【解決手段】実施形態に係る放射線検出器は、放射線を信号電荷に変換する光電変換膜を有し前記放射線を直接的に検出する検出部、または、前記放射線をシンチレータと協働して検出する検出部と、前記検出部からの出力に基づいて放射線画像信号を作成する撮影動作を実行する制御回路と、振動検出器と、を備えている。
前記制御回路は、前記振動検出器からの出力が第1の閾値を超えた場合には、前記撮影動作の実行を禁止する撮影禁止期間を設定し、前記撮影禁止期間の経過後に前記検出部からの出力が所定の閾値を超えた場合には前記撮影動作を実行する。
前記制御回路は、前記撮影禁止期間の設定後、前記振動検出器からの出力が前記第1の閾値の絶対値よりも小さい絶対値を有する第2の閾値に未達になった場合には、所定の時間の経過後に前記撮影禁止期間を終了させる請求項1または2に記載の放射線検出器。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
本実施の形態に係る放射線検出器は、X線のほかにもγ線などの各種放射線に適用させることができる。ここでは、一例として、放射線の中の代表的なものとしてX線に係る場合を例にとり説明をする。したがって、以下の実施形態の「X線」を「他の放射線」に置き換えることにより、他の放射線にも適用させることができる。
【0012】
また、以下に例示をするX線検出器1は、放射線画像であるX線画像を検出するX線平面センサである。X線平面センサには、大きく分けて直接変換方式と間接変換方式がある。
以下においては、一例として、間接変換方式のX線検出器1を例示するが、本発明は直接変換方式のX線検出器にも適用することができる。
すなわち、X線検出器は、X線を信号電荷に変換する光電変換膜を有しX線を直接的に検出する直接変換方式の検出部、または、X線をシンチレータと協働して検出する間接変換方式の検出部を有するものであれば良い。
なお、直接変換方式の検出部には既知の技術を適用することができるので詳細な説明は省略する。
【0013】
また、X線検出器1は、例えば、一般医療用途などに用いることができるが、用途に限定はない。
【0014】
図1は、X線検出器1を例示するための模式斜視図である。
なお、
図1においては、バイアスライン2c3などを省いて描いている。
図2は、X線検出器1のブロック図である。
図3は、アレイ基板2の回路図である。
図1〜
図3に示すように、X線検出器1には、アレイ基板2、回路基板3、画像構成部4、シンチレータ5、入射X線検出部6、および振動検出器7が設けられている。
なお、X線検出器1は、アレイ基板2、回路基板3、入射X線検出部6、および振動検出器7などが収納される図示しない筐体をさらに備えることができる。そして、アレイ基板2および入射X線検出部6は、筐体の内部に設けられた図示しない支持板の一方の面に設け、回路基板3および振動検出器7は、支持板の、アレイ基板2および入射X線検出部6が設けられる側とは反対側の面に設けることができる。
【0015】
アレイ基板2は、シンチレータ5によりX線から変換された蛍光(可視光)を信号電荷に変換する。
アレイ基板2は、基板2a、光電変換部2b、制御ライン(又はゲートライン)2c1、データライン(又はシグナルライン)2c2、バイアスライン2c3、および保護層2fなどを有する。
なお、光電変換部2b、制御ライン2c1、データライン2c2、およびバイアスライン2c3の数などは例示をしたものに限定されるわけではない。
【0016】
基板2aは、板状を呈し、無アルカリガラスなどの透光性材料から形成されている。
光電変換部2bは、基板2aの一方の表面に複数設けられている。
光電変換部2bは、矩形状を呈し、制御ライン2c1とデータライン2c2とにより画された領域に設けられている。複数の光電変換部2bは、マトリクス状に並べられている。
なお、1つの光電変換部2bは、1つの画素(pixel)に対応する。
【0017】
複数の光電変換部2bのそれぞれには、光電変換素子2b1と、スイッチング素子である薄膜トランジスタ(TFT;Thin Film Transistor)2b2が設けられている。
また、
図3に示すように、光電変換素子2b1において変換した信号電荷を蓄積する蓄積キャパシタ2b3を設けることができる。蓄積キャパシタ2b3は、例えば、矩形平板状を呈し、各薄膜トランジスタ2b2の下に設けることができる。ただし、光電変換素子2b1の容量によっては、光電変換素子2b1が蓄積キャパシタ2b3を兼ねることができる。
【0018】
光電変換素子2b1は、例えば、フォトダイオードなどとすることができる。
薄膜トランジスタ2b2は、蛍光が光電変換素子2b1に入射することで生じた電荷の蓄積および放出のスイッチングを行う。薄膜トランジスタ2b2は、アモルファスシリコン(a−Si)やポリシリコン(P−Si)などの半導体材料を含むものとすることができる。薄膜トランジスタ2b2は、ゲート電極2b2a、ソース電極2b2b及びドレイン電極2b2cを有している。薄膜トランジスタ2b2のゲート電極2b2aは、対応する制御ライン2c1と電気的に接続される。薄膜トランジスタ2b2のソース電極2b2bは、対応するデータライン2c2と電気的に接続される。薄膜トランジスタ2b2のドレイン電極2b2cは、対応する光電変換素子2b1と蓄積キャパシタ2b3とに電気的に接続される。また、光電変換素子2b1のアノード側と蓄積キャパシタ2b3は、対応するバイアスライン2c3と電気的に接続される(
図3を参照)。
【0019】
制御ライン2c1は、所定の間隔を開けて互いに平行に複数設けられている。制御ライン2c1は、例えば、行方向に延びている。
1つの制御ライン2c1は、基板2aの周縁近傍に設けられた複数の配線パッド2d1のうちの1つと電気的に接続されている。1つの配線パッド2d1には、フレキシブルプリント基板2e1に設けられた複数の配線のうちの1つが電気的に接続されている。フレキシブルプリント基板2e1に設けられた複数の配線の他端は、回路基板3に設けられた読み出し回路31とそれぞれ電気的に接続されている。
【0020】
データライン2c2は、所定の間隔を開けて互いに平行に複数設けられている。データライン2c2は、例えば、行方向に直交する列方向に延びている。
1つのデータライン2c2は、基板2aの周縁近傍に設けられた複数の配線パッド2d2のうちの1つと電気的に接続されている。1つの配線パッド2d2には、フレキシブルプリント基板2e2に設けられた複数の配線のうちの1つが電気的に接続されている。フレキシブルプリント基板2e2に設けられた複数の配線の他端は、回路基板3に設けられた増幅・変換回路32とそれぞれ電気的に接続されている。
【0021】
図3に示すように、バイアスライン2c3は、データライン2c2とデータライン2c2との間に、データライン2c2と平行に設けられている。
バイアスライン2c3には、図示しないバイアス電源が電気的に接続されている。図示しないバイアス電源は、例えば、回路基板3などに設けることができる。
なお、バイアスライン2c3は、必ずしも必要ではなく、必要に応じて設けるようにすればよい。バイアスライン2c3が設けられない場合には、光電変換素子2b1のアノード側と蓄積キャパシタ2b3は、バイアスライン2c3に代えてグランドに電気的に接続される。
【0022】
制御ライン2c1、データライン2c2、およびバイアスライン2c3は、例えば、アルミニウムやクロムなどの低抵抗金属を用いて形成することができる。
【0023】
保護層2fは、光電変換部2b、制御ライン2c1、データライン2c2、およびバイアスライン2c3を覆っている。
保護層2fは、例えば、酸化物絶縁材料、窒化物絶縁材料、酸窒化物絶縁材料、および樹脂材料の少なくとも1種を含む。
【0024】
回路基板3は、アレイ基板2の、シンチレータ5側とは反対側に設けられている。
回路基板3には、読み出し回路31、増幅・変換回路32、および制御回路33が設けられている。
読み出し回路31は、薄膜トランジスタ2b2のオン状態とオフ状態を切り替える。
【0025】
図2に示すように、読み出し回路31は、複数のゲートドライバ31aと行選択回路31bとを有する。
行選択回路31bには、制御回路33などから制御信号S1が入力される。行選択回路31bは、X線画像の走査方向に従って、対応するゲートドライバ31aに制御信号S1を入力する。
ゲートドライバ31aは、対応する制御ライン2c1に制御信号S1を入力する。
例えば、読み出し回路31は、フレキシブルプリント基板2e1と制御ライン2c1とを介して、制御信号S1を各制御ライン2c1毎に順次入力する。制御ライン2c1に入力された制御信号S1により薄膜トランジスタ2b2がオン状態となり、光電変換素子2b1からの信号電荷(画像データ信号S2)が受信できるようになる。
【0026】
増幅・変換回路32は、複数の積分アンプ32a、複数の並列−直列変換回路32b、および複数のアナログ−デジタル変換回路32cを有している。
積分アンプ32aは、データライン2c2と電気的に接続されている。
並列−直列変換回路32bは、切り換えスイッチを介して積分アンプ32aと電気的に接続されている。
アナログ−デジタル変換回路32cは、並列−直列変換回路32bと電気的に接続されている。
【0027】
積分アンプ32aは、光電変換部2bからの画像データ信号S2を順次受信する。
そして、積分アンプ32aは、一定時間内に流れる電流を積分し、その積分値に対応した電圧を並列−直列変換回路32bへ出力する。この様にすれば、所定の時間内にデータライン2c2を流れる電流の値(電荷量)を電圧値に変換することが可能となる。
すなわち、積分アンプ32aは、シンチレータ5において発生した蛍光の強弱分布に対応した画像データ情報を、電位情報へと変換する。
【0028】
並列−直列変換回路32bは、電位情報へと変換された画像データ信号S2を順次直列信号に変換する。
アナログ−デジタル変換回路32cは、直列信号に変換された画像データ信号S2をデジタル信号に順次変換する。
【0029】
制御回路33は、シンチレータ5を有した間接変換方式の検出部、またはX線を信号電荷に変換する光電変換膜を有した直接変換方式の検出部からの出力に基づいてX線画像信号を作成する撮影動作を実行する。
制御回路33は、X線検出器1に設けられた各要素の動作を制御して、撮影動作を実行する。なお、撮影動作に関する詳細は後述する。
【0030】
画像構成部4は、配線4aを介して、回路基板3に設けられたアナログ−デジタル変換回路32cと電気的に接続されている。なお、画像構成部4は、回路基板3に設けられていてもよい。
画像構成部4は、アナログ−デジタル変換回路32cによりデジタル信号に変換された画像データ信号S2に基づいて、X線画像信号を作成する。構成されたX線画像信号は、画像構成部4から外部の機器に向けて出力される。
【0031】
シンチレータ5は、複数の光電変換素子2b1の上に設けられ、入射するX線を可視光すなわち蛍光に変換する。シンチレータ5は、基板2a上の複数の光電変換部2bが設けられた領域(有効画素領域)を覆うように設けられている。
シンチレータ5は、例えば、ヨウ化セシウム(CsI):タリウム(Tl)、あるいはヨウ化ナトリウム(NaI):タリウム(Tl)などを用いて形成することができる。この場合、真空蒸着法などを用いて、シンチレータ5を形成すれば、複数の柱状結晶の集合体からなるシンチレータ5が形成される。
【0032】
また、シンチレータ5は、例えば、酸硫化ガドリニウム(Gd
2O
2S)などを用いて形成することもできる。この場合、複数の光電変換部2bごとに四角柱状のシンチレータ5が設けられるように、マトリクス状の溝部を形成することができる。
【0033】
入射X線検出部6は、入射したX線の強度に応じた信号を出力する。入射X線検出部6は、アレイ基板2のX線が入射する側とは反対側に設けられている。入射X線検出部6は、アレイ基板2の直下に設けることができる。
【0034】
入射X線検出部6は、例えば、2つの電極と、2つの電極間に満たされた所定のガスと、2つの電極間に高電圧を印加する電源とを備えたものとすることができる。この様な構成を有する入射X線検出部6に外部からX線が入射すると、2つの電極間に満たされているガスが電離してイオンと電子が発生する。2つの電極間には電圧が印加されているので、発生したイオンと電子が電極に到達する。そのため、入射したX線の強度に応じた電気信号が出力される。
【0035】
なお、入射X線検出部6の構成は、例示をしたものに限定されるわけではない。入射X線検出部6は、X線を検出できるものであればよい。入射X線検出部6は、例えば、テルル化カドミウム半導体を用いたものや、シンチレータとフォトダイオードを有するものなどであってもよい。
【0036】
また、シンチレータ5とアレイ基板2を入射X線検出部6として用いることもできる。すなわち、少なくとも1つの光電変換素子2b1からの出力をX線の入射開始の検出に用いることができる。この場合、後述するように、光電変換素子2b1からの出力は微弱であるため、複数の光電変換素子2b1からの出力を加算したものをX線の入射開始の検出に用いることもできる。
【0037】
例えば、全ての光電変換素子2b1からの出力を加算したものをX線の入射開始の検出に用いる場合には以下のようにすることができる。
まず、全ての制御ライン2c1の電圧を操作し、全ての薄膜トランジスタ2b2をON状態に設定する。
X線が入射すると、シンチレータ5によりX線が蛍光に変換され、光電変換素子2b1により蛍光が電荷に変換され、ON状態にある薄膜トランジスタ2b2を介してアレイ基板2から信号が出力される。
【0038】
X線の入射時は、X線の未入射時よりも値の高い信号がアレイ基板2から出力されるので、X線の入射を検出することができる。
X線の検出後は、全ての制御ライン2c1の電圧を操作し、全ての薄膜トランジスタ2b2をOFF状態に設定する。全ての薄膜トランジスタ2b2をOFF状態に設定することで、撮影動作を実行することが可能となる。すなわち、後述する待機状態とすることができる。
【0039】
また、入射X線検出部6の配設位置は、X線検出器1に入射するX線が検出できる位置であれば特に限定はない。ただし、
図1に示すように、アレイ基板2の、X線の入射側とは反対側に入射X線検出部6を設ける様にすれば、アレイ基板2に入射するX線の強度が弱まるのを防止することができる。
【0040】
振動検出器7は、X線検出器1に加えられた衝撃や振動などを電気信号に変換する。振動検出器7は、衝撃や振動などを検出できるものであれば特に限定はない。振動検出器7は、例えば、振動の変位を検出する変位センサ、振動速度を検出する速度センサ、振動の加速度を検出する加速度センサなどとすることができる。
なお、以下においては、一例として、振動検出器7が加速度センサである場合を説明する。
【0041】
その他、X線検出器1には、蛍光の利用効率を高めて感度特性を改善するために、シンチレータ5の表面側(X線の入射面側)を覆うように図示しない反射層を設けることができる。
また、空気中に含まれる水蒸気により、シンチレータ5の特性と図示しない反射層の特性が劣化するのを抑制するために、シンチレータ5と図示しない反射層を覆う図示しない防湿体を設けることができる。
【0042】
次に、比較例に係るX線検出器の撮影動作について説明する。
図4は、比較例に係るX線検出器の撮影動作を例示するためのタイミングチャートである。
なお、比較例に係るX線検出器には、振動検出器7が設けられていない。
図4に示すように、X線検出器の外部に設けられたX線発生器からX線が照射されると、入射X線検出部6から入射したX線の強度に応じた電気信号が出力される。そして、入射X線検出部6からの出力が所定の閾値を超えた場合には、制御回路33は、X線の入射が開始されたとして以下の撮影動作を実行させる。
【0043】
まず、制御回路33は、待機状態から蓄積・露光状態に移行させる。
蓄積・露光状態においては、X線検出器に入射したX線の画像情報が、電荷情報として、光電変換部2bの内部に所定の期間分蓄積される。
次に、制御回路33は、蓄積・露光状態から読み出し・画像出力状態に移行させる。
読み出し・画像出力状態においては、制御回路33は、読み出し回路31、増幅・変換回路32、および画像構成部4に以下の動作を実行させる。
読み出し・画像出力状態においては、光電変換部2bの内部に蓄積された信号電荷は画像データ信号S2として読み出され、読み出された画像データ信号S2は、増幅され、電位情報へと変換され、順次直列信号に変換され、デジタル信号に変換される。そして、デジタル信号に変換された画像データ信号S2は、マトリクス状に並べられた光電変換部2b(画素)の並びに対応した電気信号へと変換されてX線画像信号が作成され、作成されたX線画像信号が外部の機器に向けて出力される。
【0044】
以上の様にして、1回の撮影が行われる。
撮影動作が終了すると、制御回路33は、読み出し・画像出力状態から待機状態に移行させ、次の撮影が可能となる。
【0045】
ここで、X線検出器1は、主に、人体や動物等のX線透視画像を得る用途に使用される。人体に大量のX線を照射すると人体に悪影響を与える恐れがあるため、X線による撮影の際にはX線の照射量を必要最小限に抑えることが重要となる。
人体に照射されたX線は人体の内部において多くが吸収され、吸収されずに透過したX線がX線検出器1に入射するため、X線検出器1に入射するX線は極めて微弱な強度となっていることが多い。この様な微弱なX線を検出するために、入射X線検出部6は、極めて高感度なセンサーとなっている。
【0046】
ところが、入射X線検出部6は、高感度であるため、外部からの振動や衝撃などによるノイズも検出しやすくなる。例えば、外部からの振動や衝撃などにより、入射X線検出部6の内部や外部において配線の位置関係が変わると静電容量の変化が発生して出力の変動が生じる場合がある。この出力変動をX線の入射として誤検出するおそれがある。
【0047】
また、入射X線検出部6に代えてアレイ基板2からの出力を用いる場合にも、外部からの振動や衝撃が、アレイ基板2に加わると、アレイ基板2が振動し、アレイ基板2と支持板などの筐体内の要素との位置関係が変わることで静電容量の変化が発生して出力の変動が生じる場合がある。この出力変動をX線の入射として誤検出するおそれがある。
【0048】
外部からの振動や衝撃の多くは、X線検出器1の位置を調整するためにX線検出器1を移動させたり、人体や動物などの被写体がX線検出器1に接触したりした場合に発生する。
【0049】
図5は、外部からの振動や衝撃が比較例に係るX線検出器に加えられた場合の撮影動作を例示するためのタイミングチャートである。
図5に示すように、外部からの振動や衝撃がX線検出器に加えられると、X線が入射していないにもかかわらず、入射X線検出部6から信号が出力される。この場合、振動や衝撃による出力と、X線の入射による出力とを判別するのは困難である。そのため、振動や衝撃による出力が所定の閾値を超えた場合には、制御回路33は、X線の入射が開始されたとして、前述した撮影動作を実行してしまう。
【0050】
意図しないタイミングで撮影動作が開始されてしまうと、この意図しない撮影動作が終了するまでの間にX線が入射したとしても意図した撮影動作を行うことができず撮影が失敗することになる。また、意図しない撮影動作が終了するまでの間は次の撮影動作を開始することができないので待ち時間が発生する。そのため、このようなX線の入射開始の誤検出が頻発すると、正常な撮影動作を行うことができず、撮影業務に大きな障害となる。
【0051】
この場合、X線の入射開始を判定するための閾値を大幅に高くすれば、X線の入射開始の誤検出を抑制することができる。
しかしながら、閾値を大幅に高くすると、微弱なX線の検出が困難となるおそれがある。そのため、閾値を大幅に高くするためには、X線の照射量を多くする必要がある。ところが、X線の照射量を多くすると、被写体である人体などへのX線被曝量が増加するので、X線による人体などへの悪影響が増加するおそれがある。そのため、閾値を大幅に高くすることでX線の入射開始の誤検出を抑制することは困難である。
【0052】
そこで、本実施の形態に係るX線検出器1においては、振動検出器7を設けることで、意図しないタイミングで撮影動作が開始されるのを抑制するようにしている。
図6は、本実施の形態に係るX線検出器1の撮影動作を例示するためのタイミングチャートである。
【0053】
図6に示すように、外部からの振動や衝撃がX線検出器1に加えられると、振動検出器7から振動や衝撃の大きさに対応した信号が出力される。
また、
図5に例示をしたものと同様に、外部からの振動や衝撃がX線検出器1に加えられると、X線が入射していないにもかかわらず、入射X線検出部6から信号が出力される。
【0054】
制御回路33は、振動検出器7からの出力値が所定の閾値A1(下限値)以上、もしくは閾値A2(上限値)以下となった場合(振動検出器7からの出力が第1の閾値を超えた場合)には、外部からの振動や衝撃がX線検出器1に加えられたと判断する。なお、閾値A1および閾値A2の両方を用いるようにしてもよい。
そして、制御回路33は、外部からの振動や衝撃がX線検出器1に加えられたと判断した場合には、待機状態から撮影動作の開始が禁止される「撮影禁止期間」に移行させる。すなわち、制御回路33は、撮影動作の実行を禁止する「撮影禁止期間」を設定する。「撮影禁止期間」の間は、撮影動作の実行のみが一時的に停止される。
「撮影禁止期間」は、予め定められた時間が経過した後に終了させることができる。
「撮影禁止期間」の長さには特に限定はないが、「撮影禁止期間」の長さを長くしすぎると撮影の待ち時間が長くなる。一方、「撮影禁止期間」の長さを短くしすぎるとX線の入射開始時期の誤検出が発生しやすくなる。そのため、「撮影禁止期間」の長さは、実験やシミュレーションなどを行い決定するようにすることが好ましい。
【0055】
ここで、撮影動作の開始を禁止するために、X線検出器1の全動作の実行を停止することもできる。しかしながら、X線検出器1の全動作の実行を停止させると、「撮影禁止期間」の経過後に、X線検出器1を再度起動させる必要がある。この場合、再起動には所定の時間を要するため、迅速なX線撮影を行うことが困難となるおそれがある。そのため、本実施の形態においては、X線検出器1の撮影動作の実行のみを一時的に停止させるようにしている。
【0056】
「撮影禁止期間」においては、入射X線検出部6からの信号に基づく撮影動作の開始が禁止される。そのため、「撮影禁止期間」中に、振動や衝撃により入射X線検出部6から閾値B以上の信号が出力されたとしても撮影動作が開始されることはない。
そのため、X線の入射開始時期の誤検出を抑制することができる。また、X線検出器1の撮影動作の実行のみを一時的に停止させるようにしているので、「撮影禁止期間」の経過後に、迅速なX線撮影を行うことが可能となる。
【0057】
次に、制御回路33は、「撮影禁止期間」の経過後に、再び待機状態に移行させる。待機状態となれば、入射X線検出部6からの信号に基づいて撮影の実行、すなわち、待機状態から蓄積・露光状態に移行させることが可能となる。
【0058】
次に、「撮影禁止期間」の経過後、X線検出器1の外部に設けられたX線発生器からX線が照射されると、入射X線検出部6からX線の強度に対応した信号が出力される。
入射X線検出部6からの出力値が所定の閾値Bを超えた場合には、制御回路33は、X線の入射が開始されたとして前述した撮影動作を実行させる。
【0059】
例えば、制御回路33は、「撮影禁止期間」中は撮影動作を実行しない。そして、制御回路33は、「撮影禁止期間」の経過後に、入射X線検出部6からの出力値が所定の閾値Bを超えた場合には撮影動作を実行する。
【0060】
また、入射X線検出部6に代えてアレイ基板2からの信号を用いる場合にも、制御回路33は、「撮影禁止期間」中は、撮影動作を実行しない。そして、制御回路33は、「撮影禁止期間」の経過後に、少なくとも1つの光電変換素子2b1からの出力が所定の閾値Bを超えた場合には撮影動作を実行する。すなわち、入射X線検出部6が設けられていない場合には、シンチレータ5と少なくとも1つの光電変換素子2b1を入射X線検出部6として用いる。この場合、光電変換素子2b1からの出力は微弱であるため、複数の光電変換素子2b1からの出力を加算したものを用いることもできる。
【0061】
本実施の形態によれば、「撮影禁止期間」中は、外部からの振動や衝撃による出力が入射X線検出部6から出力されたとしても、撮影動作が実行されることがない。そのため、意図しない撮影動作が実行されるのを抑制することができるので、本来のX線撮影業務への悪影響を最小限に抑えることが可能となる。
また、X線の入射開始を判定するための閾値Bを低くすることも可能となる。閾値Bを低くすることができれば、低線量のX線の入射を誤動作無く検出することが可能になり、被写体である人体へのX線被爆を低減することができる。
【0062】
図7は、他の実施形態に係るX線検出器1の撮影動作を例示するためのタイミングチャートである。
前述したように、外部からの振動や衝撃の多くは、X線検出器1の位置を調整するためにX線検出器1を移動させたり、人体や動物などの被写体がX線検出器1に接触したりした場合に発生する。そのため、外部からの振動や衝撃の多くは、比較的短時間で収束する。しかしながら、外部からの振動や衝撃が比較的長時間続いたり、より短時間で収束したりする場合もあり得る。
そのため、本実施の形態においては、以下のようにして「撮影禁止期間」を設定している。
【0063】
図7に示すように、外部からの振動や衝撃がX線検出器1に加えられると、振動検出器7から振動や衝撃の大きさに対応した信号が出力される。
制御回路33は、振動検出器7からの出力値が所定の閾値A1(下限値)以上、もしくは閾値A2(上限値)以下となった場合には、外部からの振動や衝撃がX線検出器1に加えられたと判断する。なお、閾値A1および閾値A2の両方を用いるようにしてもよい。 そして、制御回路33は、外部からの振動や衝撃がX線検出器1に加えられたと判断した場合には、待機状態から撮影動作の開始が禁止される「撮影禁止期間」に移行させる。
【0064】
次に、制御回路33は、外部からの振動や衝撃の程度に応じて「撮影禁止期間」の終期を設定する。
制御回路33は、振動検出器7からの出力値が所定の閾値A3以上、もしくは閾値A4以下となった場合には、所定の待機時間の経過後に「撮影禁止期間」を終了させる。すなわち、制御回路33は、「撮影禁止期間」の設定後、振動検出器7からの出力が第1の閾値(閾値A1、A2)の絶対値よりも小さい絶対値を有する第2の閾値(閾値A3、A4)に未達になった場合には、所定の時間の経過後に「撮影禁止期間」を終了させる。
なお、閾値A3および閾値A4の両方を用いるようにしてもよい。また、閾値A3は、閾値A1と閾値A2の間に設定され、閾値A4は、閾値A3と閾値A2の間に設定される。待機時間の長さには、特に限定はない。待機時間の長さは、例えば、実験やシミュレーションなどを行い決定することができる。
【0065】
以降、
図6に例示をしたものと同様にして撮影動作が実行される。
【0066】
本実施の形態によれば、
図6に例示をしたものと同様の効果を得ることができる。
またさらに、外部からの振動や衝撃の程度に応じて「撮影禁止期間」の終期を自動的に設定することができるので、X線の入射開始時期の誤検出をより確実に抑制することができる。また、余分な待ち時間の発生を抑制することができるので、より迅速なX線撮影を行うことが可能となる。
【0067】
次に、X線検出器1の作用、すなわち、X線画像信号の作成(X線画像の構成)について説明する。
初期状態においては、蓄積キャパシタ2b3にはバイアスライン2c3を通じて電荷が蓄えられている。また、蓄積キャパシタ2b3と並列接続されている光電変換素子2b1には逆バイアス状態の電圧が印加されている。光電変換素子2b1と薄膜トランジスタ2b2とを連結する配線の電圧はデータライン2c2に印加されている電圧と同じである。 フォトダイオードである光電変換素子2b1は、ダイオードの一種であるため、逆バイアスの電圧が印加されても電流はほとんど流れることはないい。そのため、蓄積キャパシタ2b3に蓄えられた電荷は減少することなく保持されることになる。
【0068】
次に、X線発生器から照射されたX線がシンチレータ5に入射すると、シンチレータ5の内部において、高エネルギーのX線が蛍光に変換され、シンチレータ5の内部において発生した蛍光の一部が光電変換部2bへ到達する。
【0069】
光電変換部2bに設けられた光電変換素子2b1に入射した蛍光は、光電変換素子2b1の内部において電子とホールからなる電荷に変換される。この電荷は、蓄積キャパシタ2b3からの電界の方向に沿って光電変換部2bの両端子へと到達するので、光電変換部2bの内部を流れる電流となる。
【0070】
この電流は、光電変換素子2b1と並列接続されている蓄積キャパシタ2b3に流れ込み、蓄積キャパシタ2b3に蓄えられている電荷を打ち消す。その結果、蓄積キャパシタ2b3に蓄えられていた電荷は減少し、蓄積キャパシタ2b3の端子間に発生していた電位差も初期状態と比べて減少する。
【0071】
また、シンチレータ5に入射したX線の一部は、アレイ基板2を透過して、入射X線検出部6に入射する。X線が入射X線検出部6に入射すると、入射X線検出部6から入射したX線の強度に応じた電気信号が出力される。
【0072】
制御回路33は、前述した「撮影禁止期間」の経過後、入射X線検出部6からの出力が所定の閾値Bを超えた場合には、読み出し回路31、増幅・変換回路32、および画像構成部4に以下の動作を実行させる。
【0073】
読み出し回路31は、複数の制御ライン2c1に制御信号S1を順次入力する。すなわち、読み出し回路31は、複数の制御ライン2c1の電位を順番に変化させる。この場合、特定の時間において、電位が変化している制御ライン2c1は1本のみである。そして、この制御ライン2c1に並列接続されている複数の薄膜トランジスタ2b2のソース電極2b2bとドレイン電極2b2cとの間の状態が、絶縁状態から導通状態へと変化する。すなわち、電位が変化している制御ライン2c1に接続されている複数の薄膜トランジスタ2b2がON状態となる。
【0074】
各データライン2c2には所定の電圧が印加されている。そのため、この電圧が、ON状態となった薄膜トランジスタ2b2のソース電極2b2bとドレイン電極2b2cとを介して蓄積キャパシタ2b3に印加される。
【0075】
初期状態においては、蓄積キャパシタ2b3は、データライン2c2と同じ電位状態となっている。そのため、蓄積キャパシタ2b3の電荷量が初期状態と変化していない場合には、データライン2c2から蓄積キャパシタ2b3への電荷の移動は発生しない。
【0076】
しかしながら、X線検出器1にX線が入射したことで、蓄積キャパシタ2b3に蓄えられていた電荷が減少していると、データライン2c2から蓄積キャパシタ2b3への電荷の移動が発生する。そのため、蓄積キャパシタ2b3における電荷量は初期状態に戻る。この場合、データライン2c2を介して移動する電荷は、データライン2c2を流れる画像データ信号S2となる。
【0077】
増幅・変換回路32は、微弱な信号である画像データ信号S2を増幅し、電位情報へと変換し、順次直列信号に変換し、デジタル信号に変換する。
そして、画像構成部4は、マトリクス状に並べられた光電変換部2b(画素)の並びに対応した電気信号へと変換してX線画像信号を作成する。作成されたX線画像信号は、画像構成部4から外部の機器に向けて出力される。
【0078】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。