【解決手段】ワークAが、撮像素子17により撮像され、撮像により得られた画像データ33aより、レーザ光Lの照射位置52がレーザスポット検出処理(S14)により検出され、ワークAの特徴点54の位置が、特徴点検出処理(S15)により検出される。その検出されたワークAの特徴点54の位置と、ワークAの特徴点54に沿って予め教示された溶接点又は溶接線53とのずれ量57が、ずれ量検出処理(S17)により検出される。その検出されたずれ量57と、レーザスポット検出処理(S14)により検出されたレーザ光Lの照射位置52とに基づいて、教示された溶接点又は溶接線53に基づくレーザ光Lの照射位置52を補正するための位置補正量58が位置補正量算出処理(S18)によって算出される。
前記特徴点検出手段は、前記照射位置検出手段により検出された前記レーザ光の照射位置から所定距離離れた領域に含まれる前記特徴点の位置を検出することを特徴とする請求項1又は2記載のレーザ溶接装置。
前記所定領域設定手段は、これから溶接が行われると想定される溶接線に沿って、複数の矩形を連ねた形状の所定領域を設定することを特徴とする請求項4記載のレーザ溶接装置。
前記所定領域設定手段は、前記所定領域の大きさを、前記溶接が行われると想定される領域の前記溶接対象物における場所に応じて変化させることを特徴とする請求項4から6のいずれかに記載のレーザ溶接装置。
前記レーザ光の照射位置から第1所定距離離れた領域に含まれる前記特徴点の位置を前記特徴点検出手段により検出する場合に用いられる画像が前記撮像手段によって撮像される場合の露光時間を、前記レーザ光の照射位置から前記第1所定距離よりも長い前記第2所定距離離れた領域に含まれる前記特徴点の位置を前記特徴点検出手段により検出する場合に用いられる画像が前記撮像手段によって撮像される場合の露光時間よりも短く設定する露光時間設定手段を備えることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のレーザ溶接装置。
前記撮像手段により撮像される画像に含まれる前記溶接対象物の複数の特徴点が、前記撮像手段の水平走査の方向と非平行となるように、前記撮像手段を回転させる回転手段を備えることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のレーザ溶接装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のレーザ溶接装置では、溶接対象物を溶接している間、その溶接に伴って、溶接対象物が最初に設置していた位置からずれることがある。よって、プログラムに従ってレーザ光を照射すると、当所予定していた溶接点又は溶接線からずれて、レーザ光が照射されることがあった。また、同一形状の複数の溶接対象物に対して溶接を行う場合、同一のプログラムに基づいて溶接点又は溶接線に向けてレーザ光を照射すると、各溶接対象物の形状に多少のばらつきがあるため、やはり望ましい位置にレーザ光が照射されないということがあった。よって、従来のレーザ溶接装置では、溶接の品質が低下するおそれがあるという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、望ましい位置でレーザ溶接を行うことができるレーザ溶接装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために請求項1記載のレーザ溶接装置は、溶接対象物へレーザ光を照射して溶接を行うものであって、レーザ光を発振して出力するレーザ発振器と、前記溶接対象物に存在する特徴点に基づいて予め設定された、前記溶接対象物に対するレーザ光の照射位置を記憶する記憶手段と、その記憶手段に記憶された前記照射位置に基づいて、前記レーザ発振器より出力された前記レーザ光が前記溶接対象物に照射されるように制御する照射位置制御手段と、前記溶接対象物の溶接面を撮像する撮像手段と、その撮像手段により撮像された画像より前記レーザ光の照射位置を検出する照射位置検出手段と、前記撮像手段により撮像された画像より前記溶接対象物の特徴点の位置を検出する特徴点検出手段と、その特徴点検出手段により検出された前記特徴点の位置と、前記記憶手段に記憶された前記レーザ光の照射位置とのずれ量を検出するずれ量検出手段と、そのずれ量検出手段により検出された前記ずれ量と、前記照射位置検出手段により検出された前記レーザ光の照射位置とに基づいて、前記記憶手段に記憶された前記照射位置に基づく前記照射位置制御手段による前記レーザ光の照射位置を補正するための位置補正量を算出する算出手段と、を備え、前記照射位置制御手段は、前記算出手段により算出された前記位置補正量に基づいて、前記記憶手段に記憶された前記照射位置に基づく前記レーザ光の照射位置を補正する。
【0008】
請求項2記載のレーザ溶接装置は、請求項1記載のレーザ溶接装置において、前記特徴点検出手段は、複数の前記特徴点の位置を検出する。
【0009】
請求項3記載のレーザ溶接装置は、請求項1又は2記載のレーザ溶接装置において、前記特徴点検出手段は、前記照射位置検出手段により検出された前記レーザ光の照射位置から所定距離離れた領域に含まれる前記特徴点の位置を検出する。
【0010】
請求項4記載のレーザ溶接装置は、請求項1から3のいずれかに記載のレーザ溶接装置において、これから溶接が行われると想定される領域に、所定形状の所定領域を設定する所定領域設定手段を備え、前記特徴点検出手段は、前記所定領域設定手段により設定された前記所定領域内に含まれる前記特徴点の位置を検出する。
【0011】
請求項5記載のレーザ溶接装置は、請求項4記載のレーザ溶接装置において、前記所定領域設定手段は、これから溶接が行われると想定される溶接線に沿って、平行四辺形の所定領域を設定する。
【0012】
請求項6記載のレーザ溶接装置は、請求項4記載のレーザ溶接装置において、前記所定領域設定手段は、これから溶接が行われると想定される溶接線に沿って、複数の矩形を連ねた形状の所定領域を設定する。
【0013】
請求項7記載のレーザ溶接装置は、請求項4から6のいずれかに記載のレーザ溶接装置において、前記所定領域設定手段は、前記所定領域の大きさを、前記溶接が行われると想定される領域の前記溶接対象物における場所に応じて変化させる。
【0014】
請求項8記載のレーザ溶接装置は、請求項1から7のいずれかに記載のレーザ溶接装置において、前記レーザ光の照射位置から第1所定距離離れた領域に含まれる前記特徴点の位置を前記特徴点検出手段により検出する場合に用いられる画像が前記撮像手段によって撮像される場合の露光時間を、前記レーザ光の照射位置から前記第1所定距離よりも長い前記第2所定距離離れた領域に含まれる前記特徴点の位置を前記特徴点検出手段により検出する場合に用いられる画像が前記撮像手段によって撮像される場合の露光時間よりも短く設定する露光時間設定手段を備える。
【0015】
請求項9記載のレーザ溶接装置は、請求項1から8のいずれかに記載のレーザ溶接装置において、前記撮像手段により撮像される画像に含まれる前記溶接対象物の複数の特徴点が、前記撮像手段の水平走査の方向と非平行となるように、前記撮像手段を回転させる回転手段を備える。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載のレーザ溶接装置によれば、溶接対象物に存在する特徴点に基づいて予め設定された、溶接対象物に対するレーザ光の照射位置が記憶手段に記憶される。その記憶手段に記憶された照射位置に基づいて、レーザ発振器より出力されたレーザ光が溶接対象物に照射されるように、照射位置制御手段により制御される。また、溶接対象物の溶接面が、撮像手段により撮像される。撮像された画像より、レーザ光の照射位置が照射位置検出手段により検出され、溶接対象物の特徴点の位置が特徴点検出手段により検出される。その検出された溶接対象物の特徴点の位置と、記憶手段に記憶されたレーザ光の照射位置とのずれ量が、ずれ量検出手段により検出され、その検出されたずれ量と、照射位置検出手段により検出されたレーザ光の照射位置とに基づいて、記憶手段に記憶された照射位置に基づく照射位置制御手段によるレーザ光の照射位置を補正するための位置補正量が、算出手段によって算出される。そして、その算出された位置補正量に基づいて、記憶手段に記憶された照射位置に基づくレーザ光の照射位置が補正されて、レーザ発振器より出力されたレーザ光が溶接対象物に照射されるように、照射位置制御手段により制御される。これにより、記憶手段に記憶されたレーザ光の照射位置は、溶接対象物に存在する特徴点に基づいて予め設定されたものである一方、撮像手段により撮像された画像により、溶接対象物の特徴点の位置が検出され、その特徴点の位置と、記憶手段に記憶されたレーザ光の照射位置とのずれ量に基づいて、レーザ光の照射位置を補正できる。よって、レーザ光の照射位置を、実際の溶接対象物の特徴点の位置に合わせて補正できるので、望ましい位置でレーザ溶接を行うことができるという効果がある。
【0017】
請求項2記載のレーザ溶接装置によれば、請求項1記載のレーザ溶接装置の奏する効果に加え、特徴点検出手段によって、複数の特徴点の位置が検出されるので、この複数の特徴点の位置に基づいて、照射すべきレーザ光の位置と、記憶手段に記憶されたレーザ光の照射位置とのずれ量を精度よく算出できる。よって、記憶手段に記憶された照射位置に基づく照射位置制御手段によるレーザ光の照射位置を補正するための位置補正量を、実際の溶接対象物の特徴点の位置に、より正確に合わせることができる。従って、望ましい位置でのレーザ溶接をより確実に行うことができるという効果がある。
【0018】
請求項3記載のレーザ溶接装置によれば、請求項1又は2記載のレーザ溶接装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、照射位置検出手段により検出されたレーザ光の照射位置から所定距離離れた領域に含まれる特徴点の位置が、特徴点検出手段により検出される。これにより、現在のレーザ光の照射位置から常に所定距離離れた領域にある溶接対象物の特徴点の位置に基づいて、照射すべきレーザ光の位置と記憶手段に記憶されたレーザ光の照射位置とのずれ量が算出され、そのずれ量に基づいてレーザ光の照射位置が補正されるので、その補正の精度を一定に保たせることができるという効果がある。
【0019】
請求項4記載のレーザ溶接装置によれば、請求項1から3のいずれかに記載のレーザ溶接装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、所定領域設定手段によって、これから溶接が行われると想定される領域に、所定形状の所定領域が設定され、この所定領域内に含まれる特徴点の位置が、特徴点検出手段によって検出される。これにより、特徴点の検出範囲を所定領域内に限定できるので、処理に係る時間を短縮できるという効果がある。
【0020】
請求項5記載のレーザ溶接装置によれば、請求項4記載のレーザ溶接装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、これから溶接が行われると想定される溶接線に沿って、平行四辺形の所定領域が、所定領域設定手段により設定される。これにより、特徴点を検出する領域が余分に広く設定されることを抑制できるので、特徴点の検出に係る時間をより短くでき、また、誤検出が発生する可能性を低く抑えることができるという効果がある。
【0021】
請求項6記載のレーザ溶接装置によれば、請求項4記載のレーザ溶接装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、これから溶接が行われると想定される溶接線に沿って、複数の矩形を連ねた形状の所定領域が、所定領域設定手段により設定される。これにより、特徴点を検出する領域が余分に広く設定されることを抑制できるので、特徴点の検出に係る時間をより短くでき、また、誤検出が発生する可能性を低く抑えることができるという効果がある。
【0022】
請求項7記載のレーザ溶接装置によれば、請求項4から6のいずれかに記載のレーザ溶接装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、所定領域の大きさは、これから溶接が行われると想定される領域の溶接対象物における場所に応じて変化するように、所定領域設定手段により設定される。これにより、所定領域の設定される、これから溶接が行われると想定される領域が、溶接対象物の中央部であれば、所定領域の大きさを大きくして多くの特徴点を検出することにより、ずれ量をより正確に検出できる一方、所定領域の設定される、これから溶接が行われると想定される領域が、溶接対象物の端部であれば、所定領域の大きさを小さくして端部により特徴点が誤検出されることを抑制できるという効果がある。
【0023】
請求項8記載のレーザ溶接装置によれば、請求項1から7のいずれかに記載のレーザ溶接装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、レーザ光の照射位置から第1所定距離離れた領域に含まれる特徴点の位置を特徴点検出手段により検出する場合に用いられる画像が撮像手段によって撮像される場合の露光時間が、レーザ光の照射位置から第1所定距離よりも長い第2所定距離離れた領域に含まれる特徴点の位置を特徴点検出手段により検出する場合に用いられる画像が撮像手段によって撮像される場合の露光時間よりも短くなるように、露光時間設定手段により設定される。レーザ光の照射位置から近い領域から反射される光は、そのレーザ光によって高輝度となるが、撮像時の露光時間が短く設定されるので、レーザ光の照射位置から近い領域を白飛びさせることなく画像を撮影できる。これにより、第1所定距離を短く設定しても、レーザ光の照射位置から第1所定距離離れた領域に含まれる特徴点の位置を確実に検出できる。よって、レーザ光の照射位置に近い特徴点を含めて、照射すべきレーザ光の位置と記憶手段に記憶されたレーザ光の照射位置とのずれ量が算出され、そのずれ量に基づいてレーザ光の照射位置が補正されるので、その照射位置の補正を滑らかに行うことができるという効果がある。
【0024】
請求項9記載のレーザ溶接装置によれば、請求項1から8のいずれかに記載のレーザ溶接装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。即ち、撮像手段により撮像される画像に含まれる溶接対象物の複数の特徴点が、撮像手段の水平走査の方向と非平行となるように、撮像手段が回転手段によって回転される。一般的に撮像手段により撮像された画像に対する画像処理は、撮像手段の水平走査によって読み出された画素の順番に行われる。このような状況下において、溶接対象物の複数の特徴点が撮像手段の水平走査の方向に平行に並んでいる場合、複数の走査線にまたがって画像処理を行わなければ、それが特徴点であるのか否かの判断が行えず、特徴点の検出に時間がかかる。これに対し、溶接対象物の複数の特徴点が、撮像手段の水平走査の方向と非平行となるように、撮像手段が回転手段によって回転されるので、複数の走査線にまたがって画像処理を行わなくても特徴点の検出を行うことができる。よって、その検出に要する時間を短縮できるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態について添付図面を参照して説明する。まず、
図1を参照して、本発明の一実施形態であるレーザ溶接装置Sの概略について説明する。
図1は、そのレーザ溶接装置Sの構成を概略的に示す概略図である。
【0027】
レーザ溶接装置Sは、レーザ光Lにより溶接対象物(以下、単に「ワーク」と称す)Aを溶接するものである。レーザ溶接装置Sは、レーザ発振器10を有し、レーザ発振器10によりレーザ光Lが発振される。レーザ発振器10により発振されたレーザ光Lは、光ファイバ11によって伝送され、光ファイバ11の一端に設けられたファイバアダプタ12から照射される。
【0028】
ファイバアダプタ12の出力側には、コリメートレンズ13が配置されており、ファイバアダプタ12から照射されたレーザ光Lは、コリメートレンズ13によって平行光とする。コリメートレンズ13により平行光とされたレーザ光Lは、反射ミラー14によってガルバノスキャナ20に向けて反射され、反射ミラー14とガルバノスキャナ20との間に設けられたハーフミラー15を透過して、ガルバノスキャナ20に入力される。
【0029】
ガルバノスキャナ20は、ワークAに向けてレーザ光Lを照射する場合に、その照射位置を調整するものであり、図示しない一対の反射ミラー(ガルバノミラー)によって構成される。
【0030】
一対の反射ミラーのうち、一方の反射ミラーはX軸変位モータ20aに接続されている。このX軸変位モータ20aを駆動することにより、接続する反射ミラーの反射角が変更され、ワークAに対するレーザ光Lの照射位置が、X軸方向に変位可能とされる。また、一対の反射ミラーのうち、他方の反射ミラーはY軸変位モータ20bに接続されている。このY軸変位モータ20bを駆動することにより、接続する反射ミラーの反射角が変更され、ワークAに対するレーザ光Lの照射位置が、Y軸方向に変位可能とされる。よって、X軸変位モータ20a及びY軸変位モータ20bを駆動することで、ガルバノスキャナ20により、ワークAの平面上の所望の位置に、レーザ光Lを照射することができる。
【0031】
ガルバノスキャナ20の出力側にはfθレンズ21が配置されている。ガルバノスキャナ20によって所望の照射位置に向けられたレーザ光Lは、fθレンズ21によってワークAの照射位置に集光される。
【0032】
レーザ光L、その他の光によりワークAから反射された光Iは、レーザ光Lとは逆向きに、fθレンズ21及びガルバノスキャナ20を通過して進み、ハーフミラー15によって反射されて、撮像素子17に入力される。ハーフミラー15と撮像素子17との間には、フォーカシングレンズ16が配置されており、フォーカシングレンズ16によって、ワークAより反射された光Iが、ワークAの溶接面を表す画像として撮像素子17に結像される。
【0033】
撮像素子17は、例えばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary MOS)イメージセンサ等によって構成される。撮像素子17に結像された画像は、その撮像素子17において2次元に並べられた画素に分解され、画素毎に、入力された光の強度が電気信号に変換されることで、撮像が行われる。撮像素子17によって画素毎に変換された電気信号は、ラスタスキャンによりコントローラ30へ出力される。
【0034】
撮像素子17には、撮像素子回転モータ22が接続されている。コントローラ30により撮像素子回転モータ22が駆動されると、撮像素子17が回転する。これにより、撮像獅子17により撮像される画像の向きを回転させることができる。
【0035】
コントローラ30は、レーザ溶接装置Sの全体の制御を行うものである。コントローラ30には、ティーチペンダント23が接続されている。ティーチペンダント23は、コントローラ30に対して、レーザ溶接装置Sの動作に関する設定や溶接軌跡の教示(プログラム)等をするための入力手段としての役割を担うと共に、レーザ溶接装置Sの運転状態を表示する表示手段としての役割を担うものである。
【0036】
ティーチペンダント23により溶接軌跡の教示が行われる場合、コントローラ30に設けられ又は接続された表示装置(図示せず)、若しくは、ティーチペンダント23に設けられた表示装置(図示せず)に、撮像装置17によって撮像されたワークAの溶接面が表示される。使用者は、表示装置に表示されたワークAの溶接面を見ながら、ワークAにおける溶接点又は溶接線を設定することで、溶接軌跡の教示を行う。
【0037】
このとき、コントローラ30は、撮像素子17により撮像されたワークAの画像から検出される接合予定部から特徴点を検出し、その特徴点に基づいて、ワークAにおける溶接点又は溶接線が設定されるよう、表示装置に表示される画像を通して使用者を支援し、また、ティーチペンダント23の操作の受付の可否を判断する。
【0038】
ティーチペンダント23により教示されたワークAの溶接点又は溶接線の位置を示す情報は、コントローラ30に設けられたRAM33(
図2参照)に記憶され、また、ガルバノスキャナコントローラ18にも送信される。
【0039】
コントローラ30は、また、ワークAの溶接を行っている期間中、撮像素子17により撮像されたワークAの画像から検出される特徴点の位置と、教示されたワークAの溶接点又は溶接線の位置とのずれ量を検出する。そして、検出されたずれ量に基づいて、それまでに溶接された溶接線の位置及び現在のレーザ光LのワークAに対する照射位置から、検出されたワークAの特徴点の位置にレーザ光Lの照射位置が移動するように、教示されたワークAの溶接点又は溶接線の位置を補正するための位置補正量を算出する。算出された位置補正量は、ガルバノスキャナコントローラ18に送信される。
【0040】
ガルバノスキャナコントローラ18は、ワークAの平面上の所望の位置に、レーザ光Lが照射されるように、ガルバノスキャナ20に設けられたX軸変位モータ20a及びY軸変位モータ20bを駆動するものである。ガルバノスキャナコントローラ18は、コントローラ30より予め受信した、使用者より教示されたワークAの溶接点又は溶接線の位置に基づいてX軸変位モータ20a及びY軸変位モータ20bを駆動し、ワークAに対して、その教示されたワークAの溶接点又は溶接線の位置にレーザLを照射する制御を行う。また、ガルバノスキャナコントローラ18は、レーザLを照射中にコントローラ30より位置補正量を受信した場合は、その位置補正量を加味して、使用者より教示されたワークAの溶接点又は溶接線の位置を補正し、補正後のワークAの溶接点又は溶接線の位置へレーザLが照射されるよう、X軸変位モータ20a及びY軸変位モータ20bを駆動する。
【0041】
次いで、
図2を参照して、コントローラ30の詳細構成について説明する。
図2は、コントローラ30の電気的構成を示したブロック図である。コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)31、ROM(Read Only Memory)32、RAM(Random Access Memory)33を有しており、それらはバスライン34を介して接続されている。また、バスライン34には、撮像素子17と、撮像素子回転モータ22と、ガルバノスキャナコントローラ18と、ティーチペンダント23とが接続される他、図示しない表示装置が接続されている。
【0042】
CPU31は、ROM32に記憶されたプログラムに従って、レーザ溶接装置Sを制御する演算装置である。ROM32は、CPU31によって実行されるプログラムや固定値データ等を記憶するための書き換え不能な不揮発性のメモリである。
【0043】
RAM33は、書き換え可能な揮発性のメモリであり、CPU51によるプログラムの実行時に各種のデータを一時的に記憶する。RAM33は、画像データ33a、教示データ33b、現溶接線データ33c、現スポット点データ33d、特徴点データ33e、ずれ量データ33f、位置補正量データ33g及び回転量データ33hを少なくとも記憶する。
【0044】
画像データ33aは、撮像素子17により撮像された画像のRAWデータである。撮像素子17にて撮像された各画素の電気信号(アナログ信号)が、増幅されながらラスタスキャンにて出力されると、画素毎に図示しないA/D変換器にて例えば8ビットのディジタル値に変換される。RAWデータとは、その画素毎にA/D変換器から出力された未加工のデータのことであり、それが画像データ33aとしてRAM33に記憶される。なお、A/D変換器の分解能は必ずしも8ビットである必要はなく、10ビットA/D変換器等、任意の分解能を持つA/D変換器が使用可能である。
【0045】
RAM33に記憶された画像データ33aは、ワークAの溶接点又は溶接線の教示時に、所定の画像処理が施された後、図示しない表示装置への表示に使用される。これにより、撮像素子17により撮像されたワークAの溶接面が、表示装置に表示される。
【0046】
また、RAM33に記憶された画像データ33aは、ワークAの溶接点又は溶接線の教示時に、そのワークAに含まれる接合予定部から特徴点を複数検出するために使用される。検出された特徴点は、その特徴点の位置を示す画像が、表示装置に表示されたワークAの溶接面に合成して表示するために用いられる。
【0047】
また、使用者がワークAの溶接点又は溶接線を教示する場合に、その教示した溶接点又は溶接線が、検出された特徴点に基づいて設定されたか否かが判断され、検出された特徴点に基づいて設定されたと判断された場合に限り、使用者により教示されたワークAの溶接点又は溶接線が受け付けられる。使用者により教示された溶接点又は溶接線が、検出された特徴点に基づいて設定されていないと判断される場合には、使用者に対して、再度、溶接点又は溶接線の教示を促す。
【0048】
これにより、検出された特徴点に基づいてワークAにおける溶接点又は溶接線が設定されるよう、使用者を支援することができる。
【0049】
また、RAM33に記憶された画像データ33aは、ワークAにレーザ光Lが照射されている場合(即ち、レーザ光Lによる溶接が行われている場合)にも、そのワークAの所定領域に含まれる接合予定部55から特徴点54(
図4参照)を数検出するために用いられ、更に、その時点において既に溶接された溶接線51(
図4参照)の位置と、その時点でのレーザ光Lの照射位置52(スポット点の位置、
図4参照)とを検出するためにも用いられる。
【0050】
教示データ33bは、使用者により教示されたワークAの溶接点又は溶接線53(
図4参照)の位置を示すデータである。ティーチペンダント23によって、使用者からワークAの溶接点又は溶接線53が教示されると、その溶接点又は溶接線53の位置情報が、ティーチペンダント23よりコントローラ30へ送信される。CPU31では、その教示した溶接点又は溶接線53の位置が、画像データ33aに基づいて検出された特徴点の位置と略一致するか否かを判断することにより、その教示した溶接点又は溶接線53が、検出された特徴点に基づいて設定されたか否かが判断される。そして、教示した溶接点又は溶接線53が、検出された特徴点に基づいて設定されたと判断されると、ティーチペンダント23から送信されたワークAの溶接点又は溶接線53の位置情報が、教示データ33bとしてRAM33に記憶される。
【0051】
現溶接線データ33cは、ワークAにレーザ光Lが照射されている期間中(即ち、レーザ光Lによる溶接が行われている期間中)に撮像される画像データ33aより検出された、その時点において既に溶接された溶接線51(
図4参照)の位置を示すデータである。CPU31によって、該期間中に撮像された画像データ33aから、既に溶接された溶接線51が検出されると、その位置情報が現溶接線データ33cとしてRAM33に記憶される。
【0052】
現スポット点データ33dは、ワークAにレーザ光Lが照射されている期間中(即ち、レーザ光Lによる溶接が行われている期間中)に撮像される画像データ33aより検出された、その時点でのレーザ光Lの照射位置52(
図4参照)の位置を示すデータである。CPU31によって、該期間中に撮像された画像データ33aから、レーザ光Lの照射位置52が検出されると、その位置情報が現スポット点データ33dとしてRAM33に記憶される。
【0053】
特徴点データ33eは、ワークAにレーザ光Lが照射されている期間中(即ち、レーザ光Lによる溶接が行われている期間中)に撮像される画像データ33aより複数検出された、ワークAの特徴点54(
図4参照)の位置を示すデータである。CPU31によって、該期間中に撮像された画像データ33aから、ワークAの接合予定部55(
図4参照)より特徴点54が複数検出されると、各々の位置情報が特徴点データ33eとしてRAM33に記憶される。
【0054】
ずれ量データ33fは、特徴点データ33eにより示される、ワークAの画像から検出された特徴点54(
図4参照)の位置と、教示データ33aにより示される溶接点又は溶接線53(
図4参照)とのずれ量57(
図4参照)を示すデータである。ワークAの溶接を行っている期間中、CPU31により、撮像素子17により撮像されたワークAの画像データ33aから検出される特徴点54の位置と、教示されたワークAの溶接点又は溶接線53の位置とのずれ量57が検出される。この検出されたずれ量57が、ずれ量データ33fとしてRAM33に記憶される。
【0055】
位置補正量データ33gは、教示データ33aにより示される、教示されたワークAの溶接点又は溶接線53の位置に対して施す位置補正の補正量58(
図4参照)を示すデータである。CPU31により検出されたずれ量(ずれ量データ33fにて示されるずれ量)57に基づいて、現溶接線データ33cにて示されるその時点で既に溶接された溶接線の位置51と、現スポット点データ33dにて示されるその時点のレーザ光LのワークAに対する照射位置52とから、特徴点データ33eにて示されるワークAの特徴点54の位置に、レーザ光Lの照射位置52が移動するように、教示されたワークAの溶接点又は溶接線53の位置を補正するための位置補正量58が、CPU31によって算出される。この位置補正量58が、位置補正量データ33gとしてRAM33に記憶される。位置補正量データ33gに記憶された位置補正量52は、ガルバノスキャナコントローラ18へ出力される。
【0056】
ここで、教示されたワークAの溶接点又は溶接線53は、元々ワークAの特徴点に沿って設定されたものである。よって、レーザ光LをワークAへ照射中(即ち、ワークAの溶接中)に検出されたワークAの特徴点54の位置に、レーザ光Lの照射位置52が移動するように、教示されたワークAの溶接点又は溶接線53の位置を補正することで、ワークAが溶接中に動いたり、同一形状の複数のワークAの間で形状にばらつきがあったとしても、所望の位置にレーザ光Lを照射することができる。従って、望ましい位置でレーザ溶接を行うことができる。
【0057】
回転量データ33hは、撮像素子回転モータ22によって撮像素子17を回転させる場合の回転量を示すデータである。コントローラ30は、撮像素子17により撮像されるワークAの画像において、そのワークAに含まれる複数の特徴点54の並びが、撮像素子17の水平走査の方向と非平行となるように、撮像素子17を回転させる。このとき、CPU31は、回転量データ33hに、撮像素子17を回転させる回転量を設定し、その回転量データ33hにより示された回転量だけ、撮像素子17が回転するように、撮像素子回転モータ22を駆動する。
【0058】
ここで、撮像素子17が回転すると、撮像素子17の各画素と、ワークAとの位置関係も回転する。よって、CPU31では、撮像素子17により撮像された画像データ33aから各画素のRAWデータを読み出す場合に回転量データ33hを確認し、撮像素子17の回転量に基づいて、読み出した画素のRAWデータがワークAのどの位置のRAWデータであるかを把握する。
【0059】
次いで、
図3及び
図4を参照して、コントローラ30により実行される、レーザ光Lの照射位置の位置補正処理について説明する。
図3は、コントローラ30のCPU31により実行される位置補正処理を示すフローチャートである。
図4(a)は、ワークAの溶接中に撮像素子17にて撮像されたワークAの画像50を模式的に示した模式図であり、
図4(b)は、その画像50の一部分を拡大して示した拡大図である。
【0060】
位置補正処理は、CPU31により、ワークAに対してレーザ光Lが照射されている期間中、即ち、ワークAの溶接が行われている期間中に、所定時間間隔(例えば10ミリ秒毎)に実行される処理である。
【0061】
位置補正処理では、まず、撮像素子回転処理が実行される(S11)。撮像素子回転処理(S11)では、撮像素子17により撮像されたワークAの画像において、そのワークAに含まれる複数の特徴点54の並びが撮像素子17の水平走査の方向と非平行となる撮像素子17の回転量を、回転量データ33hに設定する。そして、回転量データ33hに設定された回転量だけ撮像素子17が回転するように、撮像素子回転モータ22を駆動する。複数の特徴点54の並びが、撮像素子17の水平走査の方向と非平行となるか否かは、特徴点データ33bに格納された各特徴点の位置を示す情報に基づいて判断される。また、今回の位置補正処理よりも1つ前の位置補正処理にて撮像素子17により撮像された画像に含まれる複数の特徴点54bの位置に基づいて、撮像素子17の水平走査の方向と非平行となるか否かを判断してもよい。
【0062】
ここで、複数の特徴点54の並びが、撮像素子17の水平走査の方向と非平行となるように、撮像素子17を回転される理由は、以下による。一般的に、撮像素子17により撮像された画像に対する画像処理は、ラスタスキャンに基づく撮像素子17の水平走査によって読み出された画素の順番に行われる。このような状況下において、ワークAの複数の特徴点54が撮像素子17の水平走査の方向に平行に並んでいる場合、複数の走査線にまたがって画像処理を行わなければ、それが特徴点54であるのか否かの判断が行えず、特徴点54の検出に時間がかかる。これに対し、ワークAの複数の特徴点が、撮像素子17の水平走査の方向と非平行となるように、撮像素子17が撮像素子回転モータ22によって回転されるので、複数の走査線にまたがって画像処理を行わなくても特徴点54の検出を行うことができる。よって、その検出に要する時間を短縮できる。
【0063】
次いで、画像取込処理を実行する(S12)。画像取込処理(A12)では、ワークAの撮像を撮像素子17へ指示し、撮像素子17からラスタスキャンによって出力され、A/D変換器によってディジタル値に変換された各画素の画像データを、画像データ33aに格納する。
【0064】
また、この画像取込処理(S12)では、露光時間を短くして撮像素子17にて撮像したワークAの画像データと、露光時間を長くして撮像素子17にて撮像したワークAの画像データとを、連続して取り込んでいる。露光時間の異なる2つの画像データを取り込むのは、次の理由による。露光時間が長いと、レーザ光Lの強度の強い光の反射により、レーザ光Lが照射される位置付近が白飛びしてしまい、レーザ光Lの照射位置52の検出や、その照射位置52付近でのワークAに含まれる特徴点54の検出、及び、既に溶接された溶接線51の検出ができなくなる。
【0065】
一方で、露光時間を短くして、レーザ光Lの照射位置付近も白飛びなく画像を撮像した場合は、レーザ光Lの照射位置から遠い領域が黒潰れしてしまい、その領域において、ワークAに含まれる特徴点54の検出、及び、既に溶接された溶接線51の検出ができなくなる。そこで、露光時間の異なる2つの画像データを取り込むことで、レーザ光Lが照射された位置付近については露光時間の短い画像データを使用し、また、レーザ光Lが照射された位置より遠い領域については露光時間の長い画像データを使用することで、レーザ光Lの照射位置52の検出、ワークAに含まれる特徴点54の検出、及び、既に溶接された溶接線51の検出を確実に行うことができる。
【0066】
次いで、溶接線検出処理を実行する(S13)。溶接線検出処理(S13)では、S12により取り込まれた2つの画像データ33aから、既に溶接された溶接線51を画像処理にて検出し、その位置情報を現溶接線データ33cとしてRAM33に記憶する。
【0067】
次いで、レーザスポット検出処理を実行する(S14)。レーザスポット検出処理(S14)では、S12により取り込まれた2つの画像データ33aのうち露光時間の短い画像データ33aを用いて、レーザ光Lの現在の照射位置52(スポット点の位置)を画像処理にて検出し、その位置情報を現スポット点データ33dとしてRAM33に記憶する。レーザ光Lの現在の照射位置52の検出に、露光時間の短い画像データ33aを用いるので、レーザ光Lの照射位置付近は白飛びしていない。よって、画像データ33aからレーザ光Lの現在の照射位置52を正確に検出できる。
【0068】
次いで、ウィンドウ設定処理を実行する(S15)。ウィンドウ設定処理(S15)では、S12により取り込まれた画像データ33aに対して、ワークAに存在する特徴点54を検出する矩形の領域(ウィンドウ)56を設定する。具体的には、S14の処理により検出されたレーザ光Lの現在の照射位置52から、現在のレーザ光Lの移動方向に向けて、所定距離離れた位置にある所定の大きさの範囲が、ワークAの特徴点を検出する領域(ウィンドウ)56として設定される。なお、S14の処理により検出されたレーザ光Lの現在の照射位置52から、現在のレーザ光Lの移動方向に向けて、N番目(Nは自然数)の撮像素子17の走査線から、M番目(Mは自然数且つM>N)の撮像素子17の走査線までの領域を、ワークAの特徴点を検出する領域(ウィンドウ)56として設定されてもよい。
【0069】
また、領域(ウィンドウ)56の形状は、必ずしも矩形である必要はなく、その形状は任意のものであってよい。例えば、領域(ウィンドウ)56の形状として、平行四辺形がS15の処理により設定されてもよい。この場合、平行四辺形の4辺のうち、平行する2辺の傾きが、使用者により教示された溶接点又は溶接線53の傾きと略平行となるようにしてもよい。または、S12の処理により取り込まれた画像データ33aから、ワークAの接合予定部55を検出し、平行する2辺の傾きが接合予定部55の傾きと略平行となる平行四辺形を、領域(ウィンドウ)56をして設定してもよい。これにより、ワークAの特徴点54を検出する領域(ウィンドウ)が余分に広く設定されることを抑制できるので、特徴点54の検出に係る時間を短くでき、また、誤検出が発生する可能性を低く抑えることができる。また、領域(ウィンドウ)56の形状として、溶接点又は溶接線53を中心として、又は、検出したワークAの接合予定部55を中心として、複数の矩形を並べた形状を設定してもよい。これによっても、ワークAの特徴点54を検出する領域(ウィンドウ)が余分に広く設定されることを抑制できるので、特徴点54の検出に係る時間を短くでき、また、誤検出が発生する可能性を低く抑えることができる。更に、領域(ウィンドウ)56の大きさを、その領域(ウィンドウ)56が設定される接合予定部55のワークAにおける場所(ワークAの中央か、端か、等)に応じて、変化させてもよい。これにより、領域(ウィンドウ)56が設定される接合予定部55のワークAにおける場所がワークAの中央部であれば、領域(ウィンドウ)56の大きさを大きくして、多くの特徴点54を検出することにより、特徴点54の位置と、使用者により教示されたワークAの溶接点又は溶接線53の位置とのずれ量57をより正確に検出できる。一方、領域(ウィンドウ)56が設定される接合予定部55のワークAにおける場所がワークAの端部であれば、領域(ウィンドウ)56の大きさを小さくして、端部により特徴点が誤検出されることを抑制できる。
【0070】
次いで、特徴点検出処理を実行する(S16)。特徴点検出処理(S16)では、S12の処理により取り込まれた2つの画像データ33aから、S15の処理により設定された領域(ウィンドウ)56に含まれる、ワークAの接合予定部55を検出し、その接合予定部55から特徴点54を複数検出する。ここで、領域(ウィンドウ)56のうち、S14の処理により検出されたレーザ光Lの現在の照射位置52が近い領域については、露光時間の短い画像データ33aを使用して、特徴点54を検出する。また、領域(ウィンドウ)56のうち、S14の処理により検出されたレーザ光Lの現在の照射位置52が遠い領域については、露光時間の長い画像データ33aを使用して、特徴点54を検出する。これにより、領域(ウィンドウ)56を、レーザ光Lの現在の照射位置52から近い領域から遠い領域に広く設定しても、その領域(ウィンドウ)56に存在する特徴点54の位置を確実に検出できる。
【0071】
次いで、ずれ量検出処理を実行する(S17)。ずれ量検出処理(S17)では、S16の処理により検出されたワークAの複数の特徴点54の位置と、教示データ33bにより示される、使用者により教示されたワークAの溶接点又は溶接線53の位置とのずれ量57を、特徴点54毎に検出する。そして、検出した特徴点54毎のずれ量57を、ずれ量データ33fとしてRAM33に記憶する。
【0072】
次いで、位置補正量算出処理を実行する(S18)。位置補正量算出処理(S18)では、教示データ33aにより示される、使用者により教示されたワークAの溶接点又は溶接線53の位置に対して施す位置補正の補正量を次の通りに算出する。即ち、ずれ量データ33fにて示される複数のずれ量に基づいて、現溶接線データ33cにて示される既に溶接された溶接線の位置51と、現スポット点データ33dにて示されるその時点のレーザ光Lの照射位置52とから、特徴点データ33eにて示されるワークAの特徴点54の位置に、レーザ光Lの照射位置52が移動するように、教示されたワークAの溶接点又は溶接線53の位置を補正するための位置補正量58を算出する。この算出された位置補正量58は、位置補正量データ33gとしてRAM33に記憶される。
【0073】
そして、位置補正量出力処理(S19)が実行され、位置補正処理を終了する。位置補正量出力処理(S19)では、位置補正量データ33gに記憶された位置補正量58を、ガルバノスキャナコントローラ18へ出力する。ガルバノスキャナコントローラ18は、コントローラ30より位置補正量58を受信すると、その位置補正量58を加味して、使用者より教示されていたワークAの溶接点又は溶接線53の位置を補正し、補正後のワークAの溶接点又は溶接線の位置へレーザLが照射されるよう、X軸変位モータ20a及びY軸変位モータ20bを駆動する。
【0074】
以上説明した通り、本実施形態におけるレーザ溶接装置Sによれば、ワークAに存在する特徴点に基づき、使用者により教示されたワークAに対するレーザ光の溶接点又は溶接線53の位置が、教示データ33bとしてRAM33に記憶される。教示データ33bにて示される溶接点又は溶接線53に基づいて、レーザ発振器10より出力されたレーザ光LがワークAに照射されるように、ガルバノスキャナコントローラ18により制御が行われる。また、ワークAが、撮像素子17により撮像される。撮像されたワークAの画像データ33aより、レーザ光Lの照射位置52がレーザスポット検出処理(S14)により検出され、ワークAの特徴点54の位置が、特徴点検出処理(S16)により検出される。その検出されたワークAの特徴点54の位置と、教示された溶接点又は溶接線53とのずれ量57が、ずれ量検出処理(S17)により検出される。その検出されたずれ量57と、レーザスポット検出処理(S14)により検出されたレーザ光Lの照射位置52とに基づいて、教示された溶接点又は溶接線53に基づくレーザ光Lの照射位置52を補正するための位置補正量58が位置補正量算出処理(S18)によって算出される。そして、その算出された位置補正量58がガルバノスキャナコントローラ18に出力され、ガルバノスキャナコントローラ18によって、教示された溶接点又は溶接線53に元ずくレーザ光Lの照射位置52が補正されて、レーザ発振器10より出力されたレーザ光LがワークAに照射されるように、ガルバノスキャナ20が制御される。これにより、使用者により教示された溶接点又は溶接線53は、ワークAに存在する特徴点54に基づいて予め設定されたものである一方、撮像素子17により撮像された画像データ33aにより、ワークAの特徴点54の位置が検出され、その特徴点54の位置と、教示された溶接点又は溶接線53とのずれ量に基づいて、レーザ光Lの照射位置52を補正できる。よって、レーザ光Lの照射位置52を、実際のワークAの特徴点54の位置に合わせて補正できるので、望ましい位置でレーザ溶接を行うことができる。
【0075】
また、特徴点検出処理(S15)によって、複数の特徴点54の位置が検出されるので、この複数の特徴点54の位置と、教示された溶接点又は溶接線53とから、ずれ量57を精度よく算出できる。よって、教示された溶接点又は溶接線53に基づくレーザ光Lの照射位置52を補正するための位置補正量58を、実際のワークAの特徴点54の位置に、より正確に合わせることができるので、望ましい位置でのレーザ溶接をより確実に行うことができる。
【0076】
また、レーザスポット検出処理(S14)により検出されたレーザ光の照射位置52から所定距離離れた領域(ウィンドウ)56に含まれる特徴点54の位置が、特徴点検出処理(S15)により検出される。これにより、その時点でのレーザ光Lの照射位置52から、常に所定距離離れた領域(ウィンドウ)56にあるワークAの特徴点54の位置と、教示された溶接点又は溶接線53とのずれ量が算出され、そのずれ量に基づいてレーザ光Lの照射位置52が補正されるので、その補正の精度を一定に保たせることができる。
【0077】
また、画像取込処理(S12)において、露光時間の短い画像と露光時間の長い画像とが撮像素子17にて撮像され、画像データ33aとして取り込まれる。ワークAにより、レーザ光Lの照射位置52から近い領域から反射される光は、そのレーザ光Lによって高輝度となるが、撮像時の露光時間が短く設定されるので、レーザ光Lの照射位置52から近い領域を白飛びさせることなく画像を撮影できる。これにより、特徴点54を検出するための領域(ウィンドウ)56を、レーザ光Lの照射位置52から近い領域を含めて設定したとしても、そのレーザ光Lの照射位置52から近い領域にある特徴点の位置を、露光時間の短い画像データ33aを利用して確実に検出できる。また、特徴点54を検出するための領域(ウィンドウ)56が、レーザ光Lの照射位置52から遠い領域を含む場合であっても、そのレーザ光Lの照射位置52から遠い領域にある特徴点の位置を、露光時間の長い画像データ33aを利用して確実に検出できる。よって、レーザ光Lの照射位置52に近い特徴点54を含めて、その特徴点54の位置と、教示された溶接点又は溶接線53とのずれ量が算出され、そのずれ量に基づいてレーザ光Lの照射位置52が補正されるので、その照射位置52の補正を滑らかに行うことができる。
【0078】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、
図1に、レーザ溶接装置Sの構成を示したが、そのレンズやミラーの配置は、レーザ溶接装置Sの構成によって適宜変更されてよい。また、
図2に、本発明の一実施形態であるコントローラ30の電気的構成を示したが、
図3に示した処理を実現できるものであれば、その電気的構成は
図2に示したものに何ら限定されるものではない。
【0079】
また、上記実施形態では、X−Y2軸のガルバノスキャナ20を用いて、ワークAに照射されるレーザ光Lの照射位置52を変位させるレーザ溶接装置Sについて説明したが、X−Y−Z3軸のガルバノスキャナを用いて、ワークに照射されるレーザ光の照射位置を変位させるレーザ溶接装置に対して、本発明を適用してもよい。また、多関節ロボットにレーザ光を照射する単眼ヘッドを搭載し、多関節ロボットを移動させることで、ワークに照射されるレーザ光の照射位置を変位させるレーザ溶接装置に対して、本発明を適用してもよい。また、レーザ光を変位させるのではなく、ワークが設置されるテーブルをX−Y2軸、X−Y−Z3軸又は5軸に移動させることで、ワークに照射されるレーザ光の照射位置を変位させるレーザ溶接装置に対して、本発明を適用してもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、ワークAに照射されるレーザ光Lの照射位置52を2次元に変位可能としたレーザ溶接装置に対して、本発明を適用した場合について説明したが、単眼ヘッドからワークに対してレーザ光を照射し、その単眼ヘッド又はワークが設置されるテーブルを一方向に移動させてレーザ溶接を行うレーザ溶接装置に対しても、本発明は適用可能である。この場合、検出されたワークの特徴点の位置と、教示された溶接点又は溶接線とに、ずれ量が検出されると、検出されたワークの特徴点の位置にレーザ光が照射されるように、ワークの溶接線方向に対して直角方向にレーザ光の照射位置を移動させるべく、位置補正量を算出してもよい。そして、その位置補正量に基づいて、単眼ヘッド又はテーブルを、溶接線方向に対して直角方向に移動させるようにしてもよい。