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特開2017-184792加飾スーツケース及びそれを加飾するための加飾体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-184792(P2017-184792A)
(43)【公開日】2017年10月12日
(54)【発明の名称】加飾スーツケース及びそれを加飾するための加飾体
(51)【国際特許分類】
   A45C 13/42 20060101AFI20170919BHJP
   A45C 5/03 20060101ALI20170919BHJP
   A45C 13/00 20060101ALI20170919BHJP
【FI】
   A45C13/42
   A45C5/03
   A45C13/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-73768(P2016-73768)
(22)【出願日】2016年4月1日
(71)【出願人】
【識別番号】000183923
【氏名又は名称】株式会社DNPファインケミカル
(74)【代理人】
【識別番号】110002136
【氏名又は名称】特許業務法人たかはし国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川越圭生
(72)【発明者】
【氏名】中村勝二
(72)【発明者】
【氏名】宇高公淳
【テーマコード(参考)】
3B045
【Fターム(参考)】
3B045AA02
3B045CE04
3B045FB02
3B045LA04
3B045LA08
(57)【要約】
【課題】自分だけのオリジナルなデザインを付与し、他人のスーツケースと容易に見分けることができ、また、極めて容易にデザインを取り換えることができるため、その時の気分に応じたデザインを気軽に付与することのできるスーツケースや、該スーツケースに着脱可能に固定するための加飾体やその製造方法を提供する。
【解決手段】スーツケース外面2に、透明なハードコート層101、透明なフィルム基材層102、加飾層103を、この順序で備えた加飾体100を有し、加飾体100が、スーツケース外面2に、ハードコート層101を外側にして着脱可能に固定される。加飾体100は、更に、保護層104を有してもよく、この場合、ハードコート層101、上記フィルム基材層102、上記加飾層103、該保護層104が、この順序で積層される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スーツケース外面に、透明部分を有するハードコート層、透明部分を有するフィルム基材層、加飾層を、この順序で備えた加飾体を有し、該加飾体が、該スーツケース外面に、該ハードコート層を外側にして着脱可能に固定されたスーツケース。
【請求項2】
上記加飾体は、更に、保護層を有し、上記ハードコート層、上記フィルム基材層、上記加飾層、該保護層を、この順序で備えた請求項1に記載のスーツケース。
【請求項3】
上記加飾体における上記ハードコート層、上記フィルム基材層及び上記加飾層の厚さの合計の平均値が、30μm以上300μm以下である請求項1又は請求項2に記載のスーツケース。
【請求項4】
上記加飾体が着脱可能に固定されたスーツケース外面は、凹凸を有さない平面である請求項1ないし請求項3の何れかの請求項に記載のスーツケース。
【請求項5】
該スーツケースがキャスターを備えている請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載のスーツケース。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5の何れかの請求項に記載のスーツケースに着脱可能に固定するための加飾体であって、少なくとも、透明部分を有するハードコート層、透明部分を有するフィルム基材層、加飾層を、この順序で備えたものであることを特徴とする加飾体。
【請求項7】
請求項6に記載の加飾体を製造するための加飾体製造方法。
【請求項8】
上記ハードコート層と上記フィルム基材層を積層した後、上記加飾層を形成する請求項7に記載の加飾体製造方法。
【請求項9】
インクジェット印刷により上記加飾層を形成する請求項7又は請求項8に記載の加飾体製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外面に絵柄や模様等が加飾されたスーツケースに関し、更に詳しくは、絵柄や模様等の加飾を容易に交換することのできるスーツケースに関する。
また、本発明は、該スーツケースに着脱可能に固定するための加飾体やその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スーツケースは、旅行の際に重い荷物や大量の荷物を運搬する際に使用される硬質合成樹脂材等により形成された鞄である。航空機等での移動の際に、スーツケースは機内に持ち込まれることなく、手荷物として預けられることが多い。
【0003】
スーツケースの大きさ、色、形状等には、ある程度のバリエーションがあるものの、基本的な構成としては、例えば、本体と蓋体をヒンジで開閉可能に形成し、底部にキャスターを取り付け、把手部が取りつけられている、というものが多く、空港等では、似たようなデザインのスーツケースを見かけることが多い。
手荷物として預けた自分のスーツケースを荷物デッキにおいて他人のものと瞬時に見分けるのが困難な場合があり、手荷物の受け取りの際に時間がかかったり、他人のものと取り違えてトラブルになったりする場合がある。
このため、自分のスーツケースを他人のものと識別しやすくするために、目立つ色のバンド、名札、リボン、ステッカー等の目印を取り付けることが行われている。
【0004】
また、スーツケースに独特の模様を施す加飾方法も種々提案されている。例えば、ポリカーボネート製の薄いシートにシルク印刷やオフセット印刷を施し、この印刷面を接着面としてABS樹脂のベース部材に熱圧着や成型等により接着する方法が挙げられる。この方法では、印刷面が外表面にむき出しになることによる磨耗等の損傷を防止することができるが、印刷された模様を取り換えることはできない。
【0005】
特許文献1には、対向して開閉する二つの半箱体を含んでなるスーツケースが開示されている。特許文献1のスーツケースでは、二つの半箱体は、透光性を具えた透光箱ケースと、図案がプリントされた内ケースからなり、内ケースを透光箱ケースの内部のU字状の内部槽に圧接させた構造となっている。
【0006】
特許文献2には、本体・蓋体を透明・半透明に形成し、本体・蓋体の内底面に、デザイン部を有する化粧板を位置させ、化粧板の裏面を圧着板で本体・蓋体の内底面に圧着させて取り付ける旅行鞄が開示されている。
【0007】
特許文献3には、透明・半透明の硬質プラスチックシート・プレートからなる外装シェルと、内装シェルとからなり、外装シェルと内装シェルの間の空気緩衝層内に、デザインや広告等の表示を施したキャリングケースが開示されている。
【0008】
これら従来の加飾方法は、スーツケースに、独特なデザインを付与することができ、他人のスーツケースとの区別をしやすくする、という目的は達成することはできる。
しかし、これらの加飾方法は、加飾部材を、スーツケースの内部に設置しているので、デザインを取り換える際には、スーツケースの中身(衣服等)を全て取り出さなければならず、手間がかかるため、外出先でデザインを取り換えることは困難であった。
【0009】
その時の気分や、旅行の目的(ビジネスであるか観光であるか)、また、家族でスーツケースを共用している等の事情により、デザインを気軽に取り換えることが容易なスーツケースへの要望は強く、かかる従来技術では不十分であり、改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】登録実用新案第3160435号公報
【特許文献2】登録実用新案第3106785号公報
【特許文献3】特開平11−299519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、自分だけのオリジナルなデザインを付与し、他人のスーツケースと容易に見分けることができ、また、極めて容易にデザインを取り換えることができるため、その時の気分に応じたデザインを気軽に付与することのできるスーツケースを提供することにある。また、本発明の課題は、該スーツケースに着脱可能に固定するための加飾体やその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、スーツケースの外面に、加飾体を着脱可能に固定することにより、スーツケースの外面を特定の層構造に積層された加飾体で加飾すれば、オリジナルのデザインのスーツケースとすることができ、デザインを容易に取り換えることができることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、スーツケース外面に、透明部分を有するハードコート層、透明部分を有するフィルム基材層、加飾層を、この順序で備えた加飾体を有し、該加飾体が、該スーツケース外面に、該ハードコート層を外側にして着脱可能に固定されたスーツケースを提供するものである。
【0014】
また、本発明は、上記のスーツケースに着脱可能に固定するための加飾体であって、少なくとも、透明部分を有するハードコート層、透明部分を有するフィルム基材層、加飾層を、この順序で備えたものであることを特徴とする加飾体を提供するものである。
【0015】
また、本発明は、上記の加飾体を製造するための加飾体製造方法を提供するものである。
【0016】
また、本発明は、上記ハードコート層と上記フィルム基材層を積層した後、上記加飾層を形成する上記の加飾体製造方法を提供するものである。
【0017】
また、本発明は、インクジェット印刷により上記加飾層を形成する上記の加飾体製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、前記問題点と課題を解決し、独特のデザインを持ち、空港等において他人のスーツケースと容易に見分けることができるスーツケースを提供することができる。本発明のスーツケースは、着脱可能に固定された加飾体がスーツケースの外面に固定されているので、スーツケースの中身を取り出すことなく、更には固定手段の種類や位置によってはスーツケースを開けることもなく、極めて容易にデザインを取り換えることができるので、気分や場面等に応じて、気軽にスーツケースを好みのデザインにして楽しむことができる。
【0019】
ハードコート層とフィルム基材層によって、特にハードコート層によって、それらの下の加飾層が保護されているので、機械的な衝撃や摩擦によって加飾層(デザイン)が損傷を受けることがない。近年のハードコート層の進歩によって、外的な機械的衝撃に対する耐久性が向上したため、本発明のような形態のスーツケースやそれ用の加飾体が初めて実現可能になった。
【0020】
一般に、スーツケースには、大きいものが多く、特許文献1〜3等に記載の従来のスーツケース用の加飾体は嵩張るという欠点がある。本発明のスーツケースに固定するための加飾体は、スーツケースから取り外した状態でロール状に巻くことでコンパクトにして保存することができるため、様々なデザインのシートを持ち運び、外出先で好みのシートに取り換える、といったことが可能であり、気軽にデザインを選択することができる。
【0021】
また、本発明のスーツケースに固定する加飾体の加飾層を、インクジェット印刷により形成すれば、ユーザーの好みのデザインの加飾体をオンデマンドで作製することができ、デザイン選択に自由度が大きくなる。例えば、旅行時の気分や旅行目的によって、デザインを気軽に取り換えることが可能である。また、複数人でスーツケースを共用している場合に、スーツケースを使用する人に応じてデザインを取り換えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の加飾体の層構造の例を示す模式図である。
図2】本発明の加飾体の形状の例を示す平面図である。
図3】本発明のスーツケースの例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、任意に変形して実施することができる。
【0024】
図1に示すように、本発明のスーツケース1は、スーツケース外面2に、加飾体100を有し、加飾体100が、スーツケース外面2に、着脱可能に固定されている。
【0025】
「スーツケース外面(2)」とは、スーツケースの外側の面であれば、面積の広い面(前面や後面)や側面等、特に限定はないが、スーツケースに加飾を施す、という目的から、典型的には、面積の広い面(前面や後面)のことである。
また、様々な角度からスーツケースの識別ができるようにするために、例えば、面積の広い面(前面や後面)から側面にかけて加飾を施してもよい。
【0026】
[加飾体]
加飾体100は、いくつかの層から構成された積層体である。
具体的には、加飾体100は、透明部分を有するハードコート層101、透明部分を有するフィルム基材層102、加飾層103を、この順序で備えている。
また、加飾体100は、更に、保護層104を有してもよく、この場合、ハードコート層101、フィルム基材層102、加飾層103、保護層104が、この順序で積層されている。
【0027】
ハードコート層101と、フィルム基材層102は、透明部分を有するので、加飾層103によって表現された絵柄・模様等を、外部(スーツケース外面側)から視認することができる。
【0028】
加飾体100は、図1に示すように、スーツケース外面2に、ハードコート層101を外側(スーツケース外面2の反対側)にして着脱可能に固定される。
このため、本発明のスーツケースは、加飾体を取り換えることにより、スーツケースの外側から自由にデザインを変更することができる。
【0029】
<フィルム基材層>
フィルム基材層102は、その上にインクジェット印刷等により、加飾層103を形成させるための層である。
【0030】
フィルム基材層102は、透明部分を有する。この透明部分は、加飾層103によって表現された絵柄・模様等を、外部から視認するために透明に形成された部分である。透明部分は、フィルム基材層102の全体であっても、一部分であってもよい。例えば、矩形状の加飾体100において、絵柄・模様等が表現されているのが矩形の中央部分の場合、フィルム基材層102は、中央部分が透明になっていればよく、周辺部分は不透明であってもよい。また、「透明」とは、無色透明だけでなく有色透明の場合も含み、加飾層103によって表現される絵柄・模様等のデザインに応じて、適宜選択することができる。
【0031】
フィルム基材層102を構成する材料としては、公知の一般的なフィルム材料を使用することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリアセタール、ポリビニルアルコール(PVA)、ナイロン、ゴム類等が挙げられる。
【0032】
このうち、安価であり、インクの定着性に優れ、厚さを薄くしやすいことから、ポリエチレンテレフタレート(PET)が特に好ましい。
【0033】
フィルム基材層102の厚さは、30μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましい。また、300μm以下が好ましく、200μm以下がより好ましい。
上記下限以上であると、十分な強度が保たれる。上記上限以下だと、ロール状に巻くのが容易であり、保存性がよくなる。
【0034】
<ハードコート層>
ハードコート層101は、薄く柔らかいフィルム基材層102を、外部からの衝撃等から保護し、フィルム基材層102が傷付いたりすることで、視認性が低下するのを防止している。
【0035】
ハードコート層101は、フィルム基材層102上に、ハードコート層101の樹脂組成物を有するインク等を塗布し、乾燥させる等の方法により形成される。例えば、グラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、スプレー塗布、ロール塗布等により形成される。
【0036】
ハードコート層101の形成に使用するインクの種類について特に限定はなく、油性インク、水性インク、紫外線(UV)硬化インク、電子線(EB)硬化インク等を適宜使用することができる。
【0037】
速乾性の観点から、紫外線(UV)硬化インク、電子線(EB)硬化インクが好ましい。
硬化性インクを含むハードコート層用樹脂組成物を、フィルム基材層102に塗布し、硬化することによりハードコート層101が得られる。
【0038】
ハードコート層101を構成する材料としては、特に限定はないが、アクリレート系、オキセタン系、シリコーン系等が挙げられる。例えば、アクリレート系の電離放射線硬化性樹脂は、単官能(メタ)アクリレートモノマー、2官能(メタ)アクリレートモノマー、3官能以上の(メタ)アクリレートモノマー等の(メタ)アクリル酸エステルモノマー;ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルオリゴマー;(メタ)アクリル酸エステルプレポリマー等を含有することが好ましい。更に、3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーを例示すれば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0039】
ハードコート層101は、フィルム基材層102と同じように、透明部分を有する。この透明部分は、加飾層103によって表現された絵柄・模様等を、外部から視認するために透明に形成された部分である。透明部分は、ハードコート層101の全体であっても、一部分であってもよい。例えば、矩形状の加飾体100において、絵柄・模様等が表現されているのが矩形の中央部分の場合、ハードコート層101は、中央部分が透明になっていればよく、周辺部分は不透明であってもよい。また、「透明」とは、無色透明だけでなく有色透明の場合も含み、加飾層103によって表現される絵柄・模様等のデザインに応じて、適宜選択することができる。
【0040】
フィルム基材層102が無色透明の場合は、ハードコート層101も無色透明であるのが好ましい。フィルム基材層102が有色透明(着色されている)場合は、ハードコート層101は同じ色に着色されているか無色透明であることが好ましい。
【0041】
ハードコート層101の厚さは、0.1μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。また、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。
上記下限以上であると、十分にフィルム基材層102を保護できる。上記上限以下だと、ロール状に巻くのが容易であり、保存性がよくなる。
【0042】
<加飾層>
加飾層103は、絵柄・模様等のデザインが表現された層であり、フィルム基材層102において、ハードコート層101が形成された面の反対側に形成される。
【0043】
加飾層103を形成する方法に特に限定はないが、本発明においては、インクジェット印刷により上記加飾層を形成することが好ましい。
インクジェット印刷により加飾層103を形成する場合、オンデマンドでユーザーの好みに応じたデザインの加飾体100を作製することができる。また、多品種小ロット生産に対応しやすく、デザイン選択の幅が大幅に広がる。
【0044】
加飾層103の材料について、特に限定はなく、公知の塗料やインクを適宜使用することができる。
速乾性であり、生産効率が高い点から、紫外線(UV)硬化インク、電子線(EB)硬化インク等の光硬化型インクが特に好ましい。
【0045】
光硬化型のインクジェットインキは、従来公知のラジカル重合性化合物、顔料を含有する。また、必要に応じて、顔料分散剤、溶媒、光重合開始剤、熱重合防止剤、各種添加剤等を含有していてもよい。
【0046】
<<ラジカル重合性化合物>>
ラジカル重合性化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸及びそれらの塩;エステル、酸アミド、酸無水物等、ウレタンアクリレート、アクリロニトリル、スチレン誘導体、不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ポリウレタン等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
<<顔料>>
顔料としては、インクジェットインキに使用されている公知の顔料を適宜使用することができる。例えば、カーボンブラック、酸化チタン、炭酸カルシウム等の無彩色の顔料や、青色、緑色、赤色、黄色、紫色、オレンジ、ブラウン等の色の公知の有彩色の顔料を適宜使用することができる。
これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0048】
光硬化型のインクジェットインキ中において、顔料は1質量%30質量%以下の割合で含有されるのが好ましく、2質量%以上20質量%以下の割合で含有されるのがより好ましい。
【0049】
<<顔料分散剤>>
顔料の分散性やインクの保存安定性を向上させるために顔料分散剤を添加するのが好ましい。
顔料分散剤としては、公知のものが使用でき、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ステアリルアミンアセテート等が例示できる。
顔料分散剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0050】
<<溶媒>>
光硬化型インクジェットインキは、粘度調整等のために、溶媒を添加してもよい。溶媒の例としては、アルコール系、ケトン系、エステル系、芳香族系、炭化水素系、ハロゲン化炭化水素系等の公知の溶媒等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
<<光重合開始剤>>
光重合開始剤としては、インクジェットインキに使用されている公知の光重合開始剤を適宜使用することができる。例えば、芳香族ケトン類、アシルフォスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物等が挙げられ、これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0052】
<<熱重合防止剤>>
光硬化型インクジェットインキは、保存時の重合を防止する目的で公知の熱重合防止剤を添加することができる。熱重合防止剤の例としては、p−メチルオキシフェノール、ハイドロキノン、アルキル置換ハイドロキノン、カテコール、tert−ブチルカテコール、フェノチアジン等が挙げられ、これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0053】
<<各種添加剤>>
光硬化型インクジェットインキは、増感剤、染料、酸素除去剤、還元剤、カブリ防止剤、退色防止剤、ハレーション防止剤、蛍光増白剤、界面活性剤、着色剤、増量剤、可塑剤、難燃剤、酸化防止剤、色素前駆体、紫外線吸収剤、発砲剤、防カビ剤、帯電防止剤等の添加剤を適宜添加することができる。
【0054】
光硬化型インクジェットインキは、紫外線等の光線や電子線等によるエネルギーの付与により重合し、目的とする重合物を得ることが可能である。光線による重合の際の光源としては、250nmから450nmの波長領域に発光の主波長を有する光源が好ましく、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、水銀キセノンランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ、キセノンランプ、パルス発光キセノンランプ、重水素ランプ、蛍光灯、Nd−YAG3倍波レーザー、He−Cdレーザー、窒素レーザー、Xe−Clエキシマレーザー、Xe−Fエキシマレーザー、半導体励起固体レーザー等が例示できる。
【0055】
光硬化型インクジェットインキを使用するには、まずこのインクジェットインキをインクジェット記録方式用プリンタのプリンタヘッドに供給し、このプリンタヘッドからフィルム基材層102上に吐出し、その後紫外線や電子線を照射する。これによりフィルム基材層102上の組成物は速やかに硬化する。
【0056】
加飾体100におけるハードコート層101、フィルム基材層102及び加飾層103の厚さの合計の平均値は、30μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましい。また、400μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましい。
上記下限以上であると、破損等に十分強くなる。上記上限以下だと、ロール状に巻くのが容易であり、保存性がよくなる。また、上記上限以下だと、折り曲げ性が良好となり、複数の面にわたって(例えば、面積の広い面(前面や後面)から側面にかけて)加飾を施しやすくなる。
なお、上記「厚さの合計の平均値」とは、ハードコート層101、フィルム基材層102、加飾層103が積層された状態で、10点の異なる位置において厚さを測定した場合の平均値をいう。厚さの測定は、マイクロゲージ(デジマチックマイクロメータMDC−25M、株式会社ミツトヨ)等によって行う。
【0057】
<保護層>
加飾体100は、更に、保護層104を有していてもよい。保護層104は、加飾層103を保護する、加飾体100とスーツケース外面2の密着性を高める、等の目的で設けられる。
保護層を設けることにより、加飾層103が直接スーツケース外面2と接触しなくなる。このため、着脱時や保管時の擦れや、使用時のスーツケース外面2とのヨレに起因する加飾層103の絵柄・模様等の欠落が防止できる。
【0058】
保護層104の材質や形成の仕方について、特に限定はない。例えば、フィルム基材層102と同様のフィルム材料であってもよいし、ハードコート層101と同様に、樹脂組成物を硬化して形成してもよい。
【0059】
保護層104は、透明であっても、透明でなくてもよい。保護層104が、不透明に着色(例えば、白色に)されていると、加飾層103によって表現される絵柄・模様等のデザインの下地として機能し、デザインの美しさが引き立つといった効果が得られる場合がある。
着色には、公知の顔料を使用することができ、ユーザーの好みや、加飾層103によって表現されるデザインの種類等に応じて、適宜選択することができる。
【0060】
保護層104の厚さは、30μm以上が好ましく、50μm以上が好ましい。また、1000μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましい。
上記下限以上であると、加飾層103の絵柄・模様等の欠落を十分に防止できる。上記上限以下であると、保存性がよくなるが、加飾体100の大きさが小さく、ロール状に巻くことを想定しない場合等は、保護層104は上記上限を超えた厚さであっても全く差し支えない。また、上記上限以下だと、折り曲げ性が良好となり、複数の面にわたって加飾を施しやすくなる。
【0061】
(製造方法)
加飾体100を製造する際には、ハードコート層101とフィルム基材層102を積層した後、加飾層103を形成することが好ましい。
【0062】
フィルム基材層102とハードコート層101は、絵柄・模様等の種類、ユーザーの好み等によって決定される必然性はほとんどない(せいぜい、有色透明にする場合の色を選択するくらいである)。これに対して、絵柄・模様等が現される加飾層103は、ユーザーの好みによる所が大きい。
【0063】
このため、ハードコート層101とフィルム基材層102を積層したシート状物を先に作っておき、それに、加飾層103(及び保護層104)を形成するようにすると、オンデマンドでユーザー好みのデザインの加飾体を作製することができる。
【0064】
[固定手段]
本発明では、固定手段により加飾体100をスーツケース外面2に着脱可能に固定する。
【0065】
固定手段の種類について、特に限定はなく、ねじ等の治具、面ファスナー、ボタン、粘着剤層等が例示できる。
【0066】
治具、面ファスナー、ボタン等のような固定手段を用いる場合、スーツケース外面2に固定手段が備えられる。スーツケース外面2の固定手段と、加飾体100の側に備えられた固定手段により、加飾体100をスーツケース外面2に着脱可能に固定する。
スーツケース外面2において、固定手段の位置について特に限定はない。加飾体100は、スーツケース外面2に設けられた固定手段の位置に合わせた適切な大きさで使用される。
例えば、スーツケースの前面や後面の四隅にそれぞれ固定手段を設けて、前面や後面よりも小さな略長方形に切断した加飾体100を固定することが考えられる。
【0067】
粘着剤層を固定手段とする場合、粘着剤層を加飾体100に設けるので、スーツケース外面2の側に固定手段を設ける必要はないが、加飾体100を固定するおおよその位置がわかりやすいように、スーツケース外面2に目印を設けるのが好ましい。
【0068】
複数の加飾体100を、スーツケースの1つの外面に設ける(例えば、上下に1つずつ)ことも可能である。
【0069】
また、加飾体100の材質や厚さによっては、容易に折り曲げることが可能である。加飾体100を図2に示すような形状にし、折線をつけることによって、図3に示すように、中央部100Aがスーツケース1の前面(又は後面)を覆い、端部100Bがスーツケース1の側面等を覆うようにすることができる。
この場合、カバー部材で四隅を覆うことで、固定手段を目立ちにくくすることができ、美感を優れたものとすることができる。
【0070】
[スーツケース]
本明細書において、「スーツケース」とは、主に、旅行用として衣類(スーツ等)やその他の旅具を運搬するために使用される比較的大型の鞄であり、本体と蓋体をヒンジで開閉可能に形成されたものをいう。
【0071】
本発明のスーツケース1は、スーツケース外面2に、加飾体100を着脱可能に固定されたものである。従来公知のスーツケースに、加飾体100を着脱可能に固定することにより、本発明のスーツケース1となる。
【0072】
スーツケースの材質について、特に限定はなく、樹脂製、金属製、布製、革製等が挙げられる。
スーツケースの大きさについても、特に限定はない。スーツケースのデザインを気軽に取り換えることができるという本発明の効果は、スーツケースの大きさに関わらず発揮される。機内に持ち込めない大型のスーツケース(例えば、キャスター(移動を容易にするために底面に取り付けられた車輪)を有するスーツケースや、キャスターを利用して運搬するときに使用する伸縮可能な把持部を有するスーツケース)の場合、それに加えて、空港等において他人のものと瞬時に見分けることができるという効果を発揮しやすい。
【0073】
また、一般的なスーツケースには、スーツケース外面が機械的強度を向上させるための凹凸を有するタイプのものがあるが、本発明においては、シート状の加飾体100をスーツケース外面2に固定するので、加飾体100が着脱可能に固定されたスーツケース外面2は、凹凸を有さない平面であることが、加飾体100がスーツケースに密着し易いために好ましい。
なお、上記「凹凸」とは、専ら機械的強度を向上させるために設けられた凹凸(例えば、幅や深さが1mm〜10cm程度の補強リブ)をいうのであって、表面上のミクロな凹凸をいうのではない。
本発明のスーツケースは、シート状の加飾体がスーツケース外面に良好に密着するような平滑さを有していることが好ましい。
【0074】
本発明のスーツケースは、加飾体を着脱可能にスーツケースの外面に固定するので、スーツケースの中身を出すという面倒な作業を行うことなく、加飾体を取り換えることができるので、TPOに応じてデザインを変更することができ、自分オリジナルのデザインにすることで、空港等において、他人のスーツケースとの見分けが極めて容易になる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の加飾体により外面に絵柄・模様等を加飾したスーツケースは、デザインを気軽に取り換えることが極めて容易であり、大型のスーツケース等に広く利用されるものである。
【符号の説明】
【0076】
1 スーツケース
2 スーツケース外面
100 加飾体
100A 中央部
100B 端部
101 ハードコート層
102 フィルム基材層
103 加飾層
104 保護層
図1
図2
図3