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特開2017-184022誤り率測定装置および該装置の自動補正方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-184022(P2017-184022A)
(43)【公開日】2017年10月5日
(54)【発明の名称】誤り率測定装置および該装置の自動補正方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 1/00 20060101AFI20170908BHJP
   H04B 3/04 20060101ALI20170908BHJP
   H04B 3/46 20150101ALI20170908BHJP
【FI】
   H04L1/00 C
   H04B3/04 A
   H04B3/46
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-68615(P2016-68615)
(22)【出願日】2016年3月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】南 昂孝
(72)【発明者】
【氏名】山根 一浩
【テーマコード(参考)】
5K014
5K046
【Fターム(参考)】
5K014GA02
5K014GA03
5K046EE42
5K046EE46
(57)【要約】
【課題】装置本体にイコライザを組み込んだ誤り率測定装置を提供する。
【解決手段】誤り率測定装置1は、パターン送信部2とパターン受信部3を備える。パターン送信部2は、パターン信号と反転パターン信号をパルスパターン発生部21から発生する。パターン受信部3は、オフセット調整部31A,31Bと、CTLE33A1,33A2を含むイコライザ33を備える。パターン送信部2とパターン受信部3とを接続し、パルスパターン発生部21からオフセット調整部31A,31Bに信号が入力されていない状態でオフセット調整部31A,31Bに所定のオフセット電圧を与え、イコライザ33に入力される制御電圧Vcを調整して直流ゲインを測定し、測定した直流ゲインと設定したゲインとが一致したときの制御電圧Vcと直流ゲインとの関係を示す直流ゲインテーブルを作成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物のビット誤り率を測定するための所定のパターン信号と該パターン信号の位相を反転した反転パターン信号とを発生するパルスパターン発生部(21)を含むパターン送信部(2)と、
前記パターン送信部から入力されるパターン信号と反転パターン信号に対して直流電圧によるオフセット電圧を付与してオフセット調整するオフセット調整部(31A,31B)と、該オフセット調整部にてオフセット調整された前記パターン送信部からのパターン信号と反転パターン信号による差動入力の高周波成分を維持しつつ低周波数域の周波数特性を変えるCTLE(33A1,33A2)を含むイコライザ(33)と、前記イコライザへの差動入力の直流電圧を検波する入力側直流検波部(32)と、前記イコライザからの差動出力の直流電圧を検波する出力側直流検波部(34)と、前記イコライザからの差動出力のエラーを測定するエラー測定部(35)とを含むパターン受信部(3)とを備えた誤り率測定装置(1)であって、
前記パターン送信部と前記パターン受信部とを接続し、前記パルスパターン発生部から前記オフセット調整部に信号が入力されていない状態で前記オフセット調整部に所定のオフセット電圧を与え、前記イコライザに入力される制御電圧を調整して直流ゲインを測定し、測定した直流ゲインと設定したゲインとが一致したときの制御電圧と前記直流ゲインとの関係を示す直流ゲインテーブルを作成することを特徴とする誤り率測定装置。
【請求項2】
前記イコライザ(33)は、周波数特性が平坦な基準アンプ(33B1,33B2)を含み、
前記直流ゲインテーブルから前記制御電圧を決定し、前記イコライザがピークを持つ周波数を第1の測定周波数とし、該第1の測定周波数よりも低く周波数特性の平坦性が保たれている周波数を第2の測定周波数として、イコライザゲイン値が0dBのときの前記第1の測定周波数のスレッショルドマージンと前記第2の測定周波数のスレッショルドマージンとを測定し、
前記基準アンプにおける前記第1の測定周波数のスレッショルドマージンと前記第2の測定周波数のスレッショルドマージンとを測定し、
前記イコライザゲイン値が0dBのときの前記第1の測定周波数のスレッショルドマージンと前記第2の測定周波数のスレッショルドマージンとの比を第1の比として算出するとともに、前記基準アンプにおける前記第1の測定周波数のスレッショルドマージンと前記第2の測定周波数のスレッショルドマージンとの比を第2の比として算出し、
前記第1の比と前記第2の比との差が最小となる制御電圧を前記イコライザゲイン値が0dBのときの制御電圧とすることを特徴とする請求項1記載の誤り率測定装置。
【請求項3】
前記イコライザゲイン値が0dBのときのスレッショルドマージンに前記イコライザゲイン値が0dB時の制御電圧の直流ゲインを掛け合わせて前記イコライザゲイン値が0dBのときの補正スレッショルドマージンを算出し、
前記直流ゲインテーブルから前記イコライザゲイン値がNdBのときの直流ゲインと制御電圧を決めて前記イコライザゲイン値がNdBのときの前記第1の測定周波数のスレッショルドマージンを測定し、
前記測定した第1の測定周波数のスレッショルドマージンに基づくイコライザゲイン値を算出し、算出したイコライザゲイン値が前記NdBの許容範囲内であれば、そのときのスレッショルドマージンを前記NdB時の制御電圧とすることを特徴とする請求項1又は2記載の誤り率測定装置。
【請求項4】
前記基準アンプ(33B1,33B2)における前記第1の測定周波数のスレッショルドマージンと前記第2の測定周波数のスレッショルドマージンとの比を1として設定することを特徴とする請求項2又は3記載の誤り率測定装置。
【請求項5】
被測定物のビット誤り率を測定するための所定のパターン信号と該パターン信号の位相を反転した反転パターン信号とを発生するパルスパターン発生部(21)を含むパターン送信部(2)と、
前記パターン送信部から入力されるパターン信号と反転パターン信号に対して直流電圧によるオフセット電圧を付与してオフセット調整するオフセット調整部(31A.31B)と、該オフセット調整部にてオフセット調整された前記パターン送信部からのパターン信号と反転パターン信号による差動入力の高周波成分を維持しつつ低周波数域の周波数特性を変えるCTLE(33A1,33A2)を含むイコライザ(33)と、前記イコライザへの差動入力の直流電圧を検波する入力側直流検波部(32)と、前記イコライザからの差動出力の直流電圧を検波する出力側直流検波部(34)と、前記イコライザからの差動出力のエラーを測定するエラー測定部(35)とを含むパターン受信部(3)とを備えた誤り率測定装置(1)の自動調整方法であって、
前記パルスパターン発生部から前記オフセット調整部に信号が入力されていない状態で前記オフセット調整部に所定のオフセット電圧を与えるステップと、
調整するゲインを設定するステップと、
前記イコライザに入力される制御電圧を調整して直流ゲインを測定するステップと、
前記測定した直流ゲインと前記設定したゲインとが一致したときの制御電圧と前記直流ゲインとの関係を示す直流ゲインテーブルを作成するステップとを含むことを特徴とする誤り率測定装置の自動調整方法。
【請求項6】
前記直流ゲインテーブルから前記制御電圧を決定するステップと、
前記イコライザ(33)がピークを持つ周波数を第1の測定周波数とし、該第1の測定周波数よりも低く周波数特性の平坦性が保たれている周波数を第2の測定周波数として、前記イコライザゲイン値が0dBのときの前記第1の測定周波数のスレッショルドマージンと前記第2の測定周波数のスレッショルドマージンとを測定するステップと、
周波数特性が平坦な前記イコライザに含まれる基準アンプ(33B1,33B2)における前記第1の測定周波数のスレッショルドマージンと前記第2の測定周波数のスレッショルドマージンとを測定するステップと、
前記イコライザゲイン値が0dBのときの前記第1の測定周波数のスレッショルドマージンと前記第2の測定周波数のスレッショルドマージンとの比を第1の比として算出するステップと、
前記基準アンプにおける前記第1の測定周波数のスレッショルドマージンと前記第2の測定周波数のスレッショルドマージンとの比を第2の比として算出するステップと、
前記第1の比と前記第2の比との差が最小となる制御電圧を前記イコライザゲイン値が0dBのときの制御電圧とするステップとを含むことを特徴とする請求項5記載の誤り率測定装置の自動調整方法。
【請求項7】
前記イコライザゲイン値が0dBのときのスレッショルドマージンに前記イコライザゲイン値が0dB時の制御電圧の直流ゲインを掛け合わせて前記イコライザゲイン値が0dBのときの補正スレッショルドマージンを算出するステップと、
前記直流ゲインテーブルから前記イコライザゲイン値がNdBのときの直流ゲインと制御電圧を決めるステップと、
前記イコライザゲイン値がNdBのときの前記第1の測定周波数のスレッショルドマージンを測定するステップと、
前記測定した第1の測定周波数のスレッショルドマージンに基づくイコライザゲイン値を算出し、算出したイコライザゲイン値が前記NdBの許容範囲内であれば、そのときのスレッショルドマージンを前記NdB時の制御電圧とするステップとを含むことを特徴とする請求項5又は6記載の誤り率測定装置の自動調整方法。
【請求項8】
前記基準アンプ(33B1,33B2)における前記第1の測定周波数のスレッショルドマージンと前記第2の測定周波数のスレッショルドマージンとの比を1として設定するステップを含むことを特徴とする請求項6又は7記載の誤り率測定装置の自動調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物のビット誤り率を測定する誤り率測定装置に関し、特に、装置本体にイコライザを組み込んだ誤り率測定装置および該装置の自動補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の各種ディジタル通信装置は、利用者数の増加やマルチメディア通信の普及に伴い、より大容量の伝送能力が求められており、これらのディジタル通信装置におけるディジタル信号の品質評価の指標の一つとして、受信データのうち符号誤りが発生した数と受信データの総数との比較として定義されるビット誤り率(Bit Error Rate)が知られている。
【0003】
このため、所望のディジタル通信装置を被測定物(被試験デバイス:DUT)とし、この被測定物におけるビット誤り率を測定する場合には、例えば下記特許文献1に開示されるような誤り率測定装置が用いられる。この種の誤り率測定装置では、被測定物が電気的なストレスをどの程度許容できるかを測定するため、パターン発生器から既知パターンの電気的ストレス信号をテスト信号として印可し、このテスト信号を被測定物内部又は外部でループバックし、エラー検出器で受信してテスト信号との比較により、テスト信号の印可量に対してエラーの有無を測定するジッタトレランステストを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−274474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1を含む従来の誤り率測定装置では、例えばプリント基板を被測定物とし、このプリント基板の線路に高周波成分を含むパターン信号を入力してビット誤り率の測定しようとした場合、線路を通過する信号の高周波成分が通りくく減衰してしまい、この高周波成分の減衰によってビット誤り率に誤差が生じ、正確な測定を行うことができない。このため、高周波成分の減衰の影響を受けずに誤り率測定を行うことができる誤り率測定装置の提供が望まれていた。
【0006】
ここで、上述した特許文献1を含む従来の誤り率測定装置に対し、信号の高周波成分を維持しつつ低周波数域の周波数特性を変えることができるイコライザを装置本体に組み込むことを考えた場合、イコライザの周波数特性を事前に測定してから組み込む必要があった。そのため、イコライザの周波数特性を測定するための測定器(例えばベクトルネットワークアナライザ)が別途必要となり、高コストとなってしまう。
【0007】
また、誤り率測定装置の装置本体にイコライザを組み込んだ場合、設定値(制御電圧Vc)に対するイコライザ特性がイコライザによって個体バラツキがあり、また、経年変化や温度によってイコライザの性能が変動したときに、その変動を誤り率測定装置で知ることができなかった。
【0008】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、イコライザを装置本体に組み込んだ誤り率測定装置を提供するとともに、イコライザを装置本体に組み込む際に、別途測定器にて周波数特性を事前に測定する必要がなく、高周波成分の減衰による影響を受けずに誤り率測定が可能であり、経年変化や温度によってイコライザの性能が変動したときに、その変動を知ることができる誤り率測定装置および該装置の自動補正方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載された誤り率測定装置は、被測定物のビット誤り率を測定するための所定のパターン信号と該パターン信号の位相を反転した反転パターン信号とを発生するパルスパターン発生部21を含むパターン送信部2と、
前記パターン送信部から入力されるパターン信号と反転パターン信号に対して直流電圧によるオフセット電圧を付与してオフセット調整するオフセット調整部31A,31Bと、該オフセット調整部にてオフセット調整された前記パターン送信部からのパターン信号と反転パターン信号による差動入力の高周波成分を維持しつつ低周波数域の周波数特性を変えるCTLE33A1,33A2を含むイコライザ33と、前記イコライザへの差動入力の直流電圧を検波する入力側直流検波部32と、前記イコライザからの差動出力の直流電圧を検波する出力側直流検波部34と、前記イコライザからの差動出力のエラーを測定するエラー測定部35とを含むパターン受信部3とを備えた誤り率測定装置1であって、
前記パターン送信部と前記パターン受信部とを接続し、前記パルスパターン発生部から前記オフセット調整部に信号が入力されていない状態で前記オフセット調整部に所定のオフセット電圧を与え、前記イコライザに入力される制御電圧を調整して直流ゲインを測定し、測定した直流ゲインと設定したゲインとが一致したときの制御電圧と前記直流ゲインとの関係を示す直流ゲインテーブルを作成することを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項2に記載された誤り率測定装置は、請求項1の誤り率測定装置において、
前記イコライザ33は、周波数特性が平坦な基準アンプ33B1,33B2を含み、
前記直流ゲインテーブルから前記制御電圧を決定し、前記イコライザがピークを持つ周波数を第1の測定周波数とし、該第1の測定周波数よりも低く周波数特性の平坦性が保たれている周波数を第2の測定周波数として、イコライザゲイン値が0dBのときの前記第1の測定周波数のスレッショルドマージンと前記第2の測定周波数のスレッショルドマージンとを測定し、
前記基準アンプにおける前記第1の測定周波数のスレッショルドマージンと前記第2の測定周波数のスレッショルドマージンとを測定し、
前記イコライザゲイン値が0dBのときの前記第1の測定周波数のスレッショルドマージンと前記第2の測定周波数のスレッショルドマージンとの比を第1の比として算出するとともに、前記基準アンプにおける前記第1の測定周波数のスレッショルドマージンと前記第2の測定周波数のスレッショルドマージンとの比を第2の比として算出し、
前記第1の比と前記第2の比との差が最小となる制御電圧を前記イコライザゲイン値が0dBのときの制御電圧とすることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項3に記載された誤り率測定装置は、請求項1又は2の誤り率測定装置において、
前記イコライザゲイン値が0dBのときのスレッショルドマージンに前記イコライザゲイン値が0dB時の制御電圧の直流ゲインを掛け合わせて前記イコライザゲイン値が0dBのときの補正スレッショルドマージンを算出し、
前記直流ゲインテーブルから前記イコライザゲイン値がNdBのときの直流ゲインと制御電圧を決めて前記イコライザゲイン値がNdBのときの前記第1の測定周波数のスレッショルドマージンを測定し、
前記測定した第1の測定周波数のスレッショルドマージンに基づくイコライザゲイン値を算出し、算出したイコライザゲイン値が前記NdBの許容範囲内であれば、そのときのスレッショルドマージンを前記NdB時の制御電圧とすることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項4に記載された誤り率測定装置は、請求項2又は3の誤り率測定装置において、
前記基準アンプ33B1,33B2における前記第1の測定周波数のスレッショルドマージンと前記第2の測定周波数のスレッショルドマージンとの比を1として設定することを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載された誤り率測定装置の自動補正方法は、被測定物のビット誤り率を測定するための所定のパターン信号と該パターン信号の位相を反転した反転パターン信号とを発生するパルスパターン発生部21を含むパターン送信部2と、
前記パターン送信部から入力されるパターン信号と反転パターン信号に対して直流電圧によるオフセット電圧を付与してオフセット調整するオフセット調整部31A.31Bと、該オフセット調整部にてオフセット調整された前記パターン送信部からのパターン信号と反転パターン信号による差動入力の高周波成分を維持しつつ低周波数域の周波数特性を変えるCTLE33A1,33A2を含むイコライザ33と、前記イコライザへの差動入力の直流電圧を検波する入力側直流検波部32と、前記イコライザからの差動出力の直流電圧を検波する出力側直流検波部34と、前記イコライザからの差動出力のエラーを測定するエラー測定部35とを含むパターン受信部3とを備えた誤り率測定装置1の自動調整方法であって、
前記パルスパターン発生部から前記オフセット調整部に信号が入力されていない状態で前記オフセット調整部に所定のオフセット電圧を与えるステップと、
調整するゲインを設定するステップと、
前記イコライザに入力される制御電圧を調整して直流ゲインを測定するステップと、
前記測定した直流ゲインと前記設定したゲインとが一致したときの制御電圧と前記直流ゲインとの関係を示す直流ゲインテーブルを作成するステップとを含むことを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載された誤り率測定装置の自動補正方法は、請求項5の誤り率測定装置の自動補正方法において、
前記直流ゲインテーブルから前記制御電圧を決定するステップと、
前記イコライザ33がピークを持つ周波数を第1の測定周波数とし、該第1の測定周波数よりも低く周波数特性の平坦性が保たれている周波数を第2の測定周波数として、前記イコライザゲイン値が0dBのときの前記第1の測定周波数のスレッショルドマージンと前記第2の測定周波数のスレッショルドマージンとを測定するステップと、
周波数特性が平坦な前記イコライザに含まれる基準アンプ33B1,33B2における前記第1の測定周波数のスレッショルドマージンと前記第2の測定周波数のスレッショルドマージンとを測定するステップと、
前記イコライザゲイン値が0dBのときの前記第1の測定周波数のスレッショルドマージンと前記第2の測定周波数のスレッショルドマージンとの比を第1の比として算出するステップと、
前記基準アンプにおける前記第1の測定周波数のスレッショルドマージンと前記第2の測定周波数のスレッショルドマージンとの比を第2の比として算出するステップと、
前記第1の比と前記第2の比との差が最小となる制御電圧を前記イコライザゲイン値が0dBのときの制御電圧とするステップとを含むことを特徴とする。
【0015】
請求項7に記載された誤り率測定装置の自動補正方法は、請求項5又は6の誤り率測定装置の自動補正方法において、
前記イコライザゲイン値が0dBのときのスレッショルドマージンに前記イコライザゲイン値が0dB時の制御電圧の直流ゲインを掛け合わせて前記イコライザゲイン値が0dBのときの補正スレッショルドマージンを算出するステップと、
前記直流ゲインテーブルから前記イコライザゲイン値がNdBのときの直流ゲインと制御電圧を決めるステップと、
前記イコライザゲイン値がNdBのときの前記第1の測定周波数のスレッショルドマージンを測定するステップと、
前記測定した第1の測定周波数のスレッショルドマージンに基づくイコライザゲイン値を算出し、算出したイコライザゲイン値が前記NdBの許容範囲内であれば、そのときのスレッショルドマージンを前記NdB時の制御電圧とするステップとを含むことを特徴とする。
【0016】
請求項8に記載された誤り率測定装置の自動補正方法は、請求項6又は7の誤り率測定装置の自動補正方法において、
前記基準アンプ33B1,33B2における前記第1の測定周波数のスレッショルドマージンと前記第2の測定周波数のスレッショルドマージンとの比を1として設定するステップを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、装置本体に対し、オフセット調整部とエラー測定部との間にCTLEを含むイコライザを組み込んだ構成なので、CTLEがどんな直流でも受けて高域(ピーク周波数)のゲインを維持したまま低域のゲインを下げて出力し、高周波成分の減衰の影響を受けずに誤り率測定を行うことが可能になる。
【0018】
また、イコライザを装置本体に組み込んだ状態でイコライザの性能を知ることができ、例えばベクトルネットワークアナライザなどの測定器を別途必要としないので、被測定物のビット誤り率を測定するにあたってシステム構成の簡素化を図ることができる。
【0019】
さらに、経年変化や温度によってイコライザの性能が変動した場合でも、イコライザの性能のばらつきについても知ることができ、イコライザの性能変動やばらつきに対して自己補正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る誤り率測定装置のブロック構成図である。
図2】本発明に係る誤り率測定装置のオフセット調整部のブロック構成図である。
図3】本発明に係る誤り率測定装置のイコライザのCTLEと基準アンプの切り替え構成の概略説明図である。
図4】直流ゲインテーブルの作成手順を示すフローチャートである。
図5】基準アンプのスレッショルドマージン測定の手順を示すフローチャートである。
図6】イコライザゲイン値EQを0dBに設定したときの制御電圧Vcの算出手順を示すフローチャートである。
図7】イコライザゲイン値EQをNdBに設定したときの制御電圧Vcの算出手順を示すフローチャートである。
図8】本発明に係る誤り率測定装置の自動調整方法における基準アンプのスレッショルドマージン測定およびイコライザゲイン値EQを0dBに設定したときの補正に関する説明図である。
図9】本発明に係る誤り率測定装置の自動調整方法におけるイコライザゲイン値EQをNdBに設定したときの補正に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
図1に示すように、誤り率測定装置1は、デジタル伝送システムの品質を決定するために被測定物のビット誤り率を測定するもので、パターン送信部2とパターン受信部3を備えて概略構成され、装置本体にイコライザが内蔵して組み込まれた構成である。
【0023】
[パターン送信部の構成]
パターン送信部2は、図1に示すように、パルスパターン発生部21を含んで構成される。
【0024】
パルスパターン発生部21は、被測定物のビット誤り率の測定を行うためのテスト信号として後述するパターン受信部3のオフセット調整部31(31A,31B)に入力される所望のパルスパターンのパターン信号(デジタル信号)と、パターン信号の位相を反転した反転パターン信号とを発生するもので、パルスパターン指定部21aとパルスパターン出力部21bを有する。
【0025】
パルスパターン指定部21aは、例えば後述するパターン受信部3の操作部36の操作により、パルスパターン出力部21bから出力させるパターン信号(反転パターン信号)のパルスパターンを指定する。
【0026】
パルスパターン出力部21bは、後述するパターン受信部3の制御部39からのパターン発生指令により、パルスパターン指定部21aにて指定された所望のパルスパターンによる低周波成分、直流成分及び高周波成分を含む広帯域な周波数特性を有するパターン信号と反転パターン信号とを出力する。このパターン信号と反転パターン信号は、例えば同一ビットデータが連続するようなデータパターンを含むものである。
【0027】
パターン信号と反転パターン信号は、出荷時又は後述するパターン受信部3の操作部36の操作により自動補正モードに設定してイコライザ33の自動補正を行うときに、差動アンプとして動作するイコライザ33に入力される。また、パターン信号は、後述するパターン受信部3の操作部36の操作により測定モードに設定して不図示の被測定物(DUT)のビット誤り率の測定を行うときに、試験信号として被測定物に入力される。
【0028】
なお、パターン送信部2は、後述するオフセット調整部31を含む構成とし、パルスパターン出力部21bからのパターン信号(反転パターン信号)をオフセット調整して出力してもよい。
【0029】
[パターン受信部の構成]
パターン受信部3は、図1に示すように、第1の入力端子3a、第2の入力端子3b、オフセット調整部31、入力側直流検波部32、イコライザ33、出力側直流検波部34、エラー測定部35、操作部36、記憶部37、表示部38、制御部39を含んで構成される。
【0030】
パターン受信部3は、自動補正モードによりイコライザ33の自動補正を行うときに、第1の入力端子3aと第2の入力端子3bがパターン送信部2に接続され、第1の入力端子3aにパターン送信部2からのパターン信号が入力され、第2の入力端子3bにパターン送信部2からの反転パターン信号が入力される。
【0031】
なお、測定モードにより被測定物の測定を行う場合には、パターン送信部2が被測定物の入力端子に接続され、パターン受信部3の入力端子3a,3bが被測定物の出力端子に接続される。
【0032】
オフセット調整部31は、入力される信号のオフセット調整を行うもので、パターン送信部2のパルスパターン発生部21(又はエラー測定時における被測定物)からポートpに入力されるパターン信号に直流電圧によるオフセット電圧を付与し、このオフセット電圧の付与によってオフセット調整されたパターン信号を出力するオフセット調整部31Aと、パターン送信部2のパルスパターン発生部21(又はエラー測定時における被測定物)からポートnに入力されるパターン信号に直流電圧によるオフセット電圧を付与し、このオフセット電圧の付与によってオフセット調整された反転パターン信号を出力するオフセット調整部31Bとを有する。
【0033】
なお、オフセット調整部31Aとオフセット調整部31Bは、入力される信号の位相が反転しているだけで同一構成であり、図2に示すように、入力端子31a、コンデンサ31b、オフセット電圧設定部31c、直流電圧発生器31d、第1のコイル31e、第2のコイル31f、合成回路31g、出力端子31h、周波数特性補償回路31iを含んで構成される。
【0034】
入力端子31aは、イコライザ33の自動補正時に、パルスパターン発生部21のパルスパターン出力部21bと接続される。入力端子31aには、低周波成分、直流成分及び高周波成分を含む広帯域な周波数特性を有するパターン信号(反転パターン信号)がパルスパターン出力部21bから入力される。
【0035】
コンデンサ31bは、入力端子31aと出力端子31hとの間に接続され、入力端子31aから入力されるパターン信号(反転パターン信号)の高周波成分を出力端子31hに通過させる。
【0036】
オフセット電圧設定部31cは、後述するパターン受信部3の制御部39からオフセット設定指令が入力されると、直流電圧発生器31dが出力するオフセット電圧の直流電圧値を固定値又は可変値として設定する。
【0037】
直流電圧発生器31dは、オフセット電圧設定部31cにて固定値又は可変値として設定された所望の直流電圧値によるオフセット電圧を発生して出力する。
【0038】
第1のコイル31eは、入力端子31aと合成回路31gとの間に接続される低周波抽出用コイルである。第1のコイル31eは、入力端子31aから入力されるパターン信号(反転パターン信号)の低周波成分及び直流成分を他端側に通過させる。
【0039】
第2のコイル31fは、合成回路31gと出力端子31hとの間に接続されるバイアス印加用コイルである。第2のコイル31fは、合成回路31gから合成信号を出力端子31hに通過させる。
【0040】
合成回路31gは、入力端子31aから第1のコイル31eを介して入力されるパターン信号(反転パターン信号)の低周波成分及び直流成分の信号と、直流電圧発生器31dから出力されるオフセット電圧とを合成した合成信号を出力する。
【0041】
合成回路31gは、入力端子31aから出力端子31hに至る信号路間の特定周波数領域における利得低下を補償するための周波数特性補償回路31iを有する。
【0042】
なお、周波数特性補償回路31iを含む合成回路31gは、例えば特許文献1などに開示される周知の回路を採用することができる。
【0043】
出力端子31hは、入力端子31aから入力してコンデンサ31bを通過したパターン信号(反転パターン信号)の交流成分に対し、入力端子31aから入力して第1のコイル31eにより抽出された信号に直流電圧発生器31dのオフセット電圧を合成した合成信号が加えられたパターン信号(反転パターン信号)を出力する。
【0044】
入力側直流検波部32は、イコライザ33の入力側に接続される抵抗によるモニタ端子を備え、自動補正モードによりイコライザ33の自動補正を行うときに必要不可欠な構成であり、イコライザ33の入力側の直流電圧を検波する入力側第1直流検波器32aと入力側第2直流検波器32bを有する。
【0045】
入力側第1直流検波器32aは、オフセット調整部31Aから第1の入力端子3aに入力されるパターン信号の直流成分を検出し、検出した直流成分をモニタ信号として制御部39に出力する。
【0046】
入力側第2直流検波器32bは、オフセット調整部31Bから第2の入力端子3bに入力される反転パターン信号の直流成分を検出し、検出した直流成分をモニタ信号として制御部39に出力する。
【0047】
イコライザ33は、例えばUSB3.1で規定されるCTLE(Continuous Time Linear Equalizer)33Aと、基準アンプ33Bとを含んで構成され、差動アンプとして動作する。
【0048】
CTLE33Aは、図3に示すように、パターン信号用と反転パターン信号用の2つのCTLE33A1,33A2を有する。
【0049】
CTLE33A(33A1,33A2)は、自動補正時にパターン送信部2から入力されるパターン信号と反転パターン信号による差動入力に対し、高域(ピーク周波数)のゲインを維持したまま低域のゲインを下げて出力する。これにより、例えばプリント基板を被測定物とし、このプリント基板の線路を通過して減衰した高周波成分と同等に低域も減衰させて総合の周波数特性を平坦にすることができる。また、CTLE33Aは、オフセット調整部31とエラー測定部35との間に配置して接続した構成により、どんな直流でも受けることができる。
【0050】
基準アンプ33Bは、図3に示すように、パターン信号用と反転パターン信号用の2つの基準アンプ33B1,33B2を有する。
【0051】
基準アンプ33B(33B1,33B2)は、平坦な周波数特性を有し、入力される信号(パターン信号、反転パターン信号)を所定のゲイン値で増幅して出力する。
【0052】
図3に示すように、CTLE33A1と基準アンプ33B1は、入力側の切替器33aと出力側の切替器33bとの間に並列接続される。同様に、CTLE22A2と基準アンプ33B2は、入力側の切替部33cと出力側の切替器33dとの間に並列接続される。
【0053】
そして、4つの切替器33a,33b,33c,33dは、制御部39からの切替信号により連動して切り替わり、CTLE33A1,33A2側か、基準アンプ33B1,33B2側が選択されるように切替制御される。
【0054】
例えば、基準アンプ33B1,33B2のスレッショルドマージン測定を行う場合は、基準アンプ33B1,33B2が選択されるように切替器33a,33b,33c,33dが連動して切替制御される。また、直流ゲインテーブルを作成する場合やイコライザ33のイコライザゲイン値を0dB又はNdBに設定したときの制御電圧Vcを算出する場合には、CTLE33A1,33A2が選択されるように切替器33a,33b,33c,33dが連動して切替制御される。
【0055】
なお、図3では、4つの切替器33a,33b,33c,33dによりCTLE33A1,33A2側か、基準アンプ33B1,33B2側に選択的に切り替える構成として説明したが、この構成に限定されるものではない。より具体的には、CTLE33A1,33A2と基準アンプ33B1,33B2は、それぞれ自身を構成するトランジスタに対し、制御部39の制御により不図示の電源回路から駆動電源信号(電圧信号又は電流信号)が供給される電源端子を備える。そして、不図示の電源回路から駆動電源信号がCTLE33A1,33A2の電源端子に供給されると、CTLE33A1,33A2が電源オンして選択された状態となる。これに対し、不図示の電源回路から駆動電源信号が基準アンプ33B1,33B2の電源端子に供給されると、基準アンプ33B1,33B2が電源オンして選択された状態となる。
【0056】
出力側直流検波部34は、イコライザ33の出力側に接続される抵抗によるモニタ端子を備え、自動補正モードによりイコライザ33の自動補正を行うときに必要不可欠な構成であり、イコライザ33の出力側の直流電圧を検波する出力側第1直流検波器34aと出力側第2直流検波器34bを有する。
【0057】
出力側第1直流検波器34aは、イコライザ33から出力されるパターン信号の直流成分を検出し、検出した直流成分をモニタ信号として制御部39に出力する。
【0058】
出力側第2直流検波器34bは、イコライザ33から出力される反転パターン信号の直流成分を検出し、検出した直流成分をモニタ信号として制御部39に出力する。
【0059】
エラー測定部35は、自動補正モードのときに、パターン受信部3がパターン送信部2から受信したパターン信号(反転パターン信号)と設定閾値(直流閾値)とを比較し、設定閾値以上のパターン信号(反転パターン信号)を1と判定し、設定閾値以下のパターン信号(反転パターン信号)を0と判定してエラーを測定する。また、エラー測定部35は、測定モードのときに、パターン送信部2からパターン信号を被測定物に入力し、このパターン信号の入力に伴って被測定物からパターン受信部3が受信したパターン信号と、被測定物に入力したパターン信号との比較によってエラーを判定し、ビット誤り率を測定する。
【0060】
操作部36は、ユーザによって操作される例えばキー、スイッチ、ボタン、ソフトキーなどで構成され、装置の起動や停止の指示、自動補正モードと測定モードの選択設定、自動補正モードにおけるイコライザ33の自動補正に関わる各種設定(オフセット電圧Vi_DCの設定、測定周波数fc,fc2の設定など)や測定モードにおける被測定物の測定に関わる各種設定を行う際にユーザにより操作される。
【0061】
記憶部37は、イコライザ33の自動補正モード時に作成された直流ゲインテーブル、自動補正モード時に使用される計算式、被測定物のビット誤り率の測定結果などを記憶する。
【0062】
表示部38は、例えば液晶表示器などで構成され、自動補正モード時のイコライザ33の自動補正に関わる設定画面や測定結果、測定モード時の被測定物の測定に関わる設定画面や測定結果などを表示する。
【0063】
制御部39は、パターン送信部2とパターン受信部3の各部を統括制御するもので、操作部36からの指示による装置の起動や停止の制御、パルスパターン発生部21へのパターン発生指令の出力制御、オフセット調整部31(31A,31B)へのオフセット設定指令の出力制御、イコライザ33のCTLE33(33A1,33A2)に入力される制御電圧Vcの可変制御、直流ゲインテーブルの作成および記憶部37への保存、基準アンプ33B(33B1,33B2)のスレッショルドマージン測定の制御、イコライザゲイン値EQを0dB又はNdBに設定したときのスレッショルドマージン測定の制御、表示部38への設定画面や測定結果の表示制御などを行う。
【0064】
次に、上記構成による誤り率測定装置1を用いたイコライザ33の自動補正方法について図4図7のフローチャートを参照しながら説明する。
【0065】
[直流ゲインテーブルの作成]
オフセット調整部31Aのポートpの入力直流電圧をVip_DC、出力直流電圧をVop_DCとし、オフセット調整部31Bのポートnの入力直流電圧をVin_DC、出力直流電圧をVon_DCとすると、パターン信号と反転パターン信号の入力が無い状態で、直流電圧によるオフセット電圧Vi_DCを与えれば、(Vop_DC−Von_DC)/(Vip_DC−Vin_DC)から直流における差動ゲインが求められる。切替器33a,33b,33c,33dをCTLE33A側に切り替えた状態で、制御部39の制御によりイコライザ33のCTLE33Aに入力される制御電圧Vcを可変すると、直流の差動ゲインが変動する。このとき、ある差動ゲインとなるような制御電圧Vcを測定から探索し、直流ゲインと制御電圧Vcとの関係を示す直流ゲインテーブルを作成する。
【0066】
すなわち、切替器33a,33b,33c,33dをCTLE33A側に切り替えた状態で、図4のフローチャートに示すように、オフセット調整部31A,31Bに所定のオフセット電圧Vi_DCを与える(S1)。このオフセット電圧Vi_DCは、全自動で簡易にCTLE33Aの特性を設定するための情報を得ることを目的として、予め設定された代表値(例えば100mV)とするのが好ましい。次に、調整する直流ゲインNdBを設定する(S2)。続いて、制御電圧Vcを所定ステップで可変して調整し(S3)、可変される制御電圧Vc毎に測定した直流ゲインと、設定した直流ゲインとを比較する(S4)。測定した直流ゲインが設定した直流ゲインになるまで制御電圧Vcを所定ステップで可変して調整する。そして、測定した直流ゲインが設定した直流ゲインになると(S4−Y)、直流ゲインテーブルが完成したか否かを判定し(S5)、直流ゲインテーブルが完成していないと判断すると(S5−N)、S2に戻り、調整する直流ゲインNdBを変えて設定し、直流ゲインテーブルが完成するまでS2〜S5の処理を繰り返す。
【0067】
なお、作成する直流ゲインテーブルの範囲は、(1)直流ゲインの規格による規定範囲(例えば0dB〜−12dB)、(2)デバイスの限界範囲であるCTLE33A(33A1,33A2)の制御電圧Vcの可変最大幅としている。また、作成された直流ゲインテーブルは、記憶部37に保存される。
【0068】
このように、図4のフローチャートに従って、所望の直流ゲインとなる制御電圧Vcを探しながら、直流ゲインテーブルを作成する。これにより、低域増幅率と制御電圧Vcの関係が自己補正される。
【0069】
[基準アンプのスレッショルドマージン測定]
切替器33a,33b,33c,33dを基準アンプ33B側に切り替えた状態で、エラー測定部35での01パターンにより基準アンプ33B(33B1,33B2)のスレッショルドマージン測定を行う。オフセット電圧Vi_DCを上げていき、エラーが0となる上限限界Vth_Hを測定する。同様に、オフセット電圧Vi_DCを下げていき、エラーが0となる下限限界Vth_Lを測定する。そして、上限限界Vth_Hと下限限界Vth_Lの差を基準アンプ33B(33B1,33B2)のスレッショルドマージンとする。
【0070】
ここでは、平坦な周波数特性を有する基準アンプ33Bの特性を測る。基準アンプ33Bがピークを持つ周波数を第1の測定周波数fc、ピークとなる周波数以下となる周波数を第2の測定周波数fcとして2点でスレッショルドマージンを測定し、この結果をVth_ref(fc),Vth_ref(fc2)とする。
【0071】
すなわち、切替器33a,33b,33c,33dを基準アンプ33B側に切り替えた状態で、図5のフローチャートに示すように、操作部36を操作して測定周波数fcを設定する(S11)。そして、設定した測定周波数fcにおけるスレッショルドマージン測定を行い、図8のP1におけるスレッショルドマージンVth_ref(fc)を測定する(S12)。次に、操作部36を操作して測定周波数fcと異なる測定周波数fc2(例えば測定周波数fcの1/2の周波数)を設定する(S13)。そして、設定した測定周波数fc2におけるスレッショルドマージン測定を行い、図8のP2におけるスレッショルドマージンVth_ref(fc2)を測定する(S14)。
【0072】
なお、測定周波数fcは、ピークを持つ周波数であって、規格によって決まるものであり、例えば28Gbpsであれば14GHzが測定周波数fcとして設定される。また、測定周波数fcと異なる測定周波数fc2は、測定周波数fcよりも低い周波数で周波数特性の平坦性が保たれる周波数であればよい。
【0073】
また、この基準アンプ33Bのスレッショルドマージン測定は必要不可欠なものではなく、省略することもできる。
【0074】
このように、図5のフローチャートに従って、基準アンプ33Bのスレッショルドマージン測定を2つの周波数ポイントで01パターンを用いて行う。
【0075】
[イコライザゲイン値EQを0dBに設定したときの補正]
イコライザ33は、切替器33a,33b,33c,33dをCTLE33A側に切り替えた状態で、CTLE33Aに入力される制御電圧Vcを可変することで低域ゲインを変化させることが可能である。そこで、まず、作成した直流ゲインテーブルを参照し、適切な直流ゲインとなる制御電圧Vcを初期値として選択する。そして、この時のイコライザ33の周波数特性を測る。
【0076】
すなわち、切替器33a,33b,33c,33dをCTLE33A側に切り替えた状態で、基準アンプ33Bの測定周波数と同じ2点の周波数fc,fc2でスレッショルドマージンを測定する。その結果を図8のP3におけるスレッショルドマージンVth_eq0(fc)、P4におけるスレッショルドマージンVth_eq0(fc2)とする。
【0077】
そして、Vth_eq0(fc)/Vth_eq0(fc2)とVth_ref(fc)/Vth_ref(fc2)を計算し、この計算結果の差が一番小さくなる制御電圧Vcを探索する。
【0078】
なお、上述した基準アンプ33Bのスレッショルドマージン測定を省略した場合は、Vth_ref(fc)/Vth_ref(fc2)=1に設定して処理を行う。
【0079】
すなわち、切替器33a,33b,33c,33dをCTLE33A側に切り替えた状態で、図6のフローチャートに示すように、初期値となる制御電圧Vcを直流ゲインテーブルから選択して設定する(S21)。続いて、スレッショルドマージン測定を行い、スレッショルドマージンVth_eq0(fc)を測定する(S22)。また、スレッショルドマージンVth_eq0(fc2)を測定する(S23)。続いて、測定した結果からA=Vth_eq0(fc)/Vth_eq0(fc2)とB=Vth_ref(fc)/Vth_ref(fc2)を計算する(S24)。そして、A−Bが最小か否かを判別し(S35)、A−Bが最小であれば(S25−Y)、この時の制御電圧Vcを0dB時の制御電圧Vcとする(S26)。
【0080】
このように、図6のフローチャートに従って、基準アンプ33Bのスレッショルドマージンの比とイコライザゲイン値EQを0dBにしたときのスレッショルドマージンの比が同じになるような制御電圧Vcを探すことで、イコライザ44の0dB基準を決める。
【0081】
[イコライザゲイン値EQをNdBに設定したときの補正]
切替器33a,33b,33c,33dをCTLE33A側に切り替えた状態において、イコライザ33の通過後はスレッショルトマージンVthがADC倍(イコライザ44の直流ゲイン倍)されたような動作をする。このため、スレッショルドマージンVthにADC(イコライザ44の直流ゲイン)を掛けた値を計算する。これを補正スレッショルドマージンとする。
【0082】
図9のP5におけるイコライザゲイン値EQがNdBの時の補正スレッショルドマージンVth_eqN_FIX(fc)は、Vth_eqN(fc)×ADC(VcN)となる。
【0083】
ここで、特に、図9のP6におけるイコライザゲイン値EQが0dBの時の補正スレッショルドマージVth_eq0_FIX(fc)は、Vth_eq0(fc)×ADC(Vc0)と表現することにする。
【0084】
この時のイコライザゲイン値EQは、図9におけるd1とd2との比、(ADC(VcN)/ADC(Vc0))/(Vth_eqN_FIX(fc)/Vth_eq0_FIX(fc))となる。
【0085】
そして、上記の式をdBに換算すると、イコライザゲイン値EQは、(ADC(VcN)[dB]−ADC(Vc0)[dB]−(Vth_eqN_FIX(fc)[dB]−Vth_eq0_FIX(fc)[dB]となる。
【0086】
すなわち、図7のフローチャートに示すように、まず、イコライザゲイン値EQが0dBの時の補正スレッショルドマージンVth_eq0_FIX(fc)=Vth_eq0(fc)×ADC(Vc0)を算出する(S31)。なお、ADC(Vc0)は0dB時のVcのときの直流ゲインである。
【0087】
次に、直流ゲインテーブルから直流ゲインADC(VcN)と制御電圧VcNを設定する(S32)。そして、スレッショルドマージン測定を行い、イコライザゲイン値EQがNdBの時のスレッショルドマージンVth_eqN(fc)を測定する(S33)。
【0088】
そして、イコライザゲイン値EQがNdBの時の補正スレッショルドマージンVth_eqN_FIX(fc)=Vth_eqN(fc)×ADC(VcN)を計算するとともに、その時のイコライザゲイン値EQ=(ADC(VcN)/ADC(Vc0))/(Vth_eqN_FIX(fc)/Vth_eq0_FIX(fc))を計算する(S34)。
【0089】
そして、イコライザゲイン値EQ=NdBか否かを判別し(S35)、イコライザゲイン値EQ=NdBであれば(S35−Y)、この時のVcNをNdB時の制御電圧Vcとする。なお、本例において、イコライザゲイン値EQ=NdBとは、イコライザゲイン値EQがNdBと等しいか、許容範囲(例えば±0.25dB)内で最も近い値を意味するものである。
【0090】
このように、切替器33a,33b,33c,33dをCTLE33A側に切り替えた状態で、図7のフローチャートに従って、スレッショルドマージンを測りながら、0dBの時の低域増幅率と高域増幅率とNdB時の低域増幅率と高域増幅率の差を計算し、所望の低域増幅率と高域増幅率の比率となるようなイコライザゲイン値EQを探し、EQ=NdBとなった時のVcNをNdB時の制御電圧Vcとする。
【0091】
例えばイコライザゲイン値EQ=−6dBを探そうとする場合は、作成された直流ゲインテーブルからADC=−6dB付近の制御電圧Vcを複数選択してスレッショルドマージンを測定する。例えば制御電圧Vcとして−620mVと−650mVを直流ゲインテーブルから選択し、それぞれのスレッショルドマージンを測定する。そして、測定したスレッショルドマージンとイコライザゲイン値EQを0dB及び−6dBに設定したときの補正スレッショルドマージンを元に上述したイコライザゲイン値EQの計算式を用いた計算結果がADC=−6dBに一番近づく制御電圧Vcを選ぶ手法により補正を行う。制御電圧Vcとして−620mVと−650mVを選択した場合には、上述した計算式による結果、制御電圧Vc=−620mV時のイコライザゲイン値EQ=−5.86dB、制御電圧Vc=−650mV時のイコライザゲイン値EQ=−6.7dBとなり、−6dBに近い−5.86dBの制御電圧Vc=−620mVを選んでイコライザ33の自動補正を行う。
【0092】
以上説明したように、本実施の形態の誤り率測定装置によれば、CTLE33Aを含むイコライザ33がオフセット調整部31とエラー測定部35との間に接続されて装置本体に組み込まれた構成により、CTLE33Aがどんな直流でも受けて高域(ピーク周波数)のゲインを維持したまま低域のゲインを下げて出力し、高周波成分の減衰の影響を受けずに誤り率測定を行うことが可能になる。
【0093】
しかも、本実施の形態の誤り率測定装置では、イコライザ33を装置本体に組み込んだ状態でイコライザ33自身の性能を知ることができ、例えばベクトルネットワークアナライザなどの測定器を別途必要としないので、被測定物のビット誤り率の測定を行うにあたってシステム構成の簡素化を図ることができる。
【0094】
さらに、経年変化や温度によってイコライザ33の性能が変動した場合でも、イコライザ33の性能のばらつきについても知ることができ、イコライザ33の性能変動やばらつきに対して自己補正を行うことができる。
【0095】
以上、本発明に係る誤り率測定装置および該装置の自動補正方法の最良の形態について説明したが、この形態による記述及び図面により本発明が限定されることはない。すなわち、この形態に基づいて当業者等によりなされる他の形態、実施例及び運用技術などはすべて本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0096】
1 誤り率測定装置
2 パターン送信部
3 パターン受信部
3a 第1の入力端子
3b 第2の入力端子
21 パルスパターン発生部
21a パルスパターン指定部
21b パルスパターン出力部
31(31A,31B) オフセット調整部
31a 入力端子
31b コンデンサ
31c オフセット電圧設定部
31d 直流電圧発生器
31e 第1のコイル
31f 第2のコイル
31g 合成回路
31h 出力端子
31i 周波数特性補償回路
32 入力側直流検波部
32a 入力側第1直流検波器
32b 入力側第2直流検波器
33 イコライザ
33A(33A1,33A2) CTLE
33B(33B1,33B2) 基準アンプ
33a,33b,33c,33d 切替器
34 出力側直流検波部
34a 出力側第1直流検波器
34b 出力側第2直流検波器
35 エラー測定部
36 操作部
37 記憶部
38 表示部
39 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9