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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-185236(P2017-185236A)
(43)【公開日】2017年10月12日
(54)【発明の名称】無較正の熱電対システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20170919BHJP
   G01K 7/02 20060101ALI20170919BHJP
【FI】
   A61B18/12
   G01K7/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-75092(P2017-75092)
(22)【出願日】2017年4月5日
(31)【優先権主張番号】15/091,860
(32)【優先日】2016年4月6日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】ヤロン・エフラス
(72)【発明者】
【氏名】メイル・バル−タル
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK04
4C160KK28
4C160KK47
4C160KK64
4C160MM38
(57)【要約】
【課題】 熱電対信号を扱う回路機構を提供する。
【解決手段】 第1の出力と複数の第1の入力とを有し、アナログ入力信号及びアナログフィードバック信号を受信し、この信号を循環させてシーケンシャル信号グルーピングで第1の出力に転送されるように選択する、マルチプレクサを備える、器具。本器具はまた、マルチプレクサ第1の出力に接続された第2の出力と第2の入力とを有する増幅回路も備える。この増幅回路は、選択された利得を用いアナログ入力信号に対応する信号を増幅することによって、この第2の出力にて各々の増幅アナログ信号を生成する。回路機構は、初期信号グルーピングから各々の増幅アナログ信号の特性を選択し;この特性をアナログフィードバック信号としてマルチプレクサに入力されるようにフィードバックし;後続の信号グルーピングから各々の増幅アナログ信号の後続の特性を選択して;アナログフィードバック信号と後続の特性とが同じ振幅を有するように、増幅回路の利得を調整する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
器具であって、
第1の出力と複数の第1の入力とを有するマルチプレクサであって、複数のアナログ入力信号及びアナログフィードバック信号を受信するように構成され、かつ前記信号を交互に循環させて選択することにより、シーケンシャル信号グルーピングで前記第1の出力に転送するように構成されている、マルチプレクサと、
第2の出力と前記マルチプレクサの第1の出力に接続された第2の入力とを有する増幅回路であって、選択された利得を用い、前記複数のアナログ入力信号に対応する前記信号グルーピングで信号を増幅することによって、前記第2の出力にて各々の増幅アナログ信号を生成するよう構成されている、増幅回路と、
前記増幅回路の第2の出力に接続された第3の入力を有し、前記マルチプレクサの前記第1の入力のうちの1つに連結された第3の出力を有し、かつ制御回路機構を備えるプロセッサであって、前記制御回路機構が、前記各々の増幅アナログ信号の所定の特性を初期信号グルーピングから選択し、前記第3の出力を介して前記アナログフィードバック信号として前記マルチプレクサに入力されるように前記所定の特性をフィードバックし、前記各々の増幅アナログ信号の後続の所定の特性を後続の信号グルーピングから選択して、前記アナログフィードバック信号と前記後続の所定の特性とが同じ振幅を有するように前記増幅回路の前記利得を調整すべく構成されている、プロセッサと、
を備える器具。
【請求項2】
前記増幅回路の総利得が1である、請求項1に記載の器具。
【請求項3】
前記増幅回路が、1を超える利得を有する増幅器を具備し、前記増幅器が、前記シーケンシャル信号グルーピングを受信して増幅するように連結されている、請求項1に記載の器具。
【請求項4】
前記増幅回路が、前記増幅シーケンシャル信号グルーピングを受信してデジタル化するように連結されたアナログ−デジタル変換器を備えている、請求項3に記載の器具。
【請求項5】
前記デジタル化された増幅シーケンシャル信号グルーピングの解析によって前記各々の増幅アナログ信号の前記所定の特性が選択されるように、前記制御回路機構が構成されている、請求項4に記載の器具。
【請求項6】
前記増幅回路が、1未満の利得を有する増幅器を具備し、前記増幅器が、前記複数のアナログ入力信号に対応する前記信号グルーピングで前記増幅信号を受信するように連結されている、請求項1に記載の器具。
【請求項7】
複数の熱電対を有するカテーテルを備え、前記熱電対の各々が前記複数のアナログ入力信号を生成する、請求項1に記載の器具。
【請求項8】
前記所定の特性が、前記各々の増幅アナログ信号の最大値、中間値及び最小値のいずれか1つを含む、請求項1に記載の器具。
【請求項9】
方法であって、
第1の出力と複数の第1の入力とを有するマルチプレクサを、複数のアナログ入力信号及びアナログフィードバック信号を受信し、かつ前記信号を交互に循環させて選択することにより、シーケンシャル信号グルーピングで前記第1の出力に転送するように構成することと、
第2の出力と前記マルチプレクサの第1の出力に接続された第2の入力とを有する増幅回路を、選択された利得を用い、前記複数のアナログ入力信号に対応する前記信号グルーピングで信号を増幅することによって前記第2の出力にて各々の増幅アナログ信号を生成するように構成することと、
前記各々の増幅アナログ信号の所定の特性を初期信号グルーピングから選択することと、
前記所定の特性を前記アナログフィードバック信号として前記マルチプレクサに入力されるようにフィードバックすることと、
前記各々の増幅アナログ信号の後続の所定の特性を後続の信号グルーピングから選択することと、
前記アナログフィードバック信号と前記後続の所定の特性とが同じ振幅を有するように、前記増幅回路の前記利得を調整することと、
を含む方法。
【請求項10】
前記増幅回路の総利得が1である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記増幅回路が、1を超える利得を有する増幅器を具備し、前記増幅器が、前記シーケンシャル信号グルーピングを受信して増幅するように連結されている、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記増幅回路が、前記増幅シーケンシャル信号グルーピングを受信してデジタル化するように連結されたアナログ−デジタル変換器を備えている、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記デジタル化された増幅シーケンシャル信号グルーピングの解析によって前記各々の増幅アナログ信号の前記最大値を選択することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記増幅回路が、1未満の利得を有する増幅器を備え、前記増幅器が、前記複数のアナログ入力信号に対応する前記信号グルーピングで前記増幅信号を受信するように連結されている、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
複数の熱電対を有するカテーテルを提供することを含み、前記熱電対の各々が前記複数のアナログ入力信号を生成する、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記所定の特性が、前記各々の増幅アナログ信号の最大値、中間値及び最小値のいずれか1つを含む、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的には回路機構に関し、具体的には熱電対信号を扱う回路機構に関する。
【背景技術】
【0002】
熱電対信号は一般的に、ミリボルト又は更にはマイクロボルトの範囲内であり、熱電対は一般的に、本質的に比較的高いインピーダンスを有する。信号レベルが低いこと、及び信号源インピーダンスが高いこと、の両方の要因により、熱電対からの信号は雑音の影響を極めて受け易くなる。加えて、特に焼灼処置などの医療シナリオでは、極めて重要な測定では患者に対し熱電対が使用される場合があることから、熱電対からの雑音を低減させること、及び熱電対から信号を派生させることによって正確に温度が読み取れるようにすることが、重要となっている。熱電対からの雑音レベルを補償又は低減する方法、及び信号を確実に有効にする方法は、当該技術分野において公知である。
【0003】
例えば、その開示が本明細書において参照により援用されている米国特許第6,402,742号(Blewettらに付与)は、前立腺及び尿道熱電対に連結された温度測定回路について説明している。本開示はまた、フィルタリングによって雑音を低減するAC線間電圧から動作するコントローラについても説明している。
【0004】
その開示が本明細書において参照により援用されている米国特許第8,644,523号(Clemowに付与)は、周囲雑音低減システム用のデジタル回路装置について説明している。本装置は、アナログ信号をサンプルレートでNビットのデジタル信号に変換してから、変換された信号に対してデジタルフィルタリングを施す。
【0005】
その開示が本明細書において参照により援用されている米国特許第9,226,791号(McCarthyらに付与)は、統合されたカテーテル先端部からデジタル熱電対信号を受信する入力/出力(I/O)ポートを具備し得る、インタフェースモジュールについて説明している。デジタル信号は、アナログ−デジタル変換器により供給される。
【0006】
本特許出願中に参照により援用される文献は、いずれかの用語がこれらの援用文献において本明細書に明確に又は暗示的になされる定義と矛盾する形で定義されている場合には本明細書中の定義のみが考慮されるべきである点を除いて、本出願の一部とみなされるものとする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態は、
第1の出力と複数の第1の入力とを有するマルチプレクサであって、複数のアナログ入力信号及びアナログフィードバック信号を受信するように構成され、かつ信号を交互に循環させて選択することによって、シーケンシャル信号グルーピングで第1の出力に転送するように構成されている、マルチプレクサと;
第2の入力とマルチプレクサの第1の出力に接続された第2の出力とを有する増幅回路であって、選択された利得を用い、複数のアナログ入力信号に対応する信号グルーピングで信号を増幅することによって第2の出力にて各々の増幅アナログ信号を生成するよう構成される、増幅回路と;
増幅回路の第2の出力に接続された第3の入力を有し、マルチプレクサの第1の入力のうちの1つに連結された第3の出力を有し、かつ制御回路機構を備えるプロセッサであって、この制御回路機構が、各々の増幅アナログ信号の所定の特性を初期信号グルーピングから選択し、第3の出力を介してアナログフィードバック信号としてマルチプレクサに入力されるように所定の特性をフィードバックし、後続の信号グルーピングから各々の増幅アナログ信号の後続の所定の特性を選択して、アナログフィードバック信号と後続の所定の特性とが同じ振幅を有するように増幅回路の利得を調整すべく構成されている、プロセッサと;
を備える器具を提供するものである。
【0008】
或る実施形態において、増幅回路は総利得が1である。
【0009】
代替実施形態において、増幅回路は、1を超える利得を有する増幅器から構成され、シーケンシャル信号グルーピングを受信して増幅するように連結されている。増幅回路は、増幅シーケンシャル信号グルーピングを受信してデジタル化するように連結された、アナログ−デジタル変換器を具備し得る。制御回路機構は、デジタル化された増幅シーケンシャル信号グルーピングの解析によって各々の増幅アナログ信号の所定の特性が選択されるように構成できる。
【0010】
更なる代替実施形態において、増幅回路は、1未満の利得を有する増幅器を具備し、この増幅器は、複数のアナログ入力信号に対応する信号グルーピングで増幅信号を受信するように連結されている。
【0011】
更に他の代替実施形態において、器具は、複数の熱電対を有するカテーテルを具備し、これら熱電対の各々は、複数のアナログ入力信号を生成する。
【0012】
開示されている実施形態において、所定の特性は、各々の増幅アナログ信号の最大値、中間値及び最小値のいずれか1つから構成される。
【0013】
更に提供されている方法は、
第1の出力と複数の第1の入力とを有するマルチプレクサを、複数のアナログ入力信号及びアナログフィードバック信号が受信されるように構成し、かつ信号を交互に循環させて選択することによってシーケンシャル信号グルーピングで第1の出力に転送するように構成することと;
第2の出力とマルチプレクサの第1の出力に接続された第2の入力とを有する増幅回路を、複数のアナログ入力信号に対応する信号グルーピングで信号を増幅することによって、選択された利得を用いて第2の出力にて各々の増幅アナログ信号を生成するように構成することと;
各々の増幅アナログ信号の所定の特性を初期信号グルーピングから選択することと;
所定の特性をアナログフィードバック信号としてマルチプレクサに入力されるようにフィードバックすることと;
後続の信号グルーピングから各々の増幅アナログ信号の後続の所定の特性を選択することと;アナログフィードバック信号と後続の所定の特性とが同じ振幅を有するように増幅回路の利得を調整することと;
を含む。
【0014】
以下の本開示の実施形態の詳細な説明を図面と併せ読むことで本開示のより完全な理解が得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態による、侵襲性医療処置の概略図である。
図2A】本発明の実施形態による、プローブの遠位端の概略図である。
図2B】本発明の実施形態による、プローブの遠位端の概略図である。
図2C】本発明の実施形態による、プローブの遠位端の概略図である。
図3】本発明の実施形態による、熱電対からの信号の受信に用いられる自動利得調整回路の基本ブロック図である。
図4】本発明の実施形態による、図3の回路により実行されるアクションを示すフローチャートである。
図5】本発明の代替実施形態による、熱電対からの信号の受信に用いられる自動利得調整回路の基本ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
概要
例えば、信号回線における雑音の誘発及び回線に沿った温度変動が原因で、熱電対からの信号は一般的に、不正確かつ/又は不安定になり得る。熱電対の群の場合は、物理的に緊密に近接し得ると共に一般的には概ね同じ温度であることから、不正確かつ/又は不安定になって信号間の不整合を生じ、結果として温度の読み取り値が誤った値になる可能性がある。
【0017】
本発明の実施形態は、典型的には熱電対の群からの全ての信号を同じ回路を通して処理し、全ての出力信号を確実に整合させることによって、これらの問題を克服するものである。
【0018】
回路はマルチプレクサを含み、このマルチプレクサは、複数のアナログ入力信号及びアナログフィードバック信号を受信して、この信号を信号グルーピングで増幅回路に転送する。増幅回路信号は、選択された利得を用い、複数のアナログ入力信号に対応する信号グルーピングを増幅することによって、各々の増幅アナログ信号を生成する。
【0019】
プロセッサは、増幅アナログ信号を受信するように接続されている。加えて、プロセッサは制御回路機構を具備する。この制御回路機構は、初期信号グルーピングから増幅アナログ信号の最大値を選択してその最大値をアナログフィードバック信号としてマルチプレクサにフィードバックするように、構成される。制御回路機構は、後続の信号グルーピングから増幅アナログ信号の最大値を選択して、アナログフィードバック信号と後続の最大値とが同じ振幅を有するように増幅回路の利得を調整すべく、更に構成される。
【0020】
システムの説明
以下の説明において、図面中の同様の要素は同様の数字により識別され、同様の要素は、必要に応じて識別数字に文字を添えることにより区別される。
【0021】
図1は、本発明の実施形態による、器具12を用いた侵襲性医療処置の概略図である。処置は医療専門家14により行われ、一例として、本明細書の以下の説明における処置は、ヒトの患者18の心臓の心筋16の一部の焼灼を含むと仮定される。ただし、当然のことながら、本発明の実施形態は、この特定の処置にだけ適用されるとは限らず、生物学的組織又は非生物学的材料に対する実質的に如何なる処置も包含し得る。
【0022】
専門家14が、焼灼を行うため、プローブハンドル21を使用してプローブ20を患者の内腔に挿入すると、プローブの遠位端22が患者の心臓に入る。遠位端22は、遠位端の外側上に取り付けられた電極24を含み、電極は、心筋の各々の部位に接触する。プローブ20は、近位端28を有する。以下、図2A図2B及び図2Cを参照しながら、プローブの遠位端22について更に詳細に説明する。
【0023】
器具12は、器具の操作コンソール48内に位置するシステムプロセッサ46により制御される。コンソール48は、専門家14がプロセッサと通信するために使用する制御手段49を備える。処置の間、プロセッサ46は、当該技術分野において公知である任意の方法を用いてプローブの遠位端22の位置及び配向を追跡するのが一般的である。例えば、プロセッサ46は、患者18の体外にある磁気送信器が遠位端に位置付けられたコイルで信号を発生させる、磁気追跡方法を使用してもよい。Biosense Webster(カリフォルニア州Diamond Bar)により製造されるCarto(登録商標)システムは、このような追跡方法を使用する。
【0024】
プロセッサ46のソフトウェアは、例えば、ネットワークで、電子的な形でプロセッサにダウンロードすることができる。代替的に又は付加的に、このソフトウェアは、例えば、光学的、磁気的、又は電子的記憶媒体のような一時的でない有形の媒体上に提供され得る。遠位端22の行路が、典型的に画面62上で患者18の心臓の3次元表示60で表示される。
【0025】
器具12を操作するために、プロセッサ46は、器具を操作するためにプロセッサにより使用される幾つかのモジュールを有するメモリ50と通信する。したがって、メモリ50は、温度モジュール52と、焼灼モジュール54とを含む。これらの機能は後述されている通りである。メモリ50は、典型的に、端部22にかかる力を測定する力モジュール、プロセッサ46により使用される追跡方法を操作する追跡モジュール、及びプロセッサが遠位端22に向けて行われる潅注を制御することを可能にする潅注モジュールなど、他のモジュールも含む。煩雑さをなくすため、ハードウェア要素並びにソフトウェア要素を含むことができるそのような他のモジュールは、図1では例示されていない。
【0026】
プロセッサ46は一般的に、モジュール52により取得された温度の測定の結果を使用して、画面62上に温度分布マップ64を表示する。
【0027】
図2A図2B、及び図2Cは、本発明の実施形態に係るプローブ20の遠位端22を概略的に例示する。図2Aは、プローブの長さに沿った断面図である、図2Bは、図2Aにおいてマーキングされる切断部IIB−IIBに沿った横断面図であり、図2Cは、遠位端の断面の斜視図である。挿入管70は、プローブの長さに沿って延在し、その遠位端の終端部に接続され、本明細書において焼灼に使用されるものと想定される伝導性キャップ電極24Aに至っている。図2Cは、キャップ電極24Aの概略斜視図である。キャップ電極24Aは、その遠位端にて略平坦な導電面84を有し、その近位端にて実質的に円形の縁部86を有する。伝導性キャップ電極24Aは、本明細書において焼灼電極とも称される。焼灼電極24Aの近位には、典型的に、電極24Bなどの他の電極がある。典型的に、挿入管70は、可撓性の生体適合性ポリマを含み、一方、電極24A、24Bは、例えば、金又は白金などの生体適合性金属を含む。焼灼電極24Aは、典型的に潅注開口72のアレイにより穿孔される。
【0028】
導体74は、高周波(RF)電気エネルギーを焼灼モジュール54(図1)から挿入管70を通って電極24Aに伝達し、したがって、電極が接触している心筋組織を焼灼するために電極に通電する。モジュール54は、電極24Aを介して消散されるRF電力のレベルを制御する。焼灼処置中には、開口72を通って流出する冷却流体で、治療中の組織を灌注することができる。
【0029】
温度センサー78は一般的に、銅コンスタンタン熱電対であり、本明細書中で熱電対78とも称される熱電対を具備し、プローブの遠位先端の周辺に配列されている場所にある伝導性キャップ電極24Aの内部に、軸方向及び円周方向の両方向に装着される。この実施例において、キャップ24Aは6つのセンサーを含み、3つのセンサーからなる一方の群が先端部に近い遠位位置にあり、3つのセンサーからなるもう一方の群が、若干近位位置寄りにある。この分布は単に例として示されるが、より多い、又はより少ないセンサーが、キャップ内の任意の好適な位置に取り付けられてもよい。熱電対78は、温度信号を温度モジュール52に供給するため、挿入管70の長さ全体にわたって延びるリード(線図で図示されていない)で接続される。
【0030】
開示されている実施形態において、キャップ24Aは、温度センサー78と先端部の中央空洞75の内側の冷却流体との間に所望の断熱が為されるよう、比較的厚い(およそ0.5mm厚)側壁73を備える。冷却流体は、開口72を介して空洞75を出る。センサー78は、側壁73の長手方向の内径部79に嵌入されるロッド77上に取り付けられる。ロッド77は、ポリイミドなど適切なプラスチック材を含むことができ、かつ、エポキシなど適切なセメント81により、その遠位端にて所定の位置に保持することができる。本明細書において参照により援用されている米国特許出願公開第2014/0171821号は、先述したものと類似の構成で温度センサーが取り付けてあるカテーテルについて説明している。先述した構成は、6つのセンサー78のアレイを提供するが、センサーの他の構成及び他の数が、当業者に明らかになるであろうが、全てのそのような構成及び数は、本発明の範囲内に含まれる。
【0031】
本明細書における説明において遠位端22は、xyz直交軸線のセットを画定するものと想定され、このセットのz軸に対応するのが、遠位端の軸92である。煩雑さをなくすため、一例として、y軸を紙の平面内にあると想定し、xy平面を本明細書中の円86で画定された平面に対応するものと想定し、xyzの軸の原点を円の中心であると想定する。
【0032】
典型的には、遠位端22は、他の機能構成要素を含み、これらは、本開示の範囲外であり、したがって煩雑さをなくすため省略されている。例えば、プローブの遠位端は、ステアリングワイヤ、加えて位置センサー及び/又は力センサーなど、他の種類のセンサーを含む場合がある。これらの種類の構成要素を備えるプローブは、例えば、本明細書において参照により援用されている米国特許第8,437,832号及び米国特許出願公開第2011/0130648号に記載されている。
【0033】
図3は、熱電対78からの信号の受信に用いられる自動利得調整回路100を示す基本ブロック図であり、図4は、本発明の実施形態による、回路により実行されるアクションを示すフローチャートである。
【0034】
例えば、信号回線において雑音が誘発されかつその回線に沿って温度が変動するのが原因で、熱電対78からの信号は一般的に、不正確かつ/又は不安定になり得る。これらの影響が生じた場合でも、回路100は、信号の所定の特性を選択し、特性のレベルが正確に出力されることを保証するフィードバックメカニズムを提供する。特性以外の信号は特性と同じ回路機構を通して処理されるため、回路からの全ての出力信号が整合することになる。
【0035】
信号の所定の特性は、当該の特性の任意の測定可能な信号(例えば、信号の最大値、信号の中間値又は信号の最小値)であり得る。図4及び回路100のフローチャートに関する下記説明を簡素化する目的から、所定の特性に信号の最大値を含めることが想定される。当業者であれば、当該の記述を、その最大値以外の信号特性に合うように修正して準用できるであろう。
【0036】
回路100は、コンソール48内の温度モジュール52に組み込まれるのが一般的であるが、幾つかの実施形態においてこの回路はプローブ20のハンドル21に組み込まれる。下記説明において、例えば、回路100の要素は、回路に組み込まれた専用プロセッサ130の全面的な制御下に置かれるものと想定され、同様にプロセッサも、回路をスタンドアロンユニットとして機能できるように作動させるため、ハードウェア及び/又はソフトウェアで実装することの可能な制御回路機構132を有するものと想定される。言うまでもなく、プロセッサ46などの任意のプロセッサで要素の制御及び操作を行うことが可能であり、当業者であれば、過度の実験(undue experimentation)なしに、本明細書中の記述を当該の事例に合うように適合させることができる。
【0037】
下記説明では、明確さを期して、回路100が6つの熱電対78からの入力を受信するものと想定されているが、当然のことながら、本発明の実施形態は、6つ前後の熱電対から入力を受信するように実装できる。
【0038】
初期工程150に図示してあるように、マルチプレクサ102は、6つの熱電対78からの並列信号を、6つの基底帯域アナログ電位信号として受信する。同様に、第7の基底帯域アナログ電位信号も、マルチプレクサに受信される。この信号は、回路100の構成要素によって生成されたフィードバック信号である。マルチプレクサ102は、その7つのアナログ入力をそれぞれ順番に循環させて選択することにより、それらの選択された入力を順次に信号グルーピングとして低域フィルタ104に出力する。開示されている実施形態,において、フィルタ104は、10Hz〜50Hzのカットオフ周波数を有する。回路を通過した以前の信号グルーピングからは、フィードバック信号が派生する。フィードバック信号の生成については、以下に詳述されている。
【0039】
フィルタリング及び増幅工程152では、フィルタ104がトラバースされた後に、アナログ信号のグルーピングが増幅器106に入力され、これにより、その増幅信号がアナログ−デジタル(A/D)変換器108に出力される。増幅器106は、増幅器の出力がA/D変換器108の動的範囲内に収まるように選択された、プリセット利得を有する。増幅器106は、およそ100の利得を有するのが一般的である。
【0040】
デジタル化工程154において、A/D変換器108は、増幅器106から受信した7つのアナログ信号に対応する7つのデジタル信号を生成する。この7つのデジタル信号は、熱電対78から派生した6つのデジタル信号と、1つのデジタルフィードバック信号とから構成される。
【0041】
第1の解析工程156において、回路機構132は、熱電対からの6つのデジタル信号を解析して、最大値DIGITAL MAX TCを有する信号を見出す。プロセッサはまた、デジタルフィードバック信号DIGITAL FBの値を記録する。図3において、解析及び記録操作は、破線付きブロック110により図式的に例証されている。
【0042】
変換工程158において、A/D変換器108からのデジタル信号(熱電対信号に対応する6つのデジタル信号)は、デジタル−アナログ(D/A)変換器112で元通りアナログ信号に変換され、このアナログ信号は出力増幅器114に入力される。増幅器114は、回路機構132で設定できる可変利得を有し、この回路機構は一般的に、増幅器から出力された信号振幅が、増幅器106に入力された信号振幅と類似の値を有するように構成される。換言すれば、増幅器106はその出力信号がその入力信号よりも大きくなるように構成されるのが一般的であるが、増幅器114にはその逆が当てはまる。すなわち、その出力信号はその入力信号よりも小さくなる。
【0043】
フィードバック生成工程160において、回路機構132は、熱電対信号に対応する増幅器114の6つの出力から、増幅器への入力であるDIGITAL MAX TCから派生した最大アナログ信号に対応するアナログ出力を選択する。選択されたアナログ出力(本明細書中でANALOG MAX TCと称される)は、マルチプレクサに入力されるフィードバック信号として、マルチプレクサ102にフィードバックされる。図3では、選択及びフィードバック操作が、破線付きブロック116及びフィードバック回線118により図式的に例証されている。マルチプレクサに入力されたフィードバック信号は、マルチプレクサにより選択された7つのアナログ信号の後続のグルーピングに組み込まれる。
【0044】
工程160が実行されている間、比較工程162において制御回路機構は、工程156で特定されたDIGITAL MAX TC値とDIGITAL FB値とを比較する。それらの値が異なる場合、利得調整工程164において回路機構は、出力増幅器114の利得を、値の差分が少なくなるように変更する。DIGITAL MAX TC>DIGITAL FBの場合、回路機構は利得を減分し;DIGITAL MAX TC<DIGITAL FBの場合、回路機構は利得を増分する。工程162及び164は一般的に、繰り返し実行される。図3において、利得の調整は、利得回線120により図式的に例証されている。
【0045】
比較工程162においてDIGITAL MAX TC値とDIGITAL FB値とが同一の場合、最終の工程166において出力増幅器の利得が未変更のままになり、その6つのアナログ信号が増幅器により出力される。
【0046】
幾つかの実施形態において、マルチプレクサ102の後の回路100の要素は、少なくとも幾つかのフィルタ104と、増幅器106と、A/D108と、D/A112と、増幅器114とを備え、増幅回路136として実装され得る。信号増幅が増幅器106により実行され、かつ信号の「増幅解除」が増幅器114により実行されるため、増幅回路136の総利得がおよそ1に等しいことが理解されるであろう。
【0047】
図5は、本発明の実施形態、本発明の代替実施形態による、熱電対78からの信号の受信に用いられる自動利得調整回路200の基本ブロック図である。以下に説明する差異を除き、回路200の動作は回路100(図3)の動作と概ね同様であり、回路100及び200の双方において同じ参照番号によって示される要素は構成及び動作が概ね同様である。
【0048】
回路100とは対照的に、回路200では、各熱電対信号がフィルタ及び増幅器に入力され、増幅器の出力がマルチプレクサ102に入力される。ゆえに、本明細書中で想定されている6つの熱電対信号用に、6つのフィルタとその次に6つの増幅器が存在する。加えて、(ブロック116及びフィードバック回線118の例を挙げることにより例証されている)フィードバック信号は、フィルタ及び増幅器を通して給送され、その後、後者の出力がマルチプレクサに供給される。各フィルタはフィルタ104と概ね同様であり、各増幅器は増幅器106と概ね同様である。煩雑さをなくすため、回路200は、6つの熱電対入力のうちの2つに対応する、フィルタ204Aとその次の増幅器206A、及びフィルタ204Fとその次の増幅器206Fだけに限定して、例証されている。同様に例証されているように、フィルタ204Gとその次の増幅器206Gはフィードバック信号を受信し、その増幅器出力がマルチプレクサ102に給送される。
【0049】
回路200は、回路100として概ね機能し、また、先に図4のフローチャートに関して記載されているようにも概ね機能する。当業者であれば、2つの回路間の差異を考慮に入れ、図4のフローチャートの記述を準用できる。
【0050】
上記に述べた実施形態は、一例として引用したものであって、本発明は上記に具体的に図示及び述べたものに限定されないことが認識されるであろう。むしろ、本発明の範囲は、上記されている種々の特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせと、前述の説明を読むことに基づいて当業者が想起するであろう、先行技術に開示されていない変形例及び修飾との両方を含む。
【0051】
〔実施の態様〕
(1) 器具であって、
第1の出力と複数の第1の入力とを有するマルチプレクサであって、複数のアナログ入力信号及びアナログフィードバック信号を受信するように構成され、かつ前記信号を交互に循環させて選択することにより、シーケンシャル信号グルーピングで前記第1の出力に転送するように構成されている、マルチプレクサと、
第2の出力と前記マルチプレクサの第1の出力に接続された第2の入力とを有する増幅回路であって、選択された利得を用い、前記複数のアナログ入力信号に対応する前記信号グルーピングで信号を増幅することによって、前記第2の出力にて各々の増幅アナログ信号を生成するよう構成されている、増幅回路と、
前記増幅回路の第2の出力に接続された第3の入力を有し、前記マルチプレクサの前記第1の入力のうちの1つに連結された第3の出力を有し、かつ制御回路機構を備えるプロセッサであって、前記制御回路機構が、前記各々の増幅アナログ信号の所定の特性を初期信号グルーピングから選択し、前記第3の出力を介して前記アナログフィードバック信号として前記マルチプレクサに入力されるように前記所定の特性をフィードバックし、前記各々の増幅アナログ信号の後続の所定の特性を後続の信号グルーピングから選択して、前記アナログフィードバック信号と前記後続の所定の特性とが同じ振幅を有するように前記増幅回路の前記利得を調整すべく構成されている、プロセッサと、
を備える器具。
(2) 前記増幅回路の総利得が1である、実施態様1に記載の器具。
(3) 前記増幅回路が、1を超える利得を有する増幅器を具備し、前記増幅器が、前記シーケンシャル信号グルーピングを受信して増幅するように連結されている、実施態様1に記載の器具。
(4) 前記増幅回路が、前記増幅シーケンシャル信号グルーピングを受信してデジタル化するように連結されたアナログ−デジタル変換器を備えている、実施態様3に記載の器具。
(5) 前記デジタル化された増幅シーケンシャル信号グルーピングの解析によって前記各々の増幅アナログ信号の前記所定の特性が選択されるように、前記制御回路機構が構成されている、実施態様4に記載の器具。
【0052】
(6) 前記増幅回路が、1未満の利得を有する増幅器を具備し、前記増幅器が、前記複数のアナログ入力信号に対応する前記信号グルーピングで前記増幅信号を受信するように連結されている、実施態様1に記載の器具。
(7) 複数の熱電対を有するカテーテルを備え、前記熱電対の各々が前記複数のアナログ入力信号を生成する、実施態様1に記載の器具。
(8) 前記所定の特性が、前記各々の増幅アナログ信号の最大値、中間値及び最小値のいずれか1つを含む、実施態様1に記載の器具。
(9) 方法であって、
第1の出力と複数の第1の入力とを有するマルチプレクサを、複数のアナログ入力信号及びアナログフィードバック信号を受信し、かつ前記信号を交互に循環させて選択することにより、シーケンシャル信号グルーピングで前記第1の出力に転送するように構成することと、
第2の出力と前記マルチプレクサの第1の出力に接続された第2の入力とを有する増幅回路を、選択された利得を用い、前記複数のアナログ入力信号に対応する前記信号グルーピングで信号を増幅することによって前記第2の出力にて各々の増幅アナログ信号を生成するように構成することと、
前記各々の増幅アナログ信号の所定の特性を初期信号グルーピングから選択することと、
前記所定の特性を前記アナログフィードバック信号として前記マルチプレクサに入力されるようにフィードバックすることと、
前記各々の増幅アナログ信号の後続の所定の特性を後続の信号グルーピングから選択することと、
前記アナログフィードバック信号と前記後続の所定の特性とが同じ振幅を有するように、前記増幅回路の前記利得を調整することと、
を含む方法。
(10) 前記増幅回路の総利得が1である、実施態様9に記載の方法。
【0053】
(11) 前記増幅回路が、1を超える利得を有する増幅器を具備し、前記増幅器が、前記シーケンシャル信号グルーピングを受信して増幅するように連結されている、実施態様9に記載の方法。
(12) 前記増幅回路が、前記増幅シーケンシャル信号グルーピングを受信してデジタル化するように連結されたアナログ−デジタル変換器を備えている、実施態様11に記載の方法。
(13) 前記デジタル化された増幅シーケンシャル信号グルーピングの解析によって前記各々の増幅アナログ信号の前記最大値を選択することを含む、実施態様12に記載の方法。
(14) 前記増幅回路が、1未満の利得を有する増幅器を備え、前記増幅器が、前記複数のアナログ入力信号に対応する前記信号グルーピングで前記増幅信号を受信するように連結されている、実施態様9に記載の方法。
(15) 複数の熱電対を有するカテーテルを提供することを含み、前記熱電対の各々が前記複数のアナログ入力信号を生成する、実施態様9に記載の方法。
【0054】
(16) 前記所定の特性が、前記各々の増幅アナログ信号の最大値、中間値及び最小値のいずれか1つを含む、実施態様9に記載の方法。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
【外国語明細書】
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