(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-187460(P2017-187460A)
(43)【公開日】2017年10月12日
(54)【発明の名称】検査情報データの提供方法および判定基準値の適否判定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 30/86 20060101AFI20170919BHJP
G01N 27/62 20060101ALI20170919BHJP
G01N 30/72 20060101ALI20170919BHJP
【FI】
G01N30/86 G
G01N27/62 V
G01N27/62 D
G01N30/72 A
G01N30/72 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
【全頁数】3
(21)【出願番号】特願2016-87458(P2016-87458)
(22)【出願日】2016年4月8日
(71)【出願人】
【識別番号】515145700
【氏名又は名称】サイエンスソフトウェア株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中島 晋也
【テーマコード(参考)】
2G041
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041LA07
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、残留農薬等の検査結果を残留農薬等のポジティブリスト制での基準値を用いて合否判定する場合に必要な、代謝物等の合算、適切な値の選択、名前の変更を操作者が操作をしなくても、ソフトウェアとデータベースを用いて正しい検査結果を提示することである。
【解決手段】特徴的なコード体制の農薬基準値データベース、名前変換データベース、処理ソフトウェアを用いることで、本課題を解決する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
農薬本体およびその代謝物について、検査結果を合計するかによって適切なコード体系を用いたデータベース
【請求項2】
GC/MS、LC/MSの両方の検査機器で同一農薬について検査結果を得た場合に、各農薬の検出限界値を用いて、適切な検査結果を選択する手法
【請求項3】
多数の農薬等の基準を個別に更新しなくても、作物分類ごとに更新できる手法
【請求項4】
GC/MS、LC/MSの検査機器から出力される農薬名とポジティブリスト制での農薬名が異なっても、適切に紐付けおよび名前変更できる手法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、食品等に残留している農薬等の検査において、検査情報データの計算方法および、基準値との適合判定に関する。
【背景技術】
【0002】
農薬等が一定量を超えて残留している食品について、販売等を原則禁止とするポジティブリスト制では、800種類以上の農薬等、1000種類以上の作物分類について、それぞれ基準値が設定されている。
【0003】
農薬等は使用時に植物体内に入り代謝分解したりすることから、基準値判定の合否で、農薬(本体)およびその代謝物の合計値を基準値と比較して合否判定をおこなう場合(例えば:ジンカバとその代謝物の3,6‐ジクロロ‐2‐ヒドロキシ安息香酸)。逆に、シフルメトフェンの様にその代謝物(α,α,α‐トリフルオロ‐o‐トルイル酸)の急性毒性が高くないことから、農薬(本体)の値を基準値と比較して合否判定をおこなう場合があり、農薬に関する知識が要求される。
【0004】
これらの基準値は、食品衛生法に基づき、適宜更新されることから、常に最新の基準値との比較が必要とされる。
【0005】
農薬等の試験には、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)や液体クロマトグラフ質量分析計(LC/MS)が使用される。農薬等の種類によって、GC/MSあるいはLC/MSの何れかで検査するもの、あるいは両方で検査可能な農薬がある。GC/MS、LC/MSの両方で検査をおこなった場合は、検査結果が2つ得られるがどちらか適切な検査結果を選択して、基準値と比較して合否判定をおこなう必要がある。
【0006】
GC/MS、LC/MSに使用されている制御・解析用ソフトウェアでは、一部には言語が英語しか入力できない物、長い文字数が入らないもの、特殊記号が入力できない物などがあり、ポジティブリスト制で定められた農薬名と一致しない略号を使用せざる得ず、GC/MS、LC/MSの検査機器から出力された農薬名とポジティブリスト制で定められた農薬名の一致を個別に判断する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
農薬本体とその代謝物について、基準値と比較する場合に、農薬本体とその代謝物の検査結果の合計を用いるか、農薬本体の検査結果を用いるかをソフトウェアであらかじめ定義しておき、正しい検査結果を提供すること。
【0008】
GC/MSとLC/MSの何れの検査結果を用いるかを、ソフトウェアを用いて自動的に判定し、正しい検査結果を提供すること。
【0009】
更新された基準値を取込、常に最新の基準値を使用して合否判定すること。
【0010】
GC/MS、LC/MSから出力される農薬名とポジティブリスト制で定められた農薬名をソフトウェアを用いて一致させること。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上の課題を解決するために、第一発明は、農薬基準値を保持するデータベースでの農薬および代謝物に付与するコード体系を特徴とし、農薬本体およびその代謝物の検査結果の合計値を持って合否判定する場合には、代謝物に農薬本体と関連するコードの枝番などを付与しておき、ソフトウェアで枝番などがある場合には検査結果を合計し、枝番が無い場合には、農薬本体のみの検査結果を自動的に提供することを特徴とする。
第二発明は、GC/MSとLC/MSの両方で検査結果が得られた場合に、両方の結果が不検出の場合には、あらかじめデータベースに各装置、各農薬に検出下限を設定しておき、検出下限の低い方をソフトウェアで採用する、またGC/MSあるいはLC/MSの何れかで検出された場合には、検出値のある方を自動的に採用することを特徴とする。
第三の発明は、800種類以上の農薬等、1000種類以上の作物分類の農薬基準値を個別に更新するのではなく、作物毎に基準値を全て削除した上で、新しい基準値を再度データベースに書き込むことを特徴とする。
第四発明は、GC/MS、LC/MSで用いている農薬名とポジティブリスト制の農薬名の変換テーブルを作成しておき、ソフトウェアを用いて自動的に名前を変換することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
農薬単体か農薬とその代謝物の合計での検査結果を提示するかをソフトウェアが自動的に判断することで、800種類以上の農薬について個別に操作者が知らなくても、正しい検査結果を提示できる。
第二発明により、操作者が選択すること無く、GC/MS、LC/MSの適切な検査結果が自動的に選択できる。
第三発明により、800種類以上の農薬等、1000種類の作物分類での基準値を個別に更新する必要がなくなる。
第四発明により、800種類以上の農薬について、GC/MS、LC/MSでの名称とポジティブリスト制での名称を操作者が付き合わせる必要がなくなる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明の実施形態としては、次から構成される。
1.基準値データベース(農薬名、基準値、検出下限)を有する。
2.名前変換データベース(GC/MS,LC/MSでの名称、ポジティブリストでの名称)を有する。
3.1および2のデータベースを使用して、GC/MS、LC/MSから適切な検査結果を選択し、ポジティブリストでの農薬名に変更し、必要であれば代謝物を合算し、基準値での合否判定を行うソフトウェア。
【0014】
この実施形態によれば、操作者は多数の農薬、多数の作物分類を扱うこと無く、データベースに登録された情報を利用して3.のソフトウェアが自動的に正しい検査結果とそれにより基準値の合否判定が正確におこなわれる。