【解決手段】振動発電機1は、横方向X、縦方向Y及び高さ方向Zを有する筐体2と、筐体2の内部に固定されるコイル3と、コイル3と横方向Xに相対移動可能な振動子4と、振動子4を挟んで横方向Xに離間し、筐体2の振動を振動子4に伝達する一対の板ばね5、5と、を備える。振動子4は、コイル3を挟んで高さ方向Zに離間する複数の永久磁石6と、コイル3及び永久磁石6を囲むように配置されるヨーク7とを含む。振動発電機1が振動物体に固定されると、振動物体の振動が筐体2を介して一対の板ばね5、5に伝達され、振動子4が振動する。そして、振動子4に含まれる永久磁石6と、筐体2に固定されるコイル3との相対的な位置が変化し、電磁誘導によってコイル3に起電力が生じる。
前記ヨークは、前記板ばねが各々連結され、前記横方向に離間して対向する第1壁部及び第2壁部と、前記第1壁部及び前記第2壁部に連続するとともに、前記高さ方向に離間して対向する第3壁部及び第4壁部とを有し、
前記永久磁石は、前記第3壁部の内面に取り付けられる第1磁石及び第2磁石と、前記第1磁石及び前記第2磁石と各々対向し、前記第4壁部の内面に取り付けられる第3磁石及び第4磁石とを有し、
前記第1磁石及び前記第3磁石は、互いに対向する磁極面が異磁極となるように配置され、
前記第2磁石及び前記第4磁石は、互いに対向する磁極面が異磁極となるように配置され、
前記第3磁石に対向する前記第1磁石の磁極面と、前記第4磁石に対向する前記第2磁石の磁極面とが異磁極となるように配置される
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の振動発電機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術を含む従来の技術では、低い固有振動数に対して高出力かつコンパクトな振動発電機を実現できていない。
【0006】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とすることは、低い固有振動数に対しても高出力かつコンパクトな振動発電機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するための本発明は、横方向、縦方向及び高さ方向を有する筐体と、前記筐体の内部に固定されるコイルと、前記コイルと前記横方向に相対移動可能な振動子と、前記振動子を挟んで前記横方向に離間して配置されるとともに、前記筐体の振動を前記振動子に伝達する一対の板ばねと、を備え、前記振動子は、前記コイルを挟んで前記高さ方向に離間する複数の永久磁石と、前記コイル及び前記永久磁石を囲むように配置されるヨークとを含むことを特徴とする振動発電機である。
【0008】
本発明は、一対の板ばねによって筐体の振動を振動子に伝達するので、固有振動数によって振動子が振動する時の摩擦の発生を抑えることができ、固有振動数による共振が安定し、低い固有振動数に対しても高い出力が得られる。また、コイルを挟んで複数の永久磁石を配置するとともに、コイル及び永久磁石を囲むようにヨークが配置されるので、コイルの起電力に寄与する磁束密度が上昇し、永久磁石やコイルのサイズが小さくても高い出力が得られる。
【0009】
また、本発明における前記板ばねは、長手方向、前記長手方向と直交する幅方向、並びに前記長手方向及び前記幅方向と直交する厚さ方向を有し、前記長手方向が前記縦方向、前記幅方向が前記高さ方向、及び前記厚さ方向が前記横方向となるように、前記長手方向の両端部が前記筐体に支持されるとともに、前記長手方向の中央部において前記振動子と連結され、前記両端部における前記幅方向の寸法が前記中央部における前記幅方向の寸法よりも大きくなるようにしても良い。
【0010】
これによって、筐体に支持される長手方向の両端部における幅方向の寸法が長手方向の中央部における幅方向の寸法よりも大きいので、板ばねの中央部の可撓性が向上し、固有振動数による振動子の共振時の速度が増大するので、低い固有振動数に対しても高い出力が得られる。また、振動子の振動方向が安定し、振動子とコイルとの接触の恐れがないので、高さ方向に離間して配置される永久磁石間の距離を小さくすることができる。従って、コイルの起電力に寄与する磁束密度が上昇し、永久磁石やコイルのサイズが小さくても高い出力が得られる。特に、高さ方向の寸法を小さくすることができ、装置の薄型化が可能となる。
【0011】
また、本発明における前記ヨークは、前記板ばねが各々連結され、前記横方向に離間して対向する第1壁部及び第2壁部と、前記第1壁部及び前記第2壁部に連続するとともに、前記高さ方向に離間して対向する第3壁部及び第4壁部とを有し、前記永久磁石は、前記第3壁部の内面に取り付けられる第1磁石及び第2磁石と、前記第1磁石及び前記第2磁石と各々対向し、前記第4壁部の内面に取り付けられる第3磁石及び第4磁石とを有し、前記第1磁石及び前記第3磁石は、互いに対向する磁極面が異磁極となるように配置され、前記第2磁石及び前記第4磁石は、互いに対向する磁極面が異磁極となるように配置され、前記第3磁石に対向する前記第1磁石の磁極面と、前記第4磁石に対向する前記第2磁石の磁極面とが異磁極となるように配置されるようにしても良い。
【0012】
これによって、コイルを通過する3つの磁力線のループが形成されるので、コイルの起電力に寄与する磁束密度が上昇し、低い固有振動数に対しても高い出力が得られるとともに、コンパクトな装置構成とすることができる。
【0013】
また、本発明における前記コイルは、巻軸方向と直交する断面が環状体となるように巻回され、前記巻軸方向が前記高さ方向となるように配置され、前記コイルは、前記縦方向に延びるとともに、前記横方向に離間する第1直線部及び第2直線部を有し、前記第1磁石及び前記第3磁石は、前記第1壁部側に取り付けられ、前記コイルの前記第1直線部を挟んで対向し、前記第2磁石及び前記第4磁石は、前記第2壁部側に取り付けられ、前記コイルの前記第2直線部を挟んで対向するようにしても良い。
【0014】
これによって、第1磁石〜第4磁石及びヨークによる3つの磁力線のループがコイルの第1直線部及び第2直線部を通過するように形成されるとともに、コイルの第1直線部及び第2直線部が延びる方向と、第1磁石〜第4磁石が振動する方向とが直交するので、コイルを形成するコイル線の多くを電磁誘導に関して有効に機能させることができる。
【0015】
また、本発明における前記筐体には、前記板ばねの前記両端部が挿入される溝部が形成され、前記溝部の溝幅の寸法は、前記板ばねの前記厚さ方向の寸法よりも大きくなるようにしても良い。
【0016】
これによって、板ばねは、両端固定ではなく、両端支持となり、板ばねのばね定数を低く抑えることができ、低い固有振動数で共振が可能となる。
【0017】
また、本発明は、前記板ばねのばね定数を調整する調整機構を備えるようにしても良い。
【0018】
これによって、振動物体に応じて振動発電機が共振する固有振動数を調整することができるので、様々な構造物に利用可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、低い固有振動数に対しても高出力かつコンパクトな振動発電機を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明の実施形態に係る振動発電機は、橋梁や道路等の構造物、機械、配管等の振動物体に固定され、振動物体の振動エネルギーを電気エネルギーに変換し、無線送信モジュール等の各種モジュール又は各種センサ類に電力を供給する。尚、各実施形態において共通する部分には同一符号又は関連する符号を付けて、重複する説明を省略する。
【0022】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る振動発電機1の斜視図であり、説明のために上部23の一部を破断してその内部が見えるようにしている。尚、
図1においては、上部23の一部の概形を二点鎖線で示している。
図2は
図1のII−II線断面図であり、
図3は
図1のIII−III線断面図であるが、上部23が設置された状態で示している。
図4は、振動発電機1の上部23側から見た正面図であって、その内部の説明のために上部23を外した状態を示している。
【0023】
図1〜
図4を参照すると、振動発電機1は、横方向X、縦方向Y及び高さ方向Zを有する筐体2と、筐体2の内部に固定されるコイル3と、コイル3と横方向Xに相対移動可能な振動子4と、振動子4を挟んで横方向Xに離間し、筐体2の振動を振動子4に伝達する一対の板ばね5、5と、を備える。振動子4は、コイル3を挟んで高さ方向Zに離間する複数の永久磁石6と、コイル3及び永久磁石6の横方向X及び高さ方向Zを囲むように配置されるヨーク7とを含む。
【0024】
筐体2は、例えば樹脂やアルミ合金等の非磁性体であり、コイル3が固定される固定部21と、両側部22と、上部23と、を備える。固定部21は、底面211及び両端面212を有する。底面211は、上部23と高さ方向Zに離間して対向する。両端面212は、底面211の縦方向Yの両端からそれぞれ高さ方向Zに延び、縦方向Yに離間して対向する。
【0025】
両側部22は、X方向に離間して対向する。この実施形態において、横方向Xに延びる面を両端面212と両側部22の一部で構成し、縦方向Yに延びる面を両側部22の他の部分で構成する。筐体2は、コイル3、振動子4及び一対の板ばね5、5を内部に収納し、上部23、両側部22及び固定部21が四本のねじ81によって四隅をねじ止めされて連結され、方形箱形状をなす。
【0026】
特に
図3及び
図4を参照すると、固定部21には、底面211から高さ方向Zに起立する柱体であって、縦方向Yに離間する一対のボビン台部213、213が形成されている。ボビン台部213には、二本のねじ82によってコイルボビン24が固定される。コイルボビン24は、平面視がいわゆるレーストラック形状の柱体であり、コイル3が巻回されている。このとき、コイル3の巻軸方向は、高さ方向Zとなる。コイル3のコイル線は、巻軸方向に螺旋状に巻回され、複数段積層されるとともに、巻軸方向と直交する方向に同心円状に複数回巻回される。これによって、コイル3は、巻軸方向と直交する断面が環状体となり、縦方向Yに延び、横方向Xに離間する第1直線部31及び第2直線部32と、第1直線部31及び第2直線部32と連続する一対の曲線部33、33とを有する。コイル3の高さ方向Zの寸法は、コイルボビン24の高さ方向Zの寸法と略同一である。尚、コイルボビン24は、ボビン台部213と一体成型されても良い。
【0027】
上記のような構造において、筐体2とコイル3は、ボビン台部213等を介して互いに固定されているから、これらは相対移動することはない。これに対して、振動子4は板ばね5を介して筐体2に支持されるから、板ばね5が撓むと振動子4が筐体2に対して相対移動する。板ばね5は横方向Xすなわち
図4の左右方向に撓み、これに伴い振動子4も横方向Xに振動する。
【0028】
コイル3のコイル線の両端部には、不図示の端子が電気的に接続される。端子は、例えば、固定部21の端面212に形成される不図示の孔から筐体2の外部に引き出されても良い。一方、電力負荷となる各種モジュールを筐体2内に収納し、各種モジュールと振動発電機1を一体化する場合、端子が筐体2の外部に引き出される必要はない。
【0029】
図5を参照すると、板ばね5は、例えば、ばね用ステンレス鋼を材料とし、長手方向Lと、長手方向Lと直交する幅方向Wと、長手方向L及び幅方向Wと直交する厚さ方向T(=紙面と直交する方向)と、を有する。一対の板ばね5、5は、長手方向Lが縦方向Y、幅方向Wが高さ方向Z、及び厚さ方向Tが横方向Xとなるように筐体2に支持されるとともに、振動子4と連結される。
【0030】
板ばね5は、両端部51における幅方向Wの寸法が中央部52における幅方向Wの寸法よりも大きく、厚さ方向Tから見た平面視がH形状である。これによって、板ばね5の中央部52の可撓性が向上し、固有振動数による振動子4の共振時の速度が増大するので、低い固有振動数に対しても高い出力が得られる。
【0031】
再び
図4を参照すると、一対の板ばね5、5は、それぞれ長手方向Lの両端部51が筐体2に支持され、長手方向Lの中央部52において、それぞれ二本のねじ83によって振動子4と連結される。筐体2には、板ばね5を支持する溝部25が形成されている。溝部25は、各端面212の内側の二か所に、横方向Xに離間して設けられる。すなわち、溝部25は、四か所に設けられる。各溝部25には、一対の板ばね5、5の両端部51が挿入される。
【0032】
図6を参照すると、溝部25の溝幅(=横方向X)の寸法D1は、板ばね5の厚さ方向T(=横方向X)の寸法D2よりも大きい。これによって、板ばね5は、両端固定ではなく、両端支持となり、板ばね5のばね定数を低く抑えることができ、低い固有振動数で共振が可能となる。
【0033】
再び
図2及び
図4を参照すると、一対の板ばね5、5の両端部51における幅方向W(=高さ方向Z)においては、筐体2の固定部21及び上部23によってほぼ隙間なく挟まれ(
図2参照)、長手方向L(=縦方向Y)においては、両側部22によってほぼ隙間なく挟まれている(
図4参照)。これによって、一対の板ばね5、5は、厚さ方向T(=横方向X)以外への移動が規制されるので、これに連結する振動子4も、横方向X以外への移動が規制される。
【0034】
このように構成された一対の板ばね5、5によって筐体2の振動を振動子4に伝達するので、固有振動数によって振動子4が振動する時の摩擦の発生を抑えることができ、固有振動数による共振が安定し、低い固有振動数に対しても高い出力が得られる。また、コイル3を挟んで複数の永久磁石6を配置するとともに、コイル3及び永久磁石6を囲むようにヨーク7が配置されるので、コイル3の起電力に寄与する磁束密度が上昇し、永久磁石6やコイル3のサイズが小さくても高い出力が得られる。
【0035】
更に、振動子4の振動方向が安定し、振動子4とコイル3との接触の恐れがないので、コイル3の巻軸方向に離間して配置される複数の永久磁石6間の距離を小さくすることができる。従って、コイル3の起電力に寄与する磁束密度が上昇し、永久磁石6やコイル3のサイズが小さくても高い出力が得られる。
【0036】
再び
図2を参照すると、ヨーク7は、磁性体を材料とし、横方向Xに離間して対向する第1壁部71及び第2壁部72と、高さ方向Zに離間して対向する第3壁部73及び第4壁部74と、を有する。第1壁部71及び第2壁部72には、それぞれ板ばね5がねじ83によって連結される。
【0037】
第3壁部73及び第4壁部74は、それぞれ、ねじ84によって第1壁部71及び第2壁部72と連結される。これによって、第1壁部71〜第4壁部74は、コイル3及び永久磁石6の横方向X及び高さ方向Zを囲むように縦方向Yに延びる筒形状を形成する。尚、第1壁部71〜第4壁部74は、一体成型されても良い。すなわち、第1壁部71及び第2壁部72と、第3壁部73及び第4壁部74は、磁性体として連続していれば良い。
【0038】
永久磁石6は、第3壁部73の内面731において横方向Xに離間して取り付けられる第1磁石61及び第2磁石62と、第4壁部74の内面741において横方向Xに離間して取り付けられる第3磁石63及び第4磁石64とを有する。第1磁石61〜第4磁石64は、ほぼ直方体の同一形状を有する。永久磁石6は、例えば接着剤等を用いて第3壁部73の内面731及び第4壁部74の内面741に固定される。
【0039】
第1磁石61及び第3磁石63は、第1壁部71側に取り付けられ、コイル3の第1直線部31を挟んで対向する。第2磁石62及び第4磁石64は、第2壁部72側に取り付けられ、コイル3の第2直線部32を挟んで対向する。従って、コイル3の第1直線部31及び第2直線部32が延びる方向(=縦方向Y)と、振動子4が振動する方向(=横方向X)とが直交するので、コイル3の第1直線部31及び第2直線部32を形成するコイル線の多くを電磁誘導に関して有効に機能させることができる。
【0040】
図7は、永久磁石6の着磁方向及び磁力線の向きを説明するために、
図2におけるコイル3の第1直線部31及び第2直線部32並びに振動子4のみを図示している。第1磁石61及び第3磁石63は、互いに対向する磁極面が異磁極となるように配置され、第2磁石62及び第4磁石64は、互いに対向する磁極面が異磁極となるように配置される。また、第3磁石63に対向する第1磁石61の磁極面と、第4磁石64に対向する第2磁石62の磁極面とが異磁極となるように配置される。
【0041】
この実施形態においては、第1磁石61は、第3磁石63と対向する磁極面がN極、第3壁部73と対向する磁極面がS極に着磁されている。第2磁石62は、第4磁石64と対向する磁極面がS極、第3壁部73と対向する磁極面がN極に着磁されている。第3磁石63は、第1磁石61と対向する磁極面がS極、第4壁部74と対向する磁極面がN極に着磁されている。第4磁石64は、第2磁石62と対向する磁極面がN極、第4壁部74と対向する磁極面がS極に着磁されている。
【0042】
これによって、第1磁石61、第1直線部31、第3磁石63、第4壁部74、第1壁部71、第3壁部73及び第1磁石61の順に流れる磁力線のループM1が形成される。また、第4磁石64、第2直線部32、第2磁石62、第3壁部73、第2壁部72、第4壁部74及び第4磁石64の順に流れる磁力線のループM2が形成される。更に、第1磁石61、第1直線部31、第3磁石63、第4壁部74、第4磁石64、第2直線部32、第2磁石62、第3壁部73及び第1磁石61の順に流れる磁力線のループM3が形成される。これら3つの磁力線のループM1〜M3がコイル3の第1直線部31及び第2直線部32を通過するため、コイル3の起電力に寄与する磁束密度が上昇し、低い固有振動数に対しても高い出力が得られるとともに、コンパクトな装置構成とすることができる。
【0043】
以上説明した通り、第1の実施形態に係る振動発電機1によれば、低い固有振動数に対しても高い出力が得られるとともに、コンパクトな装置構成とすることができる。第1の実施形態に係る振動発電機1を36Hzの固有振動数に共振するように調整し、加振ステージ上に固定し、36Hzの加振を行ったところ、5V近い出力電圧が得られた。これは、無線送信モジュール等の動作に十分な出力である。このときの振動発電機1の筐体2の大きさは、横方向Xが約4.8cm、縦方向Yが約6.6cm、高さ方向Zが約2.0cmであった。第1の実施形態に係る振動発電機1によれば、特に、高さ方向Zの寸法を小さくすることができ、装置の薄型化が可能となる。
【0044】
このような構成の振動発電機1が橋梁等の振動物体に固定されると、振動物体の振動が筐体2を介して板ばね5に伝達され、振動子4が振動する。そして、振動子4に含まれる永久磁石6と、筐体2に固定されるコイル3との相対的な位置が変化し、電磁誘導によってコイル3に起電力が生じる。
【0045】
振動物体の固有振動数は、質量とばね定数によって決まる。振動物体の老朽化、基礎の洗掘、地震等の外力によってばね定数が低下すると、振動物体の固有振動数も低下する。例えば、板ばね5のばね定数を振動物体の固有振動数に共振するように調整しておくと、振動物体が正常の場合、すなわち固有振動数によって振動している場合、振動発電機1が発電を行う。一方、振動物体に異常がある場合、すなわち固有振動数より低い振動数によって振動している場合、振動発電機1が発電を行わない。この原理を利用し、振動発電機1に無線送信モジュールを接続し、発電を行っている間は無線送信モジュールに信号を送信させることで、信号が途切れた時には振動物体の異常が発生していると判断することができ、振動物体の異常検出が可能となる。
【0046】
<第2の実施形態>
第2の実施形態に係る振動発電機1は、第1の実施形態に係る振動発電機1の構成に対して、板ばね5のばね定数を調整する調整機構9を追加したものである。調整機構9によって、振動物体に応じて振動発電機1が共振する固有振動数を調整することができる。
【0047】
図8は、振動発電機1の上部23側から見た正面図であって、その内部の説明のために上部23を外した状態を示している。また、
図9は、振動発電機1の横方向Xから見た側面図であって、説明のために側部22の一部を破断してその内部が見えるようにしている。
【0048】
調整機構9は、ピニオンギア91と、ピニオンギア91に噛み合わされ、縦方向Yに延びる一対のラックギア92、92と、各ラックギア92に連結され、板ばね5を支持する一対の支持部93、93と、を有する。一対のラックギア92、92と一対の支持部93、93は、それぞれが一体成型されても良い。
【0049】
ピニオンギア91は、操作部911を有する。操作部911は、筐体2の側部22に形成される孔から突出している突起状の部材である。一対のラックギア92、92は、高さ方向Zに離間している。
【0050】
各支持部93は、板ばね5に対して横方向Xから当接する当接面931を有し、平面視においてT字状の形状を有する柱体である。当接面931は、板ばね5の横方向X外側の面と対向し、板ばね5が横方向Xに撓むときの支点となる。一対の支持部93、93は、板ばね5の長手方向Lの中心を基点として、当接面931同士が対称の位置になるように設けられる。これによって、板ばね5の長手方向Lのバランスが偏ることがない。
【0051】
操作部911を回すと、ピニオンギア91が回転し、一対のラックギア92、92が、縦方向Yに沿って互いに反対向きに移動する。これによって、一対のラックギア92、92と連結されている一対の支持部93、93も、縦方向Yに沿って互いに反対向きに移動し、板ばね5と当接する当接面931の位置が変化する。これによって、板ばね5のばねとして有効に機能する長さ(=有効長)が変化し、ばね定数が変化する。有効長が短くなれば、ばね定数は大きくなり、有効長が長くなれば、ばね定数は小さくなる。
【0052】
第2の実施形態によれば、精度良く板ばね5のばね定数を調整することができる。筐体2の両側部22には、操作部911の回転角度が分かるように、目盛りを設けることが望ましい。これによって、各操作部911の回転角度を合わせることができ、2つの板ばね5同士の有効長が同一、すなわちばね定数が同一になるように変更することができる。2つの板ばね5同士のばね定数が同一であれば、これに連結される振動子4の振動が安定する。
【0053】
<第3の実施形態>
第3の実施形態に係る振動発電機1は、第1の実施形態に係る振動発電機1の構成に対して、板ばね5のばね定数を調整する調整機構9を追加したものである。調整機構9によって、振動物体に応じて振動発電機1が共振する固有振動数を調整することができる。
【0054】
図10は、振動発電機1の上部23側から見た正面図であって、その内部の説明のために上部23を外した状態を示している。
【0055】
この実施形態において、調整機構9は、板ばね5を支持する一対のねじ94、94によって構成される。ねじ94は、筐体2の側部22を横方向Xに貫通し、板ばね5と当接する当接面941を有する。一対のねじ94、94は、板ばね5の長手方向Lの中心を基点として、当接面941同士が対称の位置になるように設けられる。
【0056】
各当接面941は、板ばね5に対して、横方向Xに沿って初期荷重を与えている。ねじ94を締めると、板ばね5に与える初期荷重の大きさが変化し、板ばね5のばね定数が変化する。
【0057】
第3の実施形態によれば、簡易な構成によって板ばね5のばね定数を調整することができる。尚、2つの板ばね5同士のばね定数を同一にするために、四本のねじ94の締め具合は、板ばね5に与える初期荷重の大きさが同一になるようにすることが望ましい。
【0058】
<第4の実施形態>
第4の実施形態に係る振動発電機1は、第1の実施形態に係る振動発電機1の構成に対して、板ばね5のばね定数を調整する調整機構9を追加したものである。調整機構9によって、振動物体に応じて振動発電機1が共振する固有振動数を調整することができる。
【0059】
図11は、振動発電機1の上部23側から見た正面図であって、その内部の説明のために上部23を外した状態を示している。
【0060】
この実施形態において、一対の板ばね5、5には、横方向Xに対向する端部51同士を連結する連結部53が設けられる。一対の板ばね5、5及び連結部53は、全体として平面視でコの字状の形状を有し、一体成型される。この実施形態において、調整機構9は、連結部53を支持するねじ95によって構成される。
【0061】
ねじ95は、筐体2の固定部21の端面212を縦方向Yに貫通し、連結部53と当接する当接面951を有する。ねじ95は、一対の板ばね5、5が横方向Xに離間する幅の中心の位置に設けられる。
【0062】
当接面951は、連結部53に対して、縦方向Yに沿って初期荷重を与えている。ねじ95を締めると、連結部53に与える初期荷重の大きさが変化し、一対の板ばね5、5のばね定数が変化する。
【0063】
第4の実施形態によれば、単一の部材のみで2つの板ばね5のばね定数を調整することができる。特に、ねじ95は、2つの板ばね5が横方向Xに離間する幅の中心の位置に設けられるので、2つの板ばね5同士のばね定数が同一になるように調整することができる。
【0064】
以上、添付図面を参照しながら、本発明に係る振動発電機の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。