【実施例】
【0054】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本実施例に何ら限定されるものでない。まず、実施例及び比較例中の測定方法及び評価方法について説明する。
(気泡面積比)
発泡粒子及び発泡成形体中の気泡の気泡面積比は、次の通りにして測定する。まず、切断面を走査型電子顕微鏡により300倍で0.13mm
2の面積を撮影する。撮影した画像をA4用紙に印刷し、すべての気泡において平均気泡径を算出する。なお、気泡径は、気泡断面の長径及び短径を測定し、短径と長径の相加平均値により得られた値とする。具体的には、気泡断面の外側輪郭線上において相互の距離が最大となる任意の2点を選び、この2点間の距離を「気泡の長径」とする。また、この気泡の長径に対して直交する直線と気泡断面の外側輪郭線とが交わる任意の2点のうち相互の距離が最大となる任意の2点を選び、この2点間の距離を「気泡の短径」とする。平均気泡径が、5μm以上かつ30μm未満の気泡径の小気泡と30〜100μmの気泡径の大気泡について、用紙から気泡膜に沿ってはさみで切り出し、用紙の重量をそれぞれ測定する。用紙重量を測定し(小気泡/大気泡)の重量比を算出する。上述と同様の要領で発泡粒子及び発泡成形体を切断し、拡大写真を得、これらの拡大写真に基づいて上述と同様の要領で(小気泡/大気泡)の重量比を算出する。10枚の拡大写真において、(小気泡/大気泡)の重量比の相加平均値を気泡面積比とする。
【0055】
(気泡数比)
発泡粒子及び発泡成形体中の気泡の気泡数比は、次の通りにして測定する。まず、切断面を走査型電子顕微鏡により300倍で0.13mm
2の面積を撮影する。撮影した画像をA4用紙に印刷し、すべての気泡において平均気泡径を算出する。なお、気泡径は、気泡断面の長径及び短径を測定し、短径と長径の相加平均値により得られた値とする。具体的には、気泡断面の外側輪郭線上において相互の距離が最大となる任意の2点を選び、この2点間の距離を「気泡の長径」とする。また、この気泡の長径に対して直交する直線と気泡断面の外側輪郭線とが交わる任意の2点のうち相互の距離が最大となる任意の2点を選び、この2点間の距離を「気泡の短径」とする。平均気泡径が、5μm以上かつ30μm未満の気泡径の小気泡と30〜100μmの気泡径の大気泡について、用紙上で気泡数を計数する。計数した気泡数において、(小気泡の気泡数/大気泡の気泡数)の数量比を算出する。上述と同様の要領で発泡粒子及び発泡成形体を切断し、拡大写真を得、これらの拡大写真に基づいて上述と同様の要領で(小気泡の気泡数/大気泡の気泡数)の数量比を算出する。10枚の拡大写真において、(小気泡の気泡数/大気泡の気泡数)の数量比の相加平均値を気泡面積比とする。
【0056】
(界面アスペクト比)
発泡粒子及び発泡成形体中の気泡の界面アスペクト比は、次の通りにして測定する。まず、発泡粒子及び発泡成形体を切断し、切断面を走査型電子顕微鏡により300倍で0.13mm
2の面積を撮影する。界面は、発泡粒子の表面(発泡成形体では、発泡粒子の融着面)と、表面に対して直交する方向に発泡粒子(発泡成形体)の厚みの2.5%の深さとの間の部分(表面近傍)とする。次に、これにより得られた撮影像に含まれている30個の気泡についてアスペクト比を測定し、その相加平均値を界面アスペクト比とする。なお、アスペクト比は、気泡断面の長径及び短径を測定し、短径を長径で除することにより得られた値とする。具体的には、気泡断面の外側輪郭線上において相互の距離が最大となる任意の2点を選び、この2点間の距離を「気泡の長径」とする。また、この気泡の長径に対して直交する直線と気泡断面の外側輪郭線とが交わる任意の2点のうち相互の距離が最大となる任意の2点を選び、この2点間の距離を「気泡の短径」とする。
なお、撮影像において断面が露出している気泡が存在している場合、このような気泡はアスペクト比の測定対象から除外する。例えば、発泡体から未発泡の表皮を切断除去した場合は、発泡体表面に断面が露出している気泡が存在している可能性がある。
【0057】
(ガラス転移温度)
ガラス転移温度は、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」に記載されている方法で測定する。但し、サンプリング方法・温度条件に関しては以下のように行う。
示差走査熱量計装置 DSC6220型(エスアイアイナノテクノロジー社製)を用いアルミニウム製測定容器の底にすきまのないよう試料を約6mg充てんする。試料を、窒素ガス流量20mL/minの下、20℃/minの昇温速度で30℃から220℃まで昇温する。10分間保持後速やかに試料を取出し、25±10℃の環境下にて放冷させた後、20℃/minの昇温速度で30℃から220℃まで昇温した時に得られたDSC曲線よりガラス転移温度(開始点)を算出する。この時に基準物質としてアルミナを用いる。このガラス転移開始温度は規格(9.3「ガラス転移温度の求め方」)より求める。
【0058】
(嵩密度及び嵩倍数)
嵩密度は、JIS K6911:1995年「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して測定する。即ち、JIS K6911に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定し、下記式に基づいて嵩密度を測定する。
発泡粒子の嵩密度(g/cm
3)=〔試料を入れたメスシリンダーの重量(g)−メスシリンダーの重量(g)〕/〔メスシリンダーの容量(cm
3)〕
嵩倍数は、嵩密度の逆数に樹脂の密度を積算した値である。
【0059】
(密度及び倍数)
発泡成形体から切り出した試験片(例75×300×30mm)の重量(a)と体積(b)をそれぞれ有効数字3桁以上になるように測定し、式(a)/(b)により発泡成形体の密度(g/cm
3)を求める。
倍数は、密度の逆数に樹脂の密度を積算した値である。
【0060】
(連続気泡率)
連続気泡率は下記の要領で測定される。
まず、体積測定空気比較式比重計の試料カップを用意し、この試料カップの80%程度を満たす量の発泡粒子(又は発泡成形体)の全重量A(g)を測定する。次に、上記発泡粒子(又は発泡成形体)全体の体積B(cm
3)を比重計を用いて1−1/2−1気圧法により測定する。なお、体積測定空気比較式比重計は、東京サイエンス社の商品名「1000型」を使用する。
続いて、金網製の容器を用意し、この金網製の容器を水中に浸漬し、この水中に浸漬した状態における金網製の容器の重量C(g)を測定する。次に、この金網製の容器内に発泡粒子(又は発泡成形体)を全量入れた上で、この金網製の容器を水中に浸漬し、水中に浸漬した状態における金網製の容器とこの金網製容器に入れた発泡粒子(又は発泡成形体)の全量とを併せた重量D(g)を測定する。
そして、下記式に基づいて発泡粒子の見掛け体積E(cm
3)(又は発泡成形体の体積E(cm
3))を算出し、この体積Eと発泡粒子全体の体積B(cm
3)に基づいて下記式により発泡成形用発泡粒子の連続気泡率を算出するなお、水1gの体積を1cm
3とする。
E=A+(C−D)
連続気泡率(%)=100×(E−B)/E
【0061】
(加熱寸法変化率)
加熱寸法変化率はJIS K6767:1999「発泡プラスチック−ポリエチレン−試験方法」記載のB法にて測定する。具体的には、発泡成形体から平面形状が一辺150mmの正方形で且つ厚みが発泡成形体の厚みである試験片を切り出す。
試験片の中央部に縦及び横方向にそれぞれ互いに平行に3本の100mmの直線を50mm間隔に記入する。縦及び横方向についてそれぞれ3本の直線の長さを測定し、それらの相加平均値L
0を初めの寸法とする。しかる後、試験片を120℃の熱風循環式乾燥機の中に168時間に亘って放置して加熱試験を行った後に取出し、試験片を25℃にて1時間に亘って放置する。次に、試験片の表面に記入した縦及び横方向のそれぞれ3本の直線の長さを測定し、それらの相加平均値L
1を加熱後の寸法とする。下記の式に基づいて加熱寸法変化率を算出する。
加熱寸法変化率(%)=100×(L
1−L
0)/L
0
【0062】
(曲げ弾性率)
曲げ弾性率はJIS K7221−1:2006「硬質発泡プラスチック−曲げ試験−第1部:たわみ特性の求め方」に準拠した方法により測定する。即ち、発泡成形体から、縦20mm×横25mm×高さ130mmの直方体形状の試験片を切り出す。測定には、テンシロン万能試験機(オリエンテック社製「UCT−10T」)を用いる。曲げ弾性率は、万能試験機データ処理システム(ソフト・ブレーン社製「UTPS−237S Ver,1.00」)を用いて算出する。試験片の数は5個以上とし、JIS K 7100:1999の記号「23/50」(温度23℃、相対湿度50%)、2級の標準雰囲気下で16時間かけて状態調整した後、同じ標準雰囲気下で測定する。各試験片の圧縮弾性率の相加平均値をそれぞれ、発泡成形体の曲げ弾性率とする。
曲げ弾性率は、荷重−変形曲線の始めの直線部分を用いて次式により計算する。
E=Δσ/Δε
E:曲げ弾性率(MPa)
Δσ:直線上の2点間の応力の差(MPa)
Δε:同じ2点間の変形の差(%)
また、単位密度当たりの曲げ弾性率は、曲げ弾性率を発泡成形体の密度で除して算出する。
【0063】
(曲げ最大点応力)
繊維強化複合体について、横方向寸法25mm、奥行き方向寸法130mmの短冊状の試験片を切り出し、曲げ試験を実施して曲げ強度を求める。測定には、テンシロン万能試験機(オリエンテック社製「UCT−10T」)を用いる。曲げ強度の曲げ最大点応力は、万能試験機データ処理システム(ソフト・ブレーン社製「UTPS−237S Ver,1.00」)を用いて算出する。
短冊状試験片を支持台に載置し、ロードセル1000N、試験速度10mm/分、支持台の先端治具10R、開き幅100mmの条件下で曲げ最大点応力を測定する。試験片の数は5個以上とし、JIS K 7100:1999の記号「23/50」(温度23℃、相対湿度50%)、2級の標準雰囲気下で16時間かけて状態調整した後、同じ標準雰囲気下で測定する。各試験片の曲げ最大点応力の相加平均値をそれぞれ、繊維強化複合体の曲げ最大点応力とする。
【0064】
(基材樹脂の樹脂成分の割合)
(
1H−NMR)
日本電子製 ECX400P型核磁気共鳴装置を用い、以下の条件で測定する。
<測定条件>
・測定モード シングルパルス
・パルス幅 45°(6.05μ秒)
・ポイント数 32k
・繰り返し時間 7.0秒
・積算回数 128回
・測定溶媒 重クロロホルム
・試料濃度 約20mg/0.6mL
・測定温度 50℃
・ケミカルシフト基準 クロロホルム:7.24ppm
・測定範囲 20ppm(−5ppm〜15ppm)
・ウインドウ関数 exponnential(BF:0.12Hz)
基材樹脂の組成比を、
1H−NMR測定から得られたスペクトルの各シグナルの積分強度比より算出する。なお、各シグナルの領域に不純物由来と推測されるシグナルが観測される場合には、計算の際、これらの寄与を無視する。
【0065】
(FT−IR)
基材樹脂の吸光度比(D1780/D698、D1720/D698)を次の要領で測定する。
無作為に選択した10個の各樹脂粒子について、赤外分光分析ATR測定法により表面分析を行って赤外吸収スペクトルを得る。この分析では、試料表面から数μm(約2μm)までの深さの範囲の赤外吸収スペクトルが得られる。各赤外吸収スペクトルから吸光度比(D1780/D698、D1720/D698)を算出し、算出した吸光度比の相加平均を吸光度比とする。
吸光度D1780、D1720およびD698は、Thermo SCIENTIFIC社から商品名「フーリエ変換赤外分光光度計 Nicolet iS10」で販売されている測定装置に、ATRアクセサリーとしてThermo SCIENTIFIC社製「Smart−iTR」を接続して測定する。以下の条件にて赤外分光分析ATR測定を行う。
【0066】
<測定条件>
・測定装置:フーリエ変換赤外分光光度計 Nicolet iS10(Thermo SCIENTIFIC社製)及び一回反射型水平状ATR Smart−iTR(Thermo SCIENTIFIC社製)
・ATRクリスタル:Diamond with ZnSe lens、角度=42°
・測定法:一回ATR法
・測定波数領域:4000cm
-1〜650cm
-1
・測定深度の波数依存性:補正せず
・検出器:重水素化硫酸トリグリシン(DTGS)検出器およびKBrビームスプリッター
・分解能:4cm
-1
・積算回数:16回(バックグランド測定時も同様)
ATR法では、試料と高屈折率結晶の密着度合によって測定で得られる赤外吸収スペクトルの強度が変化するため、ATRアクセサリーの「Smart−iTR」で掛けられる最大荷重を掛けて密着度合をほぼ均一にして測定を行なう。
【0067】
以上の条件で得られた赤外線吸収スペクトルは、次のようにピーク処理をしてそれぞれのD1780、D1720およびD698を求める。
赤外吸収スペクトルから得られる1780cm
-1での吸光度D1780は、無水マレイン酸中の2つのカルボニル基のC=Oによる逆対称の伸縮振動に由来する吸収スペクトルに対応する吸光度である。
この吸光度の測定では、1780cm
-1で他の吸収スペクトルが重なっている場合でもピーク分離を実施しない。吸光度D1780は、1920cm
-1と1620cm
-1を結ぶ直線をベースラインとして、1810cm
-1と1745cm
-1間の最大吸光度を意味する。
【0068】
また、1720cm
-1での吸光度D1720は、メタクリル酸メチル中に含まれるカルボニル基C=Oによる逆対称の伸縮振動に由来する吸収スペクトルに対応する吸光度である。
この吸光度の測定では、1720cm
-1で他の吸収スペクトルが重なっている場合でもピーク分離を実施しない。吸光度D1720は、1920cm
-1と1620cm
-1を結ぶ直線をベースラインとして、1745cm
-1と1690cm
-1間の最大吸光度を意味する。
【0069】
698cm
-1での吸光度D698は、スチレン中の1置換ベンゼン環中のC−Hの面外変角振動に由来する吸収スペクトルに対応する吸光度である。
この吸光度の測定では、698cm
-1で他の吸収スペクトルが重なっている場合でもピーク分離を実施しない。吸光度D698は、1510cm
-1と810cm
-1を結ぶ直線をベースラインとして、720cm
-1と660cm
-1間の最大吸光度を意味する。
【0070】
スチレン、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸比率(質量%)を、後述の検量線に基づいて、吸光度比(D1780/D698、D1720/D698)から算出する。なお、ピーク処理方法は前述の樹脂粒子と同様の方法を用いる。
吸光度比からスチレンとメタクリル酸メチルの組成割合を求める方法としては、スチレン樹脂とメタクリル酸メチル樹脂とを所定の組成割合に均一に混合してなる複数種類の標準試料を作製する。
具体的には、メタクリル酸メチルとスチレンとをそれぞれ0/100、20/80、40/60、50/50および60/40の重量割合で計量した単量体を10mlのスクリューバイアルに入れ、ここに単量体100重量部に対して10重量部の2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を加えて単量体を溶解させる。得られた混合液を2ml試料管(φ7mm×122mm×190mm)に移し入れ、窒素パージした後に封管する。次にこれを65℃に設定したウォーターバスに入れ、10時間加熱して重合を完了させ、アンプルから取り出した重合体を標準試料とする。
各標準試料について赤外分光分析ATR法により赤外線吸収スペクトルを得た後に吸光度比(D1780/D698)を算出する。そして、縦軸に組成割合(標準試料中のスチレン樹脂比率=質量%)を、横軸に吸光度比(D1780/D698)をとることで検量線を描く。この検量線に基づいて、スチレン樹脂とメタクリル酸メチル樹脂の組成割合を求めることができる。
【0071】
また、スチレン樹脂と無水マレイン酸樹脂の標準試料としては、スチレンと無水マレイン酸の1/1共重合体(商品名SMA1000(P)CRAY VALLEY社製)及びスチレンと無水マレイン酸の3/1共重合体(SMA3000(P)CRAY VALLEY社製)を用いる。
各標準試料について赤外分光分析ATR法により赤外線吸収スペクトルを得た後に吸光度比(D1720/D698)を算出する。そして、縦軸に組成割合(標準試料中のスチレン樹脂比率=質量%)を、横軸に吸光度比(D1720/D698)をとることで検量線を描く。この検量線に基づいて、スチレン樹脂と無水マレイン酸樹脂の組成割合を求めることができる。
【0072】
検量線からスチレンとメタクリル酸メチルおよびスチレンと無水マレイン酸の組成割合を求める。それぞれの組成割合から、樹脂中のスチレン、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸の3成分の組成割合を以下の手順で求める。
ここで、各標準試料の割合を以下のように設定する。
メタクリル酸メチル:スチレン=A:B [1]
スチレン:無水マレイン酸 =C:D [2]
スチレンが共通項なので、[2]のスチレン割合Cを[1]のスチレン割合Bに合わせる。
[2]より
スチレン :無水マレイン酸
=C :D
=C×(B/C):D×(B/C)
=B :D×(B/C) [3]
[3]より、スチレンの割合が[1]と等しくなるので、[1]、[3]よりメタクリル酸メチル、スチレン、無水マレイン酸の存在比は以下のようになる。
メタクリル酸メチル:スチレン:無水マレイン酸
=A :B :D×(B/C) [4]
[4]の存在比より、各成分の割合は以下のようになる。
メタクリル酸メチル={A/((A+B+D×(B/C))}×100
スチレン ={B/((A+B+D×(B/C))}×100
無水マレイン酸 ={D×(B/C)/((A+B+D×(B/C))}×100
【0073】
(実施例1)
(樹脂粒子製造工程)
スチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体(商品名「DENKA RESISFY R-200」、電気化学工業社製、スチレン:53重量部、メタクリル酸メチル:30重量部、無水マレイン酸:17重量部、密度1.16g/cm
3)100重量部、及びタルクを含む樹脂組成物1重量部を口径が30mmの二軸押出機に供給して240℃で溶融混練した。続いて、二軸押出機の前端に取り付けたマルチノズル金型〔円状に、直径1.0mmのノズルが20個、配置されたもの〕の各ノズルから樹脂組成物を押出した。押出した樹脂を、直ちに冷却水槽で冷却した。そして、冷却されたストランド状の樹脂を十分に水切りしたのち、ペレタイザーを用いて小粒状に切断して樹脂粒子を製造した。得られた樹脂粒子は、粒子の長さLが1.3〜1.8mmで、粒子の径Dが1.0〜1.2mmであった。
【0074】
(含浸工程)
上記樹脂粒子100重量部を圧力容器中に密閉し、圧力容器内を炭酸ガスで置換した後、炭酸ガスを、含浸圧0.5MPaまで圧入した。20℃の環境下に静置し、含浸時間24時間が経過した後、5分間かけて圧力容器内をゆっくりと除圧した。このようにして、樹脂粒子に炭酸ガスを含浸させて、発泡性粒子を得た。
(発泡工程)
上記含浸工程における除圧の後直ぐに、圧力容器から発泡性粒子を取り出した後、炭酸カルシウム0.08重量部を添加し、混合した。その後、水蒸気を用いて、発泡温度128℃で120秒撹拌しながら、高圧の発泡槽で、上記含浸物を水蒸気により発泡させた。発泡後に、高圧の発泡槽から粒子を取り出して、塩化水素水溶液で炭酸カルシウムを除去した後に、気流乾燥機にて乾燥を行い、発泡粒子を得た。上述した方法により、得られた発泡粒子の嵩密度を測定したところ、0.12g/cm
3であった。
【0075】
(成形工程)
得られた発泡粒子を1日間室温(23℃)に放置した後、圧力容器中に密閉し、圧力容器内を炭酸ガスで置換した後、炭酸ガスを、含浸圧(ゲージ圧)0.4MPaまで圧入した。20℃の環境下に静置し、加圧養生を8時間実施した。取り出し後、30mm×300mm×400mmの成形用金型に充填し、0.30MPaの水蒸気にて60秒間加熱を行い、次いで、発泡成形体の最高面圧が0.01MPaに低下するまで冷却することで、発泡成形体を得た。
【0076】
(実施例2)
発泡工程において、発泡温度128℃で150秒撹拌しながら発泡させたこと以外は実施例1と同様にして、発泡粒子、発泡成形体を得た。
(実施例3)
発泡工程において、発泡温度130℃で120秒撹拌しながら発泡させたこと以外は実施例1と同様にして、発泡粒子、発泡成形体を得た。
(実施例4)
発泡工程において、発泡温度130℃で150秒撹拌しながら発泡させたこと以外は実施例1と同様にして、発泡粒子、発泡成形体を得た。
(実施例5)
発泡工程において、発泡温度134℃で120秒撹拌しながら発泡させたこと以外は実施例1と同様にして、発泡粒子、発泡成形体を得た。
【0077】
(実施例6)
(樹脂粒子製造工程)
スチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体(商品名「DENKA RESISFY KX-406」、電気化学工業社製、スチレン:70重量部、メタクリル酸メチル:9重量部、無水マレイン酸:21重量部、密度1.15g/cm
3)100重量部、及びタルクを含む樹脂組成物1重量部を口径が30mmの二軸押出機に供給して254℃で溶融混練した。続いて、二軸押出機の前端に取り付けたマルチノズル金型〔円状に、直径1.0mmのノズルが20個、配置されたもの〕の各ノズルから樹脂組成物を押出した。押出した樹脂を、直ちに冷却水槽で冷却した。そして、冷却されたストランド状の樹脂を十分に水切りしたのち、ペレタイザーを用いて小粒状に切断して樹脂粒子を製造した。得られた樹脂粒子は、粒子の長さLが1.3〜1.8mmで、粒子の径Dが1.0〜1.2mmであった。
【0078】
(含浸工程)
上記樹脂粒子100重量部を圧力容器中に密閉し、圧力容器内を炭酸ガスで置換した後、炭酸ガスを、含浸圧1.0MPaまで圧入した。20℃の環境下に静置し、含浸時間24時間が経過した後、5分間かけて圧力容器内をゆっくりと除圧した。このようにして、樹脂粒子に炭酸ガスを含浸させて、発泡性粒子を得た。
(発泡工程)
上記含浸工程における除圧の後直ぐに、圧力容器から発泡性粒子を取り出した後、炭酸カルシウム0.08重量部を添加し、混合した。その後、水蒸気を用いて、発泡温度136℃で150秒撹拌しながら、高圧の発泡槽で、上記含浸物を水蒸気により発泡させた。発泡後に、高圧の発泡槽から粒子を取り出して、塩化水素水溶液で炭酸カルシウムを除去した後に、気流乾燥機にて乾燥を行い、発泡粒子を得た。上述した方法により、得られた発泡粒子の嵩密度を測定したところ、0.12g/cm
3であった。
【0079】
(成形工程)
得られた発泡粒子を1日間室温(23℃)に放置した後、圧力容器中に密閉し、圧力容器内を炭酸ガスで置換した後、炭酸ガスを、含浸圧(ゲージ圧)0.4MPaまで圧入した。20℃の環境下に静置し、加圧養生を8時間実施した。取り出し後、30mm×300mm×400mmの成形用金型に充填し、0.42MPaの水蒸気にて60秒間加熱を行い、次いで、発泡成形体の最高面圧が0.01MPaに低下するまで冷却することで、発泡成形体を得た。
【0080】
(比較例1)
(発泡工程)
スチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体(商品名「DENKA RESISFY R-200」、電気化学工業社製、スチレン:53重量部、メタクリル酸メチル:30重量部、無水マレイン酸:17重量部)100重量部、及びタルクを含む樹脂組成物1重量部及びタルクを含む樹脂組成物をスクリュー径50mmの第一押出機とスクリュー径65mmの第二押出機とが連結されたタンデム型押出機に供給して280℃にて溶融混練した。
次に、第一単軸押出機の途中から、イソブタン35重量%及びノルマルブタン65重量%を含むブタンを樹脂分100重量部に対して1.8重量部となるように溶融状態の樹脂組成物に圧入して、樹脂組成物中に均一に分散させた。
【0081】
しかる後、第二押出機の前端部において、溶融状態の樹脂組成物を175℃に冷却した後、押出機の前端に取り付けたマルチノズル金型のノズルから樹脂組成物を押出発泡させた。なお、マルチノズル金型は、出口部の直径が1mmのノズルを有していた。
そして、マルチノズル金型のノズルの出口部から押出発泡された樹脂押出物を回転刃によって切断した後に直ちに冷却して略球状の再発泡性を有する発泡粒子を製造した。樹脂押出物は、マルチノズル金型のノズルから押出された直後の未発泡部と、この未発泡部に連続する発泡途上の発泡部とからなっていた。樹脂押出物は、ノズルの出口部の開口端において切断されており、樹脂押出物の切断は未発泡部において行われていた。
(成形工程)
得られた発泡粒子を、30mm×300mm×400mmの成形用金型に充填し、0.42MPaの水蒸気にて60秒間加熱を行い、次いで、発泡成形体の最高面圧が0.01MPaに低下するまで冷却することで、発泡成形体を得た。
【0082】
(比較例2)
第一単軸押出機の途中から、イソブタン35重量%及びノルマルブタン65重量%を含むブタンを樹脂分100重量部に対して2.5重量部となるように溶融状態の樹脂組成物に圧入して、樹脂組成物中に均一に分散させたこと以外は実施例1と同様にして、発泡粒子、発泡成形体を作製した。
上記実施例及び比較例の発泡剤含浸法の種類、基材樹脂のTg、発泡粒子の気泡面積比、気泡数比及び界面アスペクト比、発泡粒子の嵩倍数を表1にまとめて示す。また、上記実施例1〜2及び比較例1〜2の発泡成形体の気泡面積比、気泡数比及び界面アスペクト比、発泡成形体の倍数を表2にまとめて示す。更に、実施例及び比較例の発泡粒子の断面写真を
図1〜8に、実施例1〜2及び比較例1〜2の発泡成形体の断面写真を
図9〜12に示す。これら図中、(a)は内部、(b)は表層の写真である。
【0083】
(繊維強化複合体製造工程)
コア材として実施例1及び2ならびに比較例1で作製した発泡粒子を、12mm×300mm×400mmの成形用金型に充填し、水蒸気にて加熱を行い、次いで発泡成形体の最高面圧が0.01MPaに低下するまで冷却することで、発泡成形体を製造し、一辺150mmの平面正方形状に切り出してコア材用発泡成形体を得た。
これに対し繊維強化樹脂材(繊維強化プラスチック)として、炭素繊維からなる綾織の織物に樹脂含浸されている面材(三菱レイヨン社製、商品名「パイロフィルプリプレグ TR3523−395GMP」、目付:200g/m
2、厚み:0.23mm)を4枚用意した。面材は、一辺150mmの平面正方形状であり、面材には、熱硬化性樹脂として未硬化のエポキシ樹脂が40質量%含有されていた。
【0084】
2枚の面材をそれらの経糸の長さ方向が互いに90°の角度をなすように重ね合わせて多層面材とした。それをコア材用発泡成形体の表裏にそれぞれ配置し、積層体を得た。
続いて、上記積層体を平板金型間に配設し、厚み11mmのスペーサーを配置した平板金型を型締めすることによって、プレス成形し、繊維強化プラスチックを発泡体に熱接着させ、コア材部及び多層面材からなる表層部を備えた繊維強化複合体を作製した。
なお、プレス成形時には、積層体が120℃となるようにし、8分保持することによって、繊維強化樹プラスチックに含有されている樹脂を硬化させて、繊維強化プラスチックの繊維どうしを硬化したエポキシ樹脂で結着、固定して繊維強化プラスチックを発泡体の両面に積層一体化させて繊維強化複合体を製造した。
しかる後、繊維強化複合体を30℃以下に冷却した後、平板金型を開いて繊維強化複合体を取り出して繊維強化複合体を得た。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
表1及び2から、特定の範囲の気泡面積比を有する発泡粒子から得られた発泡成形体及び特定の範囲の気泡面積比を有する発泡成形体は、優れた機械的物性を有していることが分かる。
【0088】
(実施例7)
(樹脂粒子製造工程)
スチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体(商品名「DENKA RESISFY KX-435」、電気化学工業社製、スチレン:61重量部、メタクリル酸メチル:12重量部、無水マレイン酸:27重量部、密度1.15g/cm
3)100重量部を80重量部とし、残りの20重量部をスチレン−無水マレイン酸−N−フェニルマレイミド共重合体(商品名「DENKA IP MS−NIP」、電気化学工業社製、スチレン:67重量部、無水マレイン酸:5重量部、N−フェニルマレイミド:27重量部、密度1.18g/cm
3、ガラス転移温度Tg186℃)100重量部、及びタルクを含む樹脂組成物1重量部を口径が30mmの二軸押出機に供給して265℃で溶融混練した。続いて、二軸押出機の前端に取り付けたマルチノズル金型〔円状に、直径1.0mmのノズルが20個、配置されたもの〕の各ノズルから樹脂組成物を押出した。押出した樹脂を、直ちに冷却水槽で冷却した。そして、冷却されたストランド状の樹脂を十分に水切りしたのち、ペレタイザーを用いて小粒状に切断して樹脂粒子を製造した。得られた樹脂粒子は、粒子の長さLが1.3〜1.8mmで、粒子の径Dが1.0〜1.2mmであった。
【0089】
(含浸工程)
上記樹脂粒子100重量部を圧力容器中に密閉し、圧力容器内を炭酸ガスで置換した後、炭酸ガスを、含浸圧0.5MPaまで圧入した。20℃の環境下に静置し、含浸時間24時間が経過した後、5分間かけて圧力容器内をゆっくりと除圧した。このようにして、樹脂粒子に炭酸ガスを含浸させて、発泡性粒子を得た。
(発泡工程)
上記含浸工程における除圧の後直ぐに、圧力容器から発泡性粒子を取り出した後、炭酸カルシウム0.08重量部を添加し、混合した。その後、水蒸気を用いて、発泡温度146℃で150秒撹拌しながら、高圧の発泡槽で、上記含浸物を水蒸気により発泡させた。発泡後に、高圧の発泡槽から粒子を取り出して、塩化水素水溶液で炭酸カルシウムを除去した後に、気流乾燥機にて乾燥を行い、発泡粒子を得た。上述した方法により、得られた発泡粒子の嵩密度を測定したところ、0.12g/cm
3であった。
【0090】
(成形工程)
得られた発泡粒子を1日間室温(23℃)に放置した後、圧力容器中に密閉し、圧力容器内を炭酸ガスで置換した後、炭酸ガスを、含浸圧(ゲージ圧)0.4MPaまで圧入した。20℃の環境下に静置し、加圧養生を8時間実施した。取り出し後、30mm×300mm×400mmの成形用金型に充填し、0.45MPaの水蒸気にて60秒間加熱を行い、次いで、発泡成形体の最高面圧が0.01MPaに低下するまで冷却することで、発泡成形体を得た。
【0091】
(実施例8)
樹脂粒子製造工程において、スチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体100重量部を85重量部とし、残りの15重量部をスチレン−無水マレイン酸−N−フェニルマレイミド共重合体としたこと以外は実施例7と同様にして、発泡粒子、発泡成形体を得た。
【0092】
(実施例9)
樹脂粒子製造工程において、スチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体100重量部を90重量部とし、残りの10重量部をスチレン−無水マレイン酸−N−フェニルマレイミド共重合体とし、発泡温度を143℃としたこと以外は実施例7と同様にして、発泡粒子を得た。
【0093】
(成形工程)
得られた発泡粒子を1日間室温(23℃)に放置した後、圧力容器中に密閉し、圧力容器内を炭酸ガスで置換した後、炭酸ガスを、含浸圧(ゲージ圧)0.4MPaまで圧入した。20℃の環境下に静置し、加圧養生を8時間実施した。取り出し後、30mm×300mm×400mmの成形用金型に充填し、0.43MPaの水蒸気にて60秒間加熱を行い、次いで、発泡成形体の最高面圧が0.01MPaに低下するまで冷却することで、発泡成形体を得た。
【0094】
上記実施例の発泡剤含浸法の種類、基材樹脂のTg、発泡粒子の気泡面積比、気泡数比及び界面アスペクト比、発泡粒子の嵩倍数を表3にまとめて示す。また、上記実施例7〜9の発泡成形体の気泡面積比、気泡数比及び界面アスペクト比、発泡成形体の倍数を表4にまとめて示す。更に、実施例7〜9の発泡粒子の断面写真を
図13〜15に、実施例7〜9の発泡成形体の断面写真を
図16〜18に示す。これら図中、(a)は内部、(b)は表層の写真である。
【0095】
【表3】
【0096】
【表4】
【0097】
表3及び4から、基材樹脂としてマレイミド系単量体を更に含む共重合体から構成される発泡成形体は、優れた機械的物性を有しつつ、優れた耐熱性も有していることが分かる。