【解決手段】信号処理回路100は、複数チャンネルのA/D変換ユニット40を備える。各A/D変換ユニット40は、入力アナログ信号S1を増幅するアンプ10およびアンプ10の出力信号S2をデジタル信号S3に変換するA/Dコンバータ20を含む。A/D変換ユニット40は、アンプ10およびA/Dコンバータ20の動作パラメータの少なくともひとつが、チャンネル毎に個別に設定可能である。
それぞれが、入力アナログ信号を増幅するアンプおよび前記アンプの出力信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータを含む複数チャンネルのA/D変換ユニットを備え、
前記アンプおよび前記A/Dコンバータの動作パラメータの少なくともひとつが、チャンネル毎に個別に設定可能であることを特徴とする信号処理回路。
前記複数チャンネルのA/D変換ユニットは、広いダイナミックレンジを高速にサンプリング可能な第1A/D変換ユニットと、狭いダイナミックレンジを高精度で低速にサンプリング可能な第2A/D変換ユニットと、を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の信号処理回路。
前記入力アナログ信号の状態に応じて、前記複数チャンネルのA/D変換ユニットのひとつを有効化し、有効なA/D変換ユニットからの前記デジタル信号を処理対象とすることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の信号処理回路。
前記入力アナログ信号の状態に応じて、前記複数チャンネルのA/D変換ユニットのうち複数を有効化し、有効な複数のA/D変換ユニットからの複数のデジタル信号のうち、最適なひとつを処理対象とすることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の信号処理回路。
前記入力アナログ信号を固定した状態で前記複数チャンネルのA/D変換ユニットにより複数のデジタル信号を生成し、前記複数のデジタル信号にもとづいて、各チャンネルの異常の有無を判定する異常検出部をさらに備えることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の信号処理回路。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、
図1の信号処理回路100rについて検討した結果、以下の課題を認識するに至った。
【0006】
入力アナログ信号S1の振る舞い(波形)が、そのときどきで異なる場合がある。たとえば電子機器に搭載されるバッテリの電流は、電子機器の休止状態においては、ほとんど変動せず、静的であるのに対して、電子機器の使用状態では、ダイナミックに高速に変動する。
【0007】
アンプ10のゲインやA/Dコンバータ20のサンプリング周波数などを、ある代表的な状況における入力アナログ信号S1の振る舞いに対して最適化して設計すると、入力アナログ信号S1の振る舞いが変化したときに、正しいデジタル値を取得することが難しい。
【0008】
振る舞いが大きく変化する入力アナログ信号S1を適切にデジタル信号S3に変換するために、アンプ10およびA/Dコンバータ20の特性(動作パラメータ)を、アナログ信号の振る舞いに応じて動的ないし適応的に切りかえるアプローチを採ることも考えられる。しかしながら、アンプ10やA/Dコンバータ20の動作パラメータの切りかえには、ある程度の時間を要する。したがってアンプ10やA/Dコンバータ20の動作パラメータの切りかえが発生すると、しばらくの間、入力アナログ信号S1を測定することができなくなってしまう。特にA/Dコンバータの特性を切りかえる場合、特性の切りかえ毎にキャリブレーションを行うと、入力アナログ信号S1を測定できない無効時間はさらに長くなってしまう。
【0009】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、振る舞いが変化するアナログ信号を適切に測定可能な信号処理回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある態様は信号処理回路に関する。信号処理回路は、それぞれが、入力アナログ信号を増幅するアンプおよびアンプの出力信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータを含む複数チャンネルのA/D変換ユニットを備える。アンプおよびA/Dコンバータの動作パラメータの少なくともひとつが、チャンネル毎に個別に設定可能である。
【0011】
この態様によると、複数チャンネルのA/D変換ユニットそれぞれの動作パラメータや特性を、入力アナログ信号の振る舞い、波形の変動を想定して設定しておき、複数チャンネルのA/D変換ユニットの中から、現在の入力アナログ信号の状態に適したひとつを選択することにより、アナログ信号を適切に測定できる。
【0012】
A/Dコンバータは、ΔΣ型であってもよい。
ΔΣ型のA/Dコンバータは、逐次比較型などのA/Dコンバータに比べて、1回の測定に長い時間を要する上に、動作パラメータの切りかえにも長い時間を要する。したがってΔΣ型のA/Dコンバータを備える信号処理回路に、本発明を適用することにより、その効果をより一層享受できる。
【0013】
A/Dコンバータは、サンプリングレートおよびフィルタ特性が可変であってもよい。アンプは、ゲインが可変であってもよい。
【0014】
複数チャンネルのA/D変換ユニットは、広いダイナミックレンジを高速にサンプリング可能な第1A/D変換ユニットと、狭いダイナミックレンジを高精度で低速にサンプリング可能な第2A/D変換ユニットと、を含んでもよい。
【0015】
入力アナログ信号の状態に応じて、複数チャンネルのA/D変換ユニットのひとつを有効化し、有効なA/D変換ユニットからのデジタル信号を処理対象としてもよい。
【0016】
入力アナログ信号の状態に応じて、複数チャンネルのA/D変換ユニットのうち複数を有効化し、有効な複数のA/D変換ユニットからの複数のデジタル信号のうち、最適なひとつを処理対象としてもよい。
【0017】
ある態様の信号処理回路は、入力アナログ信号を固定した状態で、複数チャンネルのA/D変換ユニットにより複数のデジタル信号を生成し、複数のデジタル信号にもとづいて、各チャンネルの異常の有無を判定する異常検出部をさらに備えてもよい。
【0018】
信号処理回路は、ひとつの半導体基板に一体集積化されてもよい。「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。
【0019】
本発明の別の態様は、クーロンカウンタ回路に関する.クーロンカウント回路は、バッテリに流れる電流を示す電流検出信号を受ける入力端子と、電流検出信号をデジタル信号に変換する上述のいずれかの信号処理回路と、信号処理回路の出力信号を積算する演算部と、を備えてもよい。
【0020】
本発明の別の態様は、電子機器に関する.電子機器は、バッテリと、バッテリを充電する充電回路と、バッテリの充放電電荷を検出する上述のクーロンカウンタ回路と、クーロンカウンタ回路の出力にもとづいて、バッテリの残量を検出する残量検出回路と、を備えてもよい。
【0021】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、振る舞いが変化するアナログ信号を適切に測定できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0025】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合や、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0026】
図2は、実施の形態に係る信号処理回路100のブロック図である。信号処理回路100は、入力端子INP,INNの電位差に相当する入力アナログ信号S1をデジタル信号に変換し、所定の信号処理を施す。信号処理回路100は、ひとつの半導体基板に集積化された機能ICであってもよい。信号処理回路100は、複数チャンネルCH1〜CHnのA/D変換ユニット40_1〜40_nを備える。本実施の形態では、説明の簡潔化と理解の容易化のために、n=2の場合を説明するが、nは3以上の任意の整数でありうる。以下、チャンネルを区別する必要が無い場合、各符号のチャンネル番号1,2…を示す添え字(_1,_2…)は適宜省略する。
【0027】
電源(VCC)端子には外部から、アナログ回路ブロックに対する電源電圧が供給される。各A/D変換ユニット40には、共通の入力アナログ信号S1が入力されている。A/D変換ユニット40_i(i=1,2…)は、入力アナログ信号S1を増幅するアンプ10と、アンプ10の出力信号S2_iをデジタル信号S3_iに変換するA/Dコンバータ20を含む。
【0028】
複数チャンネルのA/D変換ユニット40_1〜40_nは同一の構成を有しており、アンプ10およびA/Dコンバータ20の動作パラメータの少なくともひとつが、チャンネル毎に個別に設定可能である。たとえばアンプ10の利得、A/Dコンバータ20のサンプリングレート、フィルタ特性などが、チャンネルごとに個別に設定可能である。
【0029】
A/Dコンバータ20は、ΔΣ型であってもよい。各A/Dコンバータ20は、サンプリングレートおよびフィルタ特性が可変である。
【0030】
基準電圧源50および内部電圧源52は、それぞれ異なる電圧レベルの基準電圧V
REF25,V
REF15を生成する。アンプ10は、非反転型の差動増幅器であり、入力アナログ信号S1を、基準電圧V
REF25を基準として増幅し、アナログ信号S2を生成する。A/Dコンバータ20は、基準電圧V
REF25およびV
REF15を利用して、アナログ信号S2をデジタル信号S3に変換する。基準電圧(VREF25)端子および内部電圧(VREF15)端子はそれぞれ、基準電圧源50および内部電圧源52の出力と接続され、外付けの平滑キャパシタが接続される。また信号処理回路100の外部回路から、基準電圧V
REF25および内部電圧V
REF15が参照可能となっている。
【0031】
デジタル回路30には、A/D変換ユニット40_1〜40_2が生成するデジタル信号S3_1〜S3_2が入力される。デジタル回路30は、デジタル信号S3_1〜S3_2に所定の信号処理を施す。デジタル回路30は、インタフェース回路54を介して外部のプロセッサと接続され、信号処理後のデータを送信する。インタフェース回路54は、たとえばSPI(Serial Peripheral Interface)であってもよいし、I
2C(Inter IC)インタフェースであってもよい。デジタル回路30による信号処理の内容は特に限定されない。電源(VDD)端子には、デジタル回路ブロックへの電源電圧が供給される。DINはデータ入力端子、DOUTはデータ出力端子、CSはチップセレクト端子、CLKはシリアルクロックの入力端子である。またデジタル回路30は、何らかの異常を検出すると、アラーム(ALARM)端子の電気的状態を制御して外部回路に通知する。
【0032】
A/D変換ユニット40_1およびA/D変換ユニット40_2それぞれの動作パラメータ、特性は、入力アナログ信号S1の振る舞い、波形の変動を想定して設定されている。複数チャンネルのA/D変換ユニット40の動作パラメータは、信号処理回路100の起動時に、セットアップされ、動作開始後は固定される。
【0033】
複数チャンネルのA/D変換ユニット40の動作パラメータの設定例を、入力アナログ信号S1の振る舞いと対応付けて説明する。
【0034】
入力アナログ信号S1の信号レベル(すなわち強度あるいは量)は、状況によって大きく変化するものとする。この場合、たとえば第1A/D変換ユニット40_1は、広いダイナミックレンジを高速にサンプリング可能となるように、動作パラメータが設定される。具体的には、アンプ10の利得が相対的に低く設定され、A/Dコンバータ20のサンプリング周波数が相対的に高く、内部フィルタの係数が相対的に広帯域に設定される。
【0035】
一方、第2A/D変換ユニット40_2は、狭いダイナミックレンジを高精度で低速にサンプリング可能となるように、動作パラメータが設定される。具体的にはアンプ10の利得が相対的に高く設定され、A/Dコンバータ20のサンプリング周波数が相対的に低く、内部フィルタの係数が相対的に狭帯域に設定される。
【0036】
第1A/D変換ユニット40_1によれば、値の大きな入力アナログ信号S1を正確に測定できる。一方、第2A/D変換ユニット40_2によれば、値の小さな入力アナログ信号S1を正確に測定できる。ここでA/Dコンバータ20はサンプリング周波数が低いほど低ノイズであるから、第2A/D変換ユニット40_2を用いることで、値の小さな入力アナログ信号S1の検出精度はさらに向上する。
【0037】
デジタル回路30は、過去のデジタル信号S3_1、S3_2の履歴から、現在の入力アナログ信号S1の振る舞いや波形を推定あるいは検出し、その結果にもとづいて、複数チャンネルのA/D変換ユニット40の中から、現在の入力アナログ信号S1の状態に適したひとつを有効化し、有効なチャンネルのA/D変換ユニット40からのデジタル信号S3を処理対象とする。
【0038】
デジタル回路30は、有効化されたチャンネルのA/D変換ユニット40のみを動作させ、残りのチャンネルのA/D変換ユニット40を停止状態としてもよい。これにより消費電力を削減できる。
【0039】
以上が信号処理回路100の構成である。続いてその動作を説明する。
図3は、
図2の信号処理回路100の動作波形図である。本明細書において参照する波形図やタイムチャートの縦軸および横軸は、理解を容易とするために適宜拡大、縮小したものであり、また示される各波形も、理解の容易のために簡略化され、あるいは誇張もしくは強調されている。
【0040】
時刻t0〜t1の間、入力アナログ信号S1の信号レベルは小さく、第1チャンネルCH1が有効となる。デジタル信号S3は相対的に低いサンプリングレートで生成される。
【0041】
時刻t1〜t2の間、入力アナログ信号S1の信号レベルは大きくなり、第2チャンネルCH2が有効となる。デジタル信号S3は相対的に高いサンプリングレートで生成される。
【0042】
時刻t2に、入力アナログ信号S1の信号レベルが再び小さくなると、第1チャンネルCH1が有効となる。
【0043】
以上が信号処理回路100の動作である。この信号処理回路100によれば、入力アナログ信号S1の振る舞いに応じて、複数のA/D変換ユニット40を用意しておき、それらを切りかえて使用することにより、入力アナログ信号S1を正確に測定することが可能となる。
【0044】
特に、ΔΣ型のA/Dコンバータ20は、逐次比較型などのA/Dコンバータに比べて、1回の測定に長い時間を要する上に、動作パラメータの切りかえにも長い時間を要する。したがってΔΣ型のA/Dコンバータ20を備える信号処理回路100に、本発明を適用することにより、その効果をより一層享受できる。
【0045】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0046】
(第1変形例)
実施の形態では、チャンネルごとにアンプ10の利得とA/Dコンバータ20のサンプリングレート、フィルタ特性が異なる場合を説明したが本発明はそれに限定されない。入力アナログ信号S1の信号レベルの変動がそれほど大きくなく、状況に応じて、その変動速度が変化するような場合には、A/Dコンバータ20の動作パラメータのみをチャンネルごとに異ならしめてもよい。
【0047】
(第2変形例)
実施の形態では、複数チャンネルのひとつを動作させ、残りのチャンネルを停止したが、本発明はそれに限定されない。たとえば、複数チャンネルのA/D変換ユニット40を動作させて、複数のデジタル信号S3を生成しておき、デジタル回路30によって、最適なデジタル信号S3を選択するようにしてもよい。
【0048】
(第3変形例)
入力アナログ信号S1が電流信号である場合には、アンプ10は、トランスインピーダンスアンプで構成してもよい。
【0049】
(第4変形例)
チャンネル数を3以上とした場合には、チャンネルごとに、アンプ10とA/Dコンバータ20の動作パラメータをさらに多様に変化させることができる。
【0050】
(第5変形例)
実施の形態では、信号処理回路100の起動時に、複数チャンネルのA/D変換ユニット40の動作パラメータを設定したが、本発明はそれに限定されない。たとえば信号処理回路100の設計段階において、各チャンネルに必要な動作パラメータが分かっている場合には、製造段階において、複数のA/D変換ユニット40の動作パラメータを異なるように設計すればよい。
【0051】
(第6変形例)
図2の信号処理回路100は、2つの入力端子INP,INNを有したが、接地電圧を基準とするシングルエンドの入力アナログ信号S1を受け付けてもよい。
【0052】
(第7変形例)
デジタル回路30は、異常検出部を含んでもよい。異常検出部は、入力アナログ信号S1を固定した状態で、複数チャンネルのA/D変換ユニット40により複数のデジタル信号S3を生成し、複数のデジタル信号S3の比較結果にもとづいて、各チャンネルの異常の有無を判定する。これにより、信号処理回路100の動作中においても、故障や異常を検出できる。
【0053】
(用途)
続いて、信号処理回路100の用途を説明する。信号処理回路100は、変動の時間スケールが動的に変化する電気的状態や物理的状態をセンシングする用途に好適である。こうした用途として、バッテリの残量検出が挙げられる。
【0054】
図4は、信号処理回路100を備える電子機器300のブロック図である。具体的には信号処理回路100は、クーロンカウンタ回路110に用いることができる。クーロンカウンタ回路110は、電池駆動型の電子機器300に搭載される。電子機器300は、クーロンカウンタ回路110に加えて、バッテリ302、充電回路304、電源回路306を備える。
【0055】
充電回路304は、外部からの電圧V
EXTを受け、バッテリ302を充電する。電源回路306は、バッテリ電圧V
BATあるいは外部からの電圧V
EXTを受け、それを昇圧あるいは降圧し、図示しない負荷に電源電圧V
DDを供給する。バッテリ302に流れる電流I
BATを測定するための電流センサが設けられる。電流センサは、たとえばバッテリ302と直列に設けられたセンス抵抗R
Sで構成することができ、センス抵抗R
Sの電圧降下が、電流量を示す入力アナログ信号S1として、クーロンカウンタ回路110に入力される。
【0056】
クーロンカウンタ回路110は、クーロンカウント法によるバッテリの残量検出に使用され、バッテリの充電電荷量の積算値(CCC:Charge Coulomb Count)、バッテリの放電電荷量の積算値(DCC:Discharge Coulomb Count)、累積カウント値(ACC:Accumulate Coulomb Count)の少なくともひとつを生成する。デジタル回路30は、デジタル信号S3を積算する演算器を含む。たとえばデジタル回路30は、正の電流I
BATに対応するデジタル信号S3_1もしくはS3_2を積算し、CCC値を生成してもよい。またデジタル回路30は、負の電流I
BATに対応するデジタル信号S3_1もしくはS3_2を積算し、DCC値を生成してもよい。またデジタル回路30は、正負にかかわらずデジタル信号S3_1もしくはS3_2を積算し、ACC値を生成してもよい。
【0057】
デジタル回路30が生成したクーロンカウント値は、インタフェース回路54を介してマイコン310に送信される。マイコン310は、クーロンカウント値にもとづいて、バッテリ302の残量を計算する。
【0058】
バッテリ電流I
BATの変化速度や、電流量は電子機器300の動作状態に応じて大きく変動する。このような性質を持つバッテリ電流I
BATの測定は、信号処理回路100の用途として好適である。
【0059】
図5は、信号処理回路100を備える電子機器300のブロック図である。信号処理回路100は、バッテリ残量検出回路200に用いることができる。バッテリ残量検出回路200は、バッテリ302の充電状態(SOC:State Of Charge)を検出する。たとえばバッテリ残量検出回路200には、バッテリ電圧V
BAT、バッテリ302の充放電電流を示す電流検出信号V
CS、バッテリ302の温度を示す温度検出信号V
TSが入力される。電流検出信号V
CSは、たとえばバッテリ302に直列に挿入されたセンス抵抗R
Sの電圧降下である。温度検出信号V
TSは、サーミスタや熱電対などの温度センサ308により生成される。バッテリ残量検出回路200は、上述の信号処理回路100を備える。信号処理回路100は、バッテリ電圧V
BAT、電流検出信号V
CS、温度検出信号V
TSを受け、それらをデジタル値に変換する。
【0060】
演算部202は、信号処理回路100によって測定されたバッテリ電圧、電流値、温度にもとづいて、バッテリ302の残量を推定する。バッテリ302の残量推定の方法はいくつかあるが、たとえばバッテリの無負荷状態において測定される開放電圧(OCV:Open Circuit Voltage)にもとづく方法や、充放電電流を積算するクーロンカウント法などを用いることができる。
【0061】
バッテリ電流I
BAT、バッテリ電圧V
BATの変化速度は電子機器300の状態に応じて異なる。たとえば電子機器300が通信端末である場合に、高負荷動作させた場合や、急速充電中には、バッテリ電圧V
BATは短い時間スケールで変化する。反対に、電子機器300の不使用状態、すなわちスリープ状態では、バッテリ電圧V
BATの変化速度はきわめて遅くなる。また温度についても変動の時間スケールは動的に変化する。
【0062】
したがって、バッテリ電圧、温度、バッテリ電流の測定に、信号処理回路100は好適に利用できる。
【0063】
実施の形態にもとづき、具体的な用語を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。