(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-184696(P2017-184696A)
(43)【公開日】2017年10月12日
(54)【発明の名称】飲料組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 2/00 20060101AFI20170919BHJP
A23L 2/38 20060101ALI20170919BHJP
【FI】
A23L2/00 B
A23L2/38 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-78309(P2016-78309)
(22)【出願日】2016年4月8日
(71)【出願人】
【識別番号】000135324
【氏名又は名称】株式会社ノエビア
(72)【発明者】
【氏名】鉄井 崇仁
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LC02
4B117LC03
4B117LC04
4B117LG01
4B117LK01
4B117LK26
(57)【要約】
【課題】
本発明の課題は、酢カド、塩カドがなく、嗜好性の高い飲料組成物を提供することである。
【解決手段】
飲用時の飲料100mLあたり、食酢を酢酸換算で30〜1000mg、ナトリウムを30〜210mg含有する、飲料組成物。食酢成分としては、果実を醸造して得られる果実酢を用いることが好ましく、例えばリンゴ酢、梅酢、ブドウ酢、プルーン酢、ザクロ酢、シークワーサー酢、パイナップル酢、レモン酢等が挙げられる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲用時の飲料100mLあたり、食酢を酢酸換算で30〜1000mg、ナトリウムを30〜210mg含有する、飲料組成物。
【請求項2】
食酢が果実酢である、請求項1記載の飲料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食酢と無機塩を含有する飲料組成物に関する。なお本発明の飲料組成物は、特定保健用食品、保健機能食品、機能性表示食品、食品、医薬品および医薬部外品など、経口摂取の分野の飲料組成物すべてを含み得る。
【背景技術】
【0002】
近年の高齢化社会やそれに伴う健康志向によって、生活習慣病等の日常生活における改善に関する関心が高まってきている。そのため、例えば日常の食生活に特定保健用食品と称されるものや各種機能性食品が取り入れられるようになっている。その中でも、古くから食酢は民間療法としても健康に良いとされ、最近ではそのさまざまな具体的な効果が注目を集めている。例えば食酢を摂取することにより、血圧降下作用、高血圧症低減効果、コレステロール低減効果、胃酸分泌促進、疲労回復等の効果があることが判明している。
【0003】
食酢は上述のごとく、様々な効果を有している。しかし食酢は、特有の強い酸味があり飲料では飲みにくいため、酸味を気にせず飲みやすい食酢含有飲料が望まれている。かかる問題点を解決するために3−ヒドロキシ4,5−ジメチル−2(5H)−フラノンやフルフラールを添加する方法(特許文献1参照)、高甘味度甘味料を添加する方法(特許文献2参照)、還元水飴等の糖アルコールを用いて酢カドを低減する方法(特許文献3参照)、ホエイを添加する方法(特許文献4参照)など多くの試みがなされてきた。また、よりまろやかな酸味と香気を有する、リンゴ酢、梅酢、ブドウ酢等の果実酢含有飲料が開発されている(特許文献5参照)。しかし、酸味の低減効果が満足できるものではなかったり、添加した物質自体の香りが飲食物に移行し、飲料としての香味バランスがくずれ、かえって嗜好性が低下する等の問題があった。
【0004】
また従来より、ミネラルの補給を目的として、ミネラルを含む飲料組成物が多数開発されている。例えば、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、及びアスコルビン酸ナトリウムから選択される1又は2以上のナトリウム塩由来の、0.005〜0.1重量%のナトリウムと、果汁とを含む飲料組成物(特許文献6)、ナトリウムとカリウムと鉄とマンガンを特定量含む飲料組成物(特許文献7)などが開示されている。
【0005】
しかしながら、熱中症対策として飲料組成物に多くナトリウムを含有すると塩カドと称される、塩味が強くなりすぎ、嗜好性の点で十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−69940号公報
【特許文献2】特開平10−215793号公報
【特許文献3】特開2004−89119号公報
【特許文献4】特開2009−65842号公報
【特許文献5】特開2010−227054
【特許文献6】特開2013−94125号公報
【特許文献7】特開2015−211652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、酢カド、塩カドがなく、嗜好性の高い飲料組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、かかる課題について鋭意検討した結果、食酢とナトリウムを特定量配合することにより、酢カド、塩カドが無く、嗜好性の高い飲料組成物を提供することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は以下の態様を有する。
(1) 飲用時の飲料100mLあたり、食酢を酢酸換算で30〜1000mg、ナトリウムを30〜210mg含有する、飲料組成物。
(2)食酢が果実酢である、請求項1記載の飲料組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の飲料組成物は、酢カド、塩カドがなく、嗜好性が高いという効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明を実施するための形態を説明する。
【0012】
本発明に係る飲料組成物は、食酢と無機塩を含有する飲料組成物であり、そのまま若しくは希釈、溶解して摂取する飲料組成物である。また、本発明の飲料組成物は通常の液状又はゼリー状の飲料組成物であってもよく、炭酸タイプの液状、ゼリー状飲料組成物であってもよい。
【0013】
本発明に係る飲料組成物に含有される食酢としては特に限定されないが、その風味の点から、果実酢を用いることが好ましい。果実酢は果実を醸造して得られるものであり、一般的に食用として用いられている果実を使用することができる。果実酢を得る果実として例えば、リンゴ、梅、ブドウ、プルーン、ザクロ、シークワーサー、パイナップル、レモン、ローズヒップ、アプリコット、プラム、ライム、イチジク、トマト、グレープフルーツ、ミカン、オレンジ等が挙げられる。果実酢は1種を単独で、若しくは2種以上を併用して醸造したものを用いることができる。果実酢は単独で用いても、2種以上の果実酢を併用して用いてもよい。
【0014】
本発明の飲料組成物においては、飲用時の飲料100mLあたり食酢を酢酸換算で30〜1000mg含有することが好ましい。30mg未満の配合では、食酢を摂取することによる効果が発揮できない場合がある。1000mgを超えて配合すると、酢カドの矯正が図れない場合がある。
【0015】
本発明に係る飲料組成物に含有されるナトリウムの含有量は、飲用時の飲料100mLあたり30〜210mgであれば、特に限定されないが、熱中症予防効果と塩カドの矯正の両方を考慮すると35〜210mgであることがより好ましい。
【0016】
本発明の飲料組成物には、果汁を配合することが好ましい。果汁を配合することにより、飲料組成物の先味、後味、飲み易さのバランスが良くなり、嗜好性が向上する。かかる果汁としては特に限定されないが、果実酢を配合する場合、同種又は類似の果実から得られる果汁を用いることにより、味の嗜好性をさらに向上させることができる。
【0017】
本発明の飲料組成物には、甘味料を配合することができる。かかる甘味料としては飲料の分野に利用し得る甘味料であれば特に限定されず、白砂糖、グラニュー糖、和三盆、黒糖、三温糖などの砂糖、蜂蜜、メープルシロップ、糖蜜、水飴、ブドウ糖、果糖、麦芽糖、ブドウ糖果糖液糖、還元麦芽糖水飴、粉飴、還元澱粉糖化物、エリスリトール、マルトーストレハロース、マルチトール、パラチノース、キシリトール、ソルビトール、甘草抽出物、ステビア抽出物及び/又はその精製物、羅漢果抽出物、ソーマチン、モネリン、ミラクリン、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン及び/又はその塩、ズルチン、ネオテームなどが挙げられる。これらの甘味料は、1種を単独で若しくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
本発明においては、さらにクエン酸を併用することが好ましい。クエン酸を併用することにより、食酢による酢カドが、よりまろやかな酸味に矯正することができる。クエン酸の配合量は、食酢1質量部に対し、クエン酸を1.1〜50質量部、さらに好ましくは2〜30質量部とすることが好ましい。
【0019】
本発明の飲料組成物には、さらにカルシウム、マグネシウム、カリウムから選択される1種又は2種以上を配合することが好ましい。かかるミネラルは、無機塩、若しくは有機円として配合する。また、ナトリウムに加えて、マグネシウム、カリウムを多く含むニガリを配合することもできる。かかるミネラルを併用することにより、さらに飲料組成物の酢カド、塩カドがまろやかになり、嗜好性が高まる。
【0020】
本発明の飲料組成物は、スポーツドリンク、熱中症対策飲料、経口補水液として特に有用である。
【0021】
本発明の飲料組成物には、ビタミン類を配合することができる。かかるビタミン類としては、飲料に配合し得るビタミンであれば特に限定されない。例えばアスコルビン酸若しくはその誘導体並びにそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上のビタミンC類、チアミン若しくはその誘導体並びにそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上のビタミンB
1類、リボフラビン若しくはその誘導体並びにそれらの塩類から選ばれる1種又は2種以上のビタミンB
2類、ナイアシン、パントテン酸、ピリドキシン若しくはその誘導体並びにそれらの塩から選ばれる1種または2種以上のビタミンB
6類などが例示される。
【0022】
本発明の飲料組成物には、アミノ酸、ペプチド、タンパク質を配合することができる。かかるアラニン以外のアミノ酸、ペプチド、タンパク質としては保健機能食品、食品、医薬品および医薬部外品の分野に利用し得るものであれば特に限定されない。例えばアミノ酸としては、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、プロリン、システイン、リジン、スレオニン、アスパラギン、フェニルアラニン、セリン、メチオニン、グリシン、チロシン、ヒスチジン、トリプトファン、シスチン、テアニンなどが例示される。ペプチド、タンパク質としては、例えばコラーゲン及びその加水分解物、エラスチン及びその加水分解物などが例示される。
【0023】
本発明の飲料組成物は、増粘剤を配合して、ゼリー状飲料として用いることもできる。かかる増粘剤としては保健機能食品、食品、医薬品および医薬部外品の分野に利用し得る増粘剤であれば特に限定さない。例えば寒天、ローカストビーンガム、グアーガム、カラギナン、キサンタンガム、タマリンド種子多糖類、ネイティブジェランガム、脱アシル型ジェランガム、未加工でんぷん、加工でんぷん、ペクチン、タラガム等が挙げられる。
【0024】
本発明の食酢含有飲料は、賦形剤を添加し乾燥させることにより、粉末化したものを摂取時溶解して用いることもできる。また、飲料は炭酸タイプであってもよい。
【0025】
本発明の食酢含有飲料には、通常飲料に用いることが可能な成分、例えば、上記以外のビタミン類、有機酸類、無機酸類、生薬、着色料、香料、保存剤、増粘剤、オリゴ糖類、多糖類、などの他、キトサン化合物、機能性食品成分、栄養強化成分、滋養強壮成分などを適時選択して配合することができ、飲料製造の常法により製造することができる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。
【0027】
【表1】
【0028】
表1に示した処方を用いて、十倍濃縮飲料組成物を常法に従い調製した。
【0029】
[官能評価]
飲料に熟練したパネラーに、十倍量に希釈した飲料を試飲させ、下記の基準で評価した。
「塩味」
○:塩味が気にならず飲みやすい
△:やや塩味が気になる
×:塩味が気になり飲みにくい
「酢カド」
○:酢カドが気にならず飲みやすい
△:やや酢カドが気になる
×:酢カドが気になり飲みにくい
「嗜好性」
良好:○
普通:△
不良:×
【0030】
【表2】