【解決手段】互いに非同期の無線通信を行う複数のグループ11,12,13が定義される無線通信システム1に、複数の無線通信子機である照明装置のうち自機と同一のグループに含まれる無線通信子機との間でグループ内無線通信を行う複数の無線通信親機3,4,5と、複数のグループ11,12,13のうちのグループごとのブロードキャストにより、当該ブロードキャストの対象となったグループに含まれる無線通信親機および無線通信子機に対して通信情報919を送信する端末装置9とを設ける。無線通信親機は、端末装置9から送信された通信情報919を受信したときに、グループ内無線通信を用いて、自機と同一のグループに割り当てられている無線通信子機に向けて、当該通信情報919を代理送信する無線通信システム。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付の図面を参照しつつ、詳細に説明する。ただし、以下の説明において特に断らない限り、方向や向きに関する記述は、当該説明の便宜上、図面に対応するものであり、例えば実施品、製品または権利範囲等を限定するものではない。
【0020】
また、以下の説明において、ユニキャストとは、宛先を1箇所に限定して送信する送信形態を指すものとする。また、ブロードキャストとは、宛先を限定せずに送信する送信形態を指すものとする。本実施の形態では、送信形態がユニキャストであるかブロードキャストであるかの区別は、送信側の装置において、送信する情報に、その旨を示すものとする。具体的には、ブロードキャストで送信する場合は、送信する情報に付加する送信先を「0xFFFF」とすることによりブロードキャストであることを示す。そして、当該送信先が「0xFFFF」以外の場合(例えば、個別の宛先アドレス)は、ユニキャストを示すものとする。
【0021】
<1. 実施の形態>
図1は、無線通信システム1を示す図である。無線通信システム1は、端末装置9と、3つのグループ11,12,13にグループ分けされた装置群とを備えている。無線通信システム1は、システム内の複数の装置間で通信情報919を互いに送受信するシステムとして構成されている。
【0022】
ここで、通信情報919とは、当該通信情報919を作成した装置から他の装置に向けて送信される(あるいは送信された)情報である。すなわち、通信情報919を記憶している装置にとって、当該通信情報919は、送信する予定の情報または受信した情報、あるいは、その両方である。本実施の形態では、無線通信システム1において利用される様々な情報のうち、当該情報を作成した装置のみで用いる情報は、通信情報919に含めないものとする。ただし、無線通信システム1において、通信情報919以外の名称の情報が送受信される場合もある。すなわち、以下の説明において、複数の装置間で送受信される情報は、通信情報919に限定されるものではない。
【0023】
また、通信情報919の情報としての中身や目的、送受信における形態等は特に断らない限り、特定のものに限定されるものではない。したがって、通信情報919は、何らかの制御を意図した制御コマンドを含む情報や、ユニキャストに対する応答情報(ACK)のような単なる通知情報なども含まれる。そして、通信情報919は、ユニキャストにより送信される場合もあれば、ブロードキャストにより送信される場合もある。
【0024】
また、以下の説明では、通信情報919のうち、グループ11,12,13のうちの複数のグループにまたがって、複数の装置に受信させることを意図して作成される送信対象の情報を含む通信情報919を、「多グループ宛の通信情報919」と称し、他の通信情報919と区別する場合がある。
【0025】
なお、本実施の形態における無線通信システム1では、多グループ宛の通信情報919には、多グループ宛の通信情報919であることを示す情報が付加され、区別されるものとする。ただし、例えば、端末装置9が多グループ宛の通信情報919以外の通信情報919をブロードキャストにより送信することはないと前提してもよい。その場合は、端末装置9からブロードキャストによりされた通信情報919を、多グループ宛の通信情報919であると判定することができる。
【0026】
図1に示すように、無線通信システム1において、各グループ11,12,13には、複数の装置が所属している。無線通信システム1のレイアウトに関する設計者は、各装置の設置場所や数、機能、使用態様、無線通信の状態などに応じて、予め、どの装置をどのグループに割り当てるかを決定する。
【0027】
ただし、無線通信システム1において、各装置は、グループ11,12,13のうちのいずれか1つにのみ所属する。したがって、グループ11,12,13のうちの複数のグループにまたがって所属する装置は存在しない。また、端末装置9は、いずれのグループ11,12,13にも所属していない。
【0028】
図1において二点鎖線で示すエリア10は、端末装置9から送信される無線電波の到達可能エリアを概念的に示している。
【0029】
詳細は後述するが、本実施の形態における端末装置9は、携帯型の装置として構成されており、容易に移動する。したがって、エリア10の位置は、端末装置9の移動に伴って容易に移動する。すなわち、利用者は、端末装置9を所持しつつ、移動しながら、端末装置9から通信情報919を送信させることにより、すべての照明装置20,21,22,23,24,25,26,27,28に当該通信情報919を受信させることが可能である。
【0030】
しかし、本発明は、端末装置9を移動させることなく、端末装置9から無線送信される通信情報919を、すべての照明装置20,21,22,23,24,25,26,27,28に受信させることを目的としている。言い換えれば、利用者が端末装置9を所持した状態で歩き回ることなく、端末装置9を一回操作するだけで、所望の通信情報919をすべての照明装置20,21,22,23,24,25,26,27,28に受信させることを目的とする。したがって、以下の説明では、端末装置9の位置は、原則として、変化しないものとして説明する。具体的には、端末装置9から送信された無線電波は、無線通信親機3,4および照明装置20,21,22,24,25には届くものの、無線通信親機5および照明装置23,26,27,28には届かない場合を例に説明する。
【0031】
詳細は後述するが、無線通信システム1が備える照明装置20,21,22,23,24,25,26,27,28は、いずれも無線通信子機を構成している。したがって、
図1に示すエリア10の例では、端末装置9から送信される無線電波が届く位置に設置されている照明装置20,21,22,24,25は、端末装置9との間で、直接、無線通信が可能である。一方、端末装置9から送信される無線電波が届かない位置に設置されている照明装置23,26,27,28は、端末装置9との間で、直接、無線通信をすることはできない。
【0032】
なお、
図1では、図示の便宜上、エリア10を「円」として示しているが、無線電波の到達可能エリアは必ずしも円形とは限らない。また、無線電波の状態は経時的に変化することもあるため、現実のエリア10の形状や位置は一定しない。
【0033】
無線通信システム1が備える無線通信親機3および照明装置20,21,22は、グループ11に割り当てられている。また、無線通信親機4および照明装置23,24,25は、グループ12に割り当てられている。さらに、無線通信親機5および照明装置26,27,28は、グループ13に割り当てられている。ただし、各グループを構成する無線通信親機および照明装置の数は、
図1に示す例に限定されるものではない。
【0034】
無線通信システム1において定義される各グループは、上記のとおり、1つ以上の無線通信親機と1つ以上の無線通信子機とによって構成される。すなわち、無線通信システム1は、それぞれが無線通信親機と無線通信子機とを含む複数のグループ11,12,13を備えている。ただし、無線通信システム1が備えるグループの数は、3つに限定されるものではない。
【0035】
なお、以下の説明において、「代理送信」とは、端末装置9が照明装置20,21,22,23,24,25,26,27,28に向けて送信した通信情報919を、無線通信親機3,4,5が端末装置9に代わって送信することを意味するものとする。
図1に示す例では、照明装置23がエリア10の範囲外に存在しているために、照明装置23は端末装置9がブロードキャストにより送信した通信情報919を受信することができない。このような場合に、例えば、同じ通信情報919を受信している無線通信親機4が、端末装置9に代わって、当該通信情報919を照明装置23に向けて送信する場合を「代理送信」と称する。
【0036】
また、以下の説明において、「救済送信」とは、端末装置9が無線通信親機3,4,5のいずれかに向けて送信した通信情報919を、当該無線通信親機3,4,5が受信できなかった場合を想定して、他の無線通信親機3,4,5が救済のために送信することを意味するものとする。
図1に示す例では、無線通信親機5がエリア10の範囲外に存在しているために、無線通信親機5は端末装置9が無線通信親機5に向けて送信した通信情報919を受信することができない。このような場合に、例えば、同じ通信情報919を受信している無線通信親機4が、無線通信親機5を救済するために、当該通信情報919を無線通信親機5に向けて送信する場合を「救済送信」と称する。
【0037】
すなわち、本実施の形態において、「代理送信」および「救済送信」は、送信元から送信された通信情報919を他の装置が中継する送信であって、いわゆる「転送送信」の一形態である。また、上記のとおり、本実施の形態における「代理送信」および「救済送信」は、いずれも無線通信親機3,4,5によって実行される送信である。
【0038】
図2は、照明装置20のブロック図である。
図2に示すように、照明装置20は、CPU200、記憶装置201、操作部202、表示部203、照明部204および無線通信部205を備えている。
【0039】
なお、本実施の形態における無線通信システム1において、照明装置20,21,22,23,24,25,26,27,28は、いずれもハードウェア構成が同一の装置として説明する。したがって、以下の説明では、特に断らない限り、照明装置20,21,22,23,24,25,26,27,28の構成および機能を、照明装置20を例にして説明する。すなわち、図示を省略するが、照明装置21,22,23,24,25,26,27,28も、照明装置20と同様に、それぞれがCPU200、記憶装置201、操作部202、表示部203、照明部204および無線通信部205を備えている。また、以下の説明では、個々の照明装置20,21,22,23,24,25,26,27,28を、互いに区別する必要がない場合には、単に「照明装置」と符号を付けずに称する場合がある。
【0040】
CPU200は、記憶装置201に格納されているプログラム206を読み取りつつ実行し、各種データの演算や制御信号の生成等を行う。これにより、CPU200は、照明装置20が備える各構成を制御するとともに、各種データを演算し作成する機能を有している。すなわち、照明装置20は、一般的なコンピュータとして構成されている。照明装置21,22,23,24,25,26,27,28も、照明装置20と同様に、一般的なコンピュータとして構成されている。
【0041】
記憶装置201は、照明装置20において各種データを記憶する機能を提供する。言い換えれば、記憶装置201が照明装置20において電子的に固定された情報を保存する。
【0042】
記憶装置201としては、CPU200の一時的なワーキングエリアとして使用されるRAMやバッファ、読み取り専用のROM、不揮発性のメモリ(例えばNANDメモリなど)等が該当する。
図2においては、記憶装置201を、あたかも1つの構造物であるかのように図示している。しかし、通常、記憶装置201は、上記例示した各種装置(あるいは媒体)のうち、必要に応じて採用される複数種類の装置から構成されるものである。すなわち、記憶装置201は、データを記憶する機能を有する装置群の総称である。
【0043】
また、現実のCPU200は高速にアクセス可能なRAMを内部に備えた電子回路である。しかし、このようなCPU200が備える記憶装置も、説明の都合上、記憶装置201に含めて説明する。すなわち、一時的にCPU200自体が記憶するデータも、記憶装置201が記憶するとして説明する。
図2に示すように、記憶装置201は、プログラム206や設定情報207、通信情報919などを記憶するために使用される。
【0044】
図2に示す設定情報207は、照明装置20が無線通信を行う上で必要となる様々な情報の総称である。具体的には、設定情報207は、グループ識別情報、自機識別情報、チャネル番号、通信速度、SFD(Start Frame Delimiter)値などの情報を含む。
【0045】
本実施の形態における無線通信システム1は、個々のグループを識別するグループ識別情報として、PANID(Personal Area Network ID)を用いる。設定情報207に含まれるPANIDは、当該設定情報207を記憶している照明装置が所属するグループを示す。すなわち、同一のPANIDを設定情報207として記憶している装置は互いに同一のグループに所属し、互いに異なるPANIDを設定情報207として記憶している装置は互いに異なるグループに所属する。
【0046】
したがって、具体例では、照明装置20,21,22に記憶されている設定情報207に含まれるPANIDは互いに同一である。また、照明装置23,24,25に記憶されている設定情報207に含まれるPANIDは互いに同一である。また、照明装置26,27,28に記憶されている設定情報207に含まれるPANIDは互いに同一である。さらに、照明装置20,23,26に記憶されている設定情報207に含まれるPANIDは互いに異なる。なお、PANIDの代わりに、各グループに所属する無線通信親機3,4,5のアドレスなど、各グループを識別可能なユニークな値であれば、どのような値をグループを識別するための情報として採用してもよい。
【0047】
また、無線通信システム1は、設定情報207に含まれる自機識別情報として、当該設定情報207を記憶している照明装置のアドレスを使用する。したがって、例えば、照明装置20は、受信した通信情報919に含まれる送信先と、予め記憶されている設定情報207に含まれる自機識別情報とを照合することにより、当該通信情報919が自機宛であるか否かを判定することができる。
【0048】
無線通信システム1では、各グループ11,12,13内における無線通信は、グループ毎の専用のチャネル(特定の周波数)を使用して行われる。すなわち、各グループ11,12,13は、他のグループとは互いに非同期で無線通信を行っており、通常時に、異なるグループ間での無線通信の混線が生じないように設計されている。
【0049】
すなわち、照明装置20,21,22の無線通信部205は、無線通信親機3との間で無線通信を行う。また、照明装置23,24,25の無線通信部205は、無線通信親機4との間で無線通信を行う。また、照明装置26,27,28の無線通信部205は、無線通信親機5との間で無線通信を行う。これにより、照明装置20,21,22,23,24,25,26,27,28は、自機と同一のグループにおける無線通信親機に対する無線通信子機としての機能を有する。
【0050】
設定情報207に含まれるチャネル番号は、グループ11,12,13においてそれぞれ使用されるグループ内無線通信のチャネルの番号である。チャネル番号は、グループ11,12,13において、互いに異なっており、重複しないように設定されている。
【0051】
すなわち、照明装置20,21,22に記憶されているチャネル番号は、グループ11において使用されるグループ内無線通信のチャネルの番号である。また、照明装置23,24,25に記憶されているチャネル番号は、グループ12において使用されるグループ内無線通信のチャネルの番号である。また、照明装置26,27,28に記憶されているチャネル番号は、グループ13において使用されるグループ内無線通信のチャネルの番号である。
【0052】
チャネルの番号は、グループ内無線通信に使用する無線周波数に対応する。したがって、チャネルの番号が異なるグループ内無線通信は互いに非同期の無線通信となる。無線通信システム1では、複数のグループ11,12,13が定義され、それぞれに異なるチャネル番号が割り当てられている。したがって、複数のグループ11,12,13は、互いに非同期の無線通信を行う。
【0053】
位置的に近接するグループに、近い無線周波数を割り当てると、無線通信システム1における誤動作の原因となる。一方で、割り当て可能な無線周波数には限界がある。したがって、どのグループにどのチャネルの番号を割り当てるかは、グループの配置(上下階の配置も含む。)に応じて、無線通信システム1のレイアウトに関する設計者によって、チャネルプランとして決定される。
【0054】
設定情報207に含まれる通信速度は、当該通信速度を記憶している照明装置が所属するグループにおけるグループ内無線通信の通信速度である。無線通信システム1は、グループごとに通信速度を選択可能であり、選択された通信速度が、設定情報207に含められる。本実施の形態における無線通信システム1では、通信速度として、100kbps(高速)と50kbps(低速)とを選択可能であるとする。また、通信速度の初期値は「高速」とする。ただし、無線通信システム1において用いられる無線通信の通信速度は、100kbpsまたは50kbpsに限定されるものではない。
【0055】
設定情報207に含まれるSFD値は、各グループ11,12,13毎に設定される値である。各グループ11,12,13毎に設定されたSFD値は、送受信されるグループ内無線通信に応じて通信情報919における所定の領域(比較的先頭に近い領域が好ましい。)に格納される。
【0056】
すでに説明したように、位置的に近接する複数のグループ(無線通信システム1以外の無線通信システムにおいて定義されるグループも含む。)に近い無線周波数を割り当てると、無線通信の衝突が生じる。したがって、無線通信システム1においては、チャネルプランを綿密に設定することが肝要である。しかし、無線周波数には制限があるため、多くのグループが定義される場合、どうしても位置的に近接する複数のグループに近い無線周波数を割り当てなければならなくなる場合が生じうる。
【0057】
このような場合であっても、近い無線周波数を使用するそれぞれのグループに、互いに異なるSFD値を設定しておけば、通信情報919のSFD値が格納されている領域の信号パターンによって、当該通信情報919がどのグループ内無線通信において送受信されるべき情報であるかを、当該通信情報919の受信中に判定することができる。
【0058】
例えば、グループ11とグループ12に同じ無線周波数(チャネル番号)を割り当てた場合を例に説明する。このような状況で、グループ11に所属する無線通信親機3が通信情報919を送信すると、同じチャネル番号を使用しているグループ12に所属する照明装置23が当該通信情報919の受信を誤って開始する。しかし、当該通信情報919のSFD値が格納されている領域を受信すれば、当該領域における信号パターンはグループ12に設定されているSFD値による信号パターンと異なるパターンとなる。したがって、当該領域を受信したときに、照明装置23は当該通信情報919がグループ12におけるグループ内無線通信において送受信される通信情報919でないと判定することができ、受信を中断することができる。
【0059】
このように、無線通信システム1は、チャネルプランを策定することにより、無線通信の衝突を抑制するとともに、各グループ11,12,13毎に、互いに異なるSFD値を設定することにより、さらに無線通信の衝突を抑制することができる。
【0060】
記憶装置201に記憶される設定情報207は、無線通信システム1の運用が開始されるときまでに、所定の操作により、準備される情報である。ただし、設定情報207(特に、通信速度)は、運用開始後も必要に応じて、CPU200により更新される場合がある。
【0061】
操作部202は、照明装置20に対して作業者などが指示を入力するために操作するハードウェアである。本実施の形態における操作部202は、いわゆる電源ボタンである。照明装置20に設けられる電源ボタン(操作部202)は、出荷時に「切」の状態となっている。電源ボタンは、通常は、設置時に作業者によって一度だけ「入」に操作された後は、そのまま「入」の状態で運用される。ただし、作業者が照明装置20を取り外すときや、付け替えなどを行う場合には、操作ボタンを「切」に操作してもよい。また、操作部202は、電源ボタンに限定されるものではなく、例えば、各種キーやボタン類、ディップスイッチなどを含んでいてもよい。
【0062】
表示部203は、各種データを表示することにより作業者等に対して当該各種データを出力する機能を有するハードウェアである。照明装置20は、照明器具であるため、通常の運用状態では、利用者に何らかの情報を提供する必要性に乏しい装置である。したがって、照明装置20の表示部203としては、比較的簡易なデバイスが好ましい。このようなデバイスとして、例えば、小型のランプやLEDなどが該当するが、このようなデバイスに限定されるものではない。
【0063】
照明部204は、詳細は図示しないが、光源となる発光ダイオードと、当該発光ダイオードの明るさを調整する調整回路とを備えた電子回路である。照明部204は、発光ダイオードを発光させることにより周囲を照明する。調整回路は、CPU200からの制御信号により、発光ダイオードへの電力供給量を調整して発光ダイオードの明るさを調整する(すなわち、調光が実現される。)。なお、照明部204の光源は、発光ダイオードに限定されるものではなく、点灯または消灯のみを明るさとして制御可能な蛍光灯や白熱電球などであってもよい。
【0064】
このように、無線通信システム1は、照明装置20,21,22,23,24,25,26,27,28が、いずれも照明部204を備えている。したがって、本実施の形態における無線通信システム1は、設置された空間を照明する照明システムを構成している。
【0065】
無線通信部205は、無線による通信を行う機能を有している。すなわち、照明装置20,21,22,23,24,25,26,27,28は、いずれも無線通信部205を備えることにより、例えば、通信情報919を無線によって受信することが可能である。なお、本実施の形態では、無線通信部205が情報を送信する例については特に説明しないが、無線通信部205は情報を送信する機能も有している。
【0066】
また、無線通信部205は、CPU200からの制御信号に応じて、無線通信に使用するチャネル番号(周波数)や通信速度を切り替えることが可能である。すなわち、設定情報207に含まれているチャネル番号や通信速度を書き換えることが可能である。ただし、以下の説明では、無線通信部205におけるチャネル番号は、設置時に決定された後は、特に変更されないものとして説明する。
【0067】
以上が照明装置20,21,22,23,24,25,26,27,28の説明である。次に、無線通信親機3,4,5について説明する。
【0068】
図3は、無線通信親機3のブロック図である。
図3に示すように、無線通信親機3は、CPU30、記憶装置31、操作部32、表示部33、タイマ部34および無線通信部35を備えている。
【0069】
なお、本実施の形態における無線通信システム1において、無線通信親機3,4,5は、いずれもハードウェア構成が同一の装置として構成されている。したがって、以下の説明では、特に断らない限り、無線通信親機4,5の構成および機能を、無線通信親機3を例にして説明する。すなわち、図示を省略するが、無線通信親機4,5は、無線通信親機3と同様に、それぞれがCPU30、記憶装置31、操作部32、表示部33、タイマ部34および無線通信部35を備えている。
【0070】
CPU30は、記憶装置31に格納されているプログラム310を読み取りつつ実行し、各種データの演算や制御信号の生成等を行う。これにより、CPU30は、無線通信親機3が備える各構成を制御するとともに、各種データを演算し作成する機能を有している。すなわち、無線通信親機3は、一般的なコンピュータとして構成されている。無線通信親機4,5も、無線通信親機3と同様に、一般的なコンピュータとして構成されている。
【0071】
記憶装置31は、無線通信親機3(あるいは無線通信親機4,5)において各種データを記憶する機能を提供する。言い換えれば、記憶装置31が無線通信親機3,4,5において電子的に固定された情報を保存する。
【0072】
記憶装置31としては、CPU30の一時的なワーキングエリアとして使用されるRAMやバッファ、読み取り専用のROM、不揮発性のメモリ(例えばNANDメモリなど)、専用の読み取り装置に装着された可搬性の記憶媒体(PCカード、SDカード、USBメモリなど)等が該当する。
図3においては、記憶装置31を、あたかも1つの構造物であるかのように図示している。しかし、通常、記憶装置31は、上記例示した各種装置(あるいは媒体)のうち、必要に応じて採用される複数種類の装置から構成されるものである。すなわち、記憶装置31は、無線通信親機3,4,5において、データを記憶する機能を有する装置群の総称である。
【0073】
また、現実のCPU30は高速にアクセス可能なRAMを内部に備えた電子回路である。しかし、このようなCPU30が備える記憶装置も、説明の都合上、記憶装置31に含めて説明する。すなわち、一時的にCPU30自体が記憶するデータも、記憶装置31が記憶するとして説明する。
図3に示すように、記憶装置31は、プログラム310、管理情報311、受信履歴情報318、完了通知情報319および通信情報919などを記憶するために使用される。
【0074】
操作部32は、無線通信親機3(あるいは無線通信親機4,5)に対して作業者等が指示を入力するために操作するハードウェアである。操作部32としては、例えば、各種キーやボタン類、ディップスイッチなどが該当する。
【0075】
表示部33は、各種データを表示することにより作業者等に対して各種データを出力する機能を有するハードウェアである。無線通信親機3,4,5においては、複雑な画像や多量の文字情報などを表示する必要はない。したがって、無線通信親機3,4,5のコストに配慮し、表示部33としては、例えば、ランプやLED、簡易な液晶表示パネルなどの比較的安価なデバイスが好ましい。しかし、表示部33は、CRTや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどであってもよい。
【0076】
タイマ部34は、詳細は図示しないが、発振器等のクロック回路を備えており、時間を計測する機能を有するハードウェアである。タイマ部34は、CPU30によってセットされた時間が経過すると、その旨をCPU30に通知する。なお、タイマ部34のCPU30への通知を、以下、「救済開始タイマ通知」と称する。
【0077】
無線通信部35は、無線による通信を行う機能を有している。すなわち、無線通信親機3,4,5は、いずれも無線通信部35を備えることにより、例えば、通信情報919を無線によって送受信する。これにより、無線通信親機3,4,5は、自機と同一のグループに割り当てられた無線通信子機(照明装置)に対しては無線の親機として機能する。
【0078】
本実施の形態における無線通信親機3,4,5は、自機と同一のグループに割り当てられた照明装置に対しては、ユニキャストまたはブロードキャストを、適宜選択して、任意の通信情報919を送信することができる。
【0079】
また、無線通信部35は、CPU30からの制御信号に応じて、無線通信に使用するチャネル(周波数)や通信速度を切り替えることが可能である。
【0080】
図4は、無線通信親機3が備える機能ブロックをデータの流れとともに示す図である。
図4に示す通信制御部300および情報管理部301は、CPU30がプログラム310に従って動作することにより実現される機能ブロックである。
【0081】
管理情報311には、グループ識別情報312、チャネル情報313、速度情報314、子機データベース315、および、幇助情報316が含まれている。管理情報311は、原則として、無線通信システム1が設置されるときに、作成され、記憶される情報である。
【0082】
本実施の形態における無線通信システム1は、グループ識別情報312として、当該グループ識別情報312を記憶している無線通信親機3,4,5が所属するグループのPANIDを使用する。グループ識別情報312は、照明装置における設定情報207に含まれるPANIDと同等の情報である。したがって、無線通信親機3に記憶されているグループ識別情報312は、グループ11のPANIDである。また、無線通信親機4に記憶されているグループ識別情報312は、グループ12のPANIDである。また、無線通信親機5に記憶されているグループ識別情報312は、グループ13のPANIDである。
【0083】
チャネル情報313は、グループ11,12,13においてそれぞれ使用されるグループ内無線通信のチャネルの番号である。チャネル情報313は、グループ11,12,13において、互いに異なっており、重複しないように設定されている。
【0084】
すなわち、無線通信親機3に記憶されているチャネル情報313は、グループ11において使用されるグループ内無線通信のチャネルの番号である。また、無線通信親機4に記憶されているチャネル情報313は、グループ12において使用されるグループ内無線通信のチャネルの番号である。また、無線通信親機5に記憶されているチャネル情報313は、グループ13において使用されるグループ内無線通信のチャネルの番号である。なお、チャネル情報313は、照明装置に対する所定の操作によって予め設定情報207のチャネル番号として記憶されているものである。
【0085】
速度情報314は、当該速度情報314を記憶している無線通信親機3,4,5が所属するグループにおける無線通信の通信速度である。すでに説明したように、無線通信システム1は、グループごとに通信速度を選択可能であり、選択された通信速度(「高速」か「低速」かの区別)が、速度情報314に含められる。
【0086】
なお、速度情報314は、照明装置に対する所定の操作によって予め設定情報207の速度情報として記憶されているものである。また、グループ11,12,13において、速度情報314が更新された場合、無線通信親機3,4,5は、自機と同一のグループに所属する照明装置20,21,22,23,24,25,26,27,28に向けて、更新された速度情報314を送信する。ただし、詳細は後述する。
【0087】
子機データベース315は、個々の照明装置20,21,22,23,24,25,26,27,28に関する情報を格納する。より詳細には、無線通信親機3に記憶されている子機データベース315は、無線通信親機3が所属するグループ11に割り当てられている照明装置20,21,22に関する情報を格納する。また、無線通信親機4に記憶されている子機データベース315は、無線通信親機4が所属するグループ12に割り当てられている照明装置23,24,25に関する情報を格納する。また、無線通信親機5に記憶されている子機データベース315は、無線通信親機5が所属するグループ13に割り当てられている照明装置26,27,28に関する情報を格納する。
【0088】
すなわち、無線通信親機3,4,5は、照明装置20,21,22,23,24,25,26,27,28のうちの自機と同一のグループに割り当てられている照明装置の情報を子機データベース315として記憶している。これにより、無線通信親機3,4,5は、自機と同一のグループに割り当てられている照明装置を管理することができる。
【0089】
子機データベース315に含まれる照明装置20,21,22,23,24,25,26,27,28に関する情報とは、具体的には、照明装置20,21,22,23,24,25,26,27,28のそれぞれの識別情報や性能情報、スケジュール情報などが想定される。
【0090】
本実施の形態における無線通信システム1では、子機データベース315に含まれる識別情報として、個々の照明装置20,21,22,23,24,25,26,27,28のアドレスを用いる。したがって、無線通信親機3,4,5は、子機データベース315を参照し、当該識別情報を宛先として指定することにより、自機と同一のグループに所属するそれぞれの照明装置に向けて、任意の情報をユニキャストで送信することが可能である。
【0091】
幇助情報316は、救済送信に必要となる情報である。救済送信において救済する側の無線通信親機3,4,5に記憶される幇助情報316は、具体的には、救済送信において自機が救済する無線通信親機3,4,5のグループ識別情報312(すなわち、救済送信の宛先のPANID)と、当該グループ識別情報312で示されるグループに所属する無線通信親機3,4,5のアドレス(すなわち、救済送信の宛先アドレス)、当該グループ識別情報312で示されるグループのチャネル情報313(すなわち、救済送信に使用するチャネルの番号)と、当該グループ識別情報312で示されるグループの速度情報314(すなわち、救済送信に使用する通信速度)と、当該グループ識別情報312で示されるグループのSFD値(すなわち、救済送信する通信情報919に使用するSFD値)と、救済送信を開始するタイミングを決定するための時間情報とを含んでいる。
【0092】
ただし、無線通信システム1が備える全ての無線通信親機3,4,5が必ずしも幇助情報316を記憶しているわけではない。幇助情報316は、無線通信親機3,4,5のうち、救済送信を担う無線通信親機のみが記憶する情報である。
【0093】
本実施の形態における無線通信システム1では、運用が開始されるまでに、無線通信親機3,4,5のうち救済送信を担当する無線通信親機のための幇助情報316が作成され、該当する無線通信親機に向けて送信され記憶されるものとする。具体的には、無線通信親機3が無線通信親機4を救済し、無線通信親機4が無線通信親機5を救済するように設定されている場合を例に説明する。
【0094】
なお、救済送信において救済される側の無線通信親機3,4,5が、自機を救済する無線通信親機3,4,5に関する幇助情報316を記憶していてもよい。その場合の幇助情報316は、具体的には、救済送信において自機を救済する無線通信親機3,4,5のグループ識別情報312(救済元のPANID)、当該グループ識別情報312で示されるグループに所属する無線通信親機3,4,5のアドレス(救済元アドレス)と、当該グループ識別情報312で示されるグループのチャネル情報313と、当該グループ識別情報312で示されるグループの速度情報314と、当該グループ識別情報312で示されるグループのSFD値とである。このような幇助情報316を記憶することにより、救済される側の無線通信親機3,4,5は、自機を救済する無線通信親機3,4,5に向けて、自発的に通信情報919を送信することができる。したがって、自機を救済する無線通信親機3,4,5を介して、端末装置9との間で無線通信することが可能となる。
【0095】
管理情報311に含まれるSFD値317は、当該管理情報311に含まれるグループ識別情報312で示されるグループのSFD値である。すなわち、自機が所属するグループにおいて送受信する通信情報919に付加するSFD値である。
【0096】
受信履歴情報318は、情報管理部301により作成される情報であり、これまでに受信した通信情報919を記録する情報である。詳細は後述するが、受信履歴情報318は、同じ通信情報919が重複して受信されたか否かを判定するために参照される。
【0097】
完了通知情報319とは、情報管理部301により作成され、無線通信部35を介して、端末装置9に向けて送信される情報である。完了通知情報319は、受信側において、通信情報919として受信されるが、詳細は後述する。
【0098】
図4に示す通信制御部300は、無線通信部35を制御する機能を有する機能ブロックである。
【0099】
通信制御部300は、管理情報311のチャネル情報313や幇助情報316に含まれるチャネルの番号を参照して、無線通信において使用するチャネル(周波数)を必要に応じて切り替えるように無線通信部35を制御する。また、通信制御部300は、速度情報314に設定されている通信速度となるように、無線通信部35を制御する。すなわち、通信制御部300は、管理情報311に応じて、無線通信を行うときの周波数と通信速度とを決定する機能を有している。
【0100】
また、通信制御部300は、無線通信部35が受信した通信情報919を記憶装置31に転送して記憶させる機能を有している。
【0101】
通信制御部300によって記憶装置31に転送される「無線通信部35が受信した通信情報919」とは、グループ内でブロードキャストにより送信された通信情報919、または、自機宛でユニキャストにより送信された通信情報919を言うものとする。言い換えれば、他機宛でユニキャストされた通信情報919は、ここに言う「無線通信部35が受信した通信情報919」に含めないものとする。
【0102】
また、無線通信部35において設定されているチャネルと異なるチャネル(周波数)を使用して送信された通信情報919や、無線通信部35において設定されている通信速度と異なる通信速度で送信された通信情報919は、当該無線通信部35に受信されることはなく、「無線通信部35が受信した通信情報919」とはならない。
【0103】
また、通信情報919におけるSFD値が、自機と同一のグループを示すSFD値と異なる通信情報919は、完全に受信されることはないので、「無線通信部35が受信した通信情報919」とはならない。
【0104】
図4に示す通信制御部300は、記憶装置31に記憶されている所定の情報を送信するように、無線通信部35を制御する機能を有している。なお、本実施の形態における所定の情報として、通信情報919を送信する場合について説明するが、送信する情報はこれらに限定されるものではない。通信制御部300は、送信すべき通信情報919が作成されたときに、それらの情報を送信するように、無線通信部35を制御する。
【0105】
図4に示す情報管理部301は、管理情報311、受信履歴情報318、および、通信情報919を管理する機能を有する。
【0106】
無線通信システム1では、異なるルートによる二重送信や再送などの結果、同じ通信情報919が同じ装置に受信される場合が想定される(以下、単に「重複受信」と称する。)。重複受信が生じた場合、2度目以降に受信した通信情報919は不要な情報であるばかりでなく、このような通信情報919に従って動作すると誤動作を生じるおそれもある。したがって、無線通信親機3,4,5は、新たに受信した通信情報919について、すでに受信済みの通信情報919か否かを判断する必要がある。
【0107】
ここで、通信情報919の所定のフィールドには、当該通信情報919の作成元(送信元と同一とは限らない。)を示す識別子が格納される。また、通信情報919の所定のフィールドには、当該通信情報919の作成元において、シーケンス番号が格納される。したがって、前後して受信した通信情報919において、作成元を示す識別子およびシーケンス番号を比較することにより、同一の作成元により作成された同一のシーケンス番号の通信情報919を検出することができる。そして、同一の作成元により作成された同一のシーケンス番号の通信情報919は、同一の通信情報919であるとみなせる。
【0108】
このような原理により、新たに受信された通信情報919が記憶装置31に転送されたときに、情報管理部301は、当該新たに受信された通信情報919が受信履歴情報318として保存されている過去に受信された通信情報919と同一であるか否かを判定する。そして、新たに受信した通信情報919が過去に受信した通信情報919と同一である場合、情報管理部301は当該新たに受信した通信情報919を破棄する。一方、新たに受信した通信情報919が過去に受信した通信情報919と同一でない場合、情報管理部301は当該新たに受信した通信情報919を受信履歴情報318として記憶させる。
【0109】
なお、新たに受信した通信情報919を受信履歴情報318に記録するときにおいて、情報管理部301は、当該通信情報919の作成元を示す識別子およびシーケンス番号のみを記録してもよい。すなわち、通信情報919に含まれる制御コマンドなどは保存しなくてもよい。このように構成することにより、無線通信親機3,4,5は、受信履歴情報318のデータ容量を抑制することができる。
【0110】
また、各装置が使用するシーケンス番号は巡回番号となっており、順次付与された結果、所定の番号まで到達した後は、再び初期値に戻される。すなわち、長期的にみれば、異なる通信情報919に対して、同じシーケンス番号が使用されることになる。したがって、同じシーケンス番号が再び使用されるまでに、受信履歴情報318をリセットすることが好ましい。例えば、所定の数の履歴が作成された後は、新たな通信情報919を記録するときに最古の履歴に上書する。あるいは、同一の通信情報919が重複して受信されない程度に充分な時間が経過した後に、当該通信情報919の履歴を削除するなどのリセット方法が考えられる。
【0111】
また、照明装置(無線通信子機)に関する説明において省略したが、重複受信を検出して排除する仕組みは、照明装置20,21,22,23,24,25,26,27,28においても、無線通信親機3,4,5と同様に実行される。また、後述する端末装置9においても同様である。
【0112】
情報管理部301は、破棄されなかった通信情報919の内容を解析し、当該通信情報919に管理情報311を更新すべき指示(コマンド)が含まれている場合には、管理情報311を更新する機能を有している。例えば、無線通信の通信速度を切り替えるべき指示が通信情報919に含まれている場合には、速度情報314を更新して、グループ内無線通信の通信速度の設定を変更する。
【0113】
先述のように、無線通信システム1が運用を開始したときには、管理情報311は、すでに記憶装置31に記憶されている。より詳細には、管理情報311は、無線通信システム1を設置する際に、所定の操作により、作成された情報である。そして、無線通信システム1の運用が開始された後も、必要に応じて、情報管理部301は管理情報311を更新する。
【0114】
情報管理部301は、破棄されなかった通信情報919の内容を解析し、必要に応じて管理情報311を参照しつつ、当該通信情報919を転送(代理送信および救済送信を含む。)するために当該通信情報919を書き換える(作成しなおす)機能を有している。例えば、情報管理部301は、転送する通信情報919の送信元を自機の識別子に書き換える。また、情報管理部301は、転送する通信情報919の送信先を書き換える。例えば、ユニキャストで届いた通信情報919をブロードキャストで送信する場合、情報管理部301は通信情報919の送信先を「0xFFFF」に書き換える。
【0115】
このようにして書き換えられた通信情報919は、通信制御部300により無線通信部35に転送され、無線通信部35により送信される。すなわち、情報管理部301が、通信情報919を書き換えることにより、後述する代理送信や救済送信が実行されることになる。
【0116】
なお、本実施の形態では、救済送信を担当する無線通信親機の情報管理部301は、救済送信において送信する通信情報919に、救済送信により送信されたことを示す情報を付加するものとする。ただし、例えば、救済送信を実行する前に、救済送信の要否を問い合わせるコマンドを、救済される側の無線通信親機に送信し、救済送信を要請されてから、当該要請に対する応答として、救済送信において送信すべき通信情報919を作成してもよい。
【0117】
また、情報管理部301は、ユニキャストで送信された通信情報919に対する返信としての通信情報919(いわゆるACK)を作成する機能も有している。
【0118】
また、情報管理部301は、代理送信が実行されたときに、完了通知情報319を作成する。すなわち、完了通知情報319は、その存在により代理送信が完了したことを示す。なお、完了通知情報319は、無事に完了した代理送信が、端末装置9から送信された多グループ宛の通信情報919によって実行されたのか、あるいは、救済送信(いずれかの無線通信親機)により送信された多グループ宛の通信情報919によって実行されたのかを示す情報(以下、「完了種別情報」と称する。)も付加される。
【0119】
また、救済送信を担う無線通信親機3,4,5の情報管理部301は、代理送信が実行されたときに、幇助情報316に含まれる時間(救済送信を開始するタイミングを決定するための時間情報)をタイマ部34にセットする。そして、当該時間が経過したことをタイマ部34から通知(救済開始タイマ通知)されると、情報管理部301は、救済送信により送信する通信情報919を作成する。
【0120】
以上が無線通信親機3,4,5の構成および機能の説明である。次に、無線通信システム1が備える端末装置9について説明する。
【0121】
図5は、端末装置9のブロック図である。
図5に示すように、端末装置9は、CPU90、記憶装置91、操作部92、表示部93、タイマ部94、および、無線通信部95を備えている。
【0122】
CPU90は、記憶装置91に格納されているプログラム910を読み取りつつ実行し、各種データの演算や制御信号の生成等を行う。これにより、CPU90は、端末装置9が備える各構成を制御するとともに、各種データを演算し作成する機能を有している。すなわち、端末装置9は、一般的なコンピュータとして構成されている。
【0123】
記憶装置91は、端末装置9において各種データを記憶する機能を提供する。言い換えれば、記憶装置91が端末装置9において電子的に固定された情報を保存する。
【0124】
記憶装置91としては、CPU90の一時的なワーキングエリアとして使用されるRAMやバッファ、読み取り専用のROM、不揮発性のメモリ(例えばNANDメモリなど)、比較的大容量のデータを記憶するハードディスク、専用の読み取り装置に装着された可搬性の記憶媒体(PCカード、SDカード、USBメモリなど)等が該当する。
図5においては、記憶装置91を、あたかも1つの構造物であるかのように図示している。しかし、通常、記憶装置91は、上記例示した各種装置(あるいは媒体)のうち、必要に応じて採用される複数種類の装置から構成されるものである。すなわち、記憶装置91は、端末装置9においてデータを記憶する機能を有する装置群の総称である。
【0125】
また、現実のCPU90は高速にアクセス可能なRAMを内部に備えた電子回路である。しかし、このようなCPU90が備える記憶装置も、説明の都合上、記憶装置91に含めて説明する。すなわち、一時的にCPU90自体が記憶するデータも、記憶装置91が記憶するとして説明する。
図5に示すように、記憶装置91は、プログラム910、管理データベース911、指示情報912および通信情報919などを記憶するために使用される。
【0126】
操作部92は、端末装置9に対して作業者や利用者等が指示情報912を入力するために操作するハードウェアである。操作部92としては、例えば、各種キーやボタン類、スイッチ、タッチパネル、ポインティングデバイス、あるいは、ジョグダイヤルなどが該当する。
【0127】
表示部93は、各種データを表示することにより作業者や利用者等に対して各種データを出力する機能を有するハードウェアである。表示部93としては、例えば、ランプやLED、液晶パネル、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなどが該当する。
【0128】
タイマ部94は、詳細は図示しないが、発振器等のクロック回路を備えており、時間を計測する機能を有するハードウェアである。タイマ部94は、CPU90によってセットされた時間が経過すると、その旨をCPU90に通知する。なお、タイマ部94のCPU90への通知を、以下、「完了確認タイマ通知」と称する。
【0129】
無線通信部95は、無線による通信を実現する。これにより、端末装置9は、照明装置20,21,22,23,24,25,26,27,28や、無線通信親機3,4,5との間で、無線による通信情報919の送受信を行うことが可能となる。
【0130】
また、無線通信部95は、CPU90からの制御信号に応じて、無線通信に使用するチャネル番号(周波数)や通信速度を切り替えることが可能である。したがって、例えば、グループ11に所属する無線通信親機3および照明装置20,21,22がグループ内無線通信に使用しているチャネル番号および通信速度を、無線通信部95に設定することにより、端末装置9はグループ11に所属する装置との間で無線通信が可能となる。そして、チャネル番号および通信速度を、適宜、設定することにより、端末装置9はグループ12,13に所属する装置とも無線通信が可能である。
【0131】
管理データベース911は、無線通信システム1において定義されているグループ11,12,13毎に1つのレコードが作成されるテーブル構造のデータベースである。また、管理データベース911には、端末装置9のレコードも定義される。
【0132】
管理データベース911の各レコードには、グループ識別情報、当該グループ識別情報で示されるグループに所属する無線通信親機3,4,5のアドレス、チャネル番号、通信速度、SFDの値、代理送信の完了状況、および、救済送信の依頼先がそれぞれ関連づけて格納される。
【0133】
すでに説明したように、本実施の形態における無線通信システム1は、グループ識別情報として、各グループのPANIDを使用する。したがって、グループ11のレコードのグループ識別情報は、グループ11のPANIDである。また、グループ12のレコードのグループ識別情報は、グループ12のPANIDである。また、グループ13のレコードのグループ識別情報は、グループ13のPANIDである。なお、端末装置9のレコードにおけるグループ識別情報は、端末装置9がその瞬間に所属しているグループ(当該グループのPANID)を示す。
【0134】
管理データベース911の各レコードにおけるチャネル番号、通信速度およびSFDの値は、当該レコードにおけるPANIDで示されるグループで使用されるグループ内無線通信のチャネル番号、通信速度およびSFDの値である。
【0135】
管理データベース911の各レコードにおける代理送信の完了状況とは、詳細は後述するが、完了通知の通信情報919の内容が記録される情報であり、当該グループに所属する無線通信親機が代理送信を無事に完了することができたか否か、および、当該無線通信親機による代理送信が端末装置9から受信した多グループ宛の通信情報919によって実行されたか否かを示す情報である。ただし、端末装置9は代理送信を行わないため、端末装置9のレコードには、代理送信の完了状況は格納されない。
【0136】
管理データベース911の各レコードにおける救済送信の依頼先は、当該レコードにおけるPANIDで示されるグループに所属する無線通信親機3,4,5に対して、救済送信を行う無線通信親機3,4,5のアドレスである。ただし、端末装置9のレコードには、救済送信の依頼先は格納されない。
【0137】
先述のように、無線通信親機5に対して無線通信親機4が救済送信を行うと設定されている場合、グループ13のレコードの救済送信の依頼先には、無線通信親機4のアドレスが格納される。同様に、無線通信親機4に対して無線通信親機3が救済送信を行うと設定されている場合、グループ12のレコードの救済送信の依頼先には、無線通信親機3のアドレスが格納される。なお、無線通信親機3は、救済送信されることはないと設定されているので、グループ11のレコードの救済送信の依頼先には、いずれの無線通信親機のアドレスも格納されることはない(例えば、「null」を格納する。)。
【0138】
なお、本実施の形態における無線通信システム1では、端末装置9が各照明装置20,21,22,23,24,25,26,27,28に向けて、ユニキャストにより通信情報919を送信することは想定していない。したがって、管理データベース911には、照明装置20,21,22,23,24,25,26,27,28の識別情報は格納されていないが、管理データベース911にこれらの情報を格納していてもよい。すなわち、管理データベース911に格納される情報は、上記に示した情報に限定されるものではない。
【0139】
本実施の形態における無線通信システム1は、無線通信システム1を設置するときに作業者が、各種の情報(設定情報207や管理情報311など)を設定するために使用する作業用の装置を端末装置9として流用する。例えば、出荷状態の照明装置を、それぞれ照明装置20,21,22,23,24,25,26,27,28として機能させるためには、作業者は、決められたレイアウトに従って個々の装置を適切な位置に設置するだけでなく、個別に必要な情報を入力しなければならない。
【0140】
無線通信システム1において多数設置される照明装置20,21,22,23,24,25,26,27,28や無線通信親機3,4,5は、コスト抑制などの理由から、高機能のマンマシンインタフェースを備えていないのが通常である。すなわち、作業者が、個々の装置の表示部203,33を閲覧しながら操作部202,32を操作して、複雑な情報を入力することは、作業者の負担が大きく、適切とは言えない。したがって、無線通信システム1は、操作性のよい作業用の装置を作業者が用いて、設置作業を行えるように設計されている。
【0141】
このような作業用の装置は、設定作業が完了し、運用が開始された後には、不要となる。しかし、設定作業に使用された作業用の装置は、その性格上、無線通信システム1の構成や配置、設定状況などの情報を把握している。言い換えれば、作業用の装置は管理データベース911を構築するために必要な情報を、すでに保持している。したがって、無線通信システム1は、先述のように、設定作業において用いられた作業用の装置を端末装置9として流用し、運用開始後も使用する。
【0142】
これにより、端末装置9を、別途、準備する必要がない。なお、本実施の形態における端末装置9は、携帯型の装置(例えば、タブレット端末)として構成されている。しかし、これは、主に、作業用の装置としての要請によるものであり、本発明を実現するためには、端末装置9が携帯型の装置である必要性はない。
【0143】
図6は、端末装置9が備える機能ブロックをデータの流れとともに示す図である。
図6に示す情報作成部900および通信制御部901は、CPU90がプログラム910に従って動作することにより実現される機能ブロックである。
【0144】
情報作成部900は、管理データベース911、指示情報912、通信情報919などに基づいて、新たな通信情報919を作成する機能を有する。
【0145】
すでに説明したように、無線通信システム1では、利用者が操作部92を操作することにより指示情報912を入力する。すなわち、指示情報912は、利用者が無線通信システム1に所望の指示を与えるときの当該指示を表現した情報である。
【0146】
情報作成部900は、指示情報912を実行するために必要となるコマンド等を選択する。そして、情報作成部900は、当該指示情報912を実行するために、何らかの情報を他の装置に向けて送信する必要がある場合には、当該情報に管理データベース911に登録されている送信元(端末装置9)や宛先、SFD、シーケンス番号などを示す情報を付加しつつ、新たな通信情報919を作成する。
【0147】
また、詳細は後述するが、情報作成部900は、指示情報912が入力されたときと同様にして、受信された通信情報919に応じて、新たな通信情報919を作成する機能も有している。すなわち、受信された通信情報919を解析した結果、何らかの情報を他の装置に向けて送信する必要が生じた場合には、当該情報に管理データベース911に登録されている送信元や宛先、SFD、シーケンス番号などを示す情報を付加しつつ、新たな通信情報919を作成する。
【0148】
また、情報作成部900は、無線通信部95が多グループ宛の通信情報919の送信を完了したときに、所定の時間をタイマ部94にセットする。そして、当該時間が経過したことをタイマ部94から通知(完了確認タイマ通知)されると、情報管理部301は、そのタイミングで、通信情報919を作成する。このとき作成される通信情報919は、無線通信親機3,4,5に対して、代理送信を完了したか否かを問い合わせるための通信情報919(以下、「問い合わせの通信情報919」と称する。)である。なお、詳細は後述するが、問い合わせの通信情報919に対する応答として、各無線通信親機3,4,5から、代理送信を完了したか否かを示す通信情報919(以下、「完了通知の通信情報919」と称する。)が返信される。
【0149】
また、情報作成部900は、完了通知の通信情報919に基づいて、当該完了通知の通信情報919を送信した無線通信親機について、代理送信を完了したか否かを判定し、その旨を管理データベース911に格納する。
【0150】
さらに、情報作成部900は、代理送信を完了することができなかった無線通信親機に対して、グループ内無線通信の通信速度を落とすように制御するための通信情報919(以下、「速度変更の通信情報919」と称する。)を作成するが、詳細は後述する。
【0151】
通信制御部901は、記憶装置91に記憶されている所定の情報を送信するように、無線通信部95を制御する機能を有している。なお、本実施の形態における所定の情報として、通信情報919を送信する場合について説明するが、端末装置9が送信する情報はこれに限定されるものではない。通信制御部901は、送信すべき通信情報919が作成されたときに、当該通信情報919を送信するように、無線通信部95を制御する。
【0152】
詳細は後述するが、無線通信部95に通信情報919を送信させるとき、通信制御部901は、当該通信情報919の宛先等に応じて、グループ11,12,13の中から当該通信情報919を送信するグループ11,12,13を1つ決定する。そして、決定したグループのPANIDに応じて、管理データベース911から無線通信において使用するチャネル(周波数)および通信速度を決定して無線通信部95を制御する。すなわち、通信制御部901は、通信情報919および管理データベース911に応じて、無線通信部95が無線通信を行うときの周波数と通信速度とを決定する機能を有している。
【0153】
また、通信制御部300は、無線通信部95が受信した通信情報919を記憶装置91に転送して記憶させる機能を有している。
【0154】
通信制御部901によって記憶装置91に転送される「無線通信部95が受信した通信情報919」とは、無線通信部95に設定されているチャネル番号を使用してグループ内無線通信を行っているグループ内でブロードキャストにより送信された通信情報919、または、端末装置9宛でユニキャストにより送信された通信情報919を言うものとする。言い換えれば、他機宛でユニキャストされた通信情報919は、ここに言う「無線通信部95が受信した通信情報919」に含めないものとする。
【0155】
また、無線通信部95において設定されているチャネル番号と異なるチャネル番号(周波数)を使用して送信された通信情報919、および、無線通信部95において設定されている通信速度と異なる通信速度で送信された通信情報919は、当該無線通信部95に受信されること(情報として抽出されること)はなく、「無線通信部95が受信した通信情報919」とはならない。
【0156】
また、通信情報919におけるSFD値が、無線通信部95に設定されているチャネル番号を使用してグループ内無線通信を行っているグループを示すSFD値と異なる通信情報919は、完全に受信されることはないので、「無線通信部95が受信した通信情報919」とはならない。
【0157】
以上が、無線通信システム1の構成および機能の説明である。次に、無線通信システム1による無線通信方法を説明する。
【0158】
図7は、無線通信システム1による無線通信方法を示す流れ図である。なお、
図7は、無線通信システム1の運用中(設置作業が完了した後)の処理を示す。したがって、設定情報207、管理情報311および管理データベース911などを記憶する工程は、すでに完了しているものとする。
【0159】
運用中において、無線通信システム1は、一斉送信が必要となる指示情報912が入力されたか(ステップS11)、通信情報919が受信されたか(ステップS17)、救済開始タイマ通知があったか(ステップS19)、および、完了確認タイマ通知があったか(ステップS22)を監視している。この状態を、単に、「監視状態」と称する。
【0160】
端末装置9の操作部92が操作されて、指示情報912が入力されると、当該指示情報912が情報作成部900によって解析される。そして、解析の結果、当該指示情報912に示される指示を実現するためには、通信情報919を作成して、当該通信情報919を一斉送信する必要があると判定した場合、情報作成部900はステップS11においてYesと判定する。
【0161】
例えば、利用者が帰宅する場合などにおいて、フロア全体に分散的に設置された照明装置20,21,22,23,24,25,26,27,28を一斉に消灯したいと所望することが想定される。このような場合、すべての照明装置20,21,22,23,24,25,26,27,28に消灯コマンドを与える必要がある。一方で、利用者の負担を軽減させるためには、移動しながら複数回の操作を繰り返すことを利用者に要求するのではなく、1回の操作で一斉消灯の指示を確実に実現することが好ましい。
【0162】
以下では、多グループ宛の通信情報919として、消灯コマンドを含む通信情報919を、それぞれが非同期で無線通信を行っている複数のグループ11,12,13にまたがって、複数の照明装置20,21,22,23,24,25,26,27,28に受信させて消灯させる具体例について説明する。ただし、多グループ宛の通信情報919が作成される状況は、このような例に限定されるものではない。例えば、昼間灯を消灯し、夜間灯を点灯させるような夜間モードへの移行コマンドなどでもよい。すなわち、個々の照明装置20,21,22,23,24,25,26,27,28において実現される動作が同一でなくてもよい。
【0163】
ステップS11においてYesと判定すると、情報作成部900は、まず、グループ11,12,13の中から送信先のグループを選択し、選択したグループに向けて送信する多グループ宛の通信情報919を作成する(ステップS12)。例えば、情報作成部900は、昇順でグループ11,12,13の中から送信先のグループを選択する。
【0164】
ステップS12における処理を具体的に説明する。まず、情報作成部900は、選択したグループのPANIDを検索キーとして管理データベース911を検索し、当該グループのグループ内無線通信におけるチャネル番号、通信速度およびSFD値を取得する。例えば、グループ11を選択した場合には、グループ11のPANIDを検索キーとして、グループ11のレコードを取得し、当該レコードに格納されているグループ11におけるチャネル番号、通信速度およびSFD値を取得する。
【0165】
次に、情報作成部900は、管理データベース911における端末装置9のレコードのチャネル番号、通信速度およびSFD値を、上記取得したチャネル番号、通信速度およびSFD値に書き換える。これにより、端末装置9は、一時的に、選択したグループに所属する装置として振る舞うことが可能となる。
【0166】
また、情報作成部900は、送信対象となる情報(具体例では消灯コマンド)を作成するとともに、シーケンス番号を発行して当該情報に付加する。さらに、情報作成部900は、作成した情報(具体例では消灯コマンド)に、送信先として「0xFFFF(ブロードキャストであることを示す情報)」、作成元が端末装置9であることを示す情報、SFD値、および、多グループ宛の通信情報919であることを示す情報を付加して通信情報919を作成する。
【0167】
ステップS12が実行されることにより、端末装置9において新たな通信情報919が作成されると、通信制御部901が当該通信情報919を送信するように、無線通信部95を制御する。すなわち、通信制御部901は、管理データベース911の端末装置9のレコードを参照することにより、無線通信部95に設定すべきチャネル番号および通信速度を取得して、無線通信部95に伝達するとともに、ステップS12において作成された通信情報919を無線通信部95に転送する。
【0168】
このようにして通信情報919が無線通信部95に転送されると、無線通信部95が当該通信情報919を送信する。このとき、送信される通信情報919は、ステップS12において作成された通信情報919であるため、多グループ宛の通信情報919である。また、当該通信情報919にはブロードキャストで送信することが示されているため、無線通信部95による当該通信情報919の送信形態はブロードキャストとなる(ステップS13)。
【0169】
ステップS13におけるブロードキャストは、ステップS12において選択されたグループにおけるチャネル番号および通信速度で、当該グループを示すSFD値を含む通信情報919を送信するものである。したがって、当該多グループ宛の通信情報919は、当該選択されたグループにおけるグループ内無線通信により送信されるのであり、当該グループに所属する無線通信親機および照明装置にのみ受信される。
【0170】
例えば、ステップS12においてグループ11が選択されているときには、ステップS13において送信された通信情報919は、エリア10内の無線通信親機3および照明装置20,21,22にのみ受信され、同じくエリア10内の無線通信親機4および照明装置24,25には受信されない。
【0171】
なお、ステップS13において実行される多グループ宛の通信情報919のブロードキャストは、本実施の形態においては、5回繰り返される。ただし、当該ブロードキャストの回数は、5回に限定されるものではない。
【0172】
ステップS13が実行され、ステップS12において選択されたグループに対するグループ内無線通信によるブロードキャストが完了すると、情報作成部900は、全てのグループ11,12,13についてグループ内無線通信による通信情報919の送信が終了したか否かを判定する(ステップS14)。そして、未だグループ内無線通信による通信情報919の送信が完了していないグループが存在する場合には、未完了のグループを新たに選択し(ステップS15)、ステップS12からの処理を繰り返す。
【0173】
ステップS14においてNoと判定することによってステップS12を繰り返すとき、情報作成部900は、作成するコマンド(通信情報919)に対して新たなシーケンス番号を発行するのではなく、直前に実行したステップS13において送信された通信情報919に付加されていたシーケンス番号を使用する。
【0174】
すなわち、グループ11,12,13が順次選択され、グループ内無線通信が順次グループ11,12,13において実行される間、端末装置9から送信される通信情報919のシーケンス番号は変化しない。同一の作成元の同一のシーケンス番号を有する複数の通信情報919が、同一の装置(照明装置20,21,22,23,24,25,26,27,28、無線通信親機3,4,5および端末装置9)に受信されたとしても、すでに説明したように、重複受信として排除される。したがって、同じコマンドを含む通信情報919が同じ作成元(端末装置9)により作成され、これを送信するステップS13が複数回(本実施の形態では、5[回/グループ]×3[グループ]=15[回]。)繰り返されることにより、例え同じ装置が当該通信情報919を複数回受信したとしても、同一のシーケンス番号が付加されているため、2回目以降の通信情報919は重複受信として破棄される。
【0175】
全てのグループ11,12,13についてグループ内無線通信による通信情報919の送信が終了すると(ステップS14においてYes。)、情報作成部900は、タイマ部94に所定の時間をセットすることにより、完了確認タイマをセットし(ステップS16)、監視状態に戻る。
【0176】
監視状態において、無線通信システム1では、様々な通信情報919が送受信されている。そして、通信情報919を受信した装置は、当該通信情報919に従った動作、処理を実行する。すなわち、通信情報919が受信されたとき、当該通信情報919を受信した装置は、ステップS17においてYesと判定し、通信情報実行処理を実行する(ステップS18)。
【0177】
無線通信システム1において通信情報919を受信する装置とは、照明装置20,21,22,23,24,25,26,27,28、無線通信親機3,4,5および端末装置9である。すなわち、ステップS17,S18に示す処理は、これらすべての装置がそれぞれ実行する可能性のある処理である。
【0178】
図8は、無線通信親機3,4,5によって実行される通信情報実行処理を示す流れ図である。すなわち、
図8に示す各工程は、無線通信親機3,4,5がステップS17においてYesと判定したときに、そのように判定した無線通信親機3,4,5によって実行される。
【0179】
図9は、照明装置20,21,22,23,24,25,26,27,28によって実行される通信情報実行処理を示す流れ図である。すなわち、
図9に示す各工程は、照明装置20,21,22,23,24,25,26,27,28がステップS17においてYesと判定したときに、そのように判定した照明装置20,21,22,23,24,25,26,27,28によって実行される。
【0180】
図10は、端末装置9によって実行される通信情報実行処理を示す流れ図である。すなわち、
図10に示す各工程は、端末装置9がステップS17においてYesと判定したときに、端末装置9によって実行される。
【0181】
まず、
図8に示す無線通信親機3,4,5が実行する通信情報実行処理を説明する。
【0182】
情報管理部301は、通信情報実行処理を開始すると、受信履歴情報318を参照しつつ、新たに受信した通信情報919が重複受信によるものか否かを判定する(ステップS31)。
【0183】
通信情報実行処理を開始する契機となった通信情報919が重複受信によるものである場合(ステップS31においてYes。)、情報管理部301は、当該通信情報919を破棄し、通信情報実行処理を終了する。
【0184】
通信情報実行処理を開始する契機となった通信情報919が重複受信によるものでない場合(ステップS31においてNo。)、情報管理部301は、当該通信情報919を受信履歴情報318に登録することにより、受信履歴情報318を更新する(ステップS32)。
【0185】
受信履歴情報318の更新が完了すると、情報管理部301は、通信情報実行処理を開始する契機となった通信情報919を解析して、当該通信情報919が多グループ宛の通信情報919か否かを判定する(ステップS33)。ステップS33において、本実施の形態における情報管理部301は、解析した通信情報919に、多グループ宛の通信情報919を示す情報が付加されているか否かを判定する。
【0186】
ステップS33においてYesの場合、無線通信親機3,4,5は、代理送信処理を実行する(ステップS34)。
【0187】
図11は、代理送信処理を示す流れ図である。
【0188】
代理送信処理が開始されると、情報管理部301は、管理情報311を参照し、幇助情報316が存在するか否かに基づいて、自機が救済送信を担当するか否かを判定する(ステップS61)。
【0189】
具体例では、すでに説明したように、無線通信親機3,4が救済送信を担当し、無線通信親機5は救済送信を担当しない。したがって、無線通信親機3,4の情報管理部301はステップS61においてYesと判定するが、無線通信親機5の情報管理部301はステップS61においてNoと判定する。
【0190】
ステップS61においてYesと判定すると、情報管理部301は、幇助情報316に含まれる時間情報に従って、タイマ部34に救済開始タイマをセットする(ステップS62)。
【0191】
ステップS61においてNoと判定すると、情報管理部301は、ステップS62をスキップする。すなわち、この場合、情報管理部301に対して救済開始タイマ通知がされることはなく、救済送信が実行されることはない。
【0192】
次に、情報管理部301は、通信情報実行処理を開始する契機となった通信情報919(ステップS33においてYesと判定されているため、多グループ宛の通信情報919)に基づいて、通信情報919を作成する(ステップS63)。
【0193】
ステップS63において、情報管理部301は、元となった通信情報919の送信元を自機に書き換えるとともに、送信形態をブロードキャストとするために送信先を「0xFFFF」とし、新たな通信情報919を作成する。一方、ステップS63において作成される通信情報919の作成元、シーケンス番号、SFD値および送信対象の情報(具体例では消灯コマンド)は、受信された多グループ宛の通信情報919と同一である。
【0194】
ステップS63が実行され、新たな通信情報919が作成されると、通信制御部300が当該通信情報919を送信するように無線通信部35を制御する。これにより、無線通信部35が、ステップS63において作成された通信情報919をブロードキャストにより送信する(ステップS64)。これが無線通信親機3,4,5による代理送信となる。
【0195】
ステップS64が実行されるとき、無線通信部35による無線通信のチャネル番号および通信速度は、管理情報311に含まれるチャネル情報313および速度情報314に応じて決定されている。したがって、当該無線通信は、グループ内無線通信となり、ブロードキャストを行った無線通信親機と同じグループに所属する照明装置によって受信される。
【0196】
具体例では、無線通信親機3がステップS64を実行すると、送信された通信情報919は、照明装置20,21,22に受信される。また、無線通信親機4がステップS64を実行すると、送信された通信情報919は、照明装置23,24,25に受信される。さらに、無線通信親機5がステップS64を実行すると、送信された通信情報919は、照明装置26,27,28に受信される。
【0197】
端末装置9と異なり、各無線通信親機3,4,5は、自機と同一のグループに所属する照明装置と近い位置に配置される(そのように無線通信システム1が設計され、設置されている。)。すなわち、各無線通信親機3,4,5は、端末装置9と比べて、自機と同一のグループに所属する照明装置に対して距離的に優位である。したがって、無線通信システム1は、端末装置9からブロードキャストされる多グループ宛の通信情報919を、各無線通信親機3,4,5に代理送信させることによって、より一層確実に当該通信情報919を照明装置20,21,22,23,24,25,26,27,28に受信させることができる。
【0198】
具体例では、照明装置23はエリア10外に存在しており、端末装置9から送信された無線電波は照明装置23には到達しない。すなわち、端末装置9から送信された多グループ宛の通信情報919は照明装置23に受信されない。しかし、無線通信親機4はエリア10内に存在しており、端末装置9から送信された多グループ宛の通信情報919を受信することができる。したがって、無線通信親機4が端末装置9に代わって、受信した当該多グループ宛の通信情報919の代理送信を行うことにより、照明装置23は当該多グループ宛の通信情報919を受信することができる。
【0199】
また、端末装置9および無線通信親機3,4,5は、互いに異なる位置に配置されるため、それぞれが備えるアンテナは、当然、それぞれ別の位置に存在している。したがって、多グループ宛の通信情報919を、それぞれ別の位置に存在する端末装置9のアンテナと無線通信親機のアンテナとから送信することにより、無線通信システム1においてマルチパスフェージング対策となる。
【0200】
なお、本実施の形態における無線通信システム1では、ステップS64におけるブロードキャストの回数は3回に設定されている。ただし、代理送信におけるブロードキャストの回数は3回に限定されるものではない。
【0201】
ステップS64が実行され、代理送信が実行されると、情報管理部301は、代理送信が完了したと判断して、完了通知情報319を作成する(ステップS65)。これにより、無線通信親機3,4,5において、完了通知情報319が準備される。
【0202】
ステップS65において、情報管理部301は、完了種別情報を当該完了通知情報319に付加する。具体例では、無線通信親機3,4の情報管理部301は、端末装置9から受信した多グループ宛の通信情報919による代理送信を完了したことを示す完了種別情報を付加する。一方、無線通信親機5の情報管理部301は、無線通信親機4から受信した多グループ宛の通信情報919による代理送信を完了したことを示す完了種別情報を付加する。
【0203】
ステップS65を実行すると、無線通信親機3,4,5は、代理送信処理を終了し、
図8に示す処理に戻る。さらに、
図8に戻って、代理送信処理(ステップS34)を終了すると、無線通信親機3,4,5は、通信情報実行処理を終了し、
図7に示す監視状態に戻る。
【0204】
次に、
図8に示すステップS33においてNoの場合について説明する。ステップS33においてNoの場合とは、通信情報実行処理を開始する契機となった通信情報919が多グループ宛の通信情報919でない場合である。この場合、情報管理部301は、当該通信情報919が問い合わせの通信情報919であるか否かをさらに判定する(ステップS35)。
【0205】
すでに説明したように、問い合わせの通信情報919とは、端末装置9において作成され、各無線通信親機3,4,5に向けてユニキャストにより送信される通信情報919であって、各無線通信親機3,4,5が代理送信を無事に完了したか否かを端末装置9に知らせるように要求する通信情報919である。ただし、問い合わせの通信情報919の送信元は、必ずしも端末装置9とは限らない。例えば、問い合わせの通信情報919は、他の無線通信親機を介して受信される場合もある。
【0206】
通信情報実行処理を開始する契機となった通信情報919が問い合わせの通信情報919である場合(ステップS35においてYes。)、情報管理部301は、完了通知処理を実行する(ステップS36)。
【0207】
図12は、完了通知処理を示す流れ図である。
【0208】
完了通知処理が開始されると、情報管理部301は、管理情報311を参照し、幇助情報316が存在するか否かに基づいて、自機が救済送信を担当するか否かを判定する(ステップS71)。
【0209】
具体例では、すでに説明したように、無線通信親機3,4が救済送信を担当し、無線通信親機5は救済送信を担当しない。したがって、具体例においては、無線通信親機3,4の情報管理部301はステップS71においてYesと判定するが、無線通信親機5の情報管理部301はステップS71においてNoと判定する。
【0210】
ステップS71においてYesと判定すると、情報管理部301は、幇助情報316から救済送信に必要な情報を取得する。このとき取得する情報とは、グループ識別情報312(すなわち、救済送信の対象となるグループのPANID)、当該PANIDに関連づけられているアドレス(救済送信の宛先アドレス)、当該PANIDで示されるグループのチャネル情報313(すなわち、救済送信に使用するチャネルの番号)、当該PANIDで示されるグループの速度情報314(すなわち、救済送信に使用する通信速度)、および、当該PANIDで示されるグループのSFD値317(すなわち、救済送信を行うグループのSFD値)である。
【0211】
次に、情報管理部301は、取得したチャネル情報313に示されているチャネル番号を管理情報311に含まれるチャネル情報313に格納するとともに、取得した速度情報314に示されている通信速度を管理情報311に含まれる速度情報314に格納する。これにより、救済送信を担当する無線通信親機は、一時的に、救済送信の対象となる無線通信親機と同一のグループに所属する装置として振る舞うことが可能となる。すなわち、グループ外無線通信が可能となる。
【0212】
また、情報管理部301は、受信された代理送信完了を問い合わせる通信情報919に付加されている情報を適宜書き換えることにより、新たな通信情報919を作成する。このとき情報管理部301は、送信先を幇助情報316から取得した救済送信の宛先アドレスに、送信元を自機のアドレスに、SFD値を幇助情報316から取得したSFD値に、それぞれ書き換える。
【0213】
情報管理部301により新たな通信情報919が作成されると、通信制御部300が当該通信情報919を送信するように、無線通信部35を制御する。これにより、無線通信部35が当該通信情報919を救済送信の対象となる無線通信親機に向けてユニキャストで送信する。すなわち、救済送信を担当する無線通信親機が、問い合わせの通信情報919を受信した場合、当該通信情報919が救済送信の対象となる無線通信親機に向けてグループ外無線通信により転送される(ステップS72)。
【0214】
このように、無線通信システム1は、端末装置9から送信される通信情報919を受信することができない蓋然性の高い無線通信親機に対しては、当該無線通信親機に対する救済送信を担当する無線通信親機を介して、通信情報919を送信する。これにより、通信情報919を確実に目的の無線通信親機に受信させることができる。
【0215】
ステップS72を実行すると、無線通信親機3,4,5は、ステップS72におけるユニキャストに対する応答があるまで待機する(ステップS73)。
【0216】
救済送信の対象である無線通信親機から応答があると(ステップS73においてYes。)、情報管理部301は、管理情報311に含まれるチャネル情報313および速度情報314を自機のグループ内無線通信に使用されるものに復旧させる(ステップS74)。
【0217】
ステップS74を実行することにより、救済送信の対象となる無線通信親機のグループに所属していた無線通信親機が、自機のグループに復帰する。例えば、無線通信親機4に対する問い合わせ(通信情報919)を転送するために、一時的にグループ12に所属している状態の無線通信親機3がステップS74を実行すると、チャネル情報313および速度情報314がグループ11におけるグループ内無線通信に使用するチャネル番号および通信速度にそれぞれ復旧され、無線通信親機3はグループ11に復帰する。
【0218】
ステップS74を実行すると、無線通信親機3,4,5は、完了通知を行う(ステップS75)。ステップS75における完了通知とは、完了通知の通信情報919を送信する処理である。なお、ステップS71においてNoと判定した場合も、無線通信親機3,4,5は、ステップS75に示す完了通知を行う。
【0219】
ステップS75において、すでに完了通知情報319が作成されている場合(代理送信を無事に完了している場合)、情報管理部301は、当該完了通知情報319に送信先を付加して、完了通知の通信情報919を作成する。完了通知の通信情報919が作成されると、通信制御部300が当該通信情報919を送信するように無線通信部35を制御する。これにより、無線通信部35は、代理送信が完了していることを示す完了通知の通信情報919をユニキャストにより送信する。
【0220】
一方、ステップS75において、完了通知情報319が未だ作成されていない場合、情報管理部301は、自機が代理送信を完了していないことを示す情報に、送信先を付加して、完了通知の通信情報919を作成する。完了通知の通信情報919が作成されると、通信制御部300が当該通信情報919を送信するように無線通信部35を制御する。これにより、無線通信部35は、代理送信が完了していないことを示す完了通知の通信情報919をユニキャストにより送信する。
【0221】
なお、ステップS75の完了通知におけるユニキャストの送信先は、完了通知処理の契機となった問い合わせの通信情報919の送信元である。また、ステップS75が実行されるときに、すでにステップS72ないしステップS74の処理が実行されている場合、当該ステップS75において送信される通信情報919(完了通知)には、ステップS73において受信した応答(救済送信の対象となる無線通信親機が代理送信を完了したか否かを示す情報)が付加される。すなわち、救済送信を担当する無線通信親機による完了通知には、救済送信の対象となる無線通信親機の完了通知が含まれる。
【0222】
具体例では、無線通信親機5からは無線通信親機5の代理送信が完了したか否かを示す情報のみを含む通信情報919が完了通知として無線通信親機4に向けて送信される。また、無線通信親機4からは無線通信親機4,5の代理送信が完了したか否かを示す情報を含む通信情報919が完了通知として無線通信親機3に向けて送信される。さらに、無線通信親機3からは自機および無線通信親機4,5の代理送信が完了したか否かを示す情報を含む通信情報919が完了通知として端末装置9に向けて送信される。
【0223】
ステップS75を実行すると、無線通信親機3,4,5は、完了通知処理を終了し、
図8に示す処理に戻る。さらに、
図8に戻って、完了通知処理(ステップS36)を終了すると、無線通信親機3,4,5は、通信情報実行処理を終了し、
図7に示す監視状態に戻る。
【0224】
次に、
図8に示すステップS35においてNoの場合について説明する。ステップS35においてNoの場合とは、通信情報実行処理を開始する契機となった通信情報919が、多グループ宛の通信情報919でなく、かつ、問い合わせの通信情報919でもない場合である。この場合、情報管理部301は、当該通信情報919が速度変更の通信情報919であるか否かをさらに判定する(ステップS37)。
【0225】
通信情報実行処理を開始する契機となった通信情報919が速度変更の通信情報919である場合(ステップS37においてYes。)、無線通信親機3,4,5は、速度変更処理を実行する(ステップS38)。
【0226】
図13は、速度変更処理を示す流れ図である。
【0227】
速度変更処理が開始されると、情報管理部301は、速度変更の通信情報919を解析し、当該通信情報919における通信速度の変更対象が自機か否かを判定する(ステップS81)。
【0228】
速度変更処理を開始する契機となった通信情報919が自機の通信速度の変更を指示するものである場合(ステップS81においてYes。)、情報管理部301は、グループ内無線通信の通信速度を変更するように指示する通信情報919を、自機と同一のグループに所属する照明装置を送信先として新たに作成する(ステップS82)。このとき、情報管理部301は、速度変更の通信情報919に示されている通信速度に変更するように指示する通信情報919を作成する。
【0229】
ステップS82が実行され、新たな通信情報919が作成されると、当該通信情報919を送信するように、通信制御部300が無線通信部35を制御する。これにより、無線通信部35が当該通信情報919をユニキャストする(ステップS83)。
【0230】
なお、
図13において詳細は省略しているが、ステップS82,S83の処理は、自機と同一のグループに所属する照明装置のすべてに対して、それぞれ実行する。具体例では、例えば、無線通信親機3は、照明装置20,21,22に対して、それぞれステップS82,S83実行する。
【0231】
ステップS83におけるユニキャストに対するACKが、自機と同一のグループに所属するすべての照明装置から受信できた場合、情報管理部301は、速度変更の通信情報919に示されている通信速度となるように、管理情報311に含まれている速度情報314を更新する(ステップS84)。
【0232】
ステップS84を実行すると、無線通信親機3,4,5は、変更完了通知を実行する(ステップS85)。
【0233】
ステップS85において、情報管理部301は、自機の所属するグループのグループ内無線通信の通信速度を、指示された通信速度に変更したことを示す新たな通信情報919を作成する。当該通信情報919の送信先は、速度変更処理を開始する契機となった速度変更の通信情報919の送信元である。このようにして新たな通信情報919が作成されると、当該通信情報919を送信するように、通信制御部300が無線通信部35を制御する。これにより、無線通信部35が当該通信情報919をユニキャストにより送信し、ステップS85の変更完了通知が実行される。
【0234】
ステップS85を実行すると、無線通信親機3,4,5は、速度変更処理を終了して、
図8に示す処理に戻る。さらに、
図8に戻って、速度変更処理(ステップS38)を終了すると、無線通信親機3,4,5は、速度変更処理を終了して、
図7に示す処理に戻る。
【0235】
一方、ステップS81においてNoと判定すると、情報管理部301は、当該通信情報919は救済送信における経路により送信されるべき情報であるとみなして、幇助情報316から救済送信に必要な情報を取得する。このとき取得する情報とは、グループ識別情報312(すなわち、救済送信の対象となるグループのPANID)、当該PANIDに関連づけられているアドレス(救済送信の宛先アドレス)、当該当該PANIDで示されるグループのチャネル情報313(すなわち、救済送信に使用するチャネルの番号)、当該PANIDで示されるグループの速度情報314(すなわち、救済送信に使用する通信速度)、および、当該PANIDで示されるグループのSFD値317(すなわち、救済送信を行うグループのSFD値)である。
【0236】
次に、情報管理部301は、幇助情報316から取得したチャネル情報313に示されているチャネル番号を管理情報311に含まれるチャネル情報313に格納するとともに、幇助情報316から取得した速度情報314に示されている通信速度を管理情報311に含まれる速度情報314に格納する。これにより、無線通信親機は、一時的に、救済送信の対象となる無線通信親機と同一のグループに所属する装置として振る舞うことが可能となる。
【0237】
また、情報管理部301は、受信された通信速度変更を指示する通信情報919に付加されている情報を適宜書き換えることにより、新たな通信情報919を作成する。このとき情報管理部301は、送信先を幇助情報316から取得した救済送信の宛先アドレスに、送信元を自機のアドレスに、SFD値を幇助情報316から取得したSFD値に、それぞれ書き換える。
【0238】
情報管理部301により新たな通信情報919が作成されると、通信制御部300が当該通信情報919を送信するように、無線通信部35を制御する。これにより、無線通信部35が当該通信情報919を救済送信の対象となる無線通信親機に向けてユニキャストで送信する。すなわち、救済送信を担当する無線通信親機が他機宛の速度変更の通信情報919を受信した場合、当該通信情報919を救済送信の対象となる無線通信親機に向けてグループ外無線通信により転送する(ステップS86)。
【0239】
このように、無線通信システム1は、端末装置9から送信される通信情報919を受信することができない蓋然性の高い無線通信親機に対しては、当該無線通信親機に対する救済送信を担当する無線通信親機を介して、通信情報919を送信する。これにより、通信情報919を確実に目的の無線通信親機に受信させることができる。
【0240】
ステップS86を実行すると、無線通信親機3,4,5は、ステップS86におけるユニキャストに対する応答があるまで待機する(ステップS87)。
【0241】
救済送信の対象である無線通信親機から応答があると(ステップS87においてYes。)、情報管理部301は、管理情報311に含まれるチャネル情報313および速度情報314を自機のグループ内無線通信に使用されるものに復旧させる(ステップS88)。
【0242】
ステップS88を実行することにより、救済送信の対象となる無線通信親機のグループに所属していた無線通信親機が、自機のグループに復帰する。例えば、無線通信親機4に速度変更の通信情報919を転送するために、一時的にグループ12に所属している状態の無線通信親機3がステップS88を実行すると、チャネル情報313および速度情報314がグループ11におけるグループ内無線通信に使用するチャネル番号および通信速度にそれぞれ復旧され、無線通信親機3はグループ11に復帰する。
【0243】
ステップS88を実行すると、無線通信親機3,4,5は、変更完了通知を実行する(ステップS89)。ただし、ステップS89における変更完了通知は、自機の通信速度の変更を完了したことを通知する通信情報919ではない。
【0244】
ステップS89を実行すると、無線通信親機3,4,5は、速度変更処理を終了して、
図8に示す処理に戻る。さらに、
図8に戻って、速度変更処理(ステップS38)を終了すると、無線通信親機3,4,5は、通信情報実行処理を終了して、
図7に示す処理に戻る。
【0245】
次に、
図8に示すステップS37においてNoの場合について説明する。ステップS37においてNoの場合とは、通信情報実行処理を開始する契機となった通信情報919が、多グループ宛の通信情報919でなく、問い合わせの通信情報919でもなく、かつ、速度変更の通信情報919でもない場合である。
【0246】
このような場合でも、情報管理部301は、当該通信情報919を解析し、当該通信情報919により通知された情報(コマンド等)に従って、必要な処理を実行する(ステップS39)。このように、無線通信親機3,4,5は、通信情報919を受信した場合(ステップS17においてYes。)、通信情報実行処理を実行することによって、受信した通信情報919を実行することができる。
【0247】
ステップS39を実行すると、無線通信親機3,4,5は、通信情報実行処理を終了して、
図7に示す処理に戻る。
【0248】
以上が、無線通信親機3,4,5によって実行される通信情報実行処理の説明である。次に、
図9に基づいて、照明装置20,21,22,23,24,25,26,27,28によって実行される通信情報実行処理について説明する。ただし、照明装置20,21,22,23,24,25,26,27,28によって実行される通信情報実行処理については、特に断らない限り、照明装置20を例に説明する。
【0249】
照明装置20は、通信情報実行処理を開始すると、過去の受信履歴を参照しつつ、新たに受信した通信情報919が重複受信によるものか否かを判定する(ステップS41)。
【0250】
通信情報実行処理を開始する契機となった通信情報919が重複受信によるものである場合(ステップS41においてYes。)、照明装置20は、当該通信情報919を破棄し、通信情報実行処理を終了する。
【0251】
通信情報実行処理を開始する契機となった通信情報919が重複受信によるものでない場合(ステップS41においてNo。)、照明装置20は、当該通信情報919を登録して受信履歴を更新する(ステップS42)。
【0252】
ステップS42を実行すると、照明装置20は、当該通信情報919を実行(ステップS43)した後、通信情報実行処理を終了する。
【0253】
ステップS43における通信情報919の実行とは、受信された通信情報919を解析し、制御コマンドが含まれている場合には、当該制御コマンドに従った動作や処理を実行することを意味する。
【0254】
照明装置20が重複受信されていない多グループ宛の通信情報919を受信した場合には、ステップS43が実行されることにより、照明装置20において当該多グループ宛の通信情報919が解析され実行される。したがって、端末装置9から送信された多グループ宛の通信情報919、または、無線通信親機3から代理送信された多グループ宛の通信情報919のいずれか一方でも受信すれば、照明装置20は、当該通信情報919を実行することができる。すなわち、具体例のように、多グループ宛の通信情報919が消灯コマンドを含む場合、CPU200が照明部204を消灯させることができる。
【0255】
また、照明装置20が、無線通信親機3から送信された通信速度を変更する指示の通信情報919を受信した場合も、ステップS43により、設定情報207に含まれる通信速度が、当該通信情報919に示される通信速度に変更される。同様に、照明装置21,22も、無線通信親機3から送信された通信速度を変更する指示の通信情報919を受信するため、同様にして通信速度も変更される。したがって、グループ内無線通信を行うすべての装置の通信速度を変更することができる。
【0256】
以上が、照明装置20,21,22,23,24,25,26,27,28によって実行される通信情報実行処理の説明である。次に、
図10に基づいて、端末装置9によって実行される通信情報実行処理について説明する。
【0257】
端末装置9の情報作成部900は、通信情報実行処理を開始すると、過去の受信履歴を参照しつつ、新たに受信した通信情報919が重複受信によるものか否かを判定する(ステップS51)。
【0258】
通信情報実行処理を開始する契機となった通信情報919が重複受信によるものである場合(ステップS51においてYes。)、情報作成部900は、当該通信情報919を破棄し、通信情報実行処理を終了する。
【0259】
通信情報実行処理を開始する契機となった通信情報919が重複受信によるものでない場合(ステップS51においてNo。)、情報作成部900は、当該通信情報919を登録して受信履歴を更新する(ステップS52)。
【0260】
次に、情報作成部900は、通信情報実行処理を開始する契機となった通信情報919が完了通知の通信情報919か否かを判定する(ステップS53)。なお、すでに説明したが、完了通知の通信情報919とは、いずれかの無線通信親機における代理送信が無事に完了したか否か、および、完了種別情報を通知する情報である。
【0261】
通信情報実行処理を開始する契機となった通信情報919が完了通知の通信情報919である場合(ステップS53においてYes。)、情報作成部900は、管理データベース911を更新し(ステップS54)、通信情報実行処理を終了して、
図7に示す処理に戻る。
【0262】
ステップS54における管理データベース911の更新とは、受信した完了通知の通信情報919に含まれる情報を管理データベース911に登録して記憶する処理である。これにより、情報作成部900は、各無線通信親機3,4,5における代理送信の状況を記録しておくことができ、以後の処理において、当該状況に応じた処理が可能となる。
【0263】
ステップS53においてNoの場合(通信情報実行処理を開始する契機となった通信情報919が完了通知の通信情報919でない場合)、情報作成部900は、さらに当該通信情報919が変更完了通知の通信情報919か否かを判定する(ステップS55)。なお、すでに説明したが、変更完了通知の通信情報919とは、いずれかの無線通信親機における速度変更が無事に完了したか否かを通知する情報である。
【0264】
通信情報実行処理を開始する契機となった通信情報919が変更完了通知の通信情報919である場合(ステップS55においてYes。)、情報作成部900は、管理データベース911を更新し(ステップS56)、通信情報実行処理を終了して、
図7に示す処理に戻る。
【0265】
ステップS56における管理データベース911の更新とは、受信した変更完了通知の通信情報919に含まれる情報を管理データベース911に登録して記憶する処理である。具体的には、当該通信情報919の作成元(すなわち、速度変更した無線通信親機が所属するグループのPANID)を検索キーとして、当該グループのレコードを特定し、当該レコードに格納されている通信速度を変更後の通信速度に書き換える。これにより、情報作成部900は、各無線通信親機3,4,5のグループ内無線通信の通信速度を記録しておくことができ、以後の処理において、当該通信速度に応じた処理が可能となる。
【0266】
次に、
図10に示すステップS55においてNoと判定された場合について説明する。ステップS55においてNoと判定された場合とは、通信情報実行処理を開始する契機となった通信情報919が完了通知の通信情報919ではなく、かつ、変更完了通知の通信情報919でもない場合である。この場合、情報作成部900は、当該通信情報919を解析して、当該通信情報919を実行し(ステップS57)、通信情報実行処理を終了して、
図7に示す処理に戻る。
【0267】
図7に戻って、監視状態において、救済開始タイマ通知が実行された場合、無線通信親機3,4,5のうち当該救済開始タイマ通知が実行された無線通信親機は、ステップS19においてYesと判定し、救済送信を開始する。
【0268】
すでに説明したように、多グループ宛の通信情報919を受信した無線通信親機が救済送信を担当する無線通信親機であった場合に、当該無線通信親機の情報管理部301によって救済開始タイマがセットされる(
図11:ステップS62)。すなわち、救済開始タイマ通知は、無線通信親機3,4,5の中で救済送信を担当する無線通信親機においてのみ発生する。したがって、具体例においては、無線通信親機5は救済送信を担当することはないため、ステップS19においてYesと判定することはない。
【0269】
また、救済開始タイマ通知によって通知されるタイミングは、概ね、無線通信親機が多グループ宛の通信情報919を受信してから、幇助情報316に含まれる時間情報に示されている時間が経過したタイミングである。
【0270】
これまでの説明で明らかなように、端末装置9からの多グループ宛の通信情報919のブロードキャスト(
図7:ステップS13)は、すべてのグループ11,12,13に対して比較的短期間に集中して行われる。すなわち、無線通信親機3,4,5における多グループ宛の通信情報919の受信は、比較的短時間の間に集中すると予想される。また、端末装置9から送信された多グループ宛の通信情報919を正常に受信できた場合、無線通信親機3,4,5は、自機と同一のグループに所属する照明装置に対する代理送信(
図11:ステップS64)を速やかに開始する。
【0271】
このような状況において、例えば、無線通信親機3が、多グループ宛の通信情報919を受信したときに、直ちに、無線通信親機4に対する救済送信を開始すると、無線通信親機4による代理送信との間で通信の衝突を生じる危険性が高くなる。そこで、無線通信システム1は、先述のように、タイマ部34による救済開始タイマ通知を待ってから、救済送信を開始することにより、このような通信の衝突を回避することができる。
【0272】
ただし、救済送信の開始を長時間遅らせるとすると、処理遅延を招くことになる。したがって、本実施の形態における無線通信システム1は、「1回のブロードキャストに要する時間×{5回(端末装置9におけるブロードキャストの回数)+3回(無線通信親機におけるブロードキャストの回数)}×全グループ数」で求まる時間を用いる。これにより、通信の衝突を抑制しつつ、処理遅延の増大を抑制することができる。なお、幇助情報316に予め格納する時間情報の値はこれに限定されるものではない。
【0273】
救済送信を開始した無線通信親機3,4,5は、救済送信により送信する通信情報919を作成する(ステップS20)。
【0274】
ステップS20において、情報管理部301は、まず、管理情報311に含まれる幇助情報316から救済送信に必要な情報を取得する。このとき取得する情報とは、グループ識別情報312(すなわち、救済送信の対象となるグループのPANID)、当該PANIDで示されるグループに所属する無線通信親機のアドレス(すなわち、救済送信の宛先アドレス)、当該PANIDで示されるグループのチャネル情報313(すなわち、救済送信に使用するチャネルの番号)、当該PANIDで示されるグループの速度情報314(すなわち、救済送信に使用する通信速度)、および、当該PANIDで示されるグループのSFD値317(すなわち、救済送信を行うグループのSFD値)である。
【0275】
次に、情報管理部301は、幇助情報316から取得したチャネル情報313に示されているチャネル番号を管理情報311に含まれるチャネル情報313に格納するとともに、幇助情報316から取得した速度情報314に示されている通信速度を管理情報311に含まれる速度情報314に格納する。
【0276】
これにより、救済送信を開始した無線通信親機は、一時的に、救済送信の対象となる無線通信親機と同一のグループに所属する装置として振る舞うことが可能となる。言い換えれば、このような状態の無線通信親機により実行される救済送信は、当該無線通信親機と同一のグループ以外のグループにおける無線通信となる。したがって、救済送信は、当該救済送信を担当する無線通信親機にとっては、グループ外無線通信である。
【0277】
また、情報管理部301は、すでに受信している多グループ宛の通信情報919に付加されている情報を適宜書き換えることにより、新たな多グループ宛の通信情報919を作成する。このとき情報管理部301は、送信先を幇助情報316から取得した救済送信の宛先アドレスに、送信元を自機のアドレスに、SFD値を幇助情報316から取得したSFD値に、それぞれ書き換える。
【0278】
ステップS20が実行され、情報管理部301により新たな通信情報919が作成されると、通信制御部300が当該通信情報919を送信するように、無線通信部35を制御する。これにより、無線通信部35が当該通信情報919を救済送信の対象となる無線通信親機に向けてユニキャストで救済送信する(ステップS21)。
【0279】
救済送信を担当する無線通信親機は、救済送信の対象となっている無線通信親機に対する無線通信が可能であろうと想定される無線通信親機が予め指定されている。したがって、無線通信親機3,4,5は、例え端末装置9からブロードキャストにより送信された多グループ宛の通信情報919を受信することができなくても、救済送信の対象とされていれば、当該救済送信を担当する無線通信親機から同一の多グループ宛の通信情報919を受信することができる。
【0280】
具体例では、無線通信親機3が無線通信親機4に救済送信を行う。また、無線通信親機4が無線通信親機5に救済送信を行う。特に、無線通信親機5は、エリア10外に存在しており、端末装置9から送信される多グループ宛の通信情報919を受信することはできないが、無線通信親機4による救済送信により、当該通信情報919を受信することができる。したがって、無線通信親機5と同一のグループ13に所属する照明装置26,27,28も、エリア10外に存在しており、端末装置9から送信される多グループ宛の通信情報919を受信することはできないが、無線通信親機5から代理送信により当該通信情報919を受信することができる。
【0281】
なお、ステップS21を実行すると、無線通信親機3,4,5は、監視状態に戻る。
【0282】
監視状態において、完了確認タイマ通知が実行されると、端末装置9はステップS21においてYesと判定し、各無線通信親機3,4,5が代理送信を無事に完了したか否かを知得するために、各無線通信親機3,4,5に向けて問い合わせの通信情報919をユニキャストで送信する(ステップS23)。
【0283】
ステップS23において送信される問い合わせの通信情報919は、救済送信を担当する無線通信親機に対しては、当該救済送信の対象となる無線通信親機についても送信される。一方で、救済送信の対象となる無線通信親機に対しては、端末装置9から、直接、当該問い合わせの通信情報919を送信することはない。すなわち、救済送信の対象となる無線通信親機に対する問い合わせの通信情報919は、当該救済送信を担当する無線通信親機を介して送信される。
【0284】
ステップS23を実行すると、情報作成部900は、所定の時間待機した後、通信速度の変更対象が存在するか否かを判定する(ステップS24)。なお、ここに言う「所定の時間」とは、ステップS23において送信した通信情報919に対する応答時間として適当な時間である。
【0285】
ステップS24において、情報作成部900は、無線通信親機3,4,5における代理送信の状況に応じて、通信速度を落とすべき無線通信親機3,4,5を判定する。通信速度の変更対象となる無線通信親機とは、具体的には、代理送信を完了することができなかった無線通信親機、および、救済送信により受信した多グループ宛の通信情報919により代理送信を完了した無線通信親機である。
【0286】
なお、代理送信を完了することができなかった無線通信親機とは、端末装置9が完了通知情報319を受信できなかった無線通信親機である。また、代理送信を完了することはできたが、救済送信により受信した多グループ宛の通信情報919により代理送信を完了した無線通信親機とは、端末装置9から送信された多グループ宛の通信情報919を受信できなかった無線通信親機である。
【0287】
また、本実施の形態では、通信速度として「高速」または「低速」のみが設定可能である。したがって、すでに「低速」でグループ内無線通信を行っている無線通信親機の通信速度をさらに落とすことはできない。したがって、本実施の形態における無線通信システム1では、ステップS24における通信速度の変更対象となる無線通信親機は、「高速」でグループ内無線通信を行っている無線通信親機に限定される。
【0288】
通信速度の変更対象となる無線通信親機が存在する場合(ステップS24においてYes。)、端末装置9は、当該無線通信親機に対する速度変更の通信情報919を作成し、当該通信情報919をユニキャストで送信する(ステップS25)。
【0289】
ステップS25において送信される速度変更の通信情報919は、救済送信を担当する無線通信親機に対しては、当該救済送信の対象となる無線通信親機についても送信される。一方で、救済送信の対象となる無線通信親機に対しては、端末装置9から、直接、当該速度変更の通信情報919を送信することはない。すなわち、救済送信の対象となる無線通信親機に対する速度変更の通信情報919は、当該救済送信を担当する無線通信親機を介して送信される。
【0290】
なお、ステップS25を実行すると、端末装置9は監視状態に戻る。
【0291】
一方、ステップS24においてNoの場合(通信速度の変更対象となる無線通信親機が存在しない場合)、情報作成部900は、ステップS25をスキップし、監視状態に戻る。したがって、この場合は、速度変更の通信情報919が作成されることはなく、速度変更の通信情報919が送信されることもない。
【0292】
このように、無線通信システム1では、ステップS24により、端末装置9から送信された多グループ宛の通信情報919を受信することができなかった無線通信親機を検出することができる。そして、このような無線通信親機に対する速度変更の通信情報919により、当該無線通信親機の通信速度を低速に変更する。これにより、受信側の受信感度を緩和できるので、当該無線通信親機と端末装置9との間の無線通信における利得を上げることになり、変更後は、当該無線通信親機と端末装置9との間の無線通信に成功する可能性が高まる。
【0293】
以上が、無線通信方法に関する説明である。次に、通信情報919に関するシーケンス図を用いて、無線通信方法をさらに説明する。
【0294】
図14は、無線通信方法を示すシーケンス図である。なお、
図14において、グループ12のチャネル番号は「12ch」、グループ13のチャネル番号は「13ch」として示している。また、
図14において、太線で示す通信はブロードキャストによる通信であり、破線で示す通信はユニキャストによる通信である。また、
図14において、SEQで示す値は、シーケンス番号を示す。シーケンス番号は、当該シーケンス番号を発行する各装置において、予め定められた規則に従って発行される。したがって、
図14に示すシーケンス番号は、特に断らない限り、あくまでも例示である。
【0295】
端末装置9から送信された「12ch,SEQ10」を付したブロードキャストによる通信は、チャネル番号「12ch」、シーケンス番号「SEQ10」で送信されていることを示している。このとき送信された通信情報919は多グループ宛の通信情報919である。
【0296】
端末装置9から送信された「12ch,SEQ10」を付したブロードキャストによる通信は、エリア10内に存在する無線通信親機4および照明装置24によって受信されている。これにより、照明装置24は消灯する。
【0297】
無線通信親機4は、端末装置9から送信された多グループ宛の通信情報919を受信したため、「12ch,SEQ10」を付したブロードキャストによる通信を実行する。これは代理送信であり、送信された多グループ宛の通信情報919は、無線通信親機4の無線通信子機である照明装置24によっても受信される。ただし、これは重複受信と判定されるため、照明装置24において実行されることはない。
【0298】
次に、グループ移行が実施され、多グループ宛の通信情報919が「13ch,SEQ10」を付したブロードキャストによる通信が端末装置9により実行される。このとき送信される多グループ宛の通信情報919は、チャネル番号の異なる無線通信親機4や照明装置24によって受信されることはない。また、無線通信親機5および照明装置26は、チャネル番号が一致しているため、無線電波が到達するならば当該多グループ宛の通信情報919を受信することができる。しかし、無線通信親機5および照明装置26は、エリア10外に存在しているため、
図14において「×」で示すように、端末装置9から送信された当該多グループ宛の通信情報919を受信することはできない。
【0299】
しかし、無線通信親機4が当該多グループ宛の通信情報919を端末装置9から受信しているため、救済開始タイマ通知の後に、「13ch,SEQ10」を付したユニキャストによる通信で、当該多グループ宛の通信情報919を無線通信親機5に向けて送信する。この送信は、無線通信親機4による救済送信である。
【0300】
このユニキャストによる送信は、無線通信親機5との間で無線通信が可能である蓋然性の高いと予測された無線通信親機4がグループ外無線通信にて送信するものである。したがって、予測どおり、無線通信親機5によって当該多グループ宛の通信情報919は受信されており、当該ユニキャストに対するACKが「13ch,ACK」を付したユニキャストによる通信により無線通信親機4に対して返される。
【0301】
また、無線通信親機5が無線通信親機4による救済送信により、多グループ宛の通信情報919を受信したことにより、無線通信親機5が「13ch,SEQ10」を付したブロードキャストによる通信を実行する。この通信は、無線通信親機5による代理送信である。
【0302】
照明装置26は、エリア10外に存在しているため、端末装置9からブロードキャストにより送信された多グループ宛の通信情報919を受信することはできなかったが、無線通信親機5から代理送信された同一の多グループ宛の通信情報919を受信することができる。したがって、照明装置26は、消灯する。
【0303】
端末装置9が「12ch,SEQ20」を付してユニキャストによる通信で送信する通信情報919は、完了確認タイマ通知によって送信される情報であり、無線通信親機4における代理送信が無事に完了しているか否かを問い合わせる通信情報919(問い合わせの通信情報919)である。当該通信情報919は、無線通信親機4がエリア10内に存在しているため、無線通信親機4によって受信され、「12ch,ACK」が付されたACK(無線通信親機4の完了通知)が端末装置9に向けて返信される。
【0304】
また、端末装置9が「12ch,SEQ21」を付してユニキャストによる通信で送信する通信情報919は、無線通信親機5に対する問い合わせの通信情報919である。この通信情報919は、無線通信親機5に向けて送信されるのではなく、
図14に示すように、無線通信親機4に対して送信されている(厳密には、さらに無線通信親機3を介して送信されるがここでは省略する。)。
【0305】
無線通信親機5に対する問い合わせの通信情報919を受信した無線通信親機4は、当該通信情報919を「13ch,SEQ30」を付したユニキャストによる通信で無線通信親機5に向けて送信する。無線通信親機4と無線通信親機5は、互いに無線通信が可能であるから、当該通信情報919は無線通信親機5によって受信され、「13ch,ACK」を付したユニキャストによりACK(無線通信親機5の完了通知)が無線通信親機4に返信される。
【0306】
当該ACKを受信した無線通信親機4は、端末装置9に対して「12ch,ACK」を付したユニキャストにより、当該ACK(無線通信親機5の完了通知)を送信する(より厳密には無線通信親機3を介して送信されるが省略する。)。この完了通知は、端末装置9によって受信される。
【0307】
以上のように、互いに非同期の無線通信を行う複数のグループ11,12,13が定義される無線通信システム1は、複数のグループ11,12,13のそれぞれに少なくとも1つ割り当てられる複数の無線通信子機(照明装置20,21,22,23,24,25,26,27,28)と、複数のグループ11,12,13のそれぞれに少なくとも1つ割り当てられ、複数の無線通信子機のうち自機と同一のグループに含まれる無線通信子機との間でグループ内無線通信を行う複数の無線通信親機3,4,5と、複数のグループ11,12,13のうちのグループごとのブロードキャストにより、当該ブロードキャストの対象となったグループに含まれる無線通信親機および無線通信子機に対して通信情報919を送信する端末装置9とを備えている。そして、無線通信親機3,4,5は、端末装置9から送信された通信情報919を受信したときに、グループ内無線通信を用いて、自機と同一のグループに割り当てられている無線通信子機に向けて、当該通信情報919を代理送信する。これにより、無線通信システム1は、通信情報919を無線通信子機に確実に受信させることができる。
【0308】
また、無線通信親機3,4,5は、グループ内無線通信を用いた代理送信をブロードキャストにより実行する。同時に複数の装置宛に送信可能なブロードキャストを用いることにより、多グループ宛の通信情報919の送信回数を抑制することができる。また、同時に複数の装置に受信させることが可能なブロードキャストを用いることにより、多グループ宛の通信情報919の無線通信子機における到着時間のバラツキを抑制することができる。
【0309】
また、無線通信親機3,4,5は、グループ内無線通信を用いた代理送信が完了した後に、複数の無線通信親機3,4,5のうち自機と異なるグループに含まれる無線通信親機との間のグループ外無線通信に切り替え、当該グループ外無線通信を用いて、自機と異なるグループに含まれる無線通信親機に向けて、端末装置9から受信した通信情報919を救済送信する。これにより、端末装置9からの通信情報919を受信することができなかった無線通信親機3,4,5のグループにも、より確実に通信情報919を受信させることが可能となる。
【0310】
また、無線通信親機3,4,5は、グループ外無線通信を用いた救済送信を開始するタイミングを決定するための時間情報(幇助情報316)を記憶する。これにより、救済送信を開始するタイミングを適切に制御することができ、無線通信の衝突を抑制することができる。
【0311】
また、無線通信親機3,4,5は、グループ外無線通信を用いた救済送信が完了した後に、代理送信が完了したことを示す完了通知情報319を端末装置9に向けて送信する。これにより、救済送信によって多グループ宛の通信情報919を受信することができた無線通信親機3,4,5を端末装置9に確実に知らせることができる。
【0312】
なお、上記実施の形態では、無線通信システム1は、照明システムを構成するとして説明したが、無線通信システム1は照明システムに限定されるものではない。
【0313】
例えば、無線通信システム1は、周囲の環境を観測するとともに無線通信機能を有する複数のセンサを無線通信子機として備えたセンサネットワークシステムであってもよい。例えば、これら複数のセンサに記憶されているファームウェアを更新する場合に、新しいファームウェアを多グループ宛の通信情報919として、端末装置9から送信することが想定される。あるいは、各センサの動作状況などを一括して確認するために、すべてのセンサに自機情報を端末装置9に送信させるように指示する情報を多グループ宛の通信情報919として端末装置9から送信することなども想定される。
【0314】
また、例えば、無線通信システム1は、無線通信機能を有するとともに閲覧者に所定の情報を提供する複数のディスプレイ装置を無線通信子機として備えた情報提供システムであってもよい。例えば、このような無線通信システム1を大規模商業施設に設置し、各グループを各店舗に割り当てるようにしてもよい。この場合に、送信される多グループ宛の通信情報919としては、複数の店舗に共通した情報(当該大規模商業施設に共通のイベントの開催通知や、近隣の天気、交通、観光に関する情報、地震速報、気象警報、駐車場の出庫情報など)を一斉に表示させる情報が想定される。
【0315】
<2. 変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。
【0316】
例えば、上記実施の形態に示した各工程は、あくまでも例示であって、上記に示した順序や内容に限定されるものではない。すなわち、同様の効果が得られるならば、適宜、順序や内容が変更されてもよい。
【0317】
また、上記実施の形態に示した機能ブロックは、CPUがプログラムに従って動作することにより、ソフトウェア的に実現されると説明した。しかし、これらの機能ブロックの一部または全部を専用の論理回路で構成し、ハードウェア的に実現してもよい。
【0318】
上記実施の形態では、幇助情報316に予め待ち時間としての時間情報を格納するように構成していた。しかし、救済送信を担当する無線通信親機に当該時間情報を予め記憶させておかなくてもよい。端末装置9は、どの無線通信親機がどの無線通信親機に対して救済送信を実行するか記憶している。したがって、救済送信を担当する無線通信親機に向けて多グループ宛の通信情報919をブロードキャストするときに、当該通信情報919に時間情報に相当する情報を付加して送信するようにしてもよい。このように構成することによっても、救済送信の開始を適切に遅らせることができ、同様の効果を得ることができる。
【0319】
また、上記実施の形態では、多グループ宛の通信情報919は、グループ移行後(
図7:ステップS15)においてもシーケンス番号を変化させない状態で端末装置9から送信するとして説明した。しかし、例えば、シーケンス番号を変化させるとともに、当該変化をオフセット値として当該通信情報919に付加して送信することにより、当該通信情報919の受信側の無線通信親機3,4,5において、代理送信や救済送信における通信情報919のシーケンス番号を、オフセット値に基づいて演算するように構成してもよい。あるいは、オフセット値のみ予め無線通信親機3,4,5に記憶させてもよい。すなわち、重複受信を判定することができるのであれば、どのように構成してもよい。
【0320】
また、上記実施の形態では、予定された無線通信親機(幇助情報316を記憶している無線通信親機)によって自動的に救済送信が実施されると説明した。しかし、一定時間経過後に実施する完了通知(
図12:ステップS75)を受信した端末装置9が、代理送信を完了することができた無線通信親機に、代理送信を完了することができなかった無線通信親機に対する救済送信を実施するように依頼してもよい。なお、代理送信を完了することができた無線通信親機とは、端末装置9から送信された多グループ宛の通信情報919を受信できた無線通信親機である。また、代理送信を完了することができなかった無線通信親機とは、端末装置9から送信された多グループ宛の通信情報919を受信できなかった無線通信親機である。すなわち、端末装置9は、複数の無線通信親機3,4,5から送信された完了通知情報319(完了通知の通信情報919)に基づいて複数の無線通信親機3,4,5のうちグループ内無線通信を用いた代理送信を完了していない未完了の無線通信親機を特定し、グループ外無線通信を用いて当該未完了の無線通信親機に向けて多グループ宛の通信情報919を救済送信させるための通信情報919を当該未完了の無線通信親機以外の無線通信親機に向けて送信してもよい。このように構成することにより、無駄な救済送信を抑制することができる。
【0321】
また、上記実施の形態では、グループ内無線通信において採用する通信速度を低速に落とす場合についてのみ説明した。しかし、一旦、低速にした通信速度を高速に上げるようにしてもよい。高速に変更するには、通信速度を高速に変更する指示の通信情報919を端末装置9が送信することにより実現できる。また、高速に戻すタイミングは、例えば、低速による通信に所定回数以上成功したタイミングで、通信速度を高速に変更することが考えられる。あるいは、所定の時間経過後に、高速に戻してトライする。あるいは、低速に変更してから、日や週、月等が改まったときに、高速に戻してトライするようにしてもよい。またあるいは、天気や温度等が変化したタイミングで高速に変更してもよい。
【0322】
また、上記実施の形態では、低速に落とした場合、その後は継続的に低速によるグループ内無線通信を実行するとして説明した。しかし、例えば、無線通信親機3,4,5が比較的短い時間間隔で、高速と低速とを切り替えて無線通信を行うようにしてもよい。例えば、端末装置9からの多グループ宛の通信情報919は、比較的短時間の間に複数回のブロードキャストにより繰り返し送信される。したがって、このような切り替えによっても、タイミングが合ったときに当該通信情報919を受信することができる。
【0323】
また、無線通信親機3,4,5がグループ外無線通信を用いた救済送信を開始するタイミングを決定するための時間情報を、端末装置9が多グループ宛の通信情報919に付加してもよい。このように構成した場合であっても、救済送信を担当する無線通信親機3,4,5が適切なタイミングで救済送信を開始することができ、上記実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0324】
また、上記実施の形態では、予め救済送信を担当する無線通信親機が決定されており、当該無線通信親機から多グループ宛の通信情報919が未完了の無線通信親機に向けて救済送信されると説明した。しかし、例えば、端末装置9は、完了通知情報319を送信してきた無線通信親機に向けて、未完了の無線通信親機に向けて多グループ宛の通信情報919を救済送信させるための通信情報919を送信してもよい。これにより、端末装置9と間で通信可能な無線通信親機に依頼することができ、確実に通信情報919を受信させることができる。