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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-185905(P2017-185905A)
(43)【公開日】2017年10月12日
(54)【発明の名称】鉄道車両用トラバーサ
(51)【国際特許分類】
   B61J 1/10 20060101AFI20170919BHJP
【FI】
   B61J1/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-76424(P2016-76424)
(22)【出願日】2016年4月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】郷 彰彦
(72)【発明者】
【氏名】児嶋 翔太
(72)【発明者】
【氏名】高橋 大治
(72)【発明者】
【氏名】中井 央
(57)【要約】
【課題】車両待機スペースの省スペース化に寄与でき、レール上に待機する鉄道車両の先端部とトングレールの先端部とが干渉することなくすれ違い、トングレールを格納状態から使用状態に移動させ得る鉄道車両用トラバーサを提供する。
【解決手段】ワーク1を搭載し移動レール2上を走行可能に形成された基台3と、当該基台の側端部331に格納可能に装着されたトングレール4とを備え、移動レールと直交する方向に敷設され鉄道車両5が待機するレール6上のワークをトングレールを経由して基台上に搭載し、移送する鉄道車両用トラバーサ10である。トングレール4は、先端部43が略水平方向に回動可能に形成され、かつ、先端部43は、使用時においてレール6の上端61と当接し、上下方向で先細り状に形成されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを搭載し移動レール上を走行可能に形成された基台と、当該基台の側端部に格納可能に装着されたトングレールとを備え、前記移動レールと直交する方向に敷設され鉄道車両が待機するレール上の前記ワークを前記トングレールを経由して前記基台上に搭載し、移送する鉄道車両用トラバーサであって、
前記トングレールは、先端部が略水平方向に回動可能に形成され、かつ、前記先端部は、使用時において前記レールの上端と当接し、上下方向で先細り状に形成されていることを特徴とする鉄道車両用トラバーサ。
【請求項2】
請求項1に記載された鉄道車両用トラバーサにおいて、
前記トングレールは、前記基台の側端部に連結される基端部から長手方向の中間部まで前記レールと平行に形成され、かつ、前記中間部を中心にして前記先端部が当該レールに対して平行な状態から直交する状態まで略90°回動可能に形成されていることを特徴とする鉄道車両用トラバーサ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された鉄道車両用トラバーサにおいて、
前記トングレールは、前記基台の側端部に対して上方へ付勢された状態で前記基台に支持され、無負荷時において前記トングレールの下端と前記レールの上端との間に所定の隙間が形成されていることを特徴とする鉄道車両用トラバーサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、鉄道車両の検査、修繕等を行うために、施設内の引き込みレール上を走行させる仮台車を搬送する鉄道車両用トラバーサに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、鉄道車両の分解検査、修繕等を行うためには、鉄道車両における車体と台車とを分離する必要があり、鉄道車両の入場時に、本線レール上を走行する本台車から、施設内に敷設した引き込みレール上を走行する仮台車に交換する作業が行われている。そして、分解検査、修繕終了後に鉄道車両に履かせた仮台車を本台車に交換する作業が行われている。この場合、本台車と仮台車とを交換し終え、不要となった仮台車を返送ラインへ移送する手段として鉄道車両用トラバーサを使用する。図9に示すように、鉄道車両用トラバーサ100を、鉄道車両の作業場に向けて移動レールR2上を移動させ、該当するレールR1上に待機する鉄道車両101と対面する位置で停止させた上で、鉄道車両用トラバーサ100の側端部に装着したトングレール103の先端部を当該レールR1の上面に当接させる。そして、当該レールR1上に待機する鉄道車両101の仮台車102b、103bがトングレール103を経由して鉄道車両用トラバーサ100の床面レール104上へ移動可能な状態にする。
上記トングレール103は、図10に示すように、一般に、トラバーサの側端部に跳ね上げ回動可能に装着され、その先端が先細り状に形成されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−129482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記トングレール103では、図10に示すように、鉄道車両用トラバーサ100の床面レール104と鉄道車両101が待機するレールR1との上下段差に対するレール面103Sの勾配を緩やかにしてワークの移動を容易にする必要があり、その全長Lが長くならざるを得ない。例えば、ワークである本台車又は仮台車の手動等による移動を容易にするためには、レール面103Sの傾斜角θが6〜7°程度以内とする必要があり、その場合、トングレール103の全長Lが2.0〜2.5m程度以上となる。そのため、トングレール103を跳ね上げ状態(格納状態)から倒伏状態(使用状態)に回動させるとき、レールR1上に待機する鉄道車両101の先端部とトングレール103の先端部とを干渉させないためには、レールR1上に待機する鉄道車両101を鉄道車両用トラバーサ100からトングレール103の上記全長L以上に離間させなければならなかった。したがって、跳ね上げ式のトングレール103においては、トングレール103の全長Lに起因して車両待機スペースを増大せざるを得ないという問題があった。特に、新幹線先頭車両のように、車両先端部の突出量が大きい車両の場合には、既存の車両待機スペース内で、トングレール103を車両先端部と干渉することなく上下回動させることが困難であった。
【0005】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、車両待機スペースの省スペース化に寄与でき、レール上に待機する鉄道車両の先端部とトングレールの先端部とが干渉することなくコンパクトに、トングレールを格納状態から使用状態に移動させ得る鉄道車両用トラバーサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る鉄道車両用トラバーサは、以下の構成を備えている。
(1)ワークを搭載し移動レール上を走行可能に形成された基台と、当該基台の側端部に格納可能に装着されたトングレールとを備え、前記移動レールと直交する方向に敷設され鉄道車両が待機するレール上の前記ワークを前記トングレールを経由して前記基台上に搭載し、移送する鉄道車両用トラバーサであって、
前記トングレールは、先端部が略水平方向に回動可能に形成され、かつ、前記先端部は、使用時において前記レールの上端と当接し、上下方向で先細り状に形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明においては、トングレールは、先端部が略水平方向に回動可能に形成されているので、トングレールの先端部における上下方向の高さを略一定に維持しつつ、トングレールの先端部を回動させることができる。そのため、鉄道車両が鉄道車両用トラバーサと近接する位置で待機していても、トングレールの先端部が待機する鉄道車両の先端部と干渉するのを回避しながら、トングレールを格納状態から使用状態に移動させることができる。
また、トングレールの先端部は、使用時において鉄道車両が待機するレールの上端と当接し、上下方向で先細り状に形成されているので、トングレールを格納状態から使用状態に移動させるとき、レール上に待機する鉄道車両における先端部の下端と当該レールの上端との間に形成される隙間をトングレールの先端部が通過することができる。そのため、トングレールの全長を長くでき、トングレールのレール面の勾配を緩やかにしてワークの移動を容易にすることができる。
その結果、狭い車両待機スペース内で、鉄道車両が鉄道車両用トラバーサと近接する位置で待機していても、鉄道車両の先端部とトングレールの先端部とが干渉することなくすれ違い、トングレールを格納状態から使用状態に移動させ、鉄道車両が待機するレール上のワークをトングレールを経由して基台上に無理なく搭載し、移送することができる。
よって、本発明によれば、車両待機スペースの省スペース化に寄与でき、レール上に待機する鉄道車両の先端部とトングレールの先端部とが干渉することなくすれ違い、トングレールを格納状態から使用状態に移動させ得る鉄道車両用トラバーサを提供することができる。
【0008】
(2)(1)に記載された鉄道車両用トラバーサにおいて、
前記トングレールは、前記基台の側端部に連結される基端部から長手方向の中間部まで前記レールと平行に形成され、かつ、前記中間部を中心にして前記先端部が当該レールに対して平行な状態から直交する状態まで略90°回動可能に形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明においては、トングレールは、基台の側端部に連結される基端部から長手方向の中間部まで鉄道車両が待機するレールと平行に形成され、かつ、中間部を中心にして先端部が当該レールに対して平行な状態から直交する状態まで略90°回動可能に形成されているので、略90°回動する先端部側トングレールの重量を軽量化して、基台の側端部に連結される基端部側トングレールの支持構造や先端部の回動機構等をより一層簡素化させることができる。なお、トングレールの格納状態において、トングレールの中間部又は先端部とレール上に待機する鉄道車両の先端部との最小隙間は、100〜150mm程度確保されていることが好ましい。
【0010】
(3)(1)又は(2)に記載された鉄道車両用トラバーサにおいて、
前記トングレールは、前記基台の側端部に対して上方へ付勢された状態で前記基台に支持され、無負荷時において前記トングレールの下端と前記レールの上端との間に所定の隙間が形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明においては、トングレールは、基台の側端部に対して上方へ付勢された状態で基台に支持され、無負荷時においてトングレールの下端と鉄道車両が待機するレールの上端との間に所定の隙間が形成されているので、本鉄道車両用トラバーサが移動レール上を移動するときにトングレールが上下方向に多少振動しても、トングレールの下端が、鉄道車両が待機するレールの上端と干渉することを防止できる。なお、トングレールを上方へ付勢する手段は、ばね等の弾性体やシリンダ等の空圧機器又は油圧機器等が該当し、特に限定されることはない。また、無負荷時においてトングレールの下端と鉄道車両が待機するレールの上端との間に形成される所定の隙間は、20〜30mm程度が好ましい。所定の隙間が20〜30mm程度あれば、トングレールを格納状態から使用状態に移動させるとき、トングレールの上端とレール上に待機する鉄道車両の下端とが干渉することを簡単に回避させることができるからである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車両待機スペースの省スペース化に寄与でき、レール上に待機する鉄道車両の先端部とトングレールの先端部とが干渉することなくすれ違い、トングレールを格納状態から使用状態に移動させ得る鉄道車両用トラバーサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る鉄道車両用トラバーサの平面図である。
図2図1に示す鉄道車両用トラバーサの側面図である。
図3図1に示すA−A断面図である。
図4図1に示すトングレールの部分拡大平面図である。
図5図4に示すB視側面図である。
図6図4に示すC−C断面図である。
図7図5に示すD−D断面図である。
図8図1に示す鉄道車両用トラバーサの動作フローチャート図である。
図9】従来の鉄道車両用トラバーサを含む台車交換設備の平面図である。
図10】特許文献1に記載された鉄道車両用トラバーサの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態に係る鉄道車両用トラバーサについて、図面を参照しながら詳細に説明する。はじめに、本実施形態に係る鉄道車両用トラバーサの全体構成を説明し、その後、トングレールの詳細構造を説明し、更に本鉄道車両用トラバーサの動作方法について説明する。
【0015】
<鉄道車両用トラバーサの全体構成>
まず、本実施形態に係る鉄道車両用トラバーサの全体構成について、図1図3を用いて説明する。図1に、本発明の実施形態に係る鉄道車両用トラバーサの平面図を示す。図2に、図1に示す鉄道車両用トラバーサの側面図を示す。図3に、図1に示すA−A断面図を示す。
【0016】
図1図3に示すように、本実施形態に係る鉄道車両用トラバーサ10は、ワークである、例えば、仮台車1(1a、1b)を搭載し移動レール2上を走行可能に形成された基台3と、当該基台3の側端部331に格納可能に装着されたトングレール4とを備え、移動レール2と直交する方向に敷設され鉄道車両5が待機するレール6上のワーク(仮台車1(1a、1b))をトングレール4を経由して基台3上に搭載し、移送する鉄道車両用トラバーサである。鉄道車両用トラバーサ10には、仮台車1(1a、1b)の他に、例えば、本台車を搭載することもできる。
【0017】
仮台車1(1a、1b)は、鉄道車両5の分解検査、修繕等を行うため、施設内に敷設した引き込みレール上を走行可能に形成された台車である。仮台車1(1a、1b)は、駆動モータ12と連結された自走可能な車輪11と従走する車輪11とを備える自走用仮台車1aと、従走する車輪11のみを備える従走用仮台車1bと、から構成されている。仮台車1(1a、1b)は、自走用仮台車1aと従走用仮台車1bとが前後に連結された状態で基台3に搭載されている。
【0018】
基台3は、略矩形状に形成された枠体に床板が接合された台車本体であって、走行方向(矢印Tの方向)に対して前後に位置する前端部31及び後端部32が高床状に形成され、前端部31と後端部32との間に挟まれた中央部33が低床状に形成されている。高床状に形成された前端部31及び後端部32の両側部には、移動レール2上を走行する走行車輪34が配置されている。後端部32の両側部に配置された走行車輪34には、駆動モータ35がそれぞれ連結されている。なお、基台3の前端部31には、駆動モータ35に電力を供給するバッテリ311が搭載され、基台3の後端部32には、油圧ユニット321及び操作盤322等が搭載されている。
【0019】
基台3の中央部33には、仮台車1(1a、1b)を案内する床レール332が、床面と略同一の高さで本鉄道車両用トラバーサ10の走行方向と直交する方向に敷設されている。床レール332の軌間は、鉄道車両5が待機するレール6の軌間と同一である。床レール332は、基台3の中央部33の側端部331まで直線状に敷設されている。
【0020】
基台3の側端部331には、床レール332と同一の軌間で形成されたトングレール4が装着されている。トングレール4は、先端部43が略水平方向に回動可能に形成され、かつ、先端部43は、使用時において鉄道車両5が待機するレール6の上端と当接し、上下方向で先細り状に形成されている。
【0021】
<トングレールの詳細構造>
次に、本鉄道車両用トラバーサ10のトングレール4の詳細構造について、図4図7を用いて説明する。図4に、図1に示すトングレールの部分拡大平面図を示す。図5に、図4に示すB視側面図を示す。図6に、図4に示すC−C断面図を示す。図7に、図5に示すD−D断面図を示す。
【0022】
図4図7に示すように、トングレール4は、基台3の側端部331に連結される基端部41から長手方向で2分割される中間部42(42a)まで鉄道車両5が待機するレール6と平行に形成され、かつ、中間部42(42a)を中心にして先端部43が当該レール6に対して平行な状態(使用状態)から直交する状態(格納状態)まで略90°回動可能に形成されている。先端部43は、レールの左右外方へ観音開き状に回動する。また、トングレール4は、基台3の側端部331に対して上方へ付勢された状態で基台3に支持され、無負荷時においてトングレール4の下端4B2とレール6の上端61との間に所定の隙間dが形成されている。
【0023】
具体的には、トングレール4は、中間部42(42a、42b)にて基端部側トングレール4Aと先端部側トングレール4Bとに長手方向で2分割されている。基端部側トングレール4Aと先端部側トングレール4Bとが、中間部42(42a、42b)で当接すると、鉄道車両5が待機するレール6と一直線上に延設される。この場合、基端部側トングレール4Aの上端(レール面)4A1と先端部側トングレール4Bの上端(レール面)4B1とが緩やかな同一勾配(傾斜角:6°程度)の傾斜面を形成する。
【0024】
また、トングレール4の中間部42(42a、42b)には、基端部側トングレール4Aと先端部側トングレール4Bとが、中間部42(42a、42b)で当接する当接面の面積を増加させる当接ブロック421、421が付設されている。なお、基端部側トングレール4Aと先端部側トングレール4Bとが、中間部42(42a、42b)で当接したとき、当接ブロック421、421同士をピンで連結してもよい。これによって、トングレール4の使用時における屈曲等を防止することができる。また、後述するように、先端部側トングレール4Bを回動させる油圧シリンダ441のロッド部が伸縮するとき、その伸縮端を検知してトングレール4の使用時における屈曲を制御する方法でもよい。
【0025】
また、基端部側トングレール4Aの下端4A2は、上端(レール面)4A1と平行に形成されている。先端部側トングレール4Bの下端4B2は、略水平状に形成され、鉄道車両5が待機するレール6と一直線上に延設された状態で無負荷時(図5に仮想線で示す)においては、後述するばね部材448、455の付勢力によって鉄道車両5が待機するレール6の上端(レール面)61との間に所定の隙間dが形成されている。所定の隙間dは、20〜30mm程度であることが好ましい。所定の隙間dを調節するため、基端部側トングレール4Aの基端部41端面と当接する調整ボルト412が、基台3の側端部331に螺着されている。なお、先端部側トングレール4Bの下端4B2は、鉄道車両5が待機するレール6と一直線上に延設された状態で仮台車1(1a、1b)を移送する負荷時(図5に実線で示す)においては、ばね部材448、455が撓み、レール6の上端(レール面)61と当接する。
【0026】
また、基端部側トングレール4Aの中間部42aには、レールの左右外方へ突出する軸受ブラケット444が形成され、先端部側トングレール4Bの中間部42bには、回動したとき後方へ突出するリンクアーム442が形成されている。軸受ブラケッ444には、リンクアーム442がヒンジ軸443を介して水平方向へ回動自在に連結されている。リンクアーム442の後端部には、油圧シリンダ441のロッド部が連結されている。油圧シリンダ441及びリンクアーム442等によって、先端部側トングレール4Bの回動機構44を構成している。
【0027】
また、基端部側トングレール4Aの長手方向中央付近には、レールの左右外方に突出するシリンダ支持部材446が形成されている。シリンダ支持部材446には、油圧シリンダ441のケース後端部がヒンジ軸445を介して水平方向へ回動自在に連結されている。先端部側トングレール4Bの先端部43は、油圧シリンダ441のロッド部が伸縮することによって、ヒンジ軸443を中心に鉄道車両5が待機するレール6に対して平行な状態から直交する状態まで略水平方向へ略90°回動する。ここで、先端部側トングレール4Bの先端部43が鉄道車両5が待機するレール6に対して平行な状態は、トングレール4の使用状態に相当し、先端部側トングレール4Bの先端部43が鉄道車両5が待機するレール6に対して直交する状態は、トングレール4の格納状態に相当する。なお、トングレール4の格納状態において、中間部42又は先端部43と鉄道車両5の先端部との最小隙間が、100〜150mm程度確保させていることが好ましい。
【0028】
また、基端部側トングレール4Aの基端部41は、基台3の側端部331に形成されたヒンジ軸411を介して上下方向に回動可能に連結されている。ヒンジ軸411は、後述する第3ばね受ブラケット447に支持されている。また、基端部側トングレール4Aには、左右内方へ延設された2つの補強部材451、452が、レールの長手方向で互いに離間して接合されている。一方の補強部材451は基端部41近傍に接合され、他方の補強部材452は中間部42a近傍に接合されている。基端部41近傍に接合された補強部材451には、第1ばね受ブラケット453が接合されている。また、第1ばね受ブラケット453の下方には、第2ばね受ブラケット454が基台3の側端部331から延設されている。第1ばね受ブラケット453と第2ばね受ブラケット454との間には、複数のばね部材455、455が装着されている。第1ばね受ブラケット453には、各ばね部材455、455のばねリテーナ457と当接する調整ボルト456、456がそれぞれ螺着されている。
【0029】
また、基台3の側端部331には、第3ばね受ブラケット447が基端部側トングレール4Aに沿ってシリンダ支持部材446の下方まで延設されている。第3ばね受ブラケット447とシリンダ支持部材446との間には、ばね部材448が装着されている。シリンダ支持部材446には、ばね部材448のばねリテーナ4481と当接する調整ボルト449が螺着されている。先端部側トングレール4Bの下端4B2と鉄道車両5が待機するレール6の上端61との隙間dを所定の寸法(20〜30mm)となるようにするとともに、本鉄道車両用トラバーサ10が先端部側トングレール4Bを格納状態にして移動レール2上を走行する時のトングレール4全体の上下振動を抑制させるため、上述したばね部材455、448のばね力を調整ボルト456、449によって調節する。
【0030】
<本鉄道車両用トラバーサの動作方法>
次に、本鉄道車両用トラバーサの動作方法について、図8を用いて説明する。図8に、図1に示す鉄道車両用トラバーサの動作フローチャート図を示す。
【0031】
図8に示すように、まず、原位置から鉄道車両待機位置に本鉄道車両用トラバーサ10を移動させる(ステップ:S1)。ここでは、操作盤322を操作して、バッテリ311から電力を駆動モータ35に供給することによって、走行車輪34を回動させる。なお、原位置は、移動レール2上で本鉄道車両用トラバーサ10が待機し、仮台車を返送・一時保管する位置である。
【0032】
次に、鉄道車両待機位置に本鉄道車両用トラバーサ10を停止させ、トングレール4を格納状態から使用状態へ回動させる(ステップ:S2)。ここでは、操作盤322を操作して、油圧ユニット321から油圧を油圧シリンダ441に供給して、先端部側トングレール4Bの先端部43を略90°回動させる。
【0033】
次に、本鉄道車両用トラバーサ10にトングレール4を経由して仮台車1(1a、1b)を搭載させる(ステップ:S3)。なお、仮台車1(1a、1b)には、自走用の駆動モータ12が装着されているので、搭載に際して駆動モータ12を作動させる。
【0034】
次に、トングレール4を使用状態から格納状態に回動させた上で(ステップ:S4)、原位置に本鉄道車両用トラバーサ10を移動させる(ステップ:S5)。トングレール4の回動は、油圧シリンダ441によって行い、本鉄道車両用トラバーサ10の移動は、駆動モータ35によって行う。
【0035】
次に、トングレール4を格納状態から使用状態へ回動させ(ステップ:S6)た後、本鉄道車両用トラバーサ10に搭載した仮台車1(1a、1b)を原位置に敷設された返送ラインのレール上へ移送させる(ステップ:S7)。仮台車1(1a、1b)の移送は、自走用の駆動モータ12によって行う。返送ラインのレール上に移送された仮台車1(1a、1b)は、新たに入荷される分解検査又は修繕の対象となる鉄道車両5に装着するため搬送される。
【0036】
次に、トングレール4を使用状態から格納状態に回動させた上で(ステップ:S8)、本鉄道車両用トラバーサ10を原位置に待機させる(ステップ:S9)。
以上のように、本鉄道車両用トラバーサ10を動作させることによって、既存の狭い車両待機スペース内で、鉄道車両5が鉄道車両用トラバーサ10と近接する位置で待機していても、鉄道車両5の先端部とトングレール4の先端部43とが干渉することなくすれ違い、トングレール4を格納状態から使用状態に移動させ、鉄道車両5が待機するレール6上のワーク(例えば、仮台車1)をトングレール4を経由して基台3上に無理なく搭載し、移送することができる。
【0037】
<作用効果>
以上、詳細に説明した本実施形態に係る鉄道車両用トラバーサ10によれば、トングレール4は、先端部43が略水平方向に回動可能に形成されているので、トングレール4の先端部43における上下方向の高さを略一定に維持しつつ、トングレール4の先端部43を回動させることができる。そのため、鉄道車両5が鉄道車両用トラバーサ10と近接する位置で待機していても、トングレール4の先端部43が待機する鉄道車両5の先端部と干渉するのを回避しながら、トングレール4を格納状態から使用状態に移動させることができる。
また、トングレール4の先端部43は、使用時において鉄道車両5が待機するレール6の上端61と当接し、上下方向で先細り状に形成されているので、トングレール4を格納状態から使用状態に移動させるとき、レール6上に待機する鉄道車両5における先端部の下端と当該レール6の上端61との間に形成される隙間をトングレール4の先端部43が通過することができる。そのため、トングレール4の全長を長く形成でき、トングレール4のレール面の勾配を緩やかにしてワーク1(本台車又は仮台車)の移動を容易にすることができる。
【0038】
その結果、既存の狭い車両待機スペース内で、鉄道車両5が鉄道車両用トラバーサ10と近接する位置で待機していても、鉄道車両5の先端部とトングレール4の先端部43とが干渉することなくすれ違い、トングレール4を格納状態から使用状態に移動させ、鉄道車両5が待機するレール6上のワーク(例えば、仮台車)をトングレール4を経由して基台3上に無理なく搭載し、移送することができる。
【0039】
よって、本実施形態によれば、車両待機スペースの省スペース化に寄与でき、レール6上に待機する鉄道車両5の先端部とトングレール4の先端部43とが干渉することなくすれ違い、トングレール4を格納状態から使用状態に移動させ得る鉄道車両用トラバーサ10を提供することができる。
【0040】
また、本実施形態によれば、トングレール4は、基台3の側端部331に連結される基端部41から長手方向の中間部42まで鉄道車両5が待機するレール6と平行に形成され、かつ、中間部42を中心にして先端部43が当該レール6に対して平行な状態から直交する状態まで略90°回動可能に形成されているので、略90°回動する先端部側トングレール4Bの重量を軽量化して、基台3の側端部331に連結される基端部側トングレール4Aの支持構造や先端部43の回動機構等をより一層簡素化させることができる。
【0041】
なお、トングレール4の格納状態において、トングレール4の中間部42又は先端部43とレール6上に待機する鉄道車両5の先端部との最小隙間は、100〜150mm程度確保されているので、本鉄道車両用トラバーサ10とレール6上に待機する鉄道車両5とがすれ違う時に、トングレール4が横方向へ多少振動しても、トングレール4の中間部42又は先端部43が、待機する鉄道車両5の先端部と干渉することを防止できる。
【0042】
また、本実施形態によれば、トングレール4は、基台3の側端部331に対して上方へ付勢された状態で基台3に支持され、無負荷時においてトングレール4の下端(4B2)と鉄道車両5が待機するレール6の上端61との間に所定の隙間(20〜30mm程度)dが形成されているので、本鉄道車両用トラバーサ10が移動レール2上を移動するときにトングレール4が多少振動しても、トングレール4の下端(4B2)が、鉄道車両5が待機するレール6の上端61と干渉することを防止できる。また、所定の隙間が20〜30mm程度あるので、トングレール4を格納状態から使用状態に移動させるとき、トングレール4の上端(4B1)とレール6上に待機する鉄道車両5の下端とが干渉することを簡単に回避させることができる。
【0043】
以上、本実施形態の鉄道車両用トラバーサ10を詳細に説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、本実施形態では、トングレール4を基台3における一方側の側端部331に1セット装着したが、必ずしもこれに限ることはない。例えば、トングレール4を基台3における両側の側端部331に2セット装着してもよい。
また、本実施形態では、トングレール4を中間部42で2分割したが、必ずしもこれに限ることはない。例えば、トングレール4を3以上に分割しても、分割せずに一体で水平方向に回動させてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1、1a、1b 仮台車(ワーク)
2 移動レール
3 基台
4 トングレール
5 鉄道車両
6 レール
10 鉄道車両用トラバーサ
41 基端部
42 中間部
43 先端部
61 上端
4B2 下端
d 所定の隙間
331 側端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10