【解決手段】強化絶縁電線とされた導電ワイヤ30が巻回された巻軸部の少なくとも両端に鍔状の端部21A、21Bを有し、両鍔間に透孔26が穿設されてなる中空のボビン20と、ボビン20の外側に被せられる箱型状のカバー部材40と、カバー部材40の側面外周部を囲むように、2つのE字状のコア部材60A、Bを組み合わせてなる磁性コア部60を備え、コア部材60A、Bの中脚部分が、ボビン20の透孔26を挿通するように構成される小型トランス1であって、ボビン20に巻回された巻線部35とコア部材60A、Bとの間に介在する、カバー部材40の側壁部を設けないようにしたものである。
前記コア部材と、前記カバー部材と、前記ボビンの各側面部が面一に形成され、これら各側面部に亘る幅を有する粘着性帯状部により、該各側面部を一体的に周回させるように形成したことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項記載の小型トランス。
前記カバー部材の天板部の少なくとも1つの側壁部分に凹部が設けられ、前記カバー部材に周回された粘着性帯状部と該凹部との間に間隙が形成され、この間隙を介して、前記コア部材への侵入が許容されることを特徴とする請求項4記載の小型トランス。
【背景技術】
【0002】
種々の装置や機構には、例えば10mm角程度の小型トランスが数多く用いられている。この種の小型トランスにおいては、ショート等による危険性を排除するため、および所望の特性を得るため、巻線部と磁性コアの間に介在し、巻線部全体を覆うようにした、樹脂剤等からなる絶縁性のカバー部材が設けられている。
【0003】
例えば、
図9は、従来より知られている小型トランスの一部を示すものである。この
図9において、カバー部材140は、組立時において部品搬送用の吸着手段に吸着される平坦面を有する天板部141と、ボビン120の端子台123A、123B上に載設される載設部143と、これら天板部141および載設部143を接続する各側壁部(側方側壁部142A、142B、前方側壁部145、および後方側壁部(図面上に表されていない))とを備えている。なお、4つの側壁部の外周部中段には、2つのE型コアの先端部を突合せてなる、図示されないコア部が配置され、それらE型コアの中脚部が挿通される開口部146が設けられている。
なお、上記各端子台123A、123Bには各々、複数本の端子ピン124A、124B、および複数個のコイルリード係止突起125A、125Bが設けられている。このコイルリード係止突起125A、125Bは、導電ワイヤ130の端部を係止し、導電ワイヤ130の端部先端を端子ピン124A、124Bに接続させるための作業を容易にするためのものである。
【0004】
また、カバー部材140の一部を破断した
図10に示すように、このカバー部材140の内側には、ボビン120の、導電ワイヤ130が巻回された部分である巻線部135が配置されている様子が示されている。この巻線部135と、図示されないコア部との間に、絶縁性を有するカバー部材140の、上述した各側壁部(142A、142B、145)が位置しており、これにより、巻線部135とコア部との間の絶縁性が確保されることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年、このような小型トランスに対する、さらなる小型化の要請は強いものがあり、特に、前後方向(前方側壁部145と後方側壁部とが対向する方向:以下同じ)の長さを短縮することにより小型化を図ることが強く要請されていた。
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、カバー部材を備えた面実装型の小型トランスにおいて、高い絶縁性能を確保しつつ、特に、前後方向の長さを短縮して、さらなる小型化を図り得る小型トランスを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る小型トランスは、以下の特徴を備えている。
本発明に係る小型トランスは、
導電ワイヤが巻回された巻軸部の少なくとも両端に鍔部を有し、これら鍔部間に透孔が穿設されてなる中空のボビンと、
該ボビンの外側に被せられる箱型状のカバー部材と、
該カバー部材の側面外周部を囲むように、複数のコア部材を互いに組み合わせて配置される断面略日字状の磁性コア部とを備え、
前記コア部材のうち、前記日字状の中段の一の字に相当する棒状のコア部材部分が、前記ボビンの透孔を挿通するように構成された面実装型の小型トランスにおいて、
前記導電ワイヤが強化絶縁電線とされてなり、
前記ボビンに巻回された導電ワイヤと対向する、前記カバー部材の両側壁部分が開口され、該ボビンの最外周部分と前記コア部材の内壁部分が密接した状態に対向配置されてなることを特徴とするものである。
【0008】
ここで、上記「該ボビンの最外周部分と前記コア部材の内壁部分が密接した状態に対向配置してなる」とは、巻線部とコア部材の間に位置する、カバー部材の両側壁部分に開口部が形成されている場合だけではなく、この両側壁部分が全て除去されている場合も含むものとし、巻線部とコア部材の間に、上記両側壁部分が実質的に介在せず、ボビンの最外周部分と前記コア部材の内壁部分が極めて近接した(当接しているか否かは問わない)状態に配置することを意味する。
また、ここで、「強化絶縁電線」とは、一般のコイル電線と比べて絶縁性が強化されたものをいい、互いに異なる樹脂材料からなる絶縁コーティング層を少なくとも2層以上、積層被覆したものをいう。
【0009】
また、前記ボビンに巻回された導電ワイヤと対向する、前記カバー部材の両側壁部分が除去されてなることが好ましい。
また、前記複数のコア部材が、1対のE字状のコア部材であることが好ましい。
【0010】
また、前記コア部材と、前記カバー部材と、前記ボビンの各側面部が面一に形成され、これら各側面部に亘る幅を有する粘着性帯状部により、該各側面部を一体的に周回させるように形成することが好ましい。
【0011】
さらに、前記カバー部材の天板部の少なくとも1つの側壁部分に凹部が設けられ、前記カバー部材に周回された粘着性帯状部と該凹部との間に間隙が形成され、この間隙を介して、前記コア部材への侵入が許容されることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の小型トランスによれば、導電ワイヤを強化絶縁電線とし、さらにボビンに巻回された導電ワイヤと対向する、カバー部材の両側壁部分を開口し、該ボビンの最外周部分とコア部材の内壁部分が密接した状態に対向配置されてなる。
従来はカバー部材の側壁面により、ボビンに巻回された導電ワイヤと、この側壁面の外周部を取り囲むように配されたコア部材との間の絶縁性を確保するようにしていたが、カバー部材の側壁部分は、小型トランスの幅のうち、所定の割合を占めるため、小型トランスのさらなる小型化を促進することが難しかった。
【0013】
そこで、本発明の小型トランスにおいては、導電ワイヤを、高い絶縁性を確保することができる強化絶縁電線とし、これにより、従来、ボビンに巻回された導電ワイヤと、コア部材との間の高い絶縁性を確保するために必要とされていたカバー部材の両側壁部分を開口させ、ボビンの最外周部分とコア部材の内壁部分が密接した状態として、従来よりも、このカバー部材の両側壁部分の厚み分だけ、小型トランスの、ボビンの軸方向に直交する方向(以下、前後方向と称する)の長さを短縮することができるようにしている。
【0014】
これにより、面実装型の小型トランスにおいて、高い絶縁性を確保しつつ、前後方向の長さを短縮して、さらなる小型化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る小型トランスについて図面を参照しつつ説明する。本実施形態の小型トランスは、例えば、車載用の各種電子機器に適用される。
【0017】
従来の小型トランスは、
図10に示すように、カバー部材140の内側に、ボビン120の、導電ワイヤ130が巻回された部分である巻線部135が配置されており、この巻線部135と図示されないコア部との間に、絶縁性を有するカバー部材140が介在して、巻線部135とコア部との間の高い絶縁性が確保されることになるが、その一方で、このカバー部材140の壁面によって、巻線部135とコア部との距離が空いてしまうので、この小型トランスの前後方向の長さを短縮することができず、小型化を促進することが難しかった。
【0018】
そこで、本実施形態に係る小型トランスにおいては、導電ワイヤ30を、強化絶縁電線により構成し、さらに、
図1に示すように、磁性コア部60のうち、日字状の中段の一の字に相当する棒状のコア部材部分が、ボビン20の透孔26を挿通するように構成するとともに、絶縁性のカバー部材40の、前後方向両側壁部分を開口(除去)するように構成し、ボビン20の最外周部分(ボビン20の各部材のうちコア部材60A、60Bとの距離が一番近い部分)とコア部材60A、60Bの内壁部分が密接した状態となるように配置している。ここで、「前後方向両側壁部分を開口する」との概念には、「前後方向両側壁部分を除去する」概念も含まれるものとする。
【0019】
導電ワイヤ30を強化絶縁電線とすることにより、巻線部35とコア部材60A、60B(コア部材60Aについては
図5を参照)との間の高い絶縁性が確保されているので、カバー部材40の前後方向両側壁部分が不要となり、この壁2枚(前方側壁部と後方側壁
部の2枚)の厚み分だけ、小型トランスの前後方向の長さを短くすることができ、さらなる小型化を図ることができる。
【0020】
なお、強化絶縁電線とされた上記導電ワイヤ30は、銅、アルミニウム等の線材を2層以上の絶縁皮膜によって積層被覆してなり、絶縁皮膜は、例えば、フッ素系樹脂、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂や、エチレン-プロピレン-コポリマー等の熱硬化性樹脂、さらには、他の種々の樹脂材料によって形成することができる。
また、積層される各層の樹脂材料は、互いに異なるものとされる。
なお、本実施形態における強化絶縁電線の絶縁皮膜は、少なくとも1000Vの耐電圧を有しているものである。
【0021】
また、ボビン20は、成形性、量産性、微細加工性、電気絶縁性、低廉性および機械的な強度等を考慮し、6,6−ナイロン等の熱可塑性樹脂を用いて成形されており、図示されない巻軸に、上記導電ワイヤ30が巻回されて形成された巻線部35を備えている。また、このボビン20は、インサート成形法を用い、多数の端子ピン24A、24B同士の絶縁性を保ちながら、上記熱可塑性樹脂で封止した端子台23A、23Bを備えており、ボビン20全体として一体成形されてなる。
【0022】
また、カバー部材40は絶縁性を有するとともにマウント機能を有しており、組立時において部品搬送用の吸着手段によりエア吸着される平坦面を有する天板部41と、ボビン20の端子台23A、23B上に載設されるボビン上載設部43と、これら天板部41およびボビン上載設部43を接続する側方側壁部42A、42B(従来技術において形成されていた前方側壁部および後方側壁部は除去されている)とを備えている。
なお、側方側壁部42A、42Bの中央部分には、それぞれ、コア部材60A、60Bの中脚部分が挿通される、矩形状の開口部46が穿設されている。
【0023】
また、カバー部材40は、2つの端子台23A、23Bの間の間隙部分において露出する巻線部35を保護するための、前方下側カバー部44Aと後方下側カバー部44B(
図3を参照)を備えている。
また、前記磁性コア部60は、1対のE字状のコア部材60A、60Bの対応する各脚先端部を互いにつき合わせ、閉磁路が形成されるように組み合わせて、前述したように、磁性コア部60を断面略日字状に形成し、これによってカバー部材40の側壁部を囲むように配置する。
【0024】
また、E字状のコア部材60A、60Bの各中脚は、カバー部材40の開口部46を介してボビン20の透孔26を挿通する。
なお、上記1対のE字型のコア部材60A、60Bに替えて、例えばI字状コアとE字状コアを組み合わせたり、U字状コアとT字状コアを組み合わせたりして断面日字形状を構成してもよい。また3つ以上のコア部材を組み合わせて断面日字形状を構成してもよい。
【0025】
図2は、導電ワイヤ30を巻枠内の巻軸(図面中には表されていない)に巻回してなるボビン20を示すものである。
このボビン20は、巻枠の両端に鍔状の端部21A、21Bを、両端の間に2つの膈壁部22A、22Bを、各々形成されてなる。巻線部35は、両端部21A、21Bと両膈壁部22A、22Bによって区切られた3つの巻回領域を有しており、複数の巻回領域に分けることによって、巻線の巻姿を良好にすることができる。
【0026】
これら導電ワイヤ30が巻回される巻軸は、中心軸に沿って断面矩形状の透孔26が形成された中空タイプとされており、上述したように、この透孔26に、コア部材60A、
60Bの中脚が嵌挿される。
【0027】
また、両端部21A、21Bの外側下部(ボビン20の透孔26におけるボビン開口部27の下縁部よりも下方)に各々端子台23A、23Bを有している。これらの端子台23A、23Bは、各々、複数本のL字型の端子ピン24A、24B(端子ピン24Aは4本、端子ピン24Bは5本)をインサート成形法を用いて一体成形されてなり、また、各端子ピン24A、24Bの根元部付近に、端子ピンの1本ずつに対応して、導電ワイヤ30の端部を一旦係止させて、コイル端部先端を端子ピン24A、24Bに容易に接続させるためのコイルリード係止突起25A、25Bが形成されている。
上記端子ピン24A、24Bのうち、図示されない実装基板の電源ライン等に接続(半田付け)されたピンに導電ワイヤ30が接続され、これによって、1次側の導電ワイヤ30に電流が流れ、電磁誘導作用によって2次側に大きい電圧が発生することになる。
また、一方の端子台23Aの中央部付近に縦溝からなる係合スリット28が設けられており、後述するカバー部材40の係合突起48(
図3を参照)と互いに係合されるようになっている。
【0028】
次に、
図3を用いて上記カバー部材40について説明する。前述したように、このカバー部材40は
図2に示すボビン20に嵌め合わせるようにして被せるものであり、その際に、カバー部材40の開口部46が、ボビン20の透孔26の出入口であるボビン開口部27の位置と一致するように形成されている。
【0029】
また、天板部41は、前述したように、装置等を自動組み立てにより製造する際に、この小型トランス1をエア吸着により把持して、搬送し得るように、吸着面としての平坦部を備えている。
また、この天板部41の各側壁部には、凹部47が設けられており、小型トランス1の側壁に全部材固定用粘着テープ80(
図8を参照)を巻き付ける際に、絶縁性能を検査するための測定端子を、この全部材固定用粘着テープ80の内側に位置するコア部材60A、60Bに接触させるための便宜が図られている。詳しくは、後述する。
【0030】
また、ボビン上載設部43の一方側の下面には、フィン状の係合突起48が設けられており、この係合突起48が、前述した、ボビンの係合スリット28に嵌合されるようになっており、これによってカバー部材40がボビン20上に、確実に位置決めされて配設される。
また、前述したように、巻線部35の絶縁性を確保するための、前方下側カバー部44Aと後方下側カバー部44Bが設けられている。
【0031】
ところで、本実施形態の小型トランス1においては、このカバー部材40が前方および後方の側壁部を備えていない。すなわち、カバー部材40の前方および後方の側壁部が除去されているために、このカバー部材40の内部に配されるボビン20(巻線部35)と、このカバー部材40の側壁部の周りを囲むように配されるコア部材60A、60Bを、当接する程度まで互いに近づけることが可能となっている。
これにより、小型トランス1の前後方向の長さを短縮することができ、小型トランス1の小型化を促進することができる。
【0032】
図4は、上記導電ワイヤ30を巻回されたボビン20に、カバー部材40を被せて組み合わせた様子を示すものである。
図4に示すように、小型トランス1の前方側において、ボビン20の巻軸部の両端部21A、21B、両隔壁部22A、22Bおよび巻線部35の導電ワイヤ30のいずれかの外周面が、カバー部材40の両側方側壁部42A、42Bの前方側端部よりも、突出しているので、ボビン上載設部43上に配設されるコア部材60A、60B(天板部41とボビン上載設部43の間に嵌り込む)の内壁面は、前方側に
おいて、カバー部材40の側壁部に当接せずに、ボビン20の両端部21A、21B、両隔壁部22A、22Bおよび巻線部35の導電ワイヤ30のいずれかの外周面に当接または極めて近接した状態に配置される。
【0033】
上記では、小型トランス1の前方側について説明したが、小型トランス1の後方側についても、ボビン上載設部43上に配設されるコア部材60A、60Bの内壁面が、ボビン20の両端部21A、21B、両隔壁部22A、22Bおよび巻線部35の導電ワイヤ30の外周面に当接することになっている状況は同じである。
これにより、小型トランス1の前後方向の長さにおいて、カバー部材40の壁厚分の距離を短縮することができる。
【0034】
図5は、
図4に示す部材組合せ状態に、コア部材60A、60Bからなる磁性コア部60を装着した状態を示すものである。これらコア部材60A、60Bは、同形状のE字状コアであって、フェライトコアや圧粉コア等の周知の磁性コアからなり、互いの両側脚部および中脚部の先端同士をつきあわせて両コア部材60A、60Bを互いに接着することにより、ボビン20、カバー部材40および磁性コア部60が、一体的に取り付けられる。
なお、この状態で、ボビン20、カバー部材40および磁性コア部60の外側面は、互いに面一の状態とされている。
【0035】
前述したように、小型トランス1の前方側および後方側において、ボビン上載設部43上に配設されるコア部材60A、60Bの内壁面は、ボビン20の両端部21A、21Bおよび両隔壁部22A、22B、さらには巻回されている導電ワイヤ30の各部材のうち、最外周に位置する部材に当接することになるので、
図6に示すように、従来技術のもの(A)に比べて、本実施形態のもの(B)では、カバー部材40の壁厚の距離を短縮することができる。
すなわち、従来技術のもの(A)と本実施形態のもの(B)の外径寸法差dは、カバー部材40の壁厚2枚分に相当する。
【0036】
例えば、一般的な各壁厚を0.6mmとすると、前方および後方の2枚の壁厚は1.2mmであるから、上記dは1.2mmとなる。
このようなタイプの、一般的な小型トランスの前後方向の長さを仮に10mm程度とすると、本実施形態による、前後方向の長さの短縮割合は1割強となり、小型化を促進することができる。
【0037】
ところで、
図7に示すように、組み合わせられた状態の2つのコア部材60A、60Bの外周部にコア固定用粘着テープ70を周回させる(一巻きする)ようにして両コア部材60A、60Bに接着し、これら2つのコア部材60A、60Bを互いに確実に固定することが好ましい。
【0038】
さらに、本実施形態においては、前述したように、ボビン20、カバー部材40および磁性コア部60の外側面が、互いに面一の状態とされているので、
図8に示すように、ボビン20、カバー部材40および磁性コア部60の各側面に亘ってカバーされるような幅で、全部材固定用粘着テープ80を周回させる(一巻きする)ようにして接着し、ボビン20、カバー部材40および磁性コア部60の各部材を相互に確実に固定することが好ましい。
【0039】
全部材固定用粘着テープ80を用いた周回処理は、上述したコア固定用粘着テープ70を周回させた後に行ってもよいし、コア固定用粘着テープ70を用いずに、全部材固定用粘着テープ80のみを周回させるようにしてもよい。
【0040】
このように、ボビン20、カバー部材40および磁性コア部60の各側面に亘ってカバーされるような幅で、全部材固定用粘着テープ80を周回させるように接着させることで、小型トランス1が組み立てられた後に、各部材が、振動によってカタカタというような音を発することを防止することができる。
また、特に、高温多湿の環境下においては、接着剤に比べて、粘着テープ80の方が保持性能が持続するという利点もある。さらに、粘着テープ80であれば伸縮性を有しているので保持材としての信頼性の面でも有利である。
【0041】
一方、
図8に示すように、全部材固定用粘着テープ80が、各部材の外側面を周回させるように構成された場合、各外側面側からは、カバー部材40の内部に部材を侵入させることが困難となる。例えば、導電ワイヤ130の絶縁性を測定する際に、測定端子の一方を導電ワイヤ130の延長となる端子ピン24A、24Bに接触させ、測定端子の他方をコア部材60A、60Bに接触させることを要求される場合がある。
【0042】
しかしながら、全部材固定用粘着テープ80により各側壁部を周回固定した
図8に示すような状態においては、上記測定端子を側部から侵入させてコア部材60A、60Bに当接させることができないので、カバー部材の天板部41の各側面に設けた凹部47と全部材固定用粘着テープ80との間隙から上記測定端子を侵入させて、コア部材60A、60Bに接触させるようにしている。
【0043】
なお、上記全部材固定用粘着テープ80は、上記実施形態のものに適用し得ることが記載されているが、本発明以外の一般の小型トランスにおいても、ボビン、カバー部材および磁性コア部の各側面に亘ってカバーされるような幅で、全部材固定用粘着テープ80を周回させるように接着させることが可能(ボビン、カバー部材および磁性コア部の各側面が面一)となる場合には、これによって、小型トランスが組み立てられた後に、各部材が、振動によってカタカタというような音を発することを防止することができる。
この場合にも、
図8を用いて説明することができる。
【0044】
なお、本発明の小型トランスとしては、上記実施形態のものに限られるものではなく、その他の種々の態様のものを適用することができる。
例えば、上記実施形態の小型トランスは、車載用各種電子機器に用いるものとされているが、本発明の小型トランスとしては、その他の種々の装置に用いられる小型トランスとして採用可能である。
【0045】
また、ボビンやカバー部材の形状としては上記実施形態のものに限られるものではなく、種々の形状やタイプのものに変更が可能である。
また、例えば、ボビンの隔壁部の数、各巻回領域の種類(1次巻線用、2次巻線用等)や幅についても適宜変更が可能である。
【0046】
また、コア部材についても、前述したように、2つのE字状のコア部材に限られるものではなく、断面略日字形状を構成できるものであれば、他の形状のコア部材を組み合わせたものであってもよい。また、コア部材は2つに限られるものではなく、3つ以上としてもよい。
【0047】
また、上記実施形態においては、カバー部材40の前方および後方の側壁部分を除去するようにしているが、本発明の小型トランスにおいては、ボビンの最外周部分とコア部材の内壁部分を密接した状態に配置することができれば、前方および後方の側壁部分を除去せずともよく、例えば、ボビンの最外周部分とコア部材の内壁部分を密接させる部分において、前方および後方の側壁部分に開口を設けるようにしてもよい。
【0048】
また、上記実施形態においては、粘着性帯状部として全部材固定用粘着テープを用いているが、本発明の小型トランスにおいてはこれに限られるものではなく、所定幅の帯状ベース部材の一方側の表面に、接着剤を塗布するようにした粘着性帯状部を用いてもよい。