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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-188182(P2017-188182A)
(43)【公開日】2017年10月12日
(54)【発明の名称】磁気抵抗効果素子および磁気センサ
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/39 20060101AFI20170919BHJP
   H01L 29/82 20060101ALI20170919BHJP
【FI】
   G11B5/39
   H01L29/82 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-243045(P2016-243045)
(22)【出願日】2016年12月15日
(31)【優先権主張番号】特願2016-67817(P2016-67817)
(32)【優先日】2016年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小池 勇人
【テーマコード(参考)】
5D034
5F092
【Fターム(参考)】
5D034BA03
5D034BA04
5D034BA06
5D034BA08
5D034BA21
5D034BA30
5D034CA04
5F092AB02
5F092AC11
5F092AC21
5F092AD25
5F092BB22
5F092BB23
5F092BB34
5F092BB35
5F092BB36
5F092BB46
5F092BB55
5F092BD03
5F092BD04
5F092BD13
5F092BD15
(57)【要約】
【課題】高いSN比を有する磁気抵抗効果素子および磁気センサを提供することを目的とする。
【解決手段】
磁気抵抗効果素子1は、チャネル層7と、第1強磁性層12Aと、第2強磁性層12Bと、参照電極20とを有し、第1強磁性層12Aと、第2強磁性層12Bと、参照電極20とは、互いに離間し、かつ、チャネル層7を介して互いに電気的に接続され、第1領域A1、第2領域A2および第4領域A4からなる第6領域A6の抵抗率の平均値が、第2領域A2、第3領域A3および第5領域A5からなる第7領域A7の抵抗率の平均値よりも大きいことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャネル層と、第1強磁性層と、第2強磁性層と、参照電極とを有し、
前記第1強磁性層と、前記第2強磁性層と、前記参照電極とは、互いに離間し、かつ、前記チャネル層を介して互いに電気的に接続され、
前記第1強磁性層と、前記第2強磁性層と、前記参照電極とは、前記チャネル層の厚み方向から見て互いに重ならずに離間しており、
前記チャネル層は、
前記第1強磁性層と前記厚み方向から見て重なる第1領域、前記第2強磁性層と前記厚み方向から見て重なる第2領域、前記参照電極と前記厚み方向から見て重なる第3領域、前記第1領域と前記第2領域との間の第4領域および、前記第2領域と前記第3領域との間の第5領域を有し、
前記第2領域は、前記チャネル層において前記第1領域と前記第3領域の間に位置しており、
前記第1領域、前記第2領域および前記第4領域からなる第6領域の抵抗率の平均値が、前記第2領域、前記第3領域および前記第5領域からなる第7領域の抵抗率の平均値よりも大きいことを特徴とする磁気抵抗効果素子。
【請求項2】
前記第5領域に、前記第7領域の抵抗率の平均値よりも抵抗率の平均値が大きい第8領域を有することを特徴とする請求項1に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項3】
前記第2領域と前記第8領域とが接していることを特徴とする請求項2に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項4】
チャネル層と、第1強磁性層と、第2強磁性層と、参照電極とを有し、
前記第1強磁性層と前記第2強磁性層は、互いに離間し、かつ、前記チャネル層を介して互いに電気的に接続され、
前記参照電極は、前記チャネル層の側面上に前記第1強磁性層および前記第2強磁性層から離間して設けられ、かつ、前記チャネル層を介して前記第1強磁性層および前記第2強磁性層に電気的に接続され、
前記第1強磁性層と、前記第2強磁性層と、前記参照電極とは、前記チャネル層の厚み方向から見て互いに重ならずに離間しており、
前記チャネル層は、
前記第1強磁性層と前記厚み方向から見て重なる第1領域、前記第2強磁性層と前記厚み方向から見て重なる第2領域、前記第2領域と前記参照電極が設けられた前記側面との間の第3領域および、前記第1領域と前記第2領域との間の第4領域を有し、
前記第2領域は、前記チャネル層において前記第1領域と前記第3領域の間に位置しており、
前記第1領域、前記第2領域および前記第4領域からなる第5領域の抵抗率の平均値が、前記第2領域および前記第3領域からなる第6領域の抵抗率の平均値よりも大きいことを特徴とする磁気抵抗効果素子。
【請求項5】
前記第3領域に、前記第6領域の抵抗率の平均値よりも抵抗率の平均値が大きい第7領域を有することを特徴とする請求項4に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項6】
前記第2領域と前記第7領域とが接していることを特徴とする請求項5に記載の磁気抵抗効果素子。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の磁気抵抗効果素子を有する磁気センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気抵抗効果素子および磁気センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
薄膜磁気記録再生ヘッド等に用いられる再生素子として、磁気抵抗効果素子が知られている。一般的な磁気抵抗効果素子は、磁化固定層、磁化自由層およびこれらの層の間に電流を流すため、高出力が得られる。
【0003】
一方、磁化自由層及び磁化固定層を同一水平面上(スピンを蓄積するためのチャネル層上)に形成するスピン蓄積型磁気抵抗効果素子が知られている。スピン蓄積型磁気抵抗効果素子は、例えば、薄膜磁気記録再生ヘッド等の磁気センサに用いられた場合、高い空間分解能が得られることが期待されている。また、デバイス設計の自由度を向上できる利点も期待されている。特許文献1には、2つの強磁性電極と2つの非磁性電極を有する4端子型のスピン蓄積型磁気抵抗効果素子が開示されている。また、特許文献2には、2つの強磁性電極と1つの非磁性電極を有する3端子型のスピン蓄積型磁気抵抗効果素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−287666号公報
【特許文献2】国際公開第2015/076187号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、スピン蓄積型磁気抵抗効果素子を実用的なものにするには、信号雑音比(SN比)はいまだに小さく、SN比のさらなる向上が必要である。本発明は、高いSN比を有する磁気抵抗効果素子および磁気センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明の磁気抵抗効果素子は、チャネル層と、第1強磁性層と、第2強磁性層と、参照電極とを有し、前記第1強磁性層と、前記第2強磁性層と、前記参照電極とは、互いに離間し、かつ、前記チャネル層を介して互いに電気的に接続され、前記第1強磁性層と、前記第2強磁性層と、前記参照電極とは、前記チャネル層の厚み方向から見て互いに重ならずに離間しており、前記チャネル層は、前記第1強磁性層と前記厚み方向から見て重なる第1領域、前記第2強磁性層と前記厚み方向から見て重なる第2領域、前記参照電極と前記厚み方向から見て重なる第3領域、前記第1領域と前記第2領域との間の第4領域および、前記第2領域と前記第3領域との間の第5領域を有し、前記第2領域は、前記チャネル層において前記第1領域と前記第3領域の間に位置しており、前記第1領域、前記第2領域および前記第4領域からなる第6領域の抵抗率の平均値が、前記第2領域、前記第3領域および前記第5領域からなる第7領域の抵抗率の平均値よりも大きいことを特徴とする。
【0007】
これによれば、第6領域の抵抗率の平均値と第7領域の抵抗率の平均値が同じである場合に比べて、スピン輸送経路である第6領域の抵抗率の第7領域の抵抗率に対する比率は増大し、スピン検出経路である第7領域の抵抗値の第6領域の抵抗値に対する比率は減少する。スピン輸送経路である第6領域の抵抗率が大きいほど出力信号は大きくなり、スピン検出経路である第7領域の抵抗値が小さいほど出力ノイズが小さくなるので、本発明の磁気抵抗効果素子は、高いSN比を有することができる。
【0008】
さらに、本発明の磁気抵抗効果素子は、前記第5領域に、前記第7領域の抵抗率の平均値よりも抵抗率の平均値が大きい第8領域を有することを特徴とする。
【0009】
これによれば、第8領域がスピンの拡散抑制部として機能するため、第2領域に蓄積したスピンの第2領域から第3領域への方向への拡散を抑制することができ、第2領域にスピンを高密度に蓄積することができる。その結果、本発明の磁気抵抗効果素子の出力信号を大きくすることができる。
【0010】
さらに、本発明の磁気抵抗効果素子は、前記第2領域と前記第8領域とが接していることを特徴とする。
【0011】
これによれば、第8領域による、第2領域に蓄積したスピンの第2領域から第3領域への方向への拡散を抑制する効果をさらに大きくすることができる。したがって、本発明の磁気抵抗効果素子の出力信号をさらに大きくすることができる。
【0012】
また、本発明の磁気抵抗効果素子は、チャネル層と、第1強磁性層と、第2強磁性層と、参照電極とを有し、前記第1強磁性層と前記第2強磁性層は、互いに離間し、かつ、前記チャネル層を介して互いに電気的に接続され、前記参照電極は、前記チャネル層の側面上に前記第1強磁性層および前記第2強磁性層から離間して設けられ、かつ、前記チャネル層を介して前記第1強磁性層および前記第2強磁性層に電気的に接続され、前記第1強磁性層と、前記第2強磁性層と、前記参照電極とは、前記チャネル層の厚み方向から見て互いに重ならずに離間しており、前記チャネル層は、前記第1強磁性層と前記厚み方向から見て重なる第1領域、前記第2強磁性層と前記厚み方向から見て重なる第2領域、前記第2領域と前記参照電極が設けられた前記側面との間の第3領域および、前記第1領域と前記第2領域との間の第4領域を有し、前記第2領域は、前記チャネル層において前記第1領域と前記第3領域の間に位置しており、前記第1領域、前記第2領域および前記第4領域からなる第5領域の抵抗率の平均値が、前記第2領域および前記第3領域からなる第6領域の抵抗率の平均値よりも大きいことを特徴とする。
【0013】
これによれば、第5領域の抵抗率の平均値と第6領域の抵抗率の平均値が同じである場合に比べて、スピン輸送経路である第5領域の抵抗率の第6領域の抵抗率に対する比率は増大し、スピン検出経路である第6領域の抵抗値の第5領域の抵抗値に対する比率は減少する。スピン輸送経路である第5領域の抵抗率が大きいほど出力信号は大きくなり、スピン検出経路である第6領域の抵抗値が小さいほど出力ノイズが小さくなるので、本発明の磁気抵抗効果素子は、高いSN比を有することができる。
【0014】
さらに、本発明の磁気抵抗効果素子は、前記第3領域に、前記第6領域の抵抗率の平均値よりも抵抗率の平均値が大きい第7領域を有することを特徴とする。
【0015】
これによれば、第7領域がスピンの拡散抑制部として機能するため、第2領域に蓄積したスピンの第2領域から第3領域への方向への拡散を抑制することができ、第2領域にスピンを高密度に蓄積することができる。その結果、本発明の磁気抵抗効果素子の出力信号を大きくすることができる。
【0016】
さらに、本発明の磁気抵抗効果素子は、前記第2領域と前記第7領域とが接していることを特徴とする。
【0017】
これによれば、第7領域による、第2領域に蓄積したスピンの第2領域から第3領域への方向への拡散を抑制する効果をさらに大きくすることができる。したがって、本発明の磁気抵抗効果素子の出力信号をさらに大きくすることができる。
【0018】
さらに、本発明の磁気センサは、上記の磁気抵抗効果素子を有することを特徴とする。
【0019】
これによれば、高いSN比を有する磁気センサを実現することが出来る。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、高いSN比を有する磁気抵抗効果素子および磁気センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、第1実施形態に係る磁気抵抗効果素子の斜視図である。
図2図2は、第1実施形態に係る磁気抵抗効果素子の変形例の上面図である。
図3図3は、第2実施形態に係る磁気抵抗効果素子の斜視図である。
図4図4は、第3実施形態に係る磁気抵抗効果素子の斜視図である。
図5図5は、第4実施形態に係る磁気抵抗効果素子の斜視図である。
図6図6は、第5実施形態に係る磁気センサの要部断面図である。
図7図7は、図6の磁性媒体対向面(X方向)から見た側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明を実施するための好適な形態につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0023】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、第1実施形態に係る磁気抵抗効果素子1について説明する。
【0024】
(基本構造)
図1は、第1実施形態に係る磁気抵抗効果素子1の斜視図である。図1に示すように、磁気抵抗効果素子1は、チャネル層7と、第1強磁性層12Aと、第2強磁性層12Bと、参照電極20とを有している。チャネル層7は、下地絶縁層80を介して支持基板30上に設けられ、第1強磁性層12Aと、第2強磁性層12Bと、参照電極20とは、チャネル層7の上面上に互いに離間して設けられ、かつ、チャネル層7を介して互いに電気的に接続されている。第1強磁性層12Aと、第2強磁性層12Bと、参照電極20とは、チャネル層7の厚み方向から見て互いに重ならずに離間している。第二強磁性層12Bは、チャネル層7上において第一強磁性層12Aと参照電極20との間に位置している。チャネル層7は、第1強磁性層12Aと第2強磁性層12Bとが並ぶ方向(膜面内における方向)が長辺方向であり、その長辺方向に垂直な方向(膜面内における方向)が短辺方向である矩形の平面視形状を有している。また、この矩形の平面視形状の長辺方向は、第2強磁性層12Bと参照電極20とが並ぶ方向(膜面内における方向)でもある。
【0025】
第1強磁性層12Aおよび第2強磁性層12Bは、これらの間を第1強磁性層12Aから第2強磁性層12Bへチャネル層7を介してスピン偏極キャリア(電子またはホール)が流れる部分であり、第2強磁性層12Bおよび参照電極20は、チャネル層7を介して電圧が検出される部分である。
【0026】
チャネル層7は、第1強磁性層12Aとチャネル層7の厚み方向から見て重なる第1領域A1、第2強磁性層12Bとチャネル層7の厚み方向から見て重なる第2領域A2、参照電極20とチャネル層7の厚み方向から見て重なる第3領域A3、第1領域A1と第2領域A2との間の第4領域A4および、第2領域A2と第3領域A3との間の第5領域A5を有している。また、第2領域A2は、チャネル層7において第1領域A1と第3領域A3の間に位置している。チャネル層7では、第1領域A1、第2領域A2および第4領域A4からなる第6領域A6の抵抗率の平均値が、第2領域A2、第3領域A3および第5領域A5からなる第7領域A7の抵抗率の平均値よりも大きくなっている。
【0027】
第1強磁性層12Aとチャネル層7との間には、障壁層14Aが設けられ、第2強磁性層12Bとチャネル層7との間には、障壁層14Bが設けられている。
【0028】
(強磁性層の材料)
第1強磁性層12A及び第2強磁性層12Bの材料としては、例えば、Co、Fe及びNiからなる群から選択される金属、Cr、Mn、Co、Fe及びNiからなる群の金属を1種以上含む合金、又は、Cr、Mn、Co、Fe及びNiからなる群から選択される1又は複数の金属と、B、C、N、Al、Si、Ga及びGeからなる群から選択される1種以上の元素とを含む合金が挙げられ、具体的には、CoFeBまたはNiFe等が挙げられる。
【0029】
(障壁層)
第1強磁性層12Aとチャネル層7との間には、障壁層14Aが設けられているので、第1強磁性層12Aからチャネル層7へスピン偏極したキャリア(電子またはホール)を多く注入することが可能となり、磁気抵抗効果素子1の出力信号を高めることが可能となる。第2強磁性層12Bとチャネル層7との間には、障壁層14Bが設けられているので、第2強磁性層12Bとチャネル層7との間におけるスピン偏極キャリアのスピン偏極率の低下が抑制され、第1強磁性層12Aから第2強磁性層12Bへの効率的なスピンの輸送が可能になる。
【0030】
障壁層14A、14Bは、トンネル障壁層であることが好ましい。トンネル障壁層の材料として、例えば酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、スピネル酸化膜または酸化亜鉛などを用いることができる。抵抗の増大を抑制し、トンネル障壁層として機能させる観点から、トンネル障壁層の膜厚は、3nm以下であることが好ましい。また、トンネル障壁層の膜厚は、1原子層の厚みを考慮して、0.4nm以上であることが好ましい。
【0031】
(参照電極の材料)
参照電極20の材料は非磁性材料、特に非磁性の金属であることが好ましい。参照電極20の材料として、例えば、Cu、Au、Pt、Ta、CrまたはAlなどの金属材料が挙げられる。
【0032】
(チャネル層)
チャネル層7はスピンが輸送・蓄積される層である。チャネル層7の材料は、非磁性材料であり、スピン拡散長が長い材料であることが好ましい。磁気抵抗効果素子1では、チャネル層7の材料は非磁性半導体となっている。この場合、チャネル層7の材料(母材)は、Si、Ge、GaAsおよびCのうちのいずれか1つを含む半導体とすることができる。磁気抵抗効果素子1では、チャネル層7の母材は第1〜第5領域(第1領域A1、第2領域A2、第3領域A3、第4領域A4および第5領域A5)で同じ(第6領域A6と第7領域A7とで同じ)であり、第6領域A6の不純物濃度(キャリア濃度)の平均値が、第7領域A7の不純物濃度(キャリア濃度)の平均値よりも小さくなっており、これにより、第6領域A6の抵抗率の平均値は、第7領域A7の抵抗率の平均値よりも大きくなっている。より具体的には、第1領域A1の不純物濃度(キャリア濃度)の平均値、第2領域A2の不純物濃度(キャリア濃度)の平均値および第4領域A4の不純物濃度(キャリア濃度)の平均値が、第3領域A3の不純物濃度(キャリア濃度)の平均値および第5領域A5の不純物濃度(キャリア濃度)の平均値よりも小さくなっており、第1領域A1の抵抗率の平均値、第2領域A2の抵抗率の平均値および第4領域A4の抵抗率の平均値は、第3領域A3の抵抗率の平均値および第5領域A5の抵抗率の平均値よりも大きくなっている。高いSN比を得ることができるという点で、第6領域A6の抵抗率の平均値は、例えば1×10−2Ω・mよりも小さく、1×10−4Ω・mよりも大きいことが好ましく、第7領域A7の抵抗率の平均値は、例えば1×10−4Ω・mよりも小さく、5×10−5Ω・mよりも大きいことが好ましい。チャネル層7の材料がSiである場合、第6領域A6の不純物濃度(キャリア濃度)の平均値は、例えば1×1016cm−3よりも大きく、1×1019cm−3よりも小さいことが好ましく、第7領域A7の不純物濃度(キャリア濃度)の平均値は、例えば1×1019cm−3よりも大きく、5×1020cm−3よりも小さいことが好ましい。
【0033】
チャネル層7の材料として非磁性半導体を用いる場合、抵抗率は母材となる半導体材料に不純物を少量添加(不純物ドーピング)することにより調整することができる。不純物ドーピングの手法としては、例えば、イオン注入法、熱拡散法などが挙げられる。例えば、母材となる半導体材料としてSi、GeまたはCなどの14族(IV族)の元素を用いる場合、N、P、AsまたはSbなどの15族(V族)の元素を不純物としてドーピングすれば、電子が多数キャリアとなるため、キャリア濃度として電子の濃度を調整することができ、抵抗率を調整することができる。この場合、チャネル層7はn型半導体となる。また、B、AlまたはGaなどの13族(III族)の元素を不純物としてドーピングすれば、ホールが多数キャリアとなるため、キャリア濃度としてホールの濃度を調整することができ、抵抗率を調整することができる。この場合、チャネル層7はp型半導体となる。
【0034】
第6領域A6における抵抗率の平均値を第7領域A7における抵抗率の平均値よりも大きくするには、例えば、以下の手順で作製することが好ましい。
【0035】
支持基板30、下地絶縁層80、及び非磁性半導体層からなる基板を準備し、非磁性半導体層にあらかじめ所望の濃度で不純物ドーピングを施す。
【0036】
次に、薬液洗浄やプラズマ処理などにより、非磁性半導体層表面の付着物(パーティクル、有機物、及び自然酸化膜など)を除去し、非磁性半導体層の表面を清浄化・平坦化する。
【0037】
次に、MBE法などにより、非磁性半導体層上に障壁層および強磁性層を成膜し、積層体を形成する。
【0038】
次に、フォトリソグラフィおよびイオンミリングなどにより、上記の積層体を矩形状にパターニングして、非磁性半導体層の上部に障壁層および強磁性層が積層している構造体を作製する。
【0039】
次に、フォトリソグラフィおよびイオンミリングなどにより、上記の構造体の障壁層および強磁性層をパターニングし、障壁層14A、第1強磁性層12A、障壁層14Bおよび第2強磁性層12Bを形成する。これにより、第1領域A1に相当する非磁性半導体層の領域の上部には障壁層14Aおよび第1強磁性層12Aが積層しており、第2領域A2に相当する非磁性半導体層の領域の上部には障壁層14Bおよび第2強磁性層12Bが積層しており、第1領域A1および第2領域A2に相当する非磁性半導体層の領域を除く部分は非磁性半導体層の上部が露出した構造が作製される。
【0040】
次に、フォトリソグラフィなどにより、第1領域A1、第2領域A2および第4領域A4(第6領域A6)に相当する非磁性半導体層の領域の上部をフォトレジストなどのマスク材料で覆い、非磁性半導体層のマスク材料で覆われていない部分に追加の不純物ドーピングを施してチャネル層7を作製する。これにより、チャネル層7の第6領域A6を除く部分の不純物濃度の平均値を、第6領域A6の不純物濃度の平均値よりも大きくすることができる。
【0041】
最後に、フォトリソグラフィおよびスパッタリング法などにより、チャネル層7の上面上に、参照電極20を形成する。このように作製された磁気抵抗効果素子1では、チャンネル層7、第1強磁性層12A、第2強磁性層12Bおよび参照電極20の側面(第1強磁性層12A、第2強磁性層12Bおよび参照電極20の配列方向に沿う側面)が、同一の面上に存在している。
【0042】
このように作製されたチャネル層7では、第1領域A1の抵抗率(または不純物濃度)の平均値、第2領域A2の抵抗率(または不純物濃度)の平均値および第4領域A4の抵抗率(または不純物濃度)の平均値は、それぞれ同程度になっており、第3領域A3の抵抗率(または不純物濃度)の平均値は、第5領域A5の抵抗率(または不純物濃度)の平均値と同程度になっている。
【0043】
なお、チャネル層7における第1強磁性層12Aから第2強磁性層12Bまでの距離は、チャネル層7に用いる材料のスピン拡散長以下であることが好ましい。
【0044】
チャネル層7の材料がn型半導体である場合は、電子がスピン偏極キャリアとなる。この場合、第2強磁性層12Bから第1強磁性層12Aへチャネル層7を介して流れる電流が、第1強磁性層12Aおよび第2強磁性層12Bから印加される。この場合、第1強磁性層12Aによってスピン偏極を起こした電子が、第1強磁性層12Aから注入され、チャネル層7の内部を第1強磁性層12Aから第2強磁性層12Bの方向に輸送される。これにより、チャネル層7の内部(第6領域A6)にスピンの非平衡状態(スピン蓄積)が生成される。
【0045】
チャネル層7の材料がp型半導体である場合は、ホールがスピン偏極キャリアとなる。この場合、第1強磁性層12Aから第2強磁性層12Bへチャネル層7を介して流れる電流が、第1強磁性層12Aおよび第2強磁性層12Bから印加される。この場合、第1強磁性層12Aによってスピン偏極を起こしたホールが、第1強磁性層12Aから注入され、チャネル層7の内部を第1強磁性層12Aから第2強磁性層12Bの方向に輸送される。これにより、チャネル層7の内部(第6領域A6)にスピンの非平衡状態(スピン蓄積)が生成される。
【0046】
このように、スピン偏極キャリアが、第1強磁性層12Aから第2強磁性層12Bの方向に輸送され、第6領域A6にスピンの非平衡状態(スピン蓄積)が生成されることにより、磁気抵抗効果素子1には、第1強磁性層12Aの磁化と第2強磁性層12Bの磁化に起因した磁気抵抗効果が発生し、第1強磁性層12Aの磁化方向と第2強磁性層12Bの磁化方向の相対角の変化に応じた抵抗変化が生じる。
【0047】
第2強磁性層12Bとチャネル層7の厚み方向から見て重なる領域である第2領域A2は、チャネル層7において第1領域A1(第1強磁性層12Aとチャネル層7の厚み方向から見て重なる領域)と第3領域A3(参照電極20とチャネル層7の厚み方向から見て重なる領域)の間に位置している。このため、上記の抵抗変化のうち、主に、第2強磁性層12Bとチャネル層7の第2領域A2との間の磁気抵抗効果による抵抗変化に対応した電圧変化(出力値)が、チャネル層7(第7領域A7)を介して第2強磁性層12Bおよび参照電極20の間において検出される。
【0048】
(その他の材料)
支持基板30の材料としては、例えば、AlTiCまたはSiが挙げられる。支持基板30上に設けられる下地絶縁層80の材料としては、例えばSiO(酸化シリコン)、HfO(酸化ハフニウム)またはSiN(窒化シリコン)などが挙げられる。
【0049】
(効果の説明)
磁気抵抗効果素子1は、第6領域A6の抵抗率の平均値が、第7領域A7の抵抗率の平均値よりも大きくなっている。したがって、第6領域A6の抵抗率の平均値と第7領域A7の抵抗率の平均値が同じである場合に比べて、スピン輸送経路である第6領域A6の抵抗率の第7領域A7の抵抗率に対する比率は増大し、スピン検出経路である第7領域A7の抵抗値の第6領域A6の抵抗値に対する比率は減少する。
【0050】
スピン偏極したキャリア(電子またはホール)は、チャネル層7(第6領域A6)に電流を流すために第1強磁性層12Aと第2強磁性層12Bとの間に印加される電圧によって第6領域A6の内部に生じる電界(ドリフト電界)の影響を受けて輸送される。
【0051】
チャネル層7の材料としてn型半導体を用い、スピン輸送経路内において、第2強磁性層12Bを正、第1強磁性層12Aを負とする電圧を印加した場合、第2強磁性層12Bからチャネル層7を介して第1強磁性層12Aへと電流が流れるとともに、第6領域A6の内部には、第2領域A2側を正、第1領域A1側を負とした電界が生じる。この場合、第1強磁性層12Aによってスピン偏極を起こした電子が、第1強磁性層12Aから注入され、チャネル層7(第6領域A6)を介し、第2強磁性層12Bへと輸送されるが、第6領域A6の内部においては、スピン偏極した電子が流れる方向と同じ方向にスピン偏極した電子を加速させて輸送しようという力(ドリフト電界)が、スピン偏極した電子に加わる。このドリフト電界の強度は、スピン輸送経路である第6領域A6の抵抗率と第6領域A6を流れる電流の電流密度との積で表されるので、第1強磁性層12Aと第2強磁性層12Bとの間に印加される電流を一定とした場合、第6領域A6の抵抗率が高いほど、ドリフト電界強度が大きくなる。これにより、スピン偏極した電子が第2領域A2に高密度に蓄積する。その結果、第2強磁性層12Bと第2領域A2との間の磁気抵抗効果は増大し、第2強磁性層12Bおよび参照電極20の間において検出される出力信号が増大する。
【0052】
チャネル層7の材料としてp型半導体を用い、スピン輸送経路内において、第1強磁性層12Aを正、第2強磁性層12Bを負とする電圧を印加した場合、第1強磁性層12Aからチャネル層7を介して第2強磁性層12Bへと電流が流れるとともに、第6領域A6の内部には、第1領域A1側を正、第2領域A2側を負とした電界が生じる。この場合、第1強磁性層12Aによってスピン偏極を起こしたホールが、第1強磁性層12Aから注入され、チャネル層7(第6領域A6)を介し、第2強磁性層12Bへと輸送されるが、第6領域A6の内部においては、スピン偏極したホールが流れる方向と同じ方向にスピン偏極したホールを加速させて輸送しようという力(ドリフト電界)が、スピン偏極したホールに加わる。チャネル層7の材料がn型半導体の場合と同様に、このドリフト電界の強度は、スピン輸送経路である第6領域A6の抵抗率と第6領域A6を流れる電流の電流密度との積で表されるので、第1強磁性層12Aと第2強磁性層12Bとの間に印加される電流を一定とした場合、第6領域A6の抵抗率が高いほど、ドリフト電界強度が大きくなる。これにより、スピン偏極したホールが第2領域A2に高密度に蓄積する。その結果、第2強磁性層12Bと領域A12との間の磁気抵抗効果は増大し、第2強磁性層12Bおよび参照電極20の間において検出される出力信号が増大する。
【0053】
さらに、スピン検出経路(電圧検出経路)である第7領域A7の抵抗率が小さいほど、電圧検出経路における抵抗値が低下する。その結果、電圧検出経路における出力ノイズが減少する。したがって、磁気抵抗効果素子1は、高いSN比を有することができる。
【0054】
なお、磁気抵抗効果素子1では、第2領域A2の抵抗率(または不純物濃度)の平均値が、第1領域A1の抵抗率(または不純物濃度)の平均値および第4領域A4の抵抗率(または不純物濃度)の平均値と同程度になっているが、第2領域A2の不純物濃度の平均値が、第1領域A1の不純物濃度の平均値および第4領域A4の不純物濃度の平均値よりも大きく、第2領域A2の抵抗率の平均値が、第1領域A1の抵抗率の平均値および第4領域A4の抵抗率の平均値よりも小さくなっていても良い。この場合、第3領域A3の抵抗率の平均値および第5領域A5の抵抗率の平均値は、第2領域A2の抵抗率の平均値よりも小さくなくてもよく、第2領域A2の抵抗率の平均値と同程度でも良い(第3領域A3の不純物濃度の平均値および第5領域A5の不純物濃度の平均値は、第2領域A2の不純物濃度の平均値よりも大きくなくてもよく、第2領域A2の不純物濃度の平均値と同程度でも良い)。この場合、スピン輸送経路の一部である第2領域A2におけるドリフト電界による出力信号増大効果は磁気抵抗効果素子1に比べて小さくなるが、スピン検出経路の抵抗値が磁気抵抗効果素子1に比べて小さくなり、出力ノイズが減少する。したがって、このような場合においても、第6領域A6の抵抗率の平均値が、第7領域A7の抵抗率の平均値よりも大きいことで、高いSN比が得られる。
【0055】
なお、磁気抵抗効果素子1は、チャネル層7のそれぞれの領域(第1領域A1、第2領域A2、第3領域A3、第4領域A4または第5領域A5)において、領域内部に抵抗率(または不純物濃度)の勾配がある場合でも、同様の効果を発揮する。例えば、第7領域A7の抵抗率の平均値を小さくするために、第3領域A3の上部(参照電極20の側)および第5領域A5の上部のみに高濃度の不純物ドーピングが施されていてもよい。
【0056】
また、第1実施形態では、第1強磁性層12Aと、第2強磁性層12Bと、参照電極20とが、チャネル層7の上面側に設けられている例で説明したが、第1強磁性層12A、第2強磁性層12Bおよび参照電極20の少なくとも1つが、チャネル層7の下面側に設けられていてもよい。
【0057】
また、第1実施形態では、チャネル層7の平面視形状が矩形である例で説明したが、チャネル層7の平面視形状が少なくとも一箇所に屈曲部を有する形状(例えば、L字形状またはT字形状)であってもよい。図2に、チャネル層7の平面視形状がT字形状である磁気抵抗効果素子1aの上面図を示す。磁気抵抗効果素子1aでは、図2に示すように、第2領域A2(第2強磁性層12Bと厚み方向から見て重なる領域)においてチャネル層7がT字分岐しており、参照電極20、第3領域A3および第5領域A5がそれぞれ2つずつ設けられている。このように、磁気抵抗効果素子1aにおいても、第2領域A2は、チャネル層7において第1領域A1と第3領域A3の間に位置している。
【0058】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態に係る磁気抵抗効果素子2について、第1実施形態の磁気抵抗効果素子1と異なる点について主に説明し、共通する事項は適宜説明を省略する。
【0059】
磁気抵抗効果素子2は、第1実施形態の磁気抵抗効果素子1に対して、第5領域A5の構成が異なる。図3に示すように、磁気抵抗効果素子2は、第5領域A5に、第7領域A7の抵抗率の平均値よりも抵抗率の平均値が大きい第8領域A8を有している。第8領域A8の不純物濃度の平均値は、第7領域A7の不純物濃度の平均値よりも小さくなっている。図3に示す磁気抵抗効果素子2では、第2領域A2と第8領域A8とが接している。磁気抵抗効果素子2のその他の点は、第1実施形態の磁気抵抗効果素子1と同じである。
【0060】
第1実施形態では、第1領域A1、第2領域A2および第4領域A4(第6領域A6)に相当する非磁性半導体層の領域の上部をフォトレジストなどのマスク材料で覆い、非磁性半導体層のマスク材料で覆われていない部分に追加の不純物ドーピングを施してチャネル層7を作製する例を説明したが、磁気抵抗効果素子2の作製においては、例えば、第6領域A6(第1領域A1、第2領域A2および第4領域A4)および第8領域A8に相当する非磁性半導体層の領域の上部をフォトレジストなどのマスク材料で覆い、非磁性半導体層のマスク材料で覆われていない部分に追加の不純物ドーピングを施してチャネル層7を作製することにより、磁気抵抗効果素子2を作製することができる。
【0061】
このように作製されたチャネル層7では、第1領域A1の抵抗率(または不純物濃度)の平均値、第2領域A2の抵抗率(または不純物濃度)の平均値、第4領域A4の抵抗率(または不純物濃度)の平均値および、第8領域A8の抵抗率(または不純物濃度)の平均値は、それぞれ同程度になっており、第3領域A3の抵抗率(または不純物濃度)の平均値は、第5領域A5から第8領域A8を除いた領域の抵抗率(または不純物濃度)の平均値と同程度になっている。
【0062】
このように、磁気抵抗効果素子2は、第5領域A5に、第7領域A7の抵抗率の平均値よりも抵抗率の平均値が大きい第8領域A8を有している。第2領域A2に蓄積したスピンは、抵抗率が小さい領域に拡散しやすい性質があるが、第8領域A8がスピンの拡散抑制部として機能するため、第2領域A2に蓄積したスピンの第2領域A2から第3領域A3への方向への拡散を抑制することができ、第2領域A2にスピンを高密度に蓄積することができる。その結果、磁気抵抗効果素子2の出力信号を大きくすることができる。
【0063】
さらに、磁気抵抗効果素子2では、第2領域A2と第8領域A8とが接しているので、第8領域A8による、第2領域A2に蓄積したスピンの第2領域A2から第3領域A3への方向への拡散を抑制する効果をさらに大きくすることができる。したがって、磁気抵抗効果素子2の出力信号をさらに大きくすることができる。
【0064】
なお、磁気抵抗効果素子2では、第3領域A3の全域と第5領域A5から第8領域A8を除いた領域の全域に追加の不純物ドーピングが施されて、これらの領域の抵抗率が小さく(不純物濃度が大きく)なっているが、例えば、第5領域A5から第8領域A8を除いた領域の一部のみに追加の不純物ドーピングが施されて、この一部の領域のみの抵抗率が小さく(不純物濃度が大きく)なっている形態でもよい。
【0065】
また、磁気抵抗効果素子2では、第2領域A2と第8領域A8とが接しているが、第2領域A2と第8領域A8とは離間していても良い。この場合でも、第8領域A8による、第2領域A2に蓄積したスピンの第2領域A2から第3領域A3への方向への拡散を抑制する一定の効果が得られ、磁気抵抗効果素子2の出力信号を大きくすることができる。
【0066】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態に係る磁気抵抗効果素子3について、第1実施形態の磁気抵抗効果素子1と異なる点について主に説明し、共通する事項は適宜説明を省略する。
【0067】
磁気抵抗効果素子3は、第1実施形態の磁気抵抗効果素子1に対して、参照電極20の設置位置が異なる。図4に示すように、磁気抵抗効果素子3では、参照電極20は、チャネル層7の側面S20上に第1強磁性層12Aおよび第2強磁性層12Bから離間して設けられ、かつ、チャネル層7を介して第1強磁性層12Aおよび第2強磁性層12Bに電気的に接続されている。
【0068】
チャネル層7は、第1強磁性層12Aとチャネル層7の厚み方向から見て重なる第1領域A31、第2強磁性層12Bとチャネル層7の厚み方向から見て重なる第2領域A32、第2領域A32と参照電極20が設けられた側面S20との間の第3領域A33および、第1領域A1と第2領域A2との間の第4領域A34を有している。また、第2領域A32は、チャネル層7において第1領域A31と第3領域A33の間に位置している。磁気抵抗効果素子3では、チャネル層7の母材は第1〜第4領域(第1領域A31、第2領域A32、第3領域A33および第4領域A34)で同じ(第5領域A35と第6領域A36とで同じ)であり、第1領域A31、第2領域A32および第4領域A34からなる第5領域A35の不純物濃度の平均値が、第2領域A32および第3領域A33からなる第6領域A36の不純物濃度の平均値よりも小さくなっており、これにより、第5領域A35の抵抗率の平均値は、第6領域A36の抵抗率の平均値よりも大きくなっている。より具体的には、第1領域A31の不純物濃度の平均値、第2領域A32の不純物濃度の平均値および第4領域A34の不純物濃度の平均値が、第3領域A33の不純物濃度の平均値よりも小さくなっており、第1領域A31の抵抗率の平均値、第2領域A32の抵抗率の平均値および第4領域A34の抵抗率の平均値は、第3領域A33の抵抗率の平均値よりも大きくなっている。
【0069】
第1領域A31は第1実施形態の磁気抵抗効果素子1の第1領域A1に対応しており、第2領域A32は磁気抵抗効果素子1の第2領域A2に対応しており、第4領域A34は磁気抵抗効果素子1の第4領域A4に対応しており、第5領域A35は磁気抵抗効果素子1の第6領域A6に対応している。第3領域A33は磁気抵抗効果素子1の第3領域A3および第5領域A5に対応しており、第6領域A36は磁気抵抗効果素子1の第7領域A7に対応している。磁気抵抗効果素子3のその他の点は、第1実施形態の磁気抵抗効果素子1と同じである。
【0070】
磁気抵抗効果素子3は、第5領域A35の抵抗率の平均値が、第6領域A36の抵抗率の平均値よりも大きくなっている。したがって、第5領域A35の抵抗率の平均値と第6領域A36の抵抗率の平均値が同じである場合に比べて、スピン輸送経路である第5領域A35の抵抗率の第6領域A36の抵抗率に対する比率は増大し、スピン検出経路である第6領域A36の抵抗値の第5領域A35の抵抗値に対する比率は減少する。第1実施形態の磁気抵抗効果素子1と同様に、スピン輸送経路である第5領域A35の抵抗率が大きいほど出力信号は大きくなり、スピン検出経路である第6領域A36の抵抗値が小さいほど出力ノイズが小さくなるので、磁気抵抗効果素子3は、高いSN比を有することができる。
【0071】
また、第3実施形態では、第1強磁性層12Aと第2強磁性層12Bとが、チャネル層7の上面側に設けられている例で説明したが、第1強磁性層12Aおよび第2強磁性層12Bの少なくとも1つが、チャネル層7の下面側に設けられていてもよい。
【0072】
(第4実施形態)
以下、第4実施形態に係る磁気抵抗効果素子4について、第3実施形態の磁気抵抗効果素子3と異なる点について主に説明し、共通する事項は適宜説明を省略する。
【0073】
磁気抵抗効果素子4は、第3実施形態の磁気抵抗効果素子3に対して、第3領域A33の構成が異なる。図5に示すように、磁気抵抗効果素子4は、第3領域A33に、第6領域A36の抵抗率の平均値よりも抵抗率の平均値が大きい第7領域A37を有している。第7領域A37の不純物濃度の平均値は、第6領域A36の不純物濃度の平均値よりも小さくなっている。図5に示す磁気抵抗効果素子4では、第2領域A32と第7領域A37とが接している。磁気抵抗効果素子4のその他の点は、第3実施形態の磁気抵抗効果素子3と同じである。
【0074】
磁気抵抗効果素子4の作製について説明する。第2実施形態の磁気抵抗効果素子2の場合と同様に、例えば、第5領域A35(第1領域A31、第2領域A32および第4領域A34)および第7領域A37に相当する非磁性半導体層の領域の上部をフォトレジストなどのマスク材料で覆い、非磁性半導体層のマスク材料で覆われていない部分に追加の不純物ドーピングを施してチャネル層7を作製することにより、磁気抵抗効果素子4を作製することができる。
【0075】
このように作製されたチャネル層7では、第1領域A31の抵抗率(または不純物濃度)の平均値、第2領域A32の抵抗率(または不純物濃度)の平均値、第4領域A34の抵抗率(または不純物濃度)の平均値および、第7領域A37の抵抗率(または不純物濃度)の平均値は、それぞれ同程度になっている。
【0076】
このように、磁気抵抗効果素子4は、第3領域A33に、第6領域A36の抵抗率の平均値よりも抵抗率の平均値が大きい第7領域A37を有している。第2領域A32に蓄積したスピンは、抵抗率が小さい領域に拡散しやすい性質があるが、第7領域A37がスピンの拡散抑制部として機能するため、第2領域A32に蓄積したスピンの第2領域A32から第3領域A33への方向への拡散を抑制することができ、第2領域A32にスピンを高密度に蓄積することができる。その結果、磁気抵抗効果素子4の出力信号を大きくすることができる。
【0077】
さらに、磁気抵抗効果素子4では、第2領域A32と第7領域A37とが接しているので、第7領域A37による、第2領域A32に蓄積したスピンの第2領域A32から第3領域A33への方向への拡散を抑制する効果をさらに大きくすることができる。したがって、磁気抵抗効果素子4の出力信号をさらに大きくすることができる。
【0078】
なお、磁気抵抗効果素子4では、第3領域A33から第7領域A37を除いた領域の全域に追加の不純物ドーピングが施されて、これらの領域の抵抗率が小さく(不純物濃度が大きく)なっているが、例えば、第3領域A33から第7領域A37を除いた領域の一部のみに追加の不純物ドーピングが施されて、この一部の領域のみの抵抗率が小さく(不純物濃度が大きく)なっている形態でもよい。
【0079】
また、磁気抵抗効果素子4では、第2領域A32と第7領域A37とが接しているが、第2領域A32と第7領域A37とは離間していても良い。この場合でも、第7領域A37による、第2領域A32に蓄積したスピンの第2領域A32から第3領域A33への方向への拡散を抑制する一定の効果が得られ、磁気抵抗効果素子4の出力信号を大きくすることができる。
【0080】
(第5実施形態)
以下、第5実施形態に係る磁気センサ100について説明する。図6は、磁気センサ100の要部断面図であり、図7は、図6における磁性媒体Mから見た側面図(X方向から見た側面図)である。図6および図7に示すように、磁気センサ100は、支持基板30上に下地絶縁層80を介して、磁気抵抗効果素子1と、磁気抵抗効果素子1を膜面直交方向(Z方向)に挟むように設けられた下部磁気シールド40及び上部磁気シールド50とを有している。また、図7に示すように、磁気センサ100は、磁気抵抗効果素子1の幅方向であるY方向(図6においては紙面直交方向)の両側に設けられたバイアス磁界印加層16を有している。磁気抵抗効果素子1と下部磁気シールド40の間、および磁気抵抗効果素子1とバイアス磁界印加層16の間には絶縁膜4が設けられている。絶縁膜4は、下部磁気シールド40およびバイアス磁界印加層16から磁気抵抗効果素子1を絶縁分離するとともに、下部磁気シールド40およびバイアス磁界印加層16などによるスピンの吸収を抑制するために形成される。バイアス磁界印加層16は、磁気抵抗効果素子1の第1強磁性層12Aを単磁区化するために、第1強磁性層12AにY方向のバイアス磁界を印加する。絶縁膜4の材料は、例えばAlまたはSiOなど、バイアス磁界印加層16の材料は、例えばCoPtまたはCoCrPtなど、下部磁気シールド40及び上部磁気シールド50の材料は、例えばNiFeなどが好ましい。
【0081】
図6に示すように、上部磁気シールド50は、第1強磁性層12Aの上部に設けられている。第2強磁性層12Bの上部には、配線5が設けられている。参照電極20の上部には配線6が設けられている。上部磁気シールド50は磁気抵抗効果素子1に電流を印加するための配線を兼ねている。配線5および6の材料は、上部磁気シールド50の材料と同じであってもよい。上部磁気シールド50と配線5との間には電流源60が接続され、チャネル層7を介して第1強磁性層12Aと第2強磁性層12Bとの間に電流が印加されるようになっている。配線5と配線6との間には電圧計70が接続され、第2強磁性層12Bと参照電極20との間の電圧が検出されるようになっている。
【0082】
磁気センサ100について、検出する外部磁界として、磁性媒体Mから生じる磁界を検出する例で説明する。図6に示すように、磁気センサ100では、磁気抵抗効果素子1の先端部(第1強磁性層12Aの一端)が、磁気センサ100の磁性媒体Mとの対向面に配置されている。磁気センサ100において、第1強磁性層12Aは、磁性媒体Mから生じる磁界に応じてその磁化方向が変化する層(磁化自由層)として機能する。第1強磁性層12Aとしては、特に軟磁性材料が適用される。なお、磁気センサ100の磁性媒体Mとの対向面には、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)等の保護膜が形成されていることが好ましいが、図6および図7においては、保護膜は省略している。
【0083】
図6に示すように、磁気センサ100において、第2強磁性層12Bは、磁性媒体Mから離れた位置に配置されている。このため、第2強磁性層12Bは、磁性媒体Mから生じる磁界の影響を受けにくくなっているため、その磁化方向が一方向に固定された層(磁化固定層)として機能する。第2強磁性層12Bの磁化の固定をより強固にする(第2強磁性層12Bの保磁力を大きくする)ために、第2強磁性層12Bに形状異方性を付与してもよい。または、第2強磁性層12B上に反強磁性層を積層することにより、第2強磁性層12Bと反強磁性層との間に働く交換結合を利用してもよい。または、第2強磁性層12Bをシンセティックピンド構造にすることにより、第2強磁性層12Bの内部に働く交換結合を利用してもよい。
【0084】
チャネル層7を介して第1強磁性層12Aと第2強磁性層12Bとの間に電流が印加され、第2強磁性層12Bと参照電極20の間の電圧を測定することにより、磁性媒体Mから生じる磁界を検出することが可能となる。磁性媒体Mから生じる磁界の変化に応じて、第1強磁性層12Aの磁化方向と第2強磁性層12Bの磁化方向の相対角が変化して、第2強磁性層12Bと参照電極20との間の電圧が変化する。
【0085】
磁気センサ100は、高いSN比を得ることができる磁気抵抗効果素子1を有するので、精度よく外部磁場を検出することができる。
【0086】
第5実施形態の磁気センサ100は、磁性媒体Mとの対向面に第1強磁性層12Aを配置し、第1強磁性層12Aを磁化自由層として機能させる例であるが、上述した磁気抵抗効果素子1aのような、屈曲部を有する形状(例えば、L字形状またはT字形状)のチャネル層7を有する磁気抵抗効果素子を用い、磁性媒体Mとの対向面に第2強磁性層12Bを配置し、第2強磁性層12Bを磁化自由層として機能させるようにしても良い。
【0087】
また、第5実施形態の磁気センサ100は、第1強磁性層12Aと、第2強磁性層12Bと、参照電極20とが、チャネル層7の上面側に設けられている例であるが、第2強磁性層12Bおよび参照電極20の少なくとも1つが、チャネル層7の下面側に設けられていてもよい。この場合、配線5および6のいずれか1つを下部磁気シールド40で代用することが可能となる。
【0088】
また、第5実施形態の磁気センサ100は、磁気抵抗効果素子1を有する例であるが、磁気抵抗効果素子1にかえて、磁気抵抗効果素子1a、磁気抵抗効果素子2、磁気抵抗効果素子3または磁気抵抗効果素子4を用いてもよい。
【符号の説明】
【0089】
1、1a、2、3、4…磁気抵抗効果素子
7…チャネル層
12A…第1強磁性層
12B…第2強磁性層
14A、14B…障壁層
20…参照電極
A1、A31…第1領域
A2、A32…第2領域
A3、A33…第3領域
A4、A34…第4領域
A5、A35…第5領域
A6、A36…第6領域
A7、A37…第7領域
A8…第8領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7