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特開2017-183533回路基板付きヒートシンク及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-183533(P2017-183533A)
(43)【公開日】2017年10月5日
(54)【発明の名称】回路基板付きヒートシンク及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20170908BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20170908BHJP
【FI】
   H01L23/36 C
   H05K7/20 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-68936(P2016-68936)
(22)【出願日】2016年3月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000107538
【氏名又は名称】株式会社UACJ
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大高 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 正樹
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA11
5E322AB02
5E322AB09
5F136BA06
5F136BB04
5F136FA02
5F136FA04
5F136FA06
5F136FA14
5F136FA16
5F136FA18
5F136FA83
5F136GA02
(57)【要約】
【課題】質量の増大を抑制しつつ、長期間に亘ってセラミックス板の割れを抑制することができる回路基板付きヒートシンク及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ヒートシンク1は、回路基板2と、ヒートシンク本体3と、低膨張部材4と、ろう材層5とを有している。ヒートシンク本体3は、回路基板2における第1アルミニウム板21が搭載される基板搭載部31と、基板搭載部31の一部に形成され、周囲よりも陥没した凹部311とを備えている。低膨張部材4は、ヒートシンク本体3よりも低い線膨張係数を有し、凹部311に埋設されている。低膨張部材4は、一方向に延設された第1直線部41と、第1直線部41に直交する第2直線部42とを有している。第1直線部41と第2直線部42とは一体に形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形を呈する第1アルミニウム板と、該第1アルミニウム板に積層されたセラミックス板と、該セラミックス板に積層された第2アルミニウム板とを備えた回路基板と、
上記第1アルミニウム板が搭載される基板搭載部と、該基板搭載部の一部に形成され、周囲よりも陥没した凹部とを備え、アルミニウム材から構成されているヒートシンク本体と、
該ヒートシンク本体よりも低い線膨張係数を有し、上記凹部に埋設された低膨張部材と、
上記第1アルミニウム板と上記基板搭載部との間及び上記第1アルミニウム板と上記低膨張部材との間に介在するろう材層とを有し、
上記低膨張部材は、
一方向に延設された第1直線部と、
該第1直線部に交差する第2直線部とを有しており、
上記第1直線部と上記第2直線部とが一体に形成されている、回路基板付きヒートシンク。
【請求項2】
上記低膨張部材は、上記第1アルミニウム板の外周端縁に沿って延設された外枠部を有しており、該外枠部は、上記第1直線部及び上記第2直線部に連なっている、請求項1に記載の回路基板付きヒートシンク。
【請求項3】
上記回路基板側から視た平面視において、上記外枠部の外周端縁における角部が円弧状を呈している、請求項2に記載の回路基板付きヒートシンク。
【請求項4】
上記低膨張部材は、上記第1直線部、上記第2直線部及び上記外枠部を含む板状部と、上記外枠部から上記ヒートシンク本体側に突出した補強部とを有している、請求項2または3に記載の回路基板付きヒートシンク。
【請求項5】
上記低膨張部材は、上記第1直線部及び上記第2直線部のうち少なくとも一方に連なり、上記回路基板側から視た平面視において上記第1アルミニウム板の角部に対応する位置に配置された応力緩和部を有している、請求項1〜4のいずれか1項に記載の回路基板付きヒートシンク。
【請求項6】
上記第1アルミニウム板の外周端縁、該外周端縁におけるいずれかの辺に平行な2本の第1分割線及び該第1分割線と直交する2本の第2分割線に沿って上記第1アルミニウム板の表面を9個の仮想領域に等分割したときに、中央に配置された中央仮想領域における、上記低膨張部材を上記第1アルミニウム板上に投影してなる低膨張領域の面積率が55%以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の回路基板付きヒートシンク。
【請求項7】
上記回路基板側から視た平面視における上記低膨張部材の形状は、上記第1アルミニウム板の中心に対して180°回転対称である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の回路基板付きヒートシンク。
【請求項8】
上記第2直線部は、上記第1直線部に直交している、請求項1〜7のいずれか1項に記載の回路基板付きヒートシンク。
【請求項9】
上記第1直線部は、上記第1アルミニウム板の外周端縁におけるいずれかの辺と平行な方向に延設されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の回路基板付きヒートシンク。
【請求項10】
上記低膨張部材における上記第1アルミニウム板側の表面と、上記基板搭載部の表面とが面一に配置されている、請求項1〜9のいずれか1項に記載の回路基板付きヒートシンク。
【請求項11】
上記低膨張部材の線膨張係数は0.1〜19ppm/Kである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の回路基板付きヒートシンク。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の回路基板付きヒートシンクの製造方法であって、
上記ヒートシンク本体と、上記凹部内に配置された下側ろう箔と、該下側ろう箔の上に載置された上記低膨張部材と、上記基板搭載部及び上記低膨張部材の上に載置された上側ろう箔と、該上側ろう箔と上記第1アルミニウム板とが当接するように載置された上記回路基板とを有する被処理物を組み立て、
上記回路基板を上記ヒートシンク本体側に押圧しつつ上記被処理物を加熱することにより、該被処理物のろう付を一括して行う、回路基板付きヒートシンクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板付きヒートシンク及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータやコンバータ等の電力変換装置には、セラミックス板の両面に金属板が接合された回路基板と、回路基板における一方の金属板に接合されたヒートシンクとを有する回路基板付きヒートシンクが組み込まれている(例えば、特許文献1)。回路基板における他方の金属板には、電力回路を構成する半導体素子などがはんだ付により搭載されている。また、この種の回路基板付きヒートシンクにおけるヒートシンクや金属板は、軽量化を目的として、アルミニウム材やアルミニウム合金材から構成されていることがある。
【0003】
回路基板は、以下のような方法により、ヒートシンクに接合されている。まず、ヒートシンクと、ろう材と、回路基板とをこの順に積層して被処理物を組み立てる。そして、回路基板をヒートシンク側に押圧しながら被処理物を加熱し、ろう材を溶融させる。その後、被処理物を冷却してろう材を凝固させることにより、ろう材を介して回路基板における金属板とヒートシンクとを接合することができる。
【0004】
しかし、回路基板におけるセラミックス板の熱膨張係数と、ヒートシンクを構成するアルミニウム材の熱膨張係数とは異なっているため、ろう付時の加熱によりセラミックス板とヒートシンクとの熱膨張量に差が生じる。このような状態で被処理物を冷却すると、セラミックス板やヒートシンクの収縮が完了する前にろう材が凝固する。その結果、ろう付が完了した後の回路基板付きヒートシンクにおいて、セラミックス板に反り及び残留応力が発生する。
【0005】
また、ろう付後の回路基板は、ろう材を介してヒートシンクに拘束されている。そのため、例えば半導体素子のはんだ付作業の際や、半導体素子の発熱等により回路基板及びヒートシンクの温度が上昇すると、セラミックス板の中心付近に引張応力が生じるとともに、セラミックス板に反りが生じる。そして、これらの引張応力や反りが過度に大きい場合には、セラミックス板に割れが発生するおそれがある。
【0006】
このような問題を解決するため、例えば、ヒートシンクよりも線膨張係数の小さい台座をヒートシンク上に設け、この台座に回路基板を接合する技術が提案されている(例えば、特許文献2)。台座としては、銅や銅とタングステンとの合金、銅とモリブデンとの合金が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015−153925号公報
【特許文献2】特開2010−27953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献2の半導体装置においては、回路基板全体がアルミニウムに比べて密度の高い銅等からなる台座上に搭載されている。それ故、半導体装置の質量増大を抑制することが難しいという問題がある。
【0009】
さらに、近年では、電気回路をコンパクト化することを目的として、回路基板上に多数の半導体素子や電気部品を搭載することが望まれている。そのため、回路基板がより大型化する傾向にあり、半導体装置の質量増大を抑制することがますます難しくなっている。
【0010】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、質量の増大を抑制しつつ、長期間に亘ってセラミックス板の割れを抑制することができる回路基板付きヒートシンク及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、矩形を呈する第1アルミニウム板と、該第1アルミニウム板に積層されたセラミックス板と、該セラミックス板に積層された第2アルミニウム板とを備えた回路基板と、
上記第1アルミニウム板が搭載される基板搭載部と、該基板搭載部の一部に形成され、周囲よりも陥没した凹部とを備え、アルミニウム材から構成されているヒートシンク本体と、
該ヒートシンク本体よりも低い線膨張係数を有し、上記凹部に埋設された低膨張部材と、
上記第1アルミニウム板と上記基板搭載部との間及び上記第1アルミニウム板と上記低膨張部材との間に介在するろう材層とを有し、
上記低膨張部材は、
一方向に延設された第1直線部と、
該第1直線部に交差する第2直線部とを有しており、
上記第1直線部と上記第2直線部とが一体に形成されている、回路基板付きヒートシンクにある。
【0012】
本発明の他の態様は、上記の態様の回路基板付きヒートシンクの製造方法であって、上記ヒートシンク本体と、上記凹部内に配置された下側ろう箔と、該下側ろう箔の上に載置された上記低膨張部材と、上記基板搭載部及び上記低膨張部材の上に載置された上側ろう箔と、該上側ろう箔と上記第1アルミニウム板とが当接するように載置された上記回路基板とを有する被処理物を組み立て、
上記回路基板を上記ヒートシンク側に押圧しつつ上記被処理物を加熱することにより、該被処理物のろう付を一括して行う、回路基板付きヒートシンクの製造方法にある。
【発明の効果】
【0013】
上記回路基板付きヒートシンク(以下、「ヒートシンク」と省略する。)は、上記基板搭載部と、該基板搭載部の一部に形成された上記凹部とを備えた上記ヒートシンク本体を有している。上記凹部には、上記第1直線部と、該第1直線部に交差する第2直線部とを備え、上記ヒートシンク本体よりも低い線膨張係数を有する上記低膨張部材が埋設されている。そして、上記第1アルミニウム板は、上記ろう材層を介して上記低膨張部材及び上記基板搭載部の両方に接合されている。
【0014】
上記ヒートシンクは、上記凹部に上記低膨張部材を埋設することにより、ろう付時に上記セラミックス板に生じる反り及び残留応力を低減することができる。さらに、上記ヒートシンクは、ろう付後の温度上昇に伴って上記セラミックス板に加わる反りや引張応力を低減することもできる。これらの結果、上記セラミックス板の割れを長期間に亘って抑制することができる。
【0015】
また、上記ヒートシンクにおいては、従来のように、上記回路基板の全体を上記低膨張部材上に載置する必要がない。これにより、上記セラミックス板の割れを長期間に亘って抑制する効果を得つつ、上記低膨張部材の体積を小さくすることができる。その結果、上記ヒートシンクの質量の増加を抑制することができる。
【0016】
以上のように、上記ヒートシンクによれば、質量の増大を抑制しつつ、長期間に亘ってセラミックス板の割れを抑制することができる。
【0017】
また、上記の態様の製造方法によれば、上記ヒートシンク本体、上記低膨張部材及び上記回路基板のろう付を一括して行うことができる。その結果、上記ヒートシンクを容易に作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例1における、回路基板付きヒートシンクの平面図である。
図2】実施例1における、回路基板付きヒートシンクのろう付を行う前の分解斜視図である。
図3図1のIII−III線矢視断面図である。
図4図3における、低膨張部材近傍の一部拡大図である。
図5】実施例1における、低膨張部材が埋設されたヒートシンク本体の平面図である。
図6】実施例1における、第1アルミニウム板側から見た回路基板の平面図である。
図7】実施例2における、外枠部を備えた低膨張部材を有する回路基板付きヒートシンクのろう付を行う前の分解斜視図である。
図8】実施例2における、低膨張部材が埋設されたヒートシンク本体の平面図である。
図9】実施例3における、補強部を備えた低膨張部材を有する回路基板付きヒートシンクのろう付を行う前の分解斜視図である。
図10】実施例3における、低膨張部材が埋設されたヒートシンク本体の平面図である。
図11】実施例3における、回路基板付きヒートシンクの断面図(図3に相当する矢視断面図)である。
図12図11における、補強部近傍の一部拡大図である。
図13】実施例3における、板状部の平面図である。
図14】実施例3における、補強部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
上記ヒートシンクにおいて、回路基板は、第1アルミニウム板、セラミックス板及び第2アルミニウム板が順次積層された3層構造を有している。第1アルミニウム板及び第2アルミニウム板としては、公知のアルミニウムまたはアルミニウム合金から構成された板材を採用することができる。第1アルミニウム板及び第2アルミニウム板の厚みは、例えば、0.2〜0.6mmの範囲内から適宜設定することができる。
【0020】
第1アルミニウム板は、矩形を呈している。ここで、上記の「矩形」には、幾何学的に定義される矩形及び一般的な感覚として矩形と認識される形状が含まれる。例えば、第1アルミニウム板は、平面視において長方形あるいは正方形を呈していてもよい。また、第1アルミニウム板は、長方形あるいは正方形を、矩形と認識できる程度に変形した形状とすることもできる。例えば、平面視において、第1アルミニウム板の角部は円弧状を呈していてもよい。
【0021】
第2アルミニウム板の形状は特に限定されるものではないが、通常、所望する電気回路に応じた形状を呈している。また、第2アルミニウム板は、セラミックス板上に複数配置されていてもよい。
【0022】
回路基板におけるセラミックス板は、例えば、アルミナ等の酸化物系セラミックスや、窒化アルミニウム、窒化珪素等の窒化物系セラミックスなどから構成されている。セラミックス板の厚みは、例えば、0.2〜1.5mmの範囲内から適宜設定することができる。
【0023】
ヒートシンク本体は、アルミニウム材から構成されている。ここで、上記の「アルミニウム材」には、純アルミニウム及びアルミニウム合金が含まれる。ヒートシンク本体の材質は、要求される機械的特性や耐食性、加工性等に応じて公知のアルミニウム及びアルミニウム合金の中から適宜選択することができる。
【0024】
ヒートシンク本体は、例えば、平板状を呈していてもよい。この場合には、厚み方向における一方側を基板搭載部として構成することができる。また、厚み方向における他方側には、ヒートシンク本体とは別体に構成されたピンフィンやプレートフィン、コルゲートフィン等の放熱フィン部材が取り付けられていてもよい。また、これらの放熱フィン部材とヒートシンク本体とを一体的に形成することもできる。
【0025】
基板搭載部におけるろう材層に接している表面は、回路基板の接合性を高める観点から、通常、平坦に形成されている。また、基板搭載部の一部には、周囲よりも陥没した凹部が形成されている。
【0026】
凹部には、ヒートシンク本体よりも低い線膨張係数を有する低膨張部材が埋設されている。低膨張部材は、例えば、ろう付によりヒートシンク本体と接合されていてもよい。
【0027】
低膨張部材は、種々の単体金属や合金、セラミックスから構成されていてもよい。単体金属としては、例えば、ニッケル、タングステン、モリブデン等を採用することができる。合金としては、例えば、Fe−Ni36%合金等を採用することができる。セラミックスとしては、例えば、アルミナ等の酸化物系セラミックスや、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の窒化物系セラミックスを採用することができる。
【0028】
低膨張部材は、金属から構成されていることが好ましい。金属は、セラミックスに比べて高い靭性を有している。そのため、金属からなる低膨張部材は、ヒートシンク本体が熱膨張した際に、ヒートシンク本体の変形に容易に追従することができる。
【0029】
低膨張部材の線膨張係数は、0.1〜19ppm/Kであることが好ましい。この場合には、ろう付時及びろう付後にセラミックス板に生じる応力や反りをより低減することができる。その結果、セラミックス板の割れをより長期間に亘って抑制することができる。セラミックス板の割れをより長期間に亘って抑制する観点からは、低膨張部材の線膨張係数を4.5〜19ppm/Kとすることが好ましい。
【0030】
低膨張部材は、第1直線部と、第1直線部に交差する第2直線部とを有している。第1直線部と第2直線部とは、一体に形成されている。これにより、ろう付時及びろう付後にセラミックス板に生じる応力や反りを低減する効果を十分に得ることができる。
【0031】
第1直線部の数は、1本であってもよく、2本以上であってもよい。また、第2直線部の数は、1本であってもよく、2本以上であってもよい。
【0032】
第2直線部は、第1直線部に直交していることが好ましい。この場合には、第2直線部が第1直線部に対して斜めに交差している場合に比べて、第1直線部と第2直線部との交差部分の面積を小さくすることができる。これにより、ろう付時及びろう付後にセラミックス板に生じる応力や反りの偏りをより低減することができる。その結果、セラミックス板の割れをより長期間に亘って抑制することができる。
【0033】
なお、上述の「直交」には、第1溝部と第2溝部とのなす角度が90°である場合、及び、この角度が90°からわずかにずれる場合が含まれる。具体的には、第1直線部と第2直線部とのなす角度が87〜93°であれば、上述した応力や反りを低減する効果を十分に得ることができる。
【0034】
第1直線部の延設方向は、例えば、第1アルミニウム板の外周端縁におけるいずれかの辺に平行な方向とすることができる。
【0035】
また、低膨張部材は、第1アルミニウム板の外周端縁に沿って形成された外枠部を有しており、外枠部は、第1直線部及び第2直線部に連なっていることが好ましい。この場合には、ろう付時及びろう付後に生じるヒートシンク本体の反りをより低減することができ、ひいてはセラミックス板の反りをより低減することができる。その結果、セラミックス板の割れをより長期間に亘って抑制することができる。
【0036】
回路基板側から視た平面視において、外枠部の外周端縁における角部は、円弧状を呈していてもよい。この場合には、ろう付時及びろう付後に生じるセラミックス板の角部への応力集中をより効果的に緩和することができる。その結果、セラミックス板の割れをより長期間に亘って抑制することができる。
【0037】
上記角部が円弧状を呈している場合、その曲率半径は、1mm以上6mm以下であることが好ましい。この場合には、セラミックス板への応力集中をより効果的に緩和することができる。
【0038】
低膨張部材は、第1直線部、第2直線部及び外枠部を含む板状部と、外枠部からヒートシンク本体側に突出した補強部とを有していることが好ましい。この場合には、補強部により、低膨張部材の剛性をより高くすることができる。その結果、セラミックス板の割れをより長期間に亘って抑制することができる。
【0039】
板状部と補強部とは、一体に形成されていてもよい。また、板状部と補強部とを別々に形成し、これらの部品をろう付等により一体化することもできる。板状部と補強部とを別々に形成する場合には、個々の部品の構造を簡素化することができる。その結果、板状部及び補強部を容易に製造することができる。
【0040】
また、低膨張部材は、第1直線部及び第2直線部のうち少なくとも一方に連なり、回路基板側から視た平面視において第1アルミニウム板の角部に対応する位置に配置された応力緩和部を有していてもよい。この場合には、ろう付時及びろう付後に生じるセラミックス板の角部への応力集中をより効果的に緩和することができる。その結果、セラミックス板の割れをより長期間に亘って抑制することができる。
【0041】
応力緩和部は、平面視において、例えば正方形状、長方形状、三角形状、扇形状等の種々の形態を呈していてもよい。また、面状凹部は、外枠部を介して第1直線部及び第2直線部のうち少なくとも一方に連なっていてもよい。また、第1直線部及び第2直線部のうち少なくとも一方に連なるように、応力緩和部を第1直線部及び/または第2直線部まで延設することもできる。
【0042】
回路基板側から視た平面視における低膨張部材の形状は、第1アルミニウム板の中心に対して180°回転対称であることが好ましい。この場合には、ろう付時及びろう付後にセラミックス板に生じる応力や反りの偏りをより低減することができる。その結果、セラミックス板の割れをより長期間に亘って抑制することができる。
【0043】
第1アルミニウム板の外周端縁、この外周端縁におけるいずれかの辺に平行な2本の第1分割線及び第1分割線と直交する2本の第2分割線に沿って第1アルミニウム板の表面を9個の仮想領域に等分割したときに、中央に配置された中央仮想領域における、低膨張部材を第1アルミニウム板上に投影してなる低膨張領域の面積率が55%以上であることが好ましい。
【0044】
中央仮想領域に占める低膨張領域の面積率を55%以上とすることにより、ろう付時にセラミックス板の中央部に生じる引張応力をより低減することができるとともに、ろう付後の応力の変動をより低減することができる。その結果、セラミックス板の割れをより長期間に亘って抑制することができる。
【0045】
低膨張部材及び基板搭載部は、ろう材層を介して第1アルミニウム板と接合されている。ろう材層は、例えば、Al−Si(アルミニウムーシリコン)系合金やAl−Cu(アルミニウム−銅)系合金などの、アルミニウム用のろう材として公知の合金から構成されていてもよい。
【0046】
低膨張部材における第1アルミニウム板側の表面と、基板搭載部におけるろう材層に接している表面とは、面一に配置されていることが好ましい。この場合には、ろう付作業の際に、ろう材層中にボイドが発生することをより効果的に抑制することができる。その結果、ヒートシンクの放熱性をより向上させることができる。
【0047】
第1アルミニウム板と基板搭載部との間には、セラミックス板に加わる応力を緩和するための緩衝材が配置されていてもよい。緩衝材としては、例えば、1000系アルミニウム等の比較的軟らかい金属からなる薄板を採用することができる。緩衝材は、例えば、ろう材層を介して第1アルミニウム板、基板搭載部及び低膨張部材に接合されていてもよい。
【0048】
上記の態様の回路基板付きヒートシンクは、例えば、以下の方法により製造することができる。まず、上記ヒートシンク本体、上記凹部の形状と合致するように形成された下側ろう箔及び低膨張部材、上記第1アルミニウム板の形状と合致するように形成された上側ろう箔及び回路基板を準備する。
【0049】
ヒートシンク本体の凹部内に下側ろう箔を配置し、次いで下側ろう箔の上に低膨張部材を載置する。その後、基板搭載部及び低膨張部材の上に上側ろう材を載置する。そして、上側ろう箔と第1アルミニウム板とが当接するようにして回路基板を載置する。以上により被処理物を組み立てた後、回路基板をヒートシンクに押圧しつつ被処理物を加熱することにより、被処理物のろう付を一括して行う。以上により、上記の態様のヒートシンクを製造することができる。
【実施例】
【0050】
(実施例1)
上記回路基板付きヒートシンクの実施例について、図を用いて説明する。図1図4に示すように、ヒートシンク1は、回路基板2と、ヒートシンク本体3と、低膨張部材4と、ろう材層5とを有している。回路基板2は、矩形を呈する第1アルミニウム板21(図6参照)と、第1アルミニウム板21に積層されたセラミックス板22と、セラミックス板22に積層された第2アルミニウム板23(図1参照)とを有している。
【0051】
ヒートシンク本体3は、アルミニウム材から構成されている。また、ヒートシンク本体3は、図2図5に示すように、第1アルミニウム板21が搭載される基板搭載部31と、基板搭載部31の一部に形成され、周囲よりも陥没した凹部311とを備えている。
【0052】
低膨張部材4は、ヒートシンク本体3よりも低い線膨張係数を有している。また、図2図5に示すように、低膨張部材4は凹部311に埋設されている。図4に示すように、第1アルミニウム板21と基板搭載部31との間及び第1アルミニウム板21と低膨張部材4との間には、ろう材層5が介在している。
【0053】
図2及び図5に示すように、低膨張部材4は、一方向に延設された第1直線部41と、第1直線部41に直交する第2直線部42とを有している。第1直線部41と第2直線部42とは一体に形成されている。
【0054】
以下、ヒートシンク1の各部についてより詳細に説明する。
本例の回路基板2における第1アルミニウム板21は、純度99.99%(4N)のアルミニウムから構成されており、縦76mm、横76mm、厚さ0.40mmの正方形状を呈している。また、図6に示すように、第1アルミニウム板21における4箇所の角部211は円弧状を呈している。
【0055】
セラミックス板22は、窒化アルミニウムから構成されており、縦80mm、横80mm、厚さ0.64mmの正方形状を呈している。第2アルミニウム板23は、純度99.99%(4N)のアルミニウムから構成されている。図1及び図2に示すように、本例の回路基板2は、3枚の第2アルミニウム板23を有している。
【0056】
本例のヒートシンク本体3は、図2及び図3に示すように、平板状を呈するベース部32と、ベース部32から立設された多数のピンフィン33とを有している。図1及び図5に示すように、ベース部32は、回路基板2側から見た平面視において長方形状を呈している。ピンフィン33は、ベース部32の厚み方向における一方側に立設されている。また、図3及び図4に示すように、ベース部32の厚み方向における他方側には、ろう材層5を介して第1アルミニウム板21が搭載されている。
【0057】
なお、本例のヒートシンク本体3はJIS A6063合金から構成されている。また、ピンフィン33は、直径1.5mmの円柱状を呈している。以下において、便宜上、ベース部32の長辺方向に平行な方向を「縦方向」といい、ベース部32の短辺方向に平行な方向を「横方向」ということがある。
【0058】
図1に示すように、ベース部32の中央部には第1アルミニウム板21が搭載されている。これにより、ベース部32の中央部が基板搭載部31として構成されている。図5に示すように、基板搭載部31の中央には、縦方向に伸びた3本の第1直線部41と、横方向に延びた3本の第2直線部42とを有する低膨張部材4が埋設されている。第1直線部41及び第2直線部42の幅は3mmであり、長さは25mmであり、厚みは0.8mmである。また、隣り合う第1直線部41の間隔及び隣り合う第2直線部42の間隔は5mmである。
【0059】
本例の低膨張部材4は、ニッケルから構成されている。ニッケルの線膨張係数は13.4ppm/Kであり、ヒートシンク本体3の線膨張係数23.0ppm/Kよりも低い。
【0060】
図1及び図5に示すように、第1アルミニウム板21は、その一辺が縦方向と平行になるようにして基板搭載部31上に配置されている。これにより、第1直線部41が第1アルミニウム板21の外周端縁212におけるいずれかの辺と平行な方向に延設されている。
【0061】
また、回路基板2側から視た平面視における第1アルミニウム板21の中心213(図6参照)は、低膨張部材4の中心40と一致している。これにより、図5に示すように、回路基板2側から視た平面視における凹部311の形状が、第1アルミニウム板21の中心213に対して180度回転対称となっている。
【0062】
図4に示すように、低膨張部材4における第1アルミニウム板21側の表面400と、基板搭載部31におけるろう材層5に接している表面310とは面一に配置されている。また、低膨張部材4は、下側ろう材層51を介して基板搭載部31に接合されている。
【0063】
本例においては、上記の構成を有するヒートシンク1を以下の方法により作製し、反りの評価を行った。
【0064】
まず、図2に示すように、ヒートシンク本体3の凹部311内に、低膨張部材4と同一の平面形状を有する下側ろう箔510を配置した。本例の下側ろう箔510は、Al−Si−Mg合金から構成されており、0.08mmの厚さを有している。
【0065】
この下側ろう箔510の上に低膨張部材4を載置し、さらに、基板搭載部31及び低膨張部材4の上に、正方形状を呈する上側ろう箔50を載置した。本例の上側ろう箔50は、Al−Si−Mg合金から構成されており、0.08mmの厚さを有している。そして、上側ろう箔50上に回路基板2を載置し、上側ろう箔50と第1アルミニウム板21とを当接させた。以上により、図2に示す被処理物10を組み立てた。
【0066】
次に、この被処理物10に治具(図示略)を取り付け、回路基板2をヒートシンク本体3側に押圧した。本例の治具は、回路基板2に当接する基板加圧板と、ヒートシンク本体3に当接するヒートシンク加圧板とを有している。これらの加圧板は、回路基板2とヒートシンク本体3との積層方向におけるヒートシンク本体3側が凸となるように湾曲している。また、これらの加圧板の曲率半径は2000mmである。
【0067】
上記の治具を被処理物10に取り付けることにより、回路基板2の中央部が外周端部よりもヒートシンク本体3側に突出するようにして、被処理物10全体を湾曲させた。そして、この状態で被処理物10を加熱することにより、被処理物10のろう付を一括して行った。以上により、図1に示すヒートシンク1を作製した。
【0068】
ろう付後のヒートシンク1を治具から取り外した後、回路基板2の反りを測定した。ろう付後の回路基板2は、その中央部が外周端部よりもヒートシンク本体3の反対側に突出するように湾曲していた。また、回路基板2の中央部と外周端部との高さの差は、0.2mm以下であった。
【0069】
さらに、回路基板2へのはんだ付を想定し、ヒートシンク1を250℃に加熱した状態で回路基板2の反りを測定した。250℃に加熱された状態においては、回路基板2の反りの向きが加熱前に対して反転し、回路基板2の中央部が外周端部よりもヒートシンク本体3側に突出するように湾曲していた。回路基板2の中央部と外周端部との高さの差は、0.3mm以下であった。
【0070】
本例の作用効果を以下に説明する。ヒートシンク1は、基板搭載部31と、基板搭載部31の一部に形成された凹部311とを備えたヒートシンク本体3を有している。凹部311には、第1直線部41と、第1直線部41に交差する第2直線部42とを備え、ヒートシンク本体3よりも低い線膨張係数を有する低膨張部材4が埋設されている。そして、第1アルミニウム板21は、ろう材層5を介して低膨張部材4及び基板搭載部31の両方に接合されている。
【0071】
ヒートシンク1は、凹部311に低膨張部材4を埋設することにより、ろう付時にセラミックス板22に生じる反り及び残留応力を低減することができる。さらに、ヒートシンク1は、ろう付後の温度上昇に伴ってセラミックス板22に加わる反りや引張応力を低減することもできる。これらの結果、セラミックス板22の割れを長期間に亘って抑制することができる。
【0072】
また、ヒートシンク1においては、従来のように、回路基板2の全体を低膨張部材4上に載置する必要がない。これにより、セラミックス板22の割れを長期間に亘って抑制する効果を得つつ、低膨張部材4の体積を小さくすることができる。その結果、ヒートシンク1の質量の増加を抑制することができる。
【0073】
本例の低膨張部材4における第2直線部42は、第1直線部41に直交している。また、回路基板2側から視た平面視における低膨張部材4の形状は、第1アルミニウム板21の中心213に対して180°回転対称である。これらの結果、ろう付時及びろう付後にセラミックス板22に生じる応力や反りの偏りをより低減することができる。それ故、セラミックス板22の割れをより長期間に亘って抑制することができる。
【0074】
本例の低膨張部材4は、金属から構成されているため、ヒートシンク本体3が熱膨張した際に、ヒートシンク本体3の変形に容易に追従することができる。
【0075】
また、低膨張部材4の線膨張係数は、0.1〜19ppm/Kである。そのため、ろう付時及びろう付後にセラミックス板22に生じる応力や反りをより低減することができる。その結果、セラミックス板22の割れの発生をより長期間に亘って抑制することができる。
【0076】
また、低膨張部材4における第1アルミニウム板21側の表面400と、基板搭載部31におけるろう材層5に接している表面310とは、面一に配置されている。そのため、ろう付作業の際に、ろう材層5中にボイドが発生することをより効果的に抑制することができる。その結果、ヒートシンク1の放熱性をより向上させることができる。
【0077】
また、図5に示すように、第1アルミニウム板21の外周端縁212、外周端縁212におけるいずれかの辺に平行な2本の第1分割線L1及び第1分割線L1と直交する2本の第2分割線L2に沿って第1アルミニウム板21の表面を9個の仮想領域に等分割した結果、中央に配置された中央仮想領域Cにおける、低膨張部材4を第1アルミニウム板21上に投影してなる低膨張領域の面積率が62.7%であった。このように、中央仮想領域Cにおける低膨張領域の面積率を55%以上とすることにより、ろう付時にセラミックス板22の中央部に生じる引張応力をより低減することができるとともに、ろう付後の応力の変動をより低減することができる。その結果、セラミックス板22の割れをより長期間に亘って抑制することができる。
【0078】
以上のように、ヒートシンク1によれば、質量の増大を抑制しつつ、長期間に亘ってセラミックス板22の割れを抑制することができる。
【0079】
(実施例2)
本例は、外枠部43を有する低膨張部材402を備えたヒートシンク102の例である。なお、本実施例以降において用いる符号のうち、既出の実施例において用いた符号と同一の符号は、特に説明のない限り、既出の実施例における構成要素等と同様の構成要素等を示す。
【0080】
本例のヒートシンク102は、図7に示すように、ヒートシンク本体302と、低膨張部材402と、回路基板2と、ろう材層5(図示略)とを有している。図8に示すように、本例の低膨張部材402は、縦方向に伸びた7本の第1直線部41と、横方向に延びた7本の第2直線部42とを有している。第1直線部41及び第2直線部42の幅は3mmであり、厚みは1mmである。また、隣り合う第1直線部41の間隔及び隣り合う第2直線部42の間隔は5mmである。
【0081】
また、本例の低膨張部材402は、第1アルミニウム板21の外周端縁212に沿って形成された外枠部43を有している。外枠部43は、第1直線部41及び第2直線部42に連なっている。外枠部43の厚みは1mmであり、幅は3mmである。また、回路基板2側から視た平面視において、外枠部43の外周端縁における角部431は円弧状を呈している。なお、本例の低膨張部材4は、ニッケルから構成されている。その他は実施例1と同様である。
【0082】
実施例1と同様の方法によりろう付を行ってヒートシンク102を作製し、治具を取り外した後の回路基板2の反りを測定した。ろう付後の回路基板2は、その中央部が外周端部よりもヒートシンク本体302の反対側に突出するように湾曲していた。また、回路基板2の中央部と外周端部との高さの差は、0.1mm以下であった。
【0083】
さらに、回路基板2へのはんだ付を想定し、ヒートシンク102を250℃に加熱した状態で回路基板2の反りを測定した。250℃に加熱された状態においては、回路基板2の反りの向きが加熱前に対して反転し、回路基板2の中央部が外周端部よりもヒートシンク本体302側に突出するように湾曲していた。回路基板2の中央部と外周端部との高さの差は、0.1mm以下であった。
【0084】
本例の低膨張部材402は、第1アルミニウム板21の外周端縁212に沿って形成された外枠部43を有しており、外枠部43は、第1直線部41及び第2直線部42に連なっている。そのため、ろう付時及びろう付後に生じるヒートシンク本体302の反りをより低減することができ、ひいてはセラミックス板22の反りをより低減することができる。その結果、セラミックス板22の割れをより長期間に亘って抑制することができる。
【0085】
また、外枠部43の外周端縁における角部431は、回路基板2側から視た平面視において円弧状を呈している。そのため、ろう付時及びろう付後に生じるセラミックス板22の角部への応力集中をより効果的に緩和することができる。その結果、セラミックス板22の割れをより長期間に亘って抑制することができる。
【0086】
また、本例の低膨張部材402においては、第1直線部41、第2直線部42及び外枠部43が一体に形成されている。そのため、外枠部43が第1直線部41及び第2直線部42とは別体に形成されている場合に比べて、低膨張部材402の剛性をより高くすることができる。それ故、ろう付時及びろう付後に生じるヒートシンク本体302の反りをより低減することができ、ひいてはセラミックス板22の反りをより低減することができる。その結果、セラミックス板22の割れをより長期間に亘って抑制することができる。その他、本例のヒートシンク102は、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。
【0087】
(実施例3)
本例は、板状部44と補強部45とを備えた低膨張部材403を有するヒートシンク103の例である。本例のヒートシンク103は、図11及び図12に示すように、ヒートシンク本体303と、低膨張部材403と、回路基板2と、ろう材層5とを有している。
【0088】
本例の低膨張部材403は、図13に示す板状部44と、図14に示す補強部45とを有している。板状部44と補強部45とは別体に形成されており、図12に示すように、中間ろう材層52を介して両者が接合されている。
【0089】
板状部44は、図10及び図13に示すように、縦方向に伸びる第1直線部41と、第1直線部41に直交する第2直線部42と、外枠部43とを含んでいる。本例の板状部44の厚みは0.5mmである。図10に示すように、第1直線部41及び第2直線部42は、回路基板2側から見た平面視において、第1アルミニウム板21の中心213において交差している。
【0090】
また、図10及び図13に示すように、板状部44は、第1直線部41及び第2直線部42のうち少なくとも一方に連なり、回路基板2側から視た平面視において第1アルミニウム板21の角部211に対応する位置に配置された応力緩和部46を有している。本例の応力緩和部46は、平面視において正方形状を呈している。また、応力緩和部46は、板状部44の中央部分において、第1直線部41及び第2直線部42に向かって延設された延設部461を有している。応力緩和部46は、この延設部461及び外枠部43を介して第1直線部41及び第2直線部42に連なっている。
【0091】
図10及び図11に示すように、補強部45は、板状部44における外枠部43からヒートシンク本体303側に突出している。補強部45の厚みは1.3mmである。その他は実施例2と同様である。
【0092】
本例においては、上記の構成を有するヒートシンク103を以下の方法により作製し、反りの評価を行った。
【0093】
まず、図9に示すように、ヒートシンク本体303の凹部311内に、補強部45と同一の平面形状を有する下側ろう箔510を配置した。この下側ろう箔510の上に補強部45を載置した。次いで、板状部44と同一の平面形状を有する中間ろう箔520を補強部45上に載置した。本例の中間ろう箔520は、Al−Si−Mg合金から構成されており、0.08mmの厚さを有している。
【0094】
この中間ろう箔520上に板状部44を載置し、さらに、基板搭載部31及び板状部44の上に、正方形状を呈する上側ろう箔50を載置した。そして、上側ろう箔50上に回路基板2を載置し、上側ろう箔50と第1アルミニウム板21とを当接させた。以上により、図9に示す被処理物10を組み立てた。その後、実施例2と同様の治具を用いて被処理物10の固定及びろう付を行った。
【0095】
ろう付後のヒートシンク103から治具を取り外した後、回路基板2の反りを測定した。ろう付後の回路基板2は、その中央部が外周端部よりもヒートシンク本体303の反対側に突出するように湾曲していた。また、回路基板2の中央部と外周端部との高さの差は、0.2mm以下であった。
【0096】
さらに、回路基板2へのはんだ付を想定し、ヒートシンク103を250℃に加熱した状態で回路基板2の反りを測定した。250℃に加熱された状態においては、回路基板2の反りの向きが加熱前に対して反転し、回路基板2の中央部が外周端部よりもヒートシンク本体303側に突出するように湾曲していた。回路基板2の中央部と外周端部との高さの差は、0.2mm以下であった。
【0097】
本例の低膨張部材403は、第1直線部41、第2直線部42及び外枠部43を含む板状部44と、外枠部43からヒートシンク本体303側に突出した補強部45とを有している。そのため、補強部45により、低膨張部材4の剛性をより高くすることができる。その結果、セラミックス板22の割れをより長期間に亘って抑制することができる。
【0098】
また、板状部44と補強部45とは別々に形成されており、これらの部品がろう付等により一体化されている。そのため、板状部44及び補強部45の構造を簡素化することができる。その結果、板状部44及び補強部45を容易に製造することができる。
【0099】
また、低膨張部材403は、第1直線部41及び第2直線部42のうち少なくとも一方に連なり、回路基板2側から視た平面視において第1アルミニウム板21の角部211に対応する位置に配置された応力緩和部46を有している。そのため、ろう付時及びろう付後に生じるセラミックス板22の角部への応力集中をより効果的に緩和することができる。その結果、セラミックス板22の割れをより長期間に亘って抑制することができる。その他、本例のヒートシンク103は、実施例2と同様の作用効果を奏することができる。
【0100】
(比較例1)
本例は、低膨張部材4を有さない、従来の回路基板付きヒートシンクの例である。図には示さないが、本例のヒートシンクは、ヒートシンク本体と、回路基板2と、ヒートシンク本体と回路基板2との間に介在するろう材層5とを有している。ヒートシンク本体は、JIS A6063合金から構成されており、平板状を呈するベース部32と、ベース部32から立設された多数のピンフィン33とを有している。ベース部32におけるピンフィン33とは反対側の板面には、ろう材層5を介して回路基板2が搭載されている。その他は実施例1と同様である。
【0101】
実施例1と同様の方法によりろう付を行ってヒートシンクを作製し、治具を取り外した後の回路基板2の反りを測定した。ろう付後の回路基板2は、その中央部が外周端部よりもヒートシンク本体の反対側に突出していた。また、回路基板2の中央部と外周端部との高さの差は、0.6mm以下であった。
【0102】
さらに、回路基板2へのはんだ付を想定し、ヒートシンクを250℃に加熱した状態で回路基板2の反りを測定したところ、セラミックス板22に割れが発生した。
【0103】
(比較例2)
本例は、回路基板2の全体が低膨張部材上に搭載された回路基板付きヒートシンクの例である。図には示さないが、本例のヒートシンクは、ヒートシンク本体、低膨張部材及び回路基板2が順次積層されている。本例の低膨張部材4は、正方形状を呈するニッケル板から構成されている。
【0104】
ヒートシンク本体と低膨張部材4との間には下側ろう材層51が介在している。また、低膨張部材4と回路基板2との間には、ろう材層5が介在している。その他は比較例2と同様である。
【0105】
(比較例3)
本例は、中央仮想領域Cに占める低膨張領域の面積率を小さくした例である。図には示さないが、本例のヒートシンクは、第1直線部41及び第2直線部42の幅を2mmにし、隣り合う第1直線部41及び隣り合う第2直線部42の間隔を5mmに変更した以外は、実施例1と同様の構成を有している。本例のヒートシンクにおける、中央仮想領域Cに占める低膨張領域の面積率は39.9%である。
【0106】
実施例1と同様の方法によりろう付を行ってヒートシンクを作製し、治具を取り外した後の回路基板2の反りを測定した。ろう付後の回路基板2は、その中央部が外周端部よりもヒートシンク本体の反対側に突出していた。また、回路基板2の中央部と外周端部との高さの差は、0.4mm以下であった。
【0107】
さらに、回路基板2へのはんだ付を想定し、ヒートシンクを250℃に加熱した状態で回路基板2の反りを測定したところ、セラミックス板22に割れが発生した。
【0108】
(実験例)
本例においては、実施例1〜3及び比較例1〜3のヒートシンクの放熱性能を評価した。具体的には、ヒートシンクのピンフィン側に水冷ジャケットを取り付け、この水冷ジャケット内に一定の流量で冷媒を流した。そして、第2アルミニウム板上に発熱体を載置し、一定の出力で熱を発生させた。
【0109】
この状態を保持し、定常状態に到達したときの発熱体の温度を計測した。そして、比較例1における発熱体の温度をTr(K)、実施例1〜3及び比較例2〜3における発熱体の温度をTs(K)とし、下記の式により、冷却性能の変化率R(%)を算出した。
R=(Ts−Tr)/Tr×100
【0110】
冷却性能の変化率Rとともに、上述した反りの結果及び中央仮想領域Cに占める低膨張部材の面積率を、表1にまとめて示す。
【0111】
【表1】
【0112】
実施例1〜3のヒートシンクに用いた低膨張部材は、アルミニウム材よりも熱伝導率の低いニッケルから構成されている。しかし、表1に示したように、実施例1〜3のヒートシンクは、比較例2のヒートシンクに比べて放熱性能の悪化を抑制することができた。また、実施例1〜3のヒートシンクは、比較例1及び比較例2に比べてろう付後の反りを低減することができるとともに、はんだ付後の割れを防止することができた。
【0113】
これらの結果から、低膨張部材が熱伝導率の低い材料から構成されている場合であっても、上記特定の構成を有する低膨張部材を回路基板とヒートシンク本体との間に配置することにより、反りや応力を低減する効果を得つつ放熱性能の悪化を抑制できることが容易に理解できる。
【0114】
なお、本発明に係る回路基板付きヒートシンクは、実施例1〜3の態様に限定されるものではなく、その趣旨を損なわない範囲で適宜構成を変更することができる。
【符号の説明】
【0115】
1、102、103 回路基板付きヒートシンク
2 回路基板
21 第1アルミニウム板
22 セラミックス板
23 第2アルミニウム板
3、302、303 ヒートシンク本体
31 基板搭載部
311 凹部
4、402、403 低膨張部材
41 第1直線部
42 第2直線部
5 ろう材層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14