【実施例】
【0050】
(実施例1)
上記回路基板付きヒートシンクの実施例について、図を用いて説明する。
図1〜
図4に示すように、ヒートシンク1は、回路基板2と、ヒートシンク本体3と、低膨張部材4と、ろう材層5とを有している。回路基板2は、矩形を呈する第1アルミニウム板21(
図6参照)と、第1アルミニウム板21に積層されたセラミックス板22と、セラミックス板22に積層された第2アルミニウム板23(
図1参照)とを有している。
【0051】
ヒートシンク本体3は、アルミニウム材から構成されている。また、ヒートシンク本体3は、
図2〜
図5に示すように、第1アルミニウム板21が搭載される基板搭載部31と、基板搭載部31の一部に形成され、周囲よりも陥没した凹部311とを備えている。
【0052】
低膨張部材4は、ヒートシンク本体3よりも低い線膨張係数を有している。また、
図2〜
図5に示すように、低膨張部材4は凹部311に埋設されている。
図4に示すように、第1アルミニウム板21と基板搭載部31との間及び第1アルミニウム板21と低膨張部材4との間には、ろう材層5が介在している。
【0053】
図2及び
図5に示すように、低膨張部材4は、一方向に延設された第1直線部41と、第1直線部41に直交する第2直線部42とを有している。第1直線部41と第2直線部42とは一体に形成されている。
【0054】
以下、ヒートシンク1の各部についてより詳細に説明する。
本例の回路基板2における第1アルミニウム板21は、純度99.99%(4N)のアルミニウムから構成されており、縦76mm、横76mm、厚さ0.40mmの正方形状を呈している。また、
図6に示すように、第1アルミニウム板21における4箇所の角部211は円弧状を呈している。
【0055】
セラミックス板22は、窒化アルミニウムから構成されており、縦80mm、横80mm、厚さ0.64mmの正方形状を呈している。第2アルミニウム板23は、純度99.99%(4N)のアルミニウムから構成されている。
図1及び
図2に示すように、本例の回路基板2は、3枚の第2アルミニウム板23を有している。
【0056】
本例のヒートシンク本体3は、
図2及び
図3に示すように、平板状を呈するベース部32と、ベース部32から立設された多数のピンフィン33とを有している。
図1及び
図5に示すように、ベース部32は、回路基板2側から見た平面視において長方形状を呈している。ピンフィン33は、ベース部32の厚み方向における一方側に立設されている。また、
図3及び
図4に示すように、ベース部32の厚み方向における他方側には、ろう材層5を介して第1アルミニウム板21が搭載されている。
【0057】
なお、本例のヒートシンク本体3はJIS A6063合金から構成されている。また、ピンフィン33は、直径1.5mmの円柱状を呈している。以下において、便宜上、ベース部32の長辺方向に平行な方向を「縦方向」といい、ベース部32の短辺方向に平行な方向を「横方向」ということがある。
【0058】
図1に示すように、ベース部32の中央部には第1アルミニウム板21が搭載されている。これにより、ベース部32の中央部が基板搭載部31として構成されている。
図5に示すように、基板搭載部31の中央には、縦方向に伸びた3本の第1直線部41と、横方向に延びた3本の第2直線部42とを有する低膨張部材4が埋設されている。第1直線部41及び第2直線部42の幅は3mmであり、長さは25mmであり、厚みは0.8mmである。また、隣り合う第1直線部41の間隔及び隣り合う第2直線部42の間隔は5mmである。
【0059】
本例の低膨張部材4は、ニッケルから構成されている。ニッケルの線膨張係数は13.4ppm/Kであり、ヒートシンク本体3の線膨張係数23.0ppm/Kよりも低い。
【0060】
図1及び
図5に示すように、第1アルミニウム板21は、その一辺が縦方向と平行になるようにして基板搭載部31上に配置されている。これにより、第1直線部41が第1アルミニウム板21の外周端縁212におけるいずれかの辺と平行な方向に延設されている。
【0061】
また、回路基板2側から視た平面視における第1アルミニウム板21の中心213(
図6参照)は、低膨張部材4の中心40と一致している。これにより、
図5に示すように、回路基板2側から視た平面視における凹部311の形状が、第1アルミニウム板21の中心213に対して180度回転対称となっている。
【0062】
図4に示すように、低膨張部材4における第1アルミニウム板21側の表面400と、基板搭載部31におけるろう材層5に接している表面310とは面一に配置されている。また、低膨張部材4は、下側ろう材層51を介して基板搭載部31に接合されている。
【0063】
本例においては、上記の構成を有するヒートシンク1を以下の方法により作製し、反りの評価を行った。
【0064】
まず、
図2に示すように、ヒートシンク本体3の凹部311内に、低膨張部材4と同一の平面形状を有する下側ろう箔510を配置した。本例の下側ろう箔510は、Al−Si−Mg合金から構成されており、0.08mmの厚さを有している。
【0065】
この下側ろう箔510の上に低膨張部材4を載置し、さらに、基板搭載部31及び低膨張部材4の上に、正方形状を呈する上側ろう箔50を載置した。本例の上側ろう箔50は、Al−Si−Mg合金から構成されており、0.08mmの厚さを有している。そして、上側ろう箔50上に回路基板2を載置し、上側ろう箔50と第1アルミニウム板21とを当接させた。以上により、
図2に示す被処理物10を組み立てた。
【0066】
次に、この被処理物10に治具(図示略)を取り付け、回路基板2をヒートシンク本体3側に押圧した。本例の治具は、回路基板2に当接する基板加圧板と、ヒートシンク本体3に当接するヒートシンク加圧板とを有している。これらの加圧板は、回路基板2とヒートシンク本体3との積層方向におけるヒートシンク本体3側が凸となるように湾曲している。また、これらの加圧板の曲率半径は2000mmである。
【0067】
上記の治具を被処理物10に取り付けることにより、回路基板2の中央部が外周端部よりもヒートシンク本体3側に突出するようにして、被処理物10全体を湾曲させた。そして、この状態で被処理物10を加熱することにより、被処理物10のろう付を一括して行った。以上により、
図1に示すヒートシンク1を作製した。
【0068】
ろう付後のヒートシンク1を治具から取り外した後、回路基板2の反りを測定した。ろう付後の回路基板2は、その中央部が外周端部よりもヒートシンク本体3の反対側に突出するように湾曲していた。また、回路基板2の中央部と外周端部との高さの差は、0.2mm以下であった。
【0069】
さらに、回路基板2へのはんだ付を想定し、ヒートシンク1を250℃に加熱した状態で回路基板2の反りを測定した。250℃に加熱された状態においては、回路基板2の反りの向きが加熱前に対して反転し、回路基板2の中央部が外周端部よりもヒートシンク本体3側に突出するように湾曲していた。回路基板2の中央部と外周端部との高さの差は、0.3mm以下であった。
【0070】
本例の作用効果を以下に説明する。ヒートシンク1は、基板搭載部31と、基板搭載部31の一部に形成された凹部311とを備えたヒートシンク本体3を有している。凹部311には、第1直線部41と、第1直線部41に交差する第2直線部42とを備え、ヒートシンク本体3よりも低い線膨張係数を有する低膨張部材4が埋設されている。そして、第1アルミニウム板21は、ろう材層5を介して低膨張部材4及び基板搭載部31の両方に接合されている。
【0071】
ヒートシンク1は、凹部311に低膨張部材4を埋設することにより、ろう付時にセラミックス板22に生じる反り及び残留応力を低減することができる。さらに、ヒートシンク1は、ろう付後の温度上昇に伴ってセラミックス板22に加わる反りや引張応力を低減することもできる。これらの結果、セラミックス板22の割れを長期間に亘って抑制することができる。
【0072】
また、ヒートシンク1においては、従来のように、回路基板2の全体を低膨張部材4上に載置する必要がない。これにより、セラミックス板22の割れを長期間に亘って抑制する効果を得つつ、低膨張部材4の体積を小さくすることができる。その結果、ヒートシンク1の質量の増加を抑制することができる。
【0073】
本例の低膨張部材4における第2直線部42は、第1直線部41に直交している。また、回路基板2側から視た平面視における低膨張部材4の形状は、第1アルミニウム板21の中心213に対して180°回転対称である。これらの結果、ろう付時及びろう付後にセラミックス板22に生じる応力や反りの偏りをより低減することができる。それ故、セラミックス板22の割れをより長期間に亘って抑制することができる。
【0074】
本例の低膨張部材4は、金属から構成されているため、ヒートシンク本体3が熱膨張した際に、ヒートシンク本体3の変形に容易に追従することができる。
【0075】
また、低膨張部材4の線膨張係数は、0.1〜19ppm/Kである。そのため、ろう付時及びろう付後にセラミックス板22に生じる応力や反りをより低減することができる。その結果、セラミックス板22の割れの発生をより長期間に亘って抑制することができる。
【0076】
また、低膨張部材4における第1アルミニウム板21側の表面400と、基板搭載部31におけるろう材層5に接している表面310とは、面一に配置されている。そのため、ろう付作業の際に、ろう材層5中にボイドが発生することをより効果的に抑制することができる。その結果、ヒートシンク1の放熱性をより向上させることができる。
【0077】
また、
図5に示すように、第1アルミニウム板21の外周端縁212、外周端縁212におけるいずれかの辺に平行な2本の第1分割線L1及び第1分割線L1と直交する2本の第2分割線L2に沿って第1アルミニウム板21の表面を9個の仮想領域に等分割した結果、中央に配置された中央仮想領域Cにおける、低膨張部材4を第1アルミニウム板21上に投影してなる低膨張領域の面積率が62.7%であった。このように、中央仮想領域Cにおける低膨張領域の面積率を55%以上とすることにより、ろう付時にセラミックス板22の中央部に生じる引張応力をより低減することができるとともに、ろう付後の応力の変動をより低減することができる。その結果、セラミックス板22の割れをより長期間に亘って抑制することができる。
【0078】
以上のように、ヒートシンク1によれば、質量の増大を抑制しつつ、長期間に亘ってセラミックス板22の割れを抑制することができる。
【0079】
(実施例2)
本例は、外枠部43を有する低膨張部材402を備えたヒートシンク102の例である。なお、本実施例以降において用いる符号のうち、既出の実施例において用いた符号と同一の符号は、特に説明のない限り、既出の実施例における構成要素等と同様の構成要素等を示す。
【0080】
本例のヒートシンク102は、
図7に示すように、ヒートシンク本体302と、低膨張部材402と、回路基板2と、ろう材層5(図示略)とを有している。
図8に示すように、本例の低膨張部材402は、縦方向に伸びた7本の第1直線部41と、横方向に延びた7本の第2直線部42とを有している。第1直線部41及び第2直線部42の幅は3mmであり、厚みは1mmである。また、隣り合う第1直線部41の間隔及び隣り合う第2直線部42の間隔は5mmである。
【0081】
また、本例の低膨張部材402は、第1アルミニウム板21の外周端縁212に沿って形成された外枠部43を有している。外枠部43は、第1直線部41及び第2直線部42に連なっている。外枠部43の厚みは1mmであり、幅は3mmである。また、回路基板2側から視た平面視において、外枠部43の外周端縁における角部431は円弧状を呈している。なお、本例の低膨張部材4は、ニッケルから構成されている。その他は実施例1と同様である。
【0082】
実施例1と同様の方法によりろう付を行ってヒートシンク102を作製し、治具を取り外した後の回路基板2の反りを測定した。ろう付後の回路基板2は、その中央部が外周端部よりもヒートシンク本体302の反対側に突出するように湾曲していた。また、回路基板2の中央部と外周端部との高さの差は、0.1mm以下であった。
【0083】
さらに、回路基板2へのはんだ付を想定し、ヒートシンク102を250℃に加熱した状態で回路基板2の反りを測定した。250℃に加熱された状態においては、回路基板2の反りの向きが加熱前に対して反転し、回路基板2の中央部が外周端部よりもヒートシンク本体302側に突出するように湾曲していた。回路基板2の中央部と外周端部との高さの差は、0.1mm以下であった。
【0084】
本例の低膨張部材402は、第1アルミニウム板21の外周端縁212に沿って形成された外枠部43を有しており、外枠部43は、第1直線部41及び第2直線部42に連なっている。そのため、ろう付時及びろう付後に生じるヒートシンク本体302の反りをより低減することができ、ひいてはセラミックス板22の反りをより低減することができる。その結果、セラミックス板22の割れをより長期間に亘って抑制することができる。
【0085】
また、外枠部43の外周端縁における角部431は、回路基板2側から視た平面視において円弧状を呈している。そのため、ろう付時及びろう付後に生じるセラミックス板22の角部への応力集中をより効果的に緩和することができる。その結果、セラミックス板22の割れをより長期間に亘って抑制することができる。
【0086】
また、本例の低膨張部材402においては、第1直線部41、第2直線部42及び外枠部43が一体に形成されている。そのため、外枠部43が第1直線部41及び第2直線部42とは別体に形成されている場合に比べて、低膨張部材402の剛性をより高くすることができる。それ故、ろう付時及びろう付後に生じるヒートシンク本体302の反りをより低減することができ、ひいてはセラミックス板22の反りをより低減することができる。その結果、セラミックス板22の割れをより長期間に亘って抑制することができる。その他、本例のヒートシンク102は、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【0087】
(実施例3)
本例は、板状部44と補強部45とを備えた低膨張部材403を有するヒートシンク103の例である。本例のヒートシンク103は、
図11及び
図12に示すように、ヒートシンク本体303と、低膨張部材403と、回路基板2と、ろう材層5とを有している。
【0088】
本例の低膨張部材403は、
図13に示す板状部44と、
図14に示す補強部45とを有している。板状部44と補強部45とは別体に形成されており、
図12に示すように、中間ろう材層52を介して両者が接合されている。
【0089】
板状部44は、
図10及び
図13に示すように、縦方向に伸びる第1直線部41と、第1直線部41に直交する第2直線部42と、外枠部43とを含んでいる。本例の板状部44の厚みは0.5mmである。
図10に示すように、第1直線部41及び第2直線部42は、回路基板2側から見た平面視において、第1アルミニウム板21の中心213において交差している。
【0090】
また、
図10及び
図13に示すように、板状部44は、第1直線部41及び第2直線部42のうち少なくとも一方に連なり、回路基板2側から視た平面視において第1アルミニウム板21の角部211に対応する位置に配置された応力緩和部46を有している。本例の応力緩和部46は、平面視において正方形状を呈している。また、応力緩和部46は、板状部44の中央部分において、第1直線部41及び第2直線部42に向かって延設された延設部461を有している。応力緩和部46は、この延設部461及び外枠部43を介して第1直線部41及び第2直線部42に連なっている。
【0091】
図10及び
図11に示すように、補強部45は、板状部44における外枠部43からヒートシンク本体303側に突出している。補強部45の厚みは1.3mmである。その他は実施例2と同様である。
【0092】
本例においては、上記の構成を有するヒートシンク103を以下の方法により作製し、反りの評価を行った。
【0093】
まず、
図9に示すように、ヒートシンク本体303の凹部311内に、補強部45と同一の平面形状を有する下側ろう箔510を配置した。この下側ろう箔510の上に補強部45を載置した。次いで、板状部44と同一の平面形状を有する中間ろう箔520を補強部45上に載置した。本例の中間ろう箔520は、Al−Si−Mg合金から構成されており、0.08mmの厚さを有している。
【0094】
この中間ろう箔520上に板状部44を載置し、さらに、基板搭載部31及び板状部44の上に、正方形状を呈する上側ろう箔50を載置した。そして、上側ろう箔50上に回路基板2を載置し、上側ろう箔50と第1アルミニウム板21とを当接させた。以上により、
図9に示す被処理物10を組み立てた。その後、実施例2と同様の治具を用いて被処理物10の固定及びろう付を行った。
【0095】
ろう付後のヒートシンク103から治具を取り外した後、回路基板2の反りを測定した。ろう付後の回路基板2は、その中央部が外周端部よりもヒートシンク本体303の反対側に突出するように湾曲していた。また、回路基板2の中央部と外周端部との高さの差は、0.2mm以下であった。
【0096】
さらに、回路基板2へのはんだ付を想定し、ヒートシンク103を250℃に加熱した状態で回路基板2の反りを測定した。250℃に加熱された状態においては、回路基板2の反りの向きが加熱前に対して反転し、回路基板2の中央部が外周端部よりもヒートシンク本体303側に突出するように湾曲していた。回路基板2の中央部と外周端部との高さの差は、0.2mm以下であった。
【0097】
本例の低膨張部材403は、第1直線部41、第2直線部42及び外枠部43を含む板状部44と、外枠部43からヒートシンク本体303側に突出した補強部45とを有している。そのため、補強部45により、低膨張部材4の剛性をより高くすることができる。その結果、セラミックス板22の割れをより長期間に亘って抑制することができる。
【0098】
また、板状部44と補強部45とは別々に形成されており、これらの部品がろう付等により一体化されている。そのため、板状部44及び補強部45の構造を簡素化することができる。その結果、板状部44及び補強部45を容易に製造することができる。
【0099】
また、低膨張部材403は、第1直線部41及び第2直線部42のうち少なくとも一方に連なり、回路基板2側から視た平面視において第1アルミニウム板21の角部211に対応する位置に配置された応力緩和部46を有している。そのため、ろう付時及びろう付後に生じるセラミックス板22の角部への応力集中をより効果的に緩和することができる。その結果、セラミックス板22の割れをより長期間に亘って抑制することができる。その他、本例のヒートシンク103は、実施例2と同様の作用効果を奏することができる。
【0100】
(比較例1)
本例は、低膨張部材4を有さない、従来の回路基板付きヒートシンクの例である。図には示さないが、本例のヒートシンクは、ヒートシンク本体と、回路基板2と、ヒートシンク本体と回路基板2との間に介在するろう材層5とを有している。ヒートシンク本体は、JIS A6063合金から構成されており、平板状を呈するベース部32と、ベース部32から立設された多数のピンフィン33とを有している。ベース部32におけるピンフィン33とは反対側の板面には、ろう材層5を介して回路基板2が搭載されている。その他は実施例1と同様である。
【0101】
実施例1と同様の方法によりろう付を行ってヒートシンクを作製し、治具を取り外した後の回路基板2の反りを測定した。ろう付後の回路基板2は、その中央部が外周端部よりもヒートシンク本体の反対側に突出していた。また、回路基板2の中央部と外周端部との高さの差は、0.6mm以下であった。
【0102】
さらに、回路基板2へのはんだ付を想定し、ヒートシンクを250℃に加熱した状態で回路基板2の反りを測定したところ、セラミックス板22に割れが発生した。
【0103】
(比較例2)
本例は、回路基板2の全体が低膨張部材上に搭載された回路基板付きヒートシンクの例である。図には示さないが、本例のヒートシンクは、ヒートシンク本体、低膨張部材及び回路基板2が順次積層されている。本例の低膨張部材4は、正方形状を呈するニッケル板から構成されている。
【0104】
ヒートシンク本体と低膨張部材4との間には下側ろう材層51が介在している。また、低膨張部材4と回路基板2との間には、ろう材層5が介在している。その他は比較例2と同様である。
【0105】
(比較例3)
本例は、中央仮想領域Cに占める低膨張領域の面積率を小さくした例である。図には示さないが、本例のヒートシンクは、第1直線部41及び第2直線部42の幅を2mmにし、隣り合う第1直線部41及び隣り合う第2直線部42の間隔を5mmに変更した以外は、実施例1と同様の構成を有している。本例のヒートシンクにおける、中央仮想領域Cに占める低膨張領域の面積率は39.9%である。
【0106】
実施例1と同様の方法によりろう付を行ってヒートシンクを作製し、治具を取り外した後の回路基板2の反りを測定した。ろう付後の回路基板2は、その中央部が外周端部よりもヒートシンク本体の反対側に突出していた。また、回路基板2の中央部と外周端部との高さの差は、0.4mm以下であった。
【0107】
さらに、回路基板2へのはんだ付を想定し、ヒートシンクを250℃に加熱した状態で回路基板2の反りを測定したところ、セラミックス板22に割れが発生した。
【0108】
(実験例)
本例においては、実施例1〜3及び比較例1〜3のヒートシンクの放熱性能を評価した。具体的には、ヒートシンクのピンフィン側に水冷ジャケットを取り付け、この水冷ジャケット内に一定の流量で冷媒を流した。そして、第2アルミニウム板上に発熱体を載置し、一定の出力で熱を発生させた。
【0109】
この状態を保持し、定常状態に到達したときの発熱体の温度を計測した。そして、比較例1における発熱体の温度をTr(K)、実施例1〜3及び比較例2〜3における発熱体の温度をTs(K)とし、下記の式により、冷却性能の変化率R(%)を算出した。
R=(Ts−Tr)/Tr×100
【0110】
冷却性能の変化率Rとともに、上述した反りの結果及び中央仮想領域Cに占める低膨張部材の面積率を、表1にまとめて示す。
【0111】
【表1】
【0112】
実施例1〜3のヒートシンクに用いた低膨張部材は、アルミニウム材よりも熱伝導率の低いニッケルから構成されている。しかし、表1に示したように、実施例1〜3のヒートシンクは、比較例2のヒートシンクに比べて放熱性能の悪化を抑制することができた。また、実施例1〜3のヒートシンクは、比較例1及び比較例2に比べてろう付後の反りを低減することができるとともに、はんだ付後の割れを防止することができた。
【0113】
これらの結果から、低膨張部材が熱伝導率の低い材料から構成されている場合であっても、上記特定の構成を有する低膨張部材を回路基板とヒートシンク本体との間に配置することにより、反りや応力を低減する効果を得つつ放熱性能の悪化を抑制できることが容易に理解できる。
【0114】
なお、本発明に係る回路基板付きヒートシンクは、実施例1〜3の態様に限定されるものではなく、その趣旨を損なわない範囲で適宜構成を変更することができる。