【解決手段】変速手段を内蔵するモータ14により駆動される回転主軸12に装着されたタップ18の回転動作と、ワークWに対するタップの回転軸線方向の相対送り動作とを同期させて、ワークにタップ加工を行うタップ加工の制御方法が、タップ加工に先立ち、タップの加工距離、低速高トルク駆動時及び高速低トルク駆動時のそれぞれの加速度、並びに低速高トルク駆動と高速低トルク駆動のそれぞれに対する最高回転速度を読み込む段階、読み込んだデータに基づいて、一つのタップ穴に対する低速高トルク駆動時及び高速低トルク駆動時のそれぞれの最短のタップ加工時間TL、ТHを算出する段階、並びに算出したタップ加工時間の短い方の回転速度でタップ穴に対してタップ加工を行う段階、を含む。
低速高トルク駆動と高速低トルク駆動とを切り替え可能な変速手段を内蔵するか又は前記変速手段に連結されたモータにより駆動される回転主軸に装着されたタップの回転動作と、ワークに対する前記タップの回転軸線方向の相対送り動作とを同期させて、前記ワークにタップ加工を行うタップ加工の制御方法において、
タップ加工に先立ち、前記タップの加工距離、前記低速高トルク駆動時及び前記高速低トルク駆動時のそれぞれの加速度、並びに前記低速高トルク駆動と前記高速低トルク駆動のそれぞれに対する最高回転速度を読み込む段階、
読み込んだデータに基づいて、一つのタップ穴に対する前記低速高トルク駆動時及び前記高速低トルク駆動時のそれぞれの最短のタップ加工時間を算出する段階、並びに
算出した前記タップ加工時間の短い方の回転速度で前記タップ穴に対してタップ加工を行う段階、を含むことを特徴としたタップ加工の制御方法。
前記変速手段は、モータの切り替え可能な低速巻線及び高速巻線であるか、又は前記モータに連結される機械式の2段変速機である、請求項1に記載のタップ加工の制御方法。
前記算出する段階において算出された前記低速高トルク駆動時及び前記高速低トルク駆動時のそれぞれの最短のタップ加工時間を表示する段階を更に含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のタップ加工の制御方法。
前記算出したタップ加工時間の短い方の回転速度と加工プログラムの指令回転速度とが異なるときは、前記算出したタップ加工時間の短い方の回転速度が指令回転速度となるよう加工プログラムを書き替える、請求項1〜4のいずれか一項に記載のタップ加工の制御方法。
低速高トルク駆動と高速低トルク駆動とを切り替え可能な変速手段を内蔵するか又は前記変速手段に連結されたモータにより駆動される回転主軸に装着されたタップの回転動作と、ワークに対する前記タップの回転軸線方向の相対送り動作とを同期させて、前記ワークにタップ加工を行う際のタップ加工の制御を行うタップ加工制御装置において、
タップ加工に先立ち、前記タップの加工距離、前記低速高トルク駆動時及び前記高速低トルク駆動時のそれぞれの加速度、並びに前記低速高トルク駆動と前記高速低トルク駆動のそれぞれに対する最高回転速度を読み込んで記憶する読込み記憶部、
読み込んだデータに基づいて、一つのタップ穴に対する前記低速高トルク駆動時及び前記高速低トルク駆動時のそれぞれの最短のタップ加工時間を算出するとともに、
算出した前記タップ加工時間の短い方の回転速度で前記タップ穴に対するタップ加工を指示する演算処理部、を具備することを特徴としたタップ加工制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態によるタップ加工の制御方法について説明する。
図1に、本発明の実施形態によるタップ加工の制御方法を実施することのできる立形の工作機械の主軸頭10の模式的な正面図が示されている。主軸頭10の内部には主軸12をC
S軸方向に回転させる主軸モータ14が内蔵されている。主軸12の先端にはタップ18が装着されている。主軸モータ14は巻線切替モータであって、その巻線16は、切替可能な低速巻線と高速巻線とから構成されている。低速巻線と高速巻線は本発明における変速手段である。低速巻線を利用すると相対的に低速高トルク駆動が可能になり、高速巻線を利用すると相対的に高速低トルク駆動が可能になる。工作機械は主軸頭10をZ軸方向に駆動するZ軸送りモータ(図示せず)を具備するZ軸駆動装置(図示せず)も具備している。
【0012】
主軸モータ14とZ軸送りモータは、ワークWにあけられた下穴19に対して同期タップ加工を行うために、制御装置からの指令を受けて主軸12のCs軸方向の回転とZ軸方向の送りとが同期するように制御される。本実施形態では、同期タップ加工の際のZ軸送りモータの制御は公知のやり方で実施されるので説明は省略し、主軸モータ14の制御方法について説明する。
【0013】
図2は、ある一つのタップ穴に対して同期タップ加工(以下、単に「タップ加工」ということがある)を行った場合の、主軸モータ14の低速巻線及び高速巻線による回転速度Vの時間的な変化を模式的に示すグラフである。図中、低速巻線の到達回転速度V
Lと高速巻線の到達回転速度V
Hが示されている。これら到達回転速度V
L、V
Hは、あるタップ穴の加工中の回転速度の最大値であって、指令回転速度になり得るものである。低速巻線の到達回転速度V
Lは予め定められた巻線切替速度Vs以下の値をとり、高速巻線の到達回転速度V
Hは巻線切替速度Vsを超える値をとる。
【0014】
図2においては、台形波が低速巻線を利用した場合を示し、三角波が高速巻線を利用した場合を示している。但し、低速巻線を使った場合でも三角波の場合があり、また高速巻線を使った場合でも台形波の場合がある。三角波になるか台形波になるかは、例えばタップ加工距離等の条件によって決まる。
【0015】
図2からは、低速巻線による低速高トルク駆動及び高速巻線による高速低トルク駆動が可能であることがわかる。また、
図2からは、速度0から高速巻線の到達回転速度V
Hに到達するには高速巻線だけが用いられることがわかる。換言すると、途中の例えば巻線切替速度Vsまでは低速巻線が使われてその後高速巻線に切り替えられるわけではないことがわかる。
【0016】
図2では、タップ加工の行程の往路の回転速度がプラス側に示され、復路のそれがマイナス側に示されている。
図2における往路と復路の波形は点BPに関して点対称である。点BPは、回転速度が0の位置を示し、したがってタップ18の行程の最下位値に対応している。
図2の加速時間Ta
L、Ta
Hと減速時間Td
L、Td
Hはそれぞれ等しくはなく、加速時間Ta
L、Ta
Hが減速時間Td
L、Td
Hよりも短い。これは、低速巻線と高速巻線の両方に当てはまる。また、
図2の台形又は三角形の往路と復路の面積の合計がタップ加工の際のタップ18の往復の加工距離あるいは総回転回数Rtを示している。タップ18の総回転回数Rtは、加工プログラムから読み込まれるタップ18の加工距離とピッチから算出できる。ここで、タップ18の加工距離とは、Z軸送り軸が同期送りを行っている間のタップ18のZ軸方向の移動距離を意味し、タップ18の先端がワークWの表面に接触するまでの移動距離も含んでいる。
【0017】
図2で示される例では、低速巻線の加工時間TLが高速巻線の加工時間THよりも短い。従って、
図2が想定するタップ穴に対しては、低速巻線による到達回転速度V
Lをタップ18の回転速度として主軸モータ14に指令することが加工時間短縮の観点から有利であることが分かる。但し、低速巻線を利用したときと高速巻線を利用したときのどちらの加工時間が短くなるかは、使用するモータの加速度特性、タップ18の加工距離の長短すなわち総回転回数Rtの多寡、モータのそれぞれの巻線利用時の最大回転速度、及びタップ18の許容周速度等の複数の条件によって異なってくる。本発明の実施形態による方法は、それら複数の条件を考慮して、最短の加工時間を生み出す主軸回転速度を決定することができる。
【0018】
以下、本発明の実施形態によるタップ加工の制御方法について、その一例を示す
図3のフロー図等を参照して以下に説明する。この制御方法は、工作機械の機械制御装置の構成要素として準備されたタップ加工制御装置によって実施される。
【0019】
タップ加工制御装置は、最初に、NCパラメータを読み込む(ステップS10)。ここで読み込まれるNCパラメータは、低速巻線に対する最高回転速度Vs及び高速巻線に対する最高回転速度Vmax、並びに低速及び高速巻線利用時のそれぞれの加速度αa、αdである。低速巻線に対する最高回転速度Vsは巻線切替速度Vsとも呼ばれる。
【0020】
次に、低速及び高速巻線利用時のそれぞれの、例えば10[rev/min]程度のステップで配列された回転速度V
i(iは1からnの整数)毎の加速時間Taと減速時間Td及び加減速回転回数Rgを計算する(ステップS20)。加速時間Taと減速時間Td及び加減速回転回数Rgは、回転速度V
i毎の既知の加速度αa又はαdに基づいて計算される。計算結果は表としてタップ加工制御装置内に保存される。表1及び表2はそのように作成された表であって、表1は低速巻線、表2は高速巻線の場合の表である。表1におけるVsは巻線切替速度すなわち低速巻線を利用した場合の設定された最高回転速度を表し、表2におけるVmaxは高速巻線の最高回転速度を表している。
【表1】
【表2】
【0021】
ところで主軸モータ14の加速度は、本実施形態では、モータの出しうる最大の出力(トルク)を使って加減速するため厳密には必ずしも一定ではなく、特に低速巻線では加速度が一定ではない回転速度の領域も利用され、また速度指令に対する遅れ時間も存在すること等から、上述したように例えば10[rev/min]程度のステップの回転速度毎に、予め入手した加速度のデータを基に加速時間Taと減速時間Td及び加減速回転回数Rgが算出されて、表としてタップ加工制御装置内に保存される。これによって加減速回転回数Rgの算出の精度が高まるとともに全体の処理時間を短縮することが可能になる。
【0022】
次に、工具データ及び加工プログラムを読み込む(ステップS30)。具体的には、タップ18の、径、加工距離、ピッチ、及び許容周速度が加工プログラムから読み込まれる。
【0023】
次に、タップ18の加工距離とピッチから、加工に必要な回転回数、即ち総回転回数Rtを算出する(ステップS40)。総回転回数Rtは、本来は
図2のグラフの往路と復路の領域の合計に相当するものであるが、前記往路と復路の領域は点BPに関して対称で等しいので、ここでは往路における回転回数を総回転回数Rtとして説明する。
【0024】
次に、低速巻線及び高速巻線使用時のそれぞれの到達回転速度V
L、V
Hを決定する(ステップS50)。より詳しくは、ここでは、可能な到達回転速度V
L、V
Hの最大値を決定する。到達回転速度V
L、V
Hは、低速巻線については総回転回数Rtと巻線切替速度に関する加減速回転回数Rgsとの大小関係によって、及び高速巻線については総回転回数Rtと最高回転速度Vmaxに関する回転回数Rgmaxとの大小関係に応じて以下の(1)〜(4)のやり方で決定される。
【0025】
最初に低速巻線を利用した場合の可能な到達回転速度V
Lの最大値を決定する。
(1)Rt≧Rgsの場合
この場合の到達回転速度V
Lは、巻線切替速度Vsとタップ18の許容回転速度Vcの小さい方と決定される。ここで、タップ18の許容回転速度Vcは、タップ18の許容周速度に基づいて決められた値である。
(2)Rt<Rgsの場合
この場合の到達回転速度V
Lは、表1の回転速度V
iとタップ18の許容回転速度Vcの小さい方と決定される。
そこで、表1のV
iを選択するために、総回転回数Rtを満たす表1の加減速回転回数Rg
iLを選択する。より詳しくは、総回転回数Rt以下であり且つ総回転回数Rtに最も近い加減速回転回数Rg
iLを表1から選択する。そして、選択した加減速回転回数Rg
iLに対応する回転速度V
iとタップ18の許容回転速度Vcの小さい方を低速巻線の場合の到達回転速度V
Lとする。なお、この場合、選択した加減速回転回数Rg
iLは必要な総回転回数Rtとは通常は一致しないので、その差分を考慮して到達回転速度V
Lを微修正することが好ましい。
【0026】
次に、高速巻線を利用した場合の可能な到達回転速度V
Hの最大値を決定する。
(3)Rt≧Rgmaxの場合
この場合の到達回転速度V
Hは、最高指令回転速度Vmaxとタップ18の許容回転速度Vcの小さい方と決定される。
ここで、Rgmaxは、表2に示されるように、最高回転速度Vmaxに関する加減速回転回数である。
(4)Rt<Rgmaxの場合
この場合の主軸12の到達回転速度V
Hは、表2の回転速度V
iとタップ18の許容回転速度Vcの小さい方と決定される。
そこで、表2のV
iを選択するために、総回転回数Rtを満たす表2の加減速回転回数Rg
iHを選択する。より詳しくは、総回転回数Rt以下であり且つ総回転回数Rtに最も近い加減速回転回数Rg
iHを表2から選択する。そして、選択した加減速回転回数Rg
iHに対応する回転速度V
iとタップ18の許容回転速度Vcの小さい方を高速巻線の場合の到達回転速度V
Hとする。なお、この場合、選択した加減速回転回数Rg
iHは必要な総回転回数Rtとは通常は一致しないので、その差分を考慮して到達回転速度V
Hを微修正することが好ましい。
【0027】
次に、決定された低速巻線及び高速巻線それぞれの到達回転速度V
L、V
H、及びそれに対応する加速時間Ta
L、Ta
Hと減速時間Td
L、Td
H、及び総回転回数Rtから低速巻線の場合の加工時間TL及び高速巻線の場合の加工時間THを計算する(ステップS60)。
【0028】
計算した加工時間TL及びТHを例えば機械制御装置の表示装置に表示してもよい。なお、ここで得られる加工時間TL及びТHは往路の時間であるが、往路と復路の合計時間が必要であれば求めた時間を2倍すればよい。
【0029】
次に、計算された低速巻線による加工時間TLと高速巻線による加工時間THの大小を比較して(ステップS70)、低速巻線による加工時間TLが高速巻線による加工時間TH以下であれば、ステップS50で決定された低速巻線による到達回転速度V
Lを主軸回転速度として送出し(ステップS80)、そうではなく高速巻線による加工時間THが低速巻線による加工時間TL未満であればステップS50で決定された高速巻線による到達回転速度V
Hを主軸回転速度として送出する(ステップS90)。本実施形態では、選択された到達回転速度V
L又はV
Hは加工プログラムへ送出され、加工プログラムが書き替えられる。その結果、タップ加工時間の短い方の主軸回転速度でタップ加工が行われる。但し、選択された到達回転速度V
L又はV
Hの情報を表示するだけで加工プログラムを書き替えない実施形態も本発明において可能である。
【0030】
本実施形態のタップ加工の制御方法によると、径や深さの異なる多数のタップ加工箇所があったとしても、それら全てのタップ加工箇所について最短の加工時間が得られる主軸12の回転速度を加工プログラム作成者の手を煩わせることなく正確に決定することが可能になる。実際、低速巻線による場合と高速巻線による場合の加工時間の差が1秒以下である場合もしばしばであるが、そのような僅かな差であっても、タップ加工箇所の多い例えば自動車エンジンのシリンダブロックのようなワークWに対しては大きな効果を生み出すことができる。
【0031】
前述の実施形態においては、処理時間を短縮する等の目的で、所定のステップ間隔の回転速度V
i毎に加減速回転回数Rg等を算出して表1及び表2として準備していたが、本発明においては、モータの各巻線の加速度のデータ等が定まっているなら、そのような表を準備することなく各巻線の最短の加工時間TL及びTHを算出する他の実施形態も可能であることが理解されよう。
【0032】
加工時間TL及びTHを算出する他の実施形態を説明する。
図5は、代表的な工作機械の主軸モータのトルクと回転速度との関係線図であり、
図6は、主軸モータの出力と回転速度との関係線図である。これらの線図は工作機械において既知のものである。また、主軸に最大タップが取り付けられたときの主軸モータに作用する負荷イナーシャI[Kgm
2]も既知の一定の値である。任意の主軸回転速度Vn[rev/min]におけるトルクをt[Nm]、出力をP[W]及び加速度をα[rev/s
2]とすると、次の2つの式が成り立つ。
I・α=t (1)
t=60・P/Vn (2)
式(1)及び(2)から
α=t/I=60・P/I・Vn (3)
となる。
図5又は
図6と式(3)を用いて、加速度と主軸回転速度との関係を線図に表すと
図7のようになる。
【0033】
図5〜
図7の各線図で、低速巻線の線図と高速巻線の線図とが交差するときの回転速度を巻線切替速度Vsと設定している。
図7において、回転速度がVsまでの領域では低速巻線の加速度線図に沿った加速度で主軸を回転させ、回転速度がVsを超えた領域では高速巻線の加速度線図に沿った加速度で主軸を回転させるのが加工時間上有利である。つまり、主軸モータの最大出力特性で加速するのが加工時間上有利である。
図7の各巻線の加速度線図に沿った加速度と主軸回転速度を用いて、主軸の回転速度の時間的変化を模式的に示す
図2のようにして、低速巻線で加工したときの加工時間TLと高速巻線で加工したときの加工時間THの演算を行う。このとき各巻線の往路の折れ線と横軸の時間T軸とで囲まれる面積が加工距離に相当する。便宜上、減速度は加速度の符号を反転させた値を用いる。復路は上下対象の形とし各加工時間TL、THの値を算出する。算出した加工時間TL、THの小さい方の巻線を選択する。ただし、タップの許容周速度に基づいて決められた許容回転速度Vcを超えないようにしなければならない。このように主軸トルク又は主軸出力と負荷イナーシャとの関係から加速度を求め、その加速度を用いて各巻線の最短の加工時間TL及びTHを算出することができる。
【0034】
図3のステップS10の説明で、最初に読み込むNCパラメータの一つに低速及び高速巻線利用時のそれぞれの加速度があると記載したが、通常、NCパラメータは実機調整によって主軸モータの出力上限に余裕を加味して決定する。これに代えて、NCパラメータの低速及び高速巻線利用時のそれぞれの加速度を、他の実施形態で説明したとおり、主軸トルク又は主軸出力と負荷イナーシャとの関係から算出することもできる。
【0035】
図4に、本発明の実施形態によるタップ加工の制御方法を実施することのできる別の立形の工作機械の主軸頭20の模式的な正面図が示されている。この例の工作機械には、巻線切替モータは使用されておらず、その代わり、外付けの主軸モータ24の動力が機械式の2段変速機26を介して主軸22に伝達される。主軸22の先端にはタップ18が装着されている。2段変速機26は切替可能な低速ギア26aと高速ギア26bを含んでいる。主軸22は、低速ギア26aにより低速高トルク駆動され、高速ギア26bにより高速低トルク駆動される。このように、低速ギア26a及び高速ギア26bは、前述の説明における巻線切替モータ16の低速巻線及び高速巻線に対応するものであるので、
図4の工作機械で実施した場合の説明は省略する。
【0036】
本発明は、タップ加工制御装置として実施することも可能である。
実施形態によるタップ加工制御装置(図示せず)は、低速高トルク駆動と高速低トルク駆動とを切り替え可能な巻線切替モータにより駆動される回転主軸に装着されたタップの回転動作と、ワークに対するタップの回転軸線方向の相対送り動作とを同期させて、ワークにタップ加工を行う際の加工制御を行うものである。
【0037】
この実施形態によるタップ加工制御装置は、タップ加工に先立ち、タップの加工距離、タップの許容周速度、低速高トルク駆動時及び高速低トルク駆動時のそれぞれの加速度α、並びに低速高トルク駆動と高速低トルク駆動のそれぞれに対する最高回転速度Vs、Vmaxを読み込んで記憶する読込み記憶部を具備する。更にタップ加工制御装置は、読み込んだデータに基づいて、一つのタップ穴に対する低速高トルク駆動時及び高速低トルク駆動時のそれぞれの最短のタップ加工時間TL及びTHを算出するとともに、算出したタップ加工時間TL及びTHの短い方の回転速度V
L又はV
Hでタップ穴に対するタップ加工を指示する演算処理部を具備する。
【0038】
演算処理部は、読み込まれた加速度のデータα及び各巻線の最高回転速度Vs、Vmaxから、例えば10[rev/min]程度のステップで配列された回転速度V
i毎の加速時間Taと減速時間Td及び加減速回転回数Rgを計算して、前述の表1及び表2を作成し、その表のデータを読み込み記憶部に記憶させるように構成されている。更に、演算処理部は、最短のタップ加工時間TL及びTHを算出するために、低速巻線の到達回転速度V
Lと高速巻線の到達回転速度V
Hを前述したやり方で決定するようにも構成されている。