【解決手段】軸方向に延びたモータシャフトを有するモータと、非通電状態においてモータシャフトの回転を制動する電磁ブレーキと、モータシャフトに連結された減速機構と、減速機構を介してモータシャフトの回転が伝達される回転部と、回転部の回転に伴って軸方向に移動する可動部材と、を備え、回転部は、螺旋状の第1螺旋状溝を有し、可動部材は、第1螺旋状溝と隙間を介して対向する螺旋状の第2螺旋状溝を有する本体部と、被動力伝達部と接触する出力部と、を有し、第1螺旋状溝、第2螺旋状溝、および第1螺旋状溝と第2螺旋状溝との間に位置する複数の球状のボールによって、ボールネジが構成され、モータシャフトおよび回転部は、筒状であり、回転部の少なくとも一部は、モータシャフトの内側に配置され、本体部の少なくとも一部は、回転部の内側に配置されている。
前記電磁ブレーキは、前記モータシャフト、前記回転部および前記本体部と、径方向に重なる位置に配置されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の電動アクチュエータ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る電動アクチュエータについて説明する。以下の説明においては、電動アクチュエータとして、車両の車体に取り付けられ、車両のクラッチ機構Cを切り換える電動アクチュエータ10を例示して説明する。
【0010】
以下の説明においては、
図1に示す第1中心軸J1に平行な方向(
図1の左右方向)を単に「軸方向」と呼ぶ場合があり、第1中心軸J1を中心とする径方向を単に「径方向」と呼ぶ場合があり、第1中心軸J1を中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ場合がある。また、軸方向において、出力側動力軸S2を基準として入力側動力軸S1が配置される側(
図1の左側)を「前側(軸方向一方側)」と呼ぶ場合があり、入力側動力軸S1を基準として出力側動力軸S2が配置される側(
図1の右側)を「後側(軸方向他方側)」と呼ぶ場合がある。なお、前側および後側は、電動アクチュエータ10が実際に機器に組み込まれた際の位置関係を示さない。
【0011】
図1に示すように、クラッチ機構Cは、軸方向に延びた2つの動力軸、すなわち入力側動力軸S1と出力側動力軸S2との切断と接続とを切り換える。
図1は、入力側動力軸S1と出力側動力軸S2とが切断された状態を示している。入力側動力軸S1と出力側動力軸S2とは、第1中心軸J1を中心とする。
【0012】
入力側動力軸S1は、軸方向に延びた軸本体S1aと、軸本体S1aの前側の端部に接続された筒状部S1bと、を有する。軸本体S1aは、ベアリングB1によって第1中心軸J1周りに回転可能に支持される。筒状部S1bは、前側に開口する円筒状である。筒状部S1bの内周面には、歯車部が設けられる。
【0013】
出力側動力軸S2は、軸方向に延びた軸本体S2aと、軸本体S2aから径方向に拡がる太陽ギア部S2bと、を有する。軸本体S2aの前側の端部は、筒状部S1bに保持されたベアリングB2に支持される。太陽ギア部S2bの外周面には、歯車部が設けられる。
【0014】
太陽ギア部S2bと筒状部S1bとの径方向の間には、複数の遊星ギアPGが配置される。遊星ギアPGは、太陽ギア部S2bの歯車部と筒状部S1bの歯車部との両方と噛み合う。このようにして、入力側動力軸S1と出力側動力軸S2とは、切断された状態において、ベアリングB2および遊星ギアPGを介して、互いに回転可能に接続される。
【0015】
クラッチ機構Cは、被動力伝達部C1と、連結部材C2と、を有する。被動力伝達部C1は、軸方向に移動可能に配置され、電動アクチュエータ10によって軸方向に駆動される。被動力伝達部C1は、径方向に拡がる円環板状の円板部C1aと、円板部C1aの外縁から後側に延びる筒状部C1bと、筒状部C1bの後側の端部から径方向内側に延びる突出部C1cと、を有する。円板部C1aの径方向内側には、出力側動力軸S2が通される。
【0016】
連結部材C2は、被動力伝達部C1の前側に位置する。連結部材C2は、円環板状である。連結部材C2の径方向内側には出力側動力軸S2が通される。連結部材C2は、被動力伝達部C1に対してベアリングB3,B4を介して、入力側動力軸S1および出力側動力軸S2の軸周り、すなわち第1中心軸J1周りに回転可能に接続される。
【0017】
連結部材C2は、電動アクチュエータ10の後述する出力部52から被動力伝達部C1に力が加えられた際に、被動力伝達部C1と共に軸方向に移動して2つの動力軸、すなわち入力側動力軸S1および出力側動力軸S2の両方と接触し、2つの動力軸を接続する。
【0018】
電動アクチュエータ10は、被動力伝達部C1に対して力を伝達する。電動アクチュエータ10は、モータハウジング11と、軸方向に延びたモータシャフト21を有するモータ20と、電磁ブレーキ30と、減速機構40と、回転部41と、可動部材50と、複数の球状のボール60と、を備える。
【0019】
モータハウジング11は、モータ20および電磁ブレーキ30を内部に収容する。モータハウジング11は、第1中心軸J1を中心として軸方向に延びた円筒状の筒部11aと、筒部11aの前側の端部に設けられた前側蓋部11bと、筒部11aの後側の端部に設けられた後側蓋部11cと、を有する。前側蓋部11bの中央および後側蓋部11cの中央には、それぞれ貫通孔が設けられる。
【0020】
モータ20は、筒部11aの内周面に固定される。モータ20は、ステータ24と、ロータコア22と、ロータマグネット23と、モータシャフト21と、を有する。モータシャフト21は、ステータ24の径方向内側に配置される。モータシャフト21は、筒状である。より詳細には、モータシャフト21は、第1中心軸J1を中心とし、軸方向の両端に開口する円筒状である。
【0021】
モータシャフト21の後側の端部は、後側蓋部11cの貫通孔を介して、モータハウジング11よりも後側に突出する。モータシャフト21は、前側蓋部11bの貫通孔に配置されたベアリング78と、後述する内歯ギア43に設けられたベアリング76と、によって第1中心軸J1周りに回転可能に支持される。
【0022】
モータシャフト21の後側の端部は、第1中心軸J1に対して偏心する偏心部21aである。
図2に示すように、偏心部21aの中心には、第2中心軸J2が通る。第2中心軸J2は、第1中心軸J1と平行で、かつ、第1中心軸J1と異なる軸である。
図2では、第2中心軸J2は、第1中心軸J1の上側に位置する。
【0023】
図1に示す電磁ブレーキ30は、非電通状態においてモータシャフト21の回転を制動する。電磁ブレーキ30は、モータシャフト21、回転部41および後述する本体部51と、径方向に重なる位置に配置される。電磁ブレーキ30は、第1ブレーキ部材31と、第2ブレーキ部材32と、吸着部材33と、弾性部材35と、ソレノイド34と、を有する。
【0024】
第1ブレーキ部材31は、円環状である。第1ブレーキ部材31は、内側にモータシャフト21が通され、モータシャフト21に取り付けられる。第1ブレーキ部材31は、モータシャフト21に対する周方向の回転が防止され、モータシャフト21の回転と共に第1中心軸J1周りに回転する。第1ブレーキ部材31は、モータシャフト21に対して、軸方向に移動可能に取り付けられている。
【0025】
第2ブレーキ部材32は、円環板状である。第2ブレーキ部材32は、後側蓋部11cとネジで固定される。第2ブレーキ部材32は、第1ブレーキ部材31の前側において第1ブレーキ部材31と対向する。第2ブレーキ部材32の内側には、モータシャフト21が通される。
【0026】
第1ブレーキ部材31と第2ブレーキ部材32とにおける互いに接触した際の摩擦係数は、比較的大きいことが好ましい。電磁ブレーキ30によって、モータシャフト21の回転を好適に制動できるためである。
【0027】
吸着部材33は、円環板状である。吸着部材33の内側には、モータシャフト21が通される。吸着部材33は、第1ブレーキ部材31の後側において第1ブレーキ部材31と対向する。これにより、第1ブレーキ部材31は、第2ブレーキ部材32と吸着部材33とによって、軸方向に挟まれて配置される。吸着部材33は、軸方向に移動可能に配置される。吸着部材33は、磁性体製である。
【0028】
ソレノイド34は、吸着部材33の後側においてモータシャフト21の径方向外側を囲んで配置される。ソレノイド34は、吸着部材33を励磁する。ソレノイド34は、ヨーク34aと、コイル34bと、を有する。
【0029】
ヨーク34aは、モータシャフト21の径方向外側を囲む円環状である。ヨーク34aは、後側蓋部11cの前側の面に固定される。ヨーク34aは、磁性体製である。コイル34bは、ヨーク34aの前側の面に設けられた後側に窪む凹部に配置される。コイル34bは、導線が周方向に巻かれて構成される。
【0030】
弾性部材35は、例えば、軸方向に延びる圧縮コイルバネである。弾性部材35は、ヨーク34aの前側の面に設けられた後側に窪む凹部に配置される。弾性部材35は、コイル34bよりも径方向外側に位置し、周方向に沿って複数設けられる。弾性部材35の後側の端部は、ヨーク34aに設けられた凹部の底面と接触する。弾性部材35の前側の端部は、吸着部材33の後側の面と接触する。弾性部材35は、吸着部材33に対して前側に向けて力を加える。
【0031】
コイル34bに電流が供給されると、コイル34bから生じる磁界によって、ヨーク34aおよび吸着部材33が励磁される。これにより、ヨーク34aと吸着部材33とを磁束が通る磁気回路が生じて、吸着部材33がソレノイド34に吸着される。すなわち、ソレノイド34に電流が供給された通電状態において、吸着部材33は、ソレノイド34に吸着される。このとき、ヨーク34aと吸着部材33との間の磁気回路による磁力(吸着力)は、弾性部材35によって吸着部材33に加えられる前向きの弾性力よりも大きい。
【0032】
コイル34bへの電流の供給が停止されると、ヨーク34aと吸着部材33との間の磁気回路が生じなくなり、ヨーク34aと吸着部材33との間の磁力(吸着力)が消失する。これにより、弾性部材35の前向きの弾性力によって、吸着部材33がソレノイド34から離れて前側に移動する。すなわち、ソレノイド34への電流の供給が停止された非通電状態において、吸着部材33は、ソレノイド34から前側に離れて位置する。
【0033】
吸着部材33は、弾性部材35に押されて移動することで、第1ブレーキ部材31に後側から接触し、第1ブレーキ部材31を前側に移動させる。これにより、第1ブレーキ部材31の前側の面が、第2ブレーキ部材32の後側の面に押し付けられる。すなわち、第1ブレーキ部材31は、吸着部材33を介して弾性部材35から前側に向けて力を加えられ、第2ブレーキ部材32に押し付けられる。これにより、第1ブレーキ部材31と第2ブレーキ部材32との間の摩擦力により、第1ブレーキ部材31が周方向に回転することが抑制され、モータシャフト21の周方向の回転が抑制される。このようにして、電磁ブレーキ30は、非通電状態においてモータシャフト21の回転を制動する。
【0034】
この構成によれば、ソレノイド34への電流の供給を切り換えることのみによって、電磁ブレーキ30によるモータシャフト21の制動状態を切り換えることができるため、モータシャフト21の制動操作が、簡便である。また、非通電状態でモータシャフト21の回転を制動できるため、モータ20およびソレノイド34のいずれにも電流を供給せずに、可動部材50の移動を制動することができる。したがって、電動アクチュエータ10の消費電力を低減できる。
【0035】
また、本実施形態では、第1ブレーキ部材31が軸方向に移動可能である。そのため、モータシャフト21の軸方向の位置を固定したまま、吸着部材33によって第1ブレーキ部材31を移動させて、電磁ブレーキ30によるモータシャフト21の制動状態を切り換えることができる。
【0036】
なお、
図1は、ソレノイド34への電流の供給が停止された非通電状態を示している。ソレノイド34に電流が供給されると、吸着部材33が
図1に示す位置から後側に移動して、ソレノイド34に吸着される。
【0037】
減速機構40は、モータシャフト21に連結される。より詳細には、減速機構40は、モータシャフト21の後側の端部にベアリング70を介して接続される。減速機構40は、外歯ギア42と、内歯ギア43と、接続部44と、を有する。
【0038】
外歯ギア42は、軸方向と直交する平面に拡がる略円環板状である。
図2に示すように、外歯ギア42の中心には、第2中心軸J2が通される。すなわち、外歯ギア42は、モータシャフト21の中心軸、すなわち本実施形態では第1中心軸J1に対して偏心した軸を中心とする。
【0039】
外歯ギア42の径方向外側面には、歯車部が設けられる。外歯ギア42は、
図1および
図2に示すように、ベアリング70を介してモータシャフト21に接続される。外歯ギア42は、ベアリング70の外輪に径方向外側から嵌め合わされる。これにより、ベアリング70は、モータシャフト21と外歯ギア42とを、第2中心軸J2周りに相対的に回転可能に連結する。
【0040】
外歯ギア42は、外歯ギア42を軸方向に貫通する孔42aを有する。
図2に示すように、孔42aは、複数設けられ、第2中心軸J2を中心とする周方向に沿って等間隔に配置される。
図2では、孔42aは、例えば、8つ設けられる。孔42aの軸方向に沿って視た形状は、円形状である。孔42aの内径は、後述するピン44aの外径よりも大きい。
【0041】
内歯ギア43は、外歯ギア42の径方向外側を囲んで固定され、外歯ギア42と噛み合う。
図1に示すように、内歯ギア43は、固定部43aと、内歯ギア本体43bと、を有する。
【0042】
固定部43aは、第1中心軸J1を中心として径方向に拡がる円環状である。固定部43aは、外歯ギア42の前側に配置される。固定部43aは、後側蓋部11cの後側の面に固定される。固定部43aの内側面には、ベアリング76の外輪が固定される。固定部43aは、ベアリング76を介してモータシャフト21を支持する。
【0043】
内歯ギア本体43bは、固定部43aの径方向外縁から後側に突出する。
図1および
図2に示すように、内歯ギア本体43bは、第1中心軸J1を中心とする円環状である。内歯ギア本体43bは、外歯ギア42の径方向外側を囲む。内歯ギア本体43bの内周面には、歯車部が設けられる。内歯ギア本体43bの歯車部は、外歯ギア42の歯車部と噛み合う。より詳細には、
図2に示すように、内歯ギア本体43bの歯車部は、外歯ギア42の歯車部と一部(
図2では上側部分)において噛み合う。
【0044】
図1に示すように、接続部44は、外歯ギア42の後側に配置される。接続部44は、第1中心軸J1を中心として径方向に拡がる円環板状である。接続部44は、回転部41に接続される。より詳細には、接続部44は、回転部41の後側の端部から径方向外側に拡がる。本実施形態では、接続部44と回転部41とは、単一の部材の部分である。そのため、電動アクチュエータ10の部品点数および組み立て工数を少なくできる。回転部41には、減速機構40を介してモータシャフト21の回転が伝達される。
【0045】
接続部44は、複数のピン44aを有する。ピン44aは、前側に突出する円柱状である。
図2に示すように、複数のピン44aは、周方向に沿って等間隔に配置される。
図1および
図2に示すように、複数のピン44aは、外歯ギア42に設けられた複数の孔42aにそれぞれ通される。ピン44aの外周面は、孔42aの内周面と内接する。ピン44aは、外歯ギア42を第2中心軸J2周りに揺動可能に支持する。
【0046】
モータシャフト21が第1中心軸J1周りに回転されると、偏心部21a(第2中心軸J2)は、第1中心軸J1を中心として周方向に公転する。偏心部21aの公転はベアリング70を介して外歯ギア42に伝達され、外歯ギア42は、孔42aの内周面とピン44aの外周面との内接する位置が変化しつつ、揺動する。これにより、外歯ギア42の歯車部と内歯ギア43の歯車部とが噛み合う位置が、周方向に変化する。したがって、内歯ギア43に外歯ギア42を介してモータシャフト21の回転力が伝達される。
【0047】
ここで、本実施形態では、内歯ギア43は固定されているため回転しない。そのため、内歯ギア43に伝達される回転力の反力によって、外歯ギア42が第2中心軸J2周りに回転する。このとき外歯ギア42の回転する向きは、モータシャフト21の回転する向きと反対向きとなる。外歯ギア42の第2中心軸J2周りの回転は、孔42aとピン44aとを介して、接続部44に伝達される。これにより、接続部44が第1中心軸J1周りに回転し、回転部41が第1中心軸J1周りに回転する。
【0048】
回転部41の回転は、減速機構40によって、モータシャフト21の回転に対して減速される。具体的に、本実施形態の減速機構40の構成では、モータシャフト21の回転に対する回転部41の回転の減速比Rは、R=−(N2−N1)/N2で表される。減速比Rを表す式の先頭の負符号は、モータシャフト21の回転する向きに対して、減速される回転部41の回転の向きが逆向きとなることを示している。N1は、外歯ギア42の歯数であり、N2は、内歯ギア43の歯数である。一例として、外歯ギア42の歯数N1が59で、内歯ギア43の歯数N2が60の場合、減速比Rは、−1/60となる。
【0049】
このように、本実施形態の減速機構40によれば、モータシャフト21の回転に対する回転部41の回転の減速比Rを比較的大きくできる。そのため、回転部41の回転トルクを比較的大きくでき、可動部材50の出力を大きくできる。
【0050】
回転部41は、筒状である。より詳細には、回転部41は、第1中心軸J1を中心として軸方向に延びた円筒状の中空シャフトである。回転部41の少なくとも一部は、モータシャフト21の内側に配置されている。
図1では、回転部41の後側の端部を除く全体が、モータシャフト21の内側に配置されている。
【0051】
回転部41は、軸方向両端に開口する。回転部41の後側の端部は、偏心部21aの内側面に固定されたベアリング71によって、第1中心軸J1周りに回転可能に支持される。回転部41の前側の端部は、モータシャフト21の前端における内側面に固定されたベアリング77によって、第1中心軸J1周りに回転可能に支持される。回転部41は、第1螺旋状溝41aを有する。第1螺旋状溝41aは、回転部41の内周面に位置する螺旋状の溝である。
【0052】
可動部材50は、本体部51と、出力部52と、を有する。本体部51は、軸方向に延び、軸方向両側に開口する筒状である。より詳細には、本体部51は、第1中心軸J1を中心とする円筒状である。本体部51の少なくとも一部は、回転部41の内側に配置されている。
図1では、本体部51は、本体部51の軸方向両側の端部を除いて回転部41の内側に配置されている。
【0053】
本体部51は、第2螺旋状溝51aを有する。第2螺旋状溝51aは、本体部51の外周面に位置する螺旋状の溝である。第2螺旋状溝51aは、第1螺旋状溝41aと隙間を介して径方向に対向する。第1螺旋状溝41aと第2螺旋状溝51aとの間には、複数の球状のボール60が位置する。
【0054】
第1螺旋状溝41a、第2螺旋状溝51a、および複数のボール60によって、ボールネジ90が構成される。これにより、可動部材50は、回転部41に連結され、回転部41の回転に伴って軸方向に移動する。
【0055】
回転部41と可動部材50との連結部がボールネジ90であるため、回転部41と可動部材50との間の摩擦力を小さくできる。これにより、モータ20の回転トルクを効率よく可動部材50の軸方向の駆動力に変換できる。したがって、モータ20の回転トルクが比較的小さい場合であっても、出力部52を介して被動力伝達部C1に伝達される軸方向の駆動力を十分に得ることができる。これにより、モータ20を小型化することができ、結果として電動アクチュエータ10を小型化できる。
【0056】
また、回転部41と可動部材50との間の摩擦力を小さくできるため、摩擦によって第1螺旋状溝41aと第2螺旋状溝51aとが損耗することを抑制できる。したがって、回転部41と可動部材50との連結部が損耗することを抑制でき、結果として電動アクチュエータ10の耐久性を向上できる。
【0057】
また、モータ20の回転トルクを比較的小さくできるため、モータ20の消費エネルギを低減することができる。
【0058】
ボールネジ90において複数のボール60は、第1螺旋状溝41aと第2螺旋状溝51aとが対向して構成される螺旋状の螺旋状通路90aを通る。螺旋状通路90aにおいて複数のボール60は、第1螺旋状溝41aの内側面および第2螺旋状溝51aの内側面に接触する。複数のボール60は、転がりながら螺旋状通路90aに沿って周方向に移動する。複数のボール60が転がりながら螺旋状通路90aを移動することで、回転部41の回転を可動部材50の軸方向の移動に変換できる。
【0059】
ボールネジ90は、例えば、図示しないボール循環部を有する。ボール循環部は、本体部51に設けられる。ボール循環部は、螺旋状通路90aの両端を繋ぐ通路である。螺旋状通路90aの一端へ到達したボール60は、ボール循環部内を通り、螺旋状通路90aの他端へと移動する。これにより、ボール60は、螺旋状通路90a内を循環可能である。
【0060】
なお、本明細書において、ボールネジとは、上述した構成のボールネジに限られず、いかなる公知のボールネジであってもよい。
【0061】
また、上述したように、回転部41の少なくとも一部は、モータシャフト21の内側に配置され、本体部51の少なくとも一部は、回転部41の内側に配置されている。そのため、各部の少なくとも一部を径方向に重ねて配置することで、電動アクチュエータ10の軸方向の寸法を小さくすることができ、電動アクチュエータ10をより小型化できる。
【0062】
モータシャフト21と回転部41と本体部51とは、少なくとも一部において互いに径方向に重なり合っている。そのため、電動アクチュエータ10の軸方向の寸法をより小さくすることができる。
【0063】
また、上述したように、電磁ブレーキ30は、モータシャフト21、回転部41および本体部51と、径方向に重なる位置に配置されている。そのため、モータシャフト21と回転部41と本体部51とに加えて、電磁ブレーキ30も径方向に重なり合って配置されることで、電動アクチュエータ10の軸方向の寸法をより小さくすることができる。
【0064】
また、上述したように、本体部51は、軸方向両側に開口する筒状である。そのため、本体部51の内側に、電動アクチュエータ10が搭載される機器の一部を収容することができる。これにより、電動アクチュエータ10が搭載される機器において、電動アクチュエータ10の設置領域を小さくすることができる。
【0065】
本実施形態では、本体部51の内側には、クラッチ機構Cによって切断と接続とを切り換えられる2つの動力軸の一方、すなわち
図1では出力側動力軸S2が通されている。そのため、本体部51の内側の空間を出力側動力軸S2が通る空間として有効に利用できる。これにより、車体内における電動アクチュエータ10の設置領域を小さくできる。
【0066】
出力部52は、被動力伝達部C1と接触する部分である。出力部52は、本体部51の前側の端部に接続される。すなわち、出力部52が本体部51に対して接続される側と、減速機構40がモータシャフト21に対して接続される側とは、互いに反対側である。
【0067】
出力部52は、円板部52aと、出力弾性部53と、を有する。
図1および
図3に示すように、円板部52aは、本体部51の前側の端部から径方向外側に拡がる円環板状である。円板部52aの中心には、第1中心軸J1が通る。円板部52aは、筒状部C1bの径方向内側に配置される。円板部52aの後側の面の外縁部は、突出部C1cの前側の面と軸方向に対向する。円板部52aは、前側の面から後側に窪む凹部52bを有する。
図3に示すように、凹部52bの軸方向に沿って視た形状は、円形状である。凹部52bは、周方向に沿って複数(
図3では6つ)設けられる。
【0068】
図1に示すように、出力弾性部53は、凹部52b内にそれぞれ配置される。出力弾性部53は、後側から前側に向かうに従って外径および内径が小さくなる円錐台状の筒状である。出力弾性部53の前側の端部は、凹部52bよりも前側に突出している。出力弾性部53は、円板部C1aの後側の面と軸方向に対向する。
【0069】
図1に示す状態から可動部材50が前側に移動すると、出力弾性部53は、被動力伝達部C1に後側から接触し、被動力伝達部C1を前向きに押す。これにより、被動力伝達部C1は前側に移動する。被動力伝達部C1が前側に移動すると、被動力伝達部C1に接続された連結部材C2も前側に移動する。連結部材C2は、入力側動力軸S1の筒状部S1bと出力側動力軸S2の太陽ギア部S2bとに、後側から接触する。これにより、出力部52によって、連結部材C2を介して、入力側動力軸S1と出力側動力軸S2とが接続される。
【0070】
被動力伝達部C1を前向きに押す際、出力弾性部53は、被動力伝達部C1から後向きに反力受けて、軸方向に弾性変形する。そのため、例えば、可動部材50の軸方向の移動が停止した場合であっても、出力弾性部53の弾性変形に応じた弾性力を、出力部52を介して被動力伝達部C1に加え続けることができる。本実施形態では、出力部52は、被動力伝達部C1に対して前向きの弾性力を加える。これにより、クラッチ機構Cの状態を保持することができ、入力側動力軸S1と出力側動力軸S2とを接続した状態を維持できる。
【0071】
ここで、上述したように、本実施形態によれば、モータ20および電磁ブレーキ30に電流を供給しない状態であっても、電磁ブレーキ30によってモータシャフト21の回転を制動でき、可動部材50の軸方向の移動を制動できる。したがって、モータ20および電磁ブレーキ30に電流を供給することなく可動部材50を停止させ、被動力伝達部C1に力を加え続けることができる。これにより、電動アクチュエータ10を省電力化できる。
【0072】
なお、本明細書において、「出力弾性部が軸方向に弾性変形する」とは、弾性変形した出力弾性部によって被動力伝達部C1に加えられる弾性力が軸方向成分を含むように、出力弾性部が弾性変形することを含む。
【0073】
以上の構成により、本実施形態によれば、省エネルギ、かつ、高効率的な、小型軽量の電動アクチュエータ10が得られる。
【0074】
本発明は上述の実施形態に限られず、他の構成を採用することもできる。
【0075】
減速機構40の構成は、特に限定されず、例えば、可動部材50と内歯ギア43とが単一の部材の部分として構成され、内歯ギア43が回転することで可動部材50に回転が伝達される構成であってもよい。この場合、ピン44aは、例えば、後側蓋部11cに固定される。
【0076】
また、被動力伝達部C1が、入力側動力軸S1と出力側動力軸S2とを直接接続する構成であってもよい。すなわち、被動力伝達部C1がクラッチ機構Cの少なくとも一部を構成する部分とする構成を採用できる。
【0077】
また、被動力伝達部C1は、特に限定されず、車両におけるクラッチ機構C以外の部分であってもよいし、車両以外の装置および製品等の部分であってもよい。
【0078】
上記実施形態の各構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。