(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-185704(P2017-185704A)
(43)【公開日】2017年10月12日
(54)【発明の名称】製版装置
(51)【国際特許分類】
B41C 1/055 20060101AFI20170919BHJP
B41L 13/04 20060101ALI20170919BHJP
B41C 1/14 20060101ALI20170919BHJP
【FI】
B41C1/055 511
B41L13/04 F
B41C1/14 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-76561(P2016-76561)
(22)【出願日】2016年4月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】福本 雄祐
(72)【発明者】
【氏名】永田 一也
【テーマコード(参考)】
2H084
【Fターム(参考)】
2H084AA13
2H084AA32
2H084AA38
2H084AE05
2H084AE08
2H084BB07
2H084BB13
2H084CC09
(57)【要約】
【課題】サーマルヘッドを減圧したときに生じるマスタの弛みを防止すること。
【解決手段】マスタにテンションを付与するテンション付与部材12aと、上下方向に長い長方形をなす支持孔12cが形成されサーマルヘッド13aの両端に設けられた支持部材12bとで構成された抱き込み手段12を備えている。サーマルヘッドが加圧位置にあるときは、テンション付与部材12aの端部12dと支持孔12cの上端部12caとが当接して所定の抱き込み角度でマスタにテンションを付与される。また、サーマルヘッド13aが減圧位置にあるときは、テンション付与部材12aがマスタ表面に載置された状態で支持部材12bがサーマルヘッド13aの移動に連れて上方に移動するため、マスタは製版装置1にセットされたときから常に所定のテンションが付与された状態となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状にマスタが巻回されたマスタロールと、
発熱素子が配列されているサーマルヘッドと、回転駆動されるプラテンローラとを有し、減圧位置から加圧位置に移動した前記サーマルヘッドと前記プラテンローラとで前記マスタをニップして該マスタに製版画像を形成する製版手段と、
前記サーマルヘッドが前記減圧位置にあるときに、前記マスタにテンションを付与するテンション付与手段と、
を備えたことを特徴とする製版装置。
【請求項2】
前記マスタロールから繰り出される前記マスタの搬送方向と直交するマスタ幅方向に延びる支持手段の両端を弾性部材で吊り下げて設け、前記支持手段で前記マスタを裏面側から支持して前記マスタの搬送をガイドする搬送ガイド手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の製版装置。
【請求項3】
前記テンション付与手段は、
前記マスタの搬送方向と直交するマスタ幅方向に延びるテンション付与部材と、
前記サーマルヘッドのマスタ幅方向側端部に設けられ、上下に長い長方形をなす支持孔で前記テンション付与部材の端部を支持する支持部材とを備え、
前記サーマルヘッドが前記加圧位置にあるときは、前記マスタが所定の抱き込み角度で抱き込まれた状態となる位置で前記支持孔の上端部と前記テンション支持部材の端部とが当接し、
前記サーマルヘッドが前記減圧位置にあるときは、前記テンション付与部材の端部が前記支持孔の下端部と当接せずに前記マスタの表面に載置されたままとなることを特徴とする請求項1又は2記載の製版装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルヘッドを用いて孔版原紙に感熱穿孔して製版画像を製版する製版装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、多数の発熱素子が配列されてなるサーマルヘッドと、熱可塑性樹脂フィルムと多孔性支持体とを貼り合わせた帯状の感熱孔版原紙(以下、「マスタ」という)のフィルム面側とを圧接させた状態で、画像データに基づき各発熱素子を発熱駆動させたサーマルヘッドとマスタとを発熱素子の配列方向である主走査方向と直交する副走査方向に相対移動させ、マスタに画像データに応じた穿孔画像を形成する製版装置が知られている。
【0003】
また、下記特許文献1には、帯状に長いメディアを搬送した際に、メディアの搬送経路を屈曲させながら該メディアにテンションを付与することで搬送時に生じる弛みを吸収しながら左右のテンションのバランスを補正して搬送状態を安定させるメディア搬送機構について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−280472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の製版装置100では、
図4(a)に示すように、帯状に長尺なマスタが巻回されてなるマスタロール101と、プラテンローラ102aとサーマルヘッド102bからなる製版手段102との間に、マスタロール101から繰り出されたマスタの搬送方向をガイドする搬送ガイド手段103と、プラテンローラ102aに抱き込ませた角度を維持するための抱き込み手段104と、一対の搬送ローラからなり製版済みマスタを後段に搬送する搬送手段105とを備えている。
【0006】
そして、図示のように、製版時には搬送ガイド手段103と抱き込み手段104とでマスタの搬送経路を屈曲させテンションを与えた状態でサーマルヘッド102bを加圧してプラテンローラ102aとの間でマスタをニップ搬送することで、マスタに皺や斜行が発生することなく感熱穿孔している。
【0007】
また、サーマルヘッド102bを加圧したままの状態にすると、金属製のサーマルヘッドによってゴム製のプラテンローラ102aが無用に変形してしまうため、
図4(b)に示すように、製版処理が終了すると、サーマルヘッド102bを減圧して加圧状態が解除されるように上方へと離隔させている。
【0008】
ところで、一般的な製版装置100では、サーマルヘッド102bに抱き込み手段104となる抱き込みローラが設けられており、サーマルヘッド102bの加圧状態を解除する場合は、サーマルヘッド102bをプラテンローラ102aから離隔する方向に回動させることで、サーマルヘッド102bの加圧解除と同時に、抱き込みローラによるマスタへのテンション付与も解除されることになる。
【0009】
このため、サーマルヘッド102bの加圧状態が解除されると、マスタに付与されるテンションも解除されてしまうため、マスタが弛んでしまうことがある。よって、製版終了後、次回の製版処理を行うときに、弛んだ状態のままマスタをニップすると、マスタが縒れたまま搬送されて皺や斜行の原因となっていた。
【0010】
このような問題を解決するために、例えば特許文献1に開示されるメディア搬送機構の構成を採用したとする。しかしながら、特許文献1に開示される機構では、マスタの左右への搬送方向の縒れを補正する機能は有しているが、テンションバーの両端が下方から支持されているためサーマルヘッドの加圧状態を解除したときにマスタに適切なテンションを付与することができず、上記問題点が解決されない。
【0011】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、サーマルヘッドの加圧状態を解除したときでもセットされたマスタに対して所定のテンションを付与することのできる製版装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した目的を達成するため、本発明に係る第1の態様は、ロール状にマスタが巻回されたマスタロールと、
発熱素子が配列されているサーマルヘッドと、回転駆動されるプラテンローラとを有し、減圧位置から加圧位置に移動した前記サーマルヘッドと前記プラテンローラとで前記マスタをニップして該マスタに製版画像を形成する製版手段と、
前記サーマルヘッドが前記減圧位置にあるときに前記マスタが前記プラテンローラに所定の角度で抱き込まれた状態が維持されるように前記マスタにテンションを付与するテンション付与手段と、
を備えたことを特徴とする、製版装置である。
【0013】
本発明に係る第2の態様は、第1の態様に係る製版装置において、前記マスタロールから繰り出される前記マスタの搬送方向と直交するマスタ幅方向に延びる支持手段の両端を弾性部材で吊り下げて設け、前記支持手段で前記マスタを裏面側から支持して前記マスタの搬送をガイドする搬送ガイド手段を備えたことを特徴とする、製版装置である。
【0014】
本発明に係る第3の態様は、第1の態様又は第2の態様に係る製版装置において、前記テンション付与手段は、
前記マスタの搬送方向と直交するマスタ幅方向に延びるテンション付与部材と、
前記サーマルヘッドのマスタ幅方向側端部に設けられ、上下に長い長方形をなす支持孔で前記テンション付与部材の端部を支持する支持部材とを備え、
前記サーマルヘッドが前記加圧位置にあるときは、前記マスタが所定の抱き込み角度で抱き込まれた状態となる位置で前記支持孔の上端部と前記テンション支持部材の端部とが当接し、
前記サーマルヘッドが前記減圧位置にあるときは、前記テンション付与部材の端部が前記支持孔の下端部と当接せずに前記マスタの表面に載置されたままとなることを特徴とする、製版装置である。
【発明の効果】
【0015】
第1の態様に係る製版装置によれば、サーマルヘッドを加圧位置から減圧位置まで移動させたとしても、マスタにテンションを付与した状態が維持されるため、弛むことがない。よって、次回の製版時において、サーマルヘッドとプラテンローラでマスタをニップしたとしても、マスタに皺が発生するのを抑えつつ、サーマルヘッドとプラテンローラとのニップ点におけるマスタの縒れを防止することができる。
【0016】
第2の態様に係る製版装置によれば、支持手段の両端が弾性部材によって吊り下げられた状態で設けているため、支持手段の軸線方向が上下方向、左右方向、斜め方向、奥行き/手前方向にそれぞれ移動可能となり、製版装置の組立時における機器構成のバラツキ等で生じるマスタ搬送経路長のズレを吸収してマスタ搬送時のマスタ搬送経路長を略均一に維持することができる。
【0017】
第3の態様に係る製版装置によれば、支持部材に形成された支持孔が長方形をなしており、サーマルヘッドが加圧位置に移動したときに、テンション付与部材の端部と支持孔の上端部との当接位置の位置決め精度が高くなるため、製版時において、テンション付与部材の位置が移動することなく、常時プラテンローラに適した抱き込み角度で抱き込まれるようにマスタにテンションを付与した状態を維持することができるとともに、減圧時には、マスタにテンションを付与した状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】同装置の搬送ガイド手段を示す概略斜視図である。
【
図3】(a)は同装置のサーマルヘッドが加圧位置にあるときの概略構成図であり、(b)は同装置のサーマルヘッドが減圧位置にあるときの概略構成図である。
【
図4】(a)は従来の製版装置における製版時の概略構成図であり、(b)は同装置におけるニップ解除時の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。また、この実施の形態によって本発明が限定されるものではなく、この形態に基づいて当業者等により考え得る実施可能な他の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれるものとする。
【0020】
なお、本明細書において、添付する各図を参照した以下の説明において、方向乃至位置を示すために上、下、左、右の語を使用した場合、これはユーザが各図を図示の通りに見た場合の上、下、左、右に一致する。
【0021】
また、各図においてマスタの搬送方向(例えば、
図3における図中右側から左側に向かう水平方向)を「マスタ搬送方向A」とし、このマスタ搬送方向Aと直交する水平方向(例えば、
図3における紙面手前側から奥行きへの方向であり、マスタロール15の回転軸15aや搬送手段14における搬送ローラの軸線方向と同一方向)を「マスタ幅方向B」として定義する。
【0022】
まず、本発明に係る製版装置1の構成について、
図1〜3を参照しながら説明する。
本発明に係る製版装置1は、外部から取り込んだ製版情報、又は原稿を読み込んで得た画像データから作成した製版情報に基づき、後述する製版手段13で熱可塑性樹脂フィルムと多孔性支持体とを貼り合わせた感熱孔版原紙(以下、「マスタ」という)をマスタ搬送方向Aに沿ってニップ搬送しながら感熱穿孔して製版する装置である。
【0023】
図1に示すように、製版装置1は、搬送ガイド手段11と、抱き込み手段12と、製版手段13と、搬送手段14とを備えて構成され、例えば印刷装置である孔版印刷装置の製版部として搭載される。また、製版装置1の上流側には、回動自在となるように所定位置に設けられ繰り出し可能とされたロール状のマスタであるマスタロール15を備えている。
【0024】
搬送ガイド手段11は、例えば丸棒やローラのようなマスタの幅よりも長尺な円柱形状をなす支持手段11aで構成されている。本実施形態では、支持手段11aとしてマスタの搬送を妨げないように表面が滑らかな金属製の棒材(以下、「ガイドシャフト11a」ともいう)を用いている。なお、ガイドシャフト11aは、本実施例のような金属製の棒材に限らず、樹脂製であってもよい。また、このような構成とした場合も、マスタの搬送を妨げないように表面を滑らかにするのが好ましい。
【0025】
ガイドシャフト11aは、マスタロール15から繰り出されたマスタの搬送をガイドするとともに、マスタに対して所定のテンションを付与するため、製版手段13とマスタロール15との間の搬送経路が屈曲する位置でマスタ搬送方向Aに直交するマスタ幅方向Bに沿って配置されている。
【0026】
また、従来の装置では、マスタ搬送時おいて、マスタロール15や製版手段13の取付位置のバラつき、搬送経路上の部品のバラつきにより、マスタの搬送方向が鉛直方向やマスタ幅方向Bにズレることでマスタロール15から製版手段13までのマスタ搬送経路長にズレが生じるという問題があった。
【0027】
そのため、本発明では、装置組立時における機器構成のバラツキで生じるマスタ搬送経路長のズレを吸収してマスタの幅方向の搬送経路長を略均一とするため、
図2に示すように、ガイドシャフト11aの両端を弾性部材11b(バネ、ゴム材など)で吊り下げて設けている。なお、弾性部材11bの一端は、
図2に示すような装置筐体側板の取付片1a等に固設され、そこを支点としてマスタの状態に合わせて伸縮する。
【0028】
このような構成とすることで、マスタロール15から繰り出されたマスタを裏面側から支持しながら所定のテンションを付与することができ、マスタは常に張った状態となる。また、弾性部材11bが自由に伸縮自在であるため、ガイドシャフト11aの軸線方向が図中における上下方向、左右方向、斜め方向、奥行き/手前方向にそれぞれ移動可能となることで、マスタ搬送経路長のズレを吸収してマスタ搬送経路長を略均一に維持することができる。
【0029】
抱き込み手段(請求項における「テンション付与手段」に相当)12は、例えば円柱形状をなす丸棒やローラのようにマスタの幅方向の長さよりも長尺な部材からなるテンション付与部材12aと、テンション付与部材12aの両端を支持する支持孔12cが形成されテンション付与部材12aと相対的に移動する支持部材12bとで構成されている。
【0030】
本実施形態において、テンション付与部材12aは、
図1に示すように、端部12dが支持孔12cに対して移動自在に遊挿された状態で支持される丸棒を用い、マスタが製版装置1にセットされている間は、マスタをプラテンローラ13bに対して所定の抱き込み角度で抱き込ませている。また、マスタが製版装置1にセットされている間は、製版面となるマスタ表面に載置された状態となり、テンション付与部材12aの自重によってマスタに対して所定のテンション(バックテンション)を付与するテンション付与手段として機能する。そのため、テンション付与部材12aは、搬送ガイド手段11と製版手段13との間の搬送経路が屈曲する位置でマスタ幅方向Bに沿って配置されている。
【0031】
なお、テンション付与部材12aとなる丸棒の材質としては、アルミのような比較的軽量な金属や一般的な合成樹脂を用いて成形され、マスタの強度にもよるが、少なくとも載置されたときにマスタが破れず、且つマスタに所定のテンションを付与させることが可能な程度の重さとする。また、テンション付与部材12aは、製版装置1にセットされたマスタの表面と常時接触した状態となるため、マスタの表面を傷付けないようにその表面が滑らかに加工されている。
【0032】
図3(a)、(b)に示すように、支持部材12bは、サーマルヘッド13aのマスタ幅方向Bにおける両端部に組み付けられており、サーマルヘッド13aが加圧位置と減圧位置の間での移動に連れて移動するようになっている。また、支持部材12bには、上下方向に長い長方形をなした支持孔12cが形成され、テンション付与部材12aの端部12dが挿入されている。
【0033】
図3(a)に示すように、製版時において、支持孔12cの上端部12caとテンション付与部材12aの端部12dの端縁とが当接したときの位置は、プラテンローラ13bに適切な抱き込み角度でマスタを抱き込ませるようにプラテンローラ13bとの位置関係によって一義的に定められている。しかしながら、支持孔12cを楕円形や長孔とすると、孔の当接部分が曲面となるため、加工精度にもよるが端部12dの端縁を一定の位置に当接させる確実性が低くなってしまう。そのため、本発明では、支持孔12cの形状を長方形とし、端部12dの端縁が一定の位置で当接されるようにしている。
【0034】
製版手段13による製版処理のときは、
図3(a)に示すように、サーマルヘッド13aが加圧位置まで移動してプラテンローラ13bとの間でマスタをニップする。
【0035】
このとき、図示のように、テンション付与部材12aとマスタの表面との当接状態が維持された状態でテンション付与部材12aの軸縁部が支持孔12cの上端部12caと当接する。これにより、テンション付与部材12aは、マスタがプラテンローラ13bに適した抱き込み角度で抱き込まれるように、マスタに対して所定のテンションを付与した状態で位置固定されるため、マスタは張った状態で適切な位置で搬送される。よって、例えば製版装置1が搭載される印刷装置の振動等によってマスタに意図しない負荷が掛かるのを防止することができる。
【0036】
また、製版手段13による製版処理が終了すると、
図3(b)に示すように、サーマルヘッド13aが減圧位置へと移動し、サーマルヘッド13aとプラテンローラ13bとのニップが解除される。
【0037】
このとき、図示のように、サーマルヘッド13aがプラテンローラ13bから離隔するに連れて支持部材12bも移動する。しかしながら、支持部材12bの移動は、支持孔12cの下端部12cbと端部12dの端縁とが当接しない位置で止まるため、支持部材12bがマスタに載置された状態が維持される。これにより、マスタに所定のテンションが付与された状態のままサーマルヘッド13aの減圧が可能となり、減圧時に発生していたマスタの弛みや再製版時におけるマスタの皺の発生を抑制することができる。
【0038】
製版手段13は、多数の発熱素子がマスタ幅方向Bに並列されたサーマルヘッド13aと、所定速度で回転駆動しながらマスタを下流側に搬送するプラテンローラ13bとで構成されている。製版手段13は、マスタロール15から順次繰り出されたマスタを、サーマルヘッド13aとプラテンローラ13bとの間でニップし、このニップした状態でマスタを搬送しながらサーマルヘッド13aに設けた発熱素子により画像データに基づく製版画像を感熱穿孔する。
【0039】
なお、支持孔12cは、サーマルヘッド13aが加圧位置にあるとき、支持孔12cの上端部12caが、マスタが所定の抱き込み角度でプラテンローラ13bに抱き込まれる位置でテンション付与部材12aの端部12dと当接し、サーマルヘッド13aが減圧位置にあるとき、支持孔12cの下端部12cbが、テンション付与部材12aの端部12dと当接しない位置となるように形成される必要がある。よって、支持孔12cの寸法は、サーマルヘッド13aの加圧位置から減圧位置との間の移動距離やプラテンローラ13bへのマスタの抱き込み角度等によって適宜規定されることになる。
【0040】
搬送手段14は、製版済みのマスタを下流側に搬送する手段である。本実施形態では、製版済みマスタの表裏面をニップして搬送する一対の搬送ローラで構成されている。本装置が印刷装置である孔版印刷装置の製版部として搭載される場合、製版済みマスタは、搬送手段14によって印刷部である印刷ドラムまで搬送されることになる。
【0041】
そして、上述した製版装置1では、まずマスタロール15から繰り出したマスタを搬送手段14まで繰り出してセットする。
【0042】
次に、製版処理を開始させるため、サーマルヘッド13aを減圧位置から加圧位置まで移動させてサーマルヘッド13aとプラテンローラ13bとでマスタをニップさせる。このとき、サーマルヘッド13aの移動に際して、支持部材12bが徐々に下降し、テンション付与部材12aがマスタの表面に載置される。
【0043】
そして、載置されたテンション付与部材12aは、
図3(a)に示すように、支持部材12bの下降に伴い、その端部12dの端縁が支持孔12cの上端部12caと当接して位置固定される。これにより、マスタがプラテンローラ13bに適切な抱き込み角度で抱き込まれた状態となる。
【0044】
また、この状態から製版処理が開始されると、マスタは、搬送ガイド手段11によって製版装置1の組立時における機器構成のバラツキ等で生じるマスタ搬送経路長のズレを吸収しながら搬送されるため、マスタ搬送経路長が略均一に維持された状態で製版手段13へと搬送される。
【0045】
次に、マスタの製版処理が終了すると、サーマルヘッド13aを加圧位置から減圧位置まで移動させる。このとき、サーマルヘッド13aの移動に連れて支持部材12bも上方に移動するが、
図3(b)に示すように、テンション付与部材12aはマスタの表面に載置された状態で支持部材12bのみが上方へと移動する。これにより、マスタが張った状態のままサーマルヘッド13aを減圧させることができるため、次回の製版時にサーマルヘッド13aによるニップ時に発生しやすいマスタの皺を抑制することができる。
【0046】
以上説明したように、上述した製版装置1は、マスタにテンションを付与するテンション付与部材12aと、支持孔12cが形成されサーマルヘッド13aの両端に設けられた支持部材12bとで構成された抱き込み手段12が、マスタに常時所定のテンションを付与するテンション付与手段として機能する。
【0047】
このため、サーマルヘッド13aを加圧位置から減圧位置まで移動させたとしても、マスタにテンションを付与した状態が維持されるため、弛むことがない。よって、次回の製版時において、サーマルヘッド13aとプラテンローラ13bでマスタをニップしたとしても、マスタに皺が発生するのを抑えつつ、サーマルヘッド13aとプラテンローラ13bとのニップ点におけるマスタの縒れを防止することができる。
【0048】
また、搬送ガイド手段11は、ガイドシャフト11aの両端が弾性部材11bによって吊り下げられた状態で設けているため、ガイドシャフト11aの軸線方向が上下方向、左右方向、斜め方向、奥行き/手前方向にそれぞれ移動可能となり、製版装置1の組立時における機器構成のバラツキ等で生じるマスタ搬送経路長のズレを吸収してマスタ搬送時のマスタ搬送経路長を略均一に維持することができる。
【0049】
さらに、抱き込み手段12の支持部材12bに形成された支持孔12cが長方形をなしており、サーマルヘッド13aが加圧位置に移動したときに、テンション付与部材12aの端部12dと支持孔12cの上端部12caとの当接位置の位置決め精度が高くなるため、製版時においてもテンション付与部材12aの位置が移動することなく、常時プラテンローラ13bに適した抱き込み角度で抱き込まれるようにマスタにテンションを付与した状態を維持することができる。
【符号の説明】
【0050】
1…製版装置(1a…取付片)
11…搬送ガイド手段(11a…支持手段(ガイドシャフト)、11b…弾性部材)
12…テンション付与手段として機能する抱き込み手段(12a…テンション付与部材、12b…支持部材、12c…支持孔、12ca…支持孔の上端部、12cb…支持孔の下端部、12d…端部)
13…製版手段(13a…サーマルヘッド、13b…プラテンローラ)
14…搬送手段