiOが主成分であり、Baの一部をCaに、Tiの一部をZrに置換した(BaCa)(TiZr)O等を用いてもよい。また、誘電体薄膜が(110)面または(111)面に配向したBaTiOを主成分とする誘電体薄膜であっても、本発明の特徴を有する柱状結晶を備えていない場合は、本発明の効果を得ることが出来ない。
【0031】
誘電体薄膜5は、BaTiOを主成分として誘電体薄膜であり、前記誘電体薄膜が、(110)面または(111)面に配向した結晶群を含み、前記結晶群が、前記第一の電極と第二の電極に接する柱状結晶Aと、前記第一の電極と第二の電極のいずれか一方のみに接する結晶Bとから成り、前記誘電体薄膜主面に対して垂直方向の切断面全体の面積をS、前記結晶群が占める面積をS(A+B)とした場合、S(A+B)/S≧65%であることを特徴とする。
【0032】
誘電体薄膜5が、BaTiOを主成分とする誘電体薄膜であり、柱状結晶Aと、前記第一の電極と第二の電極のいずれか一方のみに接する結晶Bと備える結晶群を有しても、前記結晶群が(110)面または(111)面に配向していなければ、高い比誘電率と良好なDCバイアス特性を得ることが困難となる。
また、誘電体薄膜5が、BaTiOを主成分とする誘電体薄膜であり、柱状結晶Aの結晶構造を備えていても、前記第一の電極と第二の電極のいずれか一方のみに接する結晶Bと、前記誘電体薄膜主面に対して垂直方向の切断面全体の面積Sに対する前記結晶群が占める面積S(A+B)/Sが65%未満では高い比誘電率と良好なDCバイアス特性を得ることが困難となる。
【0033】
前記誘電体薄膜主面に対して垂直方向の切断面における前記結晶Bが占める面積をSとした場合、前記S(A+B)とSとの関係が0.30≦S/S(A+B)≦0.90であることが好ましい。前記のように結晶を制御することで、高い比誘電率を維持したまま、更に良好なDCバイアス特性を実現できる。本実施形態に係る誘電体薄膜に含まれる柱状結晶Aと結晶Bの占める断面積の算出方法について、図2を用いて説明する。
【0034】
本実施形態に係る誘電体薄膜(図2)は、誘電体薄膜の主面に対して垂直方向の切断面で観察した場合、第一の電極(a)と第二の電極(b)に接している柱状結晶(c)と、第一の電極(a)または第二の電極(b)のどちらか一方のみに接している、例えば図2に示される結晶(d)が含まれる構造を有するものである。例えば、前記誘電体薄膜の主面をFIB(集束イオンビーム)加工装置で切断した断面をTEM(透過型電子顕微鏡)による切断面観察および電子線回折観察を行い、(111)面または(110)面の回折スポットを使った暗視野像から得た画像を、2値化し、 (111)面または(110)面のみを白くなるよう画像処理することで配向面の区別が可能である。なお、画像処理方法は特に限定されるものではない。本発明では、2値化の閾値は切断面画像の規格化した輝度ヒストグラムの最大ピークの1/3とした。さらに、同じ視野のTEM明視野像と比べることで柱状結晶(c)と結晶(d)との区別も可能である。また、走査電子顕微鏡(SEM)の反射電子像などでも柱状結晶(c)と結晶(d)との区別が可能な場合がある。
【0035】
TEMにおける観察視野の設定方法には特に制限はないが、観察視野の大きさは1.4μm以上×1.4μm以上、観察視野の倍率は50000倍〜100000倍とすることが好ましい。
【0036】
次に、前記観察視野において、柱状結晶(c)が占める断面積、および、結晶(d)が占める断面積を算出する。前記断面積を求める方法については特に限定はない。例えば、(111)面または(110)面の回折スポットを使った暗視野像から得た2値化画像を、第一の電極(a)と第二の電極(b)に接している面積領域を選択し、その領域を占めるピクセルの個数をカウントし、1ピクセルあたりの面積を掛けることで柱状結晶(c)が占める断面積を算出することができる。同様に、前記暗視や像から得た2値化画像から、第一の電極(a)または第二の電極(b)のどちらか一方のみに接している面積領域を選択することで、結晶(d)が占める断面積も算出することができる。
【0037】
なお、実際の測定数は得られた誘電体薄膜に対して1.4μm×1.4μmの視野で最低10視野とした。
【0038】
なお、柱状結晶(c)と結晶(d)の生成量は、誘電体薄膜の作製方法によって、適宜制御することができる。例えば、成膜中の高周波電力や支持基板温度により、柱状結晶(c)の生成を促すことができる。また、成膜開始時の高周波電力を成膜中高周波電力よりも小さくすることで、特定結晶(d)を生成することができる。
【0039】
本実施形態に係る誘電体薄膜は、特定柱状結晶(c)と結晶(d)を含有する構成により、誘電特性、すなわち比誘電率やDCバイアス特性を大きくすることが可能となる。
【0040】
一方、上記の構造を含まない場合には、誘電特性、すなわち比誘電率やDCバイアス特性が低下してしまう。
また、前記第一の電極または第二の電極のどちらか一方のみに接している結晶が、少なくとも(111)面または(110)面に配向しているため、DCバイアス特性をより良好にすることが可能になる。
【0041】
誘電体薄膜5の厚さは、好ましくは10nm〜2000nm、より好ましくは50nm〜1000nmである。10nm未満では絶縁破壊が生じやすく、2000nmを超える場合においては、コンデンサの静電容量を大きくするために電極面積を広くする必要があり、電子部品の設計によっては小型化が困難となる場合がある。誘電体薄膜厚の計測はFIB加工装置で誘電体薄膜の主面に対し、垂直方向に掘削し、得られた切断面をSEM等で観察して測長すれば良い。
【0042】
誘電体薄膜5は、好ましくは真空蒸着法、スパッタリング法、PLD(パルスレーザー蒸着法)、MO−CVD(有機金属化学気相成長法)、MOD(有機金属分解法)やゾル・ゲル法、CSD(化学溶液堆積法)などの各種薄膜形成法を用いて形成したものである。その際に使用する原料(蒸着材料、各種ターゲット材料や有機金属材料等)には微少な不純物や副成分が含まれている場合があるが、絶縁性を大きく低下させる不純物でなければ、特に問題はない。
【0043】
本発明の効果である誘電特性、すなわち比誘電率やDCバイアス特性を大きく劣化させるものでなければ、微少な不純物や副成分を含んでいてもかまわない。よって、残部である主成分の含有量は特に限定されるものではないが、たとえば前記主成分を含有する誘電体組成物全体に対して80mol%以上、100mol%以下である。
【0044】
<第二の電極4>
本実施形態の一例において、薄膜コンデンサ10は、誘電体薄膜5の表面に、薄膜コンデンサ10の他方の電極として機能する第二の電極4を備えている。第二の電極4を形成するための材料は、導電性を有していれば、とくに限定されるものではなく、第一の電極3と同様の材料によって、第二の電極4を形成することができる。第二の電極4の膜厚は電極として機能すれば良く、10nm以上が好ましい。膜厚が10nm以下の場合、導電性が悪化するため第二の電極4として好ましくない。
【0045】
次に本実施形態の薄膜コンデンサ10の製造方法を説明する。
【0046】
まず、熱酸化したSi支持基板1上に下地層2として、たとえばスパッタリング法により、Tiを成膜する。
【0047】
次に、第一の電極3として前記Tiの下地層2上に、たとえばスパッタリング法により、Ptを成膜する。
【0048】
次いで、前記Ptの第一の電極3上に、誘電体薄膜5の前駆体を形成する。誘電体薄膜5の前駆体は、真空蒸着法、スパッタリング法、PLD、MO−CVD、MODやゾル・ゲル法、CSDなどの各種薄膜形成法を用いて、形成することができる。
【0049】
スパッタリング法の場合、所望の組成のターゲットを用いて、前記Ptの第一の電極3上に、誘電体薄膜5の前駆体を形成する。本発明の特徴を有する誘電体薄膜5を形成するには、以下に示す条件下での作製することが好ましい。
【0050】
支持基板温度:300〜800℃
雰囲気:アルゴン(Ar)/酸素(O)混合ガスを使用
配合比率1/1〜5/1
圧力:0.01Pa〜10Pa
成膜中高周波電力:200W〜300W
【0051】
なお、成膜開始時高周波電力は、例えば100Wにし、成膜中高周波電力よりも低くすることが好ましい。最後に、支持基板温度を室温まで下げる際、支持基板温度降温スピードを好ましくは5℃/分〜10℃/分にする。
【0052】
上記に示したように、厳密に成膜時の条件を設定することにより、本発明の特徴である(110)面または(111)面どちらか一方に配向した結晶群柱状結晶Aと結晶Bとから成り、誘電体薄膜主面に対して垂直方向の切断面全体の面積をS、前記結晶群が占める面積をS(A+B)とした場合、S(A+B)/S≧65%であることを特徴とする誘電体薄膜5を形成することが出来る。
【0053】
つまり、上記に示した成膜条件以外で成膜してしまうと、本発明の特徴を有する誘電体薄膜5が得られ難い。例えば、支持基板温度が300℃未満、成膜中高周波電力が200W未満だと、柱状結晶が得られ難い傾向となってしまう。一方、支持基板温度が800℃より高く、成膜中高周波電力が300Wよりも高い場合、前記第一の電極3と第二の電極4に接し、(111)面または(110)面に配向した柱状結晶Aと、前記第一の電極3または第二の電極4のどちらか一方のみに接し、少なくとも(111)面または(110)面に配向した結晶Bとを備えた結晶構造が得られ難い。
【0054】
成膜開始時高周波電力を、成膜中高周波電力よりも低い場合、前記第一の電極3または第二の電極4のどちらか一方のみに接し、少なくとも(111)面または(110)面に配向した結晶Bを得られ難い。
【0055】
支持基板温度降温スピードを10℃/分よりも早くした場合、(111)面または(110)面に配向した柱状結晶Aを得られ難い。
【0056】
さらに、得られた前記誘電体薄膜5上に、たとえばスパッタリング法にて第二の電極4であるPt薄膜を形成し、薄膜コンデンサ10が得られる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明をさらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。表1に示す実施例1〜実施例15、比較例1〜比較例3は以下のように作成した。
【0059】
【表1】
【0060】
<実施例1>
表面に熱酸化膜(SiO)が形成されたSi支持基板上に密着層として0.03μmのTiO膜を形成した。次に、密着層上にスパッタリング法により第一の電極3を形成した。電極材料にはPtを用い、厚みは0.1〜0.3μmとした。次に、下部電極層上に所定組成のBaTiOターゲットを用いてスパッタリング法により表1に誘電体薄膜を形成した。成膜は、Arガスに25体積%の酸素ガスを含有する混合ガス雰囲気中で、成膜圧力を1Pa、基板温度を500℃、成膜開始時高周波電力:200W、成膜中高周波電力:200W、支持基板降温スピード10℃/分の条件下で行った。誘電体薄膜の厚みは0.4μmとした。
【0061】
次いで、得られた前記誘電体薄膜上にスパッタリング法にて第二の電極構造体であるPt薄膜を、マスクを使って、直径5mm、厚さ0.05μmとなるように形成し、表1に示す実施例1の薄膜コンデンサ試料を得た。
【0062】
<比較例1〜3、実施例2〜15>
以下、比較例1〜3および実施例2〜19は表1に従って実施例1から条件を変更し薄膜コンデンサ試料を得た。
【0063】
得られた薄膜コンデンサ試料について、比誘電率、DCバイアス特性、誘電体薄膜の結晶相および切断面評価を、それぞれ下記に示す方法により測定し表2に示す測定結果を得た。
【0064】
<比誘電率>
比誘電率は、薄膜コンデンサ試料に対し、基準温度25℃において、デジタルLCRメータ(YHP社製4274A)にて、周波数1kHz、入力信号レベル(測定電圧)100mVrmsの条件下で測定された静電容量Cから算出した(単位なし)。比誘電率は高いほうが好ましく、本実施例では、1000以上を良好とした。
【0065】
<DCバイアス特性>
DCバイアス特性は、薄膜コンデンサ試料に対し、基準温度25℃において、デジタルLCRメータ(YHP社製4274A)にて、周波数1kHz、入力信号レベル(測定電圧)100mVrms/μm、直流電圧4V/μmの条件下で測定された静電容量の変化率Cbias/Cから算出した(単位なし)。DCバイアス特性は低いほうが好ましく、本実施例では、±20%以内を良好とした。
【0066】
<優先配向面>
誘電体薄膜に対し、リガク社製全自動水平型多目的X線回折装置 SmartLabによるX線回折(XRD)測定を行い、回折パターンを得た。X線回折のX線源としてCu−Kα線を用い、その測定条件は、電圧45kV、電流200mA、2θ=20°〜70°の範囲とした。得られた回折パターンにおける、面指数が(100)面、(110)面、(111)面のピークの強度から、一番大きなピーク強度の配向面を優先配向面とした。
【0067】
<誘電体薄膜の切断面>
誘電体薄膜に対し、TEM(透過型電子顕微鏡)による倍率100000倍での切断面観察および電子線回折観察を行い、(111)面または(110)面の回折スポットを使った暗視野像から得た画像を、2値化し、 (111)面または(110)面に配向した結晶のみを白くなるよう画像処理をした。なお、2値化の閾値は切断面画像の規格化した輝度ヒストグラムの最大ピークの1/3とした。さらに、同じ視野のTEM明視野像と比べることで誘電体薄膜切断面の全体に対し、第一の電極と第二の電極に接している面積領域を選択し、その領域を占めるピクセルの個数をカウントし、1ピクセルあたりの面積を掛けることで柱状結晶Aが占める断面積を算出した。同様に、前記暗視や像から得た2値化画像から、第一の電極または第二の電極のどちらか一方のみに接している面積領域を選択することで、第一の電極または第二の電極のどちらか一方のみに接している結晶Bが占める断面積も算出した。
【0068】
【表2】
【0069】
<実施例1〜実施例6>
表2から、優先配向面が(110)かつ、S(A+B)/S≧65%の場合、比誘電率が1000以上と高くDCバイアス特性が±20%以内であることが確認できた。
【0070】
<実施例7〜実施例15>
表2から、優先配向面が(110)かつ、S(A+B)/S≧65%であり、さらに、0.30≦S/S(A+B)≦0.90である場合は、比誘電率が1000以上と高くDCバイアス特性が±10%未満であることが確認できた。
【0071】
<比較例1〜比較例3>
表2から、優先配向面が(110)ではなく、あるいはS(A+B)/Sが65%未満である場合は、比誘電率が1000以下と低く、DCバイアス特性が±30%以上であることが確認できた。
【0072】
表3の実施例16〜30に示すように支持基板温度を700℃にし、優先配向面が(111)となる薄膜コンデンサを得た。
【表3】
【表4】
【0073】
<実施例16〜実施例21>
表4から、優先配向面が(111)かつ、S(A+B)/S≧65%の場合、比誘電率が1000以上と高くDCバイアス特性が±20%以内であることが確認できた。
【0074】
<実施例22〜実施例30>
表2から、優先配向面が(111)かつ、S(A+B)/S≧65%であり、さらに、0.30≦S/S(A+B)≦0.90である場合は、比誘電率が1000以上と高くDCバイアス特性が±10%未満であることが確認できた。
【0075】
次に、BaTiO3が主成分であり、Baの一部をCaに、Tiの一部をZrに置き換えた場合についての実施例を示す。
【0076】
<実施例31〜33>
表5の実施例31〜33において、主成分が、一般式(Ba0.06Ca0.040.995(Ti0.06Zr0.04)Oで表わされる誘電体組成物についても、実施例13〜実施例15と同様な条件で成膜を行った。その結果を表6に示す。
【0077】
【表5】
【0078】
【表6】
【0079】
表6のように、優先配向面が(110)かつ、S(A+B)/S≧65%であり、さらに0.30≦S/S(A+B)≦0.90であったため、比誘電率が1000以上と高くDCバイアス特性が±10%未満であることが確認できた。さらに、優先配向面が(111)の試料でも同様な効果が得られることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0080】
以上に説明したように、本発明は、誘電体薄膜を備える薄膜コンデンサ等の誘電体薄膜素子に関わるものであり、本発明は比誘電率を高く維持しつつ、良好なDCバイアス特性を示す誘電体薄膜素子を提供することができる。それにより、誘電体薄膜を備える薄膜コンデンサ等の誘電体薄膜素子において、小型化、高機能化を図ることができる。本発明の誘電体薄膜素子は、例えば、トランジスタなどの能動素子に組み込み、集積回路等に用いることができる

【符号の説明】
【0081】

a・・・第一の電極
b・・・第二の電極
c・・・前記第一の電極と第二の電極に接し、(111)面または(110)面に配向した柱状結晶
d・・・前記第一の電極または第二の電極のどちらか一方のみに接し、少なくとも(111)面または(110)面に配向した結晶

1・・・ 支持基板
2・・・ 下地層
3・・・ 第一の電極
4・・・ 第二の電極
5・・・ 誘電体薄膜
10・・・ 薄膜コンデンサ

図1
図2