【課題】複数のドラムのうちの一部のドラムを使用して印刷する際に、無製版のマスタの巻装を不要にし、かつ、印刷用紙が汚れること抑制することが可能な孔版印刷装置を提供する。
搬送経路RCに沿って搬送される印刷用紙Wに印刷する孔版印刷装置であって、第1孔版印刷部4は、回転軸41aを中心に回転駆動される第1ドラム41と、第1ドラム41に巻装される第1マスタG1と、印刷時に印刷用紙Wを第1ドラム41に押し付ける第1プレスローラ43とを備えており、第1マスタG1は、製版可能領域QAと製版不可能領域QBとを備えており、印刷制御部203は、第2孔版印刷部5のみを使用して印刷を行う場合、第1ドラム41から離間するように第1プレスローラ43を制御するとともに、製版不可能領域QBが搬送経路RCに最も近い経路近傍位置NPとなるように第1ドラム41の回転角度を制御する。
前記印刷制御部は、前記第2孔版印刷部のみを使用した印刷が中断した後、前記孔版印刷装置の電源の切断、又は、所定期間の経過を検出した場合、前記第1マスタの先端部が前記第1ドラムの前記回転軸の中心よりも上下方向において上側になるように、前記第1ドラムの回転角度を制御する
ことを特徴とする請求項4に記載の孔版印刷装置。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施例に係る孔版印刷装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。また、以下に示す実施例は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0021】
[実施例1]
<孔版印刷装置の構成>
本発明の実施例1では、2色印刷が可能な2ドラム式の孔版印刷装置を例に挙げて説明する。
図1は、本発明の実施例1に係る印刷装置が設けられた孔版印刷装置1の概略構成図である。また、以下の説明において、
図1に示すように、
図1の上下を上下方向ZDとし、
図1の左右を左右方向XDとして説明する。
【0022】
図1に示すように、孔版印刷装置1は、搬送経路RCに沿って搬送される印刷用紙Wに印刷する。孔版印刷装置1は、読取部2と、給紙部3と、第1孔版印刷部4と、第2孔版印刷部5と、製版部6と、第1排版部8と、第2排版部9と、中間搬送部10と、排紙部11と、操作パネル部120と、枚数センサ部150と、本体制御部200とを備えている。
【0023】
読取部2は、孔版印刷装置1の上部に設けられ、図示しないコンタクトガラス上に載置された原稿から製版画像データを読み取る。
【0024】
給紙部3は、印刷用紙Wが積層される給紙台31と、この給紙台31から最上位置の印刷用紙Wのみを搬送させる1次給紙ロール32と、この1次給紙ロール32によって搬送された印刷用紙Wを後述する第1孔版印刷部4の第1ドラム41の回転に同期して第1ドラム41と第1プレスローラ43間に搬送する一対の2次給紙ロール33とを備える。
【0025】
製版部6は、ロールされた長尺状のマスタGを収容する原紙収容部61と、この原紙収容部61の搬送下流に配置され、マスタGを加熱穿孔するサーマルヘッド62と、このサーマルヘッド62の対向位置に配置されたプラテンロール63と、このプラテンロール63及びサーマルヘッド62の搬送下流に配置された一対の原紙送りロール64と、一対の原紙送りロール64の搬送下流に配置された原紙カッタ65とを有し、読取部2により読み取られた製版画像データに基づいて製版を行う。
【0026】
また、製版部6は、図示しないレールによって
図1におけるX1方向に移動自在に支持されており、第1孔版印刷部4に製版したマスタGを供給する位置と、第2孔版印刷部5に製版したマスタGを供給する位置とを選択的に移動可能である。
【0027】
第1排版部8は、後述する第1孔版印刷部4の第1ドラム41の近傍に設けられており、第1ドラム41の外周面より開放(排版)されたマスタGを第1ドラム41より引き剥がし、引き剥がされたマスタGを排版ボックス(不図示)内に収納する。なお、第2排版部9は、第1排版部8と同様の構成を備える。
【0028】
第1孔版印刷部4は、外周面にインクを内方から滲出可能な開孔部が周方向に沿って設けられ、ドラム駆動モータ48(
図2参照)の駆動力によって
図1の矢印に示す回転方向Aに回転軸41aを中心に回転駆動される第1ドラム41と、第1ドラム41に巻装され、穿孔により製版画像が形成される第1マスタG1と、第1ドラム41との間でマスタGの先端部を把持又は開放するように回動する第1原紙クランプ部45と、第1ドラム41の下方位置に配置され、印刷時に印刷用紙Wを第1ドラム41に向けて押し付ける第1プレスローラ43とを備えている。
【0029】
そして、第1孔版印刷部4は、製版部6から搬送される第1マスタG1の先端部を第1原紙クランプ部45でクランプし、このクランプした状態で第1ドラム41を回転してマスタGが第1ドラム41の外周面に巻装され、第1ドラム41の回転に同期して搬送されてくる印刷用紙Wを第1プレスローラ43にて第1ドラム41のマスタGに押圧することによって印刷用紙WにマスタGの穿孔部分からインクが押し出されて製版画像が印刷用紙Wの表面に印刷される。
【0030】
また、第1孔版印刷部4は、第1ドラム41の用紙搬送下流側の近傍に配置された分離爪81と分離ノズル82と分離ファン83を備える。分離爪81は、第1ドラム41の外周面とこれに貼り付いた状態で搬送されてくる印刷用紙Wの先端との間に挿入されるようになっている。これによって、第1ドラム41の外周面に貼り付いて回転しようとする印刷用紙Wを強制的に第1ドラム41の外周面から引き剥がすようになっている。
【0031】
分離ファン83は印刷用紙Wを第1ドラム41から分離するための分離エアーを発生させる。分離ファン83により発生させた分離エアーは、分離ノズル82より、第1ドラム41の外周面とこれに貼り付いた状態で搬送されてくる印刷用紙Wとの間に吹き付けられる。分離ファン83は第1ドラム41の回転中は常に駆動され、この分離エアーによって、分離爪81に設けられたエアーノズルから吐出される先端分離エアーにより先端部だけを引き剥がされた印刷用紙Wの全体を強制的に第1ドラム41の外周面から引き剥がすようになっている。
【0032】
第1プレスローラ43が第1ドラム41に押圧することによって画像が印刷され、分離爪81及び分離ノズル82により、第1ドラム41の外周面から引き剥がされた印刷用紙Wは、中間搬送部10により搬送される。
【0033】
中間搬送部10は、一対のベルト掛けプーリ101,101と、この一対のベルト掛けプーリ101,101に掛けられた無端ベルト102と、この無端ベルト102の用紙搬送面に印刷用紙Wを吸引する吸引ファン103と、無端ベルト102を移動させるベルト駆動手段(図示せず)とを備えている。また、中間搬送部10は第1ドラム41から剥離された印刷用紙Wを受け取り、受け取った印刷用紙Wを第2ドラム51の回転に同期して第2ドラム51と第2プレスローラ53間に給紙するようになっている。そのため、無端ベルト102は、給紙部3により搬送された印刷用紙Wの搬送速度と同じ速度で印刷用紙Wが搬送されるように移動する。
【0034】
第2孔版印刷部5は、第1孔版印刷部4と同様に、第2ドラム51の回転に同期して一対の2次給紙ロール54より給紙される印刷用紙Wを第2プレスローラ53で第2ドラム51に巻装された第2のマスタに押圧することによって、第2のマスタの穿孔からインクが押し出されて画像が印刷用紙Wに印刷されるようになっている。
【0035】
また、第2孔版印刷部5は、第2ドラム51に接触して設けられ、第2ドラム51の用紙搬送下流側の近傍に配置された分離爪71と分離ノズル72と分離ファン73とを備える。なお、第2孔版印刷部5に備えられる分離爪71と分離ノズル72と分離ファン73の構成は、第1孔版印刷部4に備えられる分離爪81と分離ノズル82と分離ファン83との構成と同様の構成を備える。
【0036】
排紙部11は、印刷された印刷用紙Wが搬送される排紙ベルト111と、排紙ベルト111より排紙される印刷用紙Wが積置される排紙台112とを備える。
【0037】
操作パネル部120は、操作キーや表示/入力パネル(いずれも不図示)を備えており、ユーザによって操作キーが押下操作され、又は表示/入力パネルがタッチ操作されることによって、孔版印刷装置1の各種設定に関する設定データ等を含む操作データを生成し、生成した操作データを制御部200へ供給する。
【0038】
枚数センサ部150は、中間搬送部10において、第1孔版印刷部4から搬送される印刷用紙Wを1枚ずつ検出する。枚数センサ部150は、印刷用紙Wが搬送される度に、1枚の印刷用紙Wが搬送されたことを示す搬送データを本体制御部200に送信する。
【0039】
本体制御部200は、各種機能を統括制御して、印刷用紙に印刷する印刷処理を実行する。本体制御部200は、第1孔版印刷部4と第2孔版印刷部5との両方を使用した両ドラム印刷処理と、第1孔版印刷部4と第2孔版印刷部5とのうちの片方を使用した片側ドラム印刷処理とを実行する。
【0040】
ここで、
図2は、本発明の実施例1に係る孔版印刷装置1の機能構成を示したブロック図である。
【0041】
図2に示すように、本体制御部200は、取得部201と、特定部202と、印刷制御部203と、記憶部204とを備える。
【0042】
取得部201は、本体制御部200に入力される各種情報を取得する。例えば、取得部201は、印刷処理の実行を指示する印刷ジョブを取得する。また、取得部201は、印刷ジョブに含まれる製版画像データを取得する。製版画像データは、第1マスタG1及び第2マスタG2において、穿孔により形成する製版画像を示すデータである。なお、取得部201は、読取部2によって読み取られ、記憶部204に記憶された製版画像データを取得してもよいし、孔版印刷装置1に接続されるパーソナルコンピュータなどの外部端末(不図示)から製版画像データを取得してもよい。
【0043】
特定部202は、第1ドラム41に巻装される第1マスタG1と、第2ドラム51に巻装される第2マスタG2とにおいて、製版可能領域QAと、製版不可能領域QBとを特定する。なお、製版可能領域QAは、穿孔により製版画像を形成可能な領域であり、製版不可能領域QBは、製版画像を形成不可能な領域である。
【0044】
ここで、
図3は、第1ドラム41に巻装される第1マスタG1を説明する平面展開図である。なお、
図3に示すように、第1マスタG1には、副走査方向VDと主走査方向MDとが規定されている。また、第1マスタG1が第1ドラム41に巻装されると、副走査方向VDは、第1ドラム41の回転方向Aとなる。
【0045】
図3に示すように、第1マスタG1は、クランプ領域QT1、QT2と、製版可能領域QAと、製版不可能領域QBとを備えている。なお、第2ドラム51に巻装される第2マスタG2も、クランプ領域QT1、QT2と、製版可能領域QAと、製版不可能領域QBとを備えているが、以下では、第1マスタG1に着目して説明する。
【0046】
クランプ領域QT1、QT2と製版可能領域QAと製版不可能領域QBとは、副走査方向VDに区画形成されており、主走査方向MDに帯状に延びる。
【0047】
クランプ領域QT1、QT2は、第1原紙クランプ部45によってクランプされる領域である。第1マスタG1が第1ドラム41に巻装されると、第1マスタG1の先端部E1と後端部E2とが粘着テープなどの連結部材によって連結されるとともに、クランプ領域QT1とクランプ領域QT2とが、第1原紙クランプ部45によってクランプされる。クランプ領域QT1、QT2の副走査方向VDにおける長さは、例えば、15mm〜20mmである。
【0048】
製版可能領域QAは、
図3の例に示すように、例えば“Z”で示される文字や図形などの製版画像を穿孔により形成可能な領域である。
【0049】
製版不可能領域QBは、第1マスタG1を第1ドラム41に巻装する際に余白として確保されている領域である。すなわち、製版不可能領域QBは、穿孔しないように規定した無穿孔領域と言い換えられる。例えば、製版不可能領域QBの副走査方向VDにおける長さαは、40mmである。
【0050】
また、第1マスタG1が第1ドラム41に巻装された場合、製版不可能領域QBは、第1ドラム41に装着された第1マスタG1の副走査方向VDにおいて、第1マスタG1の中心線CLよりも第1マスタG1の先端部側に位置している。また、製版可能領域QAと、製版不可能領域QBとは、いずれも第1マスタG1において予め所定位置に規定されている領域である。
【0051】
特定部202は、例えば、操作パネル部120を用いてユーザにより入力された設定データに基づいて、第1ドラム41の外周面上又は第2ドラム51の外周面上において、所定位置(例えば、先端部E1)を角度基準とした製版可能領域QAの中心線NLの回転角度を記憶部204に記憶する。
【0052】
印刷制御部203は、第1孔版印刷部4と第2孔版印刷部5とを制御する。印刷制御部203は、第1孔版印刷部4のドラム駆動モータ48を制御することにより第1ドラム41の回転角度を制御する。また、印刷制御部203は、第1孔版印刷部4のローラ駆動モータ49を制御することにより、第1孔版印刷部4の第1プレスローラ43を第1ドラム41に押し付ける、又は、離間させる。印刷制御部203は、第2孔版印刷部5に対しても第1孔版印刷部4と同様に、ドラム駆動モータ58とローラ駆動モータ59とを制御することにより、第2ドラム51と第2プレスローラ53とを制御する。
【0053】
記憶部204は、孔版印刷装置1の処理に使用される各種情報を記憶する。
【0054】
<孔版印刷装置1の動作>
次に、孔版印刷装置1の動作について説明する。
図4は、孔版印刷装置1が印刷ジョブを取得して印刷処理を実行する際の動作を示すフローチャートである。
【0055】
ステップS10において、孔版印刷装置1では、取得部201が印刷ジョブを取得すると、印刷制御部203が、印刷ジョブに基づいて、片側ドラム印刷処理を実行するか否かを判定する。
【0056】
そして、ステップS20において、印刷制御部203は、片側ドラム印刷処理を実行すると判定した場合(ステップS10“Yes”)、第1孔版印刷部4又は第2孔版印刷部5のいずれかを使用して、片側ドラム印刷処理を実行する。
【0057】
一方で、ステップS30において、印刷制御部203は、片側ドラム印刷処理を実行せずに、両ドラム印刷処理を実行すると判定した場合(ステップS10“No”)、第1孔版印刷部4と第2孔版印刷部5との両方を使用して、両ドラム印刷処理を実行する。
【0058】
次に、ステップS20で実行される片側ドラム印刷処理の動作について具体的に説明する。
図5は、孔版印刷装置1が片側ドラム印刷処理を実行する際の動作を示すフローチャートである。なお、以下では、第2孔版印刷部のみを使用して片側ドラム印刷処理を実行する場合を例に挙げて説明する。
【0059】
ステップS101において、印刷制御部203は、第2孔版印刷部のみを使用して片側ドラム印刷処理を行う場合、第1孔版印刷部4において第1プレスローラ43と第1ドラム41とを制御する。具体的に、印刷制御部203は、第1ドラム41から離間するように第1プレスローラ43を制御するとともに、第1ドラム41の回転角度を制御する。
【0060】
ここで、
図6は、印刷制御部203によって回転角度が制御された第1ドラム41を説明する側面図である。
【0061】
ステップS101では、
図6に示すように、印刷制御部203は、製版不可能領域QBが搬送経路RCに最も近い経路近傍位置NPとなるように、第1ドラム41の回転角度を制御する。具体的に、まず、印刷制御部203は、第1ドラム41の頂点を角度基準とした経路近傍位置NPの回転角度βを記憶部204から読み出す。また、印刷制御部203は、製版不可能領域QBの中心線NLの回転角度(回転位置)を記憶部204から読み出す。そして、印刷制御部203は、ドラム駆動モータ48を制御して、製版不可能領域QBの中心線NLが経路近傍位置NPに配置されるように、第1ドラム41を回転駆動させる。
【0062】
なお、印刷制御部203は、製版不可能領域QBのいずれかの部分を経路近傍位置NPに配置すればよく、必ずしも製版不可能領域QBの中心線NLを経路近傍位置NPに配置しなくてもよい。
【0063】
ステップS102において、印刷制御部203は、第2孔版印刷部のみを使用して片側ドラム印刷処理を実行する。このとき、搬送経路RCに沿って搬送される印刷用紙Wは、第1孔版印刷部4において、第1ドラム41に巻装されている第1マスタG1の製版不可能領域QBに接触しながら、第1ドラム41と第1プレスローラ43との間の隙間を通過する。
【0064】
ステップS103において、印刷制御部203は、印刷ジョブに応じた片側ドラム印刷処理が終了したか否かを判定する。印刷制御部203は、片側ドラム印刷処理が終了したと判定した場合(ステップS103“Yes”)、動作を終了し、終了していないと判定した場合(ステップS103“No”)、ステップS102の動作を繰り返す。
【0065】
<作用及び効果>
以上のように、本発明の実施例1に係る孔版印刷装置1では、印刷制御部203は、第2孔版印刷部5のみを使用した片側ドラム印刷処理を行う場合、第1ドラム41から離間するように第1プレスローラ43を制御するので、印刷用紙Wは、第1プレスローラ43によって第2ドラム51に向けて押し付けられずに、第1ドラム41と第1プレスローラ43との隙間を通過して搬送される。これにより、無製版のマスタを未使用の第1ドラム41に巻装する必要がなくなる。また、印刷制御部203は、第2孔版印刷部5のみを使用した片側ドラム印刷処理を行う場合、第1マスタG1に備えられる製版不可能領域QBが経路近傍位置NPとなるように、第1ドラム41の回転角度を制御するので、搬送経路RCに沿って搬送される印刷用紙Wが、第1ドラム41の第1マスタG1の製版可能領域QAに接触してインクが付着してしまうことを抑制できる。
【0066】
このように、本発明の実施例1に係る孔版印刷装置1によれば、複数のドラムのうちの一部の第2ドラム51を使用して印刷する際に、無製版のマスタの巻装を不要にし、かつ、印刷用紙が汚れること抑制することができる。
【0067】
[実施例2]
次いで、本発明の実施例2に係る孔版印刷装置1について説明する。
【0068】
ここで、上述した実施例1では、印刷制御部203は、第1マスタG1の製版不可能領域QBが経路近傍位置NPとなるように、第1ドラム41の回転角度を制御していた。このとき、第1ドラム41と第1プレスローラ43との隙間を通過して搬送される印刷用紙Wが、第1マスタG1の製版不可能領域QBに接触する。実施例2に係る孔版印刷装置1では、印刷用紙Wが第1マスタG1の製版不可能領域QBに接触することによる破損を抑制することができる。
【0069】
図7は、実施例2に係る孔版印刷装置1が、片側ドラム印刷処理の前に実行する準備処理についての動作を示すフローチャートである。
【0070】
ステップS201において、孔版印刷装置1では、取得部201が、印刷ジョブに含まれる製版画像データを取得する。
【0071】
ステップS202において、特定部202は、製版画像データに基づいて、製版可能領域QA内から、穿孔されていない無穿孔領域を特定する。
【0072】
具体的に、特定部202は、
図3に示すように、製版可能領域QA内において、主走査方向MD(主走査方向)に穿孔されていない複数の無穿孔領域QA1〜QA2、QA4を特定する。このとき、特定部202は、一部に“Z”の文字が形成される領域QA3は、特定しない。
【0073】
ステップS203において、特定部202は、複数の無穿孔領域のうち、副走査方向VD(副走査方向)に所定長以上にわたって穿孔されていない無穿孔領域があるか否かを判定する。例えば、
図3に示すように、特定部202は、複数の無穿孔領域QA1〜QA2、QA4のうち、副走査方向VDに30mm以上にわたって穿孔されていない無穿孔領域があるか否かを判定する。
【0074】
ステップS204において、特定部202は、副走査方向VDに所定長以上にわたって穿孔されていない無穿孔領域がないと判定した場合(ステップS203“No”)、第1ドラム41に巻装される第1マスタG1には、空白領域なしとして記憶部204に記憶する。
【0075】
一方、ステップS205において、特定部202は、副走査方向VDに所定長以上にわたって穿孔されていない無穿孔領域があると判定した場合(ステップS203“Yes”)、当該無穿孔領域を空白領域として特定する。例えば、
図3に示すように、特定部202は、複数の無穿孔領域QA1〜QA2、QA4のうち、副走査方向VDに30mm以上にわたって穿孔されていない無穿孔領域QA2、QA4を空白領域として特定する。
【0076】
このようにして、特定部202は、製版画像データに基づいて、製版可能領域QA内から、製版画像を構成する穿孔が所定長(例えば、30mm)以上にわたって形成されていない空白領域を特定する。
【0077】
ステップS206において、特定部202は、空白領域として特定した無穿孔領域QA2、QA4を識別するIDと、無穿孔領域QA2、QA4の副走査方向VDにおける中心の回転角度と、耐刷可能枚数とを関連づけて記憶する。例えば、特定部202は、
図8の例に示すように、IDと回転角度と耐刷可能枚数とを関連づけて記憶する。
【0078】
次に、実施例2に係る孔版印刷装置1が印刷ジョブを取得して印刷処理を実行する際の動作を説明する。
図9は、実施例2に係る孔版印刷装置1の動作を示すフローチャートである。
【0079】
なお、
図9に示すステップS301〜S302に示す動作は、上述した実施例1において示したステップS101〜S102の動作と同様であるため、説明を省略する。
【0080】
ステップS303において、印刷制御部203は、片側ドラム印刷処理を実行中に、枚数センサ部150から印刷用紙Wが搬送される度に送信される搬送データをカウントする。
【0081】
ステップS304において、印刷制御部203は、カウントした搬送データをに基づいて、印刷用紙Wの搬送枚数が所定枚数に達したか否かを判定する。なお、印刷制御部203は、印刷用紙Wの搬送枚数が所定枚数に達しないと判定した場合(ステップS304“No”)、ステップS302の動作を行う。
【0082】
一方、ステップS305において、印刷制御部203は、印刷用紙Wの搬送枚数が所定枚数(例えば、4000枚)に達したと判定した場合(ステップS304“Yes”)、記憶部204に空白領域が記憶されているか否かを判定する。なお、印刷制御部203は、記憶部204に空白領域が記憶されていないと判定した場合(ステップS304“No”)、ステップS307の動作を行う。
【0083】
一方、ステップS306において、印刷制御部203は、記憶部204に空白領域が記憶されていると判定した場合(ステップS304“Yes”)、空白領域が経路近傍位置NPとなるように第1ドラム41の回転角度を制御する。例えば、印刷制御部203は、空白領域として特定された無穿孔領域QA2の副走査方向VDにおける中心線の回転角度が経路近傍位置NPの回転角度となるように、第1ドラム41の回転角度を制御する。
【0084】
ステップS307において、印刷制御部203は、印刷ジョブに応じた片側ドラム印刷処理が終了したか否かを判定する。印刷制御部203は、片側ドラム印刷処理が終了したと判定した場合(ステップS307“Yes”)、動作を終了し、終了していないと判定した場合(ステップS307“No”)、ステップS302の動作を繰り返す。
【0085】
以上のように、実施例2に係る孔版印刷装置1では、印刷制御部203は、第2孔版印刷部5のみを使用した片側ドラム印刷処理において印刷用紙Wが所定枚数搬送された場合、空白領域が経路近傍位置NPとなるように第1ドラム41の回転角度を制御する。これにより、搬送される印刷用紙Wが第1マスタG1に接触(衝突)することに起因して、第1マスタG1が破損することを抑制できる。
【0086】
また、第1ドラム41に巻装された第1マスタG1において、空白領域は、製版不可能領域QBよりも副走査方向VDの後方、すなわち回転方向Aの後方に位置する。このため、印刷制御部203は、製版不可能領域QBが経路近傍位置NPに配置された状態から、空白領域が経路近傍位置NPに配置された状態に移動する際、回転方向Aに沿ってより効率よく移動できる。
【0087】
また、実施例1に係る孔版印刷装置1は、第1ドラム41を回転駆動させるドラム駆動モータ48と、第2ドラム51を回転駆動させるドラム駆動モータ58とを別々に備えている。これにより、印刷制御部203は、片側ドラム印刷処理を実行中であっても、ドラム駆動モータ48を制御して、第1ドラム41の回転角度を制御できる。よって、印刷制御部203は、空白領域が経路近傍位置NPとなるように第1ドラム41の回転角度を制御する際に、片側ドラム印刷処理を停止しなくてもよいため、印刷生産性の低下を抑制できる。
【0088】
[実施例3]
次いで、本発明の実施例3に係る孔版印刷装置1について説明する。
【0089】
ここで、上述した実施例1では、印刷制御部203は、片側ドラム印刷処理において、第1マスタG1の製版不可能領域QBが経路近傍位置NPとなるように、第1ドラム41の回転角度を制御していた。このとき、製版可能領域QAは、第1ドラム41の回転軸41aの中心Cよりも上下方向ZDの下側に配置される。また、製版不可能領域QBは、第1ドラム41に装着された第1マスタG1の副走査方向VDにおいて、第1マスタG1の中心線CLよりも第1マスタG1の先端部E1側に位置しているため、先端部E1も第1ドラム41の回転軸41aの中心Cよりも上下方向ZDの下側に配置された状態となる。
【0090】
実施例3に係る孔版印刷装置1では、先端部E1が第1ドラム41の回転軸41aの中心Cよりも上下方向ZDの下側に配置された状態となることにより、第1ドラム41に供給されているインクが先端部E1から漏れ出ることを防止できる。
【0091】
次に、実施例3に係る孔版印刷装置1が印刷ジョブを取得して印刷処理を実行する際の動作を説明する。
図10は、実施例3に係る孔版印刷装置1の動作を示すフローチャートである。
【0092】
なお、
図10に示すステップS401〜S402に示す動作は、上述した実施例1に示したステップS101〜S102の動作と同様であるため、説明を省略する。
【0093】
ステップS403において、印刷制御部203は、印刷ジョブに応じた片側ドラム印刷処理が終了したか否かを判定する。
【0094】
ステップS404において、印刷制御部203は、片側ドラム印刷処理が終了したと判定した場合(ステップS403“Yes”)、第1マスタG1の先端部E1が第1ドラム41の回転軸41aの中心Cよりも上下方向ZDにおいて上側になるように、第1ドラム41の回転角度を制御する。
【0095】
例えば、
図11(a)に示すように、印刷制御部203は、第1マスタG1の製版不可能領域QBを経路近傍位置NPに配置した場合、先端部E1が頂点を角度基準とした回転角度γ1に配置される。そして、ステップS404において、印刷制御部203は、
図11(b)に示すように、第1マスタG1の先端部E1が第1ドラム41の回転軸41aの中心Cを通る水平線HLよりも上下方向ZDにおいて上側になるように、先端部E1を回転角度γ2に配置する。
【0096】
一方、ステップS405において、印刷制御部203は、片側ドラム印刷処理が終了していないと判定した場合(ステップS403“No”)、片側ドラム印刷処理が中断したか否かを判定する。例えば、印刷制御部203は、操作パネル部120を用いてユーザにより一時停止ボタンが入力されたか否かを検出することで、片側ドラム印刷処理が中断したか否かを判定する。なお、印刷制御部203は、片側ドラム印刷処理が中断していないと判定した場合(ステップS405“No”)、ステップS402の動作を行う。
【0097】
一方、ステップS406において、印刷制御部203は、片側ドラム印刷処理が中断したと判定した場合(ステップS405“Yes”)、第1ドラム41の回転角度を維持する。具体的に、印刷制御部203は、第1マスタG1の製版不可能領域QBを経路近傍位置NPに配置した状態を維持する。
【0098】
ステップS407において、印刷制御部203は、片側ドラム印刷処理が再開したか否かを判定する。例えば、印刷制御部203は、操作パネル部120を用いてユーザにより再開ボタンが入力されたか否かを検出することで、片側ドラム印刷処理が再開したか否かを判定する。なお、印刷制御部203は、片側ドラム印刷処理が再開したと判定した場合(ステップS407“Yes”)、ステップS402の動作を行う。
【0099】
一方、ステップS408において、印刷制御部203は、片側ドラム印刷処理が再開していないと判定した場合(ステップS407“No”)、片側ドラム印刷処理が中断した後に、所定期間(例えば、1分)の経過を検出したか否かを判定する。
【0100】
例えば、印刷制御部203は、片側ドラム印刷処理が中断したタイミングで、タイマーを起動して、中断時間を計測する。そして、印刷制御部203は、中断時間が所定期間を経過した場合、所定期間の経過を検出する。
【0101】
そして、印刷制御部203は、片側ドラム印刷処理が中断した後、所定期間の経過を検出した場合(ステップS408“Yes”)、ステップS404の動作を行う。すなわち、印刷制御部203は、第1マスタG1の先端部E1が第1ドラム41の回転軸41aの中心Cよりも上下方向ZDにおいて上側になるように、第1ドラム41の回転角度を制御する。
【0102】
一方、印刷制御部203は、所定期間の経過を検出しない場合(ステップS408“No”)、ステップS406の動作を繰り返す。
【0103】
以上のように、実施例3に係る孔版印刷装置1では、印刷制御部203は、片側ドラム印刷処理が終了した場合、第1ドラム41の先端部E1が第1ドラム41の回転軸41aよりも上下方向ZDにおいて上側になるように、第1ドラム41の回転角度を制御する。これにより、第1マスタG1の先端部E1からインクが漏れ出ることを防止できる。
【0104】
実施例3に係る孔版印刷装置1によれば、印刷制御部203は、片側ドラム印刷処理が中断した場合、第1マスタG1の回転角度を維持する。これにより、片側ドラム印刷処理が再開する際に、より迅速に再開できる。
【0105】
実施例3に係る孔版印刷装置1によれば、印刷制御部203は、片側ドラム印刷処理が中断した後、所定期間の経過を検出した場合、第1ドラム41の先端部E1が第1ドラム41の回転軸41aよりも上下方向ZDにおいて上側になるように、第1ドラム41の回転角度を制御する。これにより、印刷を実行しない状態が所定期間継続する場合に、第1マスタG1の先端部E1が第1ドラム41の回転軸41aの中心Cよりも上側に移動されるため、第1マスタG1の先端部E1からインクが漏れ出ることを防止できる。
【0106】
なお、第1ドラム41の回転軸41aの中心Cを通る水平線HLを0°とした場合、印刷制御部203は、第1マスタG1の先端部E1が水平線HLよりも45°以上頂点側に回転させることがより好ましい。これにより、第1マスタG1の先端部E1からインクが漏れ出ることをより確実に防止できる。
【0107】
また、上述した実施例3に係る孔版印刷装置1では、ステップS408において、片側ドラム印刷処理が中断した後、所定期間の経過を検出したか否かを判定していたが、これに限定されるものではない。例えば、ステップS408において、印刷制御部203は、片側ドラム印刷処理が中断した後、孔版印刷装置1の電源の切断を検出したか否かを判定してもよい。そして、印刷制御部203は、孔版印刷装置1の電源の切断を検出した場合に、ステップS404の動作を行い、孔版印刷装置1の電源の切断を検出しない場合に、ステップS406の動作を行ってもよい。なお、印刷制御部203は、操作パネル部120を用いてユーザにより電源の遮断ボタンが入力されたか否かを判定することで、孔版印刷装置1の電源の遮断を検出したか否かを判定してもよい。
【0108】
[本発明のその他の実施形態]
以上、上述の実施例を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。
【0109】
例えば、上述した実施例では、片側ドラム印刷処理が、第2孔版印刷部5の第2ドラム51を用いた印刷処理である場合を例に挙げて説明したが、第1孔版印刷部4の第1ドラム41を用いた印刷処理であってもよい。この場合、本体制御部200では、特定部202及び印刷制御部203が第1孔版印刷部4に対して実行していた制御を、第2孔版印刷部5に実行する。
【0110】
また、例えば、上述した実施例に係る孔版印刷装置1では、第1ドラム41を回転駆動させるドラム駆動モータ48と、第2ドラム51を回転駆動させるドラム駆動モータ58とを備えていたが、ドラム駆動モータ48とドラム駆動モータ58とを単一のドラム駆動モータにより構成してもよい。この場合、孔版印刷装置1は、単一のドラム駆動モータの駆動力を第1ドラム41と第2ドラム51との一方又は両方に選択的に与える切り替え機構を備える構成となる。
【0111】
また、例えば、上述した実施例では、孔版印刷装置1が、第1ドラム41を備える第1孔版印刷部4と第2ドラム51を備える第2孔版印刷部5との二つの孔版印刷部を備え、2色印刷を行える構成を例に挙げて説明したが、3つ以上の孔版印刷部を備え、3色以上の印刷を行える構成であってもよい。この場合、第1孔版印刷部4に対して実行していた制御を、使用しない未使用ドラムを備える孔版印刷部に対して実行する。
【0112】
このように、本発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。