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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-188868(P2017-188868A)
(43)【公開日】2017年10月12日
(54)【発明の名称】産業用無線通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 74/00 20090101AFI20170919BHJP
【FI】
   H04W74/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-250469(P2016-250469)
(22)【出願日】2016年12月26日
(31)【優先権主張番号】特願2016-75489(P2016-75489)
(32)【優先日】2016年4月4日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】阿木 智彦
(72)【発明者】
【氏名】石川 和宏
(72)【発明者】
【氏名】國井 浩司
(72)【発明者】
【氏名】桑原 寿明
(72)【発明者】
【氏名】野崎 義広
(72)【発明者】
【氏名】呉 盛聡
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 憲正
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA41
5K067BB21
5K067EE02
5K067EE03
(57)【要約】
【課題】産業用設備に設置される各種機器の可動部における信号線の断線リスク等を低減することができ、しかも、産業用設備の設計の自由度を向上させることができる産業用無線通信システムを提供する。
【解決手段】産業用無線通信システム10は、産業用設備内の少なくとも監視を行うPLC12と、PLC12とフィールドバス16で接続された少なくとも1つのマスター無線装置18と、それぞれ対応する機器20に設置され、マスター無線装置18と無線通信を行う複数のスレーブ無線装置22と、マスター無線装置18とスレーブ無線装置22間で無線での接続処理を行う接続処理部30と、マスター無線装置18とスレーブ無線装置22間で無線でのデータ送受信を行う送受信処理部36とを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業用設備内の少なくとも監視を行うコンピュータと、
前記コンピュータとフィールドバスで接続された少なくとも1つのマスター無線装置と、
それぞれ対応する機器に設置され、前記マスター無線装置と無線通信を行う複数のスレーブ無線装置と、
前記マスター無線装置と前記スレーブ無線装置間で無線での接続処理を行う接続処理部と、
前記マスター無線装置と前記スレーブ無線装置間で無線でのデータ送受信を行う送受信処理部とを有することを特徴とする産業用無線通信システム。
【請求項2】
請求項1記載の産業用無線通信システムにおいて、
前記接続処理部は、500msec以内の時間間隔で、前記マスター無線装置から前記複数のスレーブ無線装置に対してブロードキャスト方式で、且つ、同期周波数で無線通信を行い、
前記送受信処理部は、前記マスター無線装置と前記スレーブ無線装置間で周波数ホッピング方式で無線通信を行うことを特徴とする産業用無線通信システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の産業用無線通信システムにおいて、
無線周波数として2.4GHz帯を使用し、
無線電力が1mW以下であることを特徴とする産業用無線通信システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の産業用無線通信システムにおいて、
前記接続処理が行われた前記スレーブ無線装置に対して、定期的に前記マスター無線装置の時計情報を送信して、前記マスター無線装置との接続維持処理を行う接続維持処理部を有することを特徴とする産業用無線通信システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の産業用無線通信システムにおいて、
前記スレーブ無線装置からの定期的な送信と、前記マスター無線装置での受信を繰り返すことで、前記マスター無線装置と前記スレーブ無線装置との無線通信が確立していることを確認する接続確認処理部を有することを特徴とする産業用無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用無線通信システムに関し、特に、FA(Factory Automation)環境において、安定した無線通信を実現することができる産業用無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、産業用設備として、特許文献1記載のネットワークシステムがある。このシステムは、ネットワークシステムに、複数のシーケンサがバスで接続され、各シーケンサにアクチュエータやロボットの駆動源が導電部及び信号線で電気的に接続され、さらに、駆動源とアクチュエータ及びロボットとが電気配線を介して接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−073795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、産業用設備において、従来から省配線化の要求がある。特許文献1に示すように、上位コントローラと各制御機器は、産業用通信規格のフィールドバスにて接続されている。各機器は、通信線と電源線の接続が必要で、大規模な設備や、分散設置される設備においては、信号線を上位コントローラから接続していく必要があり、機器の設置の自由度が限られている。
【0005】
また、産業用設備のインテリジェント化にあたっては、ロボットや、回転する機構等の可動部においても通信線の敷設が必要となる。この場合、高価なスリップリングの利用や、信号線の断線リスクがあり、通信機器の設置、並びに産業用設備のインテリジェント化そのものを断念せざるを得なかった。
【0006】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、産業用設備に設置される各種機器の可動部における信号線の断線リスク等を低減することができ、しかも、産業用設備の設計の自由度を向上させることができる産業用無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1] 本発明に係る産業用無線通信システムは、産業用設備内の少なくとも監視を行うコンピュータと、前記コンピュータとフィールドバスで接続された少なくとも1つのマスター無線装置と、それぞれ対応する機器に設置され、前記マスター無線装置と無線通信を行う複数のスレーブ無線装置と、前記マスター無線装置と前記スレーブ無線装置間で無線での接続処理を行う接続処理部と、前記マスター無線装置と前記スレーブ無線装置間で無線でのデータ送受信を行う送受信処理部とを有することを特徴とする。
【0008】
コンピュータ(例えばPLC等)に接続されたマスター無線装置と、機器(ロボット、溶接ガン、回転治具、モータ等)に設置されたスレーブ無線装置との間で、無線での接続処理及びデータ送受信を行うようにしたので、機器の可動部における信号線の断線リスク等を低減することができ、しかも、設備の設計の自由度を向上させることができる。産業用設備のインテリジェント化の促進につながる。
【0009】
[2] 本発明において、前記接続処理部は、500msec以内の時間間隔で、前記マスター無線装置から前記複数のスレーブ無線装置に対してブロードキャスト方式で、且つ、同期周波数で無線通信を行い、前記送受信処理部は、前記マスター無線装置と前記スレーブ無線装置間で周波数ホッピング方式で無線通信を行ってもよい。
【0010】
これにより、500msec以内の時間間隔で、ブロードキャスト方式で、無線での接続処理を行うことから、例えば治具脱着時の電源投入から通信開始までの時間を短縮することができる。また、マスター無線装置とスレーブ無線装置間で周波数ホッピング方式で無線通信を行うことから、他の無線通信との干渉を防止することができる。
【0011】
[3] 本発明において、無線周波数として2.4GHz帯を使用し、無線電力が1mW以下であることが好ましい。
【0012】
工場等の産業設備のノイズ源(電源線、ロボット、溶接ガン、回転治具、モータ等)から発生されるノイズ周波数より高い無線周波数を採用することから、無線通信のノイズ周波数による影響を低減することができる。また、無線電力を1mW以下に抑えたので、同一エリア内での他の通信機器への干渉を低減することができる。
【0013】
[4] 本発明において、前記接続処理が行われた前記スレーブ無線装置に対して、定期的に前記マスター無線装置の時計情報を送信して、前記マスター無線装置との接続維持処理を行う接続維持処理部を有してもよい。
【0014】
これにより、接続処理を終えたスレーブ無線装置は、定期的にマスター無線装置の時計情報が送信されるため、スレーブ無線装置とマスター無線装置との間で、時計情報が一致することとなる。その結果、データ送受信等のタイミングを容易に同期させることができる。
【0015】
[5] 本発明において、前記スレーブ無線装置からの定期的な送信と、前記マスター無線装置での受信を繰り返すことで、前記マスター無線装置と前記スレーブ無線装置との無線通信が確立していることを確認する接続確認処理部を有してもよい。
【0016】
これにより、どのスレーブ無線装置が接続状態で、どのスレーブ無線装置が非接続状態であるかを容易に判断することができ、早期に非接続状態と判断されたスレーブ無線装置に対する接続処理あるいはメンテナンス等を行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る産業用無線通信システムによれば、産業用設備に設置される各種機器の可動部における信号線の断線リスク等を低減することができ、しかも、産業用設備の設計の自由度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施の形態に係る産業用無線通信システムを示す構成図である。
図2】産業用無線通信システムを示す機能ブロック図である。
図3】接続処理の一例を示す動作概念図である。
図4図4Aは2.4GHz帯の無線周波数の多重化を示す説明図であり、図4Bはネットワーク間の送信周波数の違いを示す説明図であり、図4Cは周波数ホッピングの一例を示すタイムチャートである。
図5】ネットワーク毎の同期周波数の割り当ての一例を示す図である。
図6】周波数ホッピング回数とFH送信周波数との関係を示す図である。
図7】接続維持処理の一例を示す動作概念図である。
図8】接続確認処理の一例を示す動作概念図である。
図9】マスター無線装置からスレーブ無線装置への送信処理を示す動作概念図である。
図10】スレーブ無線装置からマスター無線装置への送信処理を示す動作概念図である。
図11】マスター無線装置から2つのスレーブ無線装置に順次にデータパケットを送信する場合の時間に対する送信周波数の変化を示すタイムチャートである。
図12】本実施の形態に係る産業用無線通信システムの一実施例を示す構成図である。
図13】送受信処理部によるデータパケットの送受信の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る産業用無線通信システムの実施の形態例を図1図13を参照しながら説明する。なお、本明細書において、数値範囲を示す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味として使用される。
【0020】
本実施の形態に係る産業用無線通信システム(以下、無線通信システム10と記す)は、図1に示すように、産業用設備内の少なくとも監視を行うPLC12(プログラマブル・ロジック・コントローラ)と、PLC12に接続された複数のネットワーク14とを有する。
【0021】
各ネットワーク14には、PLC12とフィールドバス16で接続された1つのマスター無線装置18と、それぞれ対応する機器20に設置され、マスター無線装置18と無線通信を行う複数のスレーブ無線装置22とを有する。スレーブ無線装置22が設置される機器20は、ロボットハンドの先端可動部(溶接ガン等)、組立治具、回転テーブル等が挙げられる。
【0022】
さらに、無線通信システム10は、図2において、機能ブロックで示すように、接続処理部30と、接続維持処理部32と、接続確認処理部34と、送受信処理部36とを有する。これら接続処理部30、接続維持処理部32、接続確認処理部34、送受信処理部36はマスター無線装置18と複数のスレーブ無線装置22との連携で構成される機能部である。
【0023】
接続処理部30は、マスター無線装置18とスレーブ無線装置22間で無線での接続処理を行う。
【0024】
具体的には、図3に示すように、500msec以内の時間間隔、本実施の形態では、250msecの時間間隔で、マスター無線装置18から複数のスレーブ無線装置22に対してブロードキャスト方式で、且つ、同期周波数で無線通信を行う。
【0025】
この接続処理の目的は、マスター無線装置18とスレーブ無線装置22の時刻合わせ、マスター無線装置18の初期値とスレーブ無線装置22の初期値の交換を行う。
【0026】
以下に、正常の場合の通信手順と異常の場合の通信手順を図3を参照しながら説明する。
【0027】
<正常の場合>
(a−1) マスター無線装置18は、時計情報を含む同期パケットPaを例えば250msec間隔で管轄する全スレーブ無線装置22にブロードキャスト方式で送信する。この送信では、周波数ホッピング方式による同期送信を行う。
【0028】
(a−2) スレーブ無線装置22は、時計情報を含む同期パケットPaを受信し、スレーブ無線装置22の時計情報を校正する。
【0029】
(a−3) スレーブ無線装置22は、マスター無線装置18に接続コマンドと初期値を含むデータパケットPbを送信する。この送信では、スレーブ無線装置22からマスター無線装置18への周波数ホッピング方式による送信を行う。
【0030】
(a−4) マスター無線装置18は、スレーブ無線装置22からのデータパケットPbを受信し、次に、接続コマンドと共にマスター無線装置18の初期値を含むデータパケットPcをスレーブ無線装置22に送信する。この送信では、マスター無線装置18からスレーブ無線装置22への周波数ホッピング方式による送信を行う。
【0031】
(a−5) スレーブ無線装置22は、マスター無線装置18からのデータパケットPcを受信し、接続を完了する。すなわち、マスター無線装置18との接続確立が終了する。
【0032】
<異常の場合>
スレーブ無線装置22は、時計情報を含む同期パケットPaの受信後、タイムアウトの計測を開始する。例えば4秒以内にマスター無線装置18との間で接続確立が終了しない場合、再度、時計情報の受信からリトライする。
【0033】
ここで、周波数ホッピング方式(FHSS)について図4A図6を参照しながら簡単に説明する。
【0034】
周波数ホッピング方式は、図4Aに示すように、送信機と受信機間で多重化された周波数を同期して次々に変更しながら通信を行う方式である。
【0035】
本実施の形態では、図4B及び図4Cに示すように、各ネットワーク毎に異なるパターンのホッピング方式を採用している。例えば第1ネットワーク14Aでは、周波数として、例えば2402MHz、2455Mz、2421MHz・・・を使用し、例えば第2ネットワーク14Bでは、周波数として、例えば2412MHz、2465Mz、2405MHz・・・を使用し、例えば第3ネットワーク14Cでは、周波数として、例えば2432MHz、2445Mz、2471MHz・・・を使用する。
【0036】
そして、図4Cに示すように、各送信時刻毎(t、t+t、t+2t、t+3t・・・)に、各ネットワークにおいて送信周波数をホッピングして通信を行う。なお、区間Faは、無線LANの使用帯域を示す。
【0037】
このように、周波数ホッピング方式を採用することで、ネットワーク14間や無線LANとの電波干渉が軽減されると共に、マルチパスフェージングによる電力の減衰を軽減することができる。
【0038】
ここで、周波数ホッピング方式による同期周波数の算出方法の一例について以下に説明する。
【0039】
先ず、使用する周波数範囲を1MHz単位にチャネルに換算する。例えば最小周波数を2403MHz、最大周波数を2481MHzとしたとき、0ch〜78chの79チャネルとなる。
【0040】
マスター無線装置18からの例えば3回のブロードキャストによる無線通信を1ターンとして、各ターンにおける3回の無線通信のチャネル間隔をJAMP、1ターン間のチャネル間隔をSPACEとする。また、使用するチャネル範囲の偏差(最大チャネル−(最小チャネル−1))をCHm、ネットワーク番号(0からの連番)をNn、1ターン内の無線通信の回数をNc(=0、1、2)とする。
【0041】
そして、下記演算式にて各々の無線通信の同期周波数のチャネル数SYNC_CHを算出する。なお、%は余り演算子である。
SYNC_CH=Nn*SPACE+JAMP*Nc%CHm
【0042】
同期周波数のチャネル数の計算結果を下記表1に示し、同期周波数のチャネル数を周波数換算した結果を下記表2に示す。また、表2に基づくネットワーク番号に対する同期周波数の割り当てを図5に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
表1、表2並びに図5からもわかるように、ネットワーク14間で同期周波数が重複することがないため、各ネットワーク14にてそれぞれ割り当てられた同期周波数を同時にブロードキャスト方式で送信することが可能となる。
【0046】
次に、周波数ホッピング方式による送信周波数(FH送信周波数という)の算出方法の一例について説明する。
【0047】
先ず、上述した同期周波数の算出方法と同様に、使用する周波数範囲を1MHz単位にチャネルに換算する。例えば最小周波数を2403MHz、最大周波数を2481MHzとしたとき、0ch〜78chの79チャネルとなる。
【0048】
周波数ホッピング間隔をJAMP、使用するチャネル範囲の偏差(最大チャネル−(最小チャネル−1))をCHm、ネットワーク番号(0からの連番)をNn、周波数ホッピング回数をFHnとする。
【0049】
そして、下記演算式にて各々のFH送信周波数のチャネル数FH_CHを算出する。なお、%は余り演算子である。
FH_CH=Nn+JAMP*FHn%CHm
【0050】
図6に、周波数ホッピング回数とFH送信周波数との関係を示す。図6からもわかるように、周波数ホッピングを行う毎に、周波数ホッピング間隔Δf(例えば22MHz)でFH送信周波数が変化することから、他の無線通信との干渉を防止することができる。
【0051】
さらに、スレーブ無線装置22は、電波の混信防止のために、衝突防止機能(CCA)を使用することが好ましい。CCAは、乱数による待ち時間が必要である。本実施の形態では、スレーブ無線装置22は、4つの送信タイミングを持つため、スレーブアドレスに基づいてランダム関数を用いて送信タイミングを決定するようにしている。
【0052】
次に、接続維持処理部32について説明する。接続維持処理部32は、マスター無線装置18との接続確立が終了したスレーブ無線装置22に対して、定期的にマスター無線装置18の時計情報を送信して、マスター無線装置18との接続維持処理を行う。
【0053】
具体的には、マスター無線装置18との接続確立が終了した複数のスレーブ無線装置22に対して、上述した接続処理部30よりも短い時間間隔、本実施の形態では、例えば100msecの時間間隔で、マスター無線装置18からスレーブ無線装置22に対してブロードキャスト方式で、且つ、同期周波数で無線通信を行う。
【0054】
この接続維持処理の目的は、マスター無線装置18の時計情報をスレーブ無線装置22に送信して、スレーブ無線装置22の時計情報を更新する。
【0055】
以下に、正常の場合の通信手順と異常の場合の通信手順を図7を参照しながら説明する。
【0056】
<正常の場合>
(b−1) 時計情報を含む同期パケットPdを例えば100msec間隔でブロードキャスト方式で送信する。この送信では、周波数ホッピング方式による同期送信を行う。
【0057】
(b−2) スレーブ無線装置22は、時計情報を含む同期パケットPdを受信し、スレーブ無線装置22の時計情報を校正する。
【0058】
<異常の場合>
スレーブ無線装置22は、マスター無線装置18からの同期パケットPd(時計情報)を受信できない場合、時計情報の校正を見送り、次の100msec後の時計情報の受信を試みる。
【0059】
次に、接続確認処理部34について説明する。接続確認処理部34は、スレーブ無線装置22からの定期的な送信と、マスター無線装置18での受信を繰り返すことで、マスター無線装置18とスレーブ無線装置22との無線通信が確立していることを確認する。
【0060】
以下に、接続確認処理部34での通信手順を図8を参照しながら説明する。
【0061】
先ず、マスター無線装置18は、スレーブ無線装置22との接続を例えば5秒毎に確認する。スレーブ無線装置22は、マスター無線装置18に例えば2秒毎に送信する。この接続確認処理の一例を以下に示す。
【0062】
<接続確認>
(c−1) スレーブ無線装置22は、マスター無線装置18からの受信、又は、接続確認用のデータパケットPeを2秒毎にマスター無線装置18に対して周波数ホッピング方式による送信を行う。
【0063】
(c−2) マスター無線装置18は、スレーブ無線装置22との送受信の有無を5秒毎に確認し、送受信がない場合、そのスレーブ無線装置22を非接続状態と判断する。
【0064】
(c−3) マスター無線装置18において、一旦、非接続状態と判定されたスレーブ無線装置22からデータパケットPeが送信され、マスター無線装置18にて受信された場合、マスター無線装置18は、当該スレーブ無線装置22を接続状態と判定する。
【0065】
次に、送受信処理部36について説明する。送受信処理部36は、マスター無線装置18とスレーブ無線装置22間で無線でのデータ送受信を行う。
【0066】
具体的には、送受信処理部36は、マスター無線装置18とスレーブ無線装置22間で周波数ホッピング方式で無線通信を行う。すなわち、マスター無線装置18からスレーブ無線装置22に対して、FH送信周波数で送信し、スレーブ無線装置22からマスター無線装置18に対して、新たなFH送信周波数で送信する。
【0067】
以下に、マスター無線装置18からスレーブ無線装置22への送信と、スレーブ無線装置22からマスター無線装置18への送信の通信手順を図9及び図10を参照しながら説明する。
【0068】
<マスター無線装置18からスレーブ無線装置22への送信>
(d−1) 図9に示すように、マスター無線装置18は送信要求により指定されたアドレスのスレーブ無線装置22に動作指示データを含むデータパケットPfをFH送信周波数で送信する。
【0069】
(d−2) スレーブ無線装置22は、マスター無線装置18からのデータパケットPfを受信する。
【0070】
(d−3) スレーブ無線装置22は、データパケットPfを正常に受信した場合、受信電力を3段階のレベルで判定する。
【0071】
(d−4) スレーブ無線装置22は、データパケットPfに含まれる動作指示データに基づく動作を、接続された機器20に指示する。
【0072】
(d−5) 機器20が指示された動作を完了した段階で、少なくとも動作完了を示す情報と受信電力の判定情報を含むデータパケットPgをマスター無線装置18にFH送信周波数で返信する。
【0073】
(d−6) スレーブ無線装置22でのデータパケットPfの正常受信からデータパケットPgのマスター無線装置18への返信までに、マスター無線装置18からデータパケットPfの送信が複数回あった場合、スレーブ無線装置22は、複数回のデータパケットPfを無視し、機器が動作完了した段階で、マスター無線装置18にデータパケットPgを1度だけ返信する。
【0074】
(d−7) マスター無線装置18は、送信に失敗した場合、例えばスレーブ無線装置22からのデータパケットPgの返信がない場合、例えば5msecの時間間隔で250回リトライする。リトライの回数が上限(250回)を超えた場合、マスター無線装置18は、送信先のスレーブ無線装置22のステータスを非接続とする。
【0075】
<スレーブ無線装置22からマスター無線装置18への送信>
(e−1) 図10に示すように、スレーブ無線装置22は、送信要求によりマスター無線装置18に必要なデータ、例えばスレーブ無線装置22に接続されたセンサの測定値とリトライ回数等を含むデータパケットPhをFH送信周波数で送信する。
【0076】
(e−2) マスター無線装置18は、スレーブ無線装置22からのデータパケットPhを受信する。
【0077】
(e−3) マスター無線装置18は、データパケットPhを正常に受信した場合、受信電力を3段階のレベルで判定する。
【0078】
(e−4) マスター無線装置18は、少なくとも正常受信したことを示す情報と受信電力の判定情報を含むデータパケットPiをスレーブ無線装置22にFH送信周波数で返信する。
【0079】
(e−5) マスター無線装置18でのデータパケットPhの正常受信からデータパケットPiのスレーブ無線装置22への返信までに、スレーブ無線装置22からデータパケットPhの送信が複数回あった場合、マスター無線装置18は、複数回のデータパケットPhを無視し、マスター無線装置18での必要な受信処理が完了した段階で、スレーブ無線装置22にデータパケットPiを1度だけ返信する。
【0080】
(e−6) スレーブ無線装置22は、送信に失敗した場合、例えばマスター無線装置18からのデータパケットPiの返信がない場合、例えば5msecの時間間隔で250回リトライする。リトライの回数が上限(250回)を超えた場合、マスター無線装置18は、送信先のスレーブ無線装置22のステータスを非接続とし、接続処理に移行する。
【0081】
ここで、マスター無線装置18から2つのスレーブ無線装置22に順次にデータパケットPfを送信する場合について、図11を参照しながら説明する。
【0082】
先ず、時点t0において、マスター無線装置18は、FH送信周波数でデータパケットPfを送信する。送信先のスレーブ無線装置22は、マスター無線装置18からのデータパケットPfを正常に受信し、スレーブ無線装置22に接続された機器に対して指示された動作を行わせる、あるいは、センサの値を取得する等の入出力動作を行う。
【0083】
時点t0から5msec経過後の時点t1において、スレーブ無線装置22は、動作完了を示すデータパケットPgをFH送信周波数で返信する。この例は1回もリトライしていないことから、最速での無線通信(送受信)となる。すなわち、最速応答時間Tminは、マスター無線装置18でのデータパケットPfの送信が終了した時点taからスレーブ無線装置22でのデータパケットPgの送信が終了した時点tbまでの時間である。他のネットワークでは、別のFH送信周波数にて無線通信を行っていることから、他のネットワークによる干渉はない。
【0084】
次に、時点t2において、マスター無線装置18は、FH送信周波数でデータパケットPfを送信する。時点t2から5msec経過後の時点t3において、スレーブ無線装置22は、動作完了を示すデータパケットPgをFH送信周波数で返信する。このとき、FH送信周波数が例えば無線LANが使用する周波数帯域内であって、且つ、無線LANによる無線通信が行われている場合、スレーブ無線装置22からの無線通信は、無線LANの無線通信と衝突し、マスター無線装置18には送信されない。そのため、時点t3から5msec経過後の時点t4において、マスター無線装置18は、FH送信周波数でデータパケットPfを送信する。すなわち、同じ内容のデータパケットPfの送信をリトライする。時点t4から5msec経過後の時点t5において、スレーブ無線装置22は、動作完了を示すデータパケットPgをFH送信周波数で返信する。このとき、他のネットワークでは、別のFH送信周波数にて無線通信を行っていることから、他のネットワークによる干渉はない。また、この例は1回だけリトライしていることから、マスター無線装置18でのデータパケットPfの送信が終了した時点tcから、1回目のリトライでのデータパケットPfの送信が終了した時点tdまでの時間が、応答遅れ時間Tdとして追加されることとなる。
【0085】
なお、マスター無線装置18及びスレーブ無線装置22等にはNFC(Near Field Communication)通信技術を内蔵している。その結果、例えばマスター無線装置18やスレーブ無線装置22への内部パラメータの設定、マスター無線装置18とスレーブ無線装置22間のペアリング(ID照合等)、スレーブ無線装置22と機器20(センサー等)間のペアリング(ID照合等)において、機械的な設定や調整を必要としないため、パラメータ設定やペアリング等を容易に行うことができ、調整作業の時間短縮、工数の削減を図ることができる。
【0086】
次に、無線通信システム10の1つの実施例について、図12及び図13を参照しながら説明する。
【0087】
この実施例は、図12に示すように、ワーク40の搬入から搬出までの4工程を行う回転式生産設備42に適用した無線通信システムである。回転式生産設備42は、中央に設置された回転テーブル44と、工程1〜工程4に対応してそれぞれロボットハンド46(46a〜46d)や組立治具48(48a〜48d)が取り付けられている。なお、回転テーブル44の中央に設定された供給部50を通じて、各ロボットハンド46や組立治具48への電源電力及びエアーの供給が行われる。
【0088】
各スレーブ無線装置22は、回転式生産設備42を組む前に、それぞれ対応するロボットハンド46や組立治具48に設置される。図12の例では、ローダー工程(工程1)に対応する第1ロボットハンド46aに第1スレーブ無線装置22Aが設置され、第1組立治具48aに第5スレーブ無線装置22Eが設置される。第1アセンブリ工程(工程2)に対応する第2ロボットハンド46bに第2スレーブ無線装置22Bが設置され、第2組立治具48bに第6スレーブ無線装置22Fが設置される。第2アセンブリ工程(工程3)に対応する第3ロボットハンド46cに第3スレーブ無線装置22Cが設置され、第3組立治具48cに第7スレーブ無線装置22Gが設置される。アンローダー工程(工程4)に対応する第4ロボットハンド46dに第4スレーブ無線装置22Dが設置され、第4組立治具48dに第8スレーブ無線装置22Hが設置される。
【0089】
各スレーブ無線装置22は、回転式生産設備42を組む前に、製品に対応したタグ情報及びマッピングされたI/O点数が設定されている。
【0090】
マスター無線装置18は、回転式生産設備42で使用する第1スレーブ無線装置22A〜第8スレーブ無線装置22Hの台数分を予め登録し、メンテナンス時に必要に応じてスレーブ無線装置22を組み替え可能となっている。設定内容は、必要に応じてファイル保管可能で、スレーブ無線装置22の組み替えがあった場合は、保管ファイルから設定内容を復元可能である。
【0091】
保管可能な設定内容は、タグ情報、I/O点数及びその他の設定パラメータである。
【0092】
また、回転式生産設備42の外側に取り付けられたマスター無線装置18は、例えば配電盤に設置されたPLC12からの信号を受けて、回転式生産設備42内に設置されたスレーブ無線装置22にFH送信周波数を送信する。
【0093】
ここで、工程1〜工程4での動作を図13も参照しながら説明する。
【0094】
<工程1:ローダー工程>
マスター無線装置18は、PLC12からの投入開始信号の入力に基づいて、第1スレーブ無線装置22Aに、投入を示すデータパケットPfaを送信する。第1スレーブ無線装置22Aは、データパケットPfaの受信に基づいて、第1ロボットハンド46aにワーク40を把持する指示を行う。第1ロボットハンド46aは、第1スレーブ無線装置22Aからの指示に基づいて、ワーク40を把持し、回転テーブル44上にワーク40を搬入する。第1スレーブ無線装置22Aは、第1ロボットハンド46aによるワーク40の搬入が終了した段階で、搬入の終了を示すデータパケットPgaをマスター無線装置18に送信する。
【0095】
マスター無線装置18は、第1スレーブ無線装置22AからのデータパケットPgaの受信に基づいて、第5スレーブ無線装置22Eに位置決めを示すデータパケットPfeを送信する。第5スレーブ無線装置22Eは、データパケットPfeの受信に基づいて、第1組立治具48aに投入時の位置決め指示を行う。第1組立治具48aは、第5スレーブ無線装置22Eからの指示に基づいて、ワーク40の位置決めを行う。第5スレーブ無線装置22Eは、第1組立治具48aによるワーク40の位置決めが終了した段階で、位置決めの終了を示すデータパケットPgeをマスター無線装置18に送信する。マスター無線装置18は、第5スレーブ無線装置22EからのデータパケットPgeの受信に基づいて、PLC12に投入完了信号を出力する。
【0096】
<工程2:第1アセンブリ工程>
マスター無線装置18は、PLC12からの第1組立信号の入力に基づいて、第2スレーブ無線装置22Bに、第1パーツ供給を示すデータパケットPfbを送信する。第2スレーブ無線装置22Bは、データパケットPfbの受信に基づいて、第2ロボットハンド46bにパーツを供給する指示を行う。第2ロボットハンド46bは、第2スレーブ無線装置22Bからの指示に基づいて、第2組立治具48bにパーツを供給する。第2スレーブ無線装置22Bは、第2ロボットハンド46bによるパーツの供給が終了した段階で、第1パーツ供給の終了を示すデータパケットPgbをマスター無線装置18に送信する。
【0097】
マスター無線装置18は、第2スレーブ無線装置22BからのデータパケットPgbの受信に基づいて、第6スレーブ無線装置22Fに組立を示すデータパケットPffを送信する。第6スレーブ無線装置22Fは、データパケットPffの受信に基づいて、第2組立治具48bに組立指示を行う。第2組立治具48bは、第6スレーブ無線装置22Fからの指示に基づいて、ワーク40に対する第1組立作業を行う。第6スレーブ無線装置22Fは、第2組立治具48bによるワーク40の第1組立作業が終了した段階で、第1組立作業の終了を示すデータパケットPgfをマスター無線装置18に送信する。マスター無線装置18は、第6スレーブ無線装置22FからのデータパケットPgfの受信に基づいて、PLC12に第1組立完了信号を出力する。
【0098】
<工程3:第2アセンブリ工程>
マスター無線装置18は、PLC12からの第2組立信号の入力に基づいて、第3スレーブ無線装置22Cに、第2パーツ供給を示すデータパケットPfcを送信する。第3スレーブ無線装置22Cは、データパケットPfcの受信に基づいて、第3ロボットハンド46cにパーツを供給する指示を行う。第3ロボットハンド46cは、第3スレーブ無線装置22Cからの指示に基づいて、第3組立治具48cにパーツを供給する。第3スレーブ無線装置22Cは、第3ロボットハンド46cによるパーツの供給が終了した段階で、第2パーツ供給の終了を示すデータパケットPgcをマスター無線装置18に送信する。
【0099】
マスター無線装置18は、第3スレーブ無線装置22CからのデータパケットPgcの受信に基づいて、第7スレーブ無線装置22Gに組立を示すデータパケットPfgを送信する。第7スレーブ無線装置22Gは、データパケットPfgの受信に基づいて、第3組立治具48cに組立指示を行う。第3組立治具48cは、第7スレーブ無線装置22Gからの指示に基づいて、ワーク40に対する第2組立作業を行う。第7スレーブ無線装置22Gは、第3組立治具48cによるワーク40の第2組立作業が終了した段階で、第2組立作業の終了を示すデータパケットPggをマスター無線装置18に送信する。マスター無線装置18は、第7スレーブ無線装置22GからのデータパケットPggの受信に基づいて、PLC12に第2組立完了信号を出力する。
【0100】
<工程4:アンローダー工程>
マスター無線装置18は、PLC12からの搬出開始信号の入力に基づいて、第8スレーブ無線装置22Hに位置決めを示すデータパケットPfhを送信する。第8スレーブ無線装置22Hは、データパケットPfhの受信に基づいて、第4組立治具48dに搬出時の位置決め指示を行う。第4組立治具48dは、第8スレーブ無線装置22Hからの指示に基づいて、ワーク40の位置決めを行う。第8スレーブ無線装置22Hは、第4組立治具48dによるワーク40の位置決めが終了した段階で、位置決めの終了を示すデータパケットPghをマスター無線装置18に送信する。マスター無線装置18は、第8スレーブ無線装置22HからのデータパケットPghの受信に基づいて、第4スレーブ無線装置22Dに、搬出を示すデータパケットPfdを送信する。第4スレーブ無線装置22Dは、データパケットPfdの受信に基づいて、第4ロボットハンド46dにワーク40を把持する指示を行う。第4ロボットハンド46dは、第4スレーブ無線装置22Dからの指示に基づいて、ワーク40を把持し、回転テーブル44外にワーク40を搬出する。第4スレーブ無線装置22Dは、第4ロボットハンド46dによるワーク40の搬出が終了した段階で、搬出の終了を示すデータパケットPgdをマスター無線装置18に送信する。マスター無線装置18は、第4スレーブ無線装置22DからのデータパケットPgdの受信に基づいて、PLC12に搬出完了信号を出力する。
【0101】
マスター無線装置18からの搬出完了信号の出力により、ワーク40の搬出が完了し、一連の組立工程が終了する。
【0102】
PLC12から各種指示信号が発生する順番で、マスター無線装置18とスレーブ無線装置22間でデータパケットのやり取りを行うため、データパケットの応答が必要なスレーブ無線装置22から動作させることができる。すなわち、不要なスレーブ無線装置22との通信を行う必要がないため、応答速度の向上を図ることができる。
【0103】
本実施の形態は、周波数ホッピング方式のチャネル数がBluetooth(登録商標)並みに79チャネルあるにも関わらず、送信するデータパケットのデータ容量が50バイト以下と小さいため、各無線通信での送信電力を1mW以下に抑えることができる。
【0104】
このように、本実施の形態に係る無線通信システム10は、産業用設備内の少なくとも監視を行うPLC12と、該PLC12とフィールドバス16で接続された少なくとも1つのマスター無線装置18と、それぞれ対応する機器20に設置され、マスター無線装置18と無線通信を行う複数のスレーブ無線装置22とを有する。さらに、無線通信システム10は、マスター無線装置18とスレーブ無線装置22間で無線での接続処理を行う接続処理部30と、マスター無線装置18とスレーブ無線装置22間で無線でのデータ送受信を行う送受信処理部36とを有する。
【0105】
すなわち、PLC12に接続されたマスター無線装置18と、機器20(ロボット、溶接ガン、回転治具、モータ等)に設置されたスレーブ無線装置22との間で、無線での接続処理及び送受信処理を行うようにしたので、機器20の可動部における信号線の断線リスク等を低減することができ、しかも、設備の設計の自由度を向上させることができる。産業用設備のインテリジェント化の促進につながる。
【0106】
そして、接続処理部30は、500msec以内の時間間隔で、マスター無線装置18から複数のスレーブ無線装置22に対してブロードキャスト方式で、且つ、同期周波数で無線通信を行い、送受信処理部36は、マスター無線装置18とスレーブ無線装置22間で周波数ホッピング方式で無線通信を行うようにしている。
【0107】
すなわち、接続処理部30は、マスター無線装置18からスレーブ無線装置22に対して、周波数ホッピング方式で設定された周波数(同期周波数)で送信し、スレーブ無線装置22からマスター無線装置18に対して、周波数ホッピング方式で設定されたFH送信周波数で送信する。一方、送受信処理部36は、マスター無線装置18からスレーブ無線装置22に対して、周波数ホッピング方式で設定されたFH送信周波数で送信し、スレーブ無線装置22からマスター無線装置18に対して、新たに周波数ホッピング方式で設定されたFH送信周波数で送信する。
【0108】
このように、500msec以内の時間間隔で、ブロードキャスト方式で、無線での接続処理を行うことから、例えば治具脱着時の電源投入から通信開始までの時間を短縮することができる。また、マスター無線装置18とスレーブ無線装置22間で周波数ホッピング方式で無線通信を行うことから、他の無線通信との干渉を防止することができる。
【0109】
また、本実施の形態では、無線周波数として2.4GHz帯を使用し、無線電力を1mW以下としている。工場等の産業設備のノイズ源(電源線、ロボット、溶接ガン、回転治具、モータ等)から発生されるノイズ周波数より高い無線周波数を採用することから、無線通信のノイズ周波数による影響を低減することができる。また、無線電力を1mW以下に抑えたので、同一エリア内での他の通信機器への干渉を低減することができる。
【0110】
さらに、本実施の形態では、接続処理が行われたスレーブ無線装置22に対して、定期的にマスター無線装置18の時計情報を送信して、マスター無線装置18との接続維持処理を行う接続維持処理部32を有する。
【0111】
接続処理を終えたスレーブ無線装置22は、定期的にマスター無線装置18の時計情報が送信されるため、スレーブ無線装置22とマスター無線装置18との間で、時計情報が一致することとなる。その結果、データ送受信等のタイミングを容易に同期させることができる。
【0112】
また、本実施の形態は、スレーブ無線装置22からの定期的な送信と、マスター無線装置18での受信を繰り返すことで、マスター無線装置18とスレーブ無線装置22との無線通信が確立していることを確認する接続確認処理部34を有する。
【0113】
スレーブ無線装置22から定期的に送信されているはずが、マスター無線装置18において受信されない場合に、当該スレーブ無線装置22が非接続状態と判断する。非接続状態と判断された当該スレーブ無線装置22からの送信がマスター無線装置18において受信されれば、当該スレーブ無線装置22が接続状態であると判断する。これにより、どのスレーブ無線装置22が接続状態で、どのスレーブ無線装置22が非接続状態であるかを容易に判断することができ、早期に非接続状態と判断されたスレーブ無線装置22に対する接続処理あるいはメンテナンス等を行うことができる。
【0114】
なお、本発明に係る産業用無線通信システムは、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0115】
10…産業用無線通信システム 12…PLC
14…ネットワーク 16…フィールドバス
18…マスター無線装置 20…機器
22…スレーブ無線装置 30…接続処理部
32…接続維持処理部 34…接続確認処理部
36…送受信処理部 40…ワーク
42…回転式生産設備 44…回転テーブル
46…ロボットハンド 48…組立治具
50…供給部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13