特開2017-186503(P2017-186503A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2017-186503発泡粒子、発泡成形体、繊維強化複合体及び自動車用部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-186503(P2017-186503A)
(43)【公開日】2017年10月12日
(54)【発明の名称】発泡粒子、発泡成形体、繊維強化複合体及び自動車用部品
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/18 20060101AFI20170919BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20170919BHJP
   C08F 212/08 20060101ALN20170919BHJP
【FI】
   C08J9/18CET
   B32B5/28 101
   C08F212/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2016-187485(P2016-187485)
(22)【出願日】2016年9月26日
(31)【優先権主張番号】特願2015-191358(P2015-191358)
(32)【優先日】2015年9月29日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-69539(P2016-69539)
(32)【優先日】2016年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(72)【発明者】
【氏名】▲桑▼▲原▼ 佑輔
(72)【発明者】
【氏名】人見 一迅
【テーマコード(参考)】
4F074
4F100
4J100
【Fターム(参考)】
4F074AA33
4F074AC32
4F074AG01
4F074BA32
4F074CA34
4F074CA38
4F074CA49
4F074CC04Y
4F074CE02
4F074DA02
4F074DA03
4F074DA08
4F074DA20
4F074DA35
4F074DA59
4F100AD11
4F100AK11A
4F100AK12A
4F100AK24A
4F100AK25A
4F100AK80A
4F100AL01A
4F100BA02
4F100DE01A
4F100DG01
4F100DG12
4F100DH02B
4F100DJ01A
4F100EJ82
4F100GB31
4F100GB32
4F100GB51
4F100JJ03
4F100JK01
4F100YY00A
4J100AB02P
4J100AK32R
4J100AL03Q
4J100CA05
4J100DA11
4J100JA28
(57)【要約】
【課題】優れた機械的物性を示す発泡成形体を与え得る発泡粒子を提供することを課題とする。
【解決手段】芳香族ビニルと、(メタ)アクリル酸エステルと、不飽和ジカルボン酸との共重合体を含む基材樹脂から構成される発泡粒子であり、前記発泡粒子が、300倍で0.13mm2の面積を撮影した断面写真において、5μm以上かつ30μm未満の気泡径の小気泡と30〜100μmの気泡径の大気泡を備え、前記小気泡が、前記大気泡の合計面積の1〜50倍の合計面積を示すことを特徴とする発泡粒子により上記課題を解決する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ビニルと、(メタ)アクリル酸エステルと、不飽和ジカルボン酸との共重合体を含む基材樹脂から構成される発泡粒子であり、前記発泡粒子が、300倍で0.13mm2の面積を撮影した断面写真において、5μm以上かつ30μm未満の気泡径の小気泡と30〜100μmの気泡径の大気泡を備え、前記小気泡が、前記大気泡の合計面積の1〜50倍の合計面積を示すことを特徴とする発泡粒子。
【請求項2】
前記小気泡が、300倍で0.13mm2の面積を撮影した断面写真において、前記大気泡の個数の1〜300倍の個数で存在する請求項1に記載の発泡粒子。
【請求項3】
前記発泡粒子が、300倍で0.13mm2の面積を撮影した断面写真において、0.2〜0.8の界面アスペクト比を示す表面近傍の気泡を備える請求項1又は2に記載の発泡粒子。
【請求項4】
前記芳香族ビニルがスチレン系単量体、前記(メタ)アクリル酸エステルが(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アルキル基の炭素数は1〜5)、前記不飽和ジカルボン酸が炭素数2〜6の脂肪族不飽和ジカルボン酸、からそれぞれ選択され、前記共重合体が、前記芳香族ビニルと(メタ)アクリル酸エステルと不飽和ジカルボン酸の3つに由来する単位の合計を100重量部とすると、前記芳香族ビニルに由来する単位を30〜80重量部、前記(メタ)アクリル酸エステルに由来する単位を8〜35重量部、前記不飽和ジカルボン酸に由来する単位を10〜50重量部を含む請求項1〜3のいずれか1つに記載の発泡粒子。
【請求項5】
芳香族ビニルと、(メタ)アクリル酸エステルと、不飽和ジカルボン酸との共重合体を含む基材樹脂から構成される発泡成形体であり、前記発泡粒子が、300倍で0.13mm2の面積を撮影した断面写真において、5μm以上かつ30μm未満の気泡径の小気泡と30〜100μmの気泡径の大気泡を備え、前記小気泡が、前記大気泡の合計面積の0.5〜50倍の合計面積を示すことを特徴とする発泡成形体。
【請求項6】
前記小気泡が、300倍で0.13mm2の面積を撮影した断面写真において、前記大気泡の個数の1〜300倍の個数で存在する請求項5に記載の発泡成形体。
【請求項7】
前記発泡成形体が、300倍で0.13mm2の面積を撮影した断面写真において、0.37〜0.8の界面アスペクト比を示す表面近傍の気泡を備える請求項5又は6に記載の発泡成形体。
【請求項8】
前記芳香族ビニルがスチレン系単量体、前記(メタ)アクリル酸エステルが(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アルキル基の炭素数は1〜5)、前記不飽和ジカルボン酸が炭素数2〜6の脂肪族不飽和ジカルボン酸、からそれぞれ選択され、前記共重合体が、前記芳香族ビニルと(メタ)アクリル酸エステルと不飽和ジカルボン酸の3つに由来する単位の合計を100重量部とすると、前記芳香族ビニルに由来する単位を30〜80重量部、前記(メタ)アクリル酸エステルに由来する単位を8〜35重量部、前記不飽和ジカルボン酸に由来する単位を10〜50重量部を含む請求項5〜7のいずれか1つに記載の発泡成形体。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれか1つに記載の発泡成形体と、この発泡成形体の表面に積層一体化された繊維強化プラスチック層とを有することを特徴とする繊維強化複合体。
【請求項10】
風車翼、ロボットアーム、自動車部品に用いられる請求項9に記載の繊維強化複合体。
【請求項11】
請求項5〜8のいずれか1つに記載の発泡成形体又は請求項9に記載の繊維強化複合体から構成される自動車用部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡粒子、発泡成形体、繊維強化複合体及び自動車用部品に関する。更に詳しくは、本発明は、機械的物性が向上した発泡成形体を与え得る発泡粒子、及びその発泡粒子から得られた発泡成形体、繊維強化複合体及び自動車用部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、航空機、自動車、船舶等の乗り物は、地球環境への負荷低減のために燃費向上が必要とされており、これらの乗り物を構成する金属材料を樹脂材料へ転換し、大きな軽量化を図る流れが強くなってきている。これらの樹脂材料としては、繊維強化プラスチックが挙げられるが、一部に軽量コア材を使用することで更なる軽量化や高剛性化を図ることも検討されている。軽量コア材として用いられる材料として高い圧縮強度を有するポリスチレン発泡体が検討されている。
例えば、特開2012−214751号公報(特許文献1)には、ポリスチレン系樹脂粒子中に炭素数6以下の炭化水素からなる発泡剤を含む発泡性粒子において、発泡性粒子全体(但し、内部気泡は除く)に炭素数7以上の有機化合物が均一に含有されてなり、有機化合物の溶解度パラメータ(A)が発泡剤の溶解度パラメータ(B)に対して特定の関係を有する発泡性粒子及び、その発泡性粒子から得られた発泡成形体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−214751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の発泡成形体は、ガラス転移温度が低いポリスチレン系樹脂製の発泡性粒子から得られているため、耐熱性のような機械的物性が十分でなかった。そのため、機械的物性が向上した発泡成形体及びその発泡成形体を製造し得る発泡粒子の提供が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の発明者等は、ポリスチレン系樹脂に代えて他の種類の樹脂を使用すれば機械的物性が向上するのではないかとの考えの下で試験を繰り返し、芳香族ビニルと、(メタ)アクリル酸エステルと、不飽和ジカルボン酸との共重合体を発泡粒子の基材樹脂として使用すれば発泡成形体の機械的物性をある程度向上できることに気付いた。そこで発明者等は更に検討したところ、この基材樹脂を使用しつつ、発泡粒子を構成する気泡の大きさと気泡の合計面積を制御することにより、機械的物性を大幅に向上できることを意外にも見い出すことで本発明に至った。
【0006】
かくして本発明によれば、芳香族ビニルと、(メタ)アクリル酸エステルと、不飽和ジカルボン酸との共重合体を含む基材樹脂から構成される発泡粒子であり、前記発泡粒子が、300倍で0.13mm2の面積を撮影した断面写真において、5μm以上かつ30μm未満の気泡径の小気泡と30〜100μmの気泡径の大気泡を備え、前記小気泡が、前記大気泡の合計面積の1〜50倍の合計面積を示すことを特徴とする発泡粒子が提供される。
【0007】
また、本発明によれば、芳香族ビニルと、(メタ)アクリル酸エステルと、不飽和ジカルボン酸との共重合体を含む基材樹脂から構成される発泡成形体であり、前記発泡粒子が、300倍で0.13mm2の面積を撮影した断面写真において、5μm以上かつ30μm未満の気泡径の小気泡と30〜100μmの気泡径の大気泡を備え、前記小気泡が、前記大気泡の合計面積の0.5〜50倍の合計面積を示すことを特徴とする発泡成形体が提供される。
【0008】
更に、本発明によれば、上記の発泡成形体と、この発泡成形体の表面に積層一体化された繊維強化プラスチック層とを有することを特徴とする繊維強化複合体が提供される。
また、本発明によれば、上記の発泡成形体又は繊維強化複合体から構成される自動車用部品が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、優れた機械的物性を示す発泡成形体、及びその発泡成形体を製造し得る発泡粒子を提供できる。
また、以下のいずれかの場合、より優れた機械的物性を示す発泡成形体、及びその発泡成形体を製造し得る発泡粒子を提供できる。
(1)小気泡が、300倍で0.13mm2の面積を撮影した断面写真において、大気泡の個数の1〜300倍の個数で存在する。
(2)発泡粒子又は発泡成形体が、300倍で0.13mm2の面積を撮影した断面写真において、0.2〜0.8の界面アスペクト比を示す表面近傍の気泡を備える。
(3)芳香族ビニルがスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステルが(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アルキル基の炭素数は1〜5)、不飽和ジカルボン酸が炭素数2〜6の脂肪族不飽和ジカルボン酸、からそれぞれ選択され、共重合体が、芳香族ビニルと(メタ)アクリル酸エステルと不飽和ジカルボン酸の3つに由来する単位の合計を100重量部とすると、芳香族ビニルに由来する単位を30〜80重量部、(メタ)アクリル酸エステルに由来する単位を8〜35重量部、不飽和ジカルボン酸に由来する単位を10〜50重量部を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1の発泡粒子の断面写真である。
図2】実施例2の発泡粒子の断面写真である。
図3】実施例3の発泡粒子の断面写真である。
図4】実施例4の発泡粒子の断面写真である。
図5】実施例5の発泡粒子の断面写真である。
図6】実施例6の発泡粒子の断面写真である。
図7】比較例1の発泡粒子の断面写真である。
図8】比較例2の発泡粒子の断面写真である。
図9】実施例1の発泡成形体の断面写真である。
図10】実施例2の発泡成形体の断面写真である。
図11】比較例1の発泡成形体の断面写真である。
図12】比較例2の発泡成形体の断面写真である。
図13】実施例7の発泡粒子の断面写真である。
図14】実施例8の発泡粒子の断面写真である。
図15】実施例9の発泡粒子の断面写真である。
図16】実施例7の発泡成形体の断面写真である。
図17】実施例8の発泡成形体の断面写真である。
図18】実施例9の発泡成形体の断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(発泡粒子)
(1)基材樹脂
発泡粒子は、芳香族ビニルと、(メタ)アクリル酸エステルと、不飽和ジカルボン酸との共重合体を含む基材樹脂から構成される。基材樹脂中に共重合体が占める割合は、70重量%以上であることが好ましく、85重量%以上であることがより好ましく、100重量%であってもよい。共重合体は115〜160℃のガラス転移温度Tgを有していることが好ましい。Tgが115℃より低い場合、発泡粒子を用いて製造された発泡成形体の表面への表皮材の積層一体化が不十分となって、機械的物性が低下することがある。160℃より高い場合、発泡粒子の発泡性が低下して、発泡粒子同士の熱融着一体化が不十分となって発泡成形体の機械的物性が低下することがある。より好ましいTgは120〜150℃である。
【0012】
(a)芳香族ビニル
芳香族ビニルは、ビニル基からなる置換基を備えた芳香族化合物である。ビニル基の数及び芳香族化合物の炭素数は特に限定されない。具体的な芳香族ビニルとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、t−ブチルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン、クロロスチレン等のスチレン系単官能単量体、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、ビス(ビニルフェニル)メタン、ビス(ビニルフェニル)エタン、ビス(ビニルフェニル)プロパン、ビス(ビニルフェニル)ブタン、ジビニルナフタレン、ジビニルアントラセン、ジビニルビフェニル、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物ジ(メタ)アクリレートが挙げられる。芳香族ビニルは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。この内、入手容易性の観点から、スチレンが好ましい。
【0013】
(b)(メタ)アクリル酸エステル
(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステル中のアルキル基の炭素数は1〜5とすることができる。具体的な(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。発泡成形体の機械的物性を向上させる観点から、(メタ)アクリル酸メチルが好ましく、メタクリル酸メチルがより好ましい。
【0014】
(c)不飽和ジカルボン酸
不飽和ジカルボン酸は、特に限定されないが、炭素数2〜6の脂肪族不飽和ジカルボン酸が挙げられる。具体的な不飽和ジカルボン酸としては、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコニット酸、これらの無水物等が挙げられる。不飽和ジカルボン酸は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0015】
(d)芳香族ビニル、(メタ)アクリル酸エステル、不飽和ジカルボン酸に由来する単位の割合
芳香族ビニルと(メタ)アクリル酸エステルと不飽和ジカルボン酸の3つに由来する単位の合計を100重量部とすると、芳香族ビニルに由来する単位を30〜80重量部、(メタ)アクリル酸エステルに由来する単位を8〜35重量部、不飽和ジカルボン酸に由来する単位を10〜50重量部を含むことが好ましい。
芳香族ビニルに由来する単位が占める割合が30重量部未満の場合、発泡成形時に発泡粒子の発泡性が低下して、発泡粒子同士の熱融着一体化が不十分となって発泡成形体の機械的物性が低下することがある。この割合が80重量部より大きい場合、発泡成形体の耐熱性が低下することがある。この割合は40〜75重量部であることがより好ましく、45〜70重量部であることが更に好ましい。
【0016】
(メタ)アクリル酸エステルに由来する単位が占める割合が8重量部未満の場合、発泡成形体の機械的物性が低下することがある。この割合が35重量部より大きい場合、発泡成形時に発泡粒子の発泡性が低下して、発泡粒子同士の熱融着一体化が不十分となって発泡成形体の機械的物性が低下することがある。この割合は10〜33重量部であることがより好ましく、15〜30重量部であることが更に好ましい。
不飽和ジカルボン酸に由来する単位が占める割合が10重量部未満の場合、発泡成形体の耐熱性が低下することがある。この割合が50重量部より大きい場合、発泡成形時に発泡粒子の発泡性が低下して、発泡粒子同士の熱融着一体化が不十分となって発泡成形体の機械的物性が低下することがある。この割合は15〜40重量部であることがより好ましく、20〜35重量部であることが更に好ましい。
なお、単量体の使用量とその単量体に由来する単位の含有量とはほぼ一致している。
【0017】
各成分比、すなわち、芳香族ビニルと(メタ)アクリル酸エステルと不飽和ジカルボン酸に由来する単位、更には以下に説明する他の単量体及び他の樹脂に由来する単位の割合は、1H−NMRのピーク高さ又はFT−IRの面積比で規定することができる。具体的な測定方法については、実施例において説明する。
【0018】
(e)他の単量体
基材樹脂は上記3つの単量体以外に本発明の特性を阻害しない範囲で他の単量体由来の成分との更なる共重合体であってもよい。他の単量体としては例えば、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレート、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
基材樹脂中に他の単量体由来の単位が占める割合は、30重量%以下であることが好ましく、0重量%であってもよい。
【0019】
(f)他の樹脂
基材樹脂には他の樹脂が混合されていてもよい。他の樹脂としてはポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン三次元共重合体等のジエン系のゴム状重合体を添加したゴム変性耐衝撃性ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリメタクリル酸メチル等、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、芳香族ビニル−不飽和ジカルボン酸−不飽和ジカルボン酸イミド共重合体等が挙げられる。
【0020】
上記他の樹脂の内、発泡粒子には、ポリメタクリル酸メチルが含有されていることが好ましい。ポリメタクリル酸メチルが含有されていることによって、発泡粒子の熱融着性が向上し、発泡粒子同士をより強固に熱融着一体化させて、更に優れた機械的物性を有する発泡成形体を得ることができる。発泡粒子中におけるポリメタクリル酸メチルの含有量は、共重合体100重量部に対して10〜500重量部が好ましく、20〜450重量部がより好ましく、30〜400重量部が特に好ましい。
【0021】
発泡粒子には加工助剤としてのアクリル系樹脂が含有されていることが好ましい。加工助剤を含有していることによって、発泡粒子を構成している樹脂の発泡時における溶融張力(粘弾性)を発泡に適したものとして発泡粒子の連続気泡化を抑制し、発泡粒子の発泡性を向上させて、発泡粒子同士の熱融着をより強固なものとし、更に優れた機械的物性を有する発泡成形体を製造できる。発泡粒子中における加工助剤の含有量は、共重合体100重量部に対して0.5〜5重量部が好ましく、0.5〜3重量部がより好ましい。
【0022】
加工助剤としてのアクリル系樹脂としては、特に限定されず、アクリル系単量体の単独重合体又はこれらの二種以上からなる共重合体、アクリル系単量体を50重量%以上含有し且つアクリル系単量体とこれと共重合可能なビニルモノマーとの共重合体等が挙げられる。アクリル系単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等が挙げられる。アクリル系単量体と共重合可能なビニルモノマーとしては、α−メチルスチレン、アクリロニトリル等が挙げられる。アクリル系樹脂の重量平均分子量は、150万〜600万が好ましく、200万〜450万がより好ましく、250万〜400万が特に好ましい。アクリル系樹脂の重量平均分子量が低すぎても高すぎても、発泡粒子を構成している樹脂の発泡成形時における溶融張力(粘弾性)を発泡に適したものに十分に調整し難く、発泡粒子の発泡性を向上できないことがある。
【0023】
(g)芳香族ビニル−不飽和ジカルボン酸−不飽和ジカルボン酸イミド共重合体
上記の(f)他の樹脂としては、芳香族ビニル−不飽和ジカルボン酸−不飽和ジカルボン酸イミド共重合体が、発泡成形体の耐熱性を向上させる観点から好ましい。
芳香族ビニルとしては、特に限定されないが、上記の(a)に例示の化合物が挙げられる。芳香族ビニルは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。この内、入手容易性の観点から、スチレンが好ましい。
不飽和ジカルボン酸としては、特に限定されないが、上記の(c)に例示の化合物が挙げられる。不飽和ジカルボン酸は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。発泡成形体の機械的物性を向上させる観点から、無水マレイン酸が好ましい。
【0024】
不飽和ジカルボン酸イミドとしては、特に限定されないが、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−ナフチルマレイミド等のマレイミド系単量体等が挙げられる。不飽和ジカルボン酸イミド誘導体は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。発泡成形体の耐熱性を向上させる観点から、N−フェニルマレイミドが好ましい。
【0025】
芳香族ビニルと不飽和ジカルボン酸と不飽和ジカルボン酸イミドに由来する単位の割合は、3つに由来する単位の合計を100重量部とすると、芳香族ビニルに由来する単位を20〜80重量部、不飽和ジカルボン酸に由来する単位を2〜30重量部、不飽和ジカルボン酸イミドに由来する単位を20〜80重量部を含むことが好ましい。
芳香族ビニルに由来する単位が占める割合が20重量部未満の場合、発泡成形時に発泡粒子の発泡性が低下して、発泡粒子同士の熱融着一体化が不十分となって発泡成形体の機械的物性が低下することがある。この割合が80重量部より大きい場合、発泡成形体の耐熱性が低下することがある。この割合は30〜75重量部であることがより好ましく、50〜70重量部であることが更に好ましい。
【0026】
(h)添加剤
基材樹脂には必要に応じて、樹脂以外に添加剤が含まれていてもよい。添加剤としては、可塑剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、展着剤、気泡調整剤、充填剤、着色剤、耐候剤、老化防止剤、滑剤、防曇剤、香料等が挙げられる。
【0027】
(2)構成
発泡粒子は、300倍で0.13mm2の面積を撮影した断面写真において、5μm以上かつ30μm未満の気泡径の小気泡と30〜100μmの気泡径の大気泡を備えている。また、小気泡は、大気泡の合計面積の1〜50倍の合計面積を示す。気泡径の異なる気泡を特定の面積比で備えていることで、機械的物性の向上した発泡成形体を与える発泡粒子を提供できる。小気泡の合計面積が、大気泡の合計面積の1倍未満の場合、大気泡が多くなることによって隣接する気泡間の気泡膜長さが長くなり気泡が座屈し易くなることで機械的物性が低下することがある。50倍より大きい場合、気泡が細かくなりすぎて発泡性が低下することがある。小気泡の合計面積は、大気泡の合計面積の、3〜30倍であることが好ましく、5〜20倍であることがより好ましい。
なお、小気泡と大気泡の合計面積の和は、全気泡の合計面積の80%以上であることが好ましい。
【0028】
また、小気泡は、300倍で0.13mm2の面積を撮影した断面写真において、大気泡の個数の1〜300倍の個数で存在していることが好ましい。気泡径の異なる気泡を特定の個数比で備えていることで、機械的物性の向上した発泡成形体を与える発泡粒子を提供できる。小気泡の気泡数が、大気泡の気泡数の1倍未満の場合、大気泡が多くなることによって隣接する気泡間の気泡膜長さが長くなり気泡が座屈し易くなることで機械的物性が低下することがある。300倍より大きい場合、気泡が細かくなりすぎて発泡性が低下することがある。小気泡の気泡数は、大気泡の気泡数の、10〜200倍であることが好ましく、20〜100倍であることがより好ましい。
なお、小気泡と大気泡の合計の気泡数は、全気泡数の80%以上であることが好ましい。
【0029】
更に、発泡粒子の表面近傍の気泡は、300倍で0.13mm2の面積を撮影した断面写真において、0.2〜0.8の界面アスペクト比を示すことが好ましい(上限は1の円形)。特定の界面アスペクト比を示すことで、機械的物性の向上した発泡成形体を与える発泡粒子を提供できる。界面アスペクト比が、0.2未満の場合、気泡が座屈し易くなることで機械的物性が低下することがある。0.8より大きい場合、硬過ぎて靱性が低下した脆い層となることがある。なお、表面近傍の気泡は、300倍の断面写真で目視できる気泡に限られ、小気泡及び大気泡を含む。ここで、発泡粒子中の大気泡の界面アスペクト比は0.4以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましい。一方、小気泡の界面アスペクト比は0.3以上であることが好ましく、0.4以上であることがより好ましい。
【0030】
また更に、小気泡の平均気泡径と大気泡の平均気泡径とは40μm以上の差があることが好ましい。この差があることで、機械的物性の向上した発泡成形体を与える発泡粒子を提供できる。より好ましい差は40〜60μmである。ここで、小気泡の平均気泡径は5〜20μm範囲内に存在することが好ましく、大気泡の平均気泡径は40〜80μm範囲内に存在することが好ましい。小気泡の平均気泡径の変動係数(CV値)と大気泡の平均気泡径のCV値は、それぞれ20〜50%及び5〜40%であることが好ましく、20〜30%及び10〜20%であることがより好ましい。
発泡粒子の平均粒子径は、500〜5000μmであることが好ましく、1000〜3000μmであることがより好ましい。
発泡粒子の外形は、発泡成形体を製造できさえすれば特に限定されず、例えば、球状、略球状、円筒形等が挙げられる。発泡粒子は、0.8以上の平均のアスペクト比で示される外形を有していることが好ましい(上限は1の真球状)。
【0031】
発泡粒子は、20〜1.4倍の嵩倍数を有することが好ましい。嵩倍数が20倍より大きい場合、発泡粒子の連続気泡率が上昇して、発泡成形の発泡時に発泡粒子の発泡性が低下することがある。1.4倍より小さい場合、発泡粒子の気泡が不均一となって、発泡成形時における発泡粒子の発泡性が不充分となることがある。嵩倍数は、14〜1.6倍がより好ましく、12.5〜2倍が特に好ましい。
発泡粒子は、40%以下の連続気泡率を示すことが好ましい。連続気泡率が40%より高い場合、発泡成形時に発泡粒子の発泡圧が不足し、発泡粒子同士の熱融着一体化が不十分となって発泡成形体の機械的物性が低下することがある。連続気泡率は35%以下がより好ましい。
【0032】
(3)製造方法
発泡粒子の製造方法としては、樹脂粒子に発泡剤を気相含浸させて発泡性粒子を得、発泡性粒子を発泡させる方法が挙げられる。
まず、樹脂粒子の製造方法としては、
(i)原料樹脂(基材樹脂の構成樹脂の混合物)を押出機内で溶融混練し、混練物を押出機に取り付けたノズル金型から押出しながら切断した後に冷却することで製造する方法、(ii)原料樹脂を押出機内で溶融混練し、混練物を押出機に取り付けたノズル金型から押出した後、冷却してストランドを得、このストランドを所定間隔毎に切断することで製造する方法、
(iii)原料樹脂を押出機内で溶融混練し、混練物を押出機に取り付けた環状ダイ又はTダイから押出してシートを製造し、このシートを切断することで製造する方法
等が挙げられる。なお、押出機には気泡調整剤が供給されることが好ましい。気泡調整剤としては、ポリテトラフルオロエチレン粉末、アクリル樹脂で変性されたポリテトラフルオロエチレン粉末、タルク等が挙げられる。気泡調整剤の量は、樹脂組成物100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましい。気泡調整剤の量が0.01重量未満の場合、発泡粒子の気泡が粗大となり、得られる発泡成形体の外観が低下することがある。5重量部より多い場合、破泡により発泡粒子の独立気泡率が低下することがある。気泡調整剤の量は、0.05〜3重量部がより好ましく、0.1〜2重量部が特に好ましい。
【0033】
次に、発泡性粒子の製造方法としては、密閉し得る容器中で、発泡剤を樹脂粒子に気相含浸させる方法が挙げられる。発泡剤としては、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサン等の飽和脂肪族炭化水素、ジメチルエーテルのようなエーテル類、塩化メチル、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン、モノクロロジフルオロメタン等のフロン、二酸化炭素、窒素等の無機ガスが挙げられる。中でも、ジメチルエーテル、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、二酸化炭素が好ましく、プロパン、ノルマルブタン、イソブタンがより好ましく、ノルマルブタン、イソブタンが特に好ましい。なお、発泡剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0034】
容器に投入される発泡剤量は、少なすぎると、発泡粒子を所望発泡倍率まで発泡できないことがある。発泡剤量は、多すぎると、発泡剤が可塑剤として作用することから基材樹脂の粘弾性が低下し過ぎて発泡性が低下し良好な発泡粒子を得ることができないことがある。従って、発泡剤量は、原料樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部が好ましく、0.2〜4重量部がより好ましく、0.3〜3重量部が特に好ましい。
更に、発泡粒子の製造方法としては、密閉し得る容器中で、水蒸気のような加熱媒体で加熱する方法が挙げられる。加熱条件としては、例えば、0.3〜0.5MPaのゲージ圧、120〜159℃の温度、10〜180秒が挙げられる。
発泡粒子の粒径は押出機の前端に取り付けたマルチノズル金型の径を変えること等によって変動させることができる。
【0035】
(発泡成形体)
(1)基材樹脂
発泡成形体を構成する基材樹脂は、上記発泡粒子の基材樹脂と同様である。
(2)物性
発泡成形体は、300倍で0.13mm2の面積を撮影した断面写真において、5μm以上かつ30μm未満の気泡径の小気泡と30〜100μmの気泡径の大気泡を備えている。また、小気泡は、大気泡の合計面積の0.5〜50倍の合計面積を示す。気泡径の異なる気泡を特定の面積比で備えていることで、機械的物性の向上した発泡成形体を提供できる。小気泡の合計面積が、大気泡の合計面積の0.5倍未満の場合、大気泡が多くなることによって隣接する気泡間の気泡膜長さが長くなり気泡が座屈し易くなることで機械的物性が低下することがある。50倍より大きい場合、気泡が細かくなりすぎて発泡性が低下することがある。小気泡の合計面積は、大気泡の合計面積の、0.5〜30倍であることが好ましく、3〜20倍であることがより好ましい。
なお、小気泡と大気泡の合計面積の和は、全気泡の合計面積の80%以上であることが好ましい。
【0036】
また、小気泡は、300倍で0.13mm2の面積を撮影した断面写真において、大気泡の個数の1〜300倍の個数で存在していることが好ましい。気泡径の異なる気泡を特定の個数比で備えていることで、機械的物性の向上した発泡成形体を与える発泡粒子を提供できる。小気泡の気泡数が、大気泡の気泡数の1倍未満の場合、大気泡が多くなることによって隣接する気泡間の気泡膜長さが長くなり気泡が座屈し易くなることで機械的物性が低下することがある。300倍より大きい場合、気泡が細かくなりすぎて発泡性が低下することがある。小気泡の気泡数は、大気泡の気泡数の、10〜200倍であることが好ましく、20〜100倍であることがより好ましい。
なお、小気泡と大気泡の合計の気泡数は、全気泡数の80%以上であることが好ましい。
【0037】
更に、発泡粒子の表面近傍の気泡は、300倍で0.13mm2の面積を撮影した断面写真において、0.37〜0.8の界面アスペクト比を示すことが好ましい(上限は1の円形)。特定の界面アスペクト比を示すことで、機械的物性の向上した発泡成形体を与える発泡粒子を提供できる。界面アスペクト比が、0.37未満の場合、気泡が座屈し易くなることで機械的物性が低下することがある。0.8より大きい場合、硬過ぎて靱性が低下した脆い層となることがある。なお、表面近傍の気泡は、300倍の断面写真で目視できる気泡に限られ、小気泡及び大気泡を含む。ここで、発泡粒子中の大気泡の界面アスペクト比は0.4以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましい。一方、小気泡の界面アスペクト比は0.3以上であることが好ましく、0.4以上であることがより好ましい。
【0038】
また更に、小気泡の平均気泡径と大気泡の平均気泡径とは40μm以上の差があることが好ましい。この差があることで、機械的物性の向上した発泡成形体を与える発泡粒子を提供できる。より好ましい差は40〜60μmである。ここで、小気泡の平均気泡径は5〜20μm範囲内に存在することが好ましく、大気泡の平均気泡径は40〜80μm範囲内に存在することが好ましい。小気泡の平均気泡径の変動係数(CV値)と大気泡の平均気泡径のCV値は、それぞれ20〜50%及び5〜40%であることが好ましく、20〜30%及び10〜20%であることがより好ましい。
発泡成形体を構成する融着した発泡粒子の平均粒子径は、600〜6000μmであることが好ましく、1200〜3600μmであることがより好ましい。
融着した発泡粒子の外形は、発泡成形体を維持できさえすれば特に限定されない。
【0039】
発泡成形体は、20〜1.4倍の倍数を有することが好ましい。倍数が20倍より大きい場合、機械的物性が不十分となることがある。1.4倍より小さい場合、重量が増えるため発泡の利点が小さくなることがある。倍数は、14〜1.6倍がより好ましく、12.5〜2倍が特に好ましい。
発泡成形体は、40%以下の連続気泡率を示すことが好ましい。連続気泡率が40%より高い場合、発泡成形体の機械的物性が低下することがある。連続気泡率は35%以下が
より好ましい。
発泡成形体の120℃における加熱寸法変化率は−1〜1%であることが好ましい。発泡成形体は、その加熱寸法変化率が−1〜1%であることによって高温環境下における用途にも好適に用いることができる。
発泡成形体における単位密度当たりの曲げ弾性率は、600MPa/(g/cm3)以上が好ましい。曲げ弾性率が小さすぎると、発泡成形体の表面に繊維強化プラスチックのような表皮材を積層一体化する際に加えられる圧力によって発泡成形体が変形することがある。
【0040】
(3)製造方法
発泡成形体の製造方法としては、発泡粒子を金型のキャビティ内に充填し、キャビティ内に加熱媒体を供給して、発泡粒子を加熱して再発泡させ、再発泡させた発泡粒子同士をこれらの発泡圧力によって互いに熱融着一体化させることによって発泡成形体を得る方法が挙げられる。加熱媒体としては、例えば、水蒸気、熱風、温水等が挙げられ、水蒸気が好ましい。
【0041】
(4)用途
発泡成形体は、軽量性、耐熱性及び機械的物性に優れており、特に、高温環境下での耐荷重性に優れている。そのため、例えば、自動車、航空機、鉄道車輛、船舶等の輸送機器の部品に好適に用いることができる。自動車の部品としては、例えば、エンジン付近に用いられる部品、外装材等が挙げられる。
【0042】
本発明によれば、本発明の発泡成形体から構成される自動車用部品が提供され、その自動車用部品としては、例えば、フロアパネル、ルーフ、ボンネット、フェンダー、アンダーカバー、ホイール、ステアリングホイール、コンテナ(筐体)、フードパネル、サスペンションアーム、バンパー、サンバイザー、トランクリッド、ラゲッジボックス、シート、ドア等の部品が挙げられる。
【0043】
発泡成形体の表面に表皮材を積層一体化させて強化複合体として用いてもよい。発泡成形体が発泡シートである場合、発泡成形体の両面に積層一体化されている必要はなく、発泡成形体の両面のうち少なくとも一方の面に表皮材が積層一体化されていればよい。表皮材の積層は、強化複合体の用途に応じて決定すればよい。なかでも、強化複合体の表面硬度や機械的強度を考慮すると、発泡成形体の厚み方向における両面のそれぞれに表皮材が積層一体化されていることが好ましい。
【0044】
表皮材としては、特に限定されず、繊維強化プラスチック、金属シート、合成樹脂フィルム等が挙げられる。この内、繊維強化プラスチックが好ましい。繊維強化プラスチックを表皮材とする強化複合体を繊維強化複合体と称する。
繊維強化プラスチックを構成している強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、チラノ繊維、玄武岩繊維、セラミックス繊維等の無機繊維;ステンレス繊維、スチール繊維等の金属繊維;アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサドール(PBO)繊維等の有機繊維;ボロン繊維が挙げられる。強化繊維は、一種単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。なかでも、炭素繊維、ガラス繊維及びアラミド繊維が好ましく、炭素繊維がより好ましい。これらの強化繊維は、軽量であるにも関わらず優れた機械的物性を有している。
【0045】
強化繊維は、所望の形状に加工された強化繊維基材として用いられることが好ましい。強化繊維基材としては、強化繊維を用いてなる織物、編物、不織布、及び強化繊維を一方向に引き揃えた繊維束(ストランド)を糸で結束(縫合)してなる面材等が挙げられる。織物の織り方としては、平織、綾織、朱子織等が挙げられる。また、糸としては、ポリアミド樹脂糸、ポリエステル樹脂糸等の合成樹脂糸、及びガラス繊維糸のようなステッチ糸が挙げられる。
強化繊維基材は、一枚の強化繊維基材のみを積層せずに用いてもよく、複数枚の強化繊維基材を積層して積層強化繊維基材として用いてもよい。複数枚の強化繊維基材を積層した積層強化繊維基材としては、(1)一種のみの強化繊維基材を複数枚用意し、これらの強化繊維基材を積層した積層強化繊維基材、(2)複数種の強化繊維基材を用意し、これらの強化繊維基材を積層した積層強化繊維基材、(3)強化繊維を一方向に引き揃えた繊維束(ストランド)を糸で結束(縫合)してなる強化繊維基材を複数枚用意し、これらの強化繊維基材を繊維束の繊維方向が互いに相違した方向を指向するように重ね合わせ、重ね合わせた強化繊維基材同士を糸で一体化(縫合)してなる積層強化繊維基材等が用いられる。
【0046】
繊維強化プラスチックは強化繊維に合成樹脂が含浸されてなるものである。含浸させた合成樹脂によって強化繊維同士を結着一体化させている。
強化繊維に合成樹脂を含浸させる方法としては、特に限定されず、例えば、(1)強化繊維を合成樹脂中に浸漬する方法、(2)強化繊維に合成樹脂を塗布する方法等が挙げられる。
強化繊維に含浸させる合成樹脂としては、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂のいずれも用いることができ、熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。強化繊維に含浸させる熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、マレイミド樹脂、ビニルエステル樹脂、シアン酸エステル樹脂、マレイミド樹脂とシアン酸エステル樹脂とを予備重合した樹脂等が挙げられ、耐熱性、衝撃吸収性又は耐薬品性に優れていることから、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂には、硬化剤、硬化促進剤等の添加剤が含有されていてもよい。なお、熱硬化性樹脂は、単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。
【0047】
また、強化繊維に含浸させる熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、熱可塑性エポキシ樹脂、アミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、サルファイド系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられ、発泡成形体との接着性又は繊維強化プラスチックを構成している強化繊維同士の接着性に優れていることから、ポリエステル系樹脂、熱可塑性エポキシ樹脂が好ましい。なお、熱可塑性樹脂は、単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。
熱可塑性エポキシ樹脂としては、エポキシ化合物同士の重合体又は共重合体であって直鎖構造を有する重合体や、エポキシ化合物と、このエポキシ化合物と重合し得る単量体との共重合体であって直鎖構造を有する共重合体が挙げられる。具体的には、熱可塑性エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、長鎖脂肪族型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂等が挙げられ、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂が好ましい。なお、熱可塑性エポキシ樹脂は、単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。
【0048】
熱可塑性ポリウレタン樹脂としては、ジオールとジイソシアネートとを重合させて得られる直鎖構造を有する重合体が挙げられる。ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール等が挙げられる。ジオールは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。ジイソシアネートとしては、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートが挙げられる。ジイソシアネートは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なお、熱可塑性ポリウレタン樹脂は、単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。
繊維強化プラスチック中における合成樹脂の含有量は、20〜70重量%が好ましい。含油量が20重量%未満の場合、強化繊維同士の結着性や繊維強化プラスチックと発泡成形体との接着性が不十分となり、繊維強化プラスチックの機械的物性や繊維強化複合体の機械的強度を十分に向上できないことがある。70重量%より多い場合、繊維強化プラスチックの機械的物性が低下して、繊維強化複合体の機械的強度を十分に向上できないことがある。含有量は30〜60重量%がより好ましい。
【0049】
繊維強化プラスチックの厚みは、0.02〜2mmが好ましく、0.05〜1mmがより好ましい。厚みがこの範囲内である繊維強化プラスチックは、軽量であるにも関わらず機械的物性に優れている。
繊維強化プラスチックの目付は、50〜4000g/m2が好ましく、100〜1000g/m2がより好ましい。目付がこの範囲内である繊維強化プラスチックは、軽量であるにも関わらず機械的物性に優れている。
【0050】
次に、強化複合体の製造方法を説明する。発泡成形体の表面に表皮材を積層一体化させて強化複合体を製造する方法としては、特に限定されず、例えば、(1)発泡成形体の表面に接着剤を介して表皮材を積層一体化する方法、(2)発泡成形体の表面に、強化繊維に熱可塑性樹脂が含浸されてなる繊維強化プラスチック形成材を積層し、強化繊維中に含浸させた熱可塑性樹脂をバインダーとして発泡成形体の表面に繊維強化プラスチック形成材を繊維強化プラスチックとして積層一体化する方法、(3)発泡成形体の表面に、強化繊維に未硬化の熱硬化性樹脂が含浸された繊維強化プラスチック形成材を積層し、強化繊維中に含浸させた熱硬化性樹脂をバインダーとして、熱硬化性樹脂を硬化させて形成された繊維強化プラスチックを発泡成形体の表面に積層一体化する方法、(4)発泡成形体の表面に、加熱されて軟化状態の表皮材を配設し、発泡成形体の表面に表皮材を押圧させることによって表皮材を必要に応じて発泡成形体の表面に沿って変形させながら発泡成形体の表面に積層一体化させる方法、(5)繊維強化プラスチックの成形で一般的に適用される方法等が挙げられる。発泡成形体は高温環境下における耐荷重性のような機械的物性に優れている観点では、上記(4)の方法も好適に用いることができる。
【0051】
繊維強化プラスチックの成形で用いられる方法としては、例えば、オートクレーブ法、ハンドレイアップ法、スプレーアップ法、PCM(Prepreg Compression Molding)法、RTM(Resin Transfer Molding)法、VaRTM(Vacuum assisted Resin Transfer Molding)法等が挙げられる。
【0052】
このようにして得られた繊維強化複合体は、耐熱性、機械的強度及び軽量性に優れている。そのため、自動車、航空機、鉄道車輛、船舶等の輸送機器分野、家電分野、情報端末分野、家具の分野等の広範な用途に用いることができる。
例えば、繊維強化複合体は、輸送機器の部品、及び、輸送機器の本体を構成する構造部品を含めた輸送機器構成用部品(特に自動車用部品)、風車翼、ロボットアーム、ヘルメット用緩衝材、農産箱、保温保冷容器等の輸送容器、産業用ヘリコプターのローターブレード、部品梱包材として好適に用いることができる。
【0053】
本発明によれば、本発明の繊維強化複合体から構成される自動車用部品が提供され、その自動車用部品としては、例えば、フロアパネル、ルーフ、ボンネット、フェンダー、アンダーカバー、ホイール、ステアリングホイール、コンテナ(筐体)、フードパネル、サスペンションアーム、バンパー、サンバイザー、トランクリッド、ラゲッジボックス、シート、ドア等の部品が挙げられる。
【実施例】
【0054】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本実施例に何ら限定されるものでない。まず、実施例及び比較例中の測定方法及び評価方法について説明する。
(気泡面積比)
発泡粒子及び発泡成形体中の気泡の気泡面積比は、次の通りにして測定する。まず、切断面を走査型電子顕微鏡により300倍で0.13mm2の面積を撮影する。撮影した画像をA4用紙に印刷し、すべての気泡において平均気泡径を算出する。なお、気泡径は、気泡断面の長径及び短径を測定し、短径と長径の相加平均値により得られた値とする。具体的には、気泡断面の外側輪郭線上において相互の距離が最大となる任意の2点を選び、この2点間の距離を「気泡の長径」とする。また、この気泡の長径に対して直交する直線と気泡断面の外側輪郭線とが交わる任意の2点のうち相互の距離が最大となる任意の2点を選び、この2点間の距離を「気泡の短径」とする。平均気泡径が、5μm以上かつ30μm未満の気泡径の小気泡と30〜100μmの気泡径の大気泡について、用紙から気泡膜に沿ってはさみで切り出し、用紙の重量をそれぞれ測定する。用紙重量を測定し(小気泡/大気泡)の重量比を算出する。上述と同様の要領で発泡粒子及び発泡成形体を切断し、拡大写真を得、これらの拡大写真に基づいて上述と同様の要領で(小気泡/大気泡)の重量比を算出する。10枚の拡大写真において、(小気泡/大気泡)の重量比の相加平均値を気泡面積比とする。
【0055】
(気泡数比)
発泡粒子及び発泡成形体中の気泡の気泡数比は、次の通りにして測定する。まず、切断面を走査型電子顕微鏡により300倍で0.13mm2の面積を撮影する。撮影した画像をA4用紙に印刷し、すべての気泡において平均気泡径を算出する。なお、気泡径は、気泡断面の長径及び短径を測定し、短径と長径の相加平均値により得られた値とする。具体的には、気泡断面の外側輪郭線上において相互の距離が最大となる任意の2点を選び、この2点間の距離を「気泡の長径」とする。また、この気泡の長径に対して直交する直線と気泡断面の外側輪郭線とが交わる任意の2点のうち相互の距離が最大となる任意の2点を選び、この2点間の距離を「気泡の短径」とする。平均気泡径が、5μm以上かつ30μm未満の気泡径の小気泡と30〜100μmの気泡径の大気泡について、用紙上で気泡数を計数する。計数した気泡数において、(小気泡の気泡数/大気泡の気泡数)の数量比を算出する。上述と同様の要領で発泡粒子及び発泡成形体を切断し、拡大写真を得、これらの拡大写真に基づいて上述と同様の要領で(小気泡の気泡数/大気泡の気泡数)の数量比を算出する。10枚の拡大写真において、(小気泡の気泡数/大気泡の気泡数)の数量比の相加平均値を気泡面積比とする。
【0056】
(界面アスペクト比)
発泡粒子及び発泡成形体中の気泡の界面アスペクト比は、次の通りにして測定する。まず、発泡粒子及び発泡成形体を切断し、切断面を走査型電子顕微鏡により300倍で0.13mm2の面積を撮影する。界面は、発泡粒子の表面(発泡成形体では、発泡粒子の融着面)と、表面に対して直交する方向に発泡粒子(発泡成形体)の厚みの2.5%の深さとの間の部分(表面近傍)とする。次に、これにより得られた撮影像に含まれている30個の気泡についてアスペクト比を測定し、その相加平均値を界面アスペクト比とする。なお、アスペクト比は、気泡断面の長径及び短径を測定し、短径を長径で除することにより得られた値とする。具体的には、気泡断面の外側輪郭線上において相互の距離が最大となる任意の2点を選び、この2点間の距離を「気泡の長径」とする。また、この気泡の長径に対して直交する直線と気泡断面の外側輪郭線とが交わる任意の2点のうち相互の距離が最大となる任意の2点を選び、この2点間の距離を「気泡の短径」とする。
なお、撮影像において断面が露出している気泡が存在している場合、このような気泡はアスペクト比の測定対象から除外する。例えば、発泡体から未発泡の表皮を切断除去した場合は、発泡体表面に断面が露出している気泡が存在している可能性がある。
【0057】
(ガラス転移温度)
ガラス転移温度は、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」に記載されている方法で測定する。但し、サンプリング方法・温度条件に関しては以下のように行う。
示差走査熱量計装置 DSC6220型(エスアイアイナノテクノロジー社製)を用いアルミニウム製測定容器の底にすきまのないよう試料を約6mg充てんする。試料を、窒素ガス流量20mL/minの下、20℃/minの昇温速度で30℃から220℃まで昇温する。10分間保持後速やかに試料を取出し、25±10℃の環境下にて放冷させた後、20℃/minの昇温速度で30℃から220℃まで昇温した時に得られたDSC曲線よりガラス転移温度(開始点)を算出する。この時に基準物質としてアルミナを用いる。このガラス転移開始温度は規格(9.3「ガラス転移温度の求め方」)より求める。
【0058】
(嵩密度及び嵩倍数)
嵩密度は、JIS K6911:1995年「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して測定する。即ち、JIS K6911に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定し、下記式に基づいて嵩密度を測定する。
発泡粒子の嵩密度(g/cm3)=〔試料を入れたメスシリンダーの重量(g)−メスシリンダーの重量(g)〕/〔メスシリンダーの容量(cm3)〕
嵩倍数は、嵩密度の逆数に樹脂の密度を積算した値である。
【0059】
(密度及び倍数)
発泡成形体から切り出した試験片(例75×300×30mm)の重量(a)と体積(b)をそれぞれ有効数字3桁以上になるように測定し、式(a)/(b)により発泡成形体の密度(g/cm3)を求める。
倍数は、密度の逆数に樹脂の密度を積算した値である。
【0060】
(連続気泡率)
連続気泡率は下記の要領で測定される。
まず、体積測定空気比較式比重計の試料カップを用意し、この試料カップの80%程度を満たす量の発泡粒子(又は発泡成形体)の全重量A(g)を測定する。次に、上記発泡粒子(又は発泡成形体)全体の体積B(cm3)を比重計を用いて1−1/2−1気圧法により測定する。なお、体積測定空気比較式比重計は、東京サイエンス社の商品名「1000型」を使用する。
続いて、金網製の容器を用意し、この金網製の容器を水中に浸漬し、この水中に浸漬した状態における金網製の容器の重量C(g)を測定する。次に、この金網製の容器内に発泡粒子(又は発泡成形体)を全量入れた上で、この金網製の容器を水中に浸漬し、水中に浸漬した状態における金網製の容器とこの金網製容器に入れた発泡粒子(又は発泡成形体)の全量とを併せた重量D(g)を測定する。
そして、下記式に基づいて発泡粒子の見掛け体積E(cm3)(又は発泡成形体の体積E(cm3))を算出し、この体積Eと発泡粒子全体の体積B(cm3)に基づいて下記式により発泡成形用発泡粒子の連続気泡率を算出するなお、水1gの体積を1cm3とする。
E=A+(C−D)
連続気泡率(%)=100×(E−B)/E
【0061】
(加熱寸法変化率)
加熱寸法変化率はJIS K6767:1999「発泡プラスチック−ポリエチレン−試験方法」記載のB法にて測定する。具体的には、発泡成形体から平面形状が一辺150mmの正方形で且つ厚みが発泡成形体の厚みである試験片を切り出す。
試験片の中央部に縦及び横方向にそれぞれ互いに平行に3本の100mmの直線を50mm間隔に記入する。縦及び横方向についてそれぞれ3本の直線の長さを測定し、それらの相加平均値L0を初めの寸法とする。しかる後、試験片を120℃の熱風循環式乾燥機の中に168時間に亘って放置して加熱試験を行った後に取出し、試験片を25℃にて1時間に亘って放置する。次に、試験片の表面に記入した縦及び横方向のそれぞれ3本の直線の長さを測定し、それらの相加平均値L1を加熱後の寸法とする。下記の式に基づいて加熱寸法変化率を算出する。
加熱寸法変化率(%)=100×(L1−L0)/L0
【0062】
(曲げ弾性率)
曲げ弾性率はJIS K7221−1:2006「硬質発泡プラスチック−曲げ試験−第1部:たわみ特性の求め方」に準拠した方法により測定する。即ち、発泡成形体から、縦20mm×横25mm×高さ130mmの直方体形状の試験片を切り出す。測定には、テンシロン万能試験機(オリエンテック社製「UCT−10T」)を用いる。曲げ弾性率は、万能試験機データ処理システム(ソフト・ブレーン社製「UTPS−237S Ver,1.00」)を用いて算出する。試験片の数は5個以上とし、JIS K 7100:1999の記号「23/50」(温度23℃、相対湿度50%)、2級の標準雰囲気下で16時間かけて状態調整した後、同じ標準雰囲気下で測定する。各試験片の圧縮弾性率の相加平均値をそれぞれ、発泡成形体の曲げ弾性率とする。
曲げ弾性率は、荷重−変形曲線の始めの直線部分を用いて次式により計算する。
E=Δσ/Δε
E:曲げ弾性率(MPa)
Δσ:直線上の2点間の応力の差(MPa)
Δε:同じ2点間の変形の差(%)
また、単位密度当たりの曲げ弾性率は、曲げ弾性率を発泡成形体の密度で除して算出する。
【0063】
(曲げ最大点応力)
繊維強化複合体について、横方向寸法25mm、奥行き方向寸法130mmの短冊状の試験片を切り出し、曲げ試験を実施して曲げ強度を求める。測定には、テンシロン万能試験機(オリエンテック社製「UCT−10T」)を用いる。曲げ強度の曲げ最大点応力は、万能試験機データ処理システム(ソフト・ブレーン社製「UTPS−237S Ver,1.00」)を用いて算出する。
短冊状試験片を支持台に載置し、ロードセル1000N、試験速度10mm/分、支持台の先端治具10R、開き幅100mmの条件下で曲げ最大点応力を測定する。試験片の数は5個以上とし、JIS K 7100:1999の記号「23/50」(温度23℃、相対湿度50%)、2級の標準雰囲気下で16時間かけて状態調整した後、同じ標準雰囲気下で測定する。各試験片の曲げ最大点応力の相加平均値をそれぞれ、繊維強化複合体の曲げ最大点応力とする。
【0064】
(基材樹脂の樹脂成分の割合)
1H−NMR)
日本電子製 ECX400P型核磁気共鳴装置を用い、以下の条件で測定する。
<測定条件>
・測定モード シングルパルス
・パルス幅 45°(6.05μ秒)
・ポイント数 32k
・繰り返し時間 7.0秒
・積算回数 128回
・測定溶媒 重クロロホルム
・試料濃度 約20mg/0.6mL
・測定温度 50℃
・ケミカルシフト基準 クロロホルム:7.24ppm
・測定範囲 20ppm(−5ppm〜15ppm)
・ウインドウ関数 exponnential(BF:0.12Hz)
基材樹脂の組成比を、1H−NMR測定から得られたスペクトルの各シグナルの積分強度比より算出する。なお、各シグナルの領域に不純物由来と推測されるシグナルが観測される場合には、計算の際、これらの寄与を無視する。
【0065】
(FT−IR)
基材樹脂の吸光度比(D1780/D698、D1720/D698)を次の要領で測定する。
無作為に選択した10個の各樹脂粒子について、赤外分光分析ATR測定法により表面分析を行って赤外吸収スペクトルを得る。この分析では、試料表面から数μm(約2μm)までの深さの範囲の赤外吸収スペクトルが得られる。各赤外吸収スペクトルから吸光度比(D1780/D698、D1720/D698)を算出し、算出した吸光度比の相加平均を吸光度比とする。
吸光度D1780、D1720およびD698は、Thermo SCIENTIFIC社から商品名「フーリエ変換赤外分光光度計 Nicolet iS10」で販売されている測定装置に、ATRアクセサリーとしてThermo SCIENTIFIC社製「Smart−iTR」を接続して測定する。以下の条件にて赤外分光分析ATR測定を行う。
【0066】
<測定条件>
・測定装置:フーリエ変換赤外分光光度計 Nicolet iS10(Thermo SCIENTIFIC社製)及び一回反射型水平状ATR Smart−iTR(Thermo SCIENTIFIC社製)
・ATRクリスタル:Diamond with ZnSe lens、角度=42°
・測定法:一回ATR法
・測定波数領域:4000cm-1〜650cm-1
・測定深度の波数依存性:補正せず
・検出器:重水素化硫酸トリグリシン(DTGS)検出器およびKBrビームスプリッター
・分解能:4cm-1
・積算回数:16回(バックグランド測定時も同様)
ATR法では、試料と高屈折率結晶の密着度合によって測定で得られる赤外吸収スペクトルの強度が変化するため、ATRアクセサリーの「Smart−iTR」で掛けられる最大荷重を掛けて密着度合をほぼ均一にして測定を行なう。
【0067】
以上の条件で得られた赤外線吸収スペクトルは、次のようにピーク処理をしてそれぞれのD1780、D1720およびD698を求める。
赤外吸収スペクトルから得られる1780cm-1での吸光度D1780は、無水マレイン酸中の2つのカルボニル基のC=Oによる逆対称の伸縮振動に由来する吸収スペクトルに対応する吸光度である。
この吸光度の測定では、1780cm-1で他の吸収スペクトルが重なっている場合でもピーク分離を実施しない。吸光度D1780は、1920cm-1と1620cm-1を結ぶ直線をベースラインとして、1810cm-1と1745cm-1間の最大吸光度を意味する。
【0068】
また、1720cm-1での吸光度D1720は、メタクリル酸メチル中に含まれるカルボニル基C=Oによる逆対称の伸縮振動に由来する吸収スペクトルに対応する吸光度である。
この吸光度の測定では、1720cm-1で他の吸収スペクトルが重なっている場合でもピーク分離を実施しない。吸光度D1720は、1920cm-1と1620cm-1を結ぶ直線をベースラインとして、1745cm-1と1690cm-1間の最大吸光度を意味する。
【0069】
698cm-1での吸光度D698は、スチレン中の1置換ベンゼン環中のC−Hの面外変角振動に由来する吸収スペクトルに対応する吸光度である。
この吸光度の測定では、698cm-1で他の吸収スペクトルが重なっている場合でもピーク分離を実施しない。吸光度D698は、1510cm-1と810cm-1を結ぶ直線をベースラインとして、720cm-1と660cm-1間の最大吸光度を意味する。
【0070】
スチレン、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸比率(質量%)を、後述の検量線に基づいて、吸光度比(D1780/D698、D1720/D698)から算出する。なお、ピーク処理方法は前述の樹脂粒子と同様の方法を用いる。
吸光度比からスチレンとメタクリル酸メチルの組成割合を求める方法としては、スチレン樹脂とメタクリル酸メチル樹脂とを所定の組成割合に均一に混合してなる複数種類の標準試料を作製する。
具体的には、メタクリル酸メチルとスチレンとをそれぞれ0/100、20/80、40/60、50/50および60/40の重量割合で計量した単量体を10mlのスクリューバイアルに入れ、ここに単量体100重量部に対して10重量部の2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を加えて単量体を溶解させる。得られた混合液を2ml試料管(φ7mm×122mm×190mm)に移し入れ、窒素パージした後に封管する。次にこれを65℃に設定したウォーターバスに入れ、10時間加熱して重合を完了させ、アンプルから取り出した重合体を標準試料とする。
各標準試料について赤外分光分析ATR法により赤外線吸収スペクトルを得た後に吸光度比(D1780/D698)を算出する。そして、縦軸に組成割合(標準試料中のスチレン樹脂比率=質量%)を、横軸に吸光度比(D1780/D698)をとることで検量線を描く。この検量線に基づいて、スチレン樹脂とメタクリル酸メチル樹脂の組成割合を求めることができる。
【0071】
また、スチレン樹脂と無水マレイン酸樹脂の標準試料としては、スチレンと無水マレイン酸の1/1共重合体(商品名SMA1000(P)CRAY VALLEY社製)及びスチレンと無水マレイン酸の3/1共重合体(SMA3000(P)CRAY VALLEY社製)を用いる。
各標準試料について赤外分光分析ATR法により赤外線吸収スペクトルを得た後に吸光度比(D1720/D698)を算出する。そして、縦軸に組成割合(標準試料中のスチレン樹脂比率=質量%)を、横軸に吸光度比(D1720/D698)をとることで検量線を描く。この検量線に基づいて、スチレン樹脂と無水マレイン酸樹脂の組成割合を求めることができる。
【0072】
検量線からスチレンとメタクリル酸メチルおよびスチレンと無水マレイン酸の組成割合を求める。それぞれの組成割合から、樹脂中のスチレン、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸の3成分の組成割合を以下の手順で求める。
ここで、各標準試料の割合を以下のように設定する。
メタクリル酸メチル:スチレン=A:B [1]
スチレン:無水マレイン酸 =C:D [2]
スチレンが共通項なので、[2]のスチレン割合Cを[1]のスチレン割合Bに合わせる。
[2]より
スチレン :無水マレイン酸
=C :D
=C×(B/C):D×(B/C)
=B :D×(B/C) [3]
[3]より、スチレンの割合が[1]と等しくなるので、[1]、[3]よりメタクリル酸メチル、スチレン、無水マレイン酸の存在比は以下のようになる。
メタクリル酸メチル:スチレン:無水マレイン酸
=A :B :D×(B/C) [4]
[4]の存在比より、各成分の割合は以下のようになる。
メタクリル酸メチル={A/((A+B+D×(B/C))}×100
スチレン ={B/((A+B+D×(B/C))}×100
無水マレイン酸 ={D×(B/C)/((A+B+D×(B/C))}×100
【0073】
(実施例1)
(樹脂粒子製造工程)
スチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体(商品名「DENKA RESISFY R-200」、電気化学工業社製、スチレン:53重量部、メタクリル酸メチル:30重量部、無水マレイン酸:17重量部、密度1.16g/cm3)100重量部、及びタルクを含む樹脂組成物1重量部を口径が30mmの二軸押出機に供給して240℃で溶融混練した。続いて、二軸押出機の前端に取り付けたマルチノズル金型〔円状に、直径1.0mmのノズルが20個、配置されたもの〕の各ノズルから樹脂組成物を押出した。押出した樹脂を、直ちに冷却水槽で冷却した。そして、冷却されたストランド状の樹脂を十分に水切りしたのち、ペレタイザーを用いて小粒状に切断して樹脂粒子を製造した。得られた樹脂粒子は、粒子の長さLが1.3〜1.8mmで、粒子の径Dが1.0〜1.2mmであった。
【0074】
(含浸工程)
上記樹脂粒子100重量部を圧力容器中に密閉し、圧力容器内を炭酸ガスで置換した後、炭酸ガスを、含浸圧0.5MPaまで圧入した。20℃の環境下に静置し、含浸時間24時間が経過した後、5分間かけて圧力容器内をゆっくりと除圧した。このようにして、樹脂粒子に炭酸ガスを含浸させて、発泡性粒子を得た。
(発泡工程)
上記含浸工程における除圧の後直ぐに、圧力容器から発泡性粒子を取り出した後、炭酸カルシウム0.08重量部を添加し、混合した。その後、水蒸気を用いて、発泡温度128℃で120秒撹拌しながら、高圧の発泡槽で、上記含浸物を水蒸気により発泡させた。発泡後に、高圧の発泡槽から粒子を取り出して、塩化水素水溶液で炭酸カルシウムを除去した後に、気流乾燥機にて乾燥を行い、発泡粒子を得た。上述した方法により、得られた発泡粒子の嵩密度を測定したところ、0.12g/cm3であった。
【0075】
(成形工程)
得られた発泡粒子を1日間室温(23℃)に放置した後、圧力容器中に密閉し、圧力容器内を炭酸ガスで置換した後、炭酸ガスを、含浸圧(ゲージ圧)0.4MPaまで圧入した。20℃の環境下に静置し、加圧養生を8時間実施した。取り出し後、30mm×300mm×400mmの成形用金型に充填し、0.30MPaの水蒸気にて60秒間加熱を行い、次いで、発泡成形体の最高面圧が0.01MPaに低下するまで冷却することで、発泡成形体を得た。
【0076】
(実施例2)
発泡工程において、発泡温度128℃で150秒撹拌しながら発泡させたこと以外は実施例1と同様にして、発泡粒子、発泡成形体を得た。
(実施例3)
発泡工程において、発泡温度130℃で120秒撹拌しながら発泡させたこと以外は実施例1と同様にして、発泡粒子、発泡成形体を得た。
(実施例4)
発泡工程において、発泡温度130℃で150秒撹拌しながら発泡させたこと以外は実施例1と同様にして、発泡粒子、発泡成形体を得た。
(実施例5)
発泡工程において、発泡温度134℃で120秒撹拌しながら発泡させたこと以外は実施例1と同様にして、発泡粒子、発泡成形体を得た。
【0077】
(実施例6)
(樹脂粒子製造工程)
スチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体(商品名「DENKA RESISFY KX-406」、電気化学工業社製、スチレン:70重量部、メタクリル酸メチル:9重量部、無水マレイン酸:21重量部、密度1.15g/cm3)100重量部、及びタルクを含む樹脂組成物1重量部を口径が30mmの二軸押出機に供給して254℃で溶融混練した。続いて、二軸押出機の前端に取り付けたマルチノズル金型〔円状に、直径1.0mmのノズルが20個、配置されたもの〕の各ノズルから樹脂組成物を押出した。押出した樹脂を、直ちに冷却水槽で冷却した。そして、冷却されたストランド状の樹脂を十分に水切りしたのち、ペレタイザーを用いて小粒状に切断して樹脂粒子を製造した。得られた樹脂粒子は、粒子の長さLが1.3〜1.8mmで、粒子の径Dが1.0〜1.2mmであった。
【0078】
(含浸工程)
上記樹脂粒子100重量部を圧力容器中に密閉し、圧力容器内を炭酸ガスで置換した後、炭酸ガスを、含浸圧1.0MPaまで圧入した。20℃の環境下に静置し、含浸時間24時間が経過した後、5分間かけて圧力容器内をゆっくりと除圧した。このようにして、樹脂粒子に炭酸ガスを含浸させて、発泡性粒子を得た。
(発泡工程)
上記含浸工程における除圧の後直ぐに、圧力容器から発泡性粒子を取り出した後、炭酸カルシウム0.08重量部を添加し、混合した。その後、水蒸気を用いて、発泡温度136℃で150秒撹拌しながら、高圧の発泡槽で、上記含浸物を水蒸気により発泡させた。発泡後に、高圧の発泡槽から粒子を取り出して、塩化水素水溶液で炭酸カルシウムを除去した後に、気流乾燥機にて乾燥を行い、発泡粒子を得た。上述した方法により、得られた発泡粒子の嵩密度を測定したところ、0.12g/cm3であった。
【0079】
(成形工程)
得られた発泡粒子を1日間室温(23℃)に放置した後、圧力容器中に密閉し、圧力容器内を炭酸ガスで置換した後、炭酸ガスを、含浸圧(ゲージ圧)0.4MPaまで圧入した。20℃の環境下に静置し、加圧養生を8時間実施した。取り出し後、30mm×300mm×400mmの成形用金型に充填し、0.42MPaの水蒸気にて60秒間加熱を行い、次いで、発泡成形体の最高面圧が0.01MPaに低下するまで冷却することで、発泡成形体を得た。
【0080】
(比較例1)
(発泡工程)
スチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体(商品名「DENKA RESISFY R-200」、電気化学工業社製、スチレン:53重量部、メタクリル酸メチル:30重量部、無水マレイン酸:17重量部)100重量部、及びタルクを含む樹脂組成物1重量部及びタルクを含む樹脂組成物をスクリュー径50mmの第一押出機とスクリュー径65mmの第二押出機とが連結されたタンデム型押出機に供給して280℃にて溶融混練した。
次に、第一単軸押出機の途中から、イソブタン35重量%及びノルマルブタン65重量%を含むブタンを樹脂分100重量部に対して1.8重量部となるように溶融状態の樹脂組成物に圧入して、樹脂組成物中に均一に分散させた。
【0081】
しかる後、第二押出機の前端部において、溶融状態の樹脂組成物を175℃に冷却した後、押出機の前端に取り付けたマルチノズル金型のノズルから樹脂組成物を押出発泡させた。なお、マルチノズル金型は、出口部の直径が1mmのノズルを有していた。
そして、マルチノズル金型のノズルの出口部から押出発泡された樹脂押出物を回転刃によって切断した後に直ちに冷却して略球状の再発泡性を有する発泡粒子を製造した。樹脂押出物は、マルチノズル金型のノズルから押出された直後の未発泡部と、この未発泡部に連続する発泡途上の発泡部とからなっていた。樹脂押出物は、ノズルの出口部の開口端において切断されており、樹脂押出物の切断は未発泡部において行われていた。
(成形工程)
得られた発泡粒子を、30mm×300mm×400mmの成形用金型に充填し、0.42MPaの水蒸気にて60秒間加熱を行い、次いで、発泡成形体の最高面圧が0.01MPaに低下するまで冷却することで、発泡成形体を得た。
【0082】
(比較例2)
第一単軸押出機の途中から、イソブタン35重量%及びノルマルブタン65重量%を含むブタンを樹脂分100重量部に対して2.5重量部となるように溶融状態の樹脂組成物に圧入して、樹脂組成物中に均一に分散させたこと以外は実施例1と同様にして、発泡粒子、発泡成形体を作製した。
上記実施例及び比較例の発泡剤含浸法の種類、基材樹脂のTg、発泡粒子の気泡面積比、気泡数比及び界面アスペクト比、発泡粒子の嵩倍数を表1にまとめて示す。また、上記実施例1〜2及び比較例1〜2の発泡成形体の気泡面積比、気泡数比及び界面アスペクト比、発泡成形体の倍数を表2にまとめて示す。更に、実施例及び比較例の発泡粒子の断面写真を図1〜8に、実施例1〜2及び比較例1〜2の発泡成形体の断面写真を図9〜12に示す。これら図中、(a)は内部、(b)は表層の写真である。
【0083】
(繊維強化複合体製造工程)
コア材として実施例1及び2ならびに比較例1で作製した発泡粒子を、12mm×300mm×400mmの成形用金型に充填し、水蒸気にて加熱を行い、次いで発泡成形体の最高面圧が0.01MPaに低下するまで冷却することで、発泡成形体を製造し、一辺150mmの平面正方形状に切り出してコア材用発泡成形体を得た。
これに対し繊維強化樹脂材(繊維強化プラスチック)として、炭素繊維からなる綾織の織物に樹脂含浸されている面材(三菱レイヨン社製、商品名「パイロフィルプリプレグ TR3523−395GMP」、目付:200g/m2、厚み:0.23mm)を4枚用意した。面材は、一辺150mmの平面正方形状であり、面材には、熱硬化性樹脂として未硬化のエポキシ樹脂が40質量%含有されていた。
【0084】
2枚の面材をそれらの経糸の長さ方向が互いに90°の角度をなすように重ね合わせて多層面材とした。それをコア材用発泡成形体の表裏にそれぞれ配置し、積層体を得た。
続いて、上記積層体を平板金型間に配設し、厚み11mmのスペーサーを配置した平板金型を型締めすることによって、プレス成形し、繊維強化プラスチックを発泡体に熱接着させ、コア材部及び多層面材からなる表層部を備えた繊維強化複合体を作製した。
なお、プレス成形時には、積層体が120℃となるようにし、8分保持することによって、繊維強化樹プラスチックに含有されている樹脂を硬化させて、繊維強化プラスチックの繊維どうしを硬化したエポキシ樹脂で結着、固定して繊維強化プラスチックを発泡体の両面に積層一体化させて繊維強化複合体を製造した。
しかる後、繊維強化複合体を30℃以下に冷却した後、平板金型を開いて繊維強化複合体を取り出して繊維強化複合体を得た。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
表1及び2から、特定の範囲の気泡面積比を有する発泡粒子から得られた発泡成形体及び特定の範囲の気泡面積比を有する発泡成形体は、優れた機械的物性を有していることが分かる。
【0088】
(実施例7)
(樹脂粒子製造工程)
スチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体(商品名「DENKA RESISFY KX-435」、電気化学工業社製、スチレン:61重量部、メタクリル酸メチル:12重量部、無水マレイン酸:27重量部、密度1.15g/cm3)100重量部を80重量部とし、残りの20重量部をスチレン−無水マレイン酸−N−フェニルマレイミド共重合体(商品名「DENKA IP MS−NIP」、電気化学工業社製、スチレン:67重量部、無水マレイン酸:5重量部、N−フェニルマレイミド:27重量部、密度1.18g/cm3、ガラス転移温度Tg186℃)100重量部、及びタルクを含む樹脂組成物1重量部を口径が30mmの二軸押出機に供給して265℃で溶融混練した。続いて、二軸押出機の前端に取り付けたマルチノズル金型〔円状に、直径1.0mmのノズルが20個、配置されたもの〕の各ノズルから樹脂組成物を押出した。押出した樹脂を、直ちに冷却水槽で冷却した。そして、冷却されたストランド状の樹脂を十分に水切りしたのち、ペレタイザーを用いて小粒状に切断して樹脂粒子を製造した。得られた樹脂粒子は、粒子の長さLが1.3〜1.8mmで、粒子の径Dが1.0〜1.2mmであった。
【0089】
(含浸工程)
上記樹脂粒子100重量部を圧力容器中に密閉し、圧力容器内を炭酸ガスで置換した後、炭酸ガスを、含浸圧0.5MPaまで圧入した。20℃の環境下に静置し、含浸時間24時間が経過した後、5分間かけて圧力容器内をゆっくりと除圧した。このようにして、樹脂粒子に炭酸ガスを含浸させて、発泡性粒子を得た。
(発泡工程)
上記含浸工程における除圧の後直ぐに、圧力容器から発泡性粒子を取り出した後、炭酸カルシウム0.08重量部を添加し、混合した。その後、水蒸気を用いて、発泡温度146℃で150秒撹拌しながら、高圧の発泡槽で、上記含浸物を水蒸気により発泡させた。発泡後に、高圧の発泡槽から粒子を取り出して、塩化水素水溶液で炭酸カルシウムを除去した後に、気流乾燥機にて乾燥を行い、発泡粒子を得た。上述した方法により、得られた発泡粒子の嵩密度を測定したところ、0.12g/cm3であった。
【0090】
(成形工程)
得られた発泡粒子を1日間室温(23℃)に放置した後、圧力容器中に密閉し、圧力容器内を炭酸ガスで置換した後、炭酸ガスを、含浸圧(ゲージ圧)0.4MPaまで圧入した。20℃の環境下に静置し、加圧養生を8時間実施した。取り出し後、30mm×300mm×400mmの成形用金型に充填し、0.45MPaの水蒸気にて60秒間加熱を行い、次いで、発泡成形体の最高面圧が0.01MPaに低下するまで冷却することで、発泡成形体を得た。
【0091】
(実施例8)
樹脂粒子製造工程において、スチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体100重量部を85重量部とし、残りの15重量部をスチレン−無水マレイン酸−N−フェニルマレイミド共重合体としたこと以外は実施例7と同様にして、発泡粒子、発泡成形体を得た。
【0092】
(実施例9)
樹脂粒子製造工程において、スチレン−メタクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体100重量部を90重量部とし、残りの10重量部をスチレン−無水マレイン酸−N−フェニルマレイミド共重合体とし、発泡温度を143℃としたこと以外は実施例7と同様にして、発泡粒子を得た。
【0093】
(成形工程)
得られた発泡粒子を1日間室温(23℃)に放置した後、圧力容器中に密閉し、圧力容器内を炭酸ガスで置換した後、炭酸ガスを、含浸圧(ゲージ圧)0.4MPaまで圧入した。20℃の環境下に静置し、加圧養生を8時間実施した。取り出し後、30mm×300mm×400mmの成形用金型に充填し、0.43MPaの水蒸気にて60秒間加熱を行い、次いで、発泡成形体の最高面圧が0.01MPaに低下するまで冷却することで、発泡成形体を得た。
【0094】
上記実施例の発泡剤含浸法の種類、基材樹脂のTg、発泡粒子の気泡面積比、気泡数比及び界面アスペクト比、発泡粒子の嵩倍数を表3にまとめて示す。また、上記実施例7〜9の発泡成形体の気泡面積比、気泡数比及び界面アスペクト比、発泡成形体の倍数を表4にまとめて示す。更に、実施例7〜9の発泡粒子の断面写真を図13〜15に、実施例7〜9の発泡成形体の断面写真を図16〜18に示す。これら図中、(a)は内部、(b)は表層の写真である。
【0095】
【表3】
【0096】
【表4】
【0097】
表3及び4から、基材樹脂としてマレイミド系単量体を更に含む共重合体から構成される発泡成形体は、優れた機械的物性を有しつつ、優れた耐熱性も有していることが分かる。
図1
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