特開2017-187286(P2017-187286A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-187286(P2017-187286A)
(43)【公開日】2017年10月12日
(54)【発明の名称】放射線測定装置及び放射線測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/16 20060101AFI20170919BHJP
   G01T 7/00 20060101ALI20170919BHJP
   G01T 1/29 20060101ALI20170919BHJP
   A61N 5/10 20060101ALI20170919BHJP
【FI】
   G01T1/16 B
   G01T7/00 C
   G01T1/29 C
   A61N5/10 Q
   A61N5/10 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-73909(P2016-73909)
(22)【出願日】2016年4月1日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1)刊行物名 Medical Physics,Vol.42,No.11,November 2015 発行日 2015年10月16日 発行所 American Associaton of Physicists in Medicine 該当頁 第6498頁〜第6506頁 2)刊行物名 Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 819(2016) 発行日 2016年3月2日 発行所 ELSEVIER 該当頁 第6頁〜第13頁
(71)【出願人】
【識別番号】596146108
【氏名又は名称】山本 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】110000822
【氏名又は名称】特許業務法人グローバル知財
(72)【発明者】
【氏名】山本 誠一
(72)【発明者】
【氏名】歳藤 利行
(72)【発明者】
【氏名】小森 雅孝
【テーマコード(参考)】
2G188
4C082
【Fターム(参考)】
2G188AA01
2G188BB02
2G188BB04
2G188BB05
2G188BB06
2G188BB19
2G188CC39
2G188DD28
4C082AC05
4C082AE01
4C082AG09
4C082AP03
4C082AT10
4C082ML06
(57)【要約】
【課題】短時間で、放射線検出、精度の良い線量分布や放射能濃度分布の測定と飛程の評価を行うことができる放射線測定装置および測定方法を提供する。
【解決手段】本放射線測定装置は、液体あるいは固体よりなるファントムと、ファントムに対して放射線照射された際に発せられる微弱光を画像化する光センサを備える。更に、センシングした微弱光を画像化する画像処理手段を備える。ファントムは、透明な容器に水などが封入されたものである。また、放射線測定装置は、ファントムと光センサとを覆うハウジングを更に備え、ハウジングが外側周囲の光を遮光する材料から成る。光センサに用いられるレンズは、視差誤差を補正する手段を有することでもよい。画像処理手段は、上記の放射線照射に同期して、光センサからセンシングデータを収集することでもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体あるいは固体よりなるファントムと、
前記ファントムに対して放射線照射された際に発せられる微弱光をセンシングする光センサと、を備え、
微弱光の光量を用いて放射線を検出することを特徴とする放射線測定装置。
【請求項2】
センシングした微弱光を画像化して放射能濃度分布を可視化する画像処理手段を、
更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の放射線測定装置。
【請求項3】
前記ファントムは、透明な容器に液体が封入されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線測定装置。
【請求項4】
前記ファントムと前記光センサとを覆うハウジングを更に備え、
前記ハウジングが外側周囲の光を遮光する材料から成ることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の放射線測定装置。
【請求項5】
前記光センサに用いられるレンズは、視差誤差を補正する手段を有することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の放射線測定装置。
【請求項6】
前記画像処理手段は、上記の放射線照射に同期して、前記光センサからセンシングデータを収集することを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の放射線測定装置。
【請求項7】
前記ファントムと前記光センサの何れか或は両方を回転させる回転手段が更に設けられたことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の放射線測定装置。
【請求項8】
液体あるいは固体よりなるファントムに対して放射線を照射し、前記ファントムに対して放射線照射された際に発せられる微弱光を光センサでセンシングし、センシングした微弱光の光量を用いて放射線を検出することを特徴とする放射線測定方法。
【請求項9】
更に、センシングした微弱光を画像処理手段で画像化して放射能濃度分布を可視化することを特徴とする請求項8に記載の放射線測定方法。
【請求項10】
前記ファントムは、透明な容器に液体が封入されたものであることを特徴とする請求項8又は9に記載の放射線測定方法。
【請求項11】
外側周囲の光を遮光する材料で構成されるハウジングを用いて、前記ファントムと前記光センサとを覆うことを特徴とする請求項8〜10の何れかに記載の放射線測定方法。
【請求項12】
前記光センサに用いられるレンズは、視差誤差を補正できることを特徴とする請求項8〜11の何れかに記載の放射線測定方法。
【請求項13】
前記画像処理手段は、上記の放射線照射に同期して、前記光センサからセンシングデータを収集することを特徴とする請求項8〜12の何れかに記載の放射線測定方法。
【請求項14】
前記ファントムと前記光センサの何れか或は両方を回転させることを特徴とする請求項8〜13の何れかに記載の放射線測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線測定に関し、特に粒子線治療装置の放射線測定装置及び放射線測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
陽子線や炭素線などの粒子線治療は、陽子線が選択的に高線量を腫瘍に与えることが可能なため注目を集めている。
粒子線治療においては,陽子線が目的とする部位に的確に照射されていることを確認するために、治療装置の精度管理が日常的に行われている。治療装置の精度管理のためには、電離箱型線量計を、水を満たした容器中で機械的に動かし、陽子線の線量分布や飛程(荷電粒子が物質に入射して止るまでに走る距離)を求めている(例えば、特許文献1を参照。)。
しかしながら、電離箱型線量計は、本来的に、放射線の位置情報を得ることが困難である。また、電離箱型線量計を機械的に動かすので、測定に時間がかかり、測定中は患者の治療に粒子線を利用できないため、粒子線治療施設の治療効率を引き下げるという問題点があった。
【0003】
このような状況下において従来から、電離箱が複数積層された放射線計測装置が知られている(例えば、特許文献2を参照。)。特許文献2に開示された装置、すなわち、電離箱が複数積層された線量測定装置では、粒子線を照射することで1次元の線量分布を測定することが可能であり、飛程の評価に使用することができる。
【0004】
しかし、かかる線量評価装置は1次元の線量分布しか得られない上、材質が水ではないため得られたデータには補正が必要であり、また価格が極めて高価であるという問題点がある。また、2次元のデータを得るために電離箱が平面状に配置された線量計において、深部線量分布を得るには、電離箱の位置を機械的に移動させる必要があり、効率が悪い上、極めて高価であるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−64530号公報
【特許文献2】特開2011−153833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のような電離箱型線量計を機械的に動かして線量を測定する方法は、測定に時間を要し、粒子線治療装置の治療に使用できる時間を短くするという問題点があった。
かかる状況に鑑みて、本発明は、短時間で、放射線の検出、精度の良い線量分布や放射能濃度分布の測定と飛程の評価を行うことができる放射線測定装置および放射線測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、粒子線を水に照射した際に微弱光が発生する現象を発見し、この原理を用いて、粒子線照射中の水の画像化を試みたところ、水の発する微弱光を明瞭に画像化することの知見を得た。得られた発光画像は、明瞭なブラッグピークを有し、また高精度で飛程を計測することもでき、線量測定に使えることが実験の結果明らかとなった。なお、かかる発光は、放射線照射により水中に発生するフリーラジカル(不対電子をもつ原子または分子)に起因するものである。ここで、ブラッグピークとは、放射線が物質にエネルギーを与えて遅くなっていき、一定の深さで止まる直前で発生する線量のピークをいう。
【0008】
すなわち、上記課題を解決すべく、本発明の放射線測定装置は、液体あるいは固体よりなるファントムと、ファントムに対して放射線照射された際に発せられる微弱光をセンシングする光センサとを備え、微弱光の光量を用いて放射線を検出する。
かかる構成により、電離箱型線量計を機械的に動かして線量を測定する装置とは異なり、短時間で、放射線の検出、精度の良い放射線量分布や放射能濃度分布の測定と飛程の評価を行うことが可能となる。
また、本発明の放射線測定装置において、センシングした微弱光を画像化して放射能濃度分布を可視化する画像処理手段を、更に備えたことが好ましい。簡便な装置で、放射能濃度分布を可視化することができる。
ファントムに用いられる液体あるいは固体は、例えば、水が挙げられるが、放射線照射による発光度合いは、不純物に起因せず、純水と水道水とで変化は無い。
また、微弱光を計測する光センサとしては、CCDカメラが好適に用いられ、CCDカメラは信号雑音比(S/N)の良い画像を得るために冷却タイプが好適に用いられる。
【0009】
本発明の放射線測定装置において、ファントムは、透明な容器に液体が封入されたものであることが好ましい。透明な容器が用いられることにより、光センサによるセンシング及び画像処理手段による画像化が行いやすくなる。
【0010】
本発明の放射線測定装置は、ファントムと光センサとを覆うハウジングを更に備え、ハウジングが外側周囲の光を遮光する材料から成ることが好ましい。ファントムに対して放射線照射された際に発せられる光は微弱光であるところ、ハウジングが設けられることにより、外部からの光を遮光することができ、明瞭な画像が得られやすくなる。
【0011】
本発明の放射線測定装置において、光センサに用いられるレンズは、視差誤差を補正する手段を有することでもよい。すなわち、レンズに標準的なものを使用した場合、視差誤差によりカメラからファントムまでの距離、あるいはファントム内での発光点までの距離によって画像の大きさが異なる問題点が生じることがある。そこで、この問題点を解決するために、視差誤差を補正する手段を設ける。視差誤差を補正する手段としては、視差誤差を補正可能なレンズであるテレセントリックレンズが好適に用いられる。
【0012】
本発明の放射線測定装置は、上記の放射線照射に同期して、光センサがセンシングデータを収集することでもよい。粒子線照射装置は通常、粒子線が照射している期間とされていない期間が短時間で繰り返されて、照射が行なわれている。照射していない時間は発光が生じないので、粒子線照射装置と光センサの収集を同期させて、照射中のみデータを収集することも可能である。この場合、バックグランドノイズの少ない画像を得ることが可能となる。
【0013】
本発明の放射線測定装置は、ファントムと光センサの何れか、或は、両方を回転させる回転手段が更に設けられたことでもよい。ファントムと光センサの何れか、或は、両方を回転させる回転手段が設けられることで、例えば、ファントムを中心に光センサを回転させながらデータを収集して、ファントムの発光の断層画像を作成することも可能である。この場合、光センサを複数台用いて測定時間を短縮することも可能である。
【0014】
本発明の放射線測定方法は、液体あるいは固体よりなるファントムに対して放射線を照射し、ファントムに対して放射線照射された際に発せられる微弱光を光センサでセンシングし、センシングした微弱光の光量を用いて放射線を検出する。
また、本発明の放射線測定方法において、更に、センシングした微弱光を画像処理手段で画像化して放射能濃度分布を可視化することが好ましい。線量分布や放射能濃度分布の測定と飛程の評価を行うことができる。
【0015】
本発明の放射線測定方法において、ファントムは、透明な容器に液体が封入されたものであることが好ましく、また、外側周囲の光を遮光する材料で構成されるハウジングを用いて、ファントムと光センサとを覆うことが好ましい。また、光センサに用いられるレンズは、視差誤差を補正できることでもよい。また、放射線照射に同期して、光センサがセンシングデータを収集することでもよい。さらに、ファントムと光センサの何れか、或は、両方を回転させることでもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の放射線測定装置および測定方法によれば、短時間で、精度の良い線量分布の測定と飛程の評価を行うことが可能になるといった効果がある。
また、粒子線治療装置の線量分布と飛程に関する情報が容易に得られることから、日常的な線量評価や装置の精度管理の効率を著しく向上させることが可能となるといった効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】放射線測定装置の機能ブロック図
図2】放射線測定装置によって撮像された陽子線の微弱光画像、(1)は光学画像、(2)は発光画像、(3)は光学画像と発光画像の融合画像を示している。
図3】発光画像の縦方向の輝度分布図
図4】放射線測定方法のフロー図
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しながら詳細に説明していく。なお、本発明の範囲は、以下の実施例や図示例に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。
【実施例1】
【0019】
図1は、放射線測定装置の機能ブロック図の一例を示している。
図1に示すように、放射線測定装置1は、ファントム2、CCDカメラ3、PC4およびハウジング5から成る。
内部に水7が満たされた透明なアクリル樹脂から成る容器のファントム2を用意する。ここで、水7から発せられる微弱光は不純物に起因するものではないので、水7は、純水および水道水のいずれでもよい。
CCDカメラ3は、信号雑音比(S/N)の良い画像を得るために冷却タイプのCCDカメラを用いた。CCDカメラ3には、レンズ3aが設けられており、また、CCDカメラ3には、図示しないが、粒子線照射時にファントム2から発せられる微弱光をセンシングする光センサが内蔵されている。
ファントム2に満たした水7に、粒子線照射装置6を用いて粒子線を照射すると、照射している間だけ微弱光が発生する。水7から発せられる微弱光をCCDカメラ3で撮像し、光センサにより得られたセンシングデータから、PC4により画像化を行い、線量分布や粒子線の飛程を求めることが可能である。CCDカメラ3とPC4はケーブル8で接続されているが、接続方法は、有線だけではなく無線によるものでもよい。
【0020】
粒子線が照射された際に水7から発せられる光は、微弱なものであるため、CCDカメラ3とファントム2は、黒色の布から成るハウジング5で遮光して測定しているが、部屋全体の照明を十分に暗くすれば、ハウジング5のような遮光部品が設けられなくても、測定することは可能である。
【0021】
図2は、放射線測定装置1によって撮像された陽子線の微弱光画像であり、(1)は光学画像、(2)は発光画像、(3)は光学画像と発光画像の融合画像を示している。
図2(1)は、水を満たしたファントムにつき、外部の光を入れて測定した画像であり、画像サイズの絶対値を求めるために用いる。ただし、この画像は必須ではない。図2(2)は、陽子線を1分間照射したときの発光を画像化したものである。図2(3)は、位置の確認のために光学画像と粒子線照射時の発光画像を重ね合わせた画像である。
【0022】
図3は、発光画像の縦方向の輝度分布図を示している。図3において、実線は水を用いた場合のデータを示し、点線は電離箱を用いた場合のデータを示している。図3に示すように、電離箱を用いた場合においては、70〜75mmの深さにおいてブラッグピークが確認でき、75〜80mmの深さにおいて飛程が確認できる。一方、水を用いた場合の発光画像の縦方向の輝度分布においても、70〜75mmの深さにおいてブラッグピークが確認でき、75〜80mmの深さにおいて飛程が確認できる。また、ブラッグピークや飛程に限らず、グラフ全体の形状も、ほぼ等しいことが確認できる。したがって、粒子線の発光画像から線量及び飛程を精度良く測定することが可能であるといえる。
【0023】
図4は、本発明の放射線測定方法のフローの一例を示している。放射線測定方法は、ファントムに対して放射線を照射し(S01)、ファントムから発せられる微弱光を光センサでセンシングする(S02)。センシングした微弱光をPCで画像化する(S03)。
【0024】
(その他の実施例)
(1)レンズに標準的なものを使用した場合、視差誤差によりカメラからファントムまでの距離、あるいはファントム内での発光点までの距離によって画像の大きさが異なる問題点が生じることがある。そこで、視差誤差を補正可能なレンズであるテレセントリックレンズを用いることも可能である。
(2)粒子線照射装置は通常、粒子線が照射している期間とされていない期間が短時間で繰り返されて照射が行なわれている。照射していない時間は発光が生じないので、粒子線照射装置と光センサを同期させて、照射中のみデータを収集することも可能である。この場合、バックグランドノイズの少ない画像を得ることが可能となる。
(3)カメラ、あるいはファントムとカメラを回転する機構を設け、ファントムを中心に回転させながらデータを収集することで、ファントムの発光の断層画像を作成することも可能である。この場合、カメラは複数台用いて測定時間を短縮することも可能である。
(4)粒子線に限らず、水の微弱光の発光は、他の放射線、例えばX線、ガンマ線、アルファ線、電子線などでも生じるため、X線、ガンマ線、アルファ線、電子線、その他の放射線照射装置を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、放射線測定、特に粒子線治療装置の放射線測定に有用である。
【符号の説明】
【0026】
1 放射線測定装置
2 ファントム
3 CCDカメラ
3a レンズ
4 PC
5 ハウジング
6 粒子線照射装置
6a 粒子線
7 水
8 ケーブル
図1
図2
図3
図4