【解決手段】端子を保持する可動ハウジング30を有し、相手接続部材が可動ハウジング30に嵌合され、端子40は、可動ハウジング30の可動側保持部31で保持される接触部41Aを含む可動側被保持部40Bと、接続部と可動側被保持部を連結していて弾性変位可能な弾性部40Aとを有し、端子40の弾性部40Aが、コネクタ幅方向で可動側被保持部40Bよりも外側で弾性部の上端をなす頂部を有し、端子配列方向にて端子位置で、頂部と該頂部より上方に位置する上記可動側保持部31との間に間隔Hが設けられており、上記端子は、コネクタ嵌合方向で間隔Hに対応する部分で、該端子の板面の少なくとも一部が露呈していること、さらに、可動側被保持部31にて該端子の側端縁の少なくとも一部が露呈している。
配列された複数の端子のそれぞれが一端側に回路基板へ接続のための接続部と他端側に嵌合される相手接続部材の接触のために上記接続部よりも上方位置に設けられた接触部とを有し、該端子を保持するハウジングが回路基板に対して可動な可動ハウジングを有し、上記相手接続部材が可動ハウジングに嵌合される回路基板用電気コネクタにおいて、
上記端子は、可動ハウジングの可動側保持部で保持される接触部を含む可動側被保持部と、接続部と可動側被保持部を連結していて回路基板に対して弾性変位可能な弾性部とを有し、
上記端子の弾性部が、コネクタ幅方向で可動側被保持部よりも外側で該弾性部の上端をなす頂部を有し、端子配列方向にて端子位置で、該頂部と該頂部より上方に位置する上記可動側保持部との間に間隔が設けられており、
上記端子は、コネクタ嵌合方向で上記間隔に対応する部分で、該端子の板面の少なくとも一部が露呈していること、さらに、可動側被保持部にて該端子の側端縁の少なくとも一部が露呈していること、
を特徴とする回路基板用電気コネクタ。
ハウジングは、可動ハウジングに加え固定ハウジングをも有し、該固定ハウジングが回路基板に取り付けられるとともに端子の接続部の近傍に形成された固定側被保持部を保持する固定側保持部を有していることとする請求項1に記載の回路基板用電気コネクタ。
端子の弾性部は、コネクタ幅方向にて、該弾性部の一部が該端子の可動側被保持部と重複して位置していることとする請求項1または請求項2に記載の回路基板用電気コネクタ。
端子は、コネクタ嵌合方向で弾性部の頂部とハウジングの可動側保持部との間の間隔に対応する部分で、該端子の板面のみならず側端縁を含む周面の少なくとも一部が露呈していることとする請求項1ないし請求項3のうちの一つに記載の回路基板用電気コネクタ。
端子は、可動側被保持部に曲部と、該曲部よりも延びる先端部とを有し、曲部と先端部のうち少なくとも該先端部が可動ハウジング内に埋設されていることとする請求項1ないし請求項4のうちの一つに記載の回路基板用電気コネクタ。
可動ハウジングは、コネクタ嵌合方向にて弾性部と可動側保持部との間の間隔の範囲で、端子の側端縁を露呈させる孔部がコネクタ幅方向に貫通して形成されていることとする請求項1または請求項2に記載の回路基板用電気コネクタ。
可動ハウジングは、端子配列方向にて隣接する孔部同士間の隔壁を有し、端子配列方向で存在する複数の隔壁は、隣接し合う隔壁がコネクタ幅方向で互いに異なる複数種の壁厚となっていることとする請求項1、請求項2、請求項5ないし請求項7のうちの一つに記載の回路基板用電気コネクタ。
【背景技術】
【0002】
この種の回路基板用電気コネクタとしては、特許文献1そして特許文献2に、端子を保持するハウジングが、回路基板に固定される固定ハウジングと、該固定ハウジングに対して可動な可動ハウジングとを有し、端子が上記固定ハウジングと可動ハウジングに架け渡されているコネクタが開示されている。
【0003】
この特許文献1のコネクタは、回路基板の面上に取り付けられる固定ハウジングが四角枠状をなしていてその内部となる中央部が上下に貫通して開口されており、可動ハウジングの下部がこの中央部内に配置されており、該可動ハウジングの周囲には固定ハウジングとの間に可動ハウジングを固定ハウジングに対して可動とするための空間が形成されている。可動ハウジングは上方に開口した中空部を有し、該中空部に相手接続体としての相手側コネクタが上方から嵌合する。
【0004】
端子は一端側に相手側コネクタと接触接続する接触部が上記可動ハウジングの中空部内に位置し、他端側に回路基板と半田接続される基板接続部が固定ハウジング外に突出して設けられている。
【0005】
特許文献1では、可動ハウジングの下方に固定ハウジングが位置しており、可動ハウジングは、中空部に突出する嵌合突起の側面から、底壁を貫通し、該底壁の下面にまで延びる端子溝が形成されていて、該端子の接触部が底壁を貫通するように下方から取り付けられて、上記端子溝で上記可動ハウジングにより圧入保持されている。また、端子は、その接続部側で固定ハウジングの外壁により圧入保持されている。上記端子は、端子溝からハウジング外に延出している接続部に至る間の範囲に凸弯曲した弾性部を有している。該弾性部は、固定ハウジングと可動ハウジングの間の収容空間に収められていて弾性変位可能となっている。
【0006】
かかる特許文献1に対し、特許文献2では、可動ハウジングに対して下方から取り付けられる端子は接触部から下方に延びていて、可動ハウジングよりも下方に位置する固定ハウジングの内部空間内に及び、その下端が固定ハウジング外に延出し直角に屈曲されて接続部を形成している。上記端子は、上記固定ハウジングの内部空間に形成された収容空間内で上下に延びクランク状をなす弾性部を有している。上記端子はその接触部とその近傍で可動ハウジングにより圧入保持され、接続部近傍で固定ハウジングにより圧入保持されている。
【0007】
かくして、特許文献1そして特許文献2にあっては、端子はその弾性部がハウジングの収容空間内で弾性変位することで、可動ハウジングが固定ハウジングに対して可動となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1そして特許文献2において、端子の接触部側が可動ハウジングに対して圧入取付けにより該可動ハウジングで保持されているが、接触部だけの保持だけでは十分でないので、その保持力を確保するために、コネクタ嵌合方向に延びる接触部に加えて、その下方にハウジングへの貫入あるいは圧入による保持部をも設けている。したがって、このハウジングの保持部、ひいては端子の被保持部は上記嵌合方向に長くなり、この分コネクタが同方向で大型化する。
【0010】
さらに、端子の弾性部について着目すると、特許文献1では、弾性部が接触部に対し、コネクタ幅方向で大きく外方に位置しているために、コネクタが該コネクタ幅方向に大型化している。一方、特許文献2では、弾性部はクランク状をなしてコネクタ嵌合方向に長く延びる形状をなしていて、コネクタ嵌合方向でのコネクタの寸法をきわめて大きくしている。
【0011】
本発明は、コネクタをコネクタ嵌合方向そしてコネクタ幅方向に大型化させることなく、可動ハウジングでの端子の保持力を強固とする、いわゆるフローティング可能な回路基板用電気コネクタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る回路基板用電気コネクタは、配列された複数の端子のそれぞれが一端側に回路基板へ接続のための接続部と他端側に嵌合される相手接続部材の接触のために上記接続部よりも上方位置に設けられた接触部とを有し、該端子を保持するハウジングが回路基板に対して可動な可動ハウジングを有し、上記相手接続部材が可動ハウジングに嵌合される。
【0013】
かかる回路基板用電気コネクタにおいて、本発明では、上記端子は、可動ハウジングの可動側保持部で保持される接触部を含む可動側被保持部と、接続部と可動側被保持部を連結していて回路基板に対して弾性変位可能な弾性部とを有し、上記端子の弾性部が、コネクタ幅方向で可動側被保持部よりも外側で該弾性部の上端をなす頂部を有し、端子配列方向にて端子位置で、該頂部と該頂部より上方に位置する上記可動側保持部との間に間隔が設けられており、上記端子は、コネクタ嵌合方向で上記間隔に対応する部分で、該端子の板面の少なくとも一部が露呈していること、さらに、可動側被保持部にて該端子の側端縁の少なくとも一部が露呈していること、を特徴としている。
【0014】
このような構成の本発明では、端子の弾性部の頂部と可動側保持部との間に間隔があるとともに、この間隔の位置で端子の板面が露呈しているので上記間隔に対応する位置にモールド用の金型が進入でき、金型が板面でコネクタ幅方向での位置決めができるので、ハウジングと端子の一体モールド成型が可能となり、可動ハウジングにおける端子の保持が一体モールドにより強固、かつ端子板面に金型が当接して位置決めすることで、端子のコネクタ幅方向位置出しが正確かつ被保持部に接触部が含まれるので高さ方向で小型化される。ハウジングの一体モールド成型により端子の強固保持になるので、保持長があまり長くなくてよく、その結果、可動ハウジングの高さが小さくなり、コネクタの高さ方向での小型化が可能となる。さらには、可動側被保持部の側端縁が露呈することとしたので、端子配列方向での位置決めも容易に行える。
【0015】
本発明において、ハウジングは、可動ハウジングに加え固定ハウジングをも有し、該固定ハウジングが回路基板に取り付けられるとともに端子の接続部の近傍に形成された固定側被保持部を保持する固定側保持部を有しているようにすることができる。このように、ハウジングが可動ハウジングに加え、固定ハウジングをも有する場合、該固定ハウジングが端子の接続部近傍を保持するようになり、可動ハウジングは、該固定ハウジングに対して可動となる。
【0016】
本発明において、端子の弾性部は、コネクタ幅方向にて、該弾性部の一部が該端子の可動側被保持部と重複して位置していることが好ましい。こうすることで、重複の分だけコネクタ幅方向での小型化が図られるとともに、弾性部が限られた空間内で極力長くなり、弾性変位しやすくなる。
【0017】
本発明において、端子は、コネクタ嵌合方向で弾性部の頂部とハウジングの可動側保持部との間の間隔に対応する部分で、該端子の板面のみならず側端縁を含む周面の少なくとも一部が露呈していることが好ましい。こうすることで、モールド用の金型が端子側端縁とも当接でき、端子配列方向で端子の位置出しがより正確となるとともに、モールド時の金型の支持力が大きくできる。
【0018】
本発明において、端子は、可動側被保持部に曲部と、該曲部よりも延びる先端部とを有し、曲部と先端部のうち少なくとも該先端部が可動ハウジング内に埋設されていることが好ましい。このように、曲部を設けることで、端子はコネクタ高さ方向に寸法を増すことなく端子自体の強度を大きくでき、ハウジングとの密着により保持強度も大きくなり、さらには、曲部の面を露呈させて相手コネクタの案内機能をもたせることもできる。また、ハウジングへの埋設部分で、ハウジングによる保持強度が大きくなる。
【0019】
本発明において、先端部が板厚方向に塑性変形を受けているようにすることができる。このように塑性変形部分を設けることでモールドの際に樹脂との引掛かりがよくハウジングによる端子の保持力が向上する。
【0020】
本発明において、可動ハウジングは、コネクタ嵌合方向にて弾性部と可動側保持部との間の間隔の範囲で、端子の側端縁を露呈させる孔部がコネクタ幅方向に貫通して形成されていることが好ましい。このように孔部を貫通形成すると、モールド用の金型の挿通配置が可能となり、金型位置が正確になるとともにモールド時の支持力が大きくなる。
【0021】
本発明において、可動ハウジングは、端子配列方向にて隣接する孔部同士間の隔壁を有し、端子配列方向で存在する複数の隔壁は、隣接し合う隔壁がコネクタ幅方向で互いに異なる複数種の壁厚となっていることが好ましい。このようにハウジングに異なる壁厚の隔壁を設けることで、複数の隔壁にわたるモールド用の外側金型の厚みがハウジングの薄壁厚部分の位置で大きくできるので該外側金型の強度が大きくなり、ひいてはハウジングの精度の確保ができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、以上のように、端子の弾性部の頂部と可動ハウジングの可動側保持部との間に間隔を設けるとともに、この間隔の位置で端子の板面を露呈させることとしたので、モールド時の金型を横方向から上記間隔の位置に配し、端子の板面を該金型で位置決めできるので、端子と可動ハウジングとを一体モールド成型体とすることができる結果、可動ハウジングによる端子の保持力が強固となり、保持のための長さは、従来の端子の取付け形式に比し、小さくてすみ、その分、高さ方向でのコネクタの小型化が図れる。さらには、可動側被保持部の側端縁が露呈することとしたので、端子配列方向での位置決めが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施の形態を説明する。
【0025】
本実施形態の回路基板用電気コネクタ(以下、「コネクタ」という)1は、他の回路基板用相手電気コネクタ(以下「相手コネクタ」という)2が接続されることで、二つの回路基板の電気的接続を行うために用いられる。本実施形態では、コネクタ1は、
図1(A),(B)において、横置された回路基板P1に接続されるのに対し、相手コネクタ2は上記回路基板P1の横置面に対して垂直に位置する他の回路基板P2に接続される。
図1(A)はコネクタ1と相手コネクタ2が接続される前の状態における断面斜視図、
図1(B)は両コネクタが接続された使用状態における断面斜視図であり、
図2は
図1(A)の断面部分を示す拡大断面図、
図3は
図1(B)の断面部分を示す拡大断面図である。
【0026】
コネクタ1は、
図1(A)にて左右(
図2では紙面に対し直角)方向に延びる絶縁材のハウジング10と、上記左右方向に間隔をもって配列されて該ハウジング10により保持されている複数の端子40とを有している(以下、上記左右方向を端子配列方向という)。該端子40と一体モールド成型される上記ハウジング10は、回路基板P1に対し端子20を介して固定位置に取り付けられる固定ハウジング20と該固定ハウジング20に対して位置が移動可能な可動ハウジング30とから成っている。該可動ハウジング30は端子40を介して固定ハウジング20により支持されている。固定ハウジング20と可動ハウジング30により成るハウジング10は、後に詳述する。
【0027】
端子40は、金属平帯体をその板厚方向に屈曲して作られており、
図2に見られるように、全体を略S字状としその先端をさらに小さく屈曲されている。
【0028】
図2において、左右に位置する端子列の端子は同一形状であり左右方向(コネクタ幅方向)で対称であるので、以下、一方の端子40について説明する。
【0029】
端子40は、コネクタ幅方向で間隔をもって位置する内直状部41、中直状部42、外直状部43のほぼ平行な三つの直状部と、内直状部41の上端からコネクタ幅方向で外方に向け屈曲する上屈曲部44、上記内直状部41の下端と中直状42の下端を結ぶ下屈曲部45、上記中直状部42の上端と外直状部43の上端を結ぶ中屈曲部46、そして上記上屈曲部44から下方に短く下方に直状に延びる上端直状部47、さらには上記外直状部43の下端からコネクタ外方に向け屈曲されて延びる回路基板との半田接続のための接続部48とを有している。上記上端直状部47の下端は、局部的に板厚方向にプレス等により塑性変形を受けている。
【0030】
かかる端子40は、上記内直状部41の上半部41A、上屈曲部44、上端直状部47で後述の可動ハウジング30により保持される可動側被保持部40Bを形成し、外直状部43で後述の固定ハウジング20によりそれぞれ保持される固定側被保持部(固定側被保持部43ともいうことがある)を形成している。このように保持された端子40は、可動ハウジング30によっては保持されていない内直状部41の下半部41Bから下屈曲部45そして中直状部42を経て中屈曲部46までの範囲、すなわち、可動ハウジング30、固定ハウジング20と接していない範囲で弾性部40Aを形成していてる。該弾性部40Aは、主としてコネクタ幅方向、そして若干であるが上下方向と端子配列方向(
図2にて紙面に直角方向)にも弾性変位可能となっている。
【0031】
可動ハウジング30は、端子40の可動側被保持部40B、すなわち上記端子40の上端直状部47から上屈曲部44を経て内直状部41の上半部41Aまでの範囲を一体モールド成型により保持している対向して設けられた二つの壁状の可動側保持部31を有している。上記端子40の上端直状部47は、塑性変形を受けている先端(下端)が該可動ハウジング30の可動側保持部31内に埋設されている。また、上記内直状部41の上半部41Aの下端域、すなわち、上記下半部41Bに隣接する域も、該可動ハウジング30の可動側保持部31内に埋設されている。上記上端直状部47で先端を除く部分、上屈曲部44、そして上記下端域を除く内直状部の上半部41Aは、端子の板面が露呈して可動ハウジング30の可動側保持部31の内壁面と同一レベル面を形成している。上記上屈曲部44は相手コネクタ端子に対し導入部をそして上半部41Aは接触部(以下、接触部41Aと記すこともある)を形成する。かくして、端子40の可動側被保持部40Bは、可動ハウジング30の可動側保持部31内に完全に埋設された両端部分と、板面が露呈して埋設された中間部分とで、該可動ハウジングの可動側保持部31により保持されている。
【0032】
可動ハウジング30は、コネクタ幅方向に延び壁状の二つの可動側保持部31を連結する中間壁32のコネクタ幅方向中央部から下方に延びる支持壁部33を有している。
【0033】
該支持壁部33は、コネクタ幅方向中央部に位置している関係上、中間壁32と相俟って該支持壁部33の側方に没入空間33Aを形成している。
【0034】
上記中間壁32はその強度確保のために上記可動側保持部31の外壁面よりも張り出している張出部32Aを有している。本実施形態では、該張出部32Aは相手コネクタの嵌合接続時の突き当て位置決めに供せられ、上記支持壁部33は、その下面がコネクタ実装時に回路基板に当接するようになっており、また、側面は、上部で下方に向け先細りのテーパをなす斜面部を有している。
【0035】
このように、端子40を一体モールド成型で保持する可動ハウジング30は、モールド用金型との関係で、可動側保持部31が該金型の配置に好都合な形態となっている。
【0036】
先ず、可動側保持部31の上部には、
図5に見られるように、上下方向で端子の上屈曲部44近傍域で上下で隣接して、幅狭凹部31Nと幅広凹部31Wとが、コネクタ幅方向で隣接する端子40同士間にそれぞれ形成されている。該幅狭凹部31Nと幅広凹部31Wには、横方向からモールド成型用の金型の櫛歯状部M1−A1,M1−A2が進入することで、端子40の板厚面、すなわち側端面と当接して端子40の配列方向位置を定める(
図4(B)参照)。端子40は、上記幅狭凹部31N同士間で該端子40の幅広部40Wが、上記幅広凹部31W同士間で該端子40の幅狭部40Nが形成されている。
図5では、上記幅狭凹部31Nは、端子の上屈曲部44より下方部分に形成されているが、これに限定されず、
図6(B)のごとく、端子の上屈曲部44の部分に形成されていてもよい。この場合、金型の櫛歯部は上方から配置されることとなる。
【0037】
さらに、
図5そして
図6(A)に見られるように、上記幅広凹部31Wの下方で、張出部32Aの直上位置には、コネクタ幅方向に貫通した孔部31Cが形成されている。該孔部31Cは、端子配列方向で隣接する端子40同士間に位置しているが、該孔部31Cの側部が端子40の側縁部にまで及んだ幅となっていて、可動ハウジング30の一体モールド成型後に金型を除去した際には、端子40の側縁部の板面そして側端面が可動ハウジング30から露呈するようになっている。端子配列方向に並ぶ複数の孔部31Cを境界づける孔部31C同士間の隔壁31Pは、コネクタ幅方向で厚い部分と薄い部分とが交互の混在しており、上記金型もこれに対応して薄い部分と厚い部分とが混在する櫛歯部M1−A3をなすようになる(
図4(B)参照)。それ故に、金型は厚い部分でその強度を高めている。金型の強度が高いことに起因して、モールド成型時に成型圧による金型の変形が極めて小さくなり、その結果、ハウジングの精度が高まる。
【0038】
次に、固定ハウジング20は、
図2に見られるように、コネクタ幅方向で、端子40の外直状部43の位置に内壁面をもつ側壁21を有する角筒体をなし内部空間が上下に貫通している。該側壁21は、その上端が上記可動ハウジング30の張出部32Aの下面とほぼ同じ高さ位置にあり、下端が上記可動ハウジング30の支柱壁部33の下端よりも若干上方に位置していて、回路基板(図示せず)との間に隙間を形成するようになる。
【0039】
上記側壁21は、その内壁面に側壁31の上端に形成された鍔部22の直下位置から下端まで延びコネクタ幅方向に没した没入空間21Aが形成されている。該没入空間21Aは上記可動ハウジング30の支柱壁部33の側方の没入空間33Aと相俟って、端子20の弾性部40Aを収める収容空間10Aを形成する。該収容空間10Aに端子40の弾性部40Aが収められるので、該弾性部40Aの一部、すなわち、内直状部41の下半部41Bと下屈曲部45の右半部が、コネクタ幅方向にて、上記可動ハウジング30の可動側保持部31と重複して位置するようになる。さらには、上記可動ハウジング30の張出部32Aの下面とほぼ同じ高さ位置に上面をもつ固定ハウジング20の側壁31の鍔部32の直下の没入空間21Aの上部に、上記端子40の弾性部40Aの最上部、すなわち頂部をなす中屈曲部46が位置するようになる。すなわち、上記可動ハウジング30の張出部32Aの下面と端子40の弾性部40Aの頂部との間には、高さ方向で間隔Hが設けられている。また、このように弾性部40Aが上記収容空間10Aに収められた状態では、端子40の接続部48が上記固定ハウジング20の側壁21の下端と回路基板との間の隙間から延出し、該回路基板の面と接続される。
【0040】
このように形成される可動ハウジング30と端子40を有するコネクタ1は、端子40と可動ハウジング30とが一体モールド成型により一体的に形成された後、これに対して上方から固定ハウジングが嵌合組立てされて完成される。以下、その製造工程について
図4にもとづき説明する。
【0041】
先ず、金属板の平帯体を外形づけた後、その板厚方向に屈曲して既述の端子40を用意し、次の金型M内に配列配置される。
【0042】
金型Mは、上型M1と下型M2から成っており、上型M1は、二つの外型M1−Aと一つの内型M1−Bとから成っている。
【0043】
上記外型M1−Aは、
図4(A)にてコネクタ幅方向(左右の横方向)に可動で、
図5に見られる上記可動ハウジング30の上下の幅狭凹部31Wと幅広凹部31N、そしてその下方に孔部31Cにそれぞれ対応する櫛歯部M1−A1,M1−A2,M1−A3を有し(
図4(B)参照)、さらには、可動ハウジング30の張出部32Aと端子40の中屈曲部44の頂部との間の間隔Hに横方向から進入する突部M1−A4とを有するブロック体として形成されている。かかる外型M1−Aは、コネクタ幅方向で端子40に対して外側に位置しており、モールド成型時には、
図4(A)に見られるように、端子40の上屈曲部44を境にして内型M1−Bと当接する。
【0044】
内型M1−Bは、上下に可動で、下方では可動ハウジング30の中間壁32の位置まで達している。
【0045】
下型M2は、上下方向に可動で、コネクタ幅方向で二つの端子40の内直状部41の下半部41B同士間に位置し、可動ハウジング30の支柱壁部33を形成するように上方に開口した縦凹部を有している。
【0046】
このように形成された金型M、すなわち上型M1の二つの外型M1−Aと一つの内型M1−Bそして下型M2が組立配置され、その内部に端子40が配置された状態(
図4(A)参照)で、内部に溶融樹脂を注入して、樹脂が硬化後に、外型M1−Aを側方、そして内型M1−Bを上方へ移動させ、下型M2を下方へ移動させる(
図4(B)参照)。かくして、端子40と可動ハウジング30の一体成型体が得られる。しかる後、この一体成型体に対し、上方から固定ハウジング20を上方から嵌着させる(
図4(C)参照)。該固定ハウジング20は端子40の外直状部43から対応溝21Bに嵌入(圧入)することで、該外直状部43を保持する。
【0047】
金型による可動ハウジング30の端子40との一体モールド成型の際、上記幅広凹部31Wそして幅狭凹部31Nに進入する金型の櫛歯部M1−A1,M1−A2は、端子40の板厚面、すなわち側端面と当接して端子40の配列方向位置を定め、上記孔部31Cに進入する金型の櫛歯部M1−A3は、端子40の側端面さらには側縁の板面とも当接して端子40の配列方向のみならず板厚方向の位置をも定める。なお、端子40の配列方向の位置は、幅広凹部31Wと幅狭凹部31Nに進入する櫛歯部M1−A1,M1−A2により定められているので、孔部31Cに進入する櫛歯部M1−A3は板面に当接するだけでもよい。また、上述のごとくの端子の板厚面(側端面)での当接そして板面での当接は、いずれの凹部31A,31Bあるいは孔部31Cで行ってもよい。
【0048】
このように得られるコネクタ1に対して嵌合接続される相手コネクタ2は次のように構成される。
【0049】
相手コネクタ2は、コネクタ1に対し上方から接続される。該相手コネクタ2は、
図1(A),(B)に見られるように、コネクタ1が取り付けられる回路基板P1に対し直角に位置する他の回路基板P2に取り付けられる。なお、相手コネクタ2が取り付けられる他の回路基板P2は、コネクタ1に取り付けられる回路基板P1と平行に位置してもよい。
【0050】
相手コネクタ2は、
図2に見られるように、二種の端子、すなわち、第一端子50と第二端子60とを有し、互いの接触部が対向して配列されている。第一端子50と第二端子60は、ともに、金属板の板面を維持して作られている。
【0051】
第一端子50は、
図2に見られるごとく、横方向に延びて後述のハウジング70により該ハウジング70の上端位置で固定保持される基部51と、該基部51から下方に延びる接触腕52、横方向にハウジング70外へ延出する接続腕53、さらにハウジング70への固定を強固にする固定腕部54と固定突部55が基部51から下方に延びて設けられている。上記固定腕部54と固定突部55のうち、固定突部55には外側縁に係止突起55Aが設けられていて、上記第一端子50がハウジング70の対応端子溝に圧入された際、上記固定腕部54と固定突部55の外側縁で圧入時にハウジング70からの反力を受けて保持されるとともに、上記係止突起55Aがハウジング70へ喰い込むことで、抜けの防止を図っている。
【0052】
固定腕部51に隣接し下方に延びる接触腕52は、先端がハウジング70の下端近くまで延び弾性を有しており、該先端には外側方に向く三角形状の接触部52Aが設けられている。
【0053】
基部51から右方へ延びハウジング70外に突出する接続腕53は、その先端が上方に向く屈曲部を有し、該屈曲部が接続部53Aとされており、その側縁(右側に位置する側縁)が他の回路基板との半田接続に供する。
【0054】
第二端子60は、ハウジング70により該ハウジング70の右下端位置で保持される基部61と、該基部61の左部から上方に延び、さらに横方向、次に下方への方向を変えて全体として逆U字状をなし弾性を有する接触腕62と、基部61の中間位置から上方へ延びる固定腕部63と、基部61の右端からハウジング70外へ突出する接続部64とを有している。
【0055】
上記接触腕62は、その先端(下端)部がコネクタ幅方向で上記第一端子50の接触腕52と間隔を持って位置し、上下方向では該接触腕52とほぼ同じ位置まで延びており、第一端子50の接触部52Aに対向して外側縁に三角形状の接触部62Aを有している。
【0056】
固定腕部63はその左側縁に係止突起63Aが設けられており、上記第二端子60がハウジング70の対応端子溝に圧入された際、上記固定腕部63が圧入時にハウジング70からの反力を受けて保持されるとともに、上記係止突起63Aがハウジング70へ喰い込むことで、抜けの防止を図っている。
【0057】
接触腕62は、先端がハウジング70の下端近くまでのび弾性を有しており、該先端には外側方に向く三角形状の接触部62Aが設けられている。
【0058】
基部51から右方へ延びハウジング70外に突出する接続腕64は、その先端が下方に向く屈曲部を有し、該屈曲部が接続部64Aとされており、その側縁(右側に位置する側縁)が他の回路基板との半田接続に供する。
【0059】
このようにハウジング70に取り付けられた第一端子50と第二端子60は、それらの接触部52A,62Aが対をなして、前出のコネクタ1の端子40に設けられた一対の接触部(上半部)41Aに接触接続され、また第一端子50と第二端子60の接続部53A,63Aが対をなして、他の回路基板へ半田接続される部位を形成する。
【0060】
上記ハウジング70は、一方(
図2にて左方)の側壁71は上下に長い範囲にわたり設けられ、他方の側壁72は、上下端が切り欠かれた短い範囲に設けられている。コネクタ幅方向で対向する上記側壁71,72の間には、上下に延びる二つの中間壁73,74がコネクタ幅方向で間隔をもって設けられている。一方の中間壁73は、上記一方の側壁71寄りに、そして他方の中間壁74は他方の側壁72寄りに位置している。上記一方の中間壁73は、ハウジング70の上端と間隔をもった位置から下端近傍まで延び、他方の中間壁74はハウジング70の上端側でも下端側でも間隔をもった範囲に形成されている。
【0061】
コネクタ幅方向で上記側壁71と中間壁73との間では、第一端子50の固定腕部54と接触腕部52とを収容する空間を、中間壁73,74より上方でハウジング70の上端までの間は、第一端子50の基部51を収容する横長な空間を、コネクタ幅方向で中間壁73,74の間では第二端子60の接触腕部62を収容する空間を、そして中間壁74とハウジング70の下端までの間は、第二端子60の基部61を収容する空間を、それぞれ形成している。第一端子50の接触腕部52を収容する空間と第二端子60の接触腕部62を収容する空間は、コネクタ1が嵌入するための受入部75を形成する。
【0062】
このように形成されたハウジング70に対し、
図2にて、第一端子50は上方からそして第二端子60は右方から圧入組みされ、第一端子50はその係止突起55A、第二端子60はその係止突起63Aがハウジング70に対して喰い込むことで、それぞれ抜けが防止される。
【0063】
以下、添付図面の
図2、
図3にもとづき、本実施形態のコネクタについての使用要領を説明する。
【0064】
先ず、コネクタ1を接続対象とする回路基板P1は接続部48にて半田接続し、相手コネクタは接続対象とする他の回路基板P2に接続部53A,64Aにて半田接続する(回路基板P1,P2は
図1参照)。
【0065】
しかる後、
図2に見られるように、コネクタ1の上方に相手端子2を嵌合直前位置にもたらし、そのまま降下する。
【0066】
相手コネクタ2が所定位置まで降下してコネクタ1との嵌合接続が完了する。嵌合接続完了状態では、
図3に見られるように、コネクタ1は、端子40の接触部(上半部)41Aを含む可動側被保持部40Bを保持する可動ハウジング30の可動側保持部31が相手コネクタ2の受入部75に進入し、また相手コネクタ2の中間壁73がコネクタ1の両方の可動側保持部31の間に進入する。かくして、相手コネクタ2の第一端子50の接触部52A、第二端子60の接触部62Aはコネクタ1の端子40の接触部41Aと弾性接触する。
【0067】
本発明において、コネクタ1の端子40の弾性部40Aは、
図2に見られるような横S字状のものに限定されず、その形態は各種変形が可能である。例えば、
図7(A)のように、弾性部40Aを単純な横直状部としたり、
図7(B)のように斜直状部としたりすることができる。
【0068】
また、本発明においてコネクタ1は、該コネクタ1が取り付けられている回路基板P1に対し直角方向で相手コネクタ2が嵌合接続されていたが、該コネクタ1がいわゆるライトアングルコネクタであって、相手コネクタ2が上記回路基板P1の面と平行な方向から嵌合接続される形式であってもよい。