特開2017-186859(P2017-186859A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-186859(P2017-186859A)
(43)【公開日】2017年10月12日
(54)【発明の名称】構造物の補強構造および補強方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20170919BHJP
【FI】
   E04G23/02 E
   E04G23/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】書面
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2016-83224(P2016-83224)
(22)【出願日】2016年3月31日
(71)【出願人】
【識別番号】390022389
【氏名又は名称】サンコーテクノ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子
(72)【発明者】
【氏名】今井 清史
(72)【発明者】
【氏名】藤井 保也
(72)【発明者】
【氏名】小林 薫
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 隼人
【テーマコード(参考)】
2E176
【Fターム(参考)】
2E176AA02
2E176AA03
2E176AA04
2E176BB29
(57)【要約】
【課題】構造物に適正なせん断強度を与えることができる構造物の補強構造および補強方法を提供する。
【解決手段】構造物32に形成された挿入孔50に充てんされた固化材料11と、固化材料11に埋め込まれたあと施工アンカー10とを有し、あと施工アンカー10は、棒状のアンカー本体1と、アンカー本体1に、アンカー本体の長さ方向に間隔をおいて設けられた少なくとも一対の固着部2とを備え、一対の固着部2のうち少なくとも一方は、一端から他端に向かって他方の固着部2から離れる方向に漸次断面積が増大する拡大部を有する、構造物の補強構造。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物に形成された挿入孔に充てんされた固化材料と、前記固化材料に埋め込まれたあと施工アンカーとを有し、
前記あと施工アンカーは、棒状のアンカー本体と、前記アンカー本体に、前記アンカー本体の長さ方向に間隔をおいて設けられた少なくとも一対の固着部とを備え、
前記一対の固着部のうち少なくとも一方は、一端から他端に向かって他方の固着部から離れる方向に漸次断面積が増大する拡大部を有する、構造物の補強構造。
【請求項2】
前記固着部は、前記アンカー本体に取り付けられ、
前記一対の固着部は、それぞれ前記拡大部を有し、
前記固着部の最大外形寸法は、前記一対の固着部の間の部分の前記アンカー本体の外形寸法より大きい、請求項1に記載の構造物の補強構造。
【請求項3】
前記固着部は、前記一端から前記他端に向かって漸次断面積が増大する円錐台形状を有する、請求項1または2に記載の構造物の補強構造。
【請求項4】
前記固着部は、前記アンカー本体に、着脱可能に取り付けられている、請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の構造物の補強構造。
【請求項5】
前記アンカー本体は、前記一対の固着部の間の主部と、前記固着部が取り付けられる取付け部とを有し、
前記取付け部には雄ネジが形成されており、
前記固着部には、前記雄ネジと螺合する雌ネジを有するネジ孔が形成され、
前記固着部は、前記ネジ孔を前記雄ネジに螺着させることによって前記アンカー本体に取り付けられる、請求項4に記載の構造物の補強構造。
【請求項6】
前記固着部の最大外形寸法は、前記挿入孔の内形寸法より小さい、請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の構造物の補強構造。
【請求項7】
前記一対の固着部の間の部分の前記アンカー本体は、表面が平滑に形成されている、請求項1〜6のうちいずれか1項に記載の構造物の補強構造。
【請求項8】
前記挿入孔は、前記構造物を貫通する貫通孔である、請求項1〜7のうちいずれか1項に記載の構造物の補強構造。
【請求項9】
構造物に挿入孔を形成する穿孔工程と、
前記挿入孔に固化材料を充てんする充てん工程と、
棒状のアンカー本体と、前記アンカー本体に、前記アンカー本体の長さ方向に間隔をおいて設けられた少なくとも一対の固着部とを備え、前記一対の固着部のうち少なくとも一方は、一端から他端に向かって他方の固着部から離れる方向に漸次断面積が増大する拡大部を有するあと施工アンカーを前記挿入孔に挿入する挿入工程と、を有する、構造物の補強方法。
【請求項10】
前記挿入工程によって前記挿入孔に前記あと施工アンカーを挿入した後に、前記充てん工程によって前記挿入孔に固化材料を充てんすることによって、前記固化材料に前記あと施工アンカーを埋め込む、請求項9に記載の構造物の補強方法。
【請求項11】
前記充てん工程によって前記挿入孔に前記固化材料を充てんした後に、前記挿入工程によって前記固化材料に前記あと施工アンカーを埋め込む、請求項9に記載の構造物の補強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の補強構造および補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物などの補強には、あと施工アンカーが用いられる。例えば、鉄筋コンクリート構造物の壁体のせん断強度を増大させるために、壁体に挿入孔を形成し、その挿入孔にあと施工アンカーを設けた補強構造が提案されている(例えば、特許文献1〜3を参照)。
【0003】
特許文献1に記載のせん断補強構造では、線材と、その基端部に固定された基端定着部材とを有するせん断補強部材が用いられている。このせん断補強構造では、鉄筋コンクリート構造物に形成された挿入孔に、充てん材とともに前記せん断補強部材が挿入されている。
特許文献2に記載のせん断補強構造では、ねじ筋部と、ねじ筋部に設けられたナットとを有する補強部材が用いられている。このせん断補強構造では、鉄筋コンクリート部材に、前記補強部材が埋設されている。
特許文献3に記載の補強構造では、ねじ節鉄筋と、ねじ節鉄筋の両端に設けられた定着体とを有するせん断補強部材が用いられている。この補強構造では、コンクリート構造体の挿入孔に、グラウト材とともに前記せん断補強部材が挿入されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3668490号公報
【特許文献2】特許第5609296号公報
【特許文献3】特許第5584641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
構造物に作用するせん断力の大きさは、その構造物が受ける外力、構造物の部位などにより異なる。構造物に作用するせん断力が大きい場合には高いせん断強度が求められる一方、せん断力が小さい場合にせん断強度を過剰に高めればコスト面の問題が生じるため、構造物には、作用するせん断力に応じた適切なせん断強度を与える必要がある。
【0006】
本発明は、構造物に適正なせん断強度を与えることができる構造物の補強構造および補強方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、構造物に形成された挿入孔に充てんされた固化材料と、前記固化材料に埋め込まれたあと施工アンカーとを有し、前記あと施工アンカーは、棒状のアンカー本体と、前記アンカー本体に、前記アンカー本体の長さ方向に間隔をおいて設けられた少なくとも一対の固着部とを備え、前記一対の固着部のうち少なくとも一方は、一端から他端に向かって他方の固着部から離れる方向に漸次断面積が増大する拡大部を有する、構造物の補強構造を提供する。
この構成によれば、固着部は、漸次断面積が増大する拡大部を有するため、あと施工アンカーに引き抜き方向の力が加えられた場合に、固着部において高い支圧力を生じさせ、あと施工アンカーの定着力を高めることができる。また、構造物に作用するせん断力に応じて適切な形状の固着部を有するあと施工アンカーを選択することにより、構造物に適正なせん断強度を与えることができる。
したがって、構造物の破壊を確実に防ぐとともに、施工コストを抑制することができる。
【0008】
前記固着部は、前記アンカー本体に取り付けられ、前記一対の固着部は、それぞれ前記拡大部を有し、前記固着部の最大外形寸法は、前記一対の固着部の間の部分の前記アンカー本体の外形寸法より大きいことが好ましい。
この構成によれば、一対の固着部は、互いに離れる方向に漸次断面積が増大する拡大部を有するため、あと施工アンカーに引き抜き方向の力が加えられた場合に、この引き抜き方向の力に対する抵抗力が大きくなり、あと施工アンカーの定着力を高めることができる。
【0009】
前記固着部は、前記一端から前記他端に向かって漸次断面積が増大する円錐台形状を有することが好ましい。
この構成によれば、あと施工アンカーに引き抜き方向の力が加えられた場合に、定着体の全周にわたって支圧力を生じさせ、あと施工アンカーの定着力を高めることができる。
【0010】
前記固着部は、前記アンカー本体に、着脱可能に取り付けられていることが好ましい。
この構成によれば、あと施工アンカーを設置する箇所に応じて適切な形状の固着部を使用することができる。そのため、あと施工アンカーの定着力を容易に調整することができ、あと施工アンカーの補強効果を最適化することができる。よって、構造物に適正なせん断強度を与え、構造物の破壊を確実に防ぐとともに、施工コストを抑制することができる。
【0011】
前記アンカー本体は、前記一対の固着部の間の主部と、前記固着部が取り付けられる取付け部とを有し、前記取付け部には雄ネジが形成されており、前記固着部には、前記雄ネジと螺合する雌ネジを有するネジ孔が形成され、前記固着部は、前記ネジ孔を前記雄ネジに螺着させることによって前記アンカー本体に取り付けられることが好ましい。
この構成によれば、固着部は、アンカー本体に対する着脱が容易となる。そのため、固着部を容易に交換することができる。
【0012】
前記定着体の最大外形寸法は、前記挿入孔の内形寸法より小さいことが好ましい。
この構成によれば、あと施工アンカーを挿入孔に挿入する操作が容易となるため、あと施工アンカーを容易に施工することができる。
【0013】
前記一対の固着部の間の部分の前記アンカー本体は、表面が平滑に形成されていることが好ましい。
この構成によれば、あと施工アンカーに長さ方向の引き抜き力が作用した場合、引き抜き力は直接、固着部に作用しやすくなる。引き抜き力に対しての抵抗力に優れた固着部に荷重を負担させることができるため、高い補強効果が得られる。
また、固着部の間の部分の表面が平滑に形成されていると、構造物にせん断力が作用した場合に、前記部分に相当する長さ範囲において構造物に十分な弾性域を確保することができる。これにより、構造物は破断しにくくなり、せん断強度が高められる。
【0014】
前記挿入孔は、前記構造物を貫通する貫通孔であることが好ましい。
この構成によれば、挿入孔には十分な長さ(深さ)が確保され、構造物の厚さ方向の広い範囲でせん断強度を高めることができる。
【0015】
本発明の一態様は、構造物に挿入孔を形成する穿孔工程と、前記挿入孔に固化材料を充てんする充てん工程と、棒状のアンカー本体と、前記アンカー本体に、前記アンカー本体の長さ方向に間隔をおいて設けられた少なくとも一対の固着部とを備え、前記一対の固着部のうち少なくとも一方は、一端から他端に向かって他方の固着部から離れる方向に漸次断面積が増大する拡大部を有するあと施工アンカーを前記挿入孔に挿入する挿入工程と、を有する、構造物の補強方法を提供する。
この方法によれば、固着部は、漸次断面積が増大する拡大部を有するため、あと施工アンカーに引き抜き方向の力が加えられた場合に、固着部において高い支圧力を生じさせ、あと施工アンカーの定着力を高めることができる。また、構造物に作用するせん断力に応じて適切な形状の固着部を有するあと施工アンカーを選択することにより、構造物に適正なせん断強度を与えることができる。
したがって、構造物の破壊を確実に防ぐとともに、施工コストを抑制することができる。
【0016】
本発明の一態様は、前記挿入工程によって前記挿入孔に前記あと施工アンカーを挿入した後に、前記充てん工程によって前記挿入孔に固化材料を充てんすることによって、前記固化材料に前記あと施工アンカーを埋め込む方法をとることができる。
この方法によれば、挿入孔内に固化材料がない状態であと施工アンカーの挿入孔内に設置するため、あと施工アンカーの挿入孔内の位置を正確に定めることができる。
【0017】
本発明の一態様は、前記充てん工程によって前記挿入孔に前記固化材料を充てんした後に、前記挿入工程によって前記固化材料に前記あと施工アンカーを埋め込む方法をとることができる。
この方法によれば、あと施工アンカーがない状態で挿入孔内に固化材料を充てんするため、挿入孔の内部空間の全体に固化材料を充てんできる。そのため、挿入孔内に空隙が生じにくくなる。よって、挿入孔内の空隙を原因とする定着力の低下を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様によれば、固着部は、漸次断面積が増大する拡大部を有するため、あと施工アンカーに引き抜き方向の力が加えられた場合に、固着部において高い支圧力を生じさせ、あと施工アンカーの定着力を高めることができる。また、構造物に作用するせん断力に応じて適切な形状の固着部を有するあと施工アンカーを選択することにより、構造物に適正なせん断強度を与えることができる。
したがって、構造物の破壊を確実に防ぐとともに、施工コストを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態の補強構造を有する鉄筋コンクリート構造物を示す断面図である。
図2】前図の鉄筋コンクリート構造物の一部を示す断面図である。
図3】あと施工アンカーの第1の例を示す側面図である。
図4図3に示すあと施工アンカーの一部を示す側面図である。
図5図3に示すあと施工アンカーの構造を示す側面図であり、(a)はアンカー本体の一部を示し、(b)は定着体を示す。
図6】第1実施形態の補強構造の説明図である。
図7】(a)〜(c)は、図3に示すあと施工アンカーに使用可能な定着体の例を示す側面図である。
図8】第1実施形態の補強方法の第1の例を説明する説明図である。
図9】第1実施形態の補強方法の第2の例を説明する説明図である。
図10】緩衝部材が設けられたあと施工アンカーの一部を示す側面図である。
図11】あと施工アンカーの第2の例の一部を示す側面図である。
図12】あと施工アンカーの第3の例の一部を示す側面図である。
図13】あと施工アンカーの第4の例の一部を示す側面図である。
図14】前図のあと施工アンカーを用いた補強方法の一例を説明する説明図である。
図15】本発明の第2実施形態の補強構造を有する鉄筋コンクリート構造物を示す断面図である。
図16】前図の鉄筋コンクリート構造物の一部を示す断面図である。
図17】(a)実施形態の補強構造が適用される構造物の他の例を示す概略図である。(b)(a)に示す構造物を示す拡大断面図である。
図18】実施形態の補強構造が適用される構造物の他の例を示す概略図である。(a)は構造物の側断面図であり、(b)は構造物の正面図である。
図19】実施形態の補強構造が適用される構造物の他の例を示す概略図である。
図20】あと施工アンカーの第5の例を示す側面図である。
図21】あと施工アンカーの第6の例を示す側面図である。
図22】あと施工アンカーの第7の例を示す側面図である。
図23】あと施工アンカーの第8の例を示す側面図である。
図24】あと施工アンカーの第9の例を模式的に示す図である。(a)〜(c)はあと施工アンカーの組立て手順を示す。
図25】あと施工アンカーの第10の例の一部を示す側面図である。
図26】あと施工アンカーの第11の例の一部を示す斜視図である。
図27】あと施工アンカーの第12の例の一部を示す斜視図である。
図28】あと施工アンカーの第13の例を示す説明図である。(a)〜(c)はあと施工アンカーの組立て手順を示す。
図29】前図のあと施工アンカーを示す分解斜視図であり、(a)は本体部であり、(b)は嵌着部である。
図30】(a)あと施工アンカーの第14の例の一部を示す側面図である。(b)(a)のあと施工アンカーを示す前面図である。
図31】あと施工アンカーの第15の例を示す分解斜視図である。
図32】(a)あと施工アンカーの第16の例を示す分解斜視図である。(b)(a)のあと施工アンカーの一部を示す側面図である。
図33】あと施工アンカーの第17の例を示す側面図である。
図34】あと施工アンカーの第18の例を示す側面図である。
図35】あと施工アンカーの第19の例を示す側面図である。
図36】あと施工アンカーの第20の例を示す側面図である。
図37】あと施工アンカーの第21の例を示す側面図である。
図38】あと施工アンカーの第22の例を示す側面図である。
図39】あと施工アンカーの第23の例を示す側面図である。
図40】あと施工アンカーの第24の例の一部を示す側面図である。
図41】(a)あと施工アンカーの第25の例の一部を示す斜視図である。(b)(a)のあと施工アンカーを製造するための金型を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明に係る構造物の補強構造の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明の技術的範囲は以下の実施形態に限定されない。なお、構造物の補強構造を単に補強構造ということがある。
<構造物の補強構造>(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態の補強構造を有する鉄筋コンクリート構造物32を示す断面図である。図2は、鉄筋コンクリート構造物32の一部を示す断面図である。図3は、あと施工アンカーの第1の例であるあと施工アンカー10を示す側面図である。図4は、あと施工アンカー10の一部を示す側面図である。図5は、あと施工アンカー10の構造を示す側面図であり、図5(a)はアンカー本体1の一部を示し、図5(b)は定着体2を示す。
【0021】
<構造物>
図1に示すように、本実施形態の補強構造が適用される鉄筋コンクリート構造物32は、既設の構造物の一例であって、地下に構築された筒状の構造物であり、例えばボックスカルバートなどのカルバート構造物である。鉄筋コンクリート構造物32は、鉄道用、車道用などの地下トンネル、地下通路、暗渠等に用いることができる。なお、符号31は地表面である。
【0022】
鉄筋コンクリート構造物32は、下壁33と、下壁33の側縁部に立設された側壁である壁体34と、壁体34の上縁部に設けられた上壁35とを有する。Aは鉄筋コンクリート構造物32の内空側(内部)を示し、Bは鉄筋コンクリート構造物32の外側、すなわち土砂側を示す。34aは壁体34の内側の面(内壁面)であり、34bは壁体34の外側の面(外壁面)である。
【0023】
下壁33、壁体34および上壁35の内部には、複数の主鉄筋36および複数の配力鉄筋37が設けられている。壁体34の主鉄筋36は、内壁面34aに平行であって上下方向に沿って設けられている。図1では、複数の主鉄筋36は壁体34の厚さ方向に間隔をおいて設けられている。壁体34の配力鉄筋37は、内壁面34aに平行であって主鉄筋36に直交する方向に設けられている。
【0024】
<補強構造の概略>
図1および図2に示すように、鉄筋コンクリート構造物32は、補強構造20が形成されることによって機械的強度が高められている。補強構造20は、鉄筋コンクリート構造物32の壁体34に形成された挿入孔50の内部に、あと施工アンカー10が設けられた構造とされている。
【0025】
<挿入孔>
挿入孔50は、壁体34の内壁面34a(一方の面)から外壁面34b(他方の面)に向けて形成され、その断面形状は例えば円形である。挿入孔50の形成方向は、例えば内壁面34aに対して垂直な方向である。
挿入孔50の内形寸法(挿入孔50の形成方向に対して直交する方向の寸法。例えば内径)(例えば最小寸法)は、定着体2の最大外形寸法(アンカー本体1の延在方向に対して直交する方向の寸法。例えば外径)より大きい。挿入孔50の内形寸法は、深さ方向に一定であることが好ましい。挿入孔50は、主鉄筋36および配力鉄筋37を避けて形成されることが望ましい。
なお、挿入孔50の形成方向は、鉄筋コンクリート構造物32に加えられるせん断力の方向、大きさなどによって適宜調整することができる。例えば挿入孔50の形成方向は、内壁面34aに対して0°を越え、90°未満の角度で傾斜する方向であってもよい。
図1および図2では、挿入孔50は、内壁面34aから外壁面34bにかけて壁体34を厚さ方向に貫通する貫通孔である。挿入孔50は貫通孔であるため十分な長さ(深さ)が確保され、壁体34の厚さ方向の広い範囲でせん断強度を高めることができる。
【0026】
<あと施工アンカー>(第1の例)
図3および図4に示すように、あと施工アンカー10は、棒状のアンカー本体1と、アンカー本体1の一端部および他端部に取り付けられた定着体2とを備えている。
図5(a)に示すように、アンカー本体1は、例えばPC鋼棒(丸鋼棒)からなり、主部1b(2つの定着体2の間に位置する部分)と、主部1bの両端部に形成された雄ネジ1a(取付け部)とを有する。
アンカー本体1の主部1bは、断面円形とされ、その外径は長さ方向に一定である。主部1bの表面は、凹凸がなく平滑な形状である。主部1bは、表面に凹凸がないため、主部1bの長さ方向に直交する断面の形状は主部1bの長さ方向に一定である。平滑とは、アンカー本体1の中心軸C1からの径方向寸法が最小となる部位(最小径部位)と、中心軸C1からの径方向寸法が最大となる部位(最大径部位)との径方向の寸法差(高低差)が、例えば1mm以下であることをいう。
アンカー本体1の主部1bが平滑に形成されていると、あと施工アンカー10に長さ方向の引き抜き力が作用した場合、引き抜き力は直接、定着体2に作用しやすくなる。引き抜き力に対しての抵抗力に優れた定着体2に荷重を負担させることができるため、高い補強効果が得られる。また、アンカー本体1の主部1bが平滑に形成されていると、壁体34にせん断力が作用した場合に、主部1bに相当する長さ範囲において壁体34に十分な弾性域を確保することができる。これにより、壁体34は破断しにくくなり、せん断強度が高められる。
【0027】
雄ネジ1aは、例えば、谷部の外径がアンカー本体1の外径とほぼ等しく、山部の外径はアンカー本体1の主部1bの外径よりも大きくなっていることが好ましい。雄ネジ1aは、例えば鍛造ねじ加工によって形成される。
【0028】
図3図4および図5(b)に示すように、定着体2は、例えば鋼製の部材であり、一端21(小径端)から他端22(大径端)に向かって漸次断面積が増大する拡大部2cを有する。2つの定着体2は、互いに離れる方向に、一端21から他端22に向かって漸次、拡大部2cの断面積が増大するようにアンカー本体1に取り付けられている。
本実施形態では、定着体2(拡大部2c)は、定着体2の中心軸方向の一端21から他端22に向かって外径が大きくなる円錐台形状を有している。そのため、図4に示すように、定着体2の外周面は、定着体2の中心軸C2に対して一定角度で傾斜している。定着体2の外周面の、定着体2の中心軸C2に対する傾斜角度θ1は、例えば1〜45°である。定着体2の中心軸C2は、アンカー本体1の中心軸C1に一致することが好ましい。
【0029】
定着体2は、円錐台形状を有するため、あと施工アンカー10に引き抜き方向の力が加えられた場合に、定着体2の全周にわたって支圧力P1(図6参照)を生じさせ、あと施工アンカー10の定着力を高めることができる。
【0030】
拡大部2cは、定着体2の中心軸方向の全長にわたって形成されている。そのため、引き抜き力が作用する拡大部2cに十分な長さを与えつつ、定着体2の全体の長さを抑えることができる。定着体2の全長が抑えられるため、その分、主部1bには長さを確保できる。また、上述のように、アンカー本体1の主部1bは凹凸がない形状である。
主部1bは凹凸がなく、かつ十分な長さを有するため、壁体34にせん断力が作用した場合に、主部1bに相当する長さ範囲において壁体34に十分な弾性域を確保することができる。これにより、壁体34は破断しにくくなり、せん断強度が高められる。また、拡大部2cは、定着体2の全長にわたって形成されているため、拡大部2cの表面積を大きくできる。そのため、引き抜き方向の力が加えられた場合に大きな支圧力P1(図6参照)を得て、あと施工アンカー10の定着力を高めることができる。
【0031】
図5(b)に示すように、定着体2には、アンカー本体1の雄ネジ1aと螺合する雌ネジを有するネジ孔2aが形成されている。このネジ孔2aは、定着体2の一端21から他端22に貫通するように形成されている。
定着体2は、アンカー本体1の雄ネジ1aに螺着されることによって、一端21をアンカー本体1の長さ方向の中央に向けた姿勢で、アンカー本体1に取り付けられる。2つの定着体2は一端21を向い合せた姿勢でアンカー本体1に取り付けられている。定着体2は、アンカー本体1に螺着させる構造であり、アンカー本体1に対する着脱は容易である。そのため、定着体2は容易に交換することができる。
【0032】
定着体2は、アンカー本体1の雄ネジ1aに螺着される構造であるため、アンカー本体1の長さ方向の定着体2の位置を調整することができる。そのため、あと施工アンカー10の定着力を容易に調整することができ、あと施工アンカー10の補強効果を最適化することができる。
【0033】
図4に示すように、定着体2は、少なくとも他端22の外径(最大外形寸法)がアンカー本体1の主部1bの外径(外形寸法)より大きくされている。定着体2の外径(外形寸法)は他端22において最大となる。定着体2は、一端21の外径も、アンカー本体1の主部1bの外径より大きくされていることが好ましい。定着体2の外形寸法とは、中心軸C2に直交する方向の外形寸法である。
あと施工アンカー10は、アンカー本体1の雄ネジ1aを比較的太く形成しているため、アンカー本体1の強度が低下しにくい。
2つの定着体2,2は、主部1bを介して互いに離れた位置にある。定着体2は、アンカー本体1の主部1bに比べて外形寸法(外径)が大きいため、アンカー本体1の外面から突出する凸部を有する固着部として機能する。
【0034】
定着体2の他端22の外径(最大外径)は、挿入孔50の内径(挿入孔50の形成方向に対して直交する方向の内形寸法)より小さいことが好ましい。これにより、あと施工アンカー10を挿入孔50に挿入する操作が容易となるため、あと施工アンカー10を容易に施工することができる。あと施工アンカー10は、長さ方向が挿入孔50の深さ方向に一致するように挿入孔50内に配置されるのが好ましい。
【0035】
図6に示すように、鉄筋コンクリート構造物32に設置したあと施工アンカー10に、あと施工アンカー10の長さ方向の引き抜き力が作用した場合、定着体2によって、固化材料11に支圧力P1が作用する。あと施工アンカー10では、アンカー本体1の主部1bには表面に凹凸がないため、引き抜き力は直接、定着体2に作用しやすい。
【0036】
支圧力P1は、定着体2のテーパー状の外周面から固化材料11に作用する。支圧力P1の方向は、前記引き抜き方向に向かって定着体2の中心軸から離れるように傾斜する方向(斜め前方)である。支圧力P1のクサビ効果によって固化材料11と挿入孔50の内面との摩擦力が増大するとともに、引き抜き方向の力に対する抵抗力が大きくなり、あと施工アンカー10の定着力が向上する。
【0037】
図7(a)〜図7(c)は、定着体の他の例を示す図である。
図7(a)〜図7(c)に示す定着体2A,2B,2Cは、図5(b)に示す定着体2とは他端22A〜22Cの外径が異なる円錐台形状とされている。詳しくは、図7(a)に示す定着体2Aは、他端22Aの外径が、図5(b)に示す定着体2の他端22の外径より大きい。そのため、定着体2Aは、図5(b)に示す定着体2に比べて外周面の傾斜角度が大きい。なお、外周面の傾斜角度とは、定着体2,2Aの中心軸に対する傾斜角度である。
図7(b)に示す定着体2Bは、他端22Bの外径が、図7(a)に示す定着体2Aの他端22Aの外径より大きく、定着体2Aに比べて外周面の傾斜角度が大きい。
図7(c)に示す定着体2Cは、他端22Cの外径が、図7(b)に示す定着体2Bの他端22Bの外径より大きく、定着体2Bに比べて外周面の傾斜角度が大きい。
なお、定着体2A〜2Cの一端21の外径は、定着体2の一端21の外径と同じとすることができる。
【0038】
定着体2A,2B,2Cは、アンカー本体1の雄ネジ1aに交換可能に取り付けられる。
あと施工アンカー10では、外周面の傾斜角度が異なる円錐台形状の定着体2,2A,2B,2Cを適宜選択して用いることによって、その定着力を容易に調整することができる。例えば、図7(a)に示す定着体2Aは、図5(b)に示す定着体2に比べて外周面の傾斜角度が大きいため、引き抜き力が作用した場合に、支圧力P1の方向の傾斜が大きくなる。すなわち、定着体2Aを使用すれば、あと施工アンカー10の径方向に対してより大きな角度で傾斜した方向の支圧力P1が生じることになる。
そのため、図5(b)に示す定着体2に代えて、図7(a)に示す、他端22Aの外径が大きい定着体2Aを用いれば、引き抜き力に対する抵抗力を高めることができる。図7(b)および図7(c)に示すように、他端22B,22Cの外径が大きい定着体2B,2Cを用いれば、抵抗力をさらに高めることができる。
【0039】
一方、他端の外径が小さい定着体を有するあと施工アンカーは、引き抜き力に対する抵抗力が小さいが、その半面、挿入孔50の内径が小さい場合でもその内部に配置することができる。そのため、構造物の強度確保、美観維持などの理由により、内径が大きな挿入孔を形成するのが難しい場合には有利となる。また、他端の外径が小さい定着体を有するあと施工アンカーは、取扱いが容易であるという利点もある。
このように、他端の外径が異なる複数の定着体2A,2B,2Cを予め用意しておき、あと施工アンカー10を設置する箇所の状況に応じて適切な形状の定着体を選択して用いることができる。
【0040】
<構造物の補強方法>(第1実施形態)
第1実施形態の補強方法の第1の例について説明する。
【0041】
(工程1:穿孔工程)
図8(a)に示すように、穿孔工具(図示略)を用いて、鉄筋コンクリート構造物32の壁体34の所定箇所に、内壁面34aから挿入孔50を形成する。穿孔工具は、例えばハンマードリル、コアドリル、削岩機などの回転工具が使用できる。挿入孔50は、補強が必要な箇所にあと施工アンカー10を配置できる位置に形成される。
鉄筋コンクリート構造物32の補強工事は、内壁面34aから行うことによって、外壁面34b側から行う場合に比べ、工事費用を抑えることができる。
【0042】
(工程2:挿入工程)
図8(b)に示すように、内壁面34a側から、挿入孔50内に、その深さ方向に沿ってあと施工アンカー10を挿入する。あと施工アンカー10は、全体が挿入孔50内に収容されるように配置する。
【0043】
(工程3:充てん工程)
図8(c)に示すように、注入装置(図示略)を用いて、挿入孔50内に固化材料11を充てんする。固化材料11は、挿入孔50の内部空間全体に充てんするのが好ましい。固化材料11としては、例えばモルタル、コンクリートなどのグラウト材を用いることができる。特に、可塑性(チクソトロピー性)を有する固化材料11は、挿入孔50から漏れ出しにくいため、固化材料11を挿入孔50内で好適に固化させることができる。
固化材料11が挿入孔50に充てんされることによって、あと施工アンカー10は、全体が固化材料11に埋め込まれる。
【0044】
固化材料11を固化させることによって、鉄筋コンクリート構造物32にあと施工アンカー10を設置することができ、あと施工アンカー10によって鉄筋コンクリート構造物32を補強することができる。
【0045】
次に、第1実施形態の補強方法の第2の例を説明する。第1の例では、挿入孔50にあと施工アンカー10を挿入した後に固化材料11を挿入孔50に充てんしたが、第2の例では、挿入孔50に固化材料11を充てんした後に、挿入孔50にあと施工アンカー10を挿入する。
【0046】
(工程1:穿孔工程)
図9(a)に示すように、壁体34に挿入孔50を形成する。
【0047】
(工程2:充てん工程)
図9(b)に示すように、注入装置(図示略)を用いて、挿入孔50内に固化材料11を充てんする。固化材料11は、挿入孔50の内部空間全体に充てんするのが好ましい。
【0048】
(工程3:挿入工程)
図9(c)に示すように、固化材料11が固化する前に、固化材料11に、挿入孔50の深さ方向に沿ってあと施工アンカー10を挿入する。あと施工アンカー10は、全体が挿入孔50内の固化材料11に埋め込まれるように配置する。
定着体2は、テーパー形状を有するため、固化材料11への埋め込みの過程で空気が巻き込まれることによる外周面への気泡の付着が起こりにくい。そのため、残留気泡を原因とする定着力の低下を防ぐことができる。
【0049】
固化材料11を固化させることによって、鉄筋コンクリート構造物32にあと施工アンカー10を設置することができ、あと施工アンカー10によって鉄筋コンクリート構造物32を補強することができる。
【0050】
挿入孔50内のあと施工アンカー10の位置は、鉄筋コンクリート構造物32におけるせん断力の大きさおよび作用位置に応じて調整することができる。例えば、大きなせん断力が作用する箇所にあと施工アンカー10を配置することができる。鉄筋コンクリート構造物32においてせん断力が作用する位置は、構造解析(例えばFEM)によって予測することができる。そのため、鉄筋コンクリート構造物32の適切な位置にあと施工アンカー10を配置することができる。
よって、鉄筋コンクリート構造物32に作用するせん断力に応じて適正なせん断強度を与えることができ、鉄筋コンクリート構造物32の破壊を確実に防ぐことができる。また、補強が過剰となるのを回避し、施工コストを抑制することができる。
【0051】
前記補強構造によれば、定着体2は、漸次断面積が増大する拡大部2cを有するため、あと施工アンカー10に引き抜き方向の力が加えられた場合に、定着体2において高い支圧力を生じさせ、あと施工アンカー10の定着力を高めることができる。また、鉄筋コンクリート構造物32に作用するせん断力に応じて適切な形状の定着体2を有するあと施工アンカー10を選択することにより、鉄筋コンクリート構造物32に適正なせん断強度を与えることができる。
したがって、鉄筋コンクリート構造物32の破壊を確実に防ぐとともに、施工コストを抑制することができる。
【0052】
一対の定着体2は、互いに離れる方向に漸次断面積が増大する拡大部2cを有するため、あと施工アンカー10に引き抜き方向の力が加えられた場合に、この引き抜き方向の力に対する抵抗力が大きくなり、あと施工アンカー10の定着力を高めることができる。
【0053】
あと施工アンカー10は、定着体2がアンカー本体1に対して着脱可能であるため、あと施工アンカー10を設置する箇所に応じて適切な形状の定着体2を使用することができる。そのため、あと施工アンカー10の定着力を容易に調整することができ、あと施工アンカー10の補強効果を最適化することができる。よって、鉄筋コンクリート構造物32に適正なせん断強度を与え、鉄筋コンクリート構造物32の破壊を確実に防ぐとともに、施工コストを抑制することができる。
定着体2は、アンカー本体1の雄ネジ1aに螺着される構造であるため、アンカー本体1に対する着脱は容易である。そのため、定着体2を容易に交換することができる。
【0054】
前記補強方法によれば、定着体2は、漸次断面積が増大する拡大部2cを有するため、あと施工アンカー10に引き抜き方向の力が加えられた場合に、定着体2において高い支圧力を生じさせ、あと施工アンカー10の定着力を高めることができる。また、鉄筋コンクリート構造物32に作用するせん断力に応じて適切な形状の定着体2を有するあと施工アンカー10を選択することにより、鉄筋コンクリート構造物32に適正なせん断強度を与えることができる。
したがって、鉄筋コンクリート構造物32の破壊を確実に防ぐとともに、施工コストを抑制することができる。
【0055】
図8に示すように、挿入孔50にあと施工アンカー10を挿入した後に固化材料11を挿入孔50に充てんする方法を採用する場合には、挿入孔50内に固化材料11がない状態であと施工アンカー10の挿入孔50内に設置するため、あと施工アンカー10の挿入孔50内の位置を正確に定めることができる。
【0056】
図9に示すように、挿入孔50に固化材料11を充てんした後に、挿入孔50にあと施工アンカー10を挿入する方法を採用する場合には、あと施工アンカー10がない状態で挿入孔50に固化材料11を充てんするため、挿入孔50の内部空間の全体に固化材料11を充てんできる。そのため、挿入孔50内に空隙が生じにくくなる。よって、挿入孔50内の空隙を原因とする定着力の低下を防ぐことができる。
【0057】
図6に示すように、あと施工アンカー10に引き抜き力が作用した場合、定着体2の一端21とアンカー本体1の主部1bとの外径の差により形成された段部(肩部21a)には負荷がかかりやすい。
そこで、図10に示すように、アンカー本体1に、定着体2の一端21に当接するように緩衝部材3を設けることができる。
緩衝部材3としては、例えばブチルゴムなどの軟質材料からなるOリングを用いることができる。緩衝部材3は、定着体2の一端21より外径が大きいことが好ましい。
【0058】
定着体2の一端21は他の部位より薄肉であるため、比較的強度が低いが、緩衝部材3を設けると、あと施工アンカー10に引き抜き力が作用した場合でも定着体2の肩部21aに大きな負荷がかかることはなく、肩部21aの損傷を防ぐことができる。また、緩衝部材3によって、アンカー本体1と定着体2の隙間に、固化材料11中の異物が入り込むのを防ぐことができる。
緩衝部材3を設けていないあと施工アンカー10に引き抜き力が作用した場合には、定着体2の一端21が固化材料11を僅かに傷付けることによって、補強構造20の機械的強度が若干低くなる可能性があるが、緩衝部材3があれば固化材料11が損傷することはなく、補強構造20の機械的強度の低下を防ぐことができる。
【0059】
なお、緩衝部材3としてはOリングに限らず、例えばブチルゴムなどの軟質材料からなるテープを用いてもよい。前記テープは、アンカー本体1と定着体2との境界を含む部分の外周面に巻き付けることによって緩衝部材として使用することができる。
【0060】
<あと施工アンカー>(第2の例)
図11は、あと施工アンカー10の第2の例であるあと施工アンカー10Aの一部を示す概略図である。以下、既出の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
あと施工アンカー10Aは、拡大部2dの外周面に環状の段部2bが形成されている定着体2Dを用いる点で、図3に示すあと施工アンカー10と異なる。
段部2bは、一端21から他端22に向かって外径が不連続に大きくなる箇所である。あと施工アンカー10Aでは、定着体2の中心軸方向(あと施工アンカー10Aの長さ方向)に間隔をおいて段部2bが形成されている。段部2bは、定着体2Dの全周にわたる環状に形成することができる。なお、段部2bの数は1または複数とすることができる。
あと施工アンカー10Aでは、段部2bによって引き抜き力に対する支圧力が大きくなるため、あと施工アンカー10Aの定着力を向上させることができる。なお、あと施工アンカー10Aには、図10に示す緩衝部材3を取り付けてもよい。
【0061】
<あと施工アンカー>(第3の例)
図12は、あと施工アンカー10の第3の例であるあと施工アンカー10Bの一部を示す概略図である。
あと施工アンカー10Bは、一端21の外径がアンカー本体1Bの主部1bの外径とほぼ同じとされた定着体2Eを用いる点で、図3に示すあと施工アンカー10と異なる。
あと施工アンカー10Bでは、雄ネジ1aの外径を主部1bの外径よりも小さくすることによって、一端21における肉厚を十分に確保し、一端21における定着体2Eの破損を防ぐことができる。あと施工アンカー10Bは、一端21における外径変化が不連続ではないため、引き抜き力が作用した場合に、一端21にかかる負荷が小さくなる。そのため、定着体2Eの損傷による定着力の低下を回避できる。
【0062】
<あと施工アンカー>(第4の例)
図13は、あと施工アンカー10の第4の例であるあと施工アンカー10Cの一部を示す概略図である。
あと施工アンカー10Cは、長さ方向の外方に向かって外径が小さくなる突起部23が他端22に設けられた定着体2Fが用いられている点で、図3に示すあと施工アンカー10と異なる。なお、長さ方向の外方とは、アンカー本体1の長さ方向の中央から端部に向かう方向である。
定着体2Fは、一端21から他端22に向かって漸次断面積が増大する拡大部2cと、突起部23とを有する。突起部23は、あと施工アンカー10Cの長さ方向の外方に向かって外径が小さくなり、最外方に頂点を有する形状、例えば略円錐形状であることが好ましい。
【0063】
あと施工アンカー10Cを施工するには、次の方法をとることができる。
図14(a)に示すように、壁体34の所定箇所に挿入孔50を形成し、その内部に固化材料11を充てんする(図9(b)参照)。
次いで、図14(b)に示すように、固化材料11が固化する前に、あと施工アンカー10Cを突起部23側から、固化材料11に埋め込むように挿入孔50に挿入する(図9(c)参照)。突起部23は、先端に近いほど外径が小さくなっているため、固化材料11にあと施工アンカー10を挿入する際の抵抗を小さくできる。また、突起部23は先端に近いほど外径が小さい形状であるため、固化材料11への埋め込みの過程で突起部23の外周面に気泡が残りにくい。そのため、残留気泡を原因とする定着力の低下を防ぐことができる。
なお、あと施工アンカー10Cを用いる場合でも、挿入孔50内にあと施工アンカー10Cを挿入した後、挿入孔50内に固化材料11を充てんする方法(図8参照)を採用してもよい。
【0064】
図3図11図13に示す定着体2,2D,2E,2Fは、アンカー本体1の雄ネジ1aに交換可能に取り付けられるため、あと施工アンカー10,10A,10B,10Cを設置する箇所の状況に応じて選択して使用することができる。
図10に示す緩衝部材3の有無についても、あと施工アンカー10,10A,10B,10Cを設置する箇所に応じて選択することができる。
【0065】
<構造物の補強構造>(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態の補強構造を説明する。
図15は、本発明の第2実施形態の補強構造を有する鉄筋コンクリート構造物32を示す断面図である。図16は、鉄筋コンクリート構造物32の一部を示す断面図である。
図15および図16に示す補強構造20Aは、壁体34に形成された有底孔である挿入孔50Aの内部に、図3に示すあと施工アンカー10が設けられた構造である。補強構造20Aは、挿入孔50Aが外壁面34bに達していない有底孔であること以外は図1および図2に示す補強構造20と同じとしてよい。
【0066】
有底孔である挿入孔50Aを採用した場合における構造物の補強方法(第2実施形態)は、穿孔工程において挿入孔50Aを形成すること以外は、第1実施形態の構造物の補強方法と同様である。
【0067】
<適用例>
本実施形態の補強構造は、図1に示す鉄筋コンクリート構造物32(例えばボックスカルバート)に限らず、他の構造物にも適用することができる。
図17(a)は、本発明の補強構造を適用可能な構造物の他の例である橋梁41を示す概略図である。図17(b)は橋梁アバット42に設けられた補強構造20を示す断面図である。
橋梁41は、橋梁アバット42と橋桁43とを有する。橋梁アバット42は、橋台躯体44と、その上に設けられた橋台壁部45とを備えている。橋台躯体44および橋台壁部45の背面には盛土46がなされている。橋台躯体44の上部には、橋桁43の端部が設置される座面44aが形成されている。
橋台躯体44の内壁面44bを含む位置には補強構造20が設けられている。補強構造20の挿入孔50は、橋台躯体44の内壁面44bから外壁面44cに向けて形成された貫通孔である。補強構造20の数は1でもよいし、複数でもよい。
【0068】
図18は、本発明の補強構造を適用可能な構造物の他の例である高架橋51を示す概略図であり、図18(a)は高架橋51の側断面図であり、図18(b)は高架橋51の正面図である。
高架橋51は、橋脚(ピア)52と、床版(桁)53とを備えている。橋脚52は、床版53を支持する柱状の構造物であり、例えば鉄筋コンクリートで構成される。床版53の上面には、例えば、鉄道用の軌道(図示略)が設けられる。
橋脚52には、1または複数の補強構造20が設けられている。補強構造20の挿入孔50は、橋脚52の一方の壁面54aから他方の壁面54bに向けて形成された貫通孔である。
【0069】
図19は、本発明の補強構造を適用可能な構造物の他の例である組積61を示す概略図である。
組積61は、複数のブロック62が積み上げられて構成されている。ブロック62は、例えばコンクリートからなる。
ブロック62には、1または複数の補強構造20A(図15および図16参照)が設けられている。補強構造20Aの挿入孔50Aは、ブロック62の一方の壁面64aから他方の壁面64bに向けて形成された有底孔である。
【0070】
<あと施工アンカー>(第5の例)
図20は、あと施工アンカー10の第5の例であるあと施工アンカー10Dの一部を示す概略図である。
あと施工アンカー10Dのアンカー本体1Dの主部1Dbは、中間部分12と、中間部分12の両端側の端側部分13,13とを有する。端側部分13は、主部1Dbの端部を含む部分である。端側部分13の表面は、凹凸がなく平滑な形状である。端側部分13は、例えばPC鋼棒(丸鋼棒)からなり、断面円形とすることができる。
中間部分12は、例えば異形鉄筋からなり、その表面には、例えばアンカー本体1Dの長さ方向に沿う凸部であるリブ12aと、アンカー本体1Dの周方向に沿う凸部である節12bとが外面12cから突出して形成されている。凸部(リブ12aおよび節12b)の最大外形寸法(アンカー本体1Dの延在方向に対して直交する方向の寸法)は、端側部分13の最大外形寸法(外径)より大きいことが好ましい。中間部分12の長さは、例えば主部1Dbの長さの20〜80%とすることができる。
中間部分12の凸部(節12b等)は、あと施工アンカー10Dに引き抜き方向の力が加えられた場合に支圧力P1(図6参照)を生じさせるため、あと施工アンカー10Dの定着力を高めることができる。
なお、凹凸を有する部分(中間部分12)は、主部1Dbの長さ方向の中間部分に限らず、主部1Dbの端部を含む部分であってもよい。中間部分12における凸部の形状は、図示例に限らず、任意としてよい。
【0071】
<あと施工アンカー>(第6の例)
図21は、あと施工アンカー10の第6の例であるあと施工アンカー10Eの一部を示す概略図である。
あと施工アンカー10Eは、主部1Ebの中間部分12A以外は、図20に示すあと施工アンカー10Dと同じとしてよい。
中間部分12Aの外周面には、雄ネジ(凹凸)が形成されている。中間部分12Aの雄ネジ最大外形寸法は、端側部分13の最大外形寸法(外径)より大きいことが好ましい。
中間部分12Aの雄ネジは、アンカー本体1Eに引き抜き方向の力が加えられた場合に支圧力を生じさせるため、あと施工アンカー10Eの定着力を高めることができる。
【0072】
<あと施工アンカー>(第7の例)
図22は、あと施工アンカー10の第7の例であるあと施工アンカー10Fの一部を示す概略図である。
あと施工アンカー10Fは、主部1Fbの中間部分12B以外は、図20に示すあと施工アンカー10Dと同じとしてよい。
中間部分12Bの外周面には、ローレット(凹凸)が形成されている。このローレットは、例えば綾目状、斜目状などであってよい。ローレットは、アンカー本体1Fに引き抜き方向の力が加えられた場合に支圧力を生じさせるため、あと施工アンカー10Fの定着力を高めることができる。
【0073】
<あと施工アンカー>(第8の例)
図23は、あと施工アンカー10の第8の例であるあと施工アンカー10Gの一部を示す概略図である。
あと施工アンカー10Gは、アンカー本体1Gと、アンカー本体1Gに取り付けられた4つの定着体2(2G1〜2G4)とを備えている。4つの定着体2(2G1〜2G4)は、この順にアンカー本体1の長さ方向に並んでいる。
第1定着体2G1は、アンカー本体1Gの一端部に設けられている。第4定着体2G4は、アンカー本体1Gの他端部に設けられている。
第1定着体2G1と、第2定着体2G2とは、アンカー本体1Gの長さ方向に間隔をおいてアンカー本体1Gに取り付けられている。定着体2G1,2G2の拡大部2c,2cは、互いに離れる方向に断面積が増大する。
第3定着体2G3と、第4定着体2G4とは、アンカー本体1Gの長さ方向に間隔をおいてアンカー本体1Gに取り付けられている。定着体2G3,2G4の拡大部2c,2cは、互いに離れる方向に断面積が増大する。第2定着体2G2と第3定着体2G3とは、間隔をおかずにアンカー本体1Gに取り付けられている。
あと施工アンカー10Gは、二対の定着体2、すなわち一対の定着体2(2G1,2G2)と、一対の定着体2(2G3,2G4)とを有する。なお、定着体2の数は、三対以上であってもよい。
あと施工アンカー10Gは、複数対の定着体2を有するため、一対の定着体を有するあと施工アンカーに比べて、アンカー本体1Gに引き抜き方向の力が加えられた場合に生じる支圧力を高めることができる。
【0074】
<あと施工アンカー>(第9の例)
図24(c)は、あと施工アンカー10の第9の例であるあと施工アンカー10Hの一部を示す概略図である。
あと施工アンカー10Hは、定着体2Hが、凹凸嵌合によってアンカー本体1Hの端部に固定されている点で、図3に示すあと施工アンカー10と異なる。
アンカー本体1Hの両端には、それぞれ1または複数の嵌合凸部1Haが形成されている。嵌合凸部1Haはアンカー本体1Hの外周面からアンカー本体1Hの径方向外方に突出している。
定着体2Hは、他端22(大径端)の端面に、アンカー本体1Hの嵌合凸部1Haが嵌合する嵌合凹部2Haが形成されている。定着体2Hは、アンカー本体1Hの嵌合凸部1Haが嵌合凹部2Haに嵌合することによって、アンカー本体1Hの長さ方向に移動するのが規制される。
【0075】
あと施工アンカー10Hは、例えば次のようにして作製することができる。
図24(a)および図24(b)に示すように、アンカー本体1Hに定着体2Hを外挿した後、プレス加工、熱処理等によりアンカー本体1Hの一端部に嵌合凸部1Haを形成する。一方の定着体2Hをアンカー本体1の一端部に移動させ、嵌合凸部1Haと嵌合凹部2Haとを嵌合させる。
アンカー本体1Hの他端部にも嵌合凸部1Haを形成し、他方の定着体2Hをアンカー本体1の他端部に移動させ、嵌合凸部1Haと嵌合凹部2Haとを嵌合させる。このようにして、図24(c)に示すあと施工アンカー10Hを得る。
【0076】
<あと施工アンカー>(第10の例)
図25は、あと施工アンカー10の第10の例であるあと施工アンカー10Iの一部を示す概略図である。
あと施工アンカー10Iは、定着体2Iが、固定具5(ピン)によってアンカー本体1Iに固定されている点で、図3に示すあと施工アンカー10と異なる。
定着体2Iの側面には、定着体2Iを厚さ方向に貫通する取付孔2Iaが形成されている。アンカー本体1Iには、アンカー本体1Iの径方向に沿う挿通孔1Iaが形成されている。挿通孔1Iaは、アンカー本体1Iを貫通して形成されていてもよい。固定具5は、例えばヘッド部5aと、ヘッド部5aから延びる延出部5bとを有する。
あと施工アンカー10Iでは、固定具5の延出部5bをアンカー本体1Iの挿通孔1Iaに挿通させるとともに、ヘッド部5aを定着体2Iの取付孔2Ia内に配置することによって、定着体2Iをアンカー本体1Iに対して位置決めすることができる。
【0077】
<あと施工アンカー>(第11の例)
図26は、あと施工アンカー10の第11の例であるあと施工アンカー10Jの一部を示す概略図である。
あと施工アンカー10Jは、定着体2Jが圧着によってアンカー本体1Jに固定されている点で、図3に示すあと施工アンカー10と異なる。
あと施工アンカー10Jは、定着体2Jをアンカー本体1Jに外挿させた状態で定着体2Jに経方向内方の力を加えることによって定着体2Jを縮径させ、定着体2Jをアンカー本体1Jに固定することができる。
【0078】
<あと施工アンカー>(第12の例)
図27は、あと施工アンカー10の第12の例であるあと施工アンカー10Kの一部を示す概略図である。
あと施工アンカー10Kは、定着体2Kが接合部6において摩擦圧接または溶接によってアンカー本体1Kに固定されている点で、図3に示すあと施工アンカー10と異なる。定着体2Kは、中実構造としてもよい。
あと施工アンカー10Kは、例えば、定着体2Kの一端21(小径端)の端面とアンカー本体1Kの端面とを向い合せた状態で、定着体2Kまたはアンカー本体1Kを中心軸回りに回転させつつ、定着体2Kの一端21の端面とアンカー本体1Kの端面とを摩擦圧接することによって作製できる。
あと施工アンカー10Kは、定着体2Kの一端21の端面とアンカー本体1Kの端面とを溶接することによって作製してもよい。
【0079】
<あと施工アンカー>(第13の例)
図28(c)は、あと施工アンカー10の第13の例であるあと施工アンカー10Lの一部を示す概略図である。
あと施工アンカー10Lは、定着体2Lが一体構造ではなく、本体部2Laと嵌着部2Lbとからなる構造を有する点で、図3に示すあと施工アンカー10と異なる。
図29(a)に示すように、定着体2Lの本体部2Laは、円錐台形の基台部7aと、基台部7aの小径端面7a1から突出する円筒形の中間部7bと、中間部7bの先端7b1から縮径しつつ突出する円錐台形の縮径部7cとを有する。基台部7aと中間部7bと縮径部7cとは共通の中心軸を有する。本体部2Laは一対の分割体7d,7dからなる。分割体7dは、本体部2Laを中心軸に沿って2分割した形状とされている。
図29(b)に示すように、嵌着部2Lbは円錐台形の環状体であり、その内径は本体部2Laの中間部7bの外径と同じまたはこれよりやや大きい。
定着体2Lは、嵌着部2Lbを本体部2Laの中間部7bに外挿した状態で、本体部2Laと嵌着部2Lbとが全体として円錐台形をなすことが好ましい。
【0080】
あと施工アンカー10Lは、例えば次のようにして作製することができる。
図28(a)および図28(b)に示すように、嵌着部2Lbをアンカー本体1Lに外挿しておき、分割体7d,7dをアンカー本体1Lの端部に配置する。次いで、嵌着部2Lbを本体部2Laの中間部7bに外挿する。このようにして、図28(c)に示すあと施工アンカー10Lを得る。
【0081】
<あと施工アンカー>(第14の例)
図30は、あと施工アンカー10の第14の例であるあと施工アンカー10Mの一部を示す概略図である。
あと施工アンカー10Mは、定着体2Mが、固定具8(ネジ式固定具)によってアンカー本体1Mに固定されている点で、図3に示すあと施工アンカー10と異なる。
定着体2Mは、中心軸方向に沿うスリット状の分割部9において分割されている。分割部9で分割された一方の分割縁部14(14a)の一方には、取付凹部14e、および取付凹部14eに連通する取付孔14cが形成されている。他方の分割縁部14(14b)には、内周面に雌ネジが形成された挿通孔14dが形成されている。
固定具8は、例えばヘッド部8aと、ヘッド部8aから延びる延出部8bとを有する。延出部8bの外周面には雄ネジが形成されている。
あと施工アンカー10Mでは、固定具8のヘッド部8aを定着体2Mの取付凹部14e内に配置するとともに、延出部8bを取付孔14cおよび挿通孔14dに挿通させ、挿通孔14dにネジ止めすることができる。固定具8によるネジ止めによって定着体2Mを縮径させ、アンカー本体1Mに固定することができる。
【0082】
<あと施工アンカー>(第15の例)
図31は、あと施工アンカー10の第15の例であるあと施工アンカー10Nの一部を示す概略図である。
あと施工アンカー10Nは、アンカー本体1Nの端部に固定された定着体2Nに、他端22(大径端)から一端21(小径端)に向かう複数のスリット16aによってすり割り部16が形成され、すり割り部16に円錐台形の圧入体17が圧入されている。圧入体17は、すり割り部16の分割部16bが拡開された状態で分割部16bに係止している。
【0083】
<あと施工アンカー>(第16の例)
図32(b)は、あと施工アンカー10の第16の例であるあと施工アンカー10Pの一部を示す概略図である。
図32(a)に示すように、あと施工アンカー10Pは、定着体2Pに、一端21(小径端)から他端22(大径端)に向かう複数のスリット18aによってすり割り部18が形成されている。アンカー本体1Pの端部19は、先細のテーパー状となっている。端部19は定着体2Pのすり割り部18に圧入され、すり割り部18の分割部18bが拡開された状態で分割部18bに係止している。
【0084】
<あと施工アンカー>(第17の例)
図33は、あと施工アンカー10の第17の例であるあと施工アンカー10Qを示す概略図である。
あと施工アンカー10Qは、アンカー本体1Qと、アンカー本体1Qの一端部に取り付けられた定着体2とを備えている。
アンカー本体1Qは、凹凸がない平滑な表面を有する一端側部分24(主部1Qb)と、表面凹凸を有する他端側部分25(固着部)とを有する。
一端側部分24は、アンカー本体1Qの一端部を含む部分である。一端側部分24は、例えばPC鋼棒(丸鋼棒)からなり、断面円形とすることができる。
他端側部分25は、アンカー本体1Qの他端部を含む部分である。他端側部分25は、例えば異形鉄筋からなり、表面には、例えばアンカー本体1Qの長さ方向に沿う凸部であるリブ25aと、アンカー本体1Qの周方向に沿う凸部である節25bとが外面25cから突出して形成されている。凸部(リブ25aおよび節25b)の最大外形寸法(アンカー本体1Qの延在方向に対して直交する方向の寸法)は、一端側部分24の最大外形寸法(外径)より大きいことが好ましい。他端側部分25の長さは、例えば定着体2が取り付けられた部分を除くアンカー本体1Qの長さの20〜80%とすることができる。
他端側部分25の凸部(節25b等)は、あと施工アンカー10Qに引き抜き方向の力が加えられた場合に支圧力P1(図6参照)を生じさせるため、あと施工アンカー10Qの定着力を高めることができる。
なお、凹凸を有する部分(他端側部分25)は、アンカー本体1Qの端部を含む部分に限らず、アンカー本体1Qの長さ方向の中間部分であってもよい。他端側部分25における凸部の形状は、図示例に限らず、任意としてよい。
【0085】
<あと施工アンカー>(第18の例)
図34は、あと施工アンカー10の第18の例であるあと施工アンカー10Rを示す概略図である。
あと施工アンカー10Rは、アンカー本体1Rの他端側部分26(固着部)以外は、図33に示すあと施工アンカー10Qと同じとしてよい。
他端側部分26の外周面には、雄ネジ(凹凸)が形成されている。他端側部分26の雄ネジ最大外形寸法は、一端側部分24の最大外形寸法(外径)より大きいことが好ましい。他端側部分26の雄ネジは、アンカー本体1Rに引き抜き方向の力が加えられた場合に支圧力を生じさせるため、あと施工アンカー10Rの定着力を高めることができる。
【0086】
<あと施工アンカー>(第19の例)
図35は、あと施工アンカー10の第19の例であるあと施工アンカー10Sを示す概略図である。
あと施工アンカー10Sは、アンカー本体1Sと、アンカー本体1Sの一端部に取り付けられた定着体2と、アンカー本体1Sの他端部に設けられた定着体27(固着部)とを有する。
アンカー本体1Sは、例えばPC鋼棒(丸鋼棒)からなり、主部1Sbの表面は凹凸がなく平滑である。
定着体27は、例えばアンカー本体1Sに垂直な板状に形成されている。定着体27の形状は特に限定されず、円形、矩形などとしてよい。定着体27の外形寸法(アンカー本体1Sの延在方向に対して直交する方向の寸法)はアンカー本体1Sの主部1Sbの外径より大きい。そのため、定着体27は、アンカー本体1Sに引き抜き方向の力が加えられた場合に支圧力を生じさせ、あと施工アンカー10Sの定着力を高めることができる。
【0087】
<あと施工アンカー>(第20の例)
図36は、あと施工アンカー10の第20の例であるあと施工アンカー10Tの一部を示す概略図である。
あと施工アンカー10Tは、アンカー本体1Tと、アンカー本体1Tに取り付けられた4つの定着体2(2T1〜2T4)とを備えている。4つの定着体2(2T1〜2T4)は、この順にアンカー本体1の長さ方向に並んでいる。4つの定着体2(2T1〜2T4)は、アンカー本体1Tの長さ方向に間隔をおいて設けられている。
第1定着体2T1は、アンカー本体1Tの一端部に設けられている。第4定着体2T4は、アンカー本体1Tの他端部に設けられている。第1定着体2T1と第4定着体2T4の拡大部2c,2cは、互いに離れる方向に断面積が増大する。
第2定着体2T2と、第3定着体2T3とは、アンカー本体1Tの長さ方向に間隔をおいてアンカー本体1Tに取り付けられている。定着体2T2,2T3の拡大部2c,2cは、互いに離れる方向に断面積が増大する。
第1定着体2T1と第2定着体2T2との離間距離は、第3定着体2T3と第4定着体2T4との離間距離に互いに等しい。
あと施工アンカー10Tは、一対の定着体2(2T1,2T4)と、一対の定着体2(2T2,2T3)とを有する。
【0088】
<あと施工アンカー>(第21の例)
図37は、あと施工アンカー10の第21の例であるあと施工アンカー10Uの一部を示す概略図である。
あと施工アンカー10Uは、第3定着体2T3がないこと以外は、図36に示すあと施工アンカー10Tと同様の構成である。
【0089】
<あと施工アンカー>(第22の例)
図38は、あと施工アンカー10の第22の例であるあと施工アンカー10Vの一部を示す概略図である。
あと施工アンカー10Vは、第2定着体2V2および第3定着体2V3の向きが、図36に示すあと施工アンカー10Tにおける第2定着体2T2および第3定着体2T3とは異なること以外は、図36に示すあと施工アンカー10Tと同様の構成である。
第1定着体2T1および第2定着体2V2の拡大部2c,2cは、互いに離れる方向に断面積が増大する。第3定着体2V3および第4定着体2T4の拡大部2c,2cは、互いに離れる方向に断面積が増大する。
【0090】
<あと施工アンカー>(第23の例)
図39は、あと施工アンカー10の第23の例であるあと施工アンカー10Wの一部を示す概略図である。
あと施工アンカー10Wは、第1定着体2T1と第2定着体2T2との離間距離が、第3定着体2T3と第4定着体2T4との離間距離より小さいこと以外は、図36に示すあと施工アンカー10Tと同様の構成である。
【0091】
図36から図39に示すあと施工アンカー10T,10U,10V,10Wは、3以上の定着体2を有するため、アンカー本体1Tに引き抜き方向の力が加えられた場合に生じる支圧力を高めることができる。
【0092】
<あと施工アンカー>(第24の例)
図40は、あと施工アンカー10の第24の例であるあと施工アンカー10Xの一部を示す概略図である。
あと施工アンカー10Xの定着体2X(固着部)は、一端21(小径端)から他端22(大径端)に向かって漸次断面積が増大する拡大部2cと、他端22から延出する定径部28とを有する。定径部28は、拡大部2cの他端22と同じ外径を有する円柱状であって、定径部28の中心軸は拡大部2cの中心軸と一致する。
定着体2Xは、定径部28を把持して拡大部2cを加工することによって作製できる。そのため、製造が容易である。
【0093】
<あと施工アンカー>(第25の例)
図41(a)は、あと施工アンカー10の第25の例であるあと施工アンカー10Yの一部を示す斜視図である。
あと施工アンカー10Yは、定着体2Yとアンカー本体1Yとが一体とされている点で、図3に示すあと施工アンカー10と異なる。
あと施工アンカー10Yは、例えば次のようにして作製することができる。
図41(b)に示すように、あと施工アンカー10Yに即した内面形状を有する金型29を用意する。棒材30を加熱下で金型29によって成型することによって、あと施工アンカー10Yを得る。
あと施工アンカー10Yは、定着体2Yとアンカー本体1Yとが一体化されているため機械的強度(引張強度等)が高い。そのため、構造物のせん断強度を高めることができる。
【0094】
以上、本発明の実施形態を説明したが、実施形態における構成は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
例えば、図3等に示すあと施工アンカー10では、アンカー本体1および定着体2の材質として鋼を例示したが、アンカー本体1および定着体2の材質はこれに限定されない。例えば、カーボン材料、繊維強化プラスチックなどを用いてもよい。アンカー本体に対する定着体の固定は、ネジ嵌合に限らず、他の固定構造、例えば凹凸嵌合などを採用してもよい。アンカー本体1は、PC鋼棒に限らず、他の鉄系材料で構成されていてもよい。雄ネジ1aの形成方法は特に限定されず、例えばねじ切り加工でもよい。
【0095】
図3等に示すあと施工アンカー10では、定着体2の形状は円錐台形状としたが、定着体2は、長さ方向の少なくとも一部が一端21から他端22に向かつて漸次断面積が増大する形状を有していればよく、その形状は略円錐形状に限らず、略角錐形状、釣鐘形、お椀形などであってもよい。
定着体2は、あと施工アンカー10(アンカー本体1)の軸心を対称軸とする軸対称の形状でなくてもよい。また、定着体2は、軸心を対称線とする線対称の形状でなくてもよい。
図20に示すあと施工アンカー10Dでは、端側部分13は、アンカー本体1の長さ方向に沿うリブ12aと、アンカー本体1の周方向に沿う節12bとを有するが、端側部分13における凸部は、図示した構成に限定されない。例えば、凸部は1または複数のリブのみであってもよいし、1または複数の節のみであってもよい。
【0096】
図1および図2に示すあと施工アンカー10は、鉄筋コンクリート構造物32の側壁である壁体34に施工したが、下壁33または上壁35に施工してもよい。
図1および図2に示す鉄筋コンクリート構造物32では、1つの挿入孔50に1つのあと施工アンカー10が設けられているが、1つの挿入孔50に複数のあと施工アンカー10を設けてもよい。
図3図36図39等に示すあと施工アンカー10,10T,10U,10V,10Wは2〜4の定着体2を有するが、定着体2の数は5以上の任意の数でもよい。
図3に示すあと施工アンカー10の定着体2は、一端21から他端22に向かって漸次断面積が増大する形状を有するが、定着体は、長さ方向(例えば中心軸C2方向)の一部が、一端から他端に向かって漸次断面積が増大する形状であればよい。
【0097】
本発明を適用できる構造物には特に制限はなく、例えば土木技術、建築技術等により構築される構造物に適用することができる。本発明は、例えば、鉄道用、道路用などに用いられる構造物に適用できる。具体的には、実施形態に挙げたもののほか、橋台、土留擁壁、防波堤、防護壁などがある。また、本発明は、住宅、店舗、工場、オフィスビル、ホール等の建築構造物およびそれらの付帯構造物にも適用できる。本発明は、例えば柱、梁、壁、床等に適用できる。
【符号の説明】
【0098】
10,10A,10B,10C,10D,10E,10F,10G,10H,10I,10J,10K,10L,10M,10N,10P,10Q,10R,10S,10T,10U,10V,10W,10X,10Y あと施工アンカー
1,1B,1D,1E,1F,1G,1H,1I,1J,1K,1L,1M,1N,1P,1Q,1R,1S,1T,1Y アンカー本体
1a 雄ネジ(取付け部)
1b,1Db,1Eb,1Fb,1Qb,1Rb,1Sb 主部(一対の定着体の間の部分のアンカー本体)
2,2A,2B,2C,2D,2E,2F,2G,2H,2I,2J,2K,2L,2M,2N,2P,2Y 定着体(固着部)
2a ネジ孔
2c 拡大部
11 固化材料
21 一端
22,22A,22B,22C 他端
32 鉄筋コンクリート構造物(構造物)
25 他端側部分(固着部)
26 他端側部分(固着部)
50,50A 挿入孔
図1
図2
図3
図4
図5
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図12
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