【解決手段】導電性繊維で形成された芯部と、該芯部を被覆するように組紐状の圧電性繊維で形成された鞘部と、該鞘部の周囲に設けられた導電層と、を備えた圧電素子であって、該芯部に接続固定された信号用金属製端子と、該導電層に接続固定されたシールド用金属製端子とをさらに備え、該信号用金属製端子と該シールド用金属製端子とが絶縁体を介して互いに固定された、圧電素子。
前記信号用金属製端子は、次のA、Bいずれかの様態で接続固定され、かつ、該信号用金属製端子または該信号用金属製端子に固定された部品により固定された該圧電素子の部分の端部において、該鞘部の組織が解けて該芯部から離れた圧電性繊維が、該鞘部の圧電性繊維全体の20%未満である部分を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の圧電素子。
A)該圧電素子の末端部分を構成する繊維の長さ0.5mm以上の部分を、該信号用金属製端子の一部が把持し、該把持部分または該把持部分から1mm以内の場所において、該圧電素子の芯部と該信号用金属製端子とが直接あるいは導電性材料を介して間接的に電気接続され固定された様態
B)該信号用金属製端子の一部がフォーク状あるいは針状であり、このフォーク状部分または針状部分が該圧電素子の該鞘部に接触しながら該芯部の導電性繊維と直接または導電性材料を介して間接的に接続され、この接続箇所から10mm以内の場所において、該信号用金属製端子の別の部位または該信号用金属製端子に固定された部品により該圧電素子が該信号用金属製端子に固定された様態
該芯部と該信号用金属製端子との接続部分から5mm以内にある該鞘部の圧電性繊維の一部または全部が繊維形状を失い融着した、請求項1〜5のいずれか一項に記載の圧電素子。
該鞘部の表面にはんだまたは導電ペーストからなる、該芯部と電気的に接続された導電性材料を備えており、該鞘部の表面に備えられた該導電性材料と該信号用金属製端子とが接触することで該芯部と該信号用金属製端子とが間接的に電気接続されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の圧電素子。
請求項1〜7のいずれか一項に記載の圧電素子を含む布帛を備える圧電素子において、該信号用金属製端子あるいはシールド用金属製端子が該圧電素子に固定された部分から長さ10mm以内の範囲において、該圧電素子の少なくとも一部が布帛状基材に固定された、圧電素子。
請求項1〜7のいずれか一項に記載の圧電素子が、2本以上、略平行に配置され、それぞれの圧電素子に接続された2つ以上の信号用金属製端子が1つのコネクタハウジングにまとめられ、一括して別のコネクタと接続可能にされている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の圧電素子。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(組紐状圧電素子)
図1は実施形態に係る組紐状圧電素子の構成例を示す模式図である。
組紐状圧電素子1は、導電性繊維Bで形成された芯部3と、芯部3を被覆するように組紐状の圧電性繊維Aで形成された鞘部2と、鞘部2を被覆する導電層4とを備えている。
導電層4による鞘部2の被覆率は25%以上が好ましい。ここで被覆率とは、導電層4を鞘部2へ投影した際の導電層4に含まれる導電性領域の面積と鞘部2の表面積の比率であり、その値は25%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、75%以上であることがさらに好ましい。導電層4の被覆率が25%を下回るとノイズ信号の抑制効果が十分に発揮されない場合がある。導電性領域が導電層4の表面へ露出していない場合、例えば導電性領域を内包する繊維を導電層4として使用して鞘部2を被覆している場合は、その繊維の鞘部2へ投影した際の面積と鞘部2の表面積の比率を被覆率とすることができる。
【0015】
導電性領域とは、導電層4に含まれる導電性を担う部分であり、例えば、導電層4を導電性繊維と絶縁性繊維とで構成した場合の導電性繊維部分をさす。
【0016】
組紐状圧電素子1では、少なくとも一本の導電性繊維Bの外周面を多数の圧電性繊維Aが緻密に取り巻いている。特定の理論に束縛されるものではないが、組紐状圧電素子1に変形が生じると、多数の圧電性繊維Aそれぞれに変形による応力が生じ、それにより多数の圧電性繊維Aそれぞれに電場が生じ(圧電効果)、その結果、導電性繊維Bを取り巻く多数の圧電性繊維Aの電場を重畳した電圧変化が導電性繊維Bに生じるものと推測される。すなわち圧電性繊維Aの組紐状の鞘部2を用いない場合と比較して導電性繊維Bからの電気信号が増大する。それにより、組紐状圧電素子1では、比較的小さな変形で生じる応力によっても、大きな電気信号を取り出すことが可能となる。なお、導電性繊維Bは複数本であってもよい。
【0017】
ここで、圧電性繊維Aは主成分としてポリ乳酸を含むことが好ましい。「主成分として」とは、圧電性繊維Aの成分のうち最も多い成分がポリ乳酸であるとの意味である。ポリ乳酸中の乳酸ユニットは90モル%以上であることが好ましく、95モル%以上であることがより好ましく、98モル%以上がさらに好ましい。
【0018】
また、導電性繊維Bに対する圧電性繊維Aの巻きつけ角度αは15°以上、75°以下であることが好ましい。すなわち、導電性繊維B(芯部3)の中心軸CLの方向に対して、圧電性繊維Aの巻きつけ角度αは15°以上、75°以下であることが好ましい。ただし、本実施形態では、導電性繊維Bの中心軸CLは、圧電性繊維Aの組紐(鞘部2)の中心軸(以下、「組紐軸」ともいう。)と重なることから、圧電性繊維Aの組紐軸の方向に対して、圧電性繊維Aの巻きつけ角度αは15°以上、75°以下であることが好ましい、ということもできる。より大きな電気信号を取り出す観点からは、角度αは25°以上、65°以下であることがより好ましく、35°以上、55°以下であることがさらに好ましく、40°以上、50°以下であることがとりわけ好ましい。角度αがこの角度範囲を外れると、圧電性繊維Aに生じる電界が著しく低下し、それにより導電性繊維Bで得られる電気信号が著しく低下してしまうからである。
なお、上記角度αについては、鞘部2を形成する圧電性繊維Aの主方向と導電性繊維Bの中心軸CLとのなす角ともいうことができ、圧電性繊維Aの一部が弛んでいたり、毛羽だっていてもよい。
【0019】
ここで、圧電性繊維Aに生じる電界が著しく低下する理由は以下のとおりである。圧電性繊維Aはポリ乳酸を主成分とし、圧電性繊維Aの繊維軸の方向に一軸配向している。ここで、ポリ乳酸は、その配向方向(この場合には圧電性繊維Aの繊維軸の方向)に対してせん断応力が生じた場合に電界を生じるが、その配向方向に対して引張応力や圧縮応力が生じた場合に電界をあまり生じない。したがって、組紐軸の方向に平行に変形したときに圧電性繊維Aにせん断応力が生じるようにするためには、圧電性繊維A(ポリ乳酸)の配向方向が組紐軸に対して所定の角度範囲にあることがよいと推測される。
【0020】
なお、組紐状圧電素子1では、本発明の目的を達成する限り、鞘部2では圧電性繊維A以外の他の繊維と組み合わせて混繊等を行ってもよいし、芯部3では導電性繊維B以外の他の繊維と組み合わせて混繊等を行ってもよい。
【0021】
導電性繊維Bの芯部3と組紐状の圧電性繊維Aの鞘部2と、鞘部2を被覆する導電層4とで構成される組紐状圧電素子の長さは特に限定はない。例えば、その組紐状圧電素子は製造において連続的に製造され、その後に必要な長さに切断して利用してもよい。組紐状圧電素子の長さは1mm〜10m、好ましくは、5mm〜2m、より好ましくは1cm〜1mである。長さが短過ぎると繊維形状である利便性が失われ、また、長さが長過ぎると導電性繊維Bの抵抗値を考慮する必要が出てくるであろう。
【0022】
以下、各構成について詳細に説明する。
(導電性繊維)
導電性繊維Bとしては、導電性を示すものであればよく、公知のあらゆるものが用いられる。導電性繊維Bとしては、例えば、金属繊維、導電性高分子からなる繊維、炭素繊維、繊維状あるいは粒状の導電性フィラーを分散させた高分子からなる繊維、あるいは繊維状物の表面に導電性を有する層を設けた繊維が挙げられる。繊維状物の表面に導電性を有する層を設ける方法としては、金属コート、導電性高分子コート、導電性繊維の巻付けなどが挙げられる。なかでも金属コートが導電性、耐久性、柔軟性などの観点から好ましい。金属をコートする具体的な方法としては、蒸着、スパッタ、電解メッキ、無電解メッキなどが挙げられるが生産性などの観点からメッキが好ましい。このような金属をメッキされた繊維は金属メッキ繊維ということができる。
【0023】
金属をコートされるベースの繊維として、導電性の有無によらず公知の繊維を用いることができ、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、塩化ビニル繊維、アラミド繊維、ポリスルホン繊維、ポリエーテル繊維、ポリウレタン繊維等の合成繊維の他、綿、麻、絹等の天然繊維、アセテート等の半合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維を用いることができる。ベースの繊維はこれらに限定されるものではなく、公知の繊維を任意に用いることができ、これらの繊維を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
ベースの繊維にコートされる金属は導電性を示し、本発明の効果を奏する限り、いずれを用いてもよい。例えば、金、銀、白金、銅、ニッケル、スズ、亜鉛、パラジウム、酸化インジウム錫、硫化銅など、およびこれらの混合物や合金などを用いることができる。
【0025】
導電性繊維Bに屈曲耐性のある金属コートした有機繊維を使用すると、導電性繊維が折れることが非常に少なく、圧電素子を用いたセンサーとしての耐久性や安全性に優れる。
【0026】
導電性繊維Bはフィラメントを複数本束ねたマルチフィラメントであっても、また、フィラメント一本からなるモノフィラメントであってもよいし、一本の紡績糸でも、複数本の紡績糸を束ねた糸束形態(撚糸を含む)としてもよくさらに、フィラメントと紡績糸とを組み合わせた長短複合糸としてもよい。マルチフィラメントの方が電気特性の長尺安定性の観点で好ましい。モノフィラメントまたは1本の紡績糸の場合、その単糸径は1μm〜5000μmであり、好ましくは2μm〜100μmである。さらに好ましくは3μm〜50μmである。マルチフィラメント、糸束形態、長短複合糸の場合、フィラメントないし糸数としては、1本〜100000本が好ましく、より好ましくは5本〜500本、さらに好ましくは10本〜100本である。ただし、導電性繊維Bの繊度・本数とは、組紐を作製する際に用いる芯部3の繊度・本数であり、複数本のモノフィラメントで形成されるマルチフィラメントも、複数本の紡績糸を束ねた糸束形態(撚糸を含む)も、フィラメントと紡績糸とを組み合わせた長短複合糸も、いずれも一本の導電性繊維Bと数えるものとする。ここで芯部3とは、導電性繊維以外の繊維を用いた場合であっても、それを含めた全体の量とする。
【0027】
繊維の直径が小さいと強度が低下しハンドリングが困難となり、また、直径が大きい場合にはフレキシブル性が犠牲になる。導電性繊維Bの断面形状としては円または楕円であることが、圧電素子の設計および製造の観点で好ましいが、これに限定されない。
【0028】
また、圧電性高分子からの電気出力を効率よく取り出すため、電気抵抗は低いことが好ましく、体積抵抗率としては10
−1Ω・cm以下であることが好ましく、より好ましくは10
−2Ω・cm以下、さらに好ましくは10
−3Ω・cm以下である。ただし、電気信号の検出で十分な強度が得られるのであれば導電性繊維Bの抵抗率はこの限りではない。
【0029】
導電性繊維Bは、本発明の用途から、繰り返しの曲げやねじりといった動きに対して耐性がなければならない。その指標としては、結節強さが、より大きいものが好まれる。結節強さはJIS L1013:2010 8.6の方法で測定することができる。本発明に適当な結節強さの程度としては、0.5cN/dtex以上であることが好ましく、1.0cN/dtex以上であることがより好ましく、1.5cN/dtex以上であることがさらに好ましく、2.0cN/dtex以上であることが最も好ましい。また、別の指標としては、曲げ剛性が、より小さいものが好まれる。曲げ剛性は、カトーテック(株)製KES―FB2純曲げ試験機などの測定装置で測定されるのが一般的である。本発明に適当な曲げ剛性の程度としては、東邦テナックス(株)製の炭素繊維“テナックス”(登録商標)HTS40−3Kよりも小さいほうが好ましい。具体的には、導電性繊維の曲げ剛性が0.05×10
−4N・m
2/m以下であることが好ましく、0.02×10
−4N・m
2/m以下であることがより好ましく、0.01×10
−4N・m
2/m以下であることがさらに好ましい。
【0030】
(圧電性繊維)
圧電性繊維Aの材料である圧電性高分子としてはポリフッ化ビニリデンやポリ乳酸のような圧電性を示す高分子を利用できるが、本実施形態では上記のように圧電性繊維Aは主成分としてポリ乳酸を含むことが好適である。ポリ乳酸は、例えば溶融紡糸後に延伸によって容易に配向して圧電性を示し、ポリフッ化ビニリデンなどで必要となる電界配向処理が不要な点で生産性に優れている。しかしこのことは、本発明を実施するに際してポリフッ化ビニリデンその他の圧電性材料の使用を排除することを意図するものではない。
【0031】
ポリ乳酸としては、その結晶構造によって、L−乳酸、L−ラクチドを重合してなるポリ−L−乳酸、D−乳酸、D−ラクチドを重合してなるポリ−D−乳酸、さらに、それらのハイブリッド構造からなるステレオコンプレックスポリ乳酸などがあるが、圧電性を示すものであればいずれも利用できる。圧電率の高さの観点で好ましくは、ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸である。ポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸はそれぞれ、同じ応力に対して分極が逆になるために、目的に応じてこれらを組み合わせて使用することも可能である。
【0032】
ポリ乳酸の光学純度は99%以上であることが好ましく、99.3%以上であることがより好ましく、99.5%以上であることがさらに好ましい。光学純度が99%未満であると著しく圧電率が低下する場合があり、圧電性繊維Aの形状変化よって十分な電気信号を得ることが難しくなる場合がある。特に、圧電性繊維Aは、主成分としてポリ−L−乳酸またはポリ−D−乳酸を含み、これらの光学純度が99%以上であることが好ましい。
【0033】
ポリ乳酸を主成分とする圧電性繊維Aは、製造時に延伸されて、その繊維軸方向に一軸配向している。さらに、圧電性繊維Aは、その繊維軸方向に一軸配向しているだけでなく、ポリ乳酸の結晶を含むものであることが好ましく、一軸配向したポリ乳酸の結晶を含むものであることがより好ましい。なぜなら、ポリ乳酸はその結晶性が高いことおよび一軸配向していることでより大きな圧電性を示すためである。
【0034】
結晶性および一軸配向性はホモPLA結晶化度X
homo(%)および結晶配向度Ao(%)で求められる。本発明の圧電性繊維Aとしては、ホモPLA結晶化度X
homo(%)および結晶配向度Ao(%)が下記式(1)を満たすことが好ましい。
X
homo×Ao×Ao÷10
6≧0.26 (1)
上記式(1)を満たさない場合、結晶性および/または一軸配向性が十分でなく、動作に対する電気信号の出力値が低下したり、特定方向の動作に対する信号の感度が低下したりするおそれがある。上記式(1)の左辺の値は、0.28以上がより好ましく、0.3以上がさらに好ましい。ここで、各々の値は下記に従って求める。
【0035】
ホモポリ乳酸結晶化度X
homo:
ホモポリ乳酸結晶化度X
homoについては、広角X線回折分析(WAXD)による結晶構造解析から求める。広角X線回折分析(WAXD)では、リガク製ultrax18型X線回折装置を用いて透過法により、以下条件でサンプルのX線回折図形をイメージングプレートに記録する。
X線源: Cu−Kα線(コンフォーカル ミラー)
出力: 45kV×60mA
スリット: 1st:1mmΦ,2nd:0.8mmΦ
カメラ長: 120mm
積算時間: 10分
サンプル: 35mgのポリ乳酸繊維を引き揃え3cmの繊維束とする。
得られるX線回折図形において方位角にわたって全散乱強度I
totalを求め、ここで2θ=16.5°,18.5°,24.3°付近に現れるホモポリ乳酸結晶に由来する各回折ピークの積分強度の総和ΣI
HMiを求める。これらの値から下式(2)に従い、ホモポリ乳酸結晶化度X
homoを求める。
ホモポリ乳酸結晶化度X
homo(%)=ΣI
HMi/I
total×100 (2)
なお、ΣI
HMiは、全散乱強度においてバックグランドや非晶による散漫散乱を差し引くことによって算出する。
【0036】
(2)結晶配向度Ao:
結晶配向度Aoについては、上記の広角X線回折分析(WAXD)により得られるX線回折図形において、動径方向の2θ=16.5°付近に現れるホモポリ乳酸結晶に由来する回折ピークについて、方位角(°)に対する強度分布をとり、得られた分布プロファイルの半値幅の総計Σ
Wi(°)から次式(3)より算出する。
結晶配向度Ao(%)=(360−ΣW
i)÷360×100 (3)
【0037】
なお、ポリ乳酸は加水分解が比較的速いポリエステルであるから、耐湿熱性が問題となる場合においては、公知の、イソシアネート化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物などの加水分解防止剤を添加してもよい。また、必要に応じてリン酸系化合物などの酸化防止剤、可塑剤、光劣化防止剤などを添加して物性改良してもよい。
【0038】
また、ポリ乳酸は他のポリマーとのアロイとして用いてもよいが、ポリ乳酸を主たる圧電性高分子として用いるならば、アロイの全質量を基準として少なくとも50質量%以上でポリ乳酸を含有していることが好ましく、さらに好ましくは70質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。
【0039】
アロイとする場合のポリ乳酸以外のポリマーとしては、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート共重合体、ポリメタクリレート等が好適な例として挙げられるが、これらに限定されるものではなく、本発明で目的とする圧電性を奏する限り、どのようなポリマーを用いてもよい。
【0040】
圧電性繊維Aはフィラメントを複数本束ねたマルチフィラメントであっても、また、フィラメント一本からなるモノフィラメントであってもよいし、一本の紡績糸でも、複数本の紡績糸を束ねた糸束形態(撚糸を含む)としてもよく、さらに、フィラメントと紡績糸とを組み合わせた長短複合糸としてもよい。モノフィラメントまたは1本の紡績糸の場合、その単糸径は1μm〜5mmであり、好ましくは5μm〜2mm、さらに好ましくは10μm〜1mmである。マルチフィラメント、糸束形態、長短複合糸の場合、その単糸径は0.1μm〜5mmであり、好ましくは2μm〜100μm、さらに好ましくは3μm〜50μmである。マルチフィラメント、糸束形態、長短複合糸のフィラメントないし糸数としては、1本〜100000本が好ましく、より好ましくは50本〜50000本、さらに好ましくは100本〜20000本である。ただし、圧電性繊維Aの繊度や本数については、組紐を作製する際のキャリア1つあたりの繊度、本数であり、複数本のモノフィラメントで形成されるマルチフィラメントも、複数本の紡績糸を束ねた糸束形態(撚糸を含む)も、フィラメントと紡績糸とを組み合わせた長短複合糸も、いずれも一本の圧電性繊維Aと数えるものとする。ここで、キャリア1つの中に、圧電性繊維以外の繊維を用いた場合であっても、それを含めた全体の量とする。
【0041】
このような圧電性高分子を圧電性繊維Aとするためには、高分子から繊維化するための公知の手法を、本発明の効果を奏する限りいずれも採用することができる。例えば、圧電性高分子を押し出し成型して繊維化する手法、圧電性高分子を溶融紡糸して繊維化する手法、圧電性高分子を乾式あるいは湿式紡糸により繊維化する手法、圧電性高分子を静電紡糸により繊維化する手法、フィルムを形成した後に細くカットする手法、などを採用することができる。これらの紡糸条件は、採用する圧電性高分子に応じて公知の手法を適用すればよく、通常は工業的に生産の容易な溶融紡糸法を採用すればよい。さらに、繊維を形成後には形成された繊維を延伸する。それにより一軸延伸配向しかつ結晶を含む大きな圧電性を示す圧電性繊維Aが形成される。
【0042】
また、圧電性繊維Aは、上記のように作製されたものを組紐とする前に、染色、撚糸、合糸、熱処理などの処理をすることができる。
【0043】
さらに、圧電性繊維Aは、組紐を形成する際に繊維同士が擦れて断糸したり、毛羽が出たりする場合があるため、その強度と耐摩耗性は高い方が好ましく、強度は1.5cN/dtex以上であることが好ましく、2.0cN/dtex以上であることがより好ましく、2.5cN/dtex以上であることがさらに好ましく、3.0cN/dtex以上であることが最も好ましい。耐摩耗性は、JIS L1095 9.10.2 B法などで評価することができ、摩擦回数は100回以上が好ましく、1000回以上であることがより好ましく、5000回以上であることがさらに好ましく、10000回以上であることが最も好ましい。耐摩耗性を向上させるための方法は特に限定されるものではなく、公知のあらゆる方法を用いることができ、例えば、結晶化度を向上させたり、微粒子を添加したり、表面加工したりすることができる。また、組紐に加工する際に、繊維に潤滑剤を塗布して摩擦を低減させることもできる。
【0044】
また、圧電性繊維の収縮率は、前述した導電性繊維の収縮率との差が小さいことが好ましい。収縮率差が大きいと、組紐作製後や布帛作製後の後処理工程や実使用時に熱がかかった時や経時変化により組紐が曲がったり、布帛の平坦性が悪くなったり、圧電信号が弱くなってしまう場合がある。収縮率を後述の沸水収縮率で定量化した場合、圧電性繊維の沸水収縮率S(p)および導電性繊維の沸水収縮率S(c)が下記式(4)を満たすことが好適である。
|S(p)−S(c)|≦10 (4)
上記式(4)の左辺は5以下であることがより好ましく、3以下であればさらに好ましい。
【0045】
また、圧電性繊維の収縮率は、導電性繊維以外の繊維、例えば絶縁性繊維の収縮率との差も小さいことが好ましい。収縮率差が大きいと、組紐作製後や布帛作製後の後処理工程や実使用時に熱がかかった時や経時変化により組紐が曲がったり、布帛の平坦性が悪くなったり、圧電信号が弱くなってしまう場合がある。収縮率を沸水収縮率で定量化した場合、圧電性繊維の沸水収縮率S(p)および絶縁性繊維の沸水収縮率S(i)が下記式(5)を満たすことが好適である。
|S(p)−S(i)|≦10 (5)
上記式(5)の左辺は5以下であることがより好ましく、3以下であればさらに好ましい。
【0046】
また、圧電性繊維の収縮率は小さい方が好ましい。例えば収縮率を沸水収縮率で定量化した場合、圧電性繊維の収縮率は15%以下であることが好ましく、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下、最も好ましくは3%以下である。収縮率を下げる手段としては、公知のあらゆる方法を適用することができ、例えば、熱処理により非晶部の配向緩和や結晶化度を上げることにより収縮率を低減することができ、熱処理を実施するタイミングは特に限定されず、延伸後、撚糸後、組紐化後、布帛化後などが挙げられる。なお、上述の沸水収縮率は以下の方法で測定するものとする。枠周1.125mの検尺機で捲数20回のカセを作り、0.022cN/dtexの荷重を掛けて、スケール板に吊るして初期のカセ長L0を測定した。その後、このカセを100℃の沸騰水浴中で30分間処理後、放冷し再び上記荷重を掛けてスケール板に吊るし収縮後のカセ長Lを測定した。測定されたL0およびLを用いて下記式(6)により沸水収縮率を計算する。
沸水収縮率=(L0−L)/L0×100(%) (6)
【0047】
(被覆)
導電性繊維B、すなわち芯部3は、圧電性繊維A、すなわち組紐状の鞘部2で表面が被覆されている。導電性繊維Bを被覆する鞘部2の厚みは1μm〜10mmであることが好ましく、5μm〜5mmであることがより好ましく、10μm〜3mmであることがさらに好ましい、20μm〜1mmであることが最も好ましい。薄すぎると強度の点で問題となる場合があり、また、厚すぎると組紐状圧電素子1が硬くなり変形し難くなる場合がある。なお、ここで言う鞘部2とは芯部3に隣接する層のことを指す。
【0048】
組紐状圧電素子1において、鞘部2の圧電性繊維Aの総繊度は、芯部3の導電性繊維Bの総繊度の1/2倍以上、20倍以下であることが好ましく、1倍以上、15倍以下であることがより好ましく、2倍以上、10倍以下であることがさらに好ましい。圧電性繊維Aの総繊度が導電性繊維Bの総繊度に対して小さ過ぎると、導電性繊維Bを囲む圧電性繊維Aが少な過ぎて導電性繊維Bが十分な電気信号を出力できず、さらに導電性繊維Bが近接する他の導電性繊維に接触するおそれがある。圧電性繊維Aの総繊度が導電性繊維Bの総繊度に対して大き過ぎると、導電性繊維Bを囲む圧電性繊維Aが多過ぎて組紐状圧電素子1が硬くなり変形し難くなる。すなわち、いずれの場合にも組紐状圧電素子1がセンサーとして十分に機能しなくなる。
ここでいう総繊度とは、鞘部2を構成する圧電性繊維A全ての繊度の和であり、例えば、一般的な8打組紐の場合には、8本の繊維の繊度の総和となる。
【0049】
また、組紐状圧電素子1において、鞘部2の圧電性繊維Aの一本あたりの繊度は、導電性繊維Bの総繊度の1/20倍以上、2倍以下であることが好ましく、1/15倍以上、1.5倍以下であることがより好ましく、1/10倍以上、1倍以下であることがさらに好ましい。圧電性繊維A一本あたりの繊度が導電性繊維Bの総繊度に対して小さ過ぎると、圧電性繊維Aが少な過ぎて導電性繊維Bが十分な電気信号を出力できず、さらに圧電性繊維Aが切断するおそれがある。圧電性繊維A一本あたりの繊度が導電性繊維Bの総繊度に対して大き過ぎると、圧電性繊維Aが太過ぎて組紐状圧電素子1が硬くなり変形し難くなる。すなわち、いずれの場合にも組紐状圧電素子1がセンサーとして十分に機能しなくなる。
【0050】
なお、導電性繊維Bに金属繊維を用いた場合や、金属繊維を導電性繊維Aあるいは圧電性繊維Bに混繊した場合は、繊度の比率は上記の限りではない。本発明において、上記比率は、接触面積や被覆率、すなわち、面積および体積の観点で重要であるからである。例えば、それぞれの繊維の比重が2を超えるような場合には、繊維の平均断面積の比率が上記繊度の比率であることが好ましい。
【0051】
圧電性繊維Aと導電性繊維Bとはできるだけ密着していることが好ましいが、密着性を改良するために、導電性繊維Bと圧電性繊維Aとの間にアンカー層や接着層などを設けてもよい。
【0052】
被覆の方法は導電性繊維Bを芯糸として、その周りに圧電性繊維Aを組紐状に巻きつける方法が取られる。一方、圧電性繊維Aの組紐の形状は、印加された荷重で生じる応力に対して電気信号を出力することが出来れば特に限定されるものではないが、芯部3を有する8打組紐や16打組紐が好ましい。
【0053】
導電性繊維Bと圧電性繊維Aの形状としては特に限定されるものではないが、できるだけ同心円状に近いことが、好ましい。なお、導電性繊維Bとしてマルチフィラメントを用いる場合、圧電性繊維Aは、導電性繊維Bのマルチフィラメントの表面(繊維周面)の少なくとも一部が接触しているように被覆していればよく、マルチフィラメントを構成するすべてのフィラメント表面(繊維周面)に圧電性繊維Aが被覆していてもよいし、被覆していなくともよい。導電性繊維Bのマルチフィラメントを構成する内部の各フィラメントへの圧電性繊維Aの被覆状態は、圧電性素子としての性能、取扱い性等を考慮して、適宜設定すればよい。
【0054】
本発明の組紐状圧電素子1は、その表面に電極を存在させる必要が無いため、組紐状圧電素子1自体をさらに被覆する必要がなく、また、誤動作しにくいという利点がある。
【0055】
(導電層)
導電層4の様態としては、コーティングの他、フィルム、布帛、繊維の巻き付けが考えられ、またそれらを組み合わせてもよい。
【0056】
導電層4を形成するコーティングには導電性を示す物質を含むものが使用されていればよく、公知のあらゆるものが用いられる。例えば、金属、導電性高分子、導電性フィラーを分散させた高分子が挙げられる。
【0057】
導電層4をフィルムの巻き付けにより形成する場合は、導電性高分子、導電性フィラーを分散させた高分子を製膜して得られるフィルムが用いられ、また表面に導電性を有する層を設けたフィルムが用いられてもよい。
【0058】
導電層4を布帛の巻き付けにより形成する場合は、後述する導電性繊維6を構成成分とする布帛が用いられる。
【0059】
導電層4を繊維の巻き付けにより形成する場合、その手法としては、カバーリング、編物、組物が考えられる。また、使用する繊維は、導電性繊維6であり、導電性繊維6は、上記導電性繊維Bと同一種であっても異種の導電性繊維であってもよい。導電性繊維6としては、例えば、金属繊維、導電性高分子からなる繊維、炭素繊維、繊維状あるいは粒状の導電性フィラーを分散させた高分子からなる繊維、あるいは繊維状物の表面に導電性を有する層を設けた繊維が挙げられる。繊維状物の表面に導電性を有する層を設ける方法としては、金属コート、導電性高分子コート、導電性繊維の巻付けなどが挙げられる。なかでも金属コートが導電性、耐久性、柔軟性などの観点から好ましい。金属をコートする具体的な方法としては、蒸着、スパッタ、電解メッキ、無電解メッキなどが挙げられるが、生産性などの観点からメッキが好ましい。このような金属をメッキされた繊維は金属メッキ繊維ということができる。
【0060】
金属をコートされるベースの繊維として、導電性の有無によらず公知の繊維を用いることができ、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、塩化ビニル繊維、アラミド繊維、ポリスルホン繊維、ポリエーテル繊維、ポリウレタン繊維等の合成繊維の他、綿、麻、絹等の天然繊維、アセテート等の半合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維を用いることができる。ベースの繊維はこれらに限定されるものではなく、公知の繊維を任意に用いることができ、これらの繊維を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
ベースの繊維にコートされる金属は導電性を示し、本発明の効果を奏する限り、いずれを用いてもよい。例えば、金、銀、白金、銅、ニッケル、スズ、亜鉛、パラジウム、酸化インジウム錫、硫化銅など、およびこれらの混合物や合金などを用いることができる。
【0062】
導電性繊維6に屈曲耐性のある金属コートした有機繊維を使用すると、導電性繊維が折れることが非常に少なく、圧電素子を用いたセンサーとしての耐久性や安全性に優れる。
【0063】
導電性繊維6はフィラメントを複数本束ねたマルチフィラメントであっても、また、フィラメント一本からなるモノフィラメントであってもよいし、一本の紡績糸でも、複数本の紡績糸を束ねた糸束形態(撚糸を含む)としてもよくさらに、フィラメントと紡績糸とを組み合わせた長短複合糸としてもよい。マルチフィラメントの方が電気特性の長尺安定性の観点で好ましい。モノフィラメントまたは1本の紡績糸の場合、その単糸径は1μm〜5000μmであり、好ましくは2μm〜100μmである。さらに好ましくは3μm〜50μmである。マルチフィラメント、糸束形態、長短複合糸の場合、フィラメントないし糸数としては、1本〜100000本が好ましく、より好ましくは5本〜500本、さらに好ましくは10本〜100本である。
【0064】
繊維の直径が小さいと強度が低下しハンドリングが困難となり、また、直径が大きい場合にはフレキシブル性が犠牲になる。導電性繊維6の断面形状としては円または楕円であることが、圧電素子の設計および製造の観点で好ましいが、これに限定されない。
【0065】
また、ノイズ信号の抑制効果を高めるため、電気抵抗は低いことが好ましく、体積抵抗率としては10
-1Ω・cm以下であることが好ましく、より好ましくは10
-2Ω・cm以下、さらに好ましくは10
-3Ω・cm以下である。ただし、ノイズ信号の抑制効果が得られるのであれば抵抗率はこの限りではない。
【0066】
導電性繊維6は、本発明の用途から、繰り返しの曲げやねじりといった動きに対して耐性がなければならない。その指標としては、結節強さが、より大きいものが好まれる。結節強さはJIS L1013 8.6の方法で測定することができる。本発明に適当な結節強さの程度としては、0.5cN/dtex以上であることが好ましく、1.0cN/dtex以上であることがより好ましく、1.5cN/dtex以上であることがさらに好ましく、2.0cN/dtex以上であることが最も好ましい。また、別の指標としては、曲げ剛性が、より小さいものが好まれる。曲げ剛性は、カトーテック(株)製KES―FB2純曲げ試験機などの測定装置で測定されるのが一般的である。本発明に適当な曲げ剛性の程度としては、東邦テナックス(株)製の炭素繊維“テナックス”(登録商標)HTS40−3Kよりも小さいほうが好ましい。具体的には、導電性繊維の曲げ剛性が0.05×10
-4N・m
2/m以下であることが好ましく、0.02×10
-4N・m
2/m以下であることがより好ましく、0.01×10
-4N・m
2/m以下であることがさらに好ましい。
【0067】
(端子)
本発明の組紐状圧電素子1は、その芯部に接続固定された信号用金属製端子と、鞘部の周囲に設けられた導電層4に接続固定されたシールド用金属製端子とをさらに備え、絶縁体を介して信号用金属製端子とシールド用金属製端子とが互いに固定されており、これら2つの金属製端子が一体のコネクタ部品として取り扱えるため、信号を処理する回路への接続が簡便かつ確実に行え、安定的にノイズを低減できる。
また、前記シールド用金属製端子は、前記信号用金属製端子を絶縁体を介して覆って保持していることが、端子部分で侵入するノイズの低減の観点から、好ましい。ここで覆っているとは、信号用金属製端子に近接してシールド用金属製端子が配置され、その状態で正面図、背面図、左側面図、右側面図、平面図及び底面図に投影したときに、各図における信号用金属製端子の領域の合計面積のうちシールド用金属製端子の領域が重なる面積の割合が50%以上である場合をさす。なお、別の端子と信号用金属製端子とを接続するために必要な開口部や絶縁体を設けてあってもよい。
【0068】
本発明の組紐状圧電素子1の信号用金属製端子は、その芯部に、次のA、Bいずれかの様態で接続固定されていることが好ましい。
A)組紐状圧電素子の末端部分を構成する繊維の長さ0.5mm以上の部分を、信号用金属製端子の一部が把持し、該把持部分または該把持部分から1mm以内の場所において、該組紐状圧電素子の芯部と信号用金属製端子とが直接あるいは導電性材料を介して間接的に接続固定された様態。
B)信号用金属製端子の一部がフォーク状あるいは針状であり、このフォーク状部分あるいは針状部分が組紐状圧電素子の鞘部に接触しながら芯部の導電性繊維と直接あるいは導電性材料を介して間接的に接続され、この接続箇所から10mm以内の場所において、信号用金属製端子の別の部位あるいは信号用金属製端子に固定された部品により該組紐状圧電素子が信号用金属製端子に固定された様態。
【0069】
(様態Aによる接続)
図2(様態A)は実施形態にかかる前記Aの接続様態の構成例を示す模式図である。
組紐状圧電素子の末端を構成する圧電性繊維および導電性繊維は、信号用金属製端子の一部である把持部分によって把持されている。把持された状態とは、信号用金属製端子の把持部分によって組紐状圧電素子が挟み込まれあるいは巻き込まれて互いに固定されている状態を指す。爪状に成形された信号用金属製端子が工具により塑性変形させられて前記の把持された状態となる構造や、金属製端子あるいは絶縁部に設けられた係合部により係合された状態となる構造が好ましく採用される。信号用金属製端子は
図2の右側部分に別の端子と接続できる形状を有している。信号用金属製端子は絶縁体を介してシールド用金属製端子に固定されており、シールド用金属製端子は信号用金属製端子を覆うよう配置されている。シールド用金属製端子は把持部分を有しており、この把持部分によって導電層4を把持することで導電層4と電気的に接続され固定されている。
このような接続が行えるコネクタ部品として、特開平4−282580号公報、特開2002−324636号公報、特開2012−79652号公報などに開示されている同軸コネクタを好適に用いることができる。
【0070】
信号用金属製端子の把持部分は長さ0.5mm以上あることが好ましく、これより短い場合は、組紐状圧電素子と信号用金属製端子との固定が弱く、ウェアラブルデバイス用途などで様々な力が素子に加わる場合、組紐状圧電素子と信号用金属製端子とが離れてしまうか、電気的接続が不安定になる場合がある。把持部分の長さはより好ましくは0.7mm以上であり、さらに好ましくは1.0mm以上である。ここで把持部分の長さとは、組紐状圧電素子を信号用金属製端子が把持している長さで、組紐状圧電素子の長さ方向に測定した長さであり、信号用金属製端子が
図2のように複数個所で組紐状圧電素子を把持している場合は、その各把持部分の長さの合計である。
【0071】
信号用金属製端子の把持部分または把持部分から1mm以内の場所において、組紐状圧電素子の芯部と信号用金属製端子とは直接あるいは導電性材料を介して間接的に接続されている。
図2には特に示していないが、本発明では後述する通り、組紐状圧電素子の鞘部が信号用金属製端子との固定部分において解れていないことが好ましく、そのため信号用金属製端子の把持部においても鞘部の被覆は完全には除去されておらず、鞘部の融解による部分的除去や、はんだや導電ペーストなどの導電性材料の付与により、組紐状圧電素子の芯部と信号用金属製端子が電気的に接続されることを可能にしている。ただし、組紐状圧電素子の末端における切断作業や鞘部の除去作業により鞘部が解れている場合でも、信号用金属製端子を固定する絶縁体が十分に鞘部を把持しており、実質的に鞘部が解れていないとみなせる場合、すなわち有害なノイズ発生源にならない場合にはこの限りではない。
【0072】
(様態Bによる接続)
図3(様態Bフォーク状)は実施形態にかかる前記様態Bのフォーク状の部分を備える信号用金属製端子による接続様態の構成例を示す模式図である。
図4(様態B針状)は実施形態にかかる前記様態Bの針状の部分を備える信号用金属製端子による接続様態の構成例を示す模式図である。
図3および
図4においては、それぞれの断面図に示す通り、信号用金属製端子の一部であるフォーク状部分あるいは針状部分が、組紐状圧電素子の鞘部に接触しながら芯部の導電性繊維と直接あるいは導電性材料を介して間接的に接続されている。信号用金属製端子は各図の右側部分に別の端子と接続できる形状を有している。信号用金属製端子は絶縁体を介してシールド用金属製端子に固定されており、シールド用金属製端子は信号用金属製端子を覆うよう配置されている。シールド用金属製端子は把持部分を有しており、この把持部分によって導電層4を把持することで導電層4と電気的に接続され固定されている。
このような接続が行えるコネクタ部品として、特開2006−277960号公報に開示されているスタック型ケーブルコネクタを好適に用いることができる。
【0073】
様態Bにおいては、信号用金属製端子のフォーク状部分あるいは針状部分のみによる組紐状圧電素子の固定力が不十分である場合には、信号用金属製端子の別の部位あるいは信号用金属製端子に固定された部品によっても組紐状圧電素子が信号用金属製端子に固定されることが好ましい。また、このような追加の固定部位は、信号用金属製端子と芯部の導電性繊維の接続箇所から10mm以内の場所にあることが好ましい。接続箇所から10mmを超える部分にしか追加の固定部位が無い場合、固定されていない組紐状圧電素子全体および信号用金属製端子によって解れた鞘部がセンサーへの衝撃等により不安定に動き、ノイズの原因となり得る。信号用金属製端子の別の部位あるいは信号用金属製端子に固定された部品により組紐状圧電素子を固定するには、様態Aのように信号用金属製端子の一部で組紐状圧電素子を把持することができるが、信号用金属製端子に固定された樹脂製ハウジング等の部品によって組紐状圧電素子を挟み込み把持するか、接着剤によって信号用金属製端子や信号用金属製端子に固定された部品に固定することがより好ましい。
【0074】
図3および
図4においては、追加の固定部位の一例として、信号用金属製端子の外装として絶縁体を備えており、図の絶縁体の左側の部分で組紐状圧電素子を挟んで把持し、信号用金属製端子に固定された部品による固定部位としている。絶縁体は、
図3および
図4の断面図に示す通り、上部と下部の2部分に分かれており、絶縁体上部は信号用金属製端子にあらかじめ固定されていてもよい。組紐状圧電素子を信号用金属製端子に接続固定する際には、絶縁体上部に固定された信号用金属製端子と絶縁体下部とによって組紐状圧電素子を挟み、さらに上下から力を加えることで信号用金属製端子を組紐状圧電素子に挿入し、上部と下部の絶縁体が接して固定される様態が好ましい。そのため、信号用金属製端子のフォーク状部分あるいは針状部分は鞘部の圧電性繊維の繊維間に挿入されるために必要な細さあるいは薄さを備えているか、あるいは鞘部の圧電性繊維を部分的に切断するために必要な鋭利さを備えていることが好ましい。一つの信号用金属製端子は複数のフォーク状部分あるいは複数の針状部分を有していてもよいし、フォーク状部分と針状部分とを同時に備えていてもよい。フォーク状部分を有する信号用金属製端子を用いる場合は、鞘部の厚みが厚すぎるか芯部の総繊度が低すぎると芯部にフォーク状部分が接触しにくくなるため、鞘部の厚みは1mm以下であることが好ましく、0.5mm以下がさらに好ましく、芯部の総繊度は50dTex以上が好ましく、100dTex以上がさらに好ましい。
【0075】
(端子接続部)
本発明の組紐状圧電素子は、信号用金属製端子あるいは信号用金属製端子に固定された部品により固定された部分の端において、鞘部の組織が解けて芯部から離れた圧電性繊維が、鞘部の圧電性繊維全体の20%未満である部分を有することが好ましい。20%を超える場合、芯部から離れた圧電性繊維がセンサーへの衝撃等により不安定に動くことで圧電性信号をランダムに発生し、ノイズの原因となる。組紐状圧電素子が信号用金属製端子あるいは信号用金属製端子に固定された部品により固定された部分とは、様態Aにおいて信号用金属製端子により把持された部分や、様態Bにおいて信号用金属製端子のフォーク状部分および針状部分が組紐状圧電素子の鞘部に接している部分や、様態Aおよび様態Bにおいて信号用金属製端子に固定された樹脂ハウジング等の部品によって組紐状圧電素子が挟み込み把持された部分や、接着剤によって信号用金属製端子や信号用金属製端子に固定された部品に組紐状圧電素子が固定された部分を指す。その端とは、固定された部分と固定されていない部分の境界部から1mm以内の領域を指す。鞘部の組織が解けて芯部から離れるとは、芯部表面から、組紐状圧電素子の鞘部の平均厚みの1.5倍以上の距離となる場所に鞘部の圧電性繊維が届いている状態を指し、圧電性繊維1本(すなわち組紐を作成する際にキャリア1つから供給される繊維)ごとに判定する。鞘部の圧電性繊維がマルチフィラメントの場合、圧電性繊維1本を構成するフィラメントのうち50%以上が、芯部表面から組紐状圧電素子の鞘部の平均厚みの1.5倍以上の距離に届いている場合、その圧電性繊維1本は鞘部の組織が解けて芯部から離れていると判定する。判定は組紐状圧電素子の側面から観察してもよいし、断面を観察してもよい。断面を観察する場合は、切断時に鞘部が過度に解けないよう、エポキシ樹脂等で固定してから切断して観察する。
【0076】
本発明の素子の信号用金属製端子は、
図2(様態A)、
図3(様態Bフォーク状)および
図4(様態B針状)のように組紐状圧電素子の末端に固定することもできるし、組紐状圧電素子の途中に固定することもできる。
【0077】
本発明の素子は圧電性由来のノイズを抑制する目的達成のため、絶縁性被覆である組紐の鞘部の繊維を除去しないまま信号用金属製端子を固定し、かつ、芯部と信号用金属製端子の電気的接続を確保するという一見矛盾した構造を持つ。それを達成する構造として以下の2例を挙げる。
【0078】
構造の1例として、芯部と信号用金属製端子との接続部分及びそこから5mm以内にある鞘部の圧電性繊維の一部または全部が繊維形状を失い融着した構造が好ましく採用される。即ち、信号用金属製端子固定後の鞘部を構成する圧電性繊維の融解などにより、信号用金属製端子と芯部の電気的接続を妨げる鞘部の圧電性繊維を流動させ、信号用金属製端子と芯部の電気的接続を確保したのち冷却等を行って再び圧電性繊維を固化させ固定することができる。圧電性繊維が融解後固化した固体は接着剤のように組紐状圧電素子と信号用金属製端子を固定できる利点を有する。さらに圧電性繊維にポリ乳酸等の高分子繊維を用いた場合、融解後固化した固体は圧電性を失うため、ノイズ源となるおそれがない。圧電性繊維の融解は、ポリ乳酸繊維を用いた場合は160℃以上の温度を経る熱処理によって実施できるが、不要なポリ乳酸の分解および不必要な鞘部の融解やその他の部材の変形を防ぐため220℃以下で実施することが好ましい。圧電性繊維の融解は信号用金属製端子の固定時に行うこともでき、電気的接続が確保できているか確認しながら信号用金属製端子の把持圧力を強くしていくことが好ましく、不必要な鞘部の変形を防ぐため、信号用金属製端子を加熱して鞘部に熱を伝え融解させることが好ましい。工程の安全性や複数の素子を同時に処理できる観点から、信号用金属製端子を取り付けた後に実施することも好ましい。
【0079】
構造の別の例として、鞘部表面にはんだあるいは導電ペーストからなる、芯部と電気的に接続された導電性材料を備えており、鞘部表面に備えられた導電性材料と信号用金属製端子とが接触することで芯部と信号用金属製端子とが間接的に接続された構造を挙げることができる。導電性材料は芯部と信号用金属製端子との間に介在して電気的に導通させる機能を有し、温度変化や溶媒除去や化学反応によって液体状(スラリー状を含む)から固体状に変化するものであれば何でも用いることができ、はんだ、金属やカーボンなどの導電性フィラーを含有する導電ペーストが好ましく用いられる。特に取扱い性と導電性から、はんだおよび銀ペーストが好ましく用いられる。本発明の組紐状圧電素子は絶縁被覆が繊維の集合体のため、表面から上記の導電性材料を付着させることで内部に染み込ませ、芯部と電気的に接続された導電表面を鞘部表面に形成することができるが、より芯部との電気的接続を確実にするため、導電性材料の固化前の流動性を低く調整して芯部に染み込みやすくするか、導電性材料の固化前に組紐状圧電素子に物理的刺激を与えて鞘部の繊維間の隙間を広げるか、あるいは組紐状圧電素子の末端の切断面にも導電性材料を付着させることが好ましい。
【0080】
(基材への固定)
本発明の組紐状圧電素子は、信号用金属製端子あるいはシールド用金属製端子が組紐状圧電素子に固定された部分から長さ10mm以内の範囲において、該組紐状圧電素子の少なくとも一部が布帛状基材に固定されていることが好ましい。10mm以内に布帛状基材に固定されている場所がない場合、固定されていない組紐状圧電素子が布帛状基材および金属製端子への衝撃等により不安定に動き、ノイズの原因となる。布帛状基材への固定は接着、縫い付けなどの後加工によって行ってもよいし、布帛組織を構成する糸として織り込むまたは編み込むことによって固定されていてもよい。
【0081】
(製造方法)
本発明の組紐状圧電素子1は少なくとも1本の導電性繊維Bの表面を組紐状の圧電性繊維Aで被覆しているが、その製造方法としては例えば以下の方法が挙げられる。すなわち、導電性繊維Bと圧電性繊維Aを別々の工程で作製し、導電性繊維Bに圧電性繊維Aを組紐状に巻きつけて被覆する方法である。この場合には、できるだけ同心円状に近くなるように被覆することが好ましい。
【0082】
この場合、圧電性繊維Aを形成する圧電性高分子としてポリ乳酸を用いる場合の好ましい紡糸、延伸条件として、溶融紡糸温度は150℃〜250℃が好ましく、延伸温度は40℃〜150℃が好ましく、延伸倍率は1.1倍から5.0倍が好ましく、結晶化温度は80℃〜170℃が好ましい。
【0083】
導電性繊維Bに巻きつける圧電性繊維Aとしては、複数のフィラメントを束ねたマルチフィラメントを用いてもよく、また、モノフィラメントを用いても良いし、一本の紡績糸でも、複数本の紡績糸を束ねた糸束形態(撚糸を含む)としてもよくさらに、フィラメントと紡績糸とを組み合わせた長短複合糸としてもよい。また、圧電性繊維Aを巻きつけられる導電性繊維Bとしては、複数のフィラメントを束ねたマルチフィラメントを用いてもよく、また、モノフィラメントを用いても良い。さらに一本の紡績糸でも、複数本の紡績糸を束ねた糸束形態(撚糸を含む)としてもよく、フィラメントと紡績糸とを組み合わせた長短複合糸としてもよい。
【0084】
被覆の好ましい形態としては、導電性繊維Bを芯糸とし、その周囲に圧電性繊維Aを組紐状に製紐して、丸打組物(Tubular Braid)を作製することで被覆することができる。より具体的には芯部3を有する8打組紐や16打組紐が挙げられる。ただし、例えば、圧電性繊維Aを編組チューブのような形態とし、導電性繊維Bを芯として当該編組チューブに挿入することで被覆してもよい。
【0085】
導電層4は、コーティングや繊維の巻き付けによって製造されるが、製造の容易さの観点より、繊維の巻き付けが好ましい。繊維の巻き付け方法としてはカバーリング、編物、組物が考えられ、何れの方法により製造してもよい。
【0086】
以上のような製造方法により、導電性繊維Bの表面を組紐状の圧電性繊維Aで被覆し、さらにその周囲に導電層4を設けた組紐状圧電素子1を得ることができる。
【0087】
本発明の組紐状圧電素子1は、表面に電気信号を検出するための電極の形成を必要としないため、比較的簡単に製造することができる。
【0088】
(保護層)
本発明の組紐状圧電素子1の最表面には保護層を設けてもよい。この保護層は絶縁性であることが好ましく、フレキシブル性などの観点から高分子からなるものがより好ましい。保護層に絶縁性を持たせる場合には、もちろん、この場合には保護層ごと変形させたり、保護層上を擦ったりすることになるが、これらの外力が圧電性繊維Aまで到達し、その分極を誘起できるものであれば特に限定はない。保護層としては、高分子などのコーティングによって形成されるものに限定されず、フィルム、布帛、繊維などを巻付けてもよく、あるいは、それらが組み合わされたものであってもよい。
【0089】
保護層の厚みとしては出来るだけ薄い方が、せん断応力を圧電性繊維Aに伝えやすいが、薄すぎると保護層自体が破壊される等の問題が発生しやすくなるため、好ましくは10nm〜200μm、より好ましくは50nm〜50μm、さらに好ましくは70nm〜30μm、最も好ましくは100nm〜10μmである。この保護層により圧電素子の形状を形成することもできる。
【0090】
さらには、圧電性繊維からなる層を複数層設けたり、信号を取り出すための導電性繊維からなる層を複数層設けたりすることもできる。もちろん、これらの保護層、圧電性繊維からなる層、導電性繊維からなる層は、その目的に応じて、その順番および層数は適宜決められる。なお、巻付ける方法としては、鞘部2のさらに外層に組紐構造を形成したり、カバーリングしたりする方法が挙げられる。
【0091】
(作用)
本発明の組紐状圧電素子1は、例えば組紐状圧電素子1の表面を擦るなどで、組紐状圧電素子1に荷重が印加されて生じる応力、すなわち組紐状圧電素子1に印加される応力について、その大きさおよび/又は印加位置を検出するセンサーとして利用することができる。また、本発明の組紐状圧電素子1は、擦る以外の押圧力や曲げ変形などによっても圧電性繊維Aにせん断応力が与えられるならば、電気信号を取り出すことはもちろん可能である。例えば、組紐状圧電素子1に「印加される応力」としては、圧電素子の表面、すなわち圧電性繊維Aの表面と指のような被接触物の表面との間の摩擦力や、圧電性繊維Aの表面または先端部に対する垂直方向の抵抗力、圧電性繊維Aの曲げ変形に対する抵抗力などが挙げられる。特に、本発明の組紐状圧電素子1は、導電性繊維Bに対して平行方向に屈曲させた場合や擦った場合に大きな電気信号を効率的に出力することができる。
【0092】
ここで、組紐状圧電素子1に「印加された応力」とは、例えば表面を指で擦る程度の大きさの応力の場合、その目安としては、おおよそ1〜1000Paである。もちろん、これ以上であっても印加された応力の大きさおよびその印加位置を検出することが可能であることはいうまでもない。指などで入力する場合には、1Pa以上500Pa以下の荷重であっても動作することが好ましく、さらに好ましくは1Pa以上100Pa以下の荷重で動作することが好ましい。もちろん、500Paを超える荷重であっても動作することは、上述の通りである。
【0093】
また、組紐状圧電素子1の芯部の導電性繊維Bと導電層4の間の静電容量変化を計測することで、組紐状圧電素子1へ加えられた圧力による変形を検出することも可能になる。更に、複数本の組紐状圧電素子1を組み合わせて使用する場合、各々の組紐状圧電素子1の導電層4間の静電容量変化を計測することで、組紐状圧電素子1へ加えられた圧力による変形を検出することも可能になる。
【0094】
(布帛状圧電素子)
図5は実施形態に係る組紐状圧電素子を用いた布帛状圧電素子の構成例を示す模式図である。
布帛状圧電素子7は、少なくとも1本の組紐状圧電素子1を含む布帛8を備えている。布帛8は、布帛を構成する繊維(組紐を含む)の少なくとも1本が組紐状圧電素子1であり、組紐状圧電素子1が圧電素子としての機能を発揮可能である限り何らの限定は無く、どのような織編物であってもよい。布状にするにあたっては、本発明の目的を達成する限り、他の繊維(組紐を含む)と組み合わせて、交織、交編等を行ってもよい。もちろん、組紐状圧電素子1を、布帛を構成する繊維(例えば、経糸や緯糸)の一部として用いてもよいし、組紐状圧電素子1を布帛に刺繍してもよいし、接着してもよい。
図5に示す例では、布帛状圧電素子7は、経糸として、少なくとも1本の組紐状圧電素子1および絶縁性繊維9を配し、緯糸として導電性繊維10および絶縁性繊維9を交互に配した平織物である。導電性繊維10は導電性繊維Bと同一種であっても異種の導電性繊維であってもよく、また絶縁性繊維9については後述される。なお、絶縁性繊維9及び/又は導電性繊維10の全部又は一部が組紐形態であってもよい。
【0095】
この場合、布帛状圧電素子7が曲げられるなどして変形したとき、その変形に伴い組紐状圧電素子1も変形するので、組紐状圧電素子1から出力される電気信号により、布帛状圧電素子7の変形を検出できる。そして、布帛状圧電素子7は、布帛(織編物)として用いることができるので、例えば衣類形状のウェアラブルセンサーに適用することができる。
【0096】
また、
図5に示す布帛状圧電素子7では、組紐状圧電素子1に導電性繊維10が交差して接触している。したがって、導電性繊維10は、組紐状圧電素子1の少なくとも一部と交差して接触し、それを覆っており、外部から組紐状圧電素子1へ向かおうとする電磁波の少なくとも一部を遮っている、と見ることができる。このような導電性繊維10は、接地(アース)されることにより、組紐状圧電素子1への電磁波の影響を軽減する機能を有している。すなわち導電性繊維10は組紐状圧電素子1の電磁波シールドとして機能することができる。それにより、例えば布帛状圧電素子7の上下に電磁波シールド用の導電性の布帛を重ねなくても、布帛状圧電素子7のS/N比(信号対雑音比)を著しく向上させることができる。この場合、電磁波シールドの観点から組紐状圧電素子1と交差する緯糸(
図5の場合)における導電性繊維10の割合が高いほど好ましい。具体的には、布帛8を形成する繊維であり且つ組紐状圧電素子1と交差する繊維のうちの30%以上が導電性繊維10であることが好ましく、40%以上がより好ましく、50%以上が更に好ましい。このように布帛状圧電素子7において、布帛を構成する繊維の少なくとも一部として導電性繊維10を入れることで、電磁波シールド機能付の布帛状圧電素子7とすることができる。
【0097】
織物の織組織としては、平織、綾織、朱子織等の三原組織、変化組織、たて二重織、よこ二重織等の片二重組織、たてビロードなどが例示される。編物の種類は、丸編物(緯編物)であってもよいし経編物であってもよい。丸編物(緯編物)の組織としては、平編、ゴム編、両面編、パール編、タック編、浮き編、片畔編、レース編、添え毛編等が好ましく例示される。経編組織としては、シングルデンビー編、シングルアトラス編、ダブルコード編、ハーフトリコット編、裏毛編、ジャガード編等が例示される。層数も単層でもよいし、2層以上の多層でもよい。更には、カットパイルおよび/またはループパイルからなる立毛部と地組織部とで構成される立毛織物、立毛編み物であってもよい。
【0098】
(複数の圧電素子)
また、布帛状圧電素子7では、組紐状圧電素子1を複数並べて用いることも可能である。並べ方としては、例えば経糸または緯糸としてすべてに組紐状圧電素子1を用いてもよいし、数本ごとや一部分に組紐状圧電素子1を用いてもよい。また、ある部分では経糸として組紐状圧電素子1を用い、他の部分では緯糸として組紐状圧電素子1を用いてもよい。
【0099】
また、組紐状圧電素子1を複数並べて用いる場合、導電性繊維B間の距離が短いため電気信号の取り出しにおいて効率的である。特に本発明では、それぞれの組紐状圧電素子に接続された複数の金属製端子を1つのコネクタハウジングにまとめて固定することで複数極を有するコネクタとし、一括して別の複数極を有するコネクタと接続可能にすることで、デバイス製造の効率化や、ユーザーにおける接続および取り外しを容易にすることができ、特に好ましい。前述の通り織物あるいは編物の組織に組み込むことで、複数の組紐状圧電素子を望んだ間隔に容易に略平行に並べることが可能であり、それぞれの金属製端子をコネクタへ固定するのを容易にできる利点がある。ここで略平行とは、平織物を構成する隣同士の経糸2本や、天竺編を構成する隣接する2コースなど、繊維が折れ曲がっているために局所的には平行でなくとも、それぞれの繊維を平均するような直線を引いた時にそれらが平行になっている状態を指す。この時織密度や編密度の調整により、複数の組紐状圧電素子の間隔を電子回路によく用いられるコネクタの端子間隔に調整することが好ましく、0.5mm、1.0mm、1.25mm、1.5mm、2.0mm、2.54mmのいずれかの間隔(組紐の中心間の距離)に調整することがより好ましい。また、様態Bのフォーク状の部位を有し、複数の金属製端子があらかじめ1つのコネクタハウジングに固定されたコネクタを用い、複数の組紐状圧電素子に一度に複数の金属製端子を接続することが工程の簡略化の観点から特に好ましい。
【0100】
(絶縁性繊維)
布帛状圧電素子7では、組紐状圧電素子1(及び導電性繊維10)以外の部分には、絶縁性繊維を使用することができる。この際、絶縁性繊維は布帛状圧電素子7の柔軟性を向上する目的で伸縮性のある素材、形状を有する繊維を用いることができる。
【0101】
このように組紐状圧電素子1(及び導電性繊維10)以外にこのように絶縁性繊維を配置することで、布帛状圧電素子7の操作性(例示:ウェアラブルセンサーとしての動き易さ)を向上させることが可能である。
【0102】
このような絶縁性繊維としては、体積抵抗率が10
6Ω・cm以上であれば用いることができ、より好ましくは10
8Ω・cm以上、さらに好ましくは10
10Ω・cm以上がよい。
【0103】
絶縁性繊維として例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、塩化ビニル繊維、アラミド繊維、ポリスルホン繊維、ポリエーテル繊維、ポリウレタン繊維等の合成繊維他、綿、麻、絹等の天然繊維、アセテート等の半合成繊維、レーヨン、キュプラ等の再生繊維を用いることができる。これらに限定されるものではなく、公知の絶縁性繊維を任意に用いることができる。さらに、これらの絶縁性繊維を組み合わせて用いてもよく、絶縁性を有しない繊維と組み合わせ、全体として絶縁性を有する繊維としてもよい。
また、公知のあらゆる断面形状の繊維も用いることができる。
【0104】
(圧電素子の適用技術)
本発明の組紐状圧電素子1や布帛状圧電素子7のような圧電素子はいずれの様態であっても、表面への接触、圧力、形状変化を電気信号として出力することができるので、その圧電素子に印加された応力の大きさおよび/又は印加された位置を検出するセンサー(デバイス)として利用することができる。また、この電気信号を他のデバイスを動かすための電力源にし、あるいは蓄電するなど、発電素子として用いることもできる。具体的には、人、動物、ロボット、機械など自発的に動くものの可動部に用いることによる発電、靴底、敷物、外部から圧力を受ける構造物の表面での発電、流体中での形状変化による発電、などが挙げられる。また、流体中での形状変化により電気信号を発するために、流体中の帯電性物質を吸着させたり付着を抑制させたりすることも可能である。
【0105】
図6は、本発明の圧電素子12を備えるデバイス11を示すブロック図である。デバイス11は、圧電素子12(例示:組紐状圧電素子1、布帛状圧電素子7)と、印加された圧力に応じて圧電素子12から出力される電気信号を増幅する増幅手段13と、増幅手段13で増幅された電気信号を出力する出力手段14と、出力手段14から出力された電気信号を外部機器(図示せず)へ送信する送信手段15とを備える。このデバイス11を用いれば、圧電素子12の表面への接触、圧力、形状変化により出力された電気信号に基づき、外部機器(図示せず)における演算処理にて、圧電素子に印加された応力の大きさおよび/又は印加された位置を検出することができる。あるいは、デバイス11内に、出力手段14から出力された電気信号に基づき圧電素子12に印加された応力の大きさおよび/又は印加された位置を演算する演算手段(図示せず)を設けてもよい。なお、送信手段15による送信方式を無線によるもの有線によるものにするかは、構成するセンサーに応じて適宜決定すればよい。
【0106】
また、増幅手段だけではなく、ノイズを除去する手段や他の信号と組み合わせて処理する手段などの公知の信号処理手段を組み合わせて用いることができる。これらの手段の接続の順序は目的に応じて適宜変えることができる。もちろん、圧電素子12から出力される電気信号をそのまま外部機器へ送信した後で信号処理してもよい。
【0107】
図7および
図8は、実施の形態に係る組紐布帛状圧電素子を備えるデバイスの構成例を示す模式図である。
図7および
図8の増幅手段13は、
図6を参照して説明したものに相当するが、
図6の出力手段14および送信手段15については
図7および
図8では図示を省略している。布帛状圧電素子7を備えるデバイスを構成する場合、増幅手段13の入力端子に組紐状圧電素子1の芯部3からの引出し線を接続し、接地(アース)端子には、組紐状圧電素子1の導電層4または布帛状圧電素子7の導電性繊維10または増幅手段13の入力端子に接続した組紐状圧電素子1とは別の組紐状圧電素子を接続する。例えば、
図7に示すように、布帛状圧電素子7において、組紐状圧電素子1の芯部3からの引出し線を増幅手段13の入力端子に接続し、組紐状圧電素子1の導電層4を接地(アース)する。組紐状圧電素子1の導電層4ではなく、組紐状圧電素子1に交差して接触した導電性繊維10を接地(アース)してもよい。また例えば、
図8に示すように、布帛状圧電素子7において組紐状圧電素子1を複数並べている場合、1本の組紐状圧電素子1の芯部3からの引出し線を増幅手段13の入力端子に接続し、当該組紐状圧電素子1に並んだ別の組紐状圧電素子1の芯部3からの引出し線を、接地(アース)する。
【0108】
本発明のデバイス11は柔軟性があり、紐状および布帛状いずれの形態でも使用できるため、非常に広範な用途が考えられる。本発明のデバイス11の具体的な例としては、帽子や手袋、靴下などを含む着衣、サポーター、ハンカチ状などの形状をした、タッチパネル、人や動物の表面感圧センサー、例えば、手袋やバンド、サポーターなどの形状をした関節部の曲げ、捩じり、伸縮を感知するセンサーが挙げられる。例えば人に用いる場合には、接触や動きを検出し、医療用途などの関節などの動きの情報収集、アミューズメント用途、失われた組織やロボットを動かすためのインターフェースとして用いることができる。他には、動物や人型を模したぬいぐるみやロボットの表面感圧センサー、関節部の曲げ、捩じり、伸縮を感知するセンサーとして用いることができる。他には、シーツや枕などの寝具、靴底、手袋、椅子、敷物、袋、旗などの表面感圧センサーや形状変化センサーとして用いることができる。
【0109】
さらに、本発明のデバイス11は組紐状あるいは布帛状であり、柔軟性があるので、あらゆる構造物の全体あるいは一部の表面に貼付あるいは被覆することにより表面感圧センサー、形状変化センサーとして用いることができる。
【0110】
さらに、本発明のデバイス11は、組紐状圧電素子1の表面を擦るだけで十分な電気信号を発生することができるので、タッチセンサーのようなタッチ式入力装置やポインティングデバイスなどに用いることができる。また、組紐状圧電素子1で被計測物の表面を擦ることによって被計測物の高さ方向の位置情報や形状情報を得ることができるので、表面形状計測などに用いることができる。
【実施例】
【0111】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に記載するが本発明はこれによって何らの限定を受けるものではない。
【0112】
圧電素子用の布帛は以下の方法で製造した。
(ポリ乳酸の製造)
実施例において用いたポリ乳酸は以下の方法で製造した。
L−ラクチド((株)武蔵野化学研究所製、光学純度100%)100質量部に対し、オクチル酸スズを0.005質量部加え、窒素雰囲気下、撹拌翼のついた反応機にて180℃で2時間反応させ、オクチル酸スズに対し1.2倍当量のリン酸を添加しその後、13.3Paで残存するラクチドを減圧除去し、チップ化し、ポリ−L−乳酸(PLLA1)を得た。得られたPLLA1の質量平均分子量は15.2万、ガラス転移点(Tg)は55℃、融点は175℃であった。
【0113】
(圧電性繊維)
240℃にて溶融させたPLLA1を24ホールのキャップから20g/minで吐出し、887m/minにて引き取った。この未延伸マルチフィラメント糸を80℃、2.3倍に延伸し、100℃で熱固定処理することにより84dTex/24フィラメントのマルチフィラメント一軸延伸糸を得、これを圧電性繊維Aとした。
【0114】
(導電性繊維)
ミツフジ(株)製の銀メッキナイロン、品名『AGposs』100d34fを導電性繊維B、導電性繊維6および導電性繊維10として使用した。この繊維の体積抵抗率は1.1×10
−3Ω・cmであった。
【0115】
(絶縁性繊維)
280℃にて溶融させたポリエチレンテレフタレートを24ホールのキャップから45g/minで吐出し、800m/minにて引き取った。この未延伸糸を80℃、2.5倍に延伸し、180℃で熱固定処理することによりすることにより84dTex/24フィラメントのマルチフィラメント延伸糸を得、これを絶縁性繊維9とした。
【0116】
(組紐状圧電素子)
実施例1の試料として、
図1に示すように、上記の導電性繊維Bを芯糸とし、上記の圧電性繊維A8本を芯糸の周りに組紐状に巻きつけて、八打組紐とし、更に導電性繊維6を鞘部の圧電性繊維Aの周りに八打組紐状に巻き付けて導電層4とし、組紐状圧電素子1を形成した。ここで、導電性繊維Bの繊維軸CLに対する圧電性繊維Aの巻きつけ角度αは45°とした。実施例1の試料の導電層4の被覆率は100%であった。この組紐状圧電素子を切断し、その末端10mmの導電層4を構成する導電性繊維6をほぐして圧電性繊維Aと導電性繊維Bから分離した後、日本圧着端子製造(株)製SHコネクタコンタクトを信号用金属製端子として、長さ0.4mmの部分と長さ0.8mmの爪部分を折り曲げ、組紐状圧電素子の末端に残った圧電性繊維Aと導電性繊維Bを把持した後、信号用金属製端子にはんだごてを当てて加熱し、把持部分の鞘部を一部融解させた。組紐状圧電素子の末端の芯部と信号用金属製端子との間の導通を確認し、把持部分から先の余分な組紐状圧電素子をカットした。また、別の日本圧着端子製造(株)製SHコネクタコンタクトをシールド用金属製端子として、長さ0.4mmの部分と長さ0.8mmの爪部分を折り曲げ、圧電性繊維Aと導電性繊維Bから分離した導電性繊維6を把持した。シールド用金属製端子に把持できずに圧電性繊維Aから分離した導電性繊維6は切除した。上記の信号用金属製端子とシールド用金属製端子を、日本圧着端子製造(株)製SHコネクタハウジング2Pに挿入して固定し、コネクタハウジング端面から10mmの組紐状圧電素子1の周りには絶縁性のエポキシ系接着剤を付着させ、SHコネクタと組紐状圧電素子1を固定した。この端子付き組紐状圧電素子を組紐状圧電素子101とした。
【0117】
実施例2の試料として、
図1に示すように、上記の導電性繊維Bを芯糸とし、上記の圧電性繊維A8本を芯糸の周りに組紐状に巻きつけて、八打組紐とし、更に4本の絶縁性繊維9を右巻き、1本の導電性繊維6および3本の絶縁性繊維9を左巻きに鞘部の圧電性繊維Aの周りに巻き付けて八打組紐状の導電層4とし、組紐状圧電素子1を形成した。ここで、導電性繊維Bの繊維軸CLに対する圧電性繊維Aの巻きつけ角度αは45°とした。また、実施例2の試料の導電層4の被覆率は25%であった。実施例1と同様に、導電性繊維Bに日本圧着端子製造(株)製SHコネクタコンタクトを信号用金属製端子として接続し、導電性繊維6に別の日本圧着端子製造(株)製SHコネクタコンタクトをシールド用金属製端子として接続し、信号用金属製端子とシールド用金属製端子を、日本圧着端子製造(株)製SHコネクタハウジング2Pに挿入して固定し、コネクタハウジング端面から10mmの組紐状圧電素子1の周りには絶縁性のエポキシ系接着剤を付着させ、SHコネクタと組紐状圧電素子1を固定した。この端子付き組紐状圧電素子を組紐状圧電素子102とした。
【0118】
実施例3の試料として、実施例1で用いた端子が未接続の組紐状圧電素子1を切断し、その末端10mmの導電層4を構成する導電性繊維6をほぐして圧電性繊維Aと導電性繊維Bから分離した後、組紐状圧電素子の末端に残った圧電性繊維Aと導電性繊維Bに導電ペーストとして「ドータイト」(登録商標)D−363(藤倉化成(株)製)を付着させ固化させた後、日本圧着端子製造(株)製SHコネクタコンタクトを信号用金属製端子として、長さ0.4mmの部分と長さ0.8mmの爪部分を折り曲げ、導電ペーストが付着した組紐状圧電素子末端を把持した。組紐状圧電素子の別の末端の芯部と信号用金属製端子との間の導通を確認した。また、別の日本圧着端子製造(株)製SHコネクタコンタクトをシールド用金属製端子として、長さ0.4mmの部分と長さ0.8mmの爪部分を折り曲げ、圧電性繊維Aと導電性繊維Bから分離した導電性繊維6を把持し、シールド用金属製端子に把持できずに圧電性繊維Aから分離した導電性繊維6は切除した。上記の信号用金属製端子とシールド用金属製端子を、日本圧着端子製造(株)製SHコネクタハウジング2Pに挿入して固定し、コネクタハウジング端面から10mmの組紐状圧電素子1の周りにはエポキシ系接着剤を付着させ、SHコネクタと組紐状圧電素子1を固定した。この端子付き組紐状圧電素子を組紐状圧電素子103とした。
【0119】
実施例4の試料として、実施例1で用いた端子が未接続の組紐状圧電素子1を切断し、その末端10mmの導電層4を構成する導電性繊維6をほぐして圧電性繊維Aと導電性繊維Bから分離した後、組紐状圧電素子の末端に残った圧電性繊維Aと導電性繊維Bに導電ペーストとして「ドータイト」(登録商標)D−363(藤倉化成(株)製)を付着させ、SMA−P型同軸コネクタの中心コンタクトに2mm挿入して固化させ信号用金属製端子とし、組紐状圧電素子の別の末端の芯部と信号用金属製端子との間の導通を確認した。また、SMA−P型同軸コネクタの金属製外装をシールド用金属製端子として、圧電性繊維Aと導電性繊維Bから分離した導電性繊維6をスリーブにより把持して接続して固定し、シールド用金属製端子に把持できずに圧電性繊維Aから分離した導電性繊維6は切除した。上記の通り信号用金属製端子とシールド用金属製端子が絶縁体を介して一体となった端子付き組紐状圧電素子を組紐状圧電素子104とした。本実施例で用いたSMA−Pコネクタは、左側面図においてシールド用金属製端子(外装)が信号用金属製端子(中心コンタクト)を完全に覆った構造をしている。
【0120】
実施例5の試料として、
図8に示すように経糸に絶縁性繊維9および組紐状圧電素子1(実施例1の端子が未接続の試料と同じ)を2本配し、緯糸に絶縁性繊維9および導電性繊維10を交互に配して平織物を作製し、布帛状圧電素子7とした。布帛状圧電素子7中の2本の組紐状圧電素子1の末端から10mmの導電層4を構成する導電性繊維6をほぐして圧電性繊維Aと導電性繊維Bから分離した後、圧電性繊維Aが露出した部分にオムロン(株)製XG圧接コネクタ10極のうち2極のフォーク状の金属部分をそれぞれ指し込み信号用金属製端子とし、これと同時に圧電性繊維Aと導電性繊維Bから分離した導電性繊維6をまとめ、この導電性繊維束に上記圧接コネクタ10極のうち1極のフォーク状の金属部分に指し込みシールド用金属製端子とした。さらに金属部分に固定されたコネクタハウジングの上部分とそれに対となる下部分により組紐状圧電素子を挟み、固定した。2本の組紐状圧電素子1の末端の芯部と2極の信号用金属製端子との間の導通、および組紐状圧電素子1の導電層4と1極のシールド用金属製端子との間の導通をそれぞれ確認し、2極の信号用金属製端子と1極のシールド用金属製端子との間の絶縁を確認した。この2本の信号用金属製端子付き組紐状圧電素子をそれぞれ組紐状圧電素子105−1および105−2とした。平織布の経糸により組紐状圧電素子は固定されており、信号用金属製端子と平織布の経糸との距離は0.1mmであった。
【0121】
実施例6の試料として、実施例1で用いた端子が未接続の組紐状圧電素子1切断し、その末端10mmの導電層4を構成する導電性繊維6をほぐして圧電性繊維Aと導電性繊維Bから分離し、さらに末端の圧電性繊維Aをほぐし、芯部を1mm露出させた後、日本圧着端子製造(株)製SHコネクタコンタクトを信号用金属製端子として、鞘部の除去されていない部分を長さ0.4mmの爪部分が把持し、露出した芯部を長さ0.8mmの爪部分が把持するよう、爪を折り曲げ、組紐状圧電素子を把持した。組紐状圧電素子の別の末端の芯部と信号用金属製端子との間の導通を確認した。また、別の日本圧着端子製造(株)製SHコネクタコンタクトをシールド用金属製端子として、長さ0.4mmの部分と長さ0.8mmの爪部分を折り曲げ、圧電性繊維Aと導電性繊維Bから分離した導電性繊維6を把持し、シールド用金属製端子に把持できずに圧電性繊維Aから分離した導電性繊維6は切除した。上記の信号用金属製端子とシールド用金属製端子を、日本圧着端子製造(株)製SHコネクタハウジング2Pに挿入して固定した。この端子付き組紐状圧電素子を組紐状圧電素子106とした。
【0122】
比較例1の試料として、実施例1で用いた端子が未接続の組紐状圧電素子1を切断し、その末端10mmの導電層4を構成する導電性繊維6をほぐして圧電性繊維Aと導電性繊維Bから分離した後、組紐状圧電素子の末端に残った圧電性繊維Aと導電性繊維Bに導電ペーストとして「ドータイト」(登録商標)D−363(藤倉化成(株)製)を付着させ固化させた後、日本圧着端子製造(株)製SHコネクタコンタクトを信号用金属製端子として、長さ0.4mmの部分と長さ0.8mmの爪部分を折り曲げ、導電ペーストが付着した組紐状圧電素子末端を把持した。組紐状圧電素子の別の末端の芯部と信号用金属製端子との間の導通を確認した。また、別の日本圧着端子製造(株)製SHコネクタコンタクトをシールド用金属製端子として、長さ0.4mmの部分と長さ0.8mmの爪部分を折り曲げ、圧電性繊維Aと導電性繊維Bから分離した導電性繊維6を把持し、シールド用金属製端子に把持できずに圧電性繊維Aから分離した導電性繊維6は切除した。上記の信号用金属製端子とシールド用金属製端子を、2つの日本圧着端子製造(株)製SHコネクタハウジング2Pにそれぞれ挿入して固定し、コネクタハウジング端面から10mmの組紐状圧電素子1の周りにはエポキシ系接着剤を付着させ、それぞれのSHコネクタと組紐状圧電素子1を固定した。この端子付き組紐状圧電素子を組紐状圧電素子201とした。
【0123】
比較例2の試料として、実施例1と同様に、上記の導電性繊維Bを芯糸とし、上記の圧電性繊維A8本を芯糸の周りに組紐状に巻きつけて、八打組紐としたが、導電層4は形成せず、組紐状圧電素子を形成した。ここで、導電性繊維Bの繊維軸CLに対する圧電性繊維Aの巻きつけ角度αは45°とした。組紐状圧電素子の末端の圧電性繊維Aと導電性繊維Bに導電ペーストとして「ドータイト」(登録商標)D−363(藤倉化成(株)製)を付着させ固化させた後、日本圧着端子製造(株)製SHコネクタコンタクトを信号用金属製端子として、長さ0.4mmの部分と長さ0.8mmの爪部分を折り曲げ、導電ペーストが付着した組紐状圧電素子末端を把持した。組紐状圧電素子の別の末端の芯部と信号用金属製端子との間の導通を確認した。上記の信号用金属製端子を、日本圧着端子製造(株)製SHコネクタハウジング2Pに挿入して固定し、コネクタハウジング端面から10mmの組紐状圧電素子1の周りにはエポキシ系接着剤を付着させ、SHコネクタと組紐状圧電素子1を固定した。この端子付き組紐状圧電素子を組紐状圧電素子202とした。
【0124】
(性能評価及び評価結果)
組紐状圧電素子101、102、103、104、105−1、105−2、106、201、202の性能評価及び評価結果は以下のとおりである。
【0125】
(実施例1)
組紐状圧電素子101中の信号用金属製端子およびシールド用金属製端子が固定された日本圧着端子製造(株)製SHコネクタハウジングを、日本圧着端子製造(株)製SHコネクタベース2Pに接続し、信号用金属製端子がオシロスコープ(横河電機(株)製デジタルオシロスコープDL6000シリーズ商品名『DL6000』)に配線を介して1000倍増幅回路を経由して接続され、組紐状圧電素子1のシールド用金属製端子が接地(アース)されるよう接続した。組紐状圧電素子101と測定回路およびアースへの接続はSHコネクタによって一括して行われた。また、信号用金属製端子の把持部分の端において、鞘部の組織が解けて芯部から離れた圧電性繊維は0%であった。
組紐状圧電素子101を90度折り曲げた結果、組紐状圧電素子101からの出力として、オシロスコープにより約100mVの電位差が検出され、組紐状圧電素子1の変形により十分な大きさの電気信号を検出できることが確認された。また、静置下でのノイズ信号は20mVであり、S/N比は5となり、十分にノイズ信号が抑制されていることがわかった。
【0126】
(実施例2)
組紐状圧電素子102中の信号用金属製端子およびシールド用金属製端子が固定された日本圧着端子製造(株)製SHコネクタハウジングを、日本圧着端子製造(株)製SHコネクタベース2Pに接続し、信号用金属製端子がオシロスコープ(横河電機(株)製デジタルオシロスコープDL6000シリーズ商品名『DL6000』)に配線を介して1000倍増幅回路を経由して接続され、組紐状圧電素子1のシールド用金属製端子が接地(アース)されるよう接続した。組紐状圧電素子102と測定回路およびアースへの接続はSHコネクタによって一括して行われた。また、信号用金属製端子の把持部分の端において、鞘部の組織が解けて芯部から離れた圧電性繊維は0%であった。
組紐状圧電素子102を90度折り曲げた結果、組紐状圧電素子102からの出力として、オシロスコープにより約100mVの電位差が検出され、組紐状圧電素子1の変形により十分な大きさの電気信号を検出できることが確認された。また、静置下でのノイズ信号は20mVであり、S/N比は5となり、十分にノイズ信号が抑制されていることがわかった。
【0127】
(実施例3)
組紐状圧電素子103中の信号用金属製端子およびシールド用金属製端子が固定された日本圧着端子製造(株)製SHコネクタハウジングを、日本圧着端子製造(株)製SHコネクタベース2Pに接続し、信号用金属製端子がオシロスコープ(横河電機(株)製デジタルオシロスコープDL6000シリーズ商品名『DL6000』)に配線を介して1000倍増幅回路を経由して接続され、組紐状圧電素子1のシールド用金属製端子が接地(アース)されるよう接続した。組紐状圧電素子103と測定回路およびアースへの接続はSHコネクタによって一括して行われた。また、信号用金属製端子の把持部分の端において、鞘部の組織が解けて芯部から離れた圧電性繊維は0%であった。
組紐状圧電素子103を90度折り曲げた結果、組紐状圧電素子103からの出力として、オシロスコープにより約100mVの電位差が検出され、組紐状圧電素子1の変形により十分な大きさの電気信号を検出できることが確認された。また、静置下でのノイズ信号は20mVであり、S/N比は5となり、十分にノイズ信号が抑制されていることがわかった。
【0128】
(実施例4)
組紐状圧電素子104中の信号用金属製端子およびシールド用金属製端子が固定されたSMA−P型同軸コネクタを、SMA−J型同軸コネクタに接続し、信号用金属製端子がオシロスコープ(横河電機(株)製デジタルオシロスコープDL6000シリーズ商品名『DL6000』)に配線を介して1000倍増幅回路を経由して接続され、組紐状圧電素子1のシールド用金属製端子が接地(アース)されるよう接続した。組紐状圧電素子104と測定回路およびアースへの接続はSMA型コネクタによって一括して行われた。また、信号用金属製端子の把持部分の端において、鞘部の組織が解けて芯部から離れた圧電性繊維は0%であった。
組紐状圧電素子104を90度折り曲げた結果、組紐状圧電素子104からの出力として、オシロスコープにより約100mVの電位差が検出され、組紐状圧電素子1の変形により十分な大きさの電気信号を検出できることが確認された。また、静置下でのノイズ信号は16mVであり、S/N比は6となり、十分にノイズ信号が抑制されていることがわかった。
【0129】
(実施例5)
組紐状圧電素子105−1、組紐状圧電素子105−2の信号用金属製端子およびシールド用金属製端子が固定されたオムロン(株)製XG圧接コネクタを、2列×5行のピンヘッダに接続し、信号用金属製端子がオシロスコープ(横河電機(株)製デジタルオシロスコープDL6000シリーズ商品名『DL6000』)に配線を介して1000倍増幅回路を経由して接続され、組紐状圧電素子1のシールド用金属製端子が接地(アース)されるよう接続した。組紐状圧電素子105−1および組紐状圧電素子105−2と測定回路およびアースへの接続はXG圧接コネクタによって一括して行われた。また、信号用金属製端子のフォーク状の金属部分の端において、鞘部の組織が解けて芯部から離れた圧電性繊維は組紐状圧電素子105−1および組紐状圧電素子105−2とも0%であった。
布帛状圧電素子7を折り曲げることによって組紐状圧電素子105−1および組紐状圧電素子105−2を90度折り曲げた結果、組紐状圧電素子105−1および組紐状圧電素子105−2からの出力としてそれぞれ、オシロスコープにより約100mVの電位差が検出され、組紐状圧電素子1の変形により十分な大きさの電気信号を検出できることが確認された。また、静置下でのノイズ信号は20mVであり、S/N比は5となり、十分にノイズ信号が抑制されていることがわかった。
【0130】
(実施例6)
組紐状圧電素子106中の信号用金属製端子およびシールド用金属製端子が固定された日本圧着端子製造(株)製SHコネクタハウジングを、日本圧着端子製造(株)製SHコネクタベース2Pに接続し、信号用金属製端子がオシロスコープ(横河電機(株)製デジタルオシロスコープDL6000シリーズ商品名『DL6000』)に配線を介して1000倍増幅回路を経由して接続され、組紐状圧電素子1のシールド用金属製端子が接地(アース)されるよう接続した。組紐状圧電素子106と測定回路およびアースへの接続はSHコネクタによって一括して行われた。また、信号用金属製端子の把持部分の端において、鞘部の組織が解けて芯部から離れた圧電性繊維は75%であった。
組紐状圧電素子106を90度折り曲げた結果、組紐状圧電素子106からの出力として、オシロスコープにより約100mVの電位差が検出されたが、ピーク付近の信号に振幅30mV程度のノイズが重畳されており、曲げ動作によるノイズ発生が確認された。また、静置下でのノイズ信号は20mVであり、S/N比は5となり、十分にノイズ信号が抑制されていることがわかった。
【0131】
(比較例1)
組紐状圧電素子201中の信号用金属製端子が固定された日本圧着端子製造(株)製SHコネクタハウジングおよびシールド用金属製端子が固定された日本圧着端子製造(株)製SHコネクタハウジングを、それぞれ日本圧着端子製造(株)製SHコネクタベース2Pに接続し、信号用金属製端子がオシロスコープ(横河電機(株)製デジタルオシロスコープDL6000シリーズ商品名『DL6000』)に配線を介して1000倍増幅回路を経由して接続され、組紐状圧電素子1のシールド用金属製端子が接地(アース)されるよう接続した。組紐状圧電素子201と測定回路およびアースへの接続は2組のSHコネクタによって別々に行われたため作業が煩雑となり、シールド用金属製端子に引っ張られた導電性繊維6のほつれが発生した。また、信号用金属製端子の把持部分の端において、鞘部の組織が解けて芯部から離れた圧電性繊維は0%であった。
組紐状圧電素子201を90度折り曲げた結果、組紐状圧電素子201からの出力として、オシロスコープにより約100mVの電位差が検出され、組紐状圧電素子1の変形により十分な大きさの電気信号を検出できることが確認された。また、静置下でのノイズ信号は25mVであり、S/N比は4となり、ノイズ信号が十分に抑制できていなかった。
【0132】
(比較例2)
組紐状圧電素子202中の信号用金属製端子が固定された日本圧着端子製造(株)製SHコネクタハウジングを、日本圧着端子製造(株)製SHコネクタベース2Pに接続し、信号用金属製端子をオシロスコープ(横河電機(株)製デジタルオシロスコープDL6000シリーズ商品名『DL6000』)に配線を介して1000倍増幅回路を経由して接続したところ、静置下でのノイズ信号は1000mVであった。組紐状圧電素子202を90度折り曲げたがノイズ信号が大きく、折り曲げに由来する電気信号を判別することができなかった。また、信号用金属製端子の把持部分の端において、鞘部の組織が解けて芯部から離れた圧電性繊維は0%であった。