(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-185939(P2017-185939A)
(43)【公開日】2017年10月12日
(54)【発明の名称】カウルルーバの係合構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20170919BHJP
B60R 13/04 20060101ALI20170919BHJP
F16B 5/00 20060101ALI20170919BHJP
【FI】
B62D25/08 H
B60R13/04 Z
F16B5/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-77201(P2016-77201)
(22)【出願日】2016年4月7日
(71)【出願人】
【識別番号】308013436
【氏名又は名称】小島プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 裕介
(72)【発明者】
【氏名】近藤 慎悟
【テーマコード(参考)】
3D023
3D203
3J001
【Fターム(参考)】
3D023AA01
3D023AB01
3D023AC11
3D023AD02
3D023AD25
3D203AA02
3D203BB38
3D203CB10
3D203DA37
3D203DA68
3J001FA05
3J001GA06
3J001GB01
3J001HA04
3J001HA10
3J001JB12
3J001JD09
3J001KA19
3J001KB01
(57)【要約】
【課題】組み付けの作業性を向上させたカウルルーバの係合構造を提供すること。
【解決手段】フロントガラス10の下端10aには、凹溝14aを有する被係合体14を備えたモール12が固着されている。自動車1のフロントガラス10とフロントフードとの間に配置されたカウルルーバ30の後端30aには、モール12の被係合体14に係合可能な係合体32が形成されている。そして、カウルルーバ30の後端30aをフロントガラス10の下端10aに係合させるカウルルーバ30の係合は、このカウルルーバ30の係合体32をモール12の被係合体14に上から引っ掛けた状態で、この被係合体14の凹溝14aに形成された隙間S2に楔40を圧入することで行われる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のフロントガラスとフロントフードとの間に配置されたカウルルーバの後端をフロントガラスの下端に係合させるカウルルーバの係合構造であって、
フロントガラスの下端には、凹溝を有する被係合体を備えたモールが固着されており、
カウルルーバの後端には、モールの被係合体に係合可能な係合体が形成されており、
カウルルーバの係合体をモールの被係合体に上から引っ掛けた状態で、この被係合体の凹溝に形成された隙間に楔を圧入するカウルルーバの係合構造。
【請求項2】
請求項1に記載のカウルルーバの係合構造であって、
圧入された楔の表面は、フロントガラスの表面とカウルルーバの表面とに対して面一となっているカウルルーバの係合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カウルルーバの係合構造に関し、詳しくは、自動車のフロントガラスの下縁とフロントフードとの間に配置されたカウルルーバの後端をフロントガラスの下端に係合させるカウルルーバの係合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、
図8に示すように、自動車101のフロントガラス110の下端110aとフロントフード(ボンネット)120の後端120aとの間に形成される隙間s1は、ワイパーモータ(図示しない)を目隠ししたり、複数の小孔群(図示しない)によって車室内に外気を取り込むためのカウルルーバ130によって塞がれている。このようなカウルルーバ130は、PP等の剛性を有する合成樹脂から一体的に成形されており、その前端130bがカウルインナパネル122に組み付けられ、その略コ字状の後端130aがフロントガラス110の下端110aを挟み込むように組み付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−13100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1の技術では、
図8から明らかなように、フロントガラス110は、前側に向けて下り傾斜している。そのため、カウルルーバ130の略コ字状の後端130aがフロントガラス110の下端110aを挟み込むとき、このカウルルーバ130をフロントガラス110に沿って前側に向けて下り傾斜の状態(姿勢)にセットする必要があった。すると、このセットしたカウルルーバ130がエンジンルーム内(ボンネット内)の各種の相手物(図示しない)に干渉してしまうこととなっていた。この干渉を回避させるため、このカウルルーバ130を撓ませなければいけなかった。したがって、大きな腕力を要するため、結果として、このカウルルーバ130の組み付けの作業性が悪いものとなっていた。
【0005】
本発明は、このような課題を解決しようとするもので、その目的は、組み付けの作業性を向上させたカウルルーバの係合構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するためのものであって、以下のように構成されている。
請求項1に記載の発明は、自動車のフロントガラスとフロントフードとの間に配置されたカウルルーバの後端をフロントガラスの下端に係合させるカウルルーバの係合構造である。フロントガラスの下端には、凹溝を有する被係合体を備えたモールが固着されている。カウルルーバの後端には、モールの被係合体に係合可能な係合体が形成されている。そして、カウルルーバの係合は、このカウルルーバの係合体をモールの被係合体に上から引っ掛けた状態で、この被係合体の凹溝に形成された隙間に楔を圧入することで行われる。
【0007】
請求項1の発明によれば、このカウルルーバの引掛部の引っ掛けは、フロントガラスの下端とフロントフードの後端との間に形成される隙間の上方にカウルルーバをセットし、このセットしたカウルルーバを下方に下ろすことで行われている。言い換えると、このカウルルーバの引掛部の引っ掛け相手であるモールの引掛部の略真上からカウルルーバを下ろす作業となっている。そのため、従来技術とは異なり、カウルルーバを撓ませるための大きな腕力を要することがない。したがって、このカウルルーバの組み付けの作業性を向上させることができる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のカウルルーバの係合構造であって、圧入された楔の表面は、フロントガラスの表面とカウルルーバの表面とに対して面一となっている。
【0009】
請求項2の発明によれば、楔の圧入が完了した状態におけるカウルルーバの見栄えを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例に係るカウルルーバの係合構造を適用した自動車の斜視図である。
【
図2】
図1のカウルルーバの係合構造を示す縦断面図である。
【
図3】
図2のカウルルーバをフロントガラスに係合させる工程を順に説明する図であり、第1の工程を説明する図である。
【
図6】
図5の第3の工程を前側から見た模式図である。
【
図8】従来技術に係るカウルルーバの係合構造を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を、
図1〜7を用いて説明する。なお、以下の説明にあたって、上、下、前、後、左、右とは、上述した図に記載した、上、下、前、後、左、右の方向、すなわち、自動車1を基準にしたときの上、下、前、後、左、右の方向を示している。
【0012】
図1〜2に示すように、自動車1のフロントガラス10の下端10aとフロントフード(ボンネット)20の後端20aとの間に形成される隙間S1は、ワイパーモータ(図示しない)を目隠ししたり、複数の小孔群(図示しない)によって車室内に外気を取り込むためのカウルルーバ30によって塞がれている。そのため、このカウルルーバ30は、自動車1の幅方向(左右方向)に沿って延びたパネル状のカバー部材となっている。
【0013】
このフロントガラス10の下端10aの裏面側には、凹溝14aを有する被係合体14を備えたモール12が接着剤12aを介して固着されている(
図3参照)。このモール12は、フロントガラス10の幅長と同程度に幅方向に沿って延びるように形成されている。この被係合体14の凹溝14aの内面の外側には、後述するカウルルーバ30の引掛部32aを引っ掛け可能な引掛部14bが形成されている。また、この被係合体14の凹溝14aの内面の内側には、後述する楔40の張出部42aに係合可能な係合部14cが形成されている。このモール12は、PP等の剛性を有する合成樹脂から一体的に成形されている。
【0014】
一方、このカウルルーバ30の後端30aには、上述したモール12の被係合体14に係合可能な係合体32が形成されている。この係合体32は、
図3からも明らかなように、フック形状となっており、その先端が上述したモール12の被係合体14に形成されている引掛部14bを引っ掛け可能な引掛部32aとなっている。また、この係合体32には、後述する楔40の張出部42aに係合可能な係合部32bが形成されている。このカウルルーバ30も、PP等の剛性を有する合成樹脂から一体的に成形されている。
【0015】
続いて、
図3〜7を参照して、上述したカウルルーバ30の組み付けの手順の一例を説明する。まず、自動車1のフロントフード20を開けた状態で、フロントガラス10の下端10aとフロントフード20の後端20aとの間に形成される隙間S1の上方にカウルルーバ30をセットする作業を行う(
図3参照)。次に、このセットしたカウルルーバ30を下方に下ろす作業を行う(
図4参照)。
【0016】
このとき、
図4に示すように、カウルルーバ30の係合体32の引掛部32aをフロントガラス10のモール12の被係合体14の引掛部14bに引っ掛ける。次に、この引っ掛けた状態で、この被係合体14の凹溝14aに形成された隙間S2に楔40を嵌め込む作業を行う(
図5参照)。
【0017】
この楔40は、
図5から明らかなように、支柱42を備えたものとなっている。この支柱42には、その表面から張り出す一対の張出部42aが形成されている。この一方の張出部42aは、上述したようにモール12の係合部14cに係合可能となっている。また、この他方の張出部42aも、上述したようにカウルルーバ30の係合部32bに係合可能となっている。
【0018】
この嵌め込む作業は、
図6に示すように、楔40の表面40aを一方(例えば、右側)から他方(例えば、左側)に向けてローラ50を転がすことによって行われている。これにより、嵌め込まれた楔40の一方の張出部42aがモール12の係合部14cに撓められ、これと同時に、圧入された楔40の他方の張出部42aもカウルルーバ30の係合部32bに撓められる。
【0019】
やがて、この撓められた一対の張出部42aが、これらモール12の係合部14cとカウルルーバ30の係合部32bとを乗り越える。すると、この撓みが解消されるため、この楔40の嵌め込みが完了することとなる(
図7参照)。すなわち、楔40の圧入が完了することとなる。これにより、カウルルーバ30の後端30aをフロントガラス10の下端10aに係合させることができる。
【0020】
なお、
図7からも明らかなように、嵌め込み(圧入)が完了した楔40の表面40aは、フロントガラス10の表面10bとカウルルーバ30の表面30cとに対して面一となっている。次に、カウルルーバ30の前端30b側をカウルインナパネル22にクリップ(図示しない)を介して組み付ける作業を行う。最後に、フロントフード20を閉める作業を行う。このようにしてカウルルーバ30を組み付けることができる。
【0021】
なお、このカウルルーバ30の前端30bには、チューブ状のシール材24が固着されている。このシール材24は、閉めたフロントフード20によって押圧され弾性変形するため、エンジンルームからの熱風がカウルルーバ30の小孔群に入り込むことを防止できる。
【0022】
本発明の実施例に係るカウルルーバ30の係合は、上述したよう構造から成っている。この構造によれば、フロントガラス10の下端10aの裏面側には、凹溝14aを有する被係合体14を備えたモール12が接着剤12aを介して固着されている。この被係合体14の凹溝14aの内面の外側には、カウルルーバ30の引掛部32aを引っ掛け可能な引掛部14bが形成されている。このカウルルーバ30の後端30aには、モール12の被係合体14に係合可能な係合体32が形成されている。この係合体32には、楔40の張出部42aに係合可能な係合部32bが形成されている。そして、フロントガラス10の下端10aに対するカウルルーバ30の後端30aの係合は、このカウルルーバ30の係合体32の引掛部32aをフロントガラス10のモール12の被係合体14の引掛部14bに上から引っ掛けた状態で、この被係合体14の凹溝14aに形成された隙間S2に楔40を嵌め込む(圧入する)ことで行われている。
【0023】
この引掛部32aの引っ掛けは、フロントガラス10の下端10aとフロントフード20の後端20aとの間に形成される隙間S1の上方にカウルルーバ30をセットし、このセットしたカウルルーバ30を下方に下ろすことで行われている。言い換えると、このカウルルーバ30の引掛部32aの引っ掛け相手であるモール12の引掛部14bの略真上からカウルルーバ30を下ろす作業となっている。そのため、従来技術とは異なり、カウルルーバ30を撓ませるための大きな腕力を要することがない。したがって、このカウルルーバ30の組み付けの作業性を向上させることができる。
【0024】
また、この構造によれば、嵌め込み(圧入)が完了した楔40の表面40aは、フロントガラス10の表面10bとカウルルーバ30の表面30cとに対して面一となっている。そのため、楔40の嵌め込み(圧入)が完了した状態におけるカウルルーバ30の見栄えを向上させることができる。
【符号の説明】
【0025】
1 自動車
10 フロントガラス
10a 下端
12 モール
14 被係合体
14a 凹溝
20 フロントフード
30 カウルルーバ
30a 後端
32 係合体
S2 隙間