(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-184860(P2017-184860A)
(43)【公開日】2017年10月12日
(54)【発明の名称】蒸煮装置
(51)【国際特許分類】
A47J 27/16 20060101AFI20170919BHJP
【FI】
A47J27/16 B
A47J27/16 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-74199(P2016-74199)
(22)【出願日】2016年4月1日
(71)【出願人】
【識別番号】000130651
【氏名又は名称】株式会社サムソン
(72)【発明者】
【氏名】西山 将人
(72)【発明者】
【氏名】明尾 伸基
(72)【発明者】
【氏名】中井 保次郎
【テーマコード(参考)】
4B054
【Fターム(参考)】
4B054AA02
4B054AA16
4B054AB01
4B054BA02
4B054CH02
4B054CH12
(57)【要約】
【課題】被加熱物に対する加熱量のバラツキを防止することのできる蒸煮装置を提供する。
【解決手段】被加熱物2を収容する処理槽1、処理槽内への蒸気供給を制御する蒸気弁4、処理槽内から空気や蒸気を排気する排気弁5、処理槽内の温度を検出する槽内温度検出装置7、前記蒸気弁などの動作を制御する運転制御装置6を持ち、設定した昇温曲線に沿って温度を上昇させるようにしている蒸煮装置において、昇温工程の初期には蒸気弁4と排気弁5を連続的に開いて空気置換の工程を行い、その後、前記槽内温度検出装置7にて現在の処理槽内の温度を検出し、検出した現在の処理槽内温度に基づいて、調理温度まで昇温するための昇温曲線を設定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を収容する処理槽、処理槽内への蒸気供給を制御する蒸気弁、処理槽内から空気や蒸気を排気する排気弁、処理槽内の温度を検出する槽内温度検出装置、前記蒸気弁などの動作を制御する運転制御装置を持ち、
被加熱物を収容した処理槽内に蒸気弁を通じて蒸気を供給することで処理槽内を加熱して被加熱物を蒸煮するようにしている蒸煮装置であって、
前記運転制御装置では、処理槽内を調理温度まで昇温する昇温工程を行う際、経過時間と目標温度を定めることで目標とする昇温曲線を設定しておいて、設定した昇温曲線に沿って温度を上昇させるように蒸気弁の作動を調節している蒸煮装置において、
昇温工程の初期には、設定した昇温曲線から外れても前記蒸気弁と排気弁を連続的に開き、処理槽内への蒸気導入を行う一方で処理槽内の空気を排出することで処理槽内の空気を蒸気に置き換える空気置換の工程を行い、
空気置換工程を終了後、前記槽内温度検出装置にて現在の処理槽内の温度を検出し、検出した現在の処理槽内温度に基づいて、調理温度まで昇温するための昇温曲線を設定し、
その後は設定した昇温曲線に沿って処理槽内の温度を上昇させるように蒸気弁の作動を調節するようにしたことを特徴とする蒸煮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加熱物を収容した処理槽内に蒸気を導入することによって処理槽内に収容した被加熱物を蒸気で加熱する蒸煮装置に関するものであり、より詳しくは、昇温時には設定しておいた昇温曲線に沿って昇温していくように処理槽内への蒸気供給を調節するが、昇温初期には処理槽内の空気を蒸気に置き換えるために蒸気供給を連続的に行うようにしており、そのために昇温工程初期では処理槽内温度が設定しておいた温度より高くなる蒸煮装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特公平6−87824号に記載があるように、処理槽内に被加熱物である食品を収容して密閉し、処理槽内に蒸気を導入して処理槽内を高温に維持することで処理槽内の食品を加熱する蒸煮装置が知られている。このような蒸煮装置では、被加熱物を収容して加熱する処理槽、処理槽内への蒸気供給量を調節する蒸気弁、処理槽内の空気や蒸気を排出する排気弁、処理槽内の温度を検出する温度検出装置、蒸煮装置の運転を制御する運転制御装置等を設置しておく。
【0003】
蒸煮装置の運転を制御する運転制御装置は、温度検出装置で検出した処理槽内温度に基づいて運転を行う。運転制御装置では、経過時間とその時点での温度を設定し、その温度になるように加熱量を調節するプログラムに基づいて蒸気弁や排気弁の操作などを行うようにしている。蒸煮の工程は、食品を調理温度まで昇温する昇温工程と、昇温後に調理温度で維持する加熱工程がある。運転制御装置では調理温度に向けて昇温していく昇温曲線を設定しておき、昇温曲線に沿って昇温していくように加熱量を調節する。
【0004】
また、蒸煮時に処理槽内に空気が残っていると、被加熱物に対する加熱量にむらが発生することになるため、昇温初期には処理槽内の空気を蒸気に置き換える空気置換の工程を行う。空気置換工程では、蒸気弁と排気弁の両方を開いておき、処理槽内への蒸気供給と処理槽内からの排気を同時に行う。蒸気を供給しながら排気を行うと、処理槽内の空気を蒸気が押し出していくため、次第に処理槽内から空気が無くなり、処理槽内は蒸気で満たされることになる。処理槽内を蒸気で満たすことで処理槽内の温度むらをなくし、被加熱物に対して加熱のむらが発生することを防止する。
【0005】
空気置換は所定時間が経過するまで行い、その間は蒸気弁と排気弁は開いたままとしているため、空気置換の工程中は蒸気の供給が続くことになる。そのため、この時間帯の処理槽内温度は設定しておいた昇温曲線とは異なる温度となる。
図4に記載の例では、空気置換中の槽内温度は設定温度より高いものとなっているため、空気置換の工程を終了すると、実際の温度が設定していた昇温曲線上の温度と等しくなる時までの間は、蒸気弁を閉じて加熱しないようにしている。蒸気供給を停止すると処理槽内の温度は低下することになり、実際温度が設定しておいた昇温曲線上の温度に等しくなると、その後は設定しておいた昇温曲線に沿って昇温するように蒸気弁の作動を制御している。
【0006】
しかしこの場合、空気置換を終了して蒸気弁と排気弁を閉じていると、処理槽内では温度低下が発生し、処理槽内に充満している蒸気が温度低下によって凝縮するということがある。蒸気が液体に戻ると、体積は大幅に小さくなるため、処理槽内の圧力は低下する。この圧力低下によって処理槽内が負圧になると、処理槽は周囲の空気を吸い込むことになり、処理槽内には蒸気の層と空気の層ができることになる。処理槽内に空気だまりができると、空気だまりの部分では、蒸気の熱が伝わりにくいために蒸気とは異なる温度となり、処理槽内で温度むらができることになる。処理槽内で温度むらが発生すると、処理槽内に収容している被加熱物は、収納場所によって加熱量が異なるということになる。被加熱物に対する加熱量のバラツキを招くことになり、加熱不足や過剰な加熱が行われることになると、被加熱物の品質を低下させるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平6−87824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、処理槽内に収容した被加熱物を蒸気によって加熱する蒸煮装置であって、昇温初期に被加熱物を収容した処理槽内の空気を蒸気に置き換える空気置換工程を行うようにしている蒸煮装置において、空気置換後に処理槽内圧力が低下することで処理槽内へ空気が吸引され、処理槽内に空気の層ができることで処理槽内に温度むらが発生し、被加熱物に対する加熱量のバラツキが発生してしまうことを防止することのできる蒸煮装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、被加熱物を収容する処理槽、処理槽内への蒸気供給を制御する蒸気弁、処理槽内から空気や蒸気を排気する排気弁、処理槽内の温度を検出する槽内温度検出装置、前記蒸気弁などの動作を制御する運転制御装置を持ち、被加熱物を収容した処理槽内に蒸気弁を通じて蒸気を供給することで処理槽内を加熱して被加熱物を蒸煮するようにしている蒸煮装置であって、前記運転制御装置では、処理槽内を調理温度まで昇温する昇温工程を行う際、経過時間と目標温度を定めることで目標とする昇温曲線を設定しておいて、設定した昇温曲線に沿って温度を上昇させるように蒸気弁の作動を調節している蒸煮装置において、昇温工程の初期には、設定した昇温曲線から外れても前記蒸気弁と排気弁を連続的に開き、処理槽内への蒸気導入を行う一方で処理槽内の空気を排出することで処理槽内の空気を蒸気に置き換える空気置換の工程を行い、空気置換工程を終了後、前記槽内温度検出装置にて現在の処理槽内の温度を検出し、検出した現在の処理槽内温度に基づいて、調理温度まで昇温するための昇温曲線を設定し、その後は設定した昇温曲線に沿って処理槽内の温度を上昇させるように蒸気弁の作動を調節するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明を実施することで、処理槽内の空気置換後に処理槽内が負圧にならず、処理槽が空気を吸引することを防止することができる。空気の吸引を防止することで、処理槽内での空気だまりによる温度むらの発生がなくなり、蒸煮時に加熱量のばらつきによって被加熱物の品質が低下するということを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】本発明の第1実施例での槽内温度と加熱状況の説明図
【
図3】本発明の第2実施例での槽内温度と加熱状況の説明図
【
図4】比較のための従来例での槽内温度と加熱状況の説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施例を図面を用いて説明する。
図1は本発明を実施している蒸煮装置のフロー図、
図2は本発明の第1実施例での槽内温度と加熱状況の説明図、
図3は本発明の第2実施例での槽内温度と加熱状況の説明図である。
【0013】
蒸煮装置は、横置きとした円筒形であって、一方の端部は扉としている処理槽1内に被加熱物2を収容しておき、処理槽内に蒸気を導入して被加熱物を加熱する。処理槽1の底部には蒸気供給管3を接続しておき、蒸気供給管3の途中に設けた蒸気弁4によって処理槽1への蒸気供給を制御する。処理槽1の上部には排気弁5を設置しており、処理槽1内の空気を蒸気と置き換える場合や、処理槽1内の蒸気を排出する場合には排気弁4を開くことで処理槽内の空気や蒸気を排出する。
【0014】
そして処理槽1内の温度を検出する槽内温度検出装置7を設置しておき、槽内温度検出装置7で検出した槽内温度の値は蒸煮装置の運転を制御する運転制御装置6へ出力するようにしている。運転制御装置6では、槽内温度検出装置7で検出した槽内温度の値と、運転制御装置6に設定している運転プログラムに基づき、処理槽1へ供給する蒸気量を調節するなどによって被加熱物2に対する加熱量を調節する。
【0015】
蒸煮装置での加熱調理は、あらかじめ設定しておいた調理温度まで被加熱物を昇温し、調理温度で一定時間保持することで調理を行うものであり、蒸煮装置での調理工程は、被加熱物2を調理温度まで上昇させる昇温工程と、調理温度に維持する加熱工程からなっている。昇温工程の場合、加熱調理開始からの経過時間と、その時点での処理槽内温度をあらかじめ定めることで昇温曲線を設定するようにしておき、処理槽内温度が設定した温度になるように加熱量調節装置8で蒸気供給量を調節しながら昇温する。
【0016】
また、昇温工程の初期では、処理槽1内の空気を蒸気に置き換える空気置換の工程を行う。蒸煮前の処理槽1内は空気で満たされており、その状態で蒸気を供給すると、処理槽1内に空気溜まりができることになる。空気溜まりの部分では蒸気の熱が伝わりにくく、そのままでは温度むらが発生してしまうため、昇温工程の初期に処理槽内の空気を蒸気で置き換える。空気置換の工程では、蒸気弁4と排気弁5を開き、排気しながら蒸気を供給していくことで空気と蒸気の置き換えを行う。昇温工程中は蒸気を連続的に供給するため、この期間の処理槽内温度は、設定している昇温曲線とは異なる軌跡を描くことになり、空気置換工程終了時点での処理槽内温度は、設定しておいた昇温曲線で想定している温度より高くなる。
【0017】
そのため運転制御装置6では、空気置換工程終了時点の処理槽内温度を槽内温度検出装置7によって検出しておき、空気置換工程終了時点の処理槽内温度から調理温度に到達する昇温曲線を再設定する。
図2に記載している実施例では、再設定した昇温曲線は、現在の処理槽内温度から調理温度まで昇温し続けるものであり、途中で温度低下はしないように設定しておく。その後は再設定した昇温曲線に沿って昇温が行われるように蒸気弁4の開閉を制御し、処理槽内の温度を上昇させる。処理槽内の温度が調理温度に達すると、昇温工程から加熱工程に移行し、運転制御装置6では処理槽内の温度を調理温度に維持するように蒸気弁4の開閉を制御する。
【0018】
また、
図3に記載している実施例も、運転制御装置6は、空気置換工程終了時点の処理槽内温度を槽内温度検出装置7によって検出して昇温曲線を再設定するものであるが、ここではしばらくの間温度を維持するようにしており、空気置換工程終了時点の処理槽内温度を維持するように蒸気弁4の開閉を制御する。この場合には、当初設定しておいた昇温曲線が空気置換工程終了時点の温度に上昇するまでの間は、処理槽内の温度が低下しない程度に蒸気供給を行って温度を維持しておき、昇温曲線が空気置換工程終了時点の処理槽内温度に等しくなった以降は、設定しておいた昇温曲線に沿って昇温が行われるように蒸気弁4の開閉を制御する。
【0019】
そして処理槽内の温度が調理温度に達すると、昇温工程から加熱工程に移行し、運転制御装置6では処理槽内の温度を調理温度に維持するように蒸気弁4の開閉を制御する。加熱工程で所定時間の間温度を維持しておき、加熱工程が終了すると蒸気弁4は閉じ排気弁5は開くことで処理槽1内の蒸気を排出する。蒸気排出後、処理槽の扉を開いて処理槽ないから被加熱物2を取り出して蒸煮の工程を終了する。
【0020】
図4に記載のように昇温曲線は当初設定したもののみを使っていた場合、置換工程終了時点で処理槽内の温度は昇温曲線の設定温度より高いものであると、昇温曲線の温度が現在の温度より高くなるまでは蒸気供給は行わないことなる。蒸気供給を行わなければ、処理槽からの放熱によって処理槽内の温度は低下し、処理槽内温度が低下する。蒸気の凝縮が起こって処理槽内の圧力が低下すると、処理槽では外部より空気を吸引して処理槽内に空気層ができることになっていた。しかし、上記のように空気置換工程終後に処理槽内の温度を空気置換工程終了時点の処理槽内温度より低下させないことで、空気置換工程終了後に処理槽内で圧力が低下して処理槽内に空気が吸引されることを防止することができる。
【0021】
なお、本発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。例えば上記実施例では、処理槽の温度を計測する槽内温度検出装置7で槽内温度を検出するようにしているが、処理槽内の圧力を計測する槽内圧力検出装置を設置しておき、運転制御装置6では計測した圧力値から換算によって処理槽内の温度を算出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0022】
1 処理槽
2 被加熱物
3 蒸気供給配管
4 蒸気弁
5 排気弁
6 運転制御装置
7 槽内温度検出装置