特開2017-187048(P2017-187048A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ショーワの特許一覧

<>
  • 特開2017187048-緩衝器、及び緩衝器の組み立て方法 図000003
  • 特開2017187048-緩衝器、及び緩衝器の組み立て方法 図000004
  • 特開2017187048-緩衝器、及び緩衝器の組み立て方法 図000005
  • 特開2017187048-緩衝器、及び緩衝器の組み立て方法 図000006
  • 特開2017187048-緩衝器、及び緩衝器の組み立て方法 図000007
  • 特開2017187048-緩衝器、及び緩衝器の組み立て方法 図000008
  • 特開2017187048-緩衝器、及び緩衝器の組み立て方法 図000009
  • 特開2017187048-緩衝器、及び緩衝器の組み立て方法 図000010
  • 特開2017187048-緩衝器、及び緩衝器の組み立て方法 図000011
  • 特開2017187048-緩衝器、及び緩衝器の組み立て方法 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-187048(P2017-187048A)
(43)【公開日】2017年10月12日
(54)【発明の名称】緩衝器、及び緩衝器の組み立て方法
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/32 20060101AFI20170919BHJP
【FI】
   F16F9/32 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-73697(P2016-73697)
(22)【出願日】2016年3月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000146010
【氏名又は名称】株式会社ショーワ
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100181973
【弁理士】
【氏名又は名称】源田 正宏
(74)【代理人】
【識別番号】100202599
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 一貴
(72)【発明者】
【氏名】徳永 耕治
(72)【発明者】
【氏名】魚谷 忠史
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA54
3J069AA64
3J069CC02
3J069CC11
3J069CC18
3J069DD47
(57)【要約】
【課題】製造工程における手間とコストを抑える
【解決手段】 緩衝器10は、ピストン12に対してピストンロッド13とは反対側に設けられ、内筒20及び外筒21の上端部21tを保持するダンパーケース15と、ピストン12に対してピストンロッド13が配された側において、外筒21の下端部21bの内側に挿入されて設けられ、ピストンロッド13が挿通されるロッドガイド25と、外筒21の下端部21bの内周面に設けられ、ロッドガイド25がピストン12から離間する方向に変位するのを拘束するストッパリング24と、を備え、ストッパリング24は、ロッドガイド25が、内筒20の下端部20bとストッパリング24との間で予め定めた一定寸法の範囲内で移動可能となる位置に設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒及び前記外筒の径方向内側に隙間をあけて設けられた内筒を有し、油が封入されたシリンダと、一端が前記シリンダの内部に挿入され、他端が前記シリンダの外部に延出したピストンロッドと、前記ピストンロッドの前記一端に接続されて前記内筒の内部で前記内筒の中心軸方向に沿って摺動可能に設けられたピストンと、前記ピストンロッドの変位にともなって前記内筒内で前記ピストンが摺動することによって生じる前記油の流れを制御して減衰力を発生する減衰力発生部と、を備えた緩衝器であって、
前記ピストンに対して前記ピストンロッドとは反対側に設けられ、前記内筒及び前記外筒の一端部を保持する保持部材と、
前記ピストンに対して前記ピストンロッドが配された側において、前記外筒の他端部の内側に挿入されて設けられ、前記ピストンロッドが挿通されるロッドガイドと、
前記外筒の他端部の内周面に設けられ、前記ロッドガイドが前記ピストンから離間する方向に変位するのを拘束するストッパ部材と、を備え、
前記ストッパ部材は、前記ロッドガイドが、前記内筒の前記他端部と前記ストッパ部材との間で予め定めた一定寸法の範囲内で前記中心軸方向に移動可能となる位置に設けられている、緩衝器。
【請求項2】
前記外筒の他端部の内周面に、周方向に連続する溝が形成され、
前記ストッパ部材は、C字状のストッパリングからなり、前記溝に装着されている、
請求項1に記載の緩衝器。
【請求項3】
前記保持部材において前記内筒の前記一端部が突き当たる内筒支持面と、前記ストッパ部材との間隔は、
前記内筒の前記中心軸方向における長さと、前記内筒の前記他端部に対向する位置における前記ロッドガイドの厚さと、の和よりも大きい、
請求項1又は2に記載の緩衝器。
【請求項4】
前記内筒は、前記ピストンが伸側に移動することで前記油の圧力が前記一端部に作用したときに、前記一端部を前記内筒支持面に突き当てた状態を維持する強度で前記保持部材に固定されている、請求項1から3の何れか一項に記載の緩衝器。
【請求項5】
前記内筒は前記保持部材に圧入され、
前記内筒の前記保持部材への圧入荷重が、前記ピストンの作動時に前記内筒の前記一端部に作用する圧力と前記内筒の前記他端部に作用する圧力との差の最大値よりも大きい、
請求項4に記載の緩衝器。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載の緩衝器の組み立て方法であって、
前記保持部材に前記内筒の前記一端部を固定する工程と、
前記内筒の外周側で、前記外筒の前記一端部を前記保持部材に固定する工程と、
前記外筒及び前記内筒の前記他端部に、前記ロッドガイドを挿入配置する工程と、
前記外筒の内周面に前記ストッパ部材を設ける工程と、
を備える緩衝器の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器、及び緩衝器の組み立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車用の油圧緩衝器は、油が封入されたシリンダと、シリンダ内で摺動可能に設けられたピストンと、ピストンに連結されてシリンダの外部に延びるロッドと、シリンダ内でピストンが摺動することによって生じる油の流れを制御して減衰力を発生させる減衰力発生部と、を備えている。このような油圧緩衝器は、シリンダを車輪または車体側に連結し、ロッドを車体または車輪側に連結することで、自動二輪車の車輪と車体との間に設けられている。
【0003】
特許文献1には、外筒と、外筒の内周側に外筒との間に隙間を隔てて設けられた内筒とを備えたツインチューブ構造のシリンダ部を備えた油圧緩衝器が開示されている。このような油圧緩衝器においては、ピストンは、内筒の内側に設けられている。ピストンロッドは、一端がピストンに連結され、他端が、内筒の外部に延びて設けられている。ピストンに対してピストンロッドが配された側には、内筒及び外筒の端部に、ピストンロッドが貫通されるロッドガイドが設けられている。
ロッドガイドは、外周面に雄ネジ部を備え、外筒の端部の内周面に形成された雌ネジ部にロッドガイドの雄ネジ部をねじ込むことで装着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−69640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記したような構成の油圧緩衝器においては、その製造工程で、ロッドガイドを外筒の端部に装着するために、外筒とロッドガイドの双方にネジ加工が必要である。さらに、組立の際には、ロッドガイドを外筒にねじ込み、その締付トルクも管理する必要がある。このように、ロッドガイドを外筒にねじ込む構成では、製造工程で手間とコストが掛かる。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、製造工程における手間とコストを抑えることのできる緩衝器、及び緩衝器の組み立て方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
この発明に係る緩衝器は、外筒及び前記外筒の径方向内側に隙間をあけて設けられた内筒を有し、油が封入されたシリンダと、一端が前記シリンダの内部に挿入され、他端が前記シリンダの外部に延出したピストンロッドと、前記ピストンロッドの前記一端に接続されて前記内筒の内部で前記内筒の中心軸方向に沿って摺動可能に設けられたピストンと、前記ピストンロッドの変位にともなって前記内筒内で前記ピストンが摺動することによって生じる前記油の流れを制御して減衰力を発生する減衰力発生部と、を備えた緩衝器であって、前記ピストンに対して前記ピストンロッドとは反対側に設けられ、前記内筒及び前記外筒の一端部を保持する保持部材と、前記ピストンに対して前記ピストンロッドが配された側において、前記外筒の他端部の内側に挿入されて設けられ、前記ピストンロッドが挿通されるロッドガイドと、前記外筒の他端部の内周面に装着され、前記ロッドガイドが前記ピストンから離間する方向に変位するのを拘束するストッパ部材と、を備え、前記ストッパ部材は、前記ロッドガイドが、前記内筒の前記他端部と前記ストッパ部材との間で予め定めた一定寸法の範囲内で前記中心軸方向に移動可能となる位置に設けられている。
【0007】
このように、ロッドガイドが、内筒の他端部とストッパ部材との間で中心軸方向に移動可能であるため、緩衝器を組立又は分解する際には、ロッドガイドを外筒内に押し込み、内筒の他端部との隙間を狭めることで、ロッドガイドがストッパ部材から離間する。これによって、ストッパ部材の着脱を容易に行うことができる。
このようにして、外筒やロッドガイドにネジ加工を施す必要がなく、ロッドガイドを外筒にねじ込む必要もない。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係る緩衝器、及び緩衝器の組み立て方法によれば、製造工程における手間とコストを抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る緩衝器の全体構成を示す正面図である。
図2】上記緩衝器を異なる角度から見た側面図である
図3】上記緩衝器の全体構成を示す断面図である。
図4図3に示した緩衝器の拡大断面図である。
図5】上記緩衝器に設けられた減衰力発生装置を示す断面図である。
図6】上記緩衝器の構成を模式的に示した図である。
図7】緩衝器の組立方法を示す図であり、保持部材に内筒を装着した状態を示す断面図である。
図8】緩衝器の組立方法を示す図であり、内筒の外側に外筒を装着した状態を示す断面図である。
図9】緩衝器の組立方法を示す図であり、ロッドガイドを装着した状態を示す断面図である。
図10】ロッドガイドを外筒内に押し込んだ状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明による、及び緩衝器の組み立て方法を実施するための形態を説明する。しかし、本発明はこの実施形態のみに限定されるものではない。
図1は、本発明の実施形態に係る緩衝器の全体構成を示す正面図である。図2は、緩衝器を異なる角度から見た側面図である。図3は、緩衝器の全体構成を示す断面図である。図4は、図3に示した緩衝器の拡大断面図である。
【0011】
「緩衝器」
図1図3に示すように、緩衝器10は、例えば自動二輪車の車体と後輪を支持する後輪支持部との間に設けられ、後輪から入力される衝撃や振動を緩衝する。以下の説明において、緩衝器10は、例えば上下方向に延び、その上端部に設けられた車体側取付部材10tが車体側に連結され、下端部に設けられた車軸側取付部材10bが後輪側に連結される。ただし、本発明は、緩衝器10を例えば横方向(略水平方向)に延びるように設ける場合を排除するものではない。
【0012】
緩衝器10は、シリンダ11と、ピストン12(図3参照)と、ピストンロッド13と、リザーバ30と、減衰力発生装置40と、スプリング14と、を備える。
【0013】
図3図4に示すように、シリンダ11は、同心状の二重管をなす内筒20と外筒21とによって構成されている。これら内筒20、外筒21は、引抜加工、押出加工、鍛造等の冷間加工によって形成された冷間加工材からなる。
内筒20の外径は、外筒21の内径よりも一定寸法小さく形成されている。これによって内筒20と外筒21との間には、円筒状の環状流路101が形成されている。
【0014】
緩衝器10の上端部側には、車体側取付部材10tが設けられたダンパーケース15が配置されている。ダンパーケース15には、シリンダ11側に延びる円筒状の外筒保持部16が設けられている。外筒21は、その上端部21tが外筒保持部16に挿入されて保持されている。
【0015】
図4に示すように、内筒20は、その上端部20tが、外筒21の上端部21tよりも上方に延び、ダンパーケース15に形成された内筒保持凹部18に挿入されて保持されている。内筒保持凹部18は、内筒20の上端部20tが挿入される内径を有している。また、内筒保持凹部18の内周面には、周方向に連続する環状のシールリング19が設けられている。内筒保持凹部18は、内筒20の上端部20tが突き当たる突き当たり面(内筒支持面)18tを有し、内筒20の上方(車体側取付部材10t側)への移動を拘束した状態で、内筒20が所定の圧入荷重で圧入されている。内筒20の一端部である上端部20tに形成された上端面20fは、内筒保持凹部18の突き当たり面18tとの間に侵入する油により圧力を受ける。
【0016】
外筒21は、上端部(外筒の一端部)21tが内筒20の上端部(内筒の一端部)20tよりも下方のピストンロッド13側に位置している。
また、外筒21は、その下端部(外筒の他端部)21bが内筒20の下端部(内筒の他端部)20bよりも所定寸法下方に突出するように形成されている。
【0017】
外筒21の下端部21bの内側には、ロッドガイド25が設けられている。ロッドガイド25は、外筒21の内周面に接して外筒21の下端部21bの内側を閉塞するプレート部25pと、プレート部25pの上面からダンパーケース15側に向かって延びる筒状部25tと、を一体に有している。
ロッドガイド25の筒状部25tは、内筒20の下端部20bに挿入され、これによって内筒20の下端部20bを、その中心軸に交差する方向に移動しないよう保持している。
ロッドガイド25のプレート部25pは、内筒20の下端部20bと外筒21との間の環状流路101を閉塞している。
【0018】
ここで、ロッドガイド25は、外筒21の内周面に形成された周方向に連続する溝21mに、ストッパリング(ストッパ部材)24が嵌め込まれることで、下方への移動寸法が規制され、外筒21から抜け出ないようになっている。ストッパリング24は、ロッドガイド25のプレート部25pの外径よりも小さな内径を有した、金属製でC字状をなしたCリング、スナップリング等からなる。
【0019】
また、ダンパーケース15において内筒20の上端部20tが突き当たる突き当たり面18tとストッパリング24との間隔L1は、内筒20の中心軸方向における長さL2と、内筒20の下端部20bに対向する位置におけるロッドガイド25の厚さL3と、の和よりも大きい。これにより、ロッドガイド25のプレート部25pがストッパリング24に突き当たった状態で、プレート部25pと内筒20の下端部20bとの間には、所定寸法(L1−(L2+L3))のクリアランス23が形成されている。このクリアランス23に入り込む油によって、内筒20の下端面20gは、環状流路101を流れる油の圧力を受ける。
【0020】
ここで、内筒20の上端部20tの上記内筒保持凹部18への圧入荷重は、内筒20の上端面20fが油の圧力を受けても、内筒20の上端部20tが内筒保持凹部18から下方に抜けないように設定されている。より具体的には、内筒20の上端部20tの上記内筒保持凹部18への圧入荷重は、内筒20の上端面20fが受ける下向きの油の圧力と内筒の下端面20gが受ける上向きの油の圧力との差の最大値よりも、大きく形成されている。ここで、内筒20の上端面20fが受ける下向きの油の圧力と内筒の下端面20gが受ける上向きの油の圧力との差の最大値は、緩衝器10を搭載する自動二輪車等の用途に応じて設定される。例えば、緩衝器10が、車輪側から10m/sといった特に大きな入力があるモトクロス競技用の自動二輪車に搭載される場合、不整地をジャンプしたりしながら走行するときに生じ得る、内筒20の上端面20fにおける下向きの油の圧力と内筒20の下端面20gが受ける上向きの油の圧力との差の最大値を設定する。
【0021】
また、ロッドガイド25は、作業者がロッドガイド25を上方に押圧すると、ロッドガイド25のプレート部25pが内筒20の下端部20bに突き当たるまで移動可能となっている。
【0022】
ロッドガイド25は、プレート部25p及び筒状部25tを貫通してピストンロッド13が挿通される挿通孔25hを有しており、ピストンロッド13をその中心軸方向に摺動可能にガイドする。
さらに、ロッドガイド25の筒状部25tの内側には、ピストン12が衝突したときの衝撃を吸収するリバウンドラバー26が設けられている。
【0023】
ピストン12は、ピストンロッド13の上端部(一端)13aに、ナット27によって連結されている。ピストン12は、ピストンロッド13とともに、シリンダ11の内筒20の内側に、内筒20の中心軸方向(上下方向)に沿って摺動可能に設けられている。
このピストン12によって、シリンダ11の内筒20の内側空間は、ピストンロッド13側とは反対側のダンパーケース15側に形成されたピストン側油室S1と、ピストンロッド13側に形成されたロッド側油室S2とに区画されている。
【0024】
図3に示すように、上端部13aがピストン12に連結されたピストンロッド13は、内筒20の中心軸方向に沿って下方に延び、ロッドガイド25を貫通してシリンダ11の外方に突出している。ピストンロッド13の下端部(他端)13bに、車軸側取付部材10bが設けられている。車軸側取付部材10bにおけるシリンダ11側には、緩衝器10の底付きを防ぐためのバンプラバー28がピストンロッド13に挿通して設けられている。
【0025】
ダンパーケース15には、内筒20の上端部20tの開口に対向する位置に、圧側連通路102の一端が開口して形成されている。この圧側連通路102は、ピストン側油室S1と後述する減衰力発生装置40の第一油室S11(図5参照)とを連通する。
【0026】
内筒20の下端部20bには、周方向に間隔をあけて複数の油孔103が形成されている。これらの油孔103により、ロッド側油室S2と環状流路101とが連通している。
【0027】
ダンパーケース15には、外筒21の上端部21tよりも上方の、ピストンロッド13とは反対側に、径方向に開口する流路開口部104が形成されている。この流路開口部104に連続して、後述する減衰力発生装置40の第三油室S13(図5参照)と環状流路101とを連通する伸側連通路105が形成されている。
【0028】
「リザーバ」
リザーバ30は、ダンパーケース15の近傍に設けられ、例えば円筒状で、その内部に袋状のブラダ31を備えている。ブラダ31はゴム等の弾性体によって袋状に成形されたもので、膨張及び収縮が可能となっている。ブラダ31の内部には、エア等のガスが充填されている。また、リザーバ30内において、ブラダ31の外側の空間は、油溜室S3とされ、リザーバ連通路107を介して、後述する減衰力発生装置40の第二油室S12(図5参照)に連通している。
【0029】
上記したようなシリンダ11内のピストン側油室S1、ロッド側油室S2、内筒20と外筒21との間の環状流路101、リザーバ30内の油溜室S3、及び後述する減衰力発生装置40内には、流体である油が充填されている。
【0030】
「減衰力発生装置」
図5は、ダンパーケースに設けられた減衰力発生装置を示す断面図である。
図5に示すように、減衰力発生装置40は、ダンパーケース15と一体に形成された有底筒状のダンパ収容部29に対し、ダンパーユニット(減衰力発生部)41が着脱可能に設けられた構成からなる。
ダンパーユニット41は、全体として円柱状をなし、ホルダ部材42と、アウターキャップ43と、メインダンパ60と、減衰調整部80と、を主に備えている。
【0031】
ホルダ部材42は、一端42a側の所定長部分に形成され、一定の外径を有した軸状部45と、他端42b側に形成され、軸状部45よりも外径が大きな大径部46と、を一体に備えている。大径部46には、他端42b側から一端42a側に窪んだ凹部47が形成されている。さらに、ホルダ部材42には、軸状部45の中心軸C方向に沿って連続し、一端42aと凹部47とに開口する中心孔48が形成されている。
また、大径部46には、径方向内側の凹部47と径方向外側とを連通する孔46hが、周方向に間隔をあけて複数形成されている。
【0032】
アウターキャップ43は、円環状で、大径部46の外周面にねじ込まれて装着されている。このアウターキャップ43は、ダンパ収容部29の開口部29aを塞ぐよう設けられ、開口部29aの内周面に装着されたCリング49によって、ダンパ収容部29から抜け出る方向への移動が規制されている。
【0033】
メインダンパ60は、ホルダ部材42の大径部46側から一端42a側に向かって、圧側出口チェック弁61、伸側ピストン62、伸側バルブ63、中間部材64、圧側バルブ65、圧側ピストン66、伸側出口チェック弁67、及びストッパプレート68が順次配置されている。これらの、圧側出口チェック弁61、伸側ピストン62、伸側バルブ63、中間部材64、圧側バルブ65、圧側ピストン66、伸側出口チェック弁67、及びストッパプレート68は、それぞれ円環状に形成され、その中心部にホルダ部材42の軸状部45が挿通されている。
【0034】
伸側ピストン62には、複数の伸側入口ポート62tと圧側出口ポート62cとが、周方向に沿って交互に形成されている。伸側入口ポート62t、圧側出口ポート62cは、それぞれ、伸側ピストン62を中心軸C方向に貫通して形成されている。
伸側バルブ63は、伸側入口ポート62tの中間部材64側の出口を塞ぐように設けられている。伸側バルブ63は、複数枚のディスクバルブ63vを積層して構成されている。
圧側出口チェック弁61は、ディスクバルブ61vからなり、圧側出口ポート62cの大径部46側の出口を塞ぐように設けられている。
【0035】
圧側ピストン66には、複数の圧側入口ポート66cと伸側出口ポート66tとが、周方向に沿って交互に形成されている。圧側入口ポート66c、伸側出口ポート66tは、それぞれ、圧側ピストン66を中心軸C方向に貫通して形成されている。
圧側バルブ65は、圧側入口ポート66cの中間部材64側の出口を塞ぐように設けられている。圧側バルブ65は、複数枚のディスクバルブ65vを積層して構成されている。
伸側出口チェック弁67は、ディスクバルブ67vからなり、伸側出口ポート66tのストッパプレート68側の出口を塞ぐように設けられている。
【0036】
中間部材64は、伸側バルブ63と圧側バルブ65との間に配置されている。中間部材64は、径方向に連続し、径方向内側と径方向外側とを連通する流路64hが、周方向に間隔をあけて複数形成されている。ホルダ部材42の軸状部45には、中間部材64の各流路64hに連通する位置に、中心孔48から径方向外側に延びる流路70が形成されている。
【0037】
伸側バルブ63、圧側バルブ65は、通常時は圧側入口ポート66c、伸側入口ポート62tを閉塞して油の流れを遮断している。伸側バルブ63、圧側バルブ65は、圧側入口ポート66c、伸側入口ポート62tを通る油の圧力に応じて撓み変形し、圧側入口ポート66c、伸側入口ポート62tとの隙間を油が通るときに、減衰力を発生する。伸側バルブ63、圧側バルブ65は、ディスクバルブ63v、65vの枚数を調整することで、発生する減衰力を調整する。
圧側出口チェック弁61、伸側出口チェック弁67は、通常時は圧側出口ポート62c、伸側出口ポート66tを閉塞して油の流れを遮断し、圧側出口ポート62c、伸側出口ポート66tを通る油の圧力に応じて撓み変形し、油を流通させる。
【0038】
ストッパプレート68は、伸側出口チェック弁67に対して、ホルダ部材42の軸状部45の一端42a側に配置されている。
軸状部45の一端42aに形成されたネジ溝45nには、ナット部材69が螺着され、このナット部材69とホルダ部材42の大径部46との間に、圧側出口チェック弁61、伸側ピストン62、伸側バルブ63、中間部材64、圧側バルブ65、圧側ピストン66、伸側出口チェック弁67、及びストッパプレート68が挟持されている。
【0039】
減衰調整部80は、圧側調整弁81と、圧側アジャスタ82と、伸側調整弁83と、伸側アジャスタ84と、を備えている。
【0040】
圧側調整弁81は、先端部側がホルダ部材42の大径部46に形成された凹部47から中心孔48内に挿入され、基端部(他端42b)側には、凹部47内で円板状のエンドピース81bが結合されている。
【0041】
圧側調整弁81は、中心孔48の内径よりも小さな外径を有し、これによって、中心孔48の内周面と圧側調整弁81の外周面との間には、隙間流路85が形成されている。また、圧側調整弁81は、その先端部(一端42a)側に、先端に行くにしたがってその外径が漸次小さくなる弁部81vを備えている。中心孔48には、流路70よりもホルダ部材42の一端42a側に、内径が絞られた絞り部71が形成されており、弁部81vは、絞り部71に挿入されている。
【0042】
圧側アジャスタ82は、アウターキャップ43の内側に装着されたインナーキャップ87に、その中心軸回りに回動自在に保持されている。圧側アジャスタ82は、凹部47内に延び、エンドピース81bに螺合している。圧側アジャスタ82の基部82aは、インナーキャップ87から外方に露出している。これにより、ダンパーケース15の外側から圧側アジャスタ82を回転させると、圧側アジャスタ82に沿ってエンドピース81bが中心軸C方向に進退する。すると、圧側調整弁81の弁部81vが絞り部71に対して進退し、絞り部71と弁部81vとの間の隙間を増減する。
【0043】
伸側調整弁83は、凹部47内に設けられ、中心孔48の凹部47側における開口に向かって延びる筒状の弁部83vを一体に備えている。伸側調整弁83には、圧側調整弁81が挿通されている。
【0044】
伸側アジャスタ84は、アウターキャップ43の内側に装着されたインナーキャップ87に、その中心軸回りに回動自在に保持されている。伸側アジャスタ84は、凹部47内に延び、伸側調整弁83に螺合している。伸側アジャスタ84の基部84aは、インナーキャップ87から外方に露出している。これにより、ダンパーケース15の外側から伸側アジャスタ84を回転させると、伸側調整弁83が中心軸C方向に進退する。すると、伸側調整弁83の弁部83vが中心孔48の開口に対して進退し、弁部83vと隙間流路85との間の隙間を増減する。
【0045】
上記したような構成の減衰力発生装置40において、伸側ピストン62,圧側ピストン66の外周面には、径方向外側に突出した突出壁75が周方向に連続して形成されている。突出壁75の外周面には、ダンパ収容部29の内周面に突き当たることで、伸側ピストン62,圧側ピストン66と、ダンパ収容部29の内周面と、の間をシールするシールリング76A、76Bが設けられている。
【0046】
上記したような減衰力発生装置40において、ダンパ収容部29内は、圧側ピストン66のシールリング76Aと、伸側ピストン62のシールリング76Bとによって、第一油室S11、第二油室S12、第三油室S13に区画されている。
第一油室S11は、圧側ピストン66のシールリング76Aよりもホルダ部材42の一端42a側に形成され、圧側連通路102を介してピストン側油室S1(図4参照)に連通している。
第二油室S12は、圧側ピストン66のシールリング76Aと伸側ピストン62のシールリング76Bとの間に形成され、リザーバ連通路107を介して、リザーバ30の油溜室S3(図4参照)に連通している。
第三油室S13は、伸側ピストン62のシールリング76Bとアウターキャップ43との間に形成され、伸側連通路105を介して、シリンダ11の環状流路101(図4参照)に連通している。
【0047】
また、ホルダ部材42に形成された中心孔48は、ホルダ部材42の一端42aにおいて第一油室S11内に開口している。
中間部材64に形成された流路64hは、第二油室S12内に開口している。
また、ホルダ部材42の大径部46に形成された孔46hは、第三油室S13内に開口している。
【0048】
図6は、上記したような緩衝器の構成を模式的に示した図である。
(圧側動作)
図5図6に示すように、ピストン12がシリンダ11内で車体側に移動する圧側行程においては、ピストン側油室S1内の油がピストン12により圧縮される。すると、ピストン側油室S1内の油は、ダンパーケース15に形成された圧側連通路102から、第一油室S11に送り込まれる。
【0049】
第一油室S11に送り込まれた油は、メインダンパ60の圧側ピストン66に形成された圧側入口ポート66cに流れ込み、その出口側に設けられた圧側バルブ65を押し開き、第二油室S12へと流出する。このとき圧側バルブ65を押し開いて、圧側入口ポート66cの出口と圧側バルブ65との間に形成された隙間を油が通ることで、減衰力が発生される。
【0050】
また、第一油室S11に送り込まれた油のうちの一部は、ホルダ部材42の一端42aに開口した中心孔48に流れ込み、圧側調整弁81の弁部81vと絞り部71との隙間を通って、軸状部45に形成された流路70、中間部材64に形成された流路64hを介し、第二油室S12に流出する。このとき、油の一部が、圧側調整弁81の弁部81vと絞り部71との隙間を通るときに、減衰力が発生される。また、圧側アジャスタ82で圧側調整弁81を進退させて圧側調整弁81の弁部81vと絞り部71との隙間を調整することで、圧側調整弁81の弁部81vと絞り部71との隙間を油が通るときに生じる減衰力を調整することができる。
【0051】
第二油室S12に流れ込んだ油の一部は、ピストン12の移動にともなうシリンダ11内におけるピストンロッド13の容積変化を補償するため、ダンパーケース15に形成されたリザーバ連通路107を通り、油溜室S3に流れ込む。また、第二油室S12に流れ込んだ油の残部は、伸側ピストン62の圧側出口ポート62cに流れ込み、圧側出口チェック弁61を押し開いて第三油室S13へと流れ込む。
【0052】
第三油室S13に流れ込んだ油は、伸側連通路105、シリンダ11の環状流路101、複数の油孔103を通してロッド側油室S2に流入する。
【0053】
(伸側行程)
車輪の上下動によってピストン12がシリンダ11内で車輪側に移動する伸側行程においては、ロッド側油室S2内の油がピストン12により圧縮される。すると、ロッド側油室S2内の油は、内筒20の下端部に形成された油孔103を通り、内筒20と外筒21との間に形成された円筒状の環状流路101へと流れ込む。この環状流路101を流れる油は、ダンパーケース15に形成された流路開口部104、伸側連通路105を通り、減衰力発生装置40の第三油室S13へと送り込まれる。
【0054】
第三油室S13に送り込まれた油は、伸側ピストン62の伸側入口ポート62tに流れ込み、その出口側に設けられた伸側バルブ63を押し開くことで減衰力を発生する。伸側入口ポート62tと伸側バルブ63との間に形成された隙間を通過した油は第二油室S12へと流れ込む。
【0055】
また、第三油室S13に送り込まれた油のうちの一部は、ホルダ部材42の大径部46に形成された孔46hから凹部47内に流れ込む。そして、油は、伸側調整弁83の弁部83vと隙間流路85との間の隙間を通って、隙間流路85,軸状部45に形成された流路70、中間部材64に形成された流路64hを介し、第二油室S12に流出する。このとき、油の一部が、伸側調整弁83の弁部83vと隙間流路85との隙間を通るときに、減衰力が発生される。また、伸側アジャスタ84で伸側調整弁83を進退させて伸側調整弁83の弁部83vと隙間流路85との隙間を調整することで、この隙間を油が通るときに生じる減衰力を調整することができる。
【0056】
また、ピストン12の移動にともなうシリンダ11内におけるピストンロッド13の容積変化を補償するため、ダンパーケース15に形成されたリザーバ連通路107を通り、油溜室S3から第二油室S12に油が流れ込む。
【0057】
第二油室S12に流れ込んだ油は、圧側ピストン66の伸側出口ポート66tを通り、伸側出口チェック弁67を押し開いて第一油室S11へと流れ込む。
【0058】
第一油室S11内の油は、ダンパーケース15に形成された圧側連通路102を通してピストン側油室S1に送り込まれる。
【0059】
このような伸側行程において、圧側連通路102を通してピストン側油室S1に送り込まれる油により、内筒20の上端面20fが下向き(ピストンロッド13側)の圧力を受ける。また、内筒の下端面20gは、環状流路101内の油の圧力を受ける。内筒20の上端部20tの内筒保持凹部18への圧入荷重は、内筒20の上端面20fが受ける下向きの油の圧力と内筒の下端面20gが受ける上向きの油の圧力との差の最大値よりも大きいので、内筒20の上端部20tが内筒保持凹部18から下方に抜けるのを防ぐことができる。
【0060】
図7は、緩衝器の組立方法を示す図であり、保持部材に内筒を装着した状態を示す断面図である。図8は、内筒の外側に外筒を装着した状態を示す断面図である。図9は、ロッドガイドを装着した状態を示す断面図である。図10は、ロッドガイドを外筒内に押し込んだ状態を示す断面図である。
「緩衝器の組立方法」
緩衝器10の組立方法は、ダンパーケース15に内筒20の上端部20tを固定する工程と、内筒20の外周側で、外筒21の上端部21tをダンパーケース15に固定する工程と、外筒21及び内筒20の下端部20bに、ロッドガイド25を挿入配置する工程と、外筒21の内周面にストッパリング24を設ける工程と、を主に備える。
【0061】
(ダンパーケース15に内筒20の上端部20tを固定する工程)
図7に示すように、ダンパーケース15の内筒保持凹部18の内周面にシールリング19をセットした後、内筒保持凹部18に内筒20の上端部20tを所定の圧入荷重で圧入する。
このとき、ダンパーケース15には、外筒21は未装着の状態であるため、シールリング19をセットした内筒保持凹部18に内筒20の上端部20tを挿入する際に、シールリング19のズレなどを、容易かつ確実に目視で確認することができる。これに対し、例えば外筒21を先行してダンパーケース15に装着してしまうと、外筒21の奥でシールリング19のダンパーケース15への装着等を行わなければならず、作業性が悪いうえに、シールリング19のズレ等を目視で確認することは困難である。
【0062】
(内筒20の外周側で、外筒21の上端部21tをダンパーケース15に固定する工程)
次に、図8に示すように、外筒21の上端部21tを、ダンパーケース15の外筒保持部16に固定する。このとき、外筒21の上端部21tの外筒保持部16への固定方法としては、圧入、ねじ込み等がある。
【0063】
(外筒21及び内筒20の下端部20bに、ロッドガイド25を挿入配置する工程)
次に、図9に示すように、ピストンロッド13の上端部13aに装着したロッドガイド25を、外筒21の下端部21bから上方に向かって挿入する。
【0064】
(外筒21の内周面にストッパリング24を設ける工程)
図10に示すように、ロッドガイド25を上方に押圧し、ロッドガイド25のプレート部25pを内筒20の下端部20bに突き当たるまで移動させた後、溝21mにストッパリング24を装着する。ロッドガイド25のプレート部25pが内筒20の下端部20bに突き当たった状態では、外筒21の内周面に形成された溝21mが、プレート部25pとの間に形成される隙間Dに露出する。したがって、溝21mへのストッパリング24の装着を容易に行うことができる。
【0065】
なお、緩衝器10内への油の注入は、ロッドガイド25を装着する前に行ってもよいし、緩衝器10の組立作業の完了後に別途行ってもよい。
【0066】
また、緩衝器10の組立後、何らかの必要があって緩衝器10を分解する場合、緩衝器10内の圧力を解放した後、作業者がロッドガイド25を上方に押圧し、ロッドガイド25をプレート部25pが内筒20の下端部20bに突き当たるまで上方に移動させる。ロッドガイド25のプレート部25pが内筒20の下端部20bに突き当たった状態では、ストッパリング24とプレート部25pとの間に隙間Dが形成されるので、ストッパリング24を溝21mから容易に取り外すことができる。
ストッパリング24を取り外した後は、ロッドガイド25とピストンロッド13とを、外筒21から引き抜いて取り外す。
このようにして、緩衝器10の分解作業を容易に行うことができる。
【0067】
本実施形態における緩衝器10においては、ロッドガイド25が、内筒20の下端部20bとストッパリング24との間で移動可能であるため、緩衝器10を組立又は分解する際には、ロッドガイド25を外筒21の上端部21t側に押し込み、内筒20の下端部20bとの隙間を狭めることで、ロッドガイド25がストッパリング24から離間する。これによって、ストッパリング24の着脱を容易に行うことができる。
このようにして、ストッパリング24を用いてロッドガイド25を設けることで、外筒21やロッドガイド25にネジ加工を施す必要がなく、ロッドガイド25を外筒21にねじ込む必要もない。したがって、製造工程における手間とコストを抑えることが可能となる。
【0068】
また、C字状のストッパリング24は、特に装着時には、外筒21の内周面の溝21mにワンタッチで装着することができ、緩衝器10の組立時における生産効率を高めることができる。
【0069】
また、突き当たり面18tとストッパリング24との間隔L1が、内筒20の長さL2とロッドガイド25の厚さL3との和よりも大きいので、ロッドガイド25が、内筒20の下端部20bとストッパリング24との間で移動可能となる。
【0070】
また、ピストン12が伸側に移動することで油の圧力が、内筒20の一端部である上端部20tに形成された上端面20fに作用したときに、内筒20は、上端部20tを突き当たり面18tに突き当てた状態を維持する強度でダンパーケース15に固定されている、このような構成によれば、ピストン12が移動して油の高い圧力が内筒20の上端面20fに作用しても、内筒20が他端部側(ロッドガイド25側)に移動してしまうのを防ぐことができる。これにより、走行中に内筒20が移動して騒音を発するのを抑えることができる。
【0071】
また、内筒20はダンパーケース15に圧入され、内筒20のダンパーケース15への圧入荷重が、ピストン12の作動時に内筒20の上端面20fに作用する圧力と内筒20の下端部20bに作用する圧力との差の最大値よりも大きい。このような構成によれば、緩衝器10に大きな入力があり、ピストン12が高速で動いたときにも、内筒20がダンパーケース15から抜けてしまうのを確実に防ぐことができる。
【0072】
また、緩衝器10の組立方法によれば、外筒21のダンパーケース15への組み付けに先立ち、内筒20の上端部20tをダンパーケース15に固定するようにしたので、内筒20をダンパーケース15に装着する際には、外筒21が邪魔になることもなく、ダンパーケース15に対する内筒20の装着部位を目視によって確実に確認することができる。
【0073】
また、ダンパーユニット41は、ピストン12が圧側に摺動したときに油が流れ込んで減衰力を発生する圧側入口ポート66cと、ピストン12が伸側に摺動したときに油が流れ込んで減衰力を発生する伸側入口ポート62tと、圧側入口ポート66cの圧側バルブ65及び伸側入口ポート62tの伸側バルブ63の下流側に設けられ、リザーバ30に連通したリザーバ連通路107と、を備える。
このような構成によれば、シリンダ11内へのピストンロッド13の進入体積に応じてシリンダ11内の油量が油溜室S3とのやりとりによって補償される。シリンダ11内におけるロッド側油室S2の圧力は、油溜室S3の圧力だけにほぼ依存するため、圧縮行程から伸長行程への移行時にロッド側油室S2の圧力が即座に上昇しないため所要の減衰力が正常に発生しない所謂「減衰力のさぼり」という現象を回避することができる。
【0074】
(その他の実施形態)
なお、本発明の緩衝器は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、減衰力発生装置40に備えた減衰調整部80は、その構成を何ら限定するものでもなく、減衰調整部80を省略する構成としてもよい。
【0075】
また、緩衝器10の全体の構成は、適宜変更することが可能である。例えば、上記実施形態では、圧側入口ポート66cの圧側バルブ65及び伸側入口ポート62tの伸側バルブ63の下流側が、リザーバ連通路107によってリザーバ30に連通する構成としたが、これに限らない。例えば、リザーバ30自体を備えない構成とすることも可能である。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0076】
10 緩衝器
11 シリンダ
12 ピストン
13 ピストンロッド
13a 上端部(一端)
13b 下端部(他端)
15 ダンパーケース(保持部材)
18t 突き当たり面(内筒支持面)
20 内筒
20b 下端部(内筒の他端部)
20t 上端部(内筒の一端部)
21 外筒
21b 下端部(外筒の他端部)
21m 溝
21t 上端部(外筒の一端部)
24 ストッパリング(ストッパ部材)
25 ロッドガイド
41 ダンパーユニット(減衰力発生部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10