(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-188781(P2017-188781A)
(43)【公開日】2017年10月12日
(54)【発明の名称】ΔΣA/Dコンバータ、A/Dコンバータ集積回路
(51)【国際特許分類】
H03M 3/02 20060101AFI20170919BHJP
H03M 1/08 20060101ALI20170919BHJP
【FI】
H03M3/02
H03M1/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-76344(P2016-76344)
(22)【出願日】2016年4月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 謹司
【テーマコード(参考)】
5J022
5J064
【Fターム(参考)】
5J022AA07
5J022CA07
5J022CB06
5J022CD05
5J022CF01
5J022CF03
5J064AA01
5J064BA03
5J064BC08
5J064BC10
5J064BC13
(57)【要約】
【課題】回路あるいはシステムの信頼性を高める。
【解決手段】ΔΣA/Dコンバータ200は、アナログ入力信号V
INをデジタル出力信号D
OUTに変換する。積分回路204は、スイッチドキャパシタ回路で構成される。リーク検出回路230は、積分回路204の少なくともひとつのキャパシタのリークを検出する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログ入力信号をデジタル出力信号に変換するΔΣA/Dコンバータであって、
スイッチドキャパシタ回路で構成された積分回路と、
前記積分回路の少なくともひとつのキャパシタのリークを検出するリーク検出回路と、
を備えることを特徴とするΔΣA/Dコンバータ。
【請求項2】
前記リーク検出回路は、リーク検出対象のキャパシタを充電した後に当該キャパシタを開放し、当該キャパシタの電圧を測定することを特徴とする請求項1に記載のΔΣA/Dコンバータ。
【請求項3】
前記リーク検出回路は、前記リーク検出対象のキャパシタの開放後に、当該キャパシタの電圧が所定のしきい値電圧とクロスするまでの緩和時間を測定することを特徴とする請求項2に記載のΔΣA/Dコンバータ。
【請求項4】
前記少なくともひとつのキャパシタは、前記積分回路を構成する複数のキャパシタのうち容量値が最大のキャパシタを含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のΔΣA/Dコンバータ。
【請求項5】
前記ΔΣA/Dコンバータは、2次以上であり、
前記少なくともひとつのキャパシタは、初段の積分器のキャパシタを含むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のΔΣA/Dコンバータ。
【請求項6】
前記リーク検出回路は、
リーク検出対象のキャパシタの一端と、第1固定電圧ラインの間に設けられた第1スイッチと、
当該キャパシタの他端と第2固定電圧ラインの間に設けられた第2スイッチと、
当該キャパシタの電圧を前記しきい値電圧と比較するコンパレータと、
を含むことを特徴とする請求項3に記載のΔΣA/Dコンバータ。
【請求項7】
前記リーク検出回路のコンパレータは、前記ΔΣA/Dコンバータの量子化器のコンパレータと共通化されることを特徴とする請求項6に記載のΔΣA/Dコンバータ。
【請求項8】
前記ΔΣA/Dコンバータは差動型であることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のΔΣA/Dコンバータ。
【請求項9】
前記リーク検出回路は、差動の正相側に設けられたキャパシタと、逆相側に設けられたキャパシタそれぞれのリークを検出することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のΔΣA/Dコンバータ。
【請求項10】
ひとつの半導体基板に一体集積化されることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のΔΣA/Dコンバータ。
【請求項11】
それぞれにアナログ入力信号が入力可能な複数の入力端子と、
前記複数の入力端子のうち、ひとつを選択するマルチプレクサと、
前記マルチプレクサの出力信号を増幅するアンプと、
前記アンプの出力信号をフィルタリングするフィルタと、
前記フィルタの出力信号をデジタル信号に変換する請求項1から9のいずれかに記載のΔΣA/Dコンバータと、
を備えることを特徴とするA/Dコンバータ集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ΔΣA/Dコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
高分解能が要求される微小信号の測定や、オーディオの用途において、ΔΣA/Dコンバータが使用される。
図1は、1次のΔΣA/Dコンバータの基本構成を示すブロック図である。ΔΣA/Dコンバータ100rは、アナログ入力信号V
INをデジタル出力信号D
OUTに変換する。ΔΣA/Dコンバータ100rは、減算器102、積分器104、量子化器106、D/Aコンバータ108を備える。D/Aコンバータ108は、デジタル出力信号D
OUTを1サンプル遅延させ、アナログのフィードバック信号V
FBに変換する。減算器102は、アナログ入力信号V
INとフィードバック信号V
FBの差分を生成する。積分器104は減算器102の出力である差分を積分する。量子化器106は、積分器104の出力を量子化し、デジタル出力信号D
OUTを生成する。
【0003】
ΔΣA/Dコンバータを用いることにより、量子化誤差に起因するノイズスペクトラムを、入力信号の帯域外に移動させることができる。これをノイズシェーピングと呼ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−150561号公報
【特許文献2】特開2014−171035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、ΔΣA/Dコンバータについて検討した結果、以下の課題を認識するに至った。1次、特に2次以上のΔΣA/Dコンバータにおいて、積分器104はしばしばスイッチドキャパシタ回路で構成される。
【0006】
ΔΣA/Dコンバータが完全に故障して動作不能となった場合には、デジタル出力信号D
OUTは、アナログ入力信号V
INと相関を持たなくなる。この場合には、ΔΣA/Dコンバータの出力信号D
OUTを利用する後段のプロセッサや回路において、異常を認識することが可能である。
【0007】
しかしながら、ΔΣA/Dコンバータには、不完全な故障が生ずる場合がある。不完全な故障とは、何らかの異常が生じているが、ΔΣA/Dコンバータは一見すると動作しており、不正確ではあるが何らかの出力信号D
OUTが生成される故障モードをいう。不完全な故障が生ずると、後段のプロセッサや回路は、誤った出力信号D
OUTに基づいて動作することとなるため、システムの誤動作の要因となる。
【0008】
本発明者はかかる課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、信頼性を高めたΣA/Dコンバータの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある態様は、アナログ入力信号をデジタル出力信号に変換するΔΣA/Dコンバータに関する。ΔΣA/Dコンバータは、スイッチドキャパシタ回路で構成された少なくともひとつの積分回路と、積分回路の少なくともひとつのキャパシタのリークを検出するリーク検出回路と、を備える。
【0010】
本発明者は、スイッチドキャパシタ回路のキャパシタのリークが、ΔΣA/Dコンバータの不完全な故障モードのひとつの原因であることを認識した。この態様によると、ΔΣA/Dコンバータが、キャパシタのリークを自己診断することにより、後段のプロセッサや回路において検出できない不完全な故障を検出でき、信頼性を高めることができる。
【0011】
リーク検出回路は、リーク検出対象のキャパシタを充電した後に当該キャパシタを開放し、当該キャパシタの電圧を測定してもよい。
リークが存在せず、あるいは十分に小さければ、キャパシタが開放された後に、キャパシタの電圧はもとの電圧レベルを維持し続ける。一方、リークが存在すると、キャパシタの電荷はリーク電流によって放電され、電圧が緩和していく。したがってキャパシタの電圧を測定することで、リークの有無、あるいはリークの程度を測定できる。
【0012】
リーク検出回路は、リーク検出対象のキャパシタの開放後に、当該キャパシタの電圧が所定のしきい値電圧とクロスするまでの緩和時間を測定してもよい。緩和時間を測定することで、リークの有無あるいはリークの程度を測定できる。
【0013】
あるいはリーク検出回路は、リーク検出対象のキャパシタの開放後の所定時間経過後において、当該キャパシタの電圧を測定してもよい。所定時間の間に生ずる当該キャパシタの電圧の変動量は、リークの有無あるいはリークの程度を示す。
【0014】
少なくともひとつのキャパシタは、積分回路を構成する複数のキャパシタのうち容量値が最大のキャパシタを含んでもよい。容量値が大きいほど、すなわち面積が大きいほど、リークの検出が容易となる。
【0015】
ΔΣA/Dコンバータは、2次以上であってもよい。少なくともひとつのキャパシタは、初段の積分器のキャパシタを含んでもよい。初段の積分器のキャパシタの容量値が最も大きい場合が多いため、リークの検出が容易である。
【0016】
リーク検出回路は、リーク検出対象のキャパシタの一端と、第1固定電圧ラインの間に設けられた第1スイッチと、当該キャパシタの他端と第2固定電圧ラインの間に設けられた第2スイッチと、当該キャパシタの電圧をしきい値電圧と比較するコンパレータと、を含んでもよい。
【0017】
リーク検出回路のコンパレータは、ΔΣA/Dコンバータの量子化器のコンパレータと共通化されてもよい。これにより、回路面積の増加を抑制できる。
【0018】
ΔΣA/Dコンバータは差動型であってもよい。リーク検出回路は、差動の正相側に設けられたキャパシタと、逆相側に設けられたキャパシタそれぞれのリークを検出してもよい。
【0019】
ΔΣA/Dコンバータは、ひとつの半導体基板に一体集積化されてもよい。
【0020】
本発明の別の態様はA/Dコンバータ集積回路である。A/Dコンバータ集積回路は、それぞれにアナログ入力信号が入力可能な複数の入力端子と、複数の入力端子のうち、ひとつを選択するマルチプレクサと、マルチプレクサの出力信号を増幅するアンプと、アンプの出力信号をフィルタリングするフィルタと、フィルタの出力信号をデジタル信号に変換する上述のいずれかのΔΣA/Dコンバータと、を備えてもよい。
【0021】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を、方法、装置などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るΔΣA/Dコンバータによれば、信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】1次のΔΣA/Dコンバータの基本構成を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態に係るΔΣA/Dコンバータの回路図である。
【
図3】リーク検出回路の構成例を示す回路図である。
【
図4】
図4(a)、(b)は、
図3のリーク検出回路の動作波形図である。
【
図5】ΔΣA/Dコンバータの具体的な構成例を示す回路図である。
【
図6】差動形式の積分ユニットの一部を示す回路図である。
【
図7】ΔΣA/Dコンバータを備えるA/DコンバータICのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0025】
図2は、実施の形態に係るΔΣA/Dコンバータ200の回路図である。ΔΣA/Dコンバータ200は、減算器202、積分回路(積分フィルタ)204、量子化器206、D/Aコンバータ208およびリーク検出回路230を備える。ΔΣA/Dコンバータ200はひとつの半導体基板に一体集積化されている。
【0026】
D/Aコンバータ208は、デジタル出力信号D
OUTを1サンプル遅延させ、アナログのフィードバック信号V
FBに変換する。減算器202は、アナログ入力信号V
INとフィードバック信号V
FBの差分を生成する。積分回路204は減算器102の出力である差分を積分する。量子化器206は、積分回路204の出力を量子化し、デジタル出力信号D
OUTを生成する。
【0027】
図2のΔΣA/Dコンバータ200は3次のΔΣA/Dコンバータであり、積分回路204は、三段の積分ユニット210、212,214を備える。各積分ユニットは、前段からの信号に所定の係数を乗算し、積分する。本発明において積分回路204のトポロジーや、係数の値は限定されず、所望のフィルタ特性が得られるように設計すればよい。
【0028】
量子化器206の構成も特に限定されないが、たとえば、積分ユニット210,212,214の出力に所定の係数a1,a2,a3を乗算する乗算器240,242,244と、乗算器240,242,244の出力を加算する加算器246と、加算器246の出力を量子化するコンパレータ(比較回路)250と、を含む。
【0029】
積分回路204は、スイッチドキャパシタ回路で構成される。リーク検出回路230は、積分回路204を構成する複数のキャパシタのうち、少なくともひとつのキャパシタのリークを検出する。
【0030】
リーク検出の方法、回路構成は特に限定されないが、以下のように検出してもよい。リーク検出回路230は、リーク検出対象のキャパシタを充電した後に、当該キャパシタを開放し、当該キャパシタの電圧を測定する。
【0031】
以上がΔΣA/Dコンバータ200の構成である。このΔΣA/Dコンバータ200によると、スイッチドキャパシタ回路のキャパシタのリークを自己診断するができ、それにより後段のプロセッサや回路において検出できない不完全な故障を検出できる。したがってΔΣA/Dコンバータ200自身あるいはそれを利用したシステムの信頼性、安全性を高めることができる。
【0032】
たとえばΔΣA/Dコンバータ200は、リーク検出回路230がリークを検出すると、外部回路に通知してもよい。あるいは、ΔΣA/Dコンバータ200はリークの程度を示す信号を外部回路に送信してもよい。あるいはリークの程度を示すデータを、外部回路からアクセス可能としてもよい。
【0033】
本発明は、
図2のブロック図や回路図として把握され、あるいは上述の説明から導かれるさまざまな装置、回路に及ぶものであり、特定の構成に限定されるものではない。以下、本発明の範囲を狭めるためではなく、発明の本質や回路動作の理解を助け、またそれらを明確化するために、より具体的な構成例や実施例を説明する。
【0034】
図3は、リーク検出回路230の構成例を示す回路図である。第1スイッチSW11は、リーク検出対象のキャパシタCxの一端と第1固定電圧ライン(たとえば電源ラインあるいは基準電圧ライン)260の間に設けられる。第2スイッチSW12は、キャパシタCxの他端と第2固定電圧ライン(たとえば接地ラインあるいはコモン電圧ライン)262の間に設けられる。コンパレータ232は、キャパシタCxの電圧V
CXをしきい値電圧V
THと比較する。コンパレータ232とキャパシタCxの他端の間には、第3スイッチSW13が設けられる。しきい値電圧V
THは抵抗R11,R12の抵抗分圧によって生成してもよく、抵抗分圧回路の出力とコンパレータ232の間には、第4スイッチSW14が設けられる。
【0035】
なお、コンパレータ232は、ΔΣA/Dコンバータ200の量子化器206のコンパレータ248の一部と共通化されてもよい。これにより、回路面積の増加を抑制できる。またリーク検出回路230のスイッチのいくつかは、積分回路204のスイッチと共通化されてもよい。
【0036】
図4(a)、(b)は、
図3のリーク検出回路230の動作波形図である。リーク検出回路230は、第1スイッチSW11、第2スイッチSW12をオンし、キャパシタCxの両端間を電圧V
DDで充電する。続いて、第2スイッチSW12をオフし、第3スイッチSW13、第4スイッチSW14をオンする。第2スイッチSW12がオフすると、キャパシタCxが開放される。コンパレータ232は、キャパシタCxの電圧V
CXを、しきい値電圧V
THと比較する。リークが発生していなければ、実線(i)で示すように、キャパシタCxの両端間の電圧ΔVは、初期の電源電圧V
DDを維持するため、キャパシタの電圧V
CXは、初期の接地電圧0Vを維持する。
【0037】
一方、リークが発生している場合には、破線(ii)で示すように、キャパシタCxが放電されるため、その両端間電圧ΔVが低下していき、キャパシタの電圧V
CXは、初期の接地電圧0Vから時間と共に上昇していく。
【0038】
図4(b)に示すように、リーク検出回路230は、キャパシタCxの開放後に、キャパシタCxの電圧V
CXが所定のしきい値電圧V
THとクロスするまでの緩和時間τを測定してもよい。リークが存在しなければ緩和時間τは十分に長く、リークが存在すると、緩和時間τは短くなる。したがって緩和時間τを測定することで、リークの有無あるいはリークの程度を測定できる。
【0039】
リーク検出回路230は、第2スイッチSW12をオフしてからコンパレータ232の出力が遷移するまでの時間τを測定するカウンタ(タイマー)234を備えてもよい。リーク検出回路230は、測定した緩和時間τを示すデータを、リークの程度を示すデータとして、レジスタに格納してもよい。あるいはリーク検出回路230は、測定した緩和時間τが所定のしきい値より短いときに、リーク故障の発生を示すフラグを立ててもよい。
【0040】
あるいはリーク検出回路230は、リーク検出対象のキャパシタCxの開放後の所定時間経過後において、キャパシタCxの電圧V
CXを測定してもよい。所定時間の間に生ずる電圧V
CXの変動量は、リークの有無あるいはリークの程度を示す。
【0041】
図2では、電源電圧V
DDを基準としてリークを測定したが、接地電圧を基準として測定してもよい。すなわち、キャパシタCxの充電後に、第1スイッチSW11をオフし、キャパシタCxの上側の一端の電圧を監視してもよい。
【0042】
図5は、ΔΣA/Dコンバータ200の具体的な構成例を示す回路図である。なおここではシングルエンド形式として示すが、ΔΣA/Dコンバータ200は差動形式であってもよい。
【0043】
リーク検出回路230は、積分回路204を構成する複数のキャパシタのうち、容量値が最大のキャパシタを、監視対象とすることが望ましい。なぜなら、容量値が大きいほど、すなわち面積が大きいほど、リークの検出が容易となるからである。また、容量値が大きいほど、リークが発生したときにΔΣA/Dコンバータ200の性能に及ぼす影響も大きくなるからである。
【0044】
図5の構成では、初段の積分ユニット210の積分器270の帰還キャパシタ272が、リーク検出の対象として好適である。ΔΣA/Dコンバータ200のノイズを抑制するためには、初段の積分器270の帰還キャパシタ272を大きくことが有効であるからである。また、動作中に印加される電圧も、初段の帰還キャパシタ272が最も大きいため、リークの影響を受けやすいからである。
【0045】
帰還キャパシタ272の容量が、他のキャパシタに比べて最も大きいからである。なお、帰還キャパシタ272に加えて、二段目以降の積分器274の帰還キャパシタ276等を、リーク検出対象としてもよい。あるいは等価抵抗(あるいはサンプルホールド回路)278を形成するキャパシタ280を、リーク検出の対象としてもよい。
【0046】
図6は、差動形式の積分ユニット210の一部を示す回路図である。リーク検出回路230は、差動の正相側に設けられた帰還キャパシタCPと、逆相側に設けられた帰還キャパシタCNそれぞれのリークを検出することが望ましい。
【0047】
図7は、ΔΣA/Dコンバータ200を備えるA/DコンバータIC(集積回路)300のブロック図である。複数の入力端子IN1〜INM(Mは整数)はそれぞれ、外部からアナログ入力信号が入力可能となっている。たとえば入力端子INには、サーミスタや熱電対などの温度センサからの温度検出信号、電流検出用のセンス抵抗の電圧降下に応じた電流検出信号、バッテリの電圧を示す信号などが入力される。
【0048】
マルチプレクサ302は、複数の入力端子のうち、ひとつを選択する。アンプ304は、マルチプレクサ302の出力信号を増幅するプログラマブルゲインアンプ(PGA)である。フィルタ306は、アンプ304の出力信号をフィルタリングする。ΔΣA/Dコンバータ308は、フィルタ306の出力信号V
INをデジタル信号D
OUTに変換する。ΔΣA/Dコンバータ308は、上述のΔΣA/Dコンバータ200のアーキテクチャを用いて構成される。ロジック回路310は、ΔΣA/Dコンバータ308からのデジタル信号DOUTに所定の信号処理を施す。インタフェース回路312は、SPI(Serial Peripheral Interface)やI
2C(Inter IC)インタフェースであり、外部のプロセッサやマイクロコントローラと接続される。ΔΣA/Dコンバータ308の出力信号D
OUTや、それを処理した結果得られる信号は、インタフェース回路312を介して外部回路から読み出し可能である。また、ΔΣA/Dコンバータ308(200)のリーク検出回路230が検出したリークの有無、あるいはリークの程度も、インタフェース回路312を介して外部から読み出し可能となっている。
【0049】
実施の形態にもとづき、本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を離脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
100…ΔΣA/Dコンバータ、102…減算器、104…積分器、106…量子化器、108…D/Aコンバータ、200…ΔΣA/Dコンバータ、202…減算器、204…積分回路、206…量子化器、208…D/Aコンバータ、210…積分ユニット、230…リーク検出回路、232…コンパレータ、SW11…第1スイッチ、SW12…第2スイッチ、SW13…第3スイッチ、SW14…第4スイッチ、R11…第1抵抗、R12…第2抵抗、300…A/DコンバータIC、302…マルチプレクサ、304…アンプ、306…フィルタ、308…ΔΣA/Dコンバータ、310…ロジック回路、312…インタフェース回路。