【解決手段】実施形態に係る細隙灯顕微鏡は、照明系と、撮影系と、画像合成部とを含む。照明系は、被検眼を細隙光で照明する。撮影系は、被検眼からの細隙光の戻り光を撮像装置に導く。画像合成部は、撮像装置により取得された複数の画像を合成して被検眼の3次元画像を形成する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明に係る細隙灯顕微鏡の実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この明細書に記載された文献の記載内容を、以下の実施形態の内容として適宜援用することが可能である。
【0011】
まず方向を定義しておく。装置光学系において最も被検者側に位置するレンズ(対物レンズ)から被検者に向かう方向を前方向、深さ方向(奥行き方向)とし、その逆方向を後方向とする。また、前方向に直交する水平方向を左右方向とする。更に、前後方向と左右方向の双方に直交する方向を上下方向とする。
【0012】
[外観構成]
この実施形態に係る細隙灯顕微鏡の外観構成について、
図1を参照しながら説明する。細隙灯顕微鏡1には、コンピュータ100が接続されている。コンピュータ100は、各種の制御処理や演算処理を行う。なお、顕微鏡本体(光学系等を格納する筐体)とは別にコンピュータ100を設ける代わりに、顕微鏡本体に同様のコンピュータを搭載した構成を適用することも可能である。
【0013】
細隙灯顕微鏡1はテーブル2上に載置される。なお、コンピュータ100は他のテーブル上またはその他の場所に設置されていてもよい。基台4は、移動機構部3を介して水平方向に移動可能に構成されている。基台4は、操作ハンドル5を傾倒操作することにより移動される。
【0014】
基台4の上面には、観察撮影系6および照明系8を支持する支持部15が設けられている。支持部15には、観察撮影系6を支持する支持アーム16が左右方向に回動可能に取り付けられている。支持アーム16の上部には、照明系8を支持する支持アーム17が左右方向に回動可能に取り付けられている。支持アーム16、17は、それぞれ独立に同軸で回動可能とされている。
【0015】
観察撮影系6は、支持アーム16を回動させることで移動される。照明系8は、支持アーム17を回動させることで移動される。支持アーム16、17は、電気的な機構によって回動されるように構成されている。そのため、移動機構部3には、各支持アーム16、17を回動させるための駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を各支持アームに伝達する伝達機構とが設けられる。アクチュエータは、たとえばステッピングモータ(パルスモータ)により構成される。伝達機構は、たとえば歯車の組み合わせやラック・アンド・ピニオンなどによって構成される。なお、観察撮影系6は、支持アーム16を手動で回動させることで移動されてもよい。また、照明系8は、支持アーム17を手動で回動させることで移動されてもよい。
【0016】
照明系8は、被検眼Eに照明光を照射する。照明系8は、前述のように、回動軸を中心に左右方向に振ることができる。それにより被検眼Eに対する照明光の照射方向が変更される。照明系8は上下方向にも振れるように構成されていてもよい。つまり、照明光の仰角や俯角を変更できるように構成されていてもよい。
【0017】
観察撮影系6は、照明光の被検眼Eからの反射光を案内する左右一対の光学系を有する。この光学系は鏡筒本体9内に収納されている。鏡筒本体9の終端は接眼部9aである。検者は接眼部9aをのぞき込むことで被検眼Eを肉眼で観察する。前述のように、支持アーム16を回動させることにより鏡筒本体9を左右方向に回動させることができる。それにより被検眼Eに対する観察撮影系6の向き(観察撮影系6の光軸の向き)を変更することができる。なお、照明光の反射光には、たとえば散乱光のように被検眼Eを経由した各種の光が含まれるが、これら各種の光を含めて「戻り光」または「反射光」と呼ぶことにする。
【0018】
鏡筒本体9に対峙する位置には顎受け台10が配置されている。顎受け台10には、被検者の顔を安定配置させるための顎受部10aと額当て10bが設けられている。
【0019】
鏡筒本体9の側面には、観察倍率を変更するための観察倍率操作ノブ11が配置されている。更に、鏡筒本体9には、被検眼Eを撮影するための撮像装置13が接続されている。撮像装置13は撮像素子を含んで構成されている。撮像素子は、光を検出して画像信号GS(電気信号)を出力する光電変換素子である。画像信号GSはコンピュータ100に入力される。撮像素子としては、たとえばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサや、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサが用いられる。照明系8の下方位置には、照明系8から出力される照明光束を被検眼Eに向けて反射するミラー12が配置されている。
【0020】
[光学系の構成]
細隙灯顕微鏡1の光学系の構成について、
図2を参照しながら説明する。細隙灯顕微鏡1は、観察撮影系6と、照明系8とを備えている。
【0021】
〔観察撮影系〕
観察撮影系6は左右一対の光学系を備えている。左右の光学系は、ほぼ同様の構成を有する。検者は、この左右の光学系により被検眼Eを双眼で観察することができる。なお、
図2には、観察撮影系6の左右の光学系の一方のみが示されている。観察撮影系6は、左右の光学系の一方のみを備えていてもよい。符号O1は観察撮影系6の光軸(観察光軸、撮影光軸)である。
【0022】
観察撮影系6の左右の各光学系は、対物レンズ31、変倍光学系32、ビームスプリッタ34、結像レンズ35、プリズム36および接眼レンズ37を有する。ビームスプリッタ34は、左右の光学系の一方にまたは双方に設けられる。接眼レンズ37は接眼部9a内に設けられている。符号Pは、接眼レンズ37に導かれる光の結像位置を示している。符号Ecは被検眼Eの角膜を示している。符号Eoは検者眼を示している。
【0023】
変倍光学系32は、複数(たとえば2枚)の変倍レンズ32a、32b、32cを含んで構成される。この実施形態では、観察撮影系6の光路に対して選択的に挿入可能な複数の変倍レンズ群が設けられている。これら変倍レンズ群は、それぞれ異なる倍率を付与するように構成されている。観察撮影系6の光路に配置された変倍レンズ群が変倍レンズ32a、32b、32cとして用いられる。それにより、被検眼Eの肉眼観察像や撮影画像の倍率(画角)を変更できる。倍率の変更、つまり観察撮影系6の光路に配置される変倍レンズ群の切り替えは、観察倍率操作ノブ11を操作することにより行われる。また、図示しないスイッチ等を用いて電動で倍率を変更するように構成してもよい。
【0024】
ビームスプリッタ34は、光軸O1に沿って進む光を二分割する。ビームスプリッタ34を透過した光は、結像レンズ35、プリズム36および接眼レンズ37を介して検者眼Eoに導かれる。プリズム36は、光の進行方向を上方に平行移動させる。
【0025】
他方、ビームスプリッタ34により反射された光は、集光レンズ41およびミラー42を介して、撮像装置13の撮像素子43に導かれる。すなわち、観察撮影系6は、照明系8により照明された被検眼Eからの細隙光の戻り光を撮像装置13に導く。撮像素子43は、この戻り光を検出して画像信号GSを生成する。
【0026】
また、観察撮影系6は、そのフォーカス位置を変更するための合焦機構40を含んで構成されている。合焦機構40は、対物レンズ31を光軸O1(観察撮影系6の光軸)に沿って移動させる。たとえば、合焦機構40は、対物レンズ31を保持する保持部材と、この保持部材を光軸O1の方向に移動させるスライド機構と、駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力をスライド機構に伝達する部材とを含む。
【0027】
合焦機構40は、自動または手動により対物レンズ31を移動させることが可能である。
【0028】
自動で移動させる場合、たとえば、コンピュータ100が公知のフォーカス調整手法(位相差検出方式やコントラスト検出方式など)を用いて被検眼Eからの戻り光に基づいてフォーカス位置を求める。アクチュエータは、コンピュータ100により求められたフォーカス位置に対物レンズ31を光軸O1に沿って移動させる。手動で移動させる場合、図示しない操作部に対するユーザ(たとえば、術者)の操作内容に基づいてアクチュエータが対物レンズ31を光軸O1に沿って移動させる。
【0029】
なお、観察撮影系6は、対物レンズ31と撮像素子43との間の光軸O1上の所定位置に配置された第1合焦レンズを含んで構成されていてもよい。この場合、合焦機構40が、第1合焦レンズを光軸O1に沿って移動させることにより観察撮影系6のフォーカス位置を変更する。たとえば、合焦機構40は、第1合焦レンズを保持する保持部材と、この保持部材を光軸O1の方向に移動させるスライド機構と、駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力をスライド機構に伝達する部材とを含む。合焦機構40は、対物レンズ31を移動させる場合と同様に、自動または手動により第1合焦レンズを移動させることが可能である。
【0030】
また、観察撮影系6の全体が光軸O1に沿って移動可能に構成されていてもよい。この場合、合焦機構40が、観察撮影系6の全体を光軸O1に沿って移動させることにより、観察撮影系6のフォーカス位置を変更する。たとえば、合焦機構40は、観察撮影系6が搭載された可動ステージと、この可動ステージを光軸O1の方向に移動させるスライド機構と、駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力をスライド機構に伝達する部材とを含む。合焦機構40は、対物レンズ31を移動させる場合と同様に、自動または手動により観察撮影系6の全体を移動させることが可能である。
【0031】
〔照明系〕
照明系8は、照明光源51、集光レンズ52、細隙形成部53、および対物レンズ54を有する。符号O2は、照明系8の光軸(照明光軸)を示す。
【0032】
照明光源51は照明光を出力する。なお、照明系8に複数の光源を設けてもよい。たとえば、定常光を出力する光源(ハロゲンランプ、LED等)と、フラッシュ光を出力する光源(キセノンランプ、LED等)の双方を照明光源51として設けることができる。また、角膜観察用の光源と眼底観察用の光源とを別々に設けてもよい。照明光源51は、可視光を出力する可視光源を少なくとも含む。照明光源51は、たとえば、赤外光(たとえば、中心波長が800nm〜1000nm)を出力する光源を含み、照明光として赤外光を出力してもよい。
【0033】
細隙形成部53は、細隙光を生成するために用いられる。細隙形成部53は、一対のスリット刃を有する。これらスリット刃の間隔(スリット幅)を変更することにより細隙光の幅が変更される。
【0034】
照明系8は、細隙光のフォーカス位置を変更するための合焦機構50を含んで構成されている。合焦機構50は、対物レンズ54を光軸O2(照明系の光軸)に沿って移動させる。たとえば、合焦機構50は、対物レンズ54を保持する保持部材と、この保持部材を光軸O1の方向に移動させるスライド機構と、駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力をスライド機構に伝達する部材とを含む。
【0035】
合焦機構50は、自動または手動により対物レンズ54を移動させることが可能である。
【0036】
自動で移動させる場合、たとえば、コンピュータ100が被検眼Eからの戻り光に基づく像が描出された画像を解析することによりフォーカス位置を求める。アクチュエータは、コンピュータ100により求められたフォーカス位置に対物レンズ54を光軸O2に沿って移動させる。手動で移動させる場合、図示しない操作部に対するユーザの操作内容に基づいてアクチュエータが対物レンズ54を光軸O2に沿って移動させる。
【0037】
なお、照明系8は、対物レンズ54と細隙形成部53との間の光軸O2上の所定位置に配置された第2合焦レンズを含んで構成されていてもよい。この場合、合焦機構50が、第2合焦レンズを光軸O2に沿って移動させることにより細隙光のフォーカス位置を変更する。たとえば、合焦機構50は、第2合焦レンズを保持する保持部材と、この保持部材を光軸O2の方向に移動させるスライド機構と、駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力をスライド機構に伝達する部材とを含む。合焦機構50は、対物レンズ54を移動させる場合と同様に、自動または手動により第2合焦レンズを移動させることが可能である。
【0038】
また、照明系8の全体が光軸O2に沿って移動可能に構成されていてもよい。この場合、合焦機構50が、照明系8の全体を光軸O2に沿って移動させることにより、細隙光のフォーカス位置を変更する。たとえば、合焦機構50は、照明系8が搭載された可動ステージと、この可動ステージを光軸O2の方向に移動させるスライド機構と、駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力をスライド機構に伝達する部材とを含む。合焦機構50は、対物レンズ54を移動させる場合と同様に、自動または手動により照明系8の全体を移動させることが可能である。
【0039】
図2では図示が省略されているが、たとえば、光軸O2上にミラー12が配置されている。照明系8は、ミラー12と一体となって回動軸を中心に移動可能に構成されていてもよい。
【0040】
細隙灯顕微鏡1は、観察部位に対して観察撮影系6および照明系8の双方のフォーカス位置を変更しながら複数の画像を取得することが可能である。たとえば、取得された画像は、その取得位置を示す位置情報に関連付けて保存される。それにより、取得された複数の画像を観察部位の広域の画像(たとえば、3次元画像)として合成したり、各画像を順番に表示したりすることが可能になる。
【0041】
細隙灯顕微鏡1は、細隙光のフォーカス位置や観察撮影系6のフォーカス位置を検出するための合焦位置検出部や、観察撮影系6および照明系8のうち少なくとも一方の位置を検出するスキャン位置検出部を含んで構成されていてもよい。合焦位置検出部やスキャン位置検出部については、後述する。
【0042】
この実施形態において、合焦機構50は「照明合焦機構」の一例であり、観察撮影系6は「撮影系」の一例であり、合焦機構40は「撮影合焦機構」の一例である。また、移動機構部3、支持アーム16、17やこれらを移動させる機構は「移動機構」の一例である。更に、対物レンズ31は「撮影対物レンズ」の一例であり、対物レンズ54は「照明対物レンズ」の一例である。
【0043】
[制御系の構成]
細隙灯顕微鏡1の制御系について、
図3〜
図5を参照しながら説明する。
図3に示すように、細隙灯顕微鏡1の制御系は、制御部101を中心に構成されている。なお、制御系の構成の少なくとも一部がコンピュータ100に含まれていてもよい。
【0044】
〔制御部〕
制御部101は、細隙灯顕微鏡1の各部を制御する。制御部101は、観察撮影系6の制御、照明系8の制御、画像合成部120の制御、および表示部130の制御などを行う。
【0045】
観察撮影系6の制御としては、変倍光学系32の制御、撮像素子43の制御、合焦機構40の制御、観察撮影系6を移動させるための移動機構60の制御、合焦位置検出部150の制御、スキャン位置検出部160の制御などがある。変倍光学系32の制御としては、観察倍率操作ノブ11に対する操作内容を受けて被検眼Eの肉眼観察像や撮影画像の倍率を変更する制御などがある。撮像素子43の制御としては、撮像素子43の電荷蓄積時間、感度、フレームレート等を変更する制御や、撮像素子43により得られた画像信号GSを画像合成部120に送る制御などがある。合焦機構40の制御としては、合焦機構40による観察撮影系6のフォーカス位置の変更制御などがある。移動機構60は、移動機構部3、支持アーム16、17やこれらを移動させる機構を含み、照明系8および観察撮影系6のうち少なくとも一方を移動させる。移動機構60の制御としては、観察撮影系6を移動させる制御などがある。合焦位置検出部150の制御としては、合焦位置検出部150により検出された位置を取得し、取得された位置を画像合成部120に送る制御などがある。スキャン位置検出部160の制御としては、スキャン位置検出部160により検出された位置を取得し、取得された位置を画像合成部120に送る制御などがある。
【0046】
照明系8の制御としては、照明光源51の制御、細隙形成部53の制御、合焦機構50の制御、照明系8を移動させるための移動機構60の制御、合焦位置検出部150に対する制御、スキャン位置検出部160に対する制御などがある。照明光源51の制御としては、照明光源51の点灯や消灯の切り換え、照明光の光量の変更制御などがある。細隙形成部53の制御としては、一対のスリット刃の間隔を変更することによる細隙光の幅の変更制御などがある。合焦機構50の制御としては、合焦機構50による細隙光のフォーカス位置(照明系8のフォーカス位置)の変更制御などがある。移動機構60の制御としては、照明系8を移動させる制御などがある。合焦位置検出部150の制御としては、合焦位置検出部150により検出された位置を取得し、取得された位置を画像合成部120に送る制御などがある。スキャン位置検出部160の制御としては、スキャン位置検出部160により検出された位置を取得し、取得された位置を画像合成部120に送る制御などがある。
【0047】
画像合成部120の制御としては、観察撮影系6により取得された複数の画像の合成処理に対する制御などがある。
【0048】
制御部101は、合焦制御部101Aと、スキャン制御部101Bと、記憶部102とを含む。
【0049】
合焦制御部101Aは、被検眼Eの画像を取得するためのフォーカス位置を制御する。
【0050】
図4に、合焦制御部101Aの動作説明図を示す。
図4は、被検眼Eの角膜Ecに対する観察撮影系6および照明系8のフォーカス位置を模式的に表したものである。なお、
図4において、観察撮影系6については対物レンズ31のみが図示され、照明系8については対物レンズ54のみが図示されている。符号Cfは、角膜Ecの角膜前面を示し、符号Cbは角膜Ecの角膜後面を示す。符号Ccは、観察部位の曲率中心位置として角膜Ec(角膜前面Cf)の曲率中心位置を示す。たとえば、観察撮影系6および照明系8の回動軸は、曲率中心位置Ccに移動される。
【0051】
合焦制御部101Aは、被検眼Eの観察部位に対する深さ方向(動径方向)のスキャン(rスキャン)を制御することができる。合焦制御部101Aは、合焦機構40と合焦機構50とを連係制御する。たとえば、合焦制御部101Aは、合焦機構40および合焦機構50を制御して、観察部位の深さ方向(奥行き方向)の位置PS1、PS2、PS3の順番に観察撮影系6のフォーカス位置および照明系8のフォーカス位置を変更する。観察撮影系6は、変更されたフォーカス位置に対応した被写界深度の範囲で合焦状態の被検眼Eの画像の取得が可能である。たとえば、観察撮影系6は、位置PS1に対応した被写界深度PC1の範囲で被検眼Eの画像の取得が可能である。
【0052】
合焦制御部101Aは、撮像装置13に画像を取得させる制御と上記の連係制御とを交互に実行することが可能である。それにより、合焦制御部101Aは、被検眼Eの観察部位の深さ方向について複数の断面画像の取得を制御することができる。たとえば、合焦制御部101Aは、位置PS1、PS2、PS3の断面の画像を順次に取得する制御を行うことができる。
【0053】
たとえば、合焦制御部101Aは、1回以上の画像の取得制御と連係制御とを交互に実行することが可能である。1回以上の画像の取得制御には、複数の画像を取得し、取得された複数の画像から1つの画像を生成する制御が含まれる。1つの画像を生成する制御には、取得された複数の画像を加算平均して1つの画像を生成する制御や、取得された複数の画像から1つの画像を選択する制御や、照明光の波長を変更しつつ取得された複数の画像から1つの画像を選択する制御などがある。
【0054】
スキャン制御部101Bは、被検眼Eの観察部位の水平方向(深さ方向に略直交する方向)のスキャン位置を制御する。
【0055】
図5に、スキャン制御部101Bの動作説明図を示す。
図5は、被検眼Eの角膜Ecに対する観察撮影系6および照明系8のフォーカス位置を模式的に表したものである。なお、
図5において、
図4と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0056】
スキャン制御部101Bは、被検眼Eの観察部位の水平方向(偏角方向)のスキャン(θスキャン)を制御することができる。スキャン制御部101Bは、照明系8の移動と観察撮影系6の移動とを連係させるように移動機構60を制御する。たとえば、スキャン制御部101Bは、水平方向のスキャン位置PS1、PS11、PS12の順番に観察撮影系6および照明系8を移動させる。
【0057】
スキャン制御部101Bは、撮像装置13に画像を取得させる制御と移動機構60の制御(移動制御)とを交互に実行することが可能である。それにより、スキャン制御部101Bは、被検眼Eの観察部位の水平方向について複数の断面画像の取得を制御することができる。たとえば、スキャン制御部101Bは、位置PS1、PS11、PS12の断面の画像を順次に取得する制御を行うことができる。
【0058】
水平方向の位置PS1、PS11、PS12のそれぞれにおいて、合焦制御部101Aにより観察撮影系6のフォーカス位置および照明系8のフォーカス位置が深さ方向に変更される。それにより、位置PS1、PS2、PS3、PS11、PS21、PS31、PS12、PS22、PS32のそれぞれについて断面の画像の取得を制御することができる。
【0059】
記憶部102は、各種のコンピュータプログラムやデータを記憶する。コンピュータプログラムには、各種の検査を細隙灯顕微鏡1に実行させるための演算プログラムや制御プログラムが含まれる。データには、各種の検査において使用されるデータが含まれる。このようなデータの例として、スキャン情報がある。スキャン情報は、たとえば、観察部位の複数のスキャン位置に観察撮影系6および照明系8を移動させるための制御情報と、各スキャン位置について1以上の深さ方向の位置に観察撮影系6および照明系8のフォーカス位置を変更するための制御情報とを含む。これらの制御情報は、事前に記憶部102に保存される。制御部101は、記憶部102に記憶されたスキャン情報を用いて、スキャン制御部101Bにより水平方向のスキャン位置を制御しつつ合焦制御部101Aによりフォーカス位置を制御することが可能である。
【0060】
制御部101は、マイクロプロセッサ、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスクドライブ等を含んで構成される。ROMやハードディスクドライブ等の記憶装置には、制御プログラムがあらかじめ記憶されている。制御部101の動作は、この制御プログラムとハードウェアとが協働することによって実現される。制御部101は、細隙灯顕微鏡1の装置本体(たとえば基台4内)やコンピュータ100に配置される。
【0061】
〔画像合成部〕
画像合成部120は、移動機構60により観察撮影系6および照明系8のうち少なくとも一方を移動させつつ撮像装置13により取得された複数の画像を合成する。たとえば、画像合成部120は、合焦機構40および合焦機構50によりフォーカス位置を変更しつつ撮像装置13により取得された複数の画像を合成する。
【0062】
画像合成部120は、断面位置が異なる複数の2次元の断面画像を合成することにより、被検眼Eの3次元画像(画像データ)を形成することが可能である。3次元画像の画像データとは、3次元座標系により画素の位置が定義された画像データを意味する。3次元画像の画像データとしては、3次元的に配列されたボクセルからなる画像データがある。この画像データは、ボリュームデータあるいはボクセルデータなどと呼ばれる。ボリュームデータに基づく画像を表示させる場合、画像合成部120は、このボリュームデータに対してレンダリング処理(ボリュームレンダリングやMIP(Maximum Intensity Projection:最大値投影)など)を施す。それにより、画像合成部120は、特定の視線方向から見たときの擬似的な3次元画像の画像データを形成することが可能である。また、画像合成部120は、3次元画像の任意の断面を画像化することができる(MPR(Multi−Planar Reconstruction):断面変換)。
【0063】
また、3次元画像の画像データとして、複数の断面画像のスタックデータを形成することも可能である。スタックデータは、複数のスキャン位置において得られた複数の断面画像を、スキャン位置の位置関係に基づいて3次元的に配列させることで得られる画像データである。すなわち、スタックデータは、元々個別の2次元座標系により定義されていた複数の断面画像を、1つの3次元座標系により表現する(つまり1つの3次元空間に埋め込む)ことにより得られる画像データである。制御部101または画像合成部120は、スタックデータに基づくMPR処理を行うことが可能である。
【0064】
画像合成部120は、配列処理部121と、合成処理部122とを含む。画像合成部120は、取得された複数の画像に対応する複数のフォーカス位置の配置に応じて、当該複数の画像を合成することが可能である。
【0065】
配列処理部121は、撮像装置13により取得された複数の画像を配列する。たとえば、合焦位置検出部150により検出された細隙光のフォーカス位置を制御部101から受け、配列処理部121は、撮像装置13により取得された複数の画像を配列する。また、スキャン位置検出部160により検出された観察撮影系6および照明系8のうち少なくとも一方の位置を制御部101から受け、配列処理部121は、撮像装置13により取得された複数の画像を配列する。配列処理部121は、合焦制御部101Aおよびスキャン制御部101Bの少なくとも一方の制御内容に基づいて、撮像装置13により取得された複数の画像を配列してもよい。
【0066】
合成処理部122は、配列処理部121により配列された複数の画像を合成する。したがって、合成処理部122は、配列された複数の画像に対応する複数のフォーカス位置の配置に応じて、これら複数の画像を合成することが可能である。複数の画像の合成には、観察部位における取得位置を示す位置情報を各画像に付して複数の画像を配列することや、各画像の位置情報に基づいて1つの合成画像を作成することなどが含まれる。制御部101は、配列された複数の画像や作成された1つの合成画像を表示部130に表示させることが可能である。
【0067】
また、画像合成部120は、撮像装置13により取得された1以上の画像を解析することにより複数の画像を合成してもよい。すなわち、画像合成部120は、合焦位置検出部150やスキャン位置検出部160を設けることなく、画像解析により複数の画像を合成するようにしてもよい。たとえば、配列処理部121は、撮像装置13により取得された複数の画像の位置を各画像の周縁部に基づいて特定し、特定された位置に基づいて複数の画像を配列する。合成処理部122は、配列処理部121により各画像の周縁部に基づいて特定された位置に応じて配列された複数の画像を合成する。あるいは、たとえば、配列処理部121は、撮像装置13により取得された複数の画像の位置を被検眼Eの正面画像に写り込んだ細隙光の像の位置に基づいて特定し、特定された位置に基づいて複数の画像を配列する。合成処理部122は、配列処理部121により細隙光の像の位置に基づいて特定された位置に応じて配列された複数の画像を合成する。
【0068】
〔合焦位置検出部〕
合焦位置検出部150は、たとえば、観察撮影系6に設けられ対物レンズ31の位置を検出する撮影系位置センサーと、照明系8に設けられ対物レンズ54の位置を検出する照明系位置センサーとを含む。合焦位置検出部150は、撮影系位置センサーおよび照明系位置センサーのいずれか一方のみを含んで構成されていてもよい。細隙光のフォーカス位置を特定可能であれば、合焦位置検出部150の設置態様に限定されるものではない。
【0069】
なお、合焦制御部101Aによる対物レンズ31、54に対する制御履歴等の制御内容を参照して対物レンズ31、54の現在位置を特定することも可能である。この場合、合焦位置検出部150を設けなくてもよい。
【0070】
〔スキャン位置検出部〕
スキャン位置検出部160は、たとえば、観察撮影系6および照明系8を支持する支持部15が設けられた基台4の位置を検出するための位置センサーと、支持アーム16、17の位置を検出するための角度センサーとを含む。スキャン位置検出部160は、基台4の位置を検出するための位置センサー、および支持アーム16、17の位置を検出するための角度センサーのすべてを含んで構成されていなくてもよい。観察撮影系6および照明系8の位置を特定可能であれば、スキャン位置検出部160の設置態様に限定されるものではない。
【0071】
なお、スキャン制御部101Bによる観察撮影系6および照明系8に対する制御履歴等の制御内容を参照して観察撮影系6および照明系8の位置や角度を特定することも可能である。この場合、スキャン位置検出部160を設けなくてもよい。
【0072】
〔表示部〕
表示部130は、制御部101の制御を受けて各種の情報を表示する。表示部130は、LCD(Liquid Crystal Display)等のフラットパネルディスプレイなどの表示デバイスを含んで構成される。表示部130は、細隙灯顕微鏡1の装置本体に設けられていてもよいし、コンピュータ100に設けられていてもよい。
【0073】
〔操作部〕
操作部140は、操作デバイスや入力デバイスを含んで構成される。操作部140には、細隙灯顕微鏡1に設けられたボタンやスイッチ(たとえば操作ハンドル5、観察倍率操作ノブ11等)や、コンピュータ100に設けられた操作デバイス(マウス、キーボード等)が含まれる。また、操作部140は、トラックボール、操作パネル、スイッチ、ボタン、ダイアルなど、任意の操作デバイスや入力デバイスを含んでいてよい。
【0074】
図3では、表示部130と操作部140とを別々に表しているが、これらの少なくとも一部を一体的に構成することも可能である。その具体例として、タッチスクリーンを用いることができる。
【0075】
合焦位置検出部は「第1検出部」の一例であり、スキャン位置検出部は「第2検出部」の一例である。
【0076】
[動作]
細隙灯顕微鏡1の動作について説明する。細隙灯顕微鏡1の動作例を
図6に示す。
図6に示す細隙灯顕微鏡1の動作例の説明図を
図7A〜
図7Cに示す。
図7A〜
図7Cは、被検眼Eに対する観察撮影系6および照明系8の位置を模式的に表したものである。
【0077】
(S1)
まず、検者が細隙灯顕微鏡1の電源をオンにし、顎受部10aに被検者の顔を載せると、操作部140を用いて細隙光の幅などの形状を調整する。細隙灯顕微鏡1では、操作部140に対する操作を受け、制御部101は、細隙形成部53を制御することにより細隙光の形状を細くて長いスリット状に変更する。
【0078】
(S2)
制御部101は、スキャン制御部101Bにより移動機構60を制御することにより観察撮影系6と照明系8とを初期位置に配置する。初期位置は、たとえば、記憶部102に記憶されたスキャン情報により特定された位置である。制御部101は、支持アーム17を回動させることにより被検眼Eの基準方向D(たとえば、正面方向)に対し左方向にα度(たとえば、30度)の位置に照明系8を配置させる。また、制御部101は、支持アーム16を回動させることにより被検眼Eの基準方向に対し右方向にα度の位置に観察撮影系6を配置させる(
図7A参照)。
【0079】
(S3)
制御部101は、移動機構60を制御することにより観察撮影系6および照明系8の回動軸を観察部位を観察するための所定位置(たとえば、角膜や水晶体の曲率中心位置)に移動させる。たとえば、制御部101は、観察部位に写り込む照明系8の瞳位置に基づいて回動軸の位置を所望の位置に移動させる。
【0080】
(S4)
制御部101は、記憶部102に記憶されたスキャン情報を用いて、合焦制御部101Aによりを変更しつつ、当該スキャン位置における観察撮影系6および照明系8のフォーカス位置において、撮像装置13により被検眼Eを撮影させる。たとえば、制御部101は、対物レンズ31、54を各系の光軸に沿って所定のシフト量だけ移動させつつ、各スキャン位置において深さ方向にシフト量が異なる複数の画像を取得させる。対物レンズ31、54のシフト量は、被検眼Eの観察部位や観察範囲の情報等に基づいて一意に決まるように設定することが可能である。
【0081】
制御部101は、撮像素子43により得られた画像信号GSに基づいて画像データを生成し、生成された画像データを記憶部102に保存する。
【0082】
ここで、制御部101は、合焦位置検出部150により検出された細隙光のフォーカス位置と、スキャン位置検出部160により検出された観察撮影系6および照明系8の位置とを、上記の画像データに関連付けて保存する。
【0083】
なお、合焦制御部101Aによる制御履歴等の制御内容に基づいて細隙光のフォーカス位置の特定が可能な場合、合焦制御部101Aによる制御内容に基づく情報を上記の画像データに関連付けて保存してもよい。同様に、スキャン制御部101Bによる制御履歴等の制御内容に基づいて観察撮影系6および照明系8の位置の特定が可能な場合、スキャン制御部101Bによる制御内容に基づく情報を上記の画像データに関連付けて保存してもよい。
【0084】
(S5)
制御部101は、記憶部102に記憶されたスキャン情報に基づいて撮影が終了したか否かを判定する。スキャン情報により指定された全スキャン位置についての撮影が終了したとき、撮影が終了したと判定される。撮影が終了したと判定されたとき(S5:Y)、細隙灯顕微鏡1の動作はS7に移行する。撮影が終了しないと判定されたとき(S5:N)、細隙灯顕微鏡1の動作はS6に移行する。
【0085】
(S6)
S5において撮影が終了しないと判定されたとき(S5:N)、制御部101は、記憶部102に記憶されたスキャン情報を用いて、スキャン制御部101Bにより移動機構60を制御することにより観察撮影系6と照明系8とを相対移動させる。たとえば、照明系8を右方向に所定の角度だけ回動させることにより水平方向にスキャン位置を移動させる。細隙灯顕微鏡1の動作は、S4に移行する。S4では、S6において移動されたスキャン位置において、フォーカス位置が異なる複数の画像が取得される。
【0086】
図7Bに示すように、被検眼Eの基準方向Dに対する照明系8の角度が0度になったとき、制御部101は、観察撮影系6を基準方向Dに対して左方向にα度の位置に配置させる。制御部101は、照明系8を右方向に所定の角度だけ回動させる、基準方向Dに対して右方向にα度の位置になるまで、観察撮影系6および照明系8の相対移動と撮影とを繰り返す(
図7C参照)。
【0087】
(S7)
S5において撮影が終了したと判定されたとき(S5:Y)、制御部101は、画像合成部120により、S4で繰り返し取得された複数の画像を合成させ、たとえば3次元画像を形成させる。それにより、制御部101は、角膜や水晶体などの3次元画像を表示部130に表示させたり、操作部140に対する操作内容に基づいて指定された任意断面の画像を表示させたりすること可能になる。なお、S4において、合焦制御部101Aやスキャン制御部101Bによる制御内容に基づく情報が画像データに関連付けて保存された場合、画像合成部120は、これらの情報に基づいて複数の画像を合成してもよい。
【0088】
以上で、細隙灯顕微鏡1の動作は終了となる(エンド)。
【0089】
この実施形態では、対物レンズを光軸に沿って移動させることにより各系のフォーカス位置を変更するようにしたので、駆動対象の重量が少なくて済み、駆動対象を高速に移動させることが可能になる。それにより、高速撮影に好適な細隙灯顕微鏡を提供することができる。
【0090】
また、観察撮影系6の光軸と照明系8の光軸とのなす角度が大きくなると、観察撮影系6のフォーカス位置と照明系8のフォーカス位置とのずれが大きくなる。しかしながら、この実施形態では、観察撮影系6および照明系8のそれぞれの系で独立にフォーカス位置を調整するようにしたので、観察撮影系6のフォーカス位置と照明系8のフォーカス位置とのずれを容易に補正することが可能になる。特に、合焦位置検出部150として支持アーム16、17に角度センサーを設けることにより、観察撮影系6のフォーカス位置と照明系8のフォーカス位置とのずれを容易、且つ、高精度に補正することが可能になる。
【0091】
更に、この実施形態では、主として、被検眼Eの基準方向Dに対する照明系8の角度を変更することにより被検眼Eの観察部位をスキャンする。それにより、観察撮影系6および照明系8の回動軸の位置を観察部位の曲率中心位置に合わせておくだけで、被検眼Eの広域の画像をスムーズに取得することができる。たとえば、観察撮影系6のフォーカス位置を照明系8のフォーカス位置から少しずらし、観察撮影系6の被写界深度内で水平方向にスキャン(横スキャン)を行うことで、被検眼Eの広域の画像を取得することが可能になる。
【0092】
[作用・効果]
実施形態に係る眼科装置の作用および効果について説明する。
【0093】
実施形態に係る細隙灯顕微鏡(たとえば、細隙灯顕微鏡1)は、照明系(たとえば、照明系8)と、撮影系(たとえば、観察撮影系6)とを含む。照明系は、被検眼(たとえば、被検眼E)を細隙光で照明し、細隙光のフォーカス位置を変更するための照明合焦機構(たとえば、合焦機構40)を備える。撮影系は、被検眼からの細隙光の戻り光を撮像装置(たとえば、撮像装置13)に導く。
【0094】
このような構成によれば、被検眼の観察部位の深さ方向における細隙光の複数のフォーカス位置において被検眼の断面の画像を取得することが可能になるので、被検眼の広域の断面の画像を取得することが可能な細隙灯顕微鏡を提供することができる。
【0095】
また、撮影系は、そのフォーカス位置を変更するための撮影合焦機構(たとえば、合焦機構50)を備えてもよい。
【0096】
このような構成によれば、被検眼の観察部位の深さ方向における細隙光の複数のフォーカス位置について撮影系のフォーカス位置を変更することが可能になるので、より広域の被検眼の断面の画像を取得することが可能になる。
【0097】
また、細隙灯顕微鏡は、照明合焦機構と撮影合焦機構とを連係制御する第1制御部(たとえば、合焦制御部101A)を含んでもよい。
【0098】
このような構成によれば、被検眼の観察部位の任意の位置に対し、細隙光のフォーカス位置と撮影系のフォーカス位置とを連係して変更することができるので、被検眼の広域の断面の画像の取得を容易化することが可能になる。
【0099】
また、第1制御部は、撮像装置に画像を取得させる制御と上記の連係制御とを交互に実行してもよい。
【0100】
このような構成によれば、被検眼の観察部位の深さ方向に細隙光のフォーカス位置を変更しつつ各フォーカス位置において断面の画像の取得が可能になるので、被検眼の広域の断面の画像の取得や管理、取得された複数の断面の画像の合成等を容易化できる。また、被検眼の広域の断面の画像を効率的に取得することが可能になるので、被検眼の検査負担の軽減が可能になる。
【0101】
また、細隙灯顕微鏡は、少なくとも照明系を移動させる移動機構(たとえば、移動機構60)を含んでもよい。
【0102】
このような構成によれば、被検眼の観察部位における水平方向の複数の位置について断面の画像を取得することができるので、より広域の被検眼の断面の画像の取得が可能になる。
【0103】
また、移動機構は、照明系および撮影系の双方を移動させてもよい。細隙灯顕微鏡は、照明系の移動と撮影系の移動とを連係させるように移動機構を制御する第2制御部(たとえば、スキャン制御部101B)を含んでもよい。
【0104】
このような構成によれば、被検眼の観察部位について水平方向および深さ方向の複数の位置について複数の断面の画像を取得することができるので、被検眼の3次元画像の取得が可能になる。
【0105】
また、第2制御部は、撮像装置に画像を取得させる制御と上記の移動機構の制御とを交互に実行してもよい。
【0106】
このような構成によれば、照明系および撮影系を移動しつつ被検眼の観察部位の深さ方向に細隙光のフォーカス位置において断面の画像の取得が可能になるので、被検眼の広域の断面の画像の取得や管理、取得された複数の断面の画像の合成等を容易化できる。また、被検眼の広域の断面の画像を効率的に取得することが可能になるので、被検眼の検査負担の軽減が可能になる。
【0107】
また、細隙灯顕微鏡は、画像合成部(たとえば、画像合成部120)を含んでもよい。画像合成部は、移動機構により少なくとも照明系を移動させつつ撮像装置により取得された複数の画像を合成する。
【0108】
このような構成によれば、照明系および撮影系を移動しつつ被検眼の観察部位の深さ方向に細隙光のフォーカス位置において断面の画像を取得し、取得された断面の画像を合成するようにしたので、合成画像の取得が容易になる。
【0109】
また、画像合成部は、照明合焦機構によりフォーカス位置を変更しつつ撮像装置により取得された複数の画像を合成してもよい。
【0110】
このような構成によれば、被検眼の観察部位の深さ方向に細隙光のフォーカス位置において断面の画像の取得が可能になるので、被検眼の広域の断面の画像の取得や管理、取得された複数の断面の画像の合成等を容易化することができる。また、被検眼の広域の断面の画像を効率的に取得することが可能になるので、被検眼の検査負担の軽減が可能になる。
【0111】
また、細隙灯顕微鏡は、照明合焦機構によりフォーカス位置を変更しつつ撮像装置により取得された複数の画像を合成する画像合成部を含んでもよい。
【0112】
このような構成によれば、被検眼の観察部位の深さ方向の細隙光のフォーカス位置において断面の画像を取得し、取得された断面の画像を合成するようにしたので、合成画像の取得が容易になる。
【0113】
また、画像合成部は、配列処理部(たとえば、配列処理部121)と、合成処理部(たとえば、合成処理部122)とを含んでもよい。配列処理部は、複数の画像を配列する。合成処理部は、配列処理部により配列された複数の画像を合成する。
【0114】
このような構成によれば、被検眼の観察部位の深さ方向の細隙光のフォーカス位置において取得された断面の画像の合成を簡素化することができる。
【0115】
また、細隙灯顕微鏡は、細隙光のフォーカス位置を検出する第1検出部(たとえば、合焦位置検出部150)を含み、配列処理部は、第1検出部により検出されたフォーカス位置に基づいて複数の画像を配列してもよい。
【0116】
このような構成によれば、細隙光のフォーカス位置の配置に応じて、取得された断面の画像を配置することが可能になる。これにより、細隙光のフォーカス位置における断面の画像の観察が容易になる。
【0117】
また、細隙灯顕微鏡は、照明系および撮影系のうち少なくとも一方の位置を検出する第2検出部(たとえば、スキャン位置検出部160)を含み、配列処理部は、第2検出部により検出された位置に基づいて複数の画像を配列してもよい。
【0118】
このような構成によれば、照明系および撮影系の位置に応じて、取得された断面の画像を配置することが可能になる。これにより、照明系および撮影系の位置における断面の画像の観察が容易になる。
【0119】
また、撮影系は、撮影対物レンズ(たとえば、対物レンズ31)を備え、撮影合焦機構は、撮影対物レンズを撮影系の光軸に沿って移動させてもよい。
【0120】
このような構成によれば、撮影対物レンズを光軸に沿って移動させることによりフォーカス位置を変更するようにしたので、駆動対象の重量が少なくて済み、駆動対象を高速に移動させることが可能になる。それにより、高速撮影に好適な細隙灯顕微鏡を提供することができる。
【0121】
また、照明系は、照明対物レンズ(たとえば、対物レンズ54)を備え、照明合焦機構は、照明対物レンズを照明系の光軸に沿って移動させてもよい。
【0122】
このような構成によれば、照明対物レンズを光軸に沿って移動させることによりフォーカス位置を変更するようにしたので、駆動対象の重量が少なくて済み、駆動対象を高速に移動させることが可能になる。それにより、高速撮影に好適な細隙灯顕微鏡を提供することができる。
【0123】
(変形例)
以上に示された実施形態は、この発明を実施するための一例に過ぎない。この発明を実施しようとする者は、この発明の要旨の範囲内において任意の変形、省略、追加等を施すことが可能である。
【0124】
上記の実施形態では、同軸で回動可能に構成された観察撮影系6および照明系8が設けられた基台4を移動させることにより被検眼Eの観察部位に対し観察撮影系6および照明系8を移動させる場合について説明した。しかしながら、本発明に係る実施形態はこれに限定されるものではない。たとえば、観察撮影系6および照明系8のそれぞれが非同軸で回動可能に構成され、観察撮影系6の回動軸と照明系8の回動軸とが独立に移動可能に構成されていてもよい。各系の位置は、上記の実施形態と同様に、各系に設けられたスキャン位置検出部により取得することが可能である。そのため、上記の実施形態と同様に、被検眼の観察部位の水平方向および深さ方向に各系のフォーカス位置を変更しつつ、各位置で断面の画像を取得することができる。
【0125】
上記の実施形態では、主として観察撮影系6および照明系8を移動させることにより被検眼Eの観察部位の複数の位置について複数の画像を取得する場合について説明した。しかしながら、本発明に係る実施形態はこれに限定されるものではない。たとえば、細隙形成部53は、一対のスリット刃の位置を水平方向に移動可能に構成されてもよい。あるいは、細隙形成部53は、一対のスリット刃の間隔の向き(スリットの向き)を回転可能に構成されてもよい。この場合、一対のスリット刃の位置や一対のスリット刃の間隔の向きを変更することにより、断面の画像を取得する撮影位置を変更することが可能である。
【0126】
上記の実施形態では、照明系8が照明光源51と細隙形成部53とにより形成された細隙光を被検眼Eに照明する場合について説明したが、本発明に係る実施形態はこれに限定されるものではない。たとえば、照明系8が制御部101からの制御により指定された照明パターンの照明光を投影する投影手段を含み、投影手段により投影された照明光で被検眼Eを照明するようにしてもよい。
【0127】
上記の実施形態では、画像合成部120が合焦位置検出部150やスキャン位置検出部160の検出結果、制御部101の制御内容などを用いて複数の画像を合成する場合について説明したが、本発明に係る実施形態はこれに限定されるものではない。たとえば、細隙灯顕微鏡1が観察撮影系6や照明系8を被検眼Eの動きに追従させるように公知のトラッキング制御を行い、画像合成部120がトラッキング制御に内容を用いて複数の画像を合成するようにしてもよい。
【0128】
上記の実施形態において、被検眼Eの観察部位における複数の位置において取得された複数の画像を、被検眼Eについて別途取得された正面画像における位置と関連付けて保存するようにしてもよい。
【0129】
上記の実施形態では、細隙灯顕微鏡について説明したが、この発明を適用可能な装置はこれに限定されるものではない。たとえば、眼軸長測定機能、眼圧測定機能、眼底撮影機能、光干渉断層撮影(OCT)機能、超音波検査機能など、眼科分野において使用可能な任意の機能を有する装置は、本発明の機能を具備することが可能である。なお、眼軸長測定機能は光干渉断層計等により実現される。また、眼軸長測定機能は、被検眼に光を投影し、当該被検眼に対する光学系のZ方向(前後方向)の位置を調整しつつ眼底からの戻り光を検出することにより、当該被検眼の眼軸長を測定するようにしてもよい。眼圧測定機能は眼圧計等により実現される。眼底撮影機能は眼底カメラや走査型検眼鏡(SLO)等により実現される。OCT機能は光干渉断層計等により実現される。超音波検査機能は超音波診断装置等により実現される。また、このような機能のうち2つ以上を具備した装置(複合機)に対してこの発明を適用することも可能である。