【解決手段】本発明に係る信号生成装置は、マルチキャリア信号の信号種別及びサブキャリア数を取得し、信号種別のマルチキャリア信号を生成するために必要な信号生成演算子及び演算の順序を設定するシナリオ構成部(11)と、サブキャリア数に応じた数の入力信号を取得し、順序に従って信号生成演算子の演算を行うことで、入力信号からマルチキャリア信号を生成する実行部(12)と、を備える。
マルチキャリア信号の信号種別及びサブキャリア数を取得し、前記信号種別のマルチキャリア信号を生成するために必要な信号生成演算子及び演算の順序を設定するシナリオ構成部(11)と、
前記サブキャリア数に応じた数の入力信号を取得し、前記順序に従って前記信号生成演算子の演算を行うことで、前記入力信号からマルチキャリア信号を生成する実行部(12)と、
を備える信号生成装置。
マルチキャリア信号の信号種別及びサブキャリア数を取得し、前記信号種別のマルチキャリア信号を生成するために必要な信号生成演算子及び演算の順序を設定する設計手順と、
前記サブキャリア数に応じた数の入力信号を取得し、前記順序に従って前記信号生成演算子の演算を行うことで、前記入力信号からマルチキャリア信号を生成する実行手順と、
を信号生成装置が実行する信号生成方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。これらの実施の例は例示に過ぎず、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0015】
図1に、実施形態に係る信号生成装置の一例を示す。信号生成装置91は、実行部12として機能するCPUを備え、符号系列からなる入力信号uに対してマルチキャリアー信号からなる出力信号yを出力する。信号生成装置91は、状態変数や演算行列を記憶するメモリ13を備える。信号生成装置91は、入出力部16と、遠隔制御を行うための通信IF17と、を備える。
【0016】
入出力部16は、入力信号uを入力し、出力信号yを出力する。各構成は、データ接続バス及び制御バスで接続される。入出力部16は、データの入出力の機能だけでなく、データ形式、コード、並びなどのRF変調部固有のインタフェースに合わせる機能を有していてもよい。
【0017】
入出力部16に、マルチキャリア信号の信号種別が入力される。信号種別は任意であり、例えば、UF−OFDM、CP−OFDM、FBMC、フィルタードOFDM、GFDM、Windowing−OFDMが例示できる。入出力部16には、さらに、サブキャリア数、変調方式、フィルタリング方式及び同期信号の有無などの、マルチキャリア信号を生成するために必要な任意の情報が入力される。
【0018】
信号生成装置91に備わるCPUは、さらにシナリオ構成部11として機能する。シナリオ構成部11は、マルチキャリア信号を生成する際のシナリオを構成し、シナリオに従って実行部12を制御する。実行部12は、シナリオ構成部11の設定したオペレータを用いて、演算処理を実行する。Mappaer入力変換部14は、所望の符号系列からなる入力信号uの各要素を、所定の変調方式に対応した(I,Q)信号対に変換する機能を有する。
【0019】
入力信号uは、正弦波の振幅位相情報に変換するための振幅位相情報を与える部分(以下、これを一次変調と称する。)を有する。一次変調は、デジタル信号1/0でもよいが、1/0情報のような角ばった帯域の広い信号でなくてもよい。入力信号uが角ばった帯域の広い信号でないことで、信号の有する占有帯域を減らすことができる。
【0020】
例えば、6ビットの入力信号uを用いる場合、初めの3ビットから生成される8とおりの数値をIとして、次に到来する3ビットから生成される8とおりの数値をQとして、2次元のマップ上に変換する。この場合、8*8の64通りのマッピング点ができる。これがマッパーの機能動作で、この(I,Q)対をIFFTで変換すると、振幅位相情報を与えられた多数の正弦波:サブキャリアーが重ねられた時系列ができる。これがOFDM信号である。
【0021】
マルチキャリア信号は周波数を次元とする行列で表現することができる。そこで、サブキャリアごとに入力信号uを割り当て、以下のように、入力信号u及び出力信号yをベクトルで表した入力ベクトルU及び出力ベクトルYで表す。
【数101】
ここで、i=0,1,…,N−1はサブキャリアである。以下においては、理解が容易になるよう、サブキャリア数Nが4の場合について説明する。
【0022】
入力ベクトルUは、1/0で構成される任意の符号系列である。シナリオ構成部11は、生成するマルチキャリア信号に応じた入力ベクトルUを用いる。
図2に、マルチキャリア信号の一例を示す。シナリオ構成部11が入力ベクトルUを選択することで、信号生成装置91は、フィルタードマルチキャリア通信方式で用いられる任意のマルチキャリア信号をシンボル毎に生成することができる。生成するマルチキャリア信号は、プリアンブル信号S
pabであってもよいし、制御信号であってもよい、ペイロード信号であってもよい。ペイロード信号は、パイロット信号S
pltを含んでいてもよい。生成するマルチキャリア信号に応じた入力ベクトルUは、数値変換用のオペレータを用いて生成してもよい。
【0023】
マルチキャリア信号を生成する際に入力ベクトルUに行う任意の演算処理をオペレータARとすると、演算処理はARUと表すことができる。フィルタードマルチキャリア信号通信方式では、変調⇒周波数多重⇒フィルタリングの順に処理を行うため、出力信号yを生成するまでに演算処理を複数回行う必要がある。そこで、状態変数xを用いる。状態変数xをベクトル表示した状態ベクトルXは、例えば、次式で表すことができる。
(数102)
X
k=A
kX
k−1+B
kU (102)
Aは、状態ベクトルXに施すべき演算処理を表すオペレータである。オペレータA及びBは、マルチキャリア信号を生成するために必要な信号生成演算子として機能する。
【0024】
式(102)はサフィックスkで特定される各時点における状態空間表現式であり、k=0の状態ベクトルX
0はすべて「0」の行列(以下、{0}と表記する。)である。生成する信号に応じてオペレータA及びBを変化させることで、任意のマルチキャリア信号を生成することができる。オペレータA及びBを用いて、状態ベクトルX
kを順次導出し、適当なkの時点で出力ベクトルYを生成する。
【0025】
マルチキャリア通信方式の信号評価試験環境段階では、マルチキャリア信号に対して環境特性を付加して評価できることが好ましい。そこで、出力ベクトルYを次のように表す。
(数103)
Y=C
kX
k+D
kV (103)
ここで、Cは状態ベクトルに施すべき演算処理を表すオペレータであり、Vは各サブキャリアの外乱vを示す外乱ベクトルであり、Dは外乱ベクトルに施すべき演算処理を表すオペレータである。オペレータC及びDは、マルチキャリア信号に特性を付加するために必要な特性付加演算子として機能する。これにより、伝送路特性や外乱を付加したマルチキャリア信号を生成することができる。
【0026】
伝送路特性や外乱を考慮しない場合、オペレータCは単位行列(以下、{E}又はEと表記する。)となり、DVは{0}となる。生成する信号に応じてオペレータC及びDを変化させることで、評価を行いたい任意のマルチキャリア信号を生成することができる。
【0027】
各オペレータは、数学的に決められるのではなく、入出力の設計によって定められる。シナリオ構成部11は、生成するマルチキャリア信号に応じて、実行部12の用いるオペレータを変化させる。例えば、シナリオ構成部1は、マルチキャリア信号を生成するために、変調⇒周波数多重⇒フィルタリングの順でオペレータA及びBを変化させる。
【0028】
信号生成演算子として機能するオペレータは、例えば、以下が例示できる。
M
M:変調方式に応じたシンボルポイントに入力信号uをマッピングするオペレータ。
M
T:時間軸シンボル多重を行うオペレータ。
【0029】
変調方式は任意であり、例えば16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)である。1つのシンボルがI軸とQ軸の直交座標上のシンボルポイントで表わされるような変調方式の場合、入力信号uの符号系列はu=(uI(i),uQ(i))(i=0,1,2,・・)の対で表現できる(iは、符号系列の番号である)。ここで、入力信号uを変換後の結果を想定して、I成分とQ成分に分けて例示している、ここでは、それぞれに手続き型演算を行う。
【0030】
入力ベクトルUは、例えば次式で表される。式(104)の右辺で当てられた場合は、式105で変換できる。
【数104】
【数105】
【0031】
オペレータM
Mは、例えば次式で表される。
【数106】
【0032】
数式(106)の手続き型演算とは、通常の行列の積演算に従って、b
0は、u
I(0),u
Q(0)に作用する。この時、式(107)のように、(u
I,u
Q)値を変調方式に従って(I、Q)数値に割り付ける。割り付け方の手順を
図3に示す。
【数107】
【0033】
U
I(i)+jU
Q(i)を導出することで、各サブキャリアiごとに入力信号u(i)をシンボルポイントにマッピングすることができる。オペレータM
Mを構成するbを変調方式ごとに定めることで、任意の変調方式に対応したU(i)=U
I(i)+jU
Q(i)の値を導出することができる。このため、入力ベクトルUに含まれる各入力信号uを任意の変調方式でマッピングすることができる。
【0034】
例えば、変調方式が16QAMの場合、入力べクトルUをp
ijで表すと、b
ijは
図4に示す表となる。図中における括弧は(I,Q)成分を示す。対象の変調方式は、BPSK、QPSK、Mary−QAM、Offset QAMである。
【0035】
オペレータM
Tは、例えば次式で表される。
【数108】
【0036】
信号生成演算子として機能するオペレータは、例えば、以下が例示できる。
T
iFFT:高速フーリエ逆変換を行うオペレータ。
T
iDFT:離散時間フーリエ逆変換を行うオペレータ。
T
FFT:高速フーリエ変換を行うオペレータ。
T
DFT:離散時間フーリエ変換を行うオペレータ。
【0037】
離散時間フーリエ逆変換及びフーリエ変換は、それぞれ、次式で表される。
【数109】
【数110】
ただし、W=exp(−j2π/N)は回転因子と呼ばれる。Nは変換要素の総数であり、n,kは各々、時系列、周波数列に対応する変数と解釈される。離散サンプリング時間は1で正規化している。
【0038】
オペレータT
FFTは、例えば次式で表される。N=4の場合を示す。Wは回転因子である。
【数111】
【0039】
離散時間フーリエ逆変換を行うオペレータT
iDFTは、次式のようになる。N=4の場合を示す。
【数112】
【0040】
オペレータT
FFTはT
iFFTの逆行列T
iFFT−1、離散時間フーリエ逆変換を行うオペレータT
iDFTはT
DFTの逆行列T
DFT−1の関係があり、用いることができる。
【0041】
信号生成演算子として機能するオペレータは、例えば、以下が例示できる。これらのフィルタを用いることで、OOB(Out−of−band)の低減やフィルタード方式への対応が可能になる。
F
U:サブキャリア毎に周波数領域でフィルタリング処理を行うオペレータ。
F
P:複数のサブキャリアの時系列形式信号にフィルタリング処理を行うオペレータ。
F
PR:巡回畳み込みフィルタリング処理を行うオペレータ。
F
PPN:複数のサブキャリアーにポリフェーズ形式のフィルタ処理を行うオペレータ。
F
DET:各フィルタリングデータ毎に出力タイミングを変えて、時間転送方向に並べる処理を行うオペレータ。
F
C:フィルタリングの周波数特性補正を行うオペレータ。
Fβ:は、前処理で必要とされる係数オペレータで、iFFTの前段部に到来する係数複素乗算である。上記のFcと等価な構成となる。
【0042】
オペレータF
Uは、周波数領域でのフィルタリングオペレータで、例えば次式で表される。
【数113】
ここで、fuは、複素数で、サブキャリアの周波数位相特性を与えてフィルタリングを行う。fuフィルタの周波数応答を示す。
【0043】
一方、時間領域でのフィルタのインパルス応答をg(i)とすると、離散時間でMタップ個のフィルタが備わる場合、フィルタリング後の出力は離散領域で、次式の畳み込み和で表される。
【数114】
ただし、m=0,1,2,…M−1、i=0,1,2,…N−1である。
【0044】
例えば、M=3であり、i=0,1,2のときの出力x
k(i)は以下のようになる。
(数115)
x
k(0)=x
k−1(0)g(0)
x
k(1)=x
k−1(1)g(1)+x
k−1(1)g(0)
x
k(2)=x
k−1(2)g(2)+x
k−1(2)g(1)+x
k−1(2)g(0)
このときの状態変数x
2(i)とインパルス応答g(i)の一例を
図5に示す。
【0045】
オペレータF
Pは、例えば、g(i)フィルタのタップ長が3である場合を例にとると、次式で表される。
【数116】
【0046】
時間領域のフィルタリングを巡回畳み込みで行うオペレータであるF
PRは、たとえば、次のようになる。g(i)はフィルタのインパルス応答である。
【数117】
【0047】
オペレータF
PPNは、時系列データに対するポリフェーズフィルタの役割を有する。
【数118】
pp
i(Z
M)は遅延演算子込みのオペレータであり、以下のように構成されている。以下の式で、M=4かつK=4で、インパルス係数gを有するフィルタ長がKM=16の時のポリフェーズ構成の場合を示す。x
k−1に対してz
−Mは遅延オペレータであり、Mタイミング後のデータを利用することを示している。
【数119】
【0048】
K=4におけるKは次の関係を有する。
【数120】
ただし、q=1〜Kである。
【0049】
オペレータF
DETは、例えば次式で表される。
【数121】
ここで、z
−1は遅延演算子である。この遅延単位で時系列にデータが並ぶ。
【0050】
オペレータFcは、フィルタ処理による周波数振幅位相補正用のオペレータであり、例えば、次式で表される。fcはサブキャリアー毎のフィルタの逆特性を示す複素数である。
【数122】
【0051】
オペレータFβは、例えば次式で表される。プリプロセシングとしてサブキャリアー毎に調整用係数を乗算する場合に使用する。βは複素数である。
【数123】
【0052】
信号生成演算子として機能するオペレータは、例えば、以下が例示できる。
S
CP:同期用のCP(Cyclic prefix)の付加を行うオペレータ。フィルタリングの後に行う。
Swin:データに対してWindowing処理を施すオペレータである。
【0053】
オペレータS
CPは、CP数を2とすると、例えば次式で表される。
【数124】
【数125】
【0054】
特性付加演算子として機能するオペレータは、例えば、以下が例示できる。
S
T:伝送路の歪みを付加するオペレータ。
S
CFO:CFO(Carrier Frequency Offset)の付加を行うオペレータ。
S
N:雑音の付加を行うオペレータ。
【0055】
オペレータS
Tは、例えば次式で表される。stは伝送路歪を表す複素数である。なおS
Tは時系列でも周波数系列でも適用可能である。
【数126】
【0056】
オペレータS
CFOは、例えば次式で表される。cfoは周波数シフトを表す複素数である。なおS
CFOは時系列でも周波数系列でも適用可能である。
【数127】
【0057】
オペレータS
Nは、例えば次式で表される。これは、独立雑音系列vがサブキャリアー毎にsnで振幅位相特性を与えて重畳するモデルを想定している。なおS
Nは時系列でも周波数系列でも適用可能である。
【数128】
【0058】
信号生成装置91は、オペレータA、B、C及びDを組み合わせることで、信号種別、サブキャリア数、変調方式、フィルタリング方式及び同期信号の有無などを柔軟に変更することができる。このため、信号生成装置91は、多様なマルチキャリア信号を簡便な構成で生成することができる。
【0059】
(実施形態1)
本実施形態では、信号生成装置91がマルチキャリア信号を生成する例について説明する。シナリオ構成部11は、オペレータA及びBと演算の順序を設定する。マルチキャリア信号としてUF−OFDM信号を生成する場合、シナリオ構成部11は、オペレータA及びBとして、A
1={0}、B
1=M
M、A
2=T
iFFT、B
2={0}、A
3=F
P、B
3={0}を設定する。本実施形態では、オペレータM
Mの変調方式が16QAM変調方式である場合について説明する。
【0060】
・k=0
シナリオ構成部11が入力ベクトルUを実行部12に入力する。本実施形態の変調方式は16QAM変調方式であるため、シナリオ構成部11は、式(104)に示す入力ベクトルUを実行部12に入力する。
【0061】
・k=1
シナリオ構成部11がA
1={0}、B
1=M
Mを指定する。本実施形態の変調方式は16QAM変調方式であるため、シナリオ構成部11は、シンボルポイントが16か所になるようなオペレータM
Mを実行部12に入力する。実行部12は、実行部として機能し、このオペレータを用いて式(102)を算出することで、状態ベクトルX
1を導出する。
(数201)
X
1=M
MU (201)
【0062】
・k=2
シナリオ構成部11がA
2=T
iFFT、B
2={0}を指定する。実行部12は、実行部として機能し、このオペレータを用いて式(202)を算出することで、状態ベクトルX
2を導出する。
(数202)
X
2=T
iFFT*X
1=T
iFFT*(M
MU) (202)
【0063】
オペレータT
iFFTを適用したため、状態ベクトルX
2は、マルチキャリアとなったベクトル信号系列となる。ここで、フーリエ逆変換の演算において定係数が乗算されてもよい。
【0064】
・k=3
シナリオ構成部11がA
3=F
P、B
3={0}を指定する。実行部12は、実行部として機能し、このオペレータを用いて式(102)を算出することで、状態ベクトルX
3を導出する。
(数203)
X
3=F
P*X
2=F
P*T
iFFT*(M
MU) (203)
【0065】
オペレータF
Pを適用したため、状態ベクトルX
3は、フィルタードマルチキャリアとなったベクトル信号系列となる。この時点で、UF−OFDM信号の1シンボルが完成する。
【0066】
・k=4
シナリオ構成部11がC={E}、D={0}を指定する。実行部12は、実行部として機能し、このオペレータを用いて式(103)を算出することで、出力ベクトルYを導出する。
(数204)
Y=EX
3 (204)
【0067】
オペレータF
Pによるフィルタの振幅位相歪を補正する場合がある。この場合、k=2の前に、オペレータAとしてオペレータF
Cを施す。この場合、状態ベクトルX
2〜X
4は次のようになる。
(数205)
X
2=F
C*X
1=T
iFFT*(M
MU)
X
3=T
iFFT*X
2=T
iFFT*F
C*(M
MU)
X
4=F
P*X
3=F
P*T
iFFT*F
C*(M
MU)
Y=EX
4
【0068】
ここで、周波数特性の補正であるが、一度、F
P*T
iDFT*E(Eは単位行列)を作成しT
FFT(F
P*T
iDFT*E)により、各サブキャリアの周波数歪値を計算できる。この値の逆数、補正値を用いて式(113)に示すF
Uの要素に入力すれば、補正処理がこのシステム内で閉じて計算できる。送信シナリオ中に以下の実施態様3に述べる観測方程式を利用して演算させた数値から求めた補正値を、F
Uのパラメータにフィードバックしてもよい。
【0069】
例えば、Y=E*F
P*Eで出力を求めて、T
FFT(Y)で求めたサブキャリアー毎に求められた複素数を基に、補正値を求めて、F
Uのサブキャリアー毎の要素に代入してF
Uを構成できる。
【0070】
このように、シナリオ構成部11の設定した順序に従ったオペレータの組み合わせで、UF−OFDM信号やCP−OFDM信号を生成することができる。たとえば、CP−OFDM、GFDM(Generalized Frequency Division Multiplexing)、FBMC(Filter Bank MultiCarrier)などの非特許文献で公開された方式の信号生成は、以下のオペレータを用いて生成することができる。
CP−OFDMの場合、B
1=M
M、A
2=T
iFFT、A
3=Sc
P、A
1=B
2=B
3={0}を用いる。
Windowing−OFDMの場合、B
1=M
M、A
2=T
iFFT、A
3=S
CP、A
4=S
WIN、A
1=B
2=B
3={0}を用いる。
GFDMの場合、B
1=M
M、A
2=M
T、A
3=F
PR、A
4=T
iDFT、A
5=S
CP、A
1=B
2=B
3={0}を用いる。
周波数領域のフィルタリングを行うFBMCの場合、B
1=M
M、A
2=F
U、A
3=T
iFFT、A
1=B
2=B
3={0}を用いる。
時間領域のフィルタリングを行うFBMCの場合、B
1=M
M、A
2=Fβ、A
3=T
iFFT、A
4=F
PPM、A
5=F
DET、A
1=B
2=B
3={0}を用いる。
以上のように、実施形態に係る信号生成装置91は、オペレータの組み合わせを用いることで、各方式のマルチキャリア信号を構築することができる。
【0071】
(実施形態2)
本実施形態では、信号生成装置91が特性を変化させたマルチキャリア信号を生成する例について説明する。特性を変化させたマルチキャリア信号を生成する場合、シナリオ構成部11は、オペレータA及びBに加え、さらにオペレータC及びDと演算の順序を設定する。シナリオ構成部11は、例えば、C=S
T、D=S
Nを設定する。
【0072】
シナリオ構成部11がC=S
T、D=S
Nを設定した場合、実施形態1で説明したk=4において、シナリオ構成部11が、オペレータC=S
T、D=S
N及び外乱ベクトルVを実行部12に入力する。これらのオペレータを用いて式(103)を算出することで、出力ベクトルYを導出する。
(数301)
Y=S
TX
3+S
NV (301)
【0073】
伝送路の歪みに加えてさらにCFOの付加を行う場合、実施形態1で説明したk=4において、シナリオ構成部11が、オペレータC
1=S
CFO、C
2=S
T、D=A
N及び外乱ベクトルVを実行部12に入力する。この場合、式(301)は以下のようになる。
(数302)
Y=S
TS
CFOX
3+A
NV (302)
【0074】
このように、オペレータC及びD、外乱ベクトルVを設定することで、伝送路特性や外乱を付加したマルチキャリア信号を生成することができる。
【0075】
(実施形態3)
本実施形態では、信号生成装置91に備わるCPUは、さらに評価部15として機能する。評価部15は、マルチキャリア信号の評価を行う。マルチキャリア信号の評価を行う場合、シナリオ構成部11は、マルチキャリア信号の評価に用いる信号解析演算子であるオペレータGと演算の順序を設定する。
【0076】
・k=0
シナリオ構成部11がマルチキャリア信号を受信ベクトルRとして評価部15に入力する。このとき、シナリオ構成部11は、マルチキャリア信号を周波数領域の系列信号に変換するため、オペレータT
FFTを設定する。評価部15は、T
FFT*Rを算出する。
【0077】
・k=1
シナリオ構成部11がオペレータGを評価部15に指定する。評価部15は、G*(T
FFT*R)を算出する。
【0078】
オペレータGとしては、例えば、以下が例示できる。
G
CCDF:CCDF(Complementary Cumulative Distribution Function)処理を行うオペレータ。これにより、受信信号の振幅確率分布を形成することができる。CCDFはPAPR(Peak to Average Power Ratio)評価と等価である。
G
CS:コンスタレーション処理を行うオペレータ。コンスタレーション処理は、サブキャリアーごとの平均、分散、EVM(Error Vector Magnitude)を含む。星座ごとにも適用できる。
【0079】
振幅確率分布(CDF:Cumulative Distribution Function)をf
CDFとすると、CCDFはf
CCDF=1−f
CDFで求められる。各キャリアのf
CCDFをベクトル表示したものをF
CDFとすると、オペレータG
CCDFは、例えば次式で表される。fccdfオペレータのjはレベルがjまでの振幅確率分布を示す。受信レベルが予め決められたレベル刻みのどこにあるかを検知し、検知したレベルの予め決められたCOUNTを+1増加することで、頻度を求めて、レベルの高い方から累積して振幅分布を求める。
【数401】
【0080】
f
CCDFは以下に従う。zは時間進みオペレータ、kはデータの個数、jは振幅レベルのインデックス、Ljは振幅レベルである。
【数402】
【0081】
オペレータG
CSは、例えば次式で表される。添え字kは受信ベクトルが時系列に到来することを想定している。
【数403】
【0082】
コンスタレーション処理において、サブサキャリアーごとの平均を求める場合、例えば、以下の演算を行う。
【数404】
【0083】
コンスタレーション処理において、サブキャリアーごとのEVMを求める場合、例えば、以下の演算を行う。
【数405】
ただし、I
k及びQ
kは予め定めた基準値を示す。
【0084】
この評価値をもとに、状態ベクトルXのオペレータの内部パラメータを変更することで、所望のパラメータを取得することができる。また、評価による結果からフィードバックを行い、そのフィードバック値と、予め対応するオペレータの内部パラメータ含めて、システムのオペレータ機能が更新できることになる。これにより、実システムに適用した内容の更新ができる。
【0085】
また、Y=L(M
MU)と見るとLが求められる。例えば、F
PP*T
iDFT*F
Uなどは、このLが正則の性質を持つ場合は、逆行列が計算できて、M
MU=L
−1Yとして、M
MUを求めることができる。正則でない場合は、疑似逆行列を計算して求めることもできる。
【0086】
以上は、1シンボル毎の演算であるが、複数シンボルにも適用可能である。この場合は状態変数行列を列方向に増大させることで実現できる。
【0087】
(実施形態4)
本実施形態では、シナリオ構成部の動作について説明する。シナリオは、信号生成装置91の実行可能な任意のタスクを含む。タスクは、例えば、信号生成、信号解析、フィードバック、通信IFである。タスクにおいて処理する信号種別は、例えば、OFDM、CP−OFDM、UF−OFDM、FBMC、GFDM、FilteredOFDM、Windowing−OFDMである。
【0088】
シナリオ構成部11は、シナリオに必要な情報が格納されたデータベースを参照し、これらの情報をシーケンサによって紐つける。シナリオ構成部11は、紐付けした情報を実行部12で実行可能な形式に変換する。これによりでき上がった命令をシーケンサが実行する。
【0089】
シナリオ構成部11の参照するデータベースは、マルチキャリア信号の信号種別、入力信号の符号系列、同期符号(パイロットパターン、プリアンブル)、サブキャリア数、シンボル数、変調方式、TTI(Time Transmission Interval)などを格納する。データベースは、手順、マルチキャリア信号の信号種別、マルチキャリア信号の属性、符号系列などの順で階層構成になっていてもよい。
【0090】
シナリオ構成部11は、通信IF17からの命令に従って、実行部12を制御してもよい。例えば、シナリオ構成部11は、データベースに格納されている情報を、通信IF17から入力された命令に従って追加更新を行う。このように、本実施形態は、規定の命令言語で、外部からの遠隔操作ができる構成となっていることが好ましい。外部からの遠隔操作は、例えば、シナリオ起動、シナリオ更新、パラメータ更新(符号系列)である。
【0091】
シナリオ構成部11は、信号生成タスクを実行するために、設定手順、設計手順及び実行手順を行う。信号生成タスクの設定手順では、信号生成装置91が、マルチキャリア信号を生成するために必要な情報を取得する。マルチキャリア信号を生成するために必要な情報は、例えば、信号種別、符号系列、同期符号、サブキャリア数、シンボル数、変調を行う変調方式、TTI(Time Transmission Interval)、適用フィルタタイプ、フィルタ補正の有り無し、CPの有り無し、CPの個数である。情報の取得方法は任意であり、信号生成装置91の入力部から取得してもよいし、通信IF17から取得してもよいし、データベースから読み出してもよい。
【0092】
信号生成タスクの設計手順では、シナリオ構成部11が、設定手順における入力に応じて、状態ベクトルXの演算に用いるオペレータ及びその順序を設定する。このとき、シナリオ構成部11は、オペレータの演算に用いるパラメータも設定する。
【0093】
信号生成タスクの実行手順では、実行許可フラグを用いて、時変システムで動作させる。これにより、所望の信号種別、所望の符号系列、所望の同期符号、所望のサブキャリア数、所望のシンボル数、所望の変調方式、所望のTTIのマルチキャリア信号を生成することができる。
【0094】
シナリオ構成部11は、信号解析タスクを実行するために、設定手順、設計手順及び実行手順を行う。
【0095】
信号解析タスクの設定手順では、解析内容を設定する。解析内容は、例えば、CCDF処理又はコンスタレーション処理である。このとき、シナリオ構成部11は、マルチキャリア信号を受信するためのオペレータ及びパラメータとして、出力ベクトルYを導出するまでに用いたオペレータ及びパラメータをメモリ13から読み出す。
【0096】
信号解析タスクの設計手順では、設定手順における入力に応じて、オペレータ及びそのパラメータを評価部15に設定する。例えば、設定手順でコンスタレーション処理が設定された場合、シナリオ構成部11は、オペレータG
CSを設定する。
【0097】
受信信号が信号生成装置91によって生成されたマルチキャリア信号である場合、信号生成装置91は、当該マルチキャリア信号を生成する際に用いたオペレータ及びパラメータをメモリ13から読み出してもよい。例えば、出力ベクトルYを導出するまでにオペレータT
iFFTを用いた場合、シナリオ構成部11は、オペレータT
FFTを設定する。
【0098】
信号解析タスクの実行手順では、評価部15が、実行許可フラグを用いて、時変システムで動作させる。フィードバックを行う場合、信号生成タスクを再度実行する。このとき、シナリオ構成部11は、シナリオのパラメータを更新する。
【0099】
以上説明したように、信号生成装置91は、簡単な行列構造の繰り返しで所望の信号を構成することができる。さらに、信号生成装置91は、信号の評価が可能であり、評価結果のフィードバックを行うことによって各種パラメータの評価を1つの装置で行うことが可能となる。さらに、信号生成装置91は、遠隔地からの指令により柔軟に対応することができる。