【解決手段】ゲル化剤を含む分散媒Bに着色塗料Aを接触させ、着色塗料Aの表面をゲル化したゲル化物Gを含有する模様塗料組成物の製造方法において、平坦な多孔質体10の孔11に前記着色塗料Aを塗布した後、この多孔質体10と前記分散媒Bとを接触させる、模様塗料組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の模様塗料組成物の製造方法は、ゲル化剤を含む分散媒に着色塗料を接触させ、着色塗料の表面をゲル化したゲル化物を含有する模様塗料組成物を製造する方法である。
なお、本発明において「所望の模様の塗膜」とは、塗膜の模様の大きさや形状が設計通りであることを意味し、塗膜の模様の配置は規則的であってもよいし、不規則であってもよい。
【0014】
<着色塗料>
着色塗料としては、例えば樹脂エマルションと着色顔料と親水性コロイド形成物質とを含むエマルション塗料や、キトサンと着色顔料と錯体形成物質とを含むキトサン含有塗料などが挙げられる。模様塗料組成物より形成される塗膜に抗菌効果を付与できる点では、キトサン含有塗料が好ましい。
【0015】
(エマルション塗料)
エマルション塗料に含まれる樹脂エマルションとしては、例えばポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル、ベオバ(分岐脂肪酸ビニルエステル)、天然又は合成ゴムや、それらの共重合体のエマルションなど、一般に市販されている樹脂エマルションを使用することができる。中でも、アクリル樹脂が好ましい。
【0016】
着色顔料としては、例えばカーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄、クロム酸鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド等の無機顔料;パール顔料、マイカ顔料、マイカコーティングパール顔料、アルミニウム粉、ステンレス粉等の光輝性顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドンレッド等の有機顔料などが挙げられる。これら着色顔料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
着色顔料の含有量は、樹脂エマルション100質量部に対して、0.01〜50質量部が好ましく、より好ましくは0.1〜30質量部である。
【0017】
エマルション塗料が親水性コロイド形成物質を含有することにより、該親水性コロイド形成物質と後述するゲル化剤とが反応してエマルション塗料をゲル化膜でカプセル化することができる。
親水性コロイド形成物質としては、例えばセルロース誘導体;ポリチレンオキサイド;ポリビニルアルコール;カゼイン、デンプン、ガラクトマンノン、グアルゴム、ローカストビーンゴム等の天然高分子などを含有する水溶液が挙げられる。中でもグアルゴムの水溶液が好ましく、該水溶液の濃度は0.5〜5質量%が好ましく、より好ましくは1.0〜3質量%である。これら親水性コロイド形成物質は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
親水性コロイド形成物質の含有量は、樹脂エマルション100質量部に対して、0.05〜5質量部が好ましく、より好ましくは0.1〜3.0質量部である。親水性コロイド形成物質の含有量が上記範囲内であれば、安定したゲル化膜が得られやすくなる。
【0018】
エマルション塗料には、必要に応じて体質顔料や公知の添加剤(例えば増粘剤、分散剤、消泡剤、防腐剤、レベリング剤等)が任意成分として含まれてもよい。
体質顔料としては、カオリン、硫酸バリウム、含水ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどが挙げられる。これら体質顔料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
体質顔料の含有量は、エマルション塗料100質量%中、0〜30質量%が好ましく、より好ましくは0〜20質量%である。
【0019】
エマルション塗料は、上記樹脂エマルションに親水性コロイド形成物質を加え撹拌混合したものに、着色顔料と水の混合溶液を加えてさらに撹拌混合して得られる。
水の含有量は、エマルション塗料100質量%中、40〜90質量%が好ましく、より好ましくは50〜80質量%である。
【0020】
(キトサン含有塗料)
キトサン含有塗料に含まれるキトサンとしては、市販品を用いることができる。
着色顔料としては、エマルション塗料の説明において先に例示した着色顔料が挙げられる。これら着色顔料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
着色顔料の含有量は、キトサン含有塗料に含まれるキトサンと、錯体形成物質と水との合計100質量部に対して、0.01〜50質量部が好ましく、より好ましくは0.1〜30質量部である。
【0021】
キトサン含有塗料が錯体形成物質を含有することにより、キトサンが錯体形成物質と水中で反応し、イオン錯体を形成する。このイオン錯体を分散媒に接触させることでイオン錯体の表面がゲル化し、キトサン膜が形成される。
錯体形成物質としては、塩酸等の無機酸;酢酸、ギ酸、アクリル酸、乳酸、リンゴ酸等の有機酸などが挙げられる。中でも、塩酸の水溶液が好ましい。
錯体形成物質の含有量は、キトサン100質量部に対して、20〜150質量部が好ましく、より好ましくは50〜100質量部である。
【0022】
キトサン含有塗料には、必要に応じて、樹脂エマルション、体質顔料や公知の添加剤(例えば増粘剤、分散剤、消泡剤、防腐剤、レベリング剤等)が任意成分として含まれてもよい。
体質顔料および添加剤としては、エマルション塗料の説明において先に例示した体質顔料および添加剤が挙げられる。
【0023】
キトサン含有塗料は、上記錯体形成物質の水溶液にキトサンを加え撹拌混合したものに着色顔料を加え、さらに撹拌混合して得られる。
水の含有量は、キトサン含有塗料100質量%中、40〜90質量%が好ましく、より好ましくは50〜80質量%である。
【0024】
<分散媒>
分散媒は、ゲル化剤を含む水性の分散媒である。
ゲル化剤としては、例えばマグネシウムモンモリロナイト粘土、ナトリウムペンタクロロフェノール、ホウ酸塩、タンニン酸、乳酸チタン、塩化カルシウム、水酸化ナトリウムなどを含有する水溶液が挙げられる。中でも、着色塗料としてエマルション塗料を用いる場合はホウ酸塩の水溶液が好ましく、キトサン含有塗料を用いる場合は塩化カルシウムの水溶液が好ましい。ホウ酸塩の水溶液の濃度は0.05〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜8質量%である。塩化カルシウムの水溶液の濃度は0.05〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%である。これらゲル化剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
着色塗料としてエマルション塗料を用いる場合、ゲル化剤の含有量は、分散媒100質量%中、0.05〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜3質量%である。一方、着色塗料としてキトサン含有塗料を用いる場合、ゲル化剤の含有量は、分散媒100質量%中、0.1〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜3質量%である。
ゲル化剤の含有量が上記範囲内であれば、安定したゲル化膜が得られやすくなる。
【0025】
分散媒には、必要に応じて体質顔料や水溶性高分子化合物、公知の添加剤が任意成分として含まれてもよい。
体質顔料としては、エマルション塗料の説明において先に例示した体質顔料が挙げられる。中でも、含水ケイ酸マグネシウムの分散液が好ましく、該分散液の濃度は0.05〜20質量%が好ましく、より好ましくは2〜10質量%である。これら体質顔料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
体質顔料の含有量は、分散媒100質量%中、0.05〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量部である。
【0026】
水溶性高分子化合物としては、例えばヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコールなどを含有する水溶液が挙げられる。中でもカルボキシメチルセルロースまたはメチルセルロースの水溶液が好ましく、これら水溶液の濃度は0.1〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜3質量%である。これら水溶性高分子化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
水溶性高分子化合物の含有量は、分散媒100質量%中、0.05〜3質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜2質量%である。
【0027】
添加剤としては、エマルション塗料の説明において先に例示した添加剤が挙げられる。
【0028】
分散媒は、ゲル化剤を含む水溶液と、必要に応じて体質顔料を含む分散液、および水溶性高分子化合物を含む水溶液等とを撹拌混合したものに、水を加え希釈することにより得られる。
水の含有量は、分散媒100質量%中、20〜80質量%が好ましく、より好ましくは30〜70質量%である。
【0029】
<製造方法>
(第一の実施形態)
以下、本発明の第一の実施形態の模様塗料組成物の製造方法の一例について、
図1、2を参照しながら説明する。
【0030】
第一の実施形態の模様塗料組成物の製造方法では、平坦な板状の多孔質体を用いる。
第一の実施形態に用いる多孔質体は、平坦な板に複数の貫通孔が形成されたものである。
多孔質体の材質としては特に限定されず、金属製の多孔質体であってもよいし、樹脂製の多孔質体であってもよい。
多孔質体の孔の形状についても特に限定されず、所望とする模様の形に対応した形状の孔を有する多孔質体を用いることができる。
多孔質体の厚み、すなわち孔の厚み(深さ)は特に限定されず、所望とするゲル状の着色粒子の厚みに応じて決定すればよい。ただし、薄くなるほど孔からゲル状の着色粒子(ゲル化物)が剥がれやすくなるため、通常は、10〜300μmが好ましい。
【0031】
多孔質体としては、例えば、
図1に示すパンチングメタル、
図2に示すエクスパンドメッシュなどが挙げられる。
パンチングメタルは、打ち抜き機によって金属板に多数の孔を打ち抜いたものである。
エクスパンドメッシュは、金属板や樹脂板に切れ目を入れて、引き伸ばしたものである。なお、金属版に切れ目を入れて引き伸ばしたものを特に「エクスパンドメタル」ともいう。
【0032】
第一の実施形態の模様塗料組成物の製造方法では、
図1に示すように、まず、平坦な板状の多孔質体10の孔11に着色塗料Aを塗布する。
具体的には着色塗料Aに多孔質体10を浸漬させて、多孔質体10の孔11に着色塗料Aを塗布した後、多孔質体10を着色塗料Aから引き上げる。こうすることで、孔11の1つ1つに着色塗料Aの膜が張った状態となる。
なお、着色塗料Aの塗布方法としては、
図1に示す浸漬法に限定されず、例えばカーテンコート法、フローコート法、刷毛塗り法、ローラ塗装法、しごき塗り法などを用いてもよい。
【0033】
つぎに、孔11に着色塗料Aを塗布した多孔質体10と分散体Bとを接触させる。
具体的には分散体Bに多孔質体10を浸漬させて、多孔質体10と分散体Bとを接触させる。すると、各孔11に塗布された着色塗料Aの表面がゲル化することで被膜を形成したゲル化物G(表面がゲル化した着色塗料)となる。このとき、水流や振動などの衝撃を分散媒Bに加えたり、多孔質体10を上下左右に揺すったりすることで、多孔質体10の孔11からゲル化物Gが剥がれ、分散媒B中にゲル化物Gが分散した模様塗料組成物が得られる。
なお、多孔質体10の孔11からゲル化物Gを剥がすことなく分散媒Bから多孔質体10を引き上げた後、多孔質体10の上方からエアを吹き付けて孔11からゲル化物Gを剥がして容器等に回収してもよい。
【0034】
また、多孔質体10と分散体Bとの接触方法としては、
図1に示す浸漬法に限定されず、例えばスプレー塗装法、シャワー塗装法、カーテンコート法、フローコート法などを用いてもよい。
スプレー塗装法、シャワー塗装法、カーテンコート法、フローコート法などの方法により多孔質体10と分散体Bとを接触させる場合、強い水圧で分散媒を多孔質体10に吹き付ければ、その勢いで多孔質体10の孔11からゲル化物Gが剥がれやすくなる。多孔質体10の孔11からゲル化物Gが剥がれない場合は、多孔質体10の上方からエアを吹き付ければよい。
多孔質体10の孔11から剥がれたゲル化物Gは、容器に回収する。ゲル化物の乾燥を防ぐ観点では、容器に分散媒などの溶媒が収容されていてもよい。
【0035】
第一の実施形態の模様塗料組成物の製造方法では、多孔質体の孔に張られた着色塗料の膜を乾燥させずに分散媒と接触させることが好ましい。着色塗料の膜を乾燥させた後に分散媒と接触させると、乾燥した状態の着色塗料の膜の表面がゲル化したゲル化物が分散媒中に存在することになる。このゲル化物は圧力等によって変形しにくいため、スプレー塗装時にノズルが詰まるおそれがある。また、乾燥機等を用いた乾燥時のコストがかかる。
着色塗料の膜を乾燥させずに分散媒と接触させれば、未乾燥の着色塗料の膜の表面がゲル化したゲル化物が分散媒中に存在することになるので、スプレー塗装してもゲル化物がスプレー時の圧力でノズルから吐出する際に変形しやすく、ノズルが詰まりにくい。なお、ノズルから吐出した後のゲル化物は、圧力から開放されるため元の形状に戻る。また、着色塗料の膜を乾燥させずに分散媒へ移動させれば、乾燥時のコストがかからないため、低コストで模様塗料組成物を製造できる。
【0036】
ゲル化物と、ゲル化物が分散した分散媒は、そのまま模様塗料組成物として用いてもよいし、ゲル化物のみを他の塗料に配合して用いてもよい。
また、第一の実施形態の模様塗料組成物の製造方法では、孔の形状の異なる複数の平坦な板状の多孔質体を用いてゲル化物を製造してもよい。
さらに、着色塗料を色の異なるものに交換すれば、色調の異なるゲル化物が分散媒に複数混在した模様塗料組成物が得られる。なお、色調の異なるゲル化物が分散媒に複数混在した模様塗料組成物を「多彩模様塗料組成物」ともいう。
多彩模様塗料組成物を製造する方法としては、1色目のゲル化物が分散した分散媒と、2色目以降の着色塗料が孔に塗布された多孔質体とを接触させ、1つの分散媒中で複数の色調の異なるゲル化物を混合する方法;ゲル化物が分散した分散媒をゲル化物の色毎に複数製造し、所望の色合いとなるように各分散媒を混合する方法;色毎にゲル化物を製造しておき、所望の色合いとなるように各ゲル化物を混合する方法などが挙げられる。
【0037】
また、模様塗料組成物には、必要に応じてバインダの役割を果たす樹脂エマルションや公知の添加剤が任意成分として含まれてもよい。
樹脂エマルションとしては、エマルション塗料の説明において先に例示した樹脂エマルションが挙げられる。中でも、アクリル樹脂が好ましい。
樹脂エマルションの含有量は、模様塗料組成物100質量%中、50質量%以下が好ましく、より好ましくは20〜40質量%である。樹脂エマルションの含有量が上記範囲内であれば、模様塗料組成物の塗装作業性がよく、耐久性のよい塗膜が得られる。
【0038】
添加剤としては、エマルション塗料の説明において先に例示した添加剤が挙げられる。
【0039】
(第二の実施形態)
以下、本発明の第二の実施形態の模様塗料組成物の製造方法の一例について、
図3、4を参照しながら説明する。
【0040】
第二の実施形態の模様塗料組成物の製造方法では、平坦なベルト状の多孔質体を用いる。
第二の実施形態に用いる多孔質体は、平坦な無端ベルトに複数の貫通孔が形成されたものである。
平坦なベルト状の多孔質体としては、パンチングメタルやエクスパンドメッシュを無端ベルト状に加工したものが挙げられる。
なお、多孔質体の材質や厚み、孔の形状などは、第一の実施形態と同様である。
【0041】
第二の実施形態の模様塗料組成物の製造方法では、
図3に示すように、まず、平坦なベルト状の多孔質体20の孔(図示略)に着色塗料Aを塗布する。
具体的には多孔質体20に着色塗料Aをカーテンコート法、フローコート法、刷毛塗り法、ローラ塗装法、しごき塗り法などの方法により塗布する。こうすることで、孔11の1つ1つに着色塗料Aの膜が張った状態となる。
なお、着色塗料Aの塗布方法としては、
図3に示す方法に限定されず、例えば着色塗料A中に多孔質体20を走行させる方法を用いてもよい。
【0042】
つぎに、孔に着色塗料Aを塗布した多孔質体20と分散体Bとを接触させる。
具体的には多孔質体20に分散体Bをスプレー塗装法、シャワー塗装法、カーテンコート法、フローコート法などの方法により吹き付ける。すると、各孔に塗布された着色塗料の表面がゲル化することで被膜を形成したゲル化物G(表面がゲル化した着色塗料)となる。このとき、強い水圧で分散媒を多孔質体20に吹き付ければ、その勢いで多孔質体20の孔からゲル化物Gが剥がれやすくなる。
多孔質体20の孔からゲル化物Gが剥がれない場合は、多孔質体20の上方からエアCを吹き付ければよい。
多孔質体20の孔から剥がれたゲル化物Gは、容器Dに回収する。ゲル化物の乾燥を防ぐ観点では、容器に分散媒などの溶媒が収容されていてもよい。
【0043】
なお、多孔質体20と分散体Bとの接触方法としては、
図3に示す方法に限定されず、例えば
図4に示すように、分散体B中に多孔質体20を走行させる方法を用いてもよい。
分散体B中に多孔質体20を走行させる際、水流や振動などの衝撃を分散媒Bに加えることで、多孔質体20の孔からゲル化物Gが剥がれ、分散媒B中にゲル化物Gが分散した模様塗料組成物が得られる。
分散媒B中で多孔質体20の孔からゲル化物Gが剥がれることなく多孔質体20が分散媒Bを通過した場合は、多孔質体20の上方からエアCを吹き付けて孔からゲル化物Gを剥がして容器Dに回収してもよい。
【0044】
第二の実施形態の模様塗料組成物の製造方法では、多孔質体の孔に張られた着色塗料の膜を乾燥させずに分散媒と接触させることが好ましい。
【0045】
ゲル化物と、ゲル化物が分散した分散媒は、そのまま模様塗料組成物として用いてもよいし、ゲル化物のみを他の塗料に配合して用いてもよい。
また、第二の実施形態の模様塗料組成物の製造方法では、孔の形状の異なる複数の平坦なベルト状の多孔質体を用いてゲル化物を製造してもよい。
さらに、着色塗料を色の異なるものに交換すれば、色調の異なるゲル化物が分散媒に複数混在した模様塗料組成物が得られる。
【0046】
また、模様塗料組成物には、必要に応じてバインダの役割を果たす樹脂エマルションや公知の添加剤が任意成分として含まれてもよい。
樹脂エマルションとしては、エマルション塗料の説明において先に例示した樹脂エマルションが挙げられる。中でも、アクリル樹脂が好ましい。
添加剤としては、エマルション塗料の説明において先に例示した添加剤が挙げられる。
【0047】
<作用効果>
以上説明した本発明の模様塗料組成物の製造方法によれば、着色塗料の表面がゲル化したゲル化物を、平坦な多孔質体の孔に着色塗料を塗布した後、この多孔質体と分散媒とを接触させることで製造する。このように平坦な多孔質体を用いることで、設計通りの模様を形成できる。よって、本発明により得られる模様塗料組成物からは、所望とする模様の塗膜を再現性よく形成でき、色再現性にも優れる。
しかも、平坦な多孔質体は、例えば
図5に示すような網状体を用いる場合とは異なり、孔の厚みが一定である。よって、各孔における着色塗料の付着量や分散媒との接触が均一となりやすく、均一な厚みのゲル化物が得られやすい。また、平坦な多孔質体の孔からゲル化物が剥がれやすくもなる。
よって、本発明によれば、ゲル化物の厚みのバラつきを抑制できる。
【0048】
また、特許文献1に記載のように、ゲル化物を分散機で撹拌しながら細分化する方法の場合、連続生産するのは困難であるが、本発明の第二の実施形態であれば平坦なベルト状の多孔質体を用いるので、連続生産が可能である。
【0049】
<用途>
本発明により得られる模様塗料組成物の用途については特に制限はなく、モルタル、コンクリート、窯業系素材、プラスチック、金属、木材、紙など、種々の対象物に塗布することが可能である。塗布時における模様塗料組成物の塗布量には特に制限はないが、通常、300〜600g/m
2となるように塗布するのが好ましい。また、塗装方法にも制限はなく、刷毛、こて、ローラ、スプレーなどの公知の方法で塗装することができ、塗装後に常温乾燥、加熱乾燥することができる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、例中「部」とは「質量部」を、「%」とは「質量%」を示す。
【0051】
「着色塗料の製造」
<エマルション塗料の製造>
アクリル樹脂エマルション(日本アクリル化学株式会社製、「プライマルAC−38」)38部と、非イオン性グアルゴム誘導体の1.5%水溶液28.5部(固形分0.43部)とを混合し、混合溶液(a)を調製した。
別途、着色顔料としてチタン白10部と、アニオン性高分子分散剤(日本アクリル化学株式会社製、「オロタン731」)1部と、水22.5部とを混合し、混合溶液(b)を調製した。
混合溶液(a)に混合溶液(b)を加え撹拌し、エマルション塗料を得た。
【0052】
<キトサン含有塗料の製造>
乳酸の5%水溶液95部に、キトサン5部を徐々に加えて90分間撹拌し、キトサン溶液を調製した。得られたキトサン溶液100部に、茶系顔料1部を添加して20分間撹拌し、キトサン含有塗料を得た。
【0053】
「分散媒の製造」
<分散媒(1)の製造>
含水ケイ酸マグネシウムの4%水中分散液25部(固形分1部)に、重ホウ酸アンモニウムの5%水溶液5部(固形分0.25部)と、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの1%水溶液25部(固形分0.25部)を加え撹拌混合した後、水45部を加えて希釈し、分散媒(1)を得た。
【0054】
<分散媒(2)の製造>
20%塩化カルシウム水溶液50部と、1.5%メチルセルロース水溶液50部とを混合し、分散媒(2)を得た。
【0055】
「実施例1」
着色塗料としてエマルション塗料を用い、分散媒として分散媒(1)を用いた。また、平坦な多孔質体として、金属板に直径5mmの孔が打ち抜かれた板状のパンチングメタルを用いた。
図1に示すように、多孔質体10を着色塗料Aに浸漬させて、多孔質体10の孔11に着色塗料Aを塗布した後、多孔質体10を着色塗料Aから引き上げた。多孔質体10の孔11に着色塗料Aの膜が張っていることを目視にて確認した。
つぎに、孔11に着色塗料Aを塗布した多孔質体10を分散媒Bに浸漬させて、多孔質体10と分散体Bとを接触させ、各着色塗料の膜の表面をゲル化した白色のゲル化物G(表面がゲル化した着色塗料の膜)とした。多孔質体10を上下左右に揺すって孔11からゲル化物Gを剥離し、分散媒B中にゲル化物Gが分散した模様塗料組成物を得た。
得られた模様塗料組成物に含まれる白色のゲル化物Gは、直径5mmの大きさに揃っていた。また、ゲル化物Gを光学顕微鏡にて観察したところ、厚みのバラつきも抑制されていた。
【0056】
「実施例2」
着色塗料としてキトサン含有塗料を用い、分散媒として分散媒(2)を用いた以外は、実施例1と同様にして模様塗料組成物を得た。
得られた模様塗料組成物に含まれる茶色のゲル化物は、直径5mmの大きさに揃っていた。また、ゲル化物を光学顕微鏡にて観察したところ、厚みのバラつきも抑制されていた。
【0057】
「比較例1」
分散媒(1)40部に、エマルション塗料60部を加えて、粒径が10mmになるまでディソルバで撹拌しながら細分化して、着色塗料の表面をゲル化した白色のゲル化物が分散媒(1)に分散した模様塗料組成物を得た。
得られた模様塗料組成物には、1mm角以下の微細なゲル化物と、10mm角のゲル化物と、20mm×3mmの紐状のゲル化物とが混在しており、ゲル化物の大きさにバラつきがあった。
【0058】
「比較例2」
平坦な多孔質体の代わりに、
図5に示すような網状体を用いた以外は、実施例1と同様にして模様塗料組成物を得た。
得られた模様塗料組成物に含まれる白色のゲル化物Gは、直径5mmの大きさに揃っていた。
しかし、ゲル化物を光学顕微鏡にて観察したところ、厚みにバラつきがあった。