【解決手段】本発明に係る電気化学デバイスは、正極と、負極と、負極端子と、セパレータと、電解液とを具備し、正極、負極及びセパレータは積層されて捲回され、セパレータが正極と負極を隔てている。負極端子は、金属からなり、負極集電体の主面に接合された部分である接合部を有する。
保護テープは、絶縁性材料からなり、負極に貼付され、接合部を被覆する。負極は、捲回軸に平行な方向に沿って第1の幅を有する。正極は、捲回軸に平行な方向に沿って第1の幅より小さい第2の幅を有する。保護テープの捲回軸に平行な方向に沿った長さは第2の幅以上である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような構成においては、集電体露出部を保護するため、集電体露出部を被覆する保護テープが電極に貼付される。保護テープはポリプロピレン、ポリエチレン又はポリイミド等の絶縁材料からなるテープである。しかしながら、負極の集電体露出部に保護テープを貼付すると、電極の幅方向において保護テープの有無による不均一構造が形成され、蓄電素子の局所的な劣化が促進されるおそれがある。
【0006】
以上のような事情の鑑み、本発明の目的は、保護テープによる蓄電素子の局所的な劣化を抑制することが可能な電気化学デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る電気化学デバイスは、正極と、負極と、負極端子と、セパレータと、電解液とを具備し、上記正極、上記負極及び上記セパレータは積層されて捲回され、上記セパレータが上記正極と上記負極を隔てている。
上記負極は、金属箔である負極集電体と、上記負極集電体の主面に形成された負極活物質層とを有する。
上記正極は、金属箔である正極集電体と、上記正極集電体の主面に形成された正極活物質層とを有する。
上記負極端子は、金属からなり、上記負極集電体の主面に接合された部分である接合部を有する。
上記保護テープは、絶縁性材料からなり、上記負極に貼付され、上記接合部を被覆する。
上記セパレータは、上記正極と上記負極を絶縁する。
上記電解液は、上記正極と上記負極と上記セパレータを浸漬する。
上記負極は、捲回軸に平行な方向に沿って第1の幅を有する。
上記正極は、捲回軸に平行な方向に沿って上記第1の幅より小さい第2の幅を有する。
上記保護テープの捲回軸に平行な方向に沿った長さは上記第2の幅以上である。
【0008】
正極と負極がセパレータを介して積層され、捲回された構成では、正極と負極の大部分で正極活物質と負極活物質がセパレータを介して対向するが、一部では負極端子を被覆する保護テープと正極活物質がセパレータを介して対向する。仮に保護テープの長さが正極の幅(第2の幅)より小さいと、捲回軸に平行な方向において負極に保護テープが存在する部位と保護テープが存在しない部位が形成される。保護テープが存在しない部位は、セパレータを介して正極と対向し、対向する正極やその周辺の正極とも充放電動作を行う不均一な部位となる。この不均一さによって蓄電素子の局所的な劣化が促進される。上記構成によれば、保護テープの長さが正極の幅以上であるため、捲回軸に平行な方向において負極に保護テープが存在する部位と保護テープが存在しない部位が形成されることが防止されている。これにより、蓄電素子の局所的な劣化を抑制することが可能である。
【0009】
上記負極活物質層にリチウムイオンのプレドープがなされていてもよい。
【0010】
本発明に係る電気化学デバイスは負極活物質層にリチウムイオンがプレドープされたリチウムイオンキャパシタとすることができる。リチウムイオンキャパシタでは、負極の幅が正極の幅より大きい構造が一般的であるが、上記構成により正極と負極の幅の違いに起因する構造不均一性を改善することが可能である。
【0011】
上記負極は、上記主面において上記負極活物質層が形成されていない負極未形成領域を有し、
上記負極端子は、上記負極未形成領域において上記負極集電体に接合され、
上記保護テープは、上記負極未形成領域の周囲の上記負極活物質層に貼付され、上記負極未形成領域と上記接合部を被覆してもよい。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば保護テープによる蓄電素子の局所的な劣化を抑制することが可能な電気化学デバイスを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態に係る電気化学デバイス100について説明する。電気化学デバイス100は、リチウムイオンキャパシタとすることができる。また、電気化学デバイス100は、電気二重層キャパシタ又はリチウムイオン二次電池等の充放電が可能な他種の電気化学デバイスであってもよい。
【0015】
[電気化学デバイスの構成]
図1は、本実施形態に係る電気化学デバイス100の構成を示す斜視図である。同図に示すように電気化学デバイス100は、蓄電素子110が容器120(蓋及び端子は図示略)に収容されて構成されている。容器120内には、蓄電素子110と共に電解液が収容されている。
【0016】
図2は蓄電素子110の斜視図であり、
図3は蓄電素子110の拡大断面図である。
図2及び
図3に示すように、蓄電素子110は、負極130、正極140及びセパレータ150を有し、これらが積層された積層体が捲回芯Cの回りに捲回されて構成されている。以下、捲回芯Cが延伸する方向、即ち捲回中心軸に平行な方向をZ方向とする。X方向はZ方向に垂直な方向であり、Y方向はX方向及びZ方向に垂直な方向である。なお、捲回芯Cは必ずしも設けられなくてもよい。
【0017】
蓄電素子110を構成する負極130、正極140、セパレータ150の積層順は、
図2に示すように、捲回芯C側に向かって(捲回外側から)セパレータ150、負極130、セパレータ150、正極140の順とすることができる。また、
図2に示すように蓄電素子110は、負極130に接合された負極端子131と正極140に接合された正極端子141を有する。負極端子131と正極端子141は、
図2に示すようにそれぞれ蓄電素子110の外部に引き出されている。
【0018】
負極130は、
図3に示すように、負極集電体132及び負極活物質層133を有する。負極集電体132は、導電性材料からなり、銅箔等の金属箔であるものとすることができる。負極集電体132は表面が化学的あるいは機械的に粗面化された金属箔や、貫通孔が形成された金属箔であってもよい。負極集電体132の厚みは例えば15μmとすることができる。
【0019】
負極活物質層133は、負極集電体132上に形成されている。負極活物質層133の材料は、負極活物質がバインダ樹脂と混合されたものとすることができ、さらに導電助材を含んでもよい。負極活物質は、電解液中のリチウムイオンを吸蔵可能な材料であり、例えば難黒鉛化炭素(ハードカーボン)、グラファイトやソフトカーボン等の炭素系材料を用いることができる。
【0020】
バインダ樹脂は、負極活物質を接合する合成樹脂であり、例えばカルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、芳香族ポリアミド、カルボキシメチルセルロース、フッ素系ゴム、ポリビニリデンフルオライド、イソプレンゴム、ブタジエンゴム及びエチレンプロピレン系ゴム等を用いてもよい。
【0021】
導電助剤は、導電性材料からなる粒子であり、負極活物質の間での導電性を向上させる。導電助剤は、例えば、アセチレンブラック、黒鉛やカーボンブラック等の炭素材料が挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。なお、導電助剤は、導電性を有する材料であれば、金属材料あるいは導電性高分子などであってもよい。
【0022】
負極活物質層133は、負極集電体132上に直接設けられてもよく、負極集電体132上に設けられたアンダーコート層上に設けられてもよい。負極活物質層133の厚みは例えば50μmとすることができる。
【0023】
図4は捲回前の負極130を示す模式図であり、
図4(a)はZ方向から見た図、
図4(b)はY方向から見た図である。負極130は、
図4(a)に示すように、負極集電体132の第1主面132a及び第2主面132bの両面に負極活物質層133が形成されている。なお、負極活物質層133は、第1主面132aにのみ形成してもよい。
【0024】
これらの図に示すように負極130は矩形形状を有する。負極130の短辺の幅を第1の幅D1とする。第1の幅D1は、負極130を正極140及びセパレータ150と共に捲回した際に捲回中心軸に平行な方向(Z方向)に沿った幅となる。
【0025】
図4(a)及び(b)に示すように、負極130は負極未形成領域130aを備え、負極未形成領域130aには負極端子131が接合されている。負極未形成領域130aは、第1主面132aにおいて負極活物質層133が設けられず、負極集電体132が露出した領域である。負極未形成領域130aの捲回中心軸に平行な方向(Z方向)に沿った幅を幅Gとすると、幅Gは第1の幅D1より小さい幅である。
【0026】
負極端子131は、負極未形成領域130aにおいて露出する負極集電体132に接合され、負極集電体132に電気的に接続されている。
図5は、接合前の負極端子131を示す平面図である。同図に示すように負極端子131は、線状部材134と線状部材135を備える。線状部材134は銅等からなる線状の金属部材であり、線状部材135は銅等からなる線状の金属部材である。負極端子131は、線状部材134と線状部材135とが抵抗溶接等により接合されて構成されている。
【0027】
負極端子131は、針かしめによって負極集電体132に接合することができる。
図6は、負極集電体132に接合した負極端子131の平面図であり、
図7は負極集電体132に接合した負極端子131の断面図である。
【0028】
これらの図に示すように、負極端子131は、線状部材135を負極集電体132に当接させ、押圧すると同時に針131aでかしめることによって負極集電体132に接合することができる。これにより、線状部材135は一部を除いて潰され、扁平形状となっている。針131aは
図7に示すように、線状部材135、負極集電体132及び負極活物質層133を貫通し、これらを互いに固定している。なお、負極端子131の負極集電体132の接合は針かしめに限られず、導電性接着剤による接着や溶接等であってもよい。
【0029】
図6及び
図7に示すように、負極端子131のうち、負極集電体132に接合された部分を接合部131bとする。また、接合部131bのZ方向に沿った長さを長さLとする。
【0030】
負極端子131は保護テープ136によって被覆される。
図8は、保護テープ136が設けられた負極130を示す模式図であり、
図8(a)はZ方向から見た図、
図8(b)はY方向から見た図である。保護テープ136は、ポリプロピレン、ポリエチレン又はポリイミド等の絶縁性材料からなるテープであり、耐熱性かつ電解液の溶剤に対して耐溶剤性を有するものが好適である。
【0031】
図9は保護テープ136を示す模式図であり、
図10は保護テープ136を示す断面図である。保護テープ136はこれらの図に示すように、負極未形成領域130aの周囲の負極活物質層133に貼付され、接合部131b及び負極未形成領域130aを被覆するのが好ましい。これらの図に示すように、保護テープ136の捲回中心軸に平行な方向(Z方向)に沿った長さを長さPとする。
【0032】
正極140は、
図3に示すように、正極集電体142及び正極活物質層143を有する。正極集電体142は、導電性材料からなり、アルミニウム箔等の金属箔であるものとすることができる。正極集電体142は表面が化学的あるいは機械的に粗面化された金属箔や、貫通孔が形成された金属箔であってもよい。正極集電体142の厚みは例えば30μmとすることができる。
【0033】
正極活物質層143は、正極集電体142上に形成されている。正極活物質層143の材料は、正極活物質がバインダ樹脂と混合されたものとすることができ、さらに導電助材を含んでもよい。正極活物質は、電解液中のリチウムイオン及びアニオンを吸着可能な材料であり、例えば活性炭やポリアセン炭化物等を利用することができる。
【0034】
バインダ樹脂は、正極活物質を接合する合成樹脂であり、例えばカルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、芳香族ポリアミド、カルボキシメチルセルロース、フッ素系ゴム、ポリビニリデンフルオライド、イソプレンゴム、ブタジエンゴム及びエチレンプロピレン系ゴム等を用いてもよい。
【0035】
導電助剤は、導電性材料からなる粒子であり、正極活物質の間での導電性を向上させる。導電助剤は、例えば、アセチレンブラックや黒鉛、カーボンブラック等の炭素材料が挙げられる。これらは単独でもよいし、複数種が混合されてもよい。なお、導電助剤は、導電性を有する材料であれば、金属材料あるいは導電性高分子などであってもよい。
【0036】
正極活物質層143は、正極集電体142上に直接設けられてもよく、正極集電体142上に設けられたアンダーコート層上に設けられてもよい。正極活物質層143の厚みは例えば100μmとすることができる。
【0037】
図11は捲回前の正極140を示す模式図であり、
図11(a)はZ方向から見た図、
図11(b)はY方向から見た図である。正極140は、
図11(a)に示すように、正極集電体142の第1主面142a及び第2主面142bの両面に正極活物質層143が形成されている。
【0038】
これらの図に示すように正極140は、矩形形状を有する。正極140の短辺の幅を第2の幅D2とする。第2の幅D2は、正極140を負極130及びセパレータ150と共に捲回した際に捲回中心軸に平行な方向(Z方向)に沿った幅となる。
【0039】
図11(a)及び(b)に示すように、正極140は正極未形成領域140aを備え、正極未形成領域140aには正極端子141が接合されている。正極未形成領域140aは、第1主面142aにおいて正極活物質層143が設けられず、正極集電体142が露出した領域である。正極未形成領域140aは、捲回中心軸に平行な方向(Z方向)に沿った幅が第2の幅D2であり、即ち、Z方向において正極140の一端から他端にわたって形成されている。
【0040】
正極端子141は、正極未形成領域140aにおいて露出する正極集電体142に接合され、正極集電体142に電気的に接続されている。正極端子141は、アルミニウム等からなる2つの線状の金属部材が抵抗溶接等により接合されて構成されたものとすることができ、負極端子131と同様に針を用いた針かしめによって正極集電体142に接合されたものとすることができる。
【0041】
正極端子141は保護テープ144によって被覆されてもよい。
図12は、保護テープ144が設けられた正極140を示す模式図であり、
図12(a)はZ方向から見た図、
図12(b)はY方向から見た図である。保護テープ144は、ポリプロピレン、ポリエチレン又はポリイミド等の絶縁性材料からなるテープであり、耐熱性かつ電解液の溶剤に対して耐溶剤性を有するものが好適である。保護テープ144はこれらの図に示すように、正極未形成領域140aの周囲の正極活物質層143に貼付され、正極端子141及び正極未形成領域140aを被覆するのが好ましい。
【0042】
セパレータ150は負極130と正極140を隔てて両者を絶縁し、後述する電解液中に含まれるイオンを透過する。具体的には、セパレータ150は、抄紙、織布、不織布、又は合成樹脂微多孔膜等であるものとすることができる。
【0043】
負極130及び正極140はセパレータ150を介して積層され、捲回される。
図13は、負極130、正極140及びセパレータ150を積層した積層体の模式図である。同図に示すように、セパレータ150、正極140、セパレータ150及び負極130はこの順で積層される。
【0044】
図14は、負極130と正極140を積層した模式図であり、セパレータ150は図示を省略する。同図に示すように、第2の幅D2は第1の幅D1より小さい。
【0045】
図15は、負極130、正極140及びセパレータ150を積層した積層体の断面図であり、
図13のA−A線での断面図である。同図に示すように、保護テープ136の長さPは、正極140の幅である第2の幅D2以上である。
【0046】
蓄電素子110は、上記構成を有する負極130、正極140及びセパレータ150を積層した積層体を捲回芯Cに捲回することにより作製することができる。
【0047】
容器120は、蓄電素子110を収容する。容器120の上面及び下面は図示しない蓋によって閉塞されるものとすることができる。容器120の材質は、特に限定されず、例えばアルミニウム、チタン、ニッケル、鉄を主成分とする金属又はステンレス等からなるものとすることができる。
【0048】
電気化学デバイス100は以上のように構成されている。蓄電素子110と共に容器120に収容される電解液は、リチウムイオンとアニオンを含む液体、例えばLiBF
4やLiPF
6を電解質として溶剤(プロピレンカーボネート等)に溶解させた液体とすることができる。
【0049】
電気化学デバイス100の負極130にはリチウムイオンがプレドープされる。リチウムイオンのプレドープは、例えば金属リチウムを含むリチウムイオン源を負極130に電気的に接続し、蓄電素子110を電解液に浸漬させることによってなされる。また、リチウムイオンのプレドープは他の方法で行われてもよい。リチウムイオン源から放出されたリチウムイオンは電解液を介して負極活物質層133にドープされる。
【0050】
[電気化学デバイスの効果]
上記のように、保護テープ136の長さPは正極140の幅である第2の幅D2以上である。この効果について、比較例との上で説明する。
【0051】
図16は比較例に係る蓄電素子210が備える負極の模式図であり、
図17は蓄電素子210の断面図である。
図16に示すように、蓄電素子210は、負極230、正極240及びセパレータ250を備える。負極230は、負極端子231、負極集電体232、負極活物質層233及び保護テープ236を備える。負極端子231は、針231aによって負極集電体232に接合されている。正極240は、図示しない正極端子、正極集電体242及び正極活物質層243を備える。
【0052】
図17に示すように、負極230の幅E1は正極240の幅E2より大きく、保護テープ236の幅Qは第2の幅E2より小さい。この場合、負極230に、Z方向において保護テープ236が存在する部位と保護テープ236が存在しない部位が形成される。保護テープ236が存在しない部位は図中矢印で示すように、セパレータ250介して正極240と対向し、対向する正極240やその周辺の正極240とも充放電動作を行う不均一な部位となる。この不均一さによって蓄電素子210の局所的な劣化が促進される。
【0053】
これに対し、本実施形態に係る蓄電素子110では、上記のように保護テープ136の長さPが正極140の幅D2以上であるため、負極130に、Z方向において保護テープ136が存在する部位と保護テープ136が存在しない部位が形成されることが防止されている。これにより、蓄電素子110の局所的な劣化を抑制することが可能である。
【0054】
[変形例]
上記実施形態において、負極未形成領域130aは、Z方向に沿って負極130の幅D1よりも小さい幅Gを有するとしたが、幅Gは幅D1と同一であってもよい。
図18及び
図19、変形例に係る負極未形成領域130aを示す模式図である。これらの図に示すように、保護テープ136の
Z方向に沿った長さPは幅D1と同じであり、負極未形成領域130a及び接合部131bを被覆する。
【0055】
この構造であっても、負極130に、Z方向において保護テープ136が存在する部位と保護テープ136が存在しない部位が形成されることが防止されている。これにより、蓄電素子110の局所的な劣化を抑制することが可能である。
【実施例】
【0056】
蓄電素子を作製し、その構造を評価した。具体的には、活物質として活性炭、導電助剤、バインダを、増粘剤を含む水の中で混練することで正極ペーストを作製した。この正極ペーストを、エッチングにより気体透過性をもたせた厚さ30μmのアルミニウム箔に塗布して乾燥させ、アルミニウム箔の片面に厚さ100μmの正極活物質層を形成した。
【0057】
また、活物質として難黒鉛化炭素、導電助剤及びバインダを、増粘剤を含む水の中で混練することで負極ペーストを作製した。この負極ペーストを、エッチングにより径100μmの穴を全面積の30%に設けた厚さ15μmの銅箔に塗布して乾燥させ、銅箔の片面に厚さ50μmの負極活物質層を形成した。
【0058】
正極を幅24mm(Z方向)、長さ(X方向)170mmに裁断し、正極活物質層の一部を剥離させて正極未形成領域を形成した。正極端子を正極未形成領域に針かしめにより接合した。負極を幅27mm(Z方向)、長さ(X方向)240mmに裁断し、負極活物質層の一部を剥離させて負極未形成領域を形成した。負極端子を負極未形成領域に針かしめにより接合した。
【0059】
負極端子の接合部及び負極未形成領域に、耐熱性及び耐溶剤性を有する保護テープを貼付した。比較例では保護テープの長さ(Z方向)を負極未形成領域と同等の長さ(正極の幅より小さい長さ)とし、実施例では保護テープの長さを正極の幅以上とした。
【0060】
セパレータは密度0.45g/cm
3、厚さ35μmのセルロース製セパレータを30mm幅で裁断して用いた。正極と負極を180℃、1kPa以下の減圧状態で12時間維持し、乾燥させた。セパレータは160℃、1kPa以下の減圧状態で12時間維持し、乾燥させた。
【0061】
正極、セパレータ、負極、セパレータの順で積層し、正極活物質層と負極活物質層がセパレータを介して対向する関係を保ちながら捲回し、最外周がセパレータとなるように蓄電素子を組み立てた。最外周に厚さ0.1mm、幅25mm、長さ25mmのリチウムを負極の銅箔表面に貼付し、セパレータ同士をテープで固定した。正極端子及び負極端子に封口のためのゴムをはめ込んだ。
【0062】
電解液はプロピレンカーボネートに1.0mol/LのLiPF
6を溶解させたものとした。直径12.5mmのアルミニウム製ケースに蓄電素子を挿入し、かしめることで封口した。このように実施例及び比較例に係る電気化学デバイスをそれぞれ20個ずつ作製した。
【0063】
各電気化学デバイスに対して充放電サイクルを実施し、容量残存率を測定した。
図20は、測定結果を示す表であり、
図21は測定結果を示すグラフである。同図に示すように、実施例に係る電気化学デバイスでは、比較例に係る電気化学デバイスに比べてサイクル数の経過に伴う容量残存率の低下が小さく、容量劣化が抑制されていることがわかる。