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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-187716(P2017-187716A)
(43)【公開日】2017年10月12日
(54)【発明の名称】望遠鏡システム
(51)【国際特許分類】
   G02B 23/00 20060101AFI20170919BHJP
【FI】
   G02B23/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-78208(P2016-78208)
(22)【出願日】2016年4月8日
(71)【出願人】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100158469
【弁理士】
【氏名又は名称】大浦 博司
(72)【発明者】
【氏名】前田 良知
(72)【発明者】
【氏名】石田 学
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 亮
(72)【発明者】
【氏名】林 多佳由
【テーマコード(参考)】
2H039
【Fターム(参考)】
2H039AA02
2H039AB02
(57)【要約】
【課題】従来よりも感度よくOff−Axis成分の光を観測できる望遠鏡システムを提供すること。
【解決手段】観測対象電磁波に対する通過許容領域と、観測対象電磁波に対する通過阻止領域とを有する部材を複数備えた選択的遮蔽ユニットを望遠鏡の前段に配置する。当該ユニットにおいては、上記複数の部材の通過許容領域が少なくとも一部互いにずれるよう、複数の部材が層状に、且つ間隔を空けて配置されており、少なくとも選択的遮蔽ユニットの代表面に垂直な方向から入射した観測対象電磁波は、複数の部材の協働により阻止される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
観測対象電磁波に対する通過許容領域と、該観測対象電磁波に対する通過阻止領域とを有する部材を複数備えた選択的遮蔽ユニットであって、
前記複数の部材の通過許容領域が少なくとも一部互いにずれるよう、該複数の部材を層状に、且つ間隔を空けて配置することにより、少なくとも前記選択的遮蔽ユニットの代表面に垂直な方向から入射した観測対象電磁波の通過を、該複数の部材が協働して阻止するよう構成された、選択的遮蔽ユニット
を、望遠鏡における観測対象電磁波入射面よりも前段に配置したことを特徴とする、望遠鏡システム。
【請求項2】
前記通過許容領域と前記通過阻止領域とが、前記部材上でそれぞれ放射状に形成されている、請求項1に記載の望遠鏡システム。
【請求項3】
前記通過許容領域と前記通過阻止領域とが、前記部材上でそれぞれ同心円状に形成されている、請求項1に記載の望遠鏡システム。
【請求項4】
前記通過許容領域と前記通過阻止領域とが、前記部材上でそれぞれ平行なパターンとして形成されている、請求項1に記載の望遠鏡システム。
【請求項5】
前記望遠鏡が、その焦点面とは異なる面で前記観測対象電磁波を検出するよう構成された、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の望遠鏡システム。
【請求項6】
前記複数の部材間の間隔が変更可能である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の望遠鏡システム。
【請求項7】
前記選択的遮蔽ユニットは、前記複数の部材としてn個(nは2以上の整数)の部材を備え、
各々の部材の代表面において通過許容領域が占める割合は概ね(n−1)/nである、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の望遠鏡システム。
【請求項8】
前記望遠鏡は、同心円状、且つ層状に配置された複数の反射鏡を備えたX線望遠鏡として構成される、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の望遠鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線望遠鏡等の望遠鏡を用いて観測する際に特定の軸方向からの光を遮断して観測することを可能とする望遠鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、過度に明るい放射体の周囲にあるコロナ等を観測するべく、放射体主表面からの直接的な光を遮断したり消したりすることが必要とされ、この目的のためにコロナグラフが用いられてきた。図1に、従来のコロナグラフを備えた望遠鏡システムの構成概略図を示す。放射体と観察者との間(図1の例では望遠鏡の焦点)に遮蔽部材が配置されており、これにより、主表面からの直接的な光を消した上で周辺部からの光を観察することができる。
【0003】
従来のコロナグラフにおいては、望遠鏡の集光面に遮蔽物を配置し、ある一定量の光を遮蔽する等していたが、この場合には集光性能より小さな構造も同時に遮蔽しなければならないという問題があった。すなわち、離角の小さなOff−Axis(軸外)成分の集光が難しかった。また、集光鏡からの散乱(正反射以外の反射、散乱)が不可避であり、それら散乱光は集光面に大きく広がって集光されるが、X線のように波長の短い波長域では、このような散乱光成分を遮断することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−157198号公報
【特許文献2】特表2006−527387号公報
【特許文献3】特表2015−516906号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Hayashi, et al. “Upgrade of the 30-m x-ray pencil beam line at the institute of space and astronautical science,” Journal of Astronomical Telescopes, Instruments, and Systems 1(4), 044004 (2015)
【非特許文献2】Mori et al. 2005 PASJ 57 pp. 245-257
【非特許文献3】Yang Soong et al. ”ASTRO-H Soft X-ray Telescope (SXT)”, Proc. of SPIE Vol. 9144 914428 1-14
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上に鑑み、本発明は、従来よりも感度よくOff−Axis成分の光を観測できる望遠鏡システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、観測対象電磁波に対する通過許容領域と、観測対象電磁波に対する通過阻止領域とを有する部材を複数備えた選択的遮蔽ユニットであって、複数の部材の通過許容領域が少なくとも一部互いにずれるよう、複数の部材を層状に、且つ間隔を空けて配置することにより、少なくとも選択的遮蔽ユニットの代表面に垂直な方向から入射した観測対象電磁波の通過を、複数の部材が協働して阻止するよう構成された、選択的遮蔽ユニットを、望遠鏡における観測対象電磁波入射面よりも前段に配置したことを特徴とする、望遠鏡システムを提供する。一例としては、少なくとも無限遠に位置する放射体(天体)から入射する代表面垂直入射成分が、上記複数の部材の協働により阻止される。有限距離に位置する放射体からの入射であっても、任意の構成として、例えば通過許容領域を通過阻止領域よりも小さくしたり、複数の部材間の距離を小さくしたりする等して、代表面に対して傾斜した角度からの入射も協働により阻止することが可能であり、これらは放射体から見て、望遠鏡入射面が複数の部材により遮蔽されるような配置に対応する。
【0008】
上記望遠鏡システムにおいては、選択的遮蔽ユニットを、従来とは異なり望遠鏡の観測対象電磁波入射面よりも前段(観測対象の天体等と、望遠鏡における観測対象電磁波入射面との間)に配置することにより、望遠鏡の解像度、角度分解能に影響を受けない遮蔽機能を実現する。また、複数の部材の通過許容領域が少なくとも一部互いにずれるよう、上記複数の部材を層状に、且つ間隔を空けて配置することにより、特定の軸方向からの観測対象電磁波を遮断しつつ、Off−Axis成分を高感度で観測できる。光赤外波長域では、コロナグラフの開発は精力的に行われているが、従来のコロナグラフは専ら望遠鏡の焦点か、それよりも下流域にレンズや遮蔽構造を導入したものである。本発明が教示するような前段型のものは提案されていない。
【0009】
一例において、上記部材における通過許容領域と通過阻止領域とは、当該部材上でそれぞれ放射状に形成されている。ただし各領域の形状は任意であり、これらを同心円状に形成したり、平行なパターンとして形成したりしてもよい。
【0010】
上記望遠鏡は、その焦点面とは異なる面で観測対象電磁波を検出するよう構成されていてもよい。本発明の望遠鏡システムにおいては、望遠鏡と独立した機構により特定方向からの不要な電磁波成分を遮断できるため、焦点面以外の、さまざまな方向成分の電磁波が混在する面において検出を行ったとしても、上記不要な電磁波成分は既に除去されている。
【0011】
上記複数の部材間の間隔が変更可能となるよう、本発明の望遠鏡システムを構成することができる。後述の実施例で示すとおり、部材間の間隔を大きくすることにより、より小さな入射角で入射する電磁波を検出することが可能となるし、逆に部材間の間隔を小さくすれば、上記代表面に対して傾斜した角度からの入射(有限距離の放射体からの入射)も効果的に阻止することが可能である。
【0012】
選択的遮蔽ユニットは、複数の部材として一般にn個(nは2以上の整数)の部材を備えることができ、各々の部材の代表面において通過許容領域が占める割合は、概ね(n−1)/nとすることができる。そのような構成をとることにより、特定方向からの不要な電磁波成分を遮断しつつ、大きな有効面積を確保することが可能となる。
【0013】
上記望遠鏡は、同心円状、且つ層状に配置された複数の反射鏡を備えたX線望遠鏡として構成することができるが、これ以外にも、赤外波長域用の望遠鏡等、任意の望遠鏡を用いて本発明の望遠鏡システムを構成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、望遠鏡の性能に左右されない選択的遮蔽機能を備えたコロナグラフが実現可能となる。垂直(光軸)方向からの入射光を遮断しつつOff−Axis電磁波成分のみを集光することでOff−Axis成分を高感度で観測できるため、明るいコンパクトな天体の周りに広がった天体のX線やγ(ガンマ)線等による分光、偏光観測能力が大幅に向上すると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】従来のコロナグラフを備えた望遠鏡システムの構成概略図。
図2】本発明の一実施形態において選択的遮蔽ユニットが取り付けられるX線望遠鏡の構成概略図。
図3】本発明者らが開発したX線望遠鏡(ASTRO−H SXT−1)の外観写真(非特許文献3のFig.6より引用)。
図4図2のX線望遠鏡に選択的遮蔽ユニットを取り付けたX線望遠鏡システムの構成概略図。
図5a】選択的遮蔽ユニットに含まれる第1スリット部材6の一例を、図4の矢印Aの方向から見たときの構成概略図。
図5b】選択的遮蔽ユニットに含まれる第2スリット部材7の一例を、図4の矢印Aの方向から見たときの構成概略図。
図6a】選択的遮蔽ユニットに含まれる第1スリット部材6の別の一例を、図4の矢印Aの方向から見たときの構成概略図。
図6b】選択的遮蔽ユニットに含まれる第2スリット部材7の別の一例を、図4の矢印Aの方向から見たときの構成概略図。
図7a】選択的遮蔽ユニットに含まれる第1スリット部材6の更に別の一例を、図4の矢印Aの方向から見たときの構成概略図。
図7b】選択的遮蔽ユニットに含まれる第2スリット部材7の更に別の一例を、図4の矢印Aの方向から見たときの構成概略図。
図8a】選択的遮蔽ユニットの代表面に垂直な方向から入射したX線が第1,第2スリット部材6,7によって通過を阻止される様子を示した概念図。
図8b】選択的遮蔽ユニットの代表面に対して傾斜した方向から入射したX線の一部が、第1,第2スリット部材6,7を通過する様子を示した概念図。
図9】非特許文献3に記載されているASTRO−H衛星搭載のSXT望遠鏡を微調整した上で選択的遮蔽ユニットを取り付けてなるX線望遠鏡システムについて、入射角を変えつつX線を観測した時の有効面積を計算機シミュレーションで算出し、選択的遮蔽ユニットがない場合と比較した結果を示すグラフ(スリット部材2つの構成)。
図10図4のX線望遠鏡システムに対し、各スリット部材間の間隔を変更するための制御回路を取り付けたときの構成概略図。
図11a】スリット部材間の間隔が小さい時に、選択的遮蔽ユニットを通過するOff−Axis成分を示した概念図。
図11b】スリット部材間の間隔が大きい時に、選択的遮蔽ユニットを通過するOff−Axis成分を示した概念図。
図12】屈折方式の望遠鏡に選択的遮蔽ユニットを取り付けた、本発明の別の実施形態である望遠鏡システムの構成概略図。
図13a】スリット部材を3つ含む選択的遮蔽ユニットについて、第1スリット部材6の一例を、図4の矢印Aの方向から見たときの構成概略図。
図13b】スリット部材を3つ含む選択的遮蔽ユニットについて、第2スリット部材7の一例を、図4の矢印Aの方向から見たときの構成概略図。
図13c】スリット部材を3つ含む選択的遮蔽ユニットについて、第3スリット部材8の一例を、図4の矢印Aの方向から見たときの構成概略図。
図14】選択的遮蔽ユニットの代表面に垂直な方向から入射したX線が第1,第2,第3スリット部材6,7,8によって通過を阻止される様子、及び、選択的遮蔽ユニットの代表面に対して傾斜した方向から入射したX線の一部が、第1,第2,第3スリット部材6,7,8を通過する様子を示した概念図。
図15】非特許文献3に記載されているASTRO−H衛星搭載のSXT望遠鏡を微調整した上で選択的遮蔽ユニットを取り付けてなるX線望遠鏡システムについて、入射角を変えつつX線を観測した時の有効面積を計算機シミュレーションで算出し、選択的遮蔽ユニットがない場合と比較した結果を示すグラフ(スリット部材3つの構成)。
図16】非特許文献3に記載されているASTRO−H衛星搭載のSXT望遠鏡を微調整した上で選択的遮蔽ユニットを取り付けてなるX線望遠鏡システムについて、入射角を変えつつX線を観測した時の有効面積を計算機シミュレーションで算出し、選択的遮蔽ユニットがない場合と比較した結果を示すグラフ(スリット部材4つの構成)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
これより図面を用いて、本発明に係る望遠鏡システムを説明する。但し、本発明に係る望遠鏡システムの構成は、各図面にて示される特定の具体的構成へと限定されるわけではなく、本発明の範囲内で適宜変更可能である。例えば、以下においては放射源が無限遠に位置し、且つ選択的遮蔽ユニットに含まれる部材がスリット部材であるとして説明するが、部材中の通過許容領域がスリットである必要はなく、観測対象電磁波に対して透過性を有する任意の素材によって充填されていてもよい。観測対象電磁波も、X線に限らず任意の波長域の電磁波であってよい。なお、別個の実施例に対応する図面においても、同様の要素は同様の参照符号で示す。
【実施例1】
【0017】
図2に、本発明の一実施形態において選択的遮蔽ユニットが取り付けられるX線望遠鏡の構成概略図を示す。X線望遠鏡1は、ハウジング4内に複数の反射鏡2a−1〜2a−3,2b−1〜2b−3を有し、また焦点面で像を検出するための検出器3を備えている。反射鏡2a−1〜2a−3,2b−1〜2b−3は、それぞれ円錐の部分的側面(円錐を、その底面から頂点までの高さ方向について途中で切断し、底面側に残った立体の側面)の形状を有しており、X線望遠鏡1の入射面(図2中、点線で示す)に垂直な方向から見た時に同心円状となるよう配置されている。また、反射鏡2a−1〜2a−3は層状に(入れ子上に)配置されており、反射鏡2b−1〜2b−3も層状に(入れ子上に)配置されている。
【0018】
X線望遠鏡1の入射面から入射して反射鏡2a−1で反射されたX線は、反射鏡2b−1で再度反射されて焦点面へと導かれる。同様に、反射鏡2a−2,2a−3で反射されたX線も、それぞれ反射鏡2b−2,2b−3で再度反射されて焦点面へと導かれる。焦点面ではこれら2回反射されたX線によって像が形成され、この像を、位置検出可能な二次元検出器3などによって検出する。検出結果を示す電気信号はデータ処理系へと送信され、適宜解析される。ただし、既に述べたとおり、検出器3により検出する検出面は焦点面と異なる面であってもよい。X線望遠鏡1の一例として、本発明者らが開発したX線望遠鏡(ASTRO−H SXT−1)の外観写真(非特許文献3のFig.6より引用)を図3に示す。
【0019】
図2のX線望遠鏡1に選択的遮蔽ユニットを取り付けたX線望遠鏡システムの構成概略図を図4に示す。選択的遮蔽ユニットは、第1スリット部材6及び第2スリット部材7を保持部材5で保持してなる構造を有しており、これをX線望遠鏡1の入射面の前段に取り付ける。これにより、X線望遠鏡1に入射しようとするX線は、まず選択的遮蔽ユニットの作用を受けることとなる。
【0020】
第1スリット部材6及び第2スリット部材7は、それぞれスリットが開けられた円盤状の形状を有している。第1スリット部材6の一例を、図4の矢印Aの方向から見たときの構成概略図を図5aに、第2スリット部材7の一例を、図4の矢印Aの方向から見たときの構成概略図を図5bに、それぞれ示す。
【0021】
第1スリット部材6においては、X線の通過を阻止する素材で形成される通過阻止領域6aと、X線が通過できるスリット(通過許容領域)6bとが交互に形成されており、それぞれが等しい一定角度の扇形形状で形成されている。なお、図5a,図5bにおいては簡略化のために1つ1つの扇形形状の角度を大きくとっているが、実用上は1°(degree,度)以下、特に0.1°以下とすることが好ましい。後述のその他の図面においても簡略化のために通過阻止領域、通過許容領域を大きく書いているが、同様に図示されているよりも微細な構造で各領域を形成することが好ましい。
【0022】
第2スリット部材7においても、第1スリット部材6と同様に、X線の通過を阻止する素材で形成される通過阻止領域7aと、X線が通過できるスリット(通過許容領域)7bとが交互に形成されている。図4に示すとおり、第1,第2スリット部材6,7は層状に、且つ間隔を空けて配置されるが、図4の矢印Aの方向から見た時に、第1スリット部材6上のスリット6bの位置と、第2スリット部材7上のスリット7bの位置とが互いにずれるよう配置される。具体的には、図4の矢印Aの方向から見たときに、第1スリット部材6におけるスリット6bと、第2スリット部材7における通過阻止領域7aとが重なり、また第1スリット部材6における通過阻止領域6aと、第2スリット部材7におけるスリット7bとが重なるよう、第1,第2スリット部材6,7が配置される。このような配置をとることにより、図4の矢印Aの方向(図5a,図5bに示す面として定義される選択的遮蔽ユニットの代表面に垂直な方向)から入射するX線は、第1,第2スリット部材6,7の少なくともいずれかによって通過を阻止されることとなる。ただし、各々のスリット部材における通過阻止領域とスリットの大きさとが等しい必要はなく、スリットをより細く、あるいは小さくしてもよい。これにより、既に述べたとおり代表面に対して傾斜した角度からの入射(有限距離に位置する放射体からの入射に対応)を効果的に阻止できる。スリットの大きさをどのようにとるか等、具体的構成は、測定対象の距離等に応じて適宜選択すべきである。あるいは、通過阻止領域よりもスリットが太い、あるいは大きい構成も可能である(後述の、スリット部材を3以上用いる構成を参照)。これらの点については、後述の全ての例においても同様である。
【0023】
通過阻止領域やスリットの形状としては、図5a,図5bに示した扇形形状以外にもさまざまな形状をとることができる。図6a,図6bに、通過阻止領域とスリットをそれぞれ同心円状に形成した時の第1,第2スリット部材6,7の概略構成図を示し、図7a,図7bに、通過阻止領域とスリットをそれぞれ平行なパターンとして形成した時の第1,第2スリット部材6,7の概略構成図を示す。図6a,図6bの構成においては、複数の通過阻止領域6a,7aを保持するために十字形状の保持部分が設けられているが、この保持部分を十分細く形成すれば、通過阻止領域6a,7aとスリット6b,7bは同心円状とみなしてよい。これらの形状をとる場合においても、図4の矢印Aの方向(選択的遮蔽ユニットの代表面に垂直な方向)から見たときに、第1スリット部材6におけるスリット6bと、第2スリット部材7における通過阻止領域7aとが重なり、また第1スリット部材6における通過阻止領域6aと、第2スリット部材7におけるスリット7bとが重なるよう、第1,第2スリット部材6,7が配置される(スリットパターンを予め一部ずらしつつ第1,第2スリット部材6,7を製造し、両者を層状に配置する。)。
【0024】
選択的遮蔽ユニットの代表面に垂直な方向(本実施例においては光軸方向とする。)から入射したX線が第1,第2スリット部材6,7によって通過を阻止される様子を図8aに概念的に示す。各々のスリット部材において通過阻止領域とスリットの大きさが等しいとすれば、入射したX線のうち半分は第1スリット部材6の通過阻止領域6aによって通過を阻止され、残りの半分も第2スリット部材7の通過阻止領域7aによって通過を阻止される。
【0025】
また、選択的遮蔽ユニットの代表面に対して傾斜した方向から入射したX線の一部が、第1,第2スリット部材6,7を通過する様子を図8bに概念的に示す。入射したX線のうち一部が第1スリット部材6を通過する点は図8aの場合と同様であるが、傾斜した方向からの入射であることに起因して、入射X線の一部は第2スリット部材7をも通過する。
【0026】
したがって、上述の第1,第2スリット部材を備える選択的遮蔽ユニットをX線望遠鏡1に取り付けて観測を行った場合には、選択的遮蔽ユニットの代表面に垂直な方向から入射したX線を完全に遮断しつつ、傾斜した方向からの(Off−Axis)X線を検出することが可能となる。すなわち、X線望遠鏡1を任意の方向に向けることにより、任意の方向からのX線を遮断しつつ観測を行うことが可能となる。X線望遠鏡1自体とは別個のユニットとして選択的遮蔽ユニットを設計できるため、スリットパターンを微細に形成すれば、望遠鏡が持つ角度分解能を超える選択的遮蔽能力を提供することも可能となる。ここで、スリットパターンのスケールと観測対象電磁波の波長スケールが近い場合には観測対象電磁波がスリットを通過することによる干渉の影響が出る可能性があるため、観測対象電磁波の波長域としてはスリットパターンよりも十分に波長の短い波長域(例えば、100Å(オングストローム)以下)をとることが有効である。
【0027】
図3に示したASTRO−H衛星搭載のSXT望遠鏡(非特許文献3のFig.6)を微調整した上で、図5a,図5bを用いて説明した扇形形状のスリットを多数有するスリット部材2つを備えた選択的遮蔽ユニットをこれに取り付けてなるX線望遠鏡システムについて、入射角を変えつつX線を観測した時の有効面積を計算機シミュレーションで算出した。
【0028】
SXT望遠鏡は、焦点距離5.6m,入射口径450mmとし、金からなる反射面が同心円状に203層配置されているとした(非特許文献3のTable 1等参照)。第1,第2スリット部材6,7については、図5a,図5bに示す代表面の直径を450mmとし(図5a,図5b中、円環形の外枠や中心にある円形の領域は構造上必要とされるものであり、本シミュレーションでは存在しないものとした。)、通過阻止領域6a,7a及びスリット6b,7bは、いずれも中心角が0.1°(degree,度)の扇形形状であるとした(互いに0.1°(degree,度)ずらして配置。)。第1,第2スリット部材の厚みはゼロとし、通過阻止領域6a,7aはX線吸収率無限大の物質からなると仮定した。また第1,第2スリット部材の間隔は1000mmとした。
【0029】
以上の条件で、無限遠からX線望遠鏡に対してX線がランダムで入射する状況をモンテカルロ法によりシミュレーションし、焦点面まで届いたX線を数え上げることで有効面積を導出した。選択的遮蔽ユニットがない場合と比較した結果を図9のグラフに示す。図9は2つのエリアに分かれているが、横軸は共通であり入射角(代表面に垂直な方向からの傾斜角)を表わす(単位はarc min。1arc minは1/60°)。縦軸は、まず上側のエリアにおいては有効面積(単位は平方センチメートル、対数目盛表示)を表わし(一定数のX線を入射させた場合の、焦点面まで届いたX線の数に対応。)、選択的遮蔽ユニットを用いない望遠鏡システムのみの構成での計算結果と、選択的遮蔽ユニットを用いた望遠鏡システム(本発明のコロナグラフを備えた望遠鏡システム)での計算結果とがそれぞれグラフ化されている。図9の下側エリアのグラフは、「(選択的遮蔽ユニットを用いた望遠鏡システムで計算した有効面積)/(望遠鏡システムのみの構成で計算した有効面積)」を無次元(対数目盛表示)で表わしたものである。
【0030】
図9のグラフからわかるとおり、選択的遮蔽ユニットをX線望遠鏡に取り付けた場合、垂直に近い方向に対しての有効面積は選択的遮蔽ユニットを用いない場合に比べて大きく低下するが、傾斜角が大きくなるにつれて、概ね選択的遮蔽ユニットを用いない場合の0.2〜0.3倍程度で安定する。第1,第2スリット部材の代表面における通過阻止領域とスリットとの大きさが等しい場合、代表面に垂直な方向から傾斜して入射したX線が第1スリット部材を通過する確率は平均的には1/2程度であり、このX線が更に第2スリット部材を通過する確率も平均的には1/2程度であると考えられ(両方のスリット部材を通過できるか否かは代表面内の入射位置によって決まるが、スリットパターンが十分細かく、多数のX線が入射すると仮定すれば、平均的に各スリット部材を1/2の確率で通過すると推定できる。)、したがって傾斜して入射したX線が検出面に到達する確率(望遠鏡システムの有効面積に対応)は、選択的遮蔽ユニットを用いない場合に比べて、両確率の積である1/4程度に低下すると推定することができる。図9のグラフは、入射角が大きい時にそのような推定が計算結果と一致することを示している。
【0031】
なお、例えば図5aの第1スリット部材において通過阻止領域6aとスリット6bの大きさの比(扇形の中心角の比)を1:2とし、図5bの第2スリット部材において通過阻止領域7aとスリット7bの大きさの比を2:1とし、図4の矢印Aの方向から見て通過阻止領域6aとスリット7bが重なり、スリット6bと通過阻止領域7aが重なるよう、選択的遮蔽ユニットを構成してX線望遠鏡に取り付けた場合は、同様に考えれば、傾斜して入射するX線が第1スリット部材を通過する確率は平均的に2/3程度であり、第2スリット部材を通過する確率は平均的に1/3程度であると考えられ、したがってX線が検出面に到達する確率は、選択的遮蔽ユニットを用いない場合に比べて、両確率の積である2/9程度に低下すると推定できる。これに鑑みると、スリット部材を2つ用いる構成においては、各々の部材においてスリットが占める割合を概ね1/2にすることが、傾斜した観測対象電磁波に対する有効面積を大きくするためには有効であると考えられる。一般的には、n個のスリット部材を用いる場合、各々の部材の代表面においてスリットが占める割合は概ね(n−1)/nであることが、有効面積を大きくするためには好ましい。この場合、各々の部材の代表面において通過阻止領域が占める割合が概ね1/nとなることにより、n層全体として垂直入射成分を遮断できるし、スリットの占める割合の合計が一定(すなわち、通過阻止領域の占める割合の合計が一定)という束縛条件下で当該スリットの占める割合の積(有効面積に対応)を最大化するためには、当該スリットの占める割合を、異なる層間で全て等しくすべきだからである。
【0032】
選択的遮蔽ユニットにおいては、各スリット部材間の間隔を変更可能としてもよい。図4のX線望遠鏡システムに対し、各スリット部材間の間隔を変更するための制御回路を取り付けたときの構成概略図を図10に示す。第1,第2スリット部材6,7は、保持部材5に対して、図10の矢印方向にそれぞれ移動可能となるように接続されており(保持部材5の内側にレールを設け、第1,第2スリット部材6,7がモータ制御によりレール上を移動する等、具体的構成は任意。)、コンピュータシステム等、任意の制御回路の制御によって移動し、第1,第2スリット部材間の間隔が変更される。
【0033】
スリット部材間の間隔が小さい時、大きい時のそれぞれについて、傾斜を有して入射したX線(Off−Axis成分)が第1,第2スリット部材を通過する様子を図11a,図11bに概念的に示す。図から明らかなとおり、スリット部材間の間隔を大きくすることにより、傾斜の小さなX線であっても両方のスリットを通過し得ることがわかる。したがって、図9に示した計算機シミュレーションの条件として、第1,第2スリット部材間の間隔を更に大きくすれば、選択的遮蔽ユニットを用いる場合のグラフは立ち上がりが早くなる(より小さな傾斜角においても、有効面積比が0.25に近づく)と推定される。逆に、スリット部材間の間隔を小さくすれば、より傾斜の大きなX線であっても第1,第2スリット部材を通過できなくなり、すなわち上記代表面に対して傾斜した角度からの入射(有限距離の放射体からの入射)も効果的に阻止できると推定される。
【実施例2】
【0034】
図4の例においてはX線望遠鏡に対して選択的遮蔽ユニットを取り付けたが、これに限らず任意の望遠鏡に対して選択的遮蔽ユニットを用いることができる。一例として、屈折方式の望遠鏡に選択的遮蔽ユニットを取り付けた、本発明の別の実施形態である望遠鏡システムの構成概略図を図12に示す。本発明における選択的な遮蔽の作用原理は望遠鏡自体の動作原理と独立であるため、このような構成においても、代表面に垂直な方向から入射する測定対象電磁波を阻止しつつ傾斜して入射する電磁波を観測できる。
【実施例3】
【0035】
以下、選択的遮蔽ユニットが3つのスリット部材を含む場合について説明する。この場合、図4図10図12において層状に且つ間隔を空けて配置されていた第1,第2スリット部材6,7に加えて、第3スリット部材8が層状に且つ間隔を空けて配置される。図5a,図5bと同様に通過阻止領域及びスリットが扇形形状であるとしたとき、第1,第2,第3スリット部材6,7,8を図4の矢印Aの方向から見た構成概略図を、図13a,図13b,図13cにそれぞれ示す。
【0036】
第1スリット部材6においては、X線の通過を阻止する素材で形成される通過阻止領域6aと、X線が通過できるスリット(通過許容領域)6b−1,6b−2とが繰り返し形成されており、それぞれが等しい一定角度の扇形形状で形成されている。図5aの構成とは異なり、1つの通過阻止領域6aの次には2つのスリット6b−1,6b−2が続く(スリット6b−1,6b−2は分離されていないため実際には1つの大きなスリットが形成されるが、便宜上2つのスリットとして数える。第2,第3スリット部材7,8においても同様。)。
【0037】
第2スリット部材7においても、第1スリット部材6と同様に、X線の通過を阻止する素材で形成される通過阻止領域7aと、X線が通過できるスリット(通過許容領域)7b−1,7b−2とが繰り返し形成されている。第2スリット部材7は、図4の矢印Aの方向から見た時に、第1スリット部材6上のスリット6b−1と、第2スリット部材7上の通過阻止領域7aとが重なるように、互いに一部ずらして配置される。
【0038】
第3スリット部材8においても、第1,2スリット部材6,7と同様に、X線の通過を阻止する素材で形成される通過阻止領域8aと、X線が通過できるスリット(通過許容領域)8b−1,8b−2とが繰り返し形成されている。第3スリット部材8は、図4の矢印Aの方向から見た時に、第1スリット部材6上のスリット6b−2と、第3スリット部材8上の通過阻止領域8aとが重なるように、互いに一部ずらして配置される。このような配置をとることにより、図4の矢印Aの方向(図13a,図13b,図13cに示す面として定義される選択的遮蔽ユニットの代表面に垂直な方向)から入射するX線は、第1,第2,第3スリット部材6,7,8の少なくともいずれかによって通過を阻止されることとなる。ただし、既に述べたとおり、各々のスリット部材における通過阻止領域とスリットの大きさとが等しい必要はなく、スリットをより細く、あるいは小さくしてもよい。扇形形状以外のスリットパターンをとる場合においても、同様に通過阻止領域1つに対してスリット2つ(実際には2つ分の大きさのスリット1つ)が続くよう各々のスリット部材を構成し、且つ3つのスリット部材におけるスリット位置が互いに一部ずれるよう配置すれば、代表面に垂直な方向からの入射成分を阻止できる(図6a,図6b,図7a,図7bのようなパターンのスリット部材においては、製造時点でスリットパターンを一部ずらしておく。)。
【0039】
3つのスリット部材を備えた選択的遮蔽ユニットの代表面に垂直な方向(本実施例においては光軸方向とする。)から入射したX線が第1,第2,第3スリット部材6,7,8によって通過を阻止される様子、及び、選択的遮蔽ユニットの代表面に対して傾斜した方向から入射したX線の一部が、第1,第2,第3スリット部材6,7,8を通過する様子を図14に概念的に示す。図8a,図8bで示した2層構造の場合と同様に、3層構造の選択的遮蔽ユニットを用いても、選択的遮蔽ユニットの代表面に垂直な方向から入射したX線を完全に遮断しつつ、傾斜した方向からの(Off−Axis)X線を検出することが可能となる。既に述べたとおり、有効面積を大きくするためには、各々の部材の代表面においてスリットが占める割合は概ね(n−1)/nであることが好ましく、n=3の場合においてそのような構成をとる場合、各スリット部材の代表面においてスリットが2/3を占めることになる。この場合、各スリット部材をX線のOff−Axis成分が通過する確率は平均的には2/3程度と考えられ、したがって傾斜して入射したX線が検出面に到達する確率(望遠鏡システムの有効面積に対応)は、選択的遮蔽ユニットを用いない場合に比べて、2/3の3乗である8/27程度に低下すると推定することができる。これは2層構造の場合の1/4よりも大きく、有効面積を大きくするという観点ではスリット部材をより多く層状に配置すべきであることがわかる。ただし、層の数が増えることにより、層間でのずれ幅の微細な調整が必要となるので、必要とされる有効面積の大きさや加工技術の精度に応じて層の数は適宜選択すべきである。
【0040】
図9を用いて示した計算機シミュレーションに用いたものと同一設定のX線望遠鏡に、図13a〜図13cを用いて説明したスリット部材3つを備えた選択的遮蔽ユニットを取り付けてなるX線望遠鏡システムについて、入射角を変えつつX線を観測した時の有効面積を計算機シミュレーションで算出した。第1〜第3スリット部材においては、既に説明した配置に従い、中心角が0.1°(degree,度)の扇形形状の通過阻止領域と、中心角が0.2°(degree,度)の扇形形状のスリットが交互に形成されているとし、3つのスリット部材が互いに0.1°(degree,度)だけずれつつ(図13a〜図13c参照)、1000mm間隔で層状に配置されているとした。それ以外の条件は図9で示したシミュレーションと同様である。
【0041】
図9で示したシミュレーションと同様の状況をモンテカルロ法によりシミュレーションし、同様に有効面積を導出した。選択的遮蔽ユニットがない場合と比較した結果を図15のグラフに示す。図15は2つのエリアに分かれているが、図9と同様に横軸は共通であり入射角(代表面に垂直な方向からの傾斜角)を表わす(単位はarc min。1arc minは1/60°)。縦軸も図9と同様であり、まず上側のエリアにおいては有効面積(単位は平方センチメートル、対数目盛表示)を表わし(一定数のX線を入射させた場合の、焦点面まで届いたX線の数に対応。)、選択的遮蔽ユニットを用いない望遠鏡システムのみの構成での計算結果と、選択的遮蔽ユニットを用いた望遠鏡システム(本発明のコロナグラフを備えた望遠鏡システム)での計算結果とがそれぞれグラフ化されている。図15の下側エリアのグラフも、図9と同様に、「(選択的遮蔽ユニットを用いた望遠鏡システムで計算した有効面積)/(望遠鏡システムのみの構成で計算した有効面積)」を無次元(対数目盛表示)で表わしたものである。
【0042】
図15のグラフからわかるとおり、選択的遮蔽ユニットをX線望遠鏡に取り付けた場合、垂直に近い方向に対しての有効面積は選択的遮蔽ユニットを用いない場合に比べて大きく低下するが、傾斜角が大きくなるにつれて、概ね選択的遮蔽ユニットを用いない場合の0.3倍弱で安定する。既に述べた検出面到達確率に鑑みれば、理論的には選択的遮蔽ユニットを用いることによって有効面積が8/27倍程度になると推定されるが、図15のグラフは、入射角が大きい時にそのような推定が計算結果と一致することを示している。
【0043】
さらに、4層構造の選択的遮蔽ユニットを用いた場合についても同様の計算機シミュレーションを行った。計算条件は図15で示したシミュレーションと同様である。ただし、4つのスリット部材はそれぞれ、中心角0.1°(degree,度)の扇形形状の通過阻止領域と、中心角0.3°(degree,度)の扇形形状のスリットが交互に形成される構造を有しており、各々のスリット部材は互いに0.1°(degree,度)だけずれつつ1000mm間隔で層状に配置されているとした。
【0044】
シミュレーション結果を図16のグラフに示す。グラフの縦軸、横軸やエリア分割は図9図15と同様である。選択的遮蔽ユニットをX線望遠鏡に取り付けた場合、垂直に近い方向に対しての有効面積は選択的遮蔽ユニットを用いない場合に比べて大きく低下するが、傾斜角が大きくなるにつれて、概ね選択的遮蔽ユニットを用いない場合の0.3倍強で安定する。既に述べた検出面到達確率に鑑みれば、理論的には選択的遮蔽ユニットを用いることによって有効面積が3/4の4乗、すなわち81/256倍程度になると推定されるが、図16のグラフは、入射角が大きい時にそのような推定が計算結果と一致することを示している。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、X線望遠鏡を初めとする任意の望遠鏡において利用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 望遠鏡
2a−1〜2b−3 反射鏡
3 検出器
4 ハウジング
5 保持部材
6 第1スリット部材
7 第2スリット部材
8 第3スリット部材
6a,7a,8a 通過阻止領域
6b,7b,8b スリット(通過許容領域)
9 対物レンズ
10 接眼レンズ
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6a
図6b
図7a
図7b
図8a
図8b
図9
図10
図11a
図11b
図12
図13a
図13b
図13c
図14
図15
図16