(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-188564(P2017-188564A)
(43)【公開日】2017年10月12日
(54)【発明の名称】電源トランス装置
(51)【国際特許分類】
H01F 7/06 20060101AFI20170919BHJP
【FI】
H01F7/06 D
H01F7/06 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-76158(P2016-76158)
(22)【出願日】2016年4月5日
(71)【出願人】
【識別番号】509307048
【氏名又は名称】有限会社中沢製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100128794
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 庸悟
(72)【発明者】
【氏名】中澤 光男
【テーマコード(参考)】
5E048
【Fターム(参考)】
5E048AB01
5E048AC01
5E048AD07
5E048CA00
(57)【要約】
【課題】入力電磁石10の端面と永久磁石30の磁極面との間から生じる磁力線を適切に利用できる電源トランス装置を提供する。
【解決手段】電源から電力が入力されるコイルを備える入力電磁石10と、電磁誘導によって生じた電力を出力するコイルを備える出力電磁石20と、入力電磁石10の鉄芯15の一方端面11と他方端面12との間に配置される永久磁石30と、一方端面11と永久磁石30の一方磁極面31とが接触された一方の磁石密着部51と、他方端面12と永久磁石31の他方磁極面32とが接触された他方の磁石密着部52と、一方の磁石密着部51近傍に磁性体同士による接触がないように隙間をあけて位置される出力電磁石20の一方端部21と、他方の磁石密着部52の近傍に磁性体同士による接触がないように隙間をあけて位置される出力電磁石20の他方端部22とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から電力が入力されるコイルを備える入力電磁石と、
電磁誘導によって生じた電力を出力するコイルを備える出力電磁石と、
前記入力電磁石の鉄芯の一方端面と他方端面との間に配置される永久磁石と、
前記一方端面と前記永久磁石の一方磁極面とが接触された一方の磁石密着部と、
前記他方端面と前記永久磁石の他方磁極面とが接触された他方の磁石密着部と、
前記一方の磁石密着部の近傍に磁性体同士による接触がないように隙間をあけて位置される前記出力電磁石の一方端部と、
前記他方の磁石密着部の近傍に磁性体同士による接触がないように隙間をあけて位置される前記出力電磁石の他方端部とを備えることを特徴とする電源トランス装置。
【請求項2】
一対の前記入力電磁石の間に、一対の前記永久磁石が配されることで閉ループ状に設けられ、これに対応して一対の前記出力電磁石が配置されていることを特徴とする請求項1記載の電源トランス装置。
【請求項3】
前記入力電磁石の鉄芯の一方端面部と他方端面部とが、櫛歯状に設けられ、それぞれに対応する前記出力電磁石の鉄芯の前記一方端部と前記他方端部とに設けられた格子状部に交錯するように配されていることを特徴とする請求項1又は2記載の電源トランス装置。
【請求項4】
前記出力電磁石の鉄芯の一方端部と他方端部とが、それぞれに対応する前記一方の磁石密着部と前記他方の磁石密着部との周囲を囲うように設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電源トランス装置。
【請求項5】
前記隙間が0.3〜0.7mmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電源トランス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電源から電力が入力されるコイルを備える入力電磁石と、電磁誘導によって生じた電力を出力するコイルを備える出力電磁石とを備える電源トランス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁石から成る磁気回路を少なくとも1つ有し、該電磁石の両磁極片を、該両磁極片の端面がその間に内側の空隙を形成するように構成し、さらに外側空隙の中を運動する接極子を少なくとも1つ有し、該接極子を前記内側の空隙に隣り合うように設け、さらに該接極子は前記の磁気回路と磁気的に共働するようにされている、迅速な切り換え過程を形成するための電磁切り換え装置において、磁極片の端面の間の内側空隙の領域に永久磁石を設け、該永久磁石のN極およびS極がそれぞれ端面に隣り合うようにしたことを特徴とする迅速な切り換え過程を形成するための電磁切り換え装置(特許文献1参照)が、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表平01−502705号公報(請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電源トランス装置に関して解決しようとする問題点は、入力電磁石の端面と永久磁石の磁極面との間から生じる磁力線を適切に利用したトランスが提案されていないことである。
そこで本発明の目的は、入力電磁石の端面と永久磁石の磁極面との間から生じる磁力線を適切に利用できる電源トランス装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記目的を達成するために次の構成を備える。
本発明に係る電源トランス装置の一形態によれば、電源から電力が入力されるコイルを備える入力電磁石と、電磁誘導によって生じた電力を出力するコイルを備える出力電磁石と、前記入力電磁石の鉄芯の一方端面と他方端面との間に配置される永久磁石と、前記一方端面と前記永久磁石の一方磁極面とが接触された一方の磁石密着部と、前記他方端面と前記永久磁石の他方磁極面とが接触された他方の磁石密着部と、前記一方の磁石密着部の近傍に磁性体同士による接触がないように隙間をあけて位置される前記出力電磁石の一方端部と、前記他方の磁石密着部の近傍に磁性体同士による接触がないように隙間をあけて位置される前記出力電磁石の他方端部とを備える。
【0006】
また、本発明に係る電源トランス装置の一形態によれば、一対の前記入力電磁石の間に、一対の前記永久磁石が配されることで閉ループ状に設けられ、これに対応して一対の前記出力電磁石が配置されていることを特徴とすることができる。
【0007】
また、本発明に係る電源トランス装置の一形態によれば、前記入力電磁石の鉄芯の一方端面部と他方端面部とが、櫛歯状に設けられ、それぞれに対応する前記出力電磁石の鉄芯の前記一方端部と前記他方端部とに設けられた格子状部に交錯するように配されていることを特徴とすることができる。
【0008】
また、本発明に係る電源トランス装置の一形態によれば、前記出力電磁石の鉄芯の一方端部と他方端部とが、それぞれに対応する前記一方の磁石密着部と前記他方の磁石密着部との周囲を囲うように設けられていることを特徴とすることができる。
【0009】
また、本発明に係る電源トランス装置の一形態によれば、前記隙間が0.3〜0.7mmであることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る電源トランス装置によれば、入力電磁石の端面と永久磁石の磁極面との間から生じる磁力線を適切に利用できるという特別有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る電源トランス装置の形態例を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図1の形態例のA−A線断面における一部を示した要部断面図である。
【
図4】本発明に係る電源トランス装置の他の形態例を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図4の形態例のB−B線断面における一部を示した要部断面図である。
【
図6】本発明に係る電源トランス装置の他の形態例を模式的に示す断面図である。
【
図7】出力電力の形態例を示す説明図であって、直流電流を出力する(a)はブロック図、(b)は波形図である。
【
図8】出力電力の形態例を示す説明図であって、交流電流を出力する(a)はブロック図、(b)は波形図である。
【
図9】出力電力の他の形態例を示す説明図であって、交流電流を出力する(a)はブロック図、(b)は波形図である。
【
図10】本発明に係る電源トランス装置の他の形態例を模式的に示す説明図であって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る電源トランス装置の形態例を図面(
図1〜5)に基づいて説明する。
図1〜3に示した形態例は、一対の入力電磁石10、10の間に、一対の永久磁石30、30が配されることで閉ループ状に設けられ、これに対応して一対の出力電磁石20、20がその閉ループの外側に配置されている。これに対して、
図4〜5に示した形態例は、一対の入力電磁石10、10の間に、一対の永久磁石30、30が配されることで閉ループ状に設けられ、これに対応して一対の出力電磁石20、20がその閉ループの内側に配置されている。
【0013】
本発明では、基本構成として、電源から電力が入力されるコイル13を備える入力電磁石10と、電磁誘導によって生じた電力を出力するコイル23を備える出力電磁石20と、入力電磁石10の鉄芯15の一方端面11と他方端面12との間に配置される永久磁石30とを備えている。
【0014】
また、本発明では、永久磁石30が、入力電磁石10の鉄芯15の一方端面11と他方端面12との間に配置されることで、一方端面11と永久磁石30の一方磁極面31とが接触された一方の磁石密着部51と、入力電磁石10の鉄芯15の他方端面12と永久磁石30の他方磁極面32とが接触された他方の磁石密着部52とを備える構成となっている。
【0015】
そして、出力電磁石20の一方端部21が、一方の磁石密着部51の近傍に磁性体同士による接触がないように隙間をあけて位置されると共に、出力電磁石20の他方端部22が、他方の磁石密着部52の近傍に磁性体同士による接触がないように隙間をあけて位置されている。
【0016】
これによれば、入力電磁石10の電流がOFFの時、磁力は、鉄芯15と永久磁石30とが密着しているため、その磁気を外に出さない。
そして、入力電磁石10の電流がONの時(コイル13に電流が流れた時)、永久磁石30の各磁極面31、32と、鉄芯15の各端面11、12とを、同磁極にすると、各磁極の接点(一方の磁石密着部51、他方の磁石密着部52)近くに合成された大きな磁力を出すことになる。この磁力は、出力電磁石20の鉄芯25を回り、出力のコイル23によって大きな電流を取り出すことができ、変圧器として機能できる。
【0017】
例えば、
図1などに示すように、本形態例の永久磁石30では、一方磁極面31がN極になっており、他方磁極面32がS極になっている。また、本形態例の入力電磁石10では、その入力電磁石10の電流がONの時、一方端面11がN極となり、他方端面12がS極となるように構成されている。これによって電磁誘導がなされ、本形態例の出力電磁石20では、入力電磁石10の電流がONの時、一方端部21がS極となり、他方端部22がN極となり、電流が流れる。そして、この入力電磁石10の入力電流に係るスイッチのON・OFFが繰り返されることによって、出力電磁石20の出力のコイル23に出力電流が断続的に流れることになる。
【0018】
図示した二つの形態例では、一対の入力電磁石10、10の間に、一対の永久磁石30、30が配されることで閉ループ状に設けられ、これに対応して一対の出力電磁石20、20が配置されている形態になっている。これによれば、効率的な形態の電源トランス装置を構成することができる。但し、本発明はこれに限定されることなく、一つの入力電磁石10に対応して一つの出力電磁石20を備える構成でもよいのは勿論である。
【0019】
また、本形態例では、入力電磁石10の鉄芯15の一方端面部11Aと他方端面部12Aとが、櫛歯状に設けられ、それぞれに対応する出力電磁石20の鉄芯の一方端部21と他方端部22とに設けられた格子状部21a、22aに交錯するように配されている。
これによれば、より強力な磁力を発生させることができ、その電磁誘導によって、より大きな電流によるより大きく効率的な電力を得ることができる。
【0020】
さらに、本形態例では、出力電磁石20の鉄芯25の一方端部21と他方端部22とが、それぞれに対応する一方の磁石密着部51と他方の磁石密着部52との周囲を囲うように設けられている。
これによれば、発生した磁力を逃がさないように、出力電磁石20の鉄芯の一方端部21と他方端部22とで受けることができ、効率的に電力を発生できる。
なお、鉄芯15、25としては、効率を向上させるため、電磁鋼板を利用できることは勿論である。
【0021】
また、入力電磁石10の鉄芯15の一方端面部11Aと他方端面部12A及び永久磁石30に対し、出力電磁石20の鉄芯の一方端部21と他方端部22とが接触しないように位置する隙間が、狭いほどよく、実際には0.3〜0.7mm程度であると、強い磁力を出力電磁石20の鉄芯25の一方端部21と他方端部22とで受けることができる。
なお、この隙間は、磁性体同士の間に設けられるスペースであればよく、非磁性体を挟むことで、その非磁性体を介在させて設けてもよいのは勿論である。
【0022】
次に、以上に説明した原理を応用した形態例について、図面(
図6〜10)に基づいて説明する。
図6に示す形態例では、入力電磁石10の鉄芯15の一方端面部11Aと他方端面部12A及び永久磁石30に対し、出力電磁石20の鉄芯25の一方端部21と他方端部22とが近接するそれぞれの表面部分について、各部が相互に対応してより広い表面積で近接するように円錐や四角錐などの形態に設けられている。これによれば、電源トランス装置の効率を向上できる。なお、入力電磁石10の鉄芯15の一方端面部11Aと他方端面部12Aに対し、永久磁石30の一方磁極面31と他方磁極面32のそれぞれが密着する面は、永久磁石の飽和磁束による面よりも大きな表面積としておくといよい。
【0023】
次に、以上の原理によって発生させた電力の利用方法について説明する。
先ず、
図7(a)のブロック図に示すように、本形態例の出力電磁石20を電源とする出力電力源によれば、その出力電力源がAとBの二つあった場合、AとBに係るスイッチングによって交互に電力を出力してそれを統合すれば、
図7(b)の波形図のように、1/2サイクルの正弦波が連続する波形の直流電流を得ることができる。
【0024】
また、
図8(a)のブロック図に示すように、本形態例の出力電磁石20を電源とする出力電力源によれば、その出力電力源がAとBの二つあった場合であって、一つのコイルに電力を出力するように配線した場合、図示したように半導体ダイオードなどの電力の逆流防止器を配線することで、AとBに係るスイッチングによって交互に電力を出力してそれを統合すれば、
図8(b)の波形図のように、正弦波が連続する波形の交流電流を得ることができる。
【0025】
また、
図9(a)のブロック図に示すように、本形態例の出力電磁石20を電源とする出力電力源によれば、その出力電力源がAとBの二つあった場合であって、二つのコイルを介してトランスの効果を利用して一つのコイルに電力を出力するように配線した場合、図示したように半導体ダイオードなどの電力の逆流防止器を配線することで、AとBに係るスイッチングによって交互に電力を出力してそれを統合すれば、
図9(b)の波形図のように、正弦波が連続する波形の交流電流を得ることができる。
【0026】
さらに、
図10に示す形態例では、入力側の一次コイル13を両側に配することで二つ設け、真中に出力側の二次コイル23を一つ配すると共に、その二次コイル23については二台分に相当するように構成されている。これによれば、二つの一次コイル13に対応して、一つの二次コイル23によって二台分を合わせた大きな出力容量とすることができる。
【0027】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論ことである。
【符号の説明】
【0028】
10 入力電磁石
11A 一方端面部
11 一方端面
12A 他方端面部
12 他方端面
13 コイル
15 鉄芯
20 出力電磁石
21 一方端部
21a 格子状部
22 他方端部
22a 格子状部
23 コイル
25 鉄芯
30 永久磁石
31 一方磁極面
32 他方磁極面
51 一方の磁石密着部
52 他方の磁石密着部