特開2017-184889(P2017-184889A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-184889(P2017-184889A)
(43)【公開日】2017年10月12日
(54)【発明の名称】脳科学用臭気隔離装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20170919BHJP
【FI】
   A61B5/05 390
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-74658(P2016-74658)
(22)【出願日】2016年4月1日
(71)【出願人】
【識別番号】501193218
【氏名又は名称】株式会社 清原光学
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】特許業務法人永井国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100087446
【弁理士】
【氏名又は名称】川久保 新一
(72)【発明者】
【氏名】清原 元輔
(72)【発明者】
【氏名】清原 耕輔
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AB42
4C096AB47
4C096AD19
4C096FC20
(57)【要約】
【課題】被検者の鼻の周囲の小空間を隔離する器具を被検者に装着した場合にストレスによる検査結果への悪影響が少なく、しかも、MRIで使用するヘッドコイルの形状が異なっても、臭気隔離装置の形状を種々用意する必要がない脳科学用臭気隔離装置を提供することを目的とする。
【解決手段】形態が変形自在であり、しかも機密性を具備する袋状体と、上記袋状体と連通するパイプと、上記袋状体の端部を被検者に密着させる密着手段とを有し、上記袋状体は、脳の状態を検査する被検者の頭部と顔とを覆うものであることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
形態が変形自在であり、しかも機密性を具備する袋状体と;
上記袋状体と連通するパイプと;
上記袋状体の端部を被検者に密着させる密着手段と;
を有し、上記袋状体は、脳の状態を検査する被検者の頭部と顔とを覆うものであることを特徴とする脳科学用臭気隔離装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記袋状体は、合成樹脂製であり、しかも、透明、半透明、または、不透明であることを特徴とする脳科学用臭気隔離装置。
【請求項3】
請求項1において、
上記袋状体には、ヘッドホンまたはマイクロホンが設けられていることを特徴とする脳科学用臭気隔離装置。
【請求項4】
請求項1において、
上記パイプは、所定の臭いを含む気体を送る送気パイプ、上記袋状体内の気体を排出する排気パイプであることを特徴とする脳科学用臭気隔離装置。
【請求項5】
請求項1において、
上記密着手段は、帯状重り、粘土状重り、面ファスナー、紐、輪ゴムのうちの少なくとも1つであることを特徴とする脳科学用臭気隔離装置。
【請求項6】
光触媒性ナノ粒子を人体に供給する光触媒供給手段と;
上記人体に供給された上記光触媒性ナノ粒子に所定の光を照射する光照射手段と;
を有し、上記光触媒性ナノ粒子に所定の波長の光を照射することによって、上記人体または上記人体の周辺に存在している臭いを消去することを特徴とする消臭装置。
【請求項7】
請求項6において、
形態が変形自在であり、しかも機密性を具備する袋状体であって、上記人体を覆う袋状体を有することを特徴とする消臭装置。
【請求項8】
請求項6において、
上記人体は、髪の毛であることを特徴とする消臭装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳科学用臭気隔離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検者に特定の臭気を嗅がせた場合における脳の活動状態を、MRI(磁気共鳴画像装置)で検出することが知られている。
【0003】
MRI内のベッドに被検者が横たわっている状態で、被検者に所定の臭いを嗅がせるために、被検者の鼻の周囲に所定の臭いを供給するときに、その所定の臭いが、MRI装置が設置されているMRI室の全体に拡散する。この状態で、新たな臭いを被検者の鼻に送ると、被検者の鼻に直前に送った臭いが鼻の周囲に漂っているので、直前の臭いと新たな臭いとが混合され、新たな臭いによる被検者の状態を正確に検査することができない。
【0004】
新たな臭いのみを被検者に嗅がせるためには、直前の臭いを、被検者の鼻の周囲から除去する必要があり、この臭気除去作業が煩雑であり、時間がかかる。
【0005】
そこで、被検者の鼻にパイプを挿入し、このパイプを介して、臭い発生装置から所定の臭いを供給し、その臭いによるMRI検査が終わったときに、その臭いを排出、除去する装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−24422
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来例では、被検者の鼻にパイプを挿入するので、そのパイプを装着することによって、被検者にストレスが加わり、このストレスが、検査結果に悪影響を与える場合がある。
【0008】
被検者の鼻にパイプを装着することによるストレスを少なくするには、宇宙服または潜水服を構成するヘルメット(頭全体を覆うヘルメット)を被検者の頭に装着することが考えられる。このヘルメットは、鼻に挿入するパイプよりも、装着した場合に被検者のストレスが少ないので、装着による検査結果への悪影響が少ないと考えられる。
【0009】
一方、検査中にMRI内のベッドに被検者が横たわる場合、検査中に被検者の頭が動かないように、ヘッドコイルと呼ばれる固定器具を介して、被検者の頭をMRIのベッドに固定する必要がある。また、このヘッドコイルには、脳からの信号を受信する受信機が設けられている。
【0010】
上記ヘッドコイルの形状は、MRIのメーカー等によって種々異なる。上記ヘッドコイルの形状は、たとえば、円筒状であったり鳥かご状であったり、または、他の形状でもある。
【0011】
上記のように、脳科学用臭気隔離装置としてのヘルメットを、形状が異なる種々のヘッドコイルに装着する場合、複数種類のヘルメットの形状毎に、ヘルメットを製造する必要があり、その製造が煩雑であるという問題がある。
【0012】
本発明は、被検者の鼻の周囲の小空間を隔離する器具を被検者に装着した場合にストレスによる検査結果への悪影響が少なく、しかも、MRIで使用するヘッドコイルの形状が異なっても、臭気隔離装置の形状を種々用意する必要がない脳科学用臭気隔離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の脳科学用臭気隔離装置は、形態が変形自在であり、しかも機密性を具備する袋状体と、上記袋状体と連通するパイプと、上記袋状体の端部を被検者に密着させる密着手段とを有し、上記袋状体は、脳の状態を検査する被検者の頭部と顔とを覆うものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、被検者の鼻の周囲の小空間を隔離する器具を被検者に装着した場合にストレスによる検査結果への悪影響が少なく、しかも、MRIで使用するヘッドコイルの形状が異なっても、臭気隔離装置の形状を種々用意する必要がないという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例1である脳科学用臭気隔離装置100を示す図である。
図2】脳科学用臭気隔離装置100を被検者20の頭21に被せた状態を示す図である。
図3】脳科学用臭気隔離装置100を被検者20の頭21に被せた状態で、被検者20がMRI40に横たわっている状態を示す図である。
図4】本発明の実施例2である消臭装置200を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明を実施するための形態は、以下の実施例である。
【実施例1】
【0017】
図1は、本発明の実施例1である脳科学用臭気隔離装置100を示す図である。
【0018】
図2は、脳科学用臭気隔離装置100で、被検者20の頭21、顔22を覆った状態を示す図である。
【0019】
脳科学用臭気隔離装置100は、柔軟性機密袋10と、帯状重りWとを有し、被検者20の脳の状態を検査するために使用する装置である。
【0020】
柔軟性機密袋10は、被検者20の頭21と顔22を覆うことができる程度の大きさを持つ袋状体であり、形態が変形自在であり、機密性を具備し、透明であることが好ましい。また、柔軟性機密袋10は、ビニール、ポリエチレン等の合成樹脂製であるが、半透明、不透明であってもよい。
【0021】
帯状重りWは、柔軟性機密袋10の端部10eに設けられ、柔軟性機密袋10の端部10eを被検者20に密着させる密着手段である。帯状重りWは、環状であり、非磁性体であり、柔らかく、被検者20が横になったときに、柔軟性機密袋10の端部10eを被検者20の首または胸に密着する程度の重さを有する。帯状重りWは、環状である代わりに、C字状、U字状であってもよい。この場合、C字状、U字状の開口部が被検者20の背中に位置するようにすれば、被検者20が横たわったときに上記開口部が被検者20の背中で押されるので、機密性を担保できる。
【0022】
柔軟性機密袋10の側面10sにヘッドホンH1、H2、送気パイプP1、排気パイプP2が設けられ、柔軟性機密袋10の図1中、前面10fに、マイクロホンMが設けられている。
【0023】
ヘッドホンH1、H2のそれぞれに、信号線L1、L2が接続されている。マイクロホンMに信号線L3が接続されている。送気パイプP1の一端、排気パイプP2の一端は、それぞれ、柔軟性機密袋10の内部と通じている。
【0024】
次に、脳科学用臭気隔離装置100を使用してMRI検査を行う場合の動作について説明する。
【0025】
まず、図2に示すように、脳科学用臭気隔離装置100を被検者20の頭21に被せ、柔軟性機密袋10で頭21、顔22をすっぽり覆う。
【0026】
図3は、脳科学用臭気隔離装置100を被検者20の頭21、顔22に被せた状態で、被検者20がMRI40に横たわっている状態を示す図である。
【0027】
柔軟性機密袋10で頭21、顔22をすっぽり覆った後に、MRI40に設けられているベッド41に被検者20が横たわる。MRI40に設けられているベッド41に被検者20が横たわった後に、ヘッドコイル42を使用して、被検者20の頭21が動かないように固定する。
【0028】
この状態では、帯状重りWが、被検者20の首または胸に載置され、帯状重りWが被検者20の首または、胸に密着し、柔軟性機密袋10がその内部の気体を隔離する。なお、帯状重りWと被検者20の首または胸とが密着していない部分があれば、MRI40の検査員が、帯状重りWを被検者20の首または胸に軽く押しつける。帯状重りWは、ある程度重さがありしかも柔らかいので、押しつけることによって、帯状重りWが被検者20の首または胸と密着する。
【0029】
そして、柔軟性機密袋10に設けられているヘッドホンH1、H2、マイクロホンMに接続されている信号線L1、L2、L3を、図示しない所定の端子に接続する。また、送気パイプP1の他端を臭い発生手段31に接続し、排気パイプP2の他端をMRI室の外部または消臭手段32に接続する。
【0030】
送気パイプP1からは、空気とともに、所定の臭いが被検者20の鼻に送られる。この場合、帯状重りWの重りによって、柔軟性機密袋10の端部10eが被検者20の首、胸に密着しているので、柔軟性機密袋10内の気体、臭いが柔軟性機密袋10の外部に漏れることがない。
【0031】
そして、所定の臭いが被検者20の鼻に送られた状態で、被検者20の脳の状態をMRI40が検出する。
【0032】
このようにして、所定の臭いが被検者20の鼻に送られてから所定時間経過後に、臭い発生手段31からは、臭いを含まない空気が送られ、これとともに、消臭手段32に設けられている排気手段が排気パイプP2を介して、柔軟性機密袋10内の空気と臭いとを吸気する。これによって、排気パイプP2を介して、消臭手段32に送られた臭いは、消臭される。よって、柔軟性機密袋10内の臭いは、短時間で、被検者20の鼻の周囲からなくなる。
【0033】
鼻に送られる臭いを変えることによって、臭い毎に、被検者20の脳の状態を検出することができる。
【0034】
ところで、被検者20が所定の臭いを嗅ぐことによって、脳の状態が変化すると考えられ、活性化した脳の部分には、血流が増加し、これによって、血液中のヘモグロビンが増加する。ヘモグロビンは鉄を含み、この鉄の量を検出すれば、脳の活性化部分を特定することができるとともに、活性化の度合いを検出することができる。
【0035】
なお、信号線L1、L2、L3として使用する銅線は非磁性体であるので、MRI40内で使用しても問題がない。
【0036】
一方、柔軟機密袋10に面ファスナーを、図1に示す柔軟性機密袋10の端部10eに設けるようにしてもよい。面ファスナーは、フック部とループ部とを有する。フック部とループ部とは、それぞれ、柔軟性機密袋10の端部10e(開口付近)に固着されている。柔軟性機密袋10が、図1中、横方向に伸びでいる状態では、フック部とループ部とが、互いに所定間隔を保っている。フック部とループ部と貼り合わせると、柔軟性機密袋10の端部10e(開口部)が括られる。面ファスナーを絞める場合、被検者20が呼吸に支障がない程度の強さで面ファスナーを絞める。これによって、被検者20の頭21、顔22は、機密性が保たれ、柔軟性機密袋10内の気体は、柔軟性機密袋10の外には漏れない。
【0037】
このようにして、臭い発生手段31から送気パイプP1を介して、空気のみを送り、排気パイプP2を介して、臭いを吸気するので、短時間で、柔軟性機密袋10内の臭いがなくなり、また、MRI40が設置されているMRI室には、臭いが拡散されない。
【0038】
上記実施例において、帯状重りWの代わりに、紐または輪ゴムを使用するようにしてもよい。また、帯状重りWとともに、面ファスナー、紐、輪ゴムのうちの少なくとも1つを使用するようにしてもよい。すなわち、柔軟性機密袋10の端部10eを被検者20に密着させる場合、帯状重りW、粘土状重り、面ファスナー、紐、輪ゴムのうちの少なくとも1つの密着手段を使用する。
【0039】
なお、上記実施例において、柔軟性機密袋10に、ヘッドホンH1、H2とマイクロホンMとを設けなくてもよい。
【0040】
上記実施例において、ヘッドコイル42を柔軟性機密袋10で包むようにしてもよい。つまり、柔軟性機密袋10の中にヘッドコイル42を入れるようにしてもよい。
【0041】
脳科学用臭気隔離装置100は、MRIで脳の状態を検査するための臭気隔離装置であるが、MRIを使用する代わりに、脳磁計(MEG)、脳赤外計測(NIRS)等を使用して脳の状態を検査するようにしてもよい。
【実施例2】
【0042】
図4は、本発明の実施例2である消臭装置200を示す図である。
【0043】
消臭装置200は、基本的には、MRI用臭気隔離装置100と同じである。消臭装置200がMRI用臭気隔離装置100と異なる点は、MRI用臭気隔離装置100において、臭い発生手段31の他に、光触媒供給手段35を設け、消臭手段32の代わりに、排気手段36を設け、光照射手段50を追加した点である。
【0044】
光触媒供給手段35は、光触媒性ナノ粒子を柔軟性機密袋10に供給する手段であり、上記光触媒性ナノ粒子を人体に供給する手段である。
【0045】
光触媒性ナノ粒子は、花粉程度の大きさの粒子であり、人体には悪影響を及ぼさない物質である。光触媒性ナノ粒子として、たとえば二酸化チタン(TiO2)が考えられ、これは、生体に対してほとんど無害である。特に、多孔質二酸化チタンは、光触媒で極めて重要な物質である。多孔質二酸化チタンナノ粒子を得るには、水熱法、ゾル−ゲル法、自己集合法が知られているが、超臨界流体を反応場とする有機・無機ハイブリッドナノ粒子合成法が報告され、極めて短時間でナノ粒子の合成が可能である。
【0046】
排気手段36は、柔軟性機密袋10内の空気を、柔軟性機密袋10の外部に排出する手段である。
【0047】
光照射手段50は、柔軟性機密袋10内の臭いを消去するために供給された光触媒性ナノ粒子に照射する光を発生する手段である。光照射手段50が照射する光の波長は、柔軟性機密袋10内に供給された光触媒性ナノ粒子が活性化し、においを分解する波長であり、光照射手段50が照射する光は、可視光、赤外光、紫外光である。
【0048】
上記実施例において、においと光触媒性ナノ粒子とを、柔軟性機密袋10に、交互に供給するようにしてもよい。
【0049】
また、光触媒性ナノ粒子を人の髪の毛に供給し、所定の波長の光を照射するようにしてもよい。このようにすると、光触媒の効果で、短時間で、髪の毛のにおいを除去することができる。
【符号の説明】
【0050】
100…脳科学用臭気隔離装置、
10…柔軟性機密袋、
20…被検者、
40…MRI、
42…ヘッドコイル。
図1
図2
図3
図4