【解決手段】クロック信号のカウントに基づき、異常検出状態が所定の期間継続したことを検出すると、その旨を示す第1出力信号を出力する第1出力信号生成部と、異常が検出されると、前記クロック信号を用いずに、その旨を示す第2出力信号を出力する第2出力信号生成部と、クロック停止検出信号に応じて前記第1出力信号と前記第2出力信号のいずれかを選択する選択部と、を備え、前記クロック停止検出信号がクロックが正常に生成されている旨を示す場合、前記第2出力信号生成部は無効となり、前記選択部は前記第1出力信号を選択し、前記クロック停止検出信号がクロックが停止している旨を示す場合、前記第2出力信号生成部は有効となり、前記選択部は前記第2出力信号を選択し、前記選択部により選択された出力信号に基づいて異常保護信号を出力する構成の異常保護回路としている。
前記第2出力信号生成部は、所定論理レベルの信号が入力されるD入力端子と、異常検出信号が入力されるクロック端子と、前記第2出力信号を出力する出力端子と、を有するDフリップフロップを含むことを特徴とする請求項1に記載の異常保護回路
前記Dフリップフロップのリセット端子には、前記第2出力信号生成部に含まれるDフリップフロップをリセットさせるリセット信号に基づく信号が入力されることを特徴とする請求項5に記載の異常保護回路。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1では、内部クロック信号の生成源であるオシレータが故障して内部クロック信号の生成が停止した場合、OCPミュートカウンタは内部クロック信号をカウントすることができず、過電流検出信号が異常時の論理レベルになった場合に、異常を示す過電流保護信号を生成することができない。従って、過電流保護機能が動作しない不具合が生じる。
【0007】
例えば過電流保護回路が車載用である場合、自動車の電気/電子に関する機能安全についての国際規格であるISO26262なども策定されている状況では、より安全性を重視するため、上記のような過電流保護機能が動作しない不具合を回避することが重要となる。
【0008】
上記状況に鑑み、本発明は、オシレータが故障した場合でも異常保護機能の動作を可能とする異常保護回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の一態様に係る異常保護回路は、
クロック信号のカウントに基づき、異常検出状態が所定の期間継続したことを検出すると、その旨を示す第1出力信号を出力する第1出力信号生成部と、
異常が検出されると、前記クロック信号を用いずに、その旨を示す第2出力信号を出力する第2出力信号生成部と、
クロック停止検出信号に応じて前記第1出力信号と前記第2出力信号のいずれかを選択する選択部と、を備え、
前記クロック停止検出信号がクロックが正常に生成されている旨を示す場合、前記第2出力信号生成部は無効となり、前記選択部は前記第1出力信号を選択し、
前記クロック停止検出信号がクロックが停止している旨を示す場合、前記第2出力信号生成部は有効となり、前記選択部は前記第2出力信号を選択し、
前記選択部により選択された出力信号に基づいて異常保護信号を出力する構成としている(第1の構成)。
【0010】
また、上記第1の構成において、前記第2出力信号生成部は、所定論理レベルの信号が入力されるD入力端子と、異常検出信号が入力されるクロック端子と、前記第2出力信号を出力する出力端子と、を有するDフリップフロップを含むこととしてもよい(第2の構成)。
【0011】
また、上記第2の構成において、前記Dフリップフロップのリセット端子に出力が入力されるAND回路を更に備え、前記AND回路の一方の入力端には前記クロック停止検出信号が入力されることとしてもよい(第3の構成)。
【0012】
また、上記第3の構成において、前記AND回路の他方の入力端には、リセット信号に基づく信号が入力されることとしてもよい(第4の構成)。
【0013】
また、上記第1〜第4のいずれかの構成において、前記第1出力信号生成部は、異常検出信号と前記クロック信号が入力されるカウンタと、前記カウンタの出力に基づく信号が入力されるD入力端子と、前記クロック信号が入力されるクロック端子と、前記第1出力信号を出力する出力端子と、を有するDフリップフロップと、を含むこととしてもよい(第5の構成)。
【0014】
また、上記第5の構成において、前記Dフリップフロップのリセット端子には、前記第2出力信号生成部に含まれるDフリップフロップをリセットさせるリセット信号に基づく信号が入力されることとしてもよい(第6の構成)。
【0015】
また、本発明の別態様に係る駆動装置は、多チャンネルの出力を有する駆動装置であって、オシレータと、前記オシレータを監視してクロック停止検出信号を出力するクロック停止検出部と、上記いずれかの構成とした異常保護回路と、を備えることとしている(第7の構成)。
【0016】
また、上記第7の構成において、前記異常保護回路は、AND回路を更に備え、前記AND回路の一方の入力端には、前記選択部により選択された出力信号が入力され、前記AND回路の他方の入力端には、チャンネルのオンオフを制御する制御信号が入力され、前記AND回路から前記異常保護信号が出力されることとしてもよい(第8の構成)。
【0017】
また、POR(パワーオンリセット)回路を備え、外部のマイコンとの通信を行う上記第7または第8のいずれかの構成とした駆動装置であって、
前記異常保護回路において、前記第2出力信号生成部は、所定論理レベルの信号が入力されるD入力端子と、異常検出信号が入力されるクロック端子と、前記第2出力信号を出力する出力端子と、を有するDフリップフロップを含み、
前記異常保護回路は、第1AND回路と第2AND回路を更に備え、
前記第1AND回路には、一方の入力端に前記POR回路の出力するリセット信号が入力され、他方の入力端に前記マイコンからのリセット信号が入力され、
前記第2AND回路には、一方の入力端に前記クロック停止検出信号が入力され、他方の入力端に前記第1AND回路の出力が入力され、
前記Dフリップフロップのリセット端子には、前記第2AND回路の出力が入力されることとしてもよい(第9の構成)。
【0018】
また、本発明の別態様に係る車載用電子機器は、上記いずれかの構成とした駆動装置を備えることとしている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、オシレータが故障した場合でも異常保護機能の動作を可能とする。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、ここでは、異常保護回路の一例として過電流保護回路を挙げ、その適用対象としてはモータ駆動装置を一例に挙げて説明する。
【0022】
<モータ駆動装置の構成>
まず、本発明の実施形態について説明する前に、本発明の実施形態に対する比較例について説明する。
図5は、本発明の実施形態に対する比較例に係るモータ駆動装置200の構成を示す図である。
図5に示すモータ駆動装置200は、多チャンネル出力を有するモータドライバICとして構成される。
【0023】
図5に示すモータ駆動装置200は、各モータ駆動部1〜8と、ロジック制御部9と、POR[power on reset]回路10と、オシレータ11と、インタフェース12と、UVLO[under voltage lock out]回路13と、過電圧保護回路14と、TSD[thermal shutdown]回路15と、を備えており、これらの各構成要素を1チップに集積化したIC(半導体装置)である。
【0024】
また、モータ駆動装置200は、外部との接続を確立するための入力端子T1〜T2、および出力端子OUT1〜OUT8を備えている。入力端子T1には、モータ駆動部1〜8用の電源電圧VSが外部より印加される。入力端子T2には、ロジック制御部9用の電源電圧VCCが外部より印加される。
【0025】
モータ駆動部1、2は、モータM1の駆動に対応し、同様に、モータ駆動部3、4は、モータM2の駆動に対応し、モータ駆動部5、6は、モータM3の駆動に対応し、モータ駆動部7、8は、モータM4の駆動に対応している。モータM1〜M4は、DCブラシ付きモータである。即ち、モータ駆動装置200は、4チャンネルの出力を有する。
【0026】
各モータ駆動部1〜8は、それぞれ同様の構成をしており、上側スイッチング素子Q1、下側スイッチング素子Q2、上側スイッチング素子Q3、下側スイッチング素子Q4、抵抗R1、抵抗R2、プリドライバPR、コンパレータCP1、およびコンパレータCP2を含んで構成される。
【0027】
PチャネルMOSFET(MOS電界効果トランジスタ)で構成される上側スイッチング素子Q1のソースは、抵抗R1を介して電源電圧VSの印加端に接続される。上側スイッチング素子Q1のドレインは、NチャネルMOSFETで構成される下側スイッチング素子Q2のドレインに接続される。下側スイッチング素子Q2のソースは、抵抗R2を介して接地端に接続される。即ち、上側スイッチング素子Q1と下側スイッチング素子Q2は、抵抗R1と抵抗R2との間において直列に接続され、ブリッジを構成する。
【0028】
上側スイッチング素子Q3のソースは、電源電圧VSの印加端に接続される。上側スイッチング素子Q3のドレインは、下側スイッチング素子Q4のドレインに接続される。下側スイッチング素子Q4のソースは、接地端に接続される。即ち、上側スイッチング素子Q3と下側スイッチング素子Q4は、直列に接続されてブリッジを構成する。
【0029】
各モータ駆動部1〜8において、上側スイッチング素子Q1と下側スイッチング素子Q2との接続点と、上側スイッチング素子Q3と下側スイッチング素子Q4との接続点は、各出力端子OUT1〜OUT8に共通接続される。出力端子OUT1、OUT2は、それぞれモータM1の正極、負極に接続される。同様に、出力端子OUT3、OUT4は、それぞれモータM2の正極、負極に接続され、出力端子OUT5、OUT6は、それぞれモータM3の正極、負極に接続され、出力端子OUT7、OUT8は、それぞれモータM4の正極、負極に接続される。
【0030】
上側スイッチング素子Q1のゲートと上側スイッチング素子Q3のゲートは、プリドライバPDの一方の出力端に接続され、下側スイッチング素子Q4のゲートと下側スイッチング素子Q2のゲートは、プリドライバPDの他方の出力端に接続される。プリドライバPDは、ロジック制御部9からの指令に基づき各出力端から駆動信号を出力することにより、各スイッチング素子Q1〜Q4を駆動する。これにより、各モータ駆動部1〜8は、各モータM1〜M4のPWM[pulse width modulation]駆動や、正逆転駆動を行うことができる。
【0031】
抵抗R1と上側スイッチング素子Q1との接続点は、コンパレータCP1の非反転端(+)に接続される。コンパレータCP1の反転端(−)には、所定の参照電圧が印加される。コンパレータCP1は、抵抗R1により電流・電圧変換された電流検出電圧と参照電圧との比較を行い、比較結果として過電流検出信号DET1をロジック制御部9に出力する。
【0032】
下側スイッチング素子Q2と抵抗R2との接続点は、コンパレータCP2の非反転端(+)に接続される。コンパレータCP2の反転端(−)には、所定の参照電圧が印加される。コンパレータCP2は、抵抗R2により電流・電圧変換された電流検出電圧と参照電圧との比較を行い、比較結果として過電流検出信号DET2をロジック制御部9に出力する。
【0033】
このような過電流検出部としてのコンパレータCP1とコンパレータCP2により、出力端子OUT1またはOUT2の地絡および天絡、または出力端子OUT1とOUT2間の短絡による生じる過電流を検出することができる。出力端子OUT3〜OUT8についても同様である。
【0034】
過電流検出信号DET1およびDET2は、ロジック制御部9に含まれる不図示の過電流保護回路に出力される。過電流保護回路の詳細については後述する。
【0035】
POR回路10は、電源電圧VCCが立ち上がるとリセット時の論理レベル(例えばLowレベル)とされたリセット信号PRSTをロジック制御部9に出力し、UVLO[Under Voltage Lockout]が解除されてから一定期間が経過した後に、リセット解除時の論理レベル(例えばHighレベル)とされたリセット信号PRSTをロジック制御部9に出力する。POR回路10は、電源電圧VCCが所定閾値以下まで低下すると、リセット時の論理レベルとしたリセット信号PRSTをロジック制御部9に出力する。
【0036】
オシレータ11は、内部クロック信号CKを生成し、ロジック制御部9に出力する。多チャンネル出力(4チャンネル出力)についてオシレータ11は一つと共通化しており、チャンネル間のタイミングのバラツキを抑制している。
【0037】
UVLO回路13は、電源電圧VSを監視して不足電圧保護信号を生成し、これをロジック制御部9に出力する。電源電圧VSが保護設定値(例えば5V)以下まで低下すると、不足電圧保護信号が異常時の論理レベル(例えばHighレベル)となり、これを受けたロジック制御部9はプリドライバPDを介して各出力端子OUT1〜OUT8をオープンとする。一方、電源電圧VCCが保護解除値(例えば6V)以上まで上昇すると、不足電圧保護信号が正常時の論理レベル(例えばLowレベル)となり、これを受けたロジック制御部9は通常動作に移行する。
【0038】
過電圧保護回路14は、電源電圧VSを監視して過電圧保護信号を生成し、これをロジック制御部9に出力する。例えば、電源電圧VSが32Vまで上昇すると、過電圧保護信号は異常時の論理レベル(例えばHighレベル)となり、これを受けたロジック制御部9はプリドライバPDを介して各出力端子OUT1〜OUT8をオープンとする。
【0039】
TSD回路15は、モータ駆動装置200のチップ温度を監視して過熱保護信号を生成し、これをロジック制御部9に出力する。モータ駆動装置200のチップ温度が保護設定値(例えば175℃)以上まで上昇すると、過熱保護信号が異常時の論理レベル(例えばHighレベル)となり、これを受けたロジック制御部9はプリドライバPDを介して各出力端子OUT1〜OUT8をオープンとする。一方、モータ駆動装置200のチップ温度が保護解除値(例えば150℃)以下まで低下すると、過熱保護信号が正常時の論理レベル(例えばLowレベル)となり、これを受けたロジック制御部9は通常動作に移行する。
【0040】
インタフェース12は、モータ駆動装置200の外部に配されるマイコン25から受信する各種信号をロジック制御部9へ伝送する。
【0041】
<過電流保護回路について>
次に、過電流保護回路について説明する。
図6は、ロジック制御部9に含まれる過電流保護回路160の構成を示す図である。なお、過電流保護回路160は、各モータ駆動部1〜8のそれぞれについて、コンパレータCP1とCP2の各々に対応して設けられる。即ち、過電流保護回路160は、合計として16個設けられる。
【0042】
過電流保護回路160は、カウンタ1601と、インバータ1602と、Dフリップフロップ1603と、AND回路1604と、AND回路1605と、を有している。
【0043】
カウンタ1601には、過電流検出信号DET1またはDET2が入力されると共に、クロック信号clkが入力される。クロック信号clkは、オシレータ11から出力される内部クロック信号CKをロジック制御部9に含まれる不図示の分周器によって分周することにより生成される。カウンタ1601は、クロック信号clkをカウントしてカウント結果信号CNTを出力する。
【0044】
インバータ1602は、入力されるカウント結果信号CNTを反転して反転信号INVを生成する。Dフリップフロップ1603のD入力端子には反転信号INVが入力される。Dフリップフロップ1603のクロック端子には、クロック信号clkが入力される。
【0045】
AND回路1604には、POR回路10から出力されるリセット信号PRSTが一方の入力端に入力されると共に、マイコン25からインタフェース12を介してリセット信号XRSTが他方の入力端に入力される。AND回路1604の出力は、Dフリップフロップ1603のリセット端子(Rバー端子)に入力される。
【0046】
AND回路1605には、Dフリップフロップ1604のQ出力端子から出力されるQ出力信号Qoutが一方の入力端に入力されると共に、ON/OFF制御信号CRSが他方の入力端に入力される。ON/OFF制御信号CRSは、モータ駆動装置200のチャンネルごとのオンオフを示す信号であり、マイコン25から送信されてインタフェース12を介してレジスタ(
図5で不図示)に格納される信号である。
【0047】
リセット信号PRSTおよびリセット信号XRST共にリセット解除時の論理レベル(Highレベル)である場合、AND回路1604からの出力がHighレベルとなり、Dフリップフロップ1603は、D入力端子およびクロック端子への入力に応じてQ出力端子から出力する通常動作を行う。一方、リセット信号PRSTとリセット信号XRSTの少なくとも一方がリセット時の論理レベル(Lowレベル)となると、AND回路1604からの出力がLowレベルとなり、Dフリップフロップ1603はリセットされる。
【0048】
また、ON/OFF制御信号CRSがON時の論理レベル(Highレベル)である場合、AND回路1605は有効となり、ON/OFF制御信号CRSがOFF時の論理レベル(Lowレベル)である場合、AND回路1605は無効となる。
【0049】
ここで、リセット信号PRSTとリセット信号XRST共にリセット解除時の論理レベル(Highレベル)であり、且つON/OFF制御信号CRSがON時の論理レベル(Highレベル)である通常動作時の動作について、
図7および
図8に示すタイミングチャートを用いて説明する。
【0050】
図7は、過電流が比較的長い期間検出された場合の各種信号波形例を示すタイミングチャートである。
図7のタイミングt1において、抵抗R1または抵抗R2に流れる電流に過電流が発生し、過電流検出信号DET1またはDET2がLowレベルからHighレベルに立ち上がったとする。
【0051】
すると、これをトリガとして、カウンタ1601は、クロック信号clkのカウントを開始する。カウンタ1601は、過電流検出信号DET1またはDET2がHighレベルである間はカウントを継続し、カウント値が所定の閾値に達したか否かに応じた論理レベルのカウント結果信号CNTを出力する。カウント値が閾値に達していない場合はLowレベル、閾値に達した場合はHighレベルのカウント結果信号CNTとなる。
【0052】
図7では、上記閾値を一例として10としており、カウント値が10に達したタイミングt2以降まで過電流検出信号DET1またはDET2はHighレベルを維持しているので、カウント結果信号CNTはタイミングt2においてLowレベルからHighレベルへ切替わる。
【0053】
これにより、インバータINV1602から出力される反転信号INVは、タイミングt2より若干遅れてHighレベルからLowレベルへ切替わる。タイミングt2においてクロックclkが立ち上がるが、その時点で反転信号INVはHighレベルであるため、Dフリップフロップ1603から出力されるQ出力信号QoutはHighレベルが維持される。そして、タイミングt3でクロック信号がCLKが立ち上がった時点で反転信号INVはLowレベルとなっているので、Q出力信号QoutはHighレベルからLowレベルへ切替わる。これにより、AND回路1605から出力される過電流保護信号Socpは、HighレベルからLowレベルへ切替わる。
【0054】
過電流保護信号SocpがLowレベルへ切替わったことにより、ロジック制御部9は、例えば出力端子OUT1およびOUT2をプリドライバPDを介してオープンとする。これにより、過電流によってモータ駆動装置200が焼損することを抑止できる。
【0055】
一方、
図8は、瞬間的など比較的短い期間だけ過電流が検出された場合のタイミングチャートを示す。
図8のタイミングt11において過電流が検出されて過電流検出信号DET1またはDET2がLowレベルからHighレベルへ切替わると、カウンタ1601はクロック信号clkのカウントを開始する。
【0056】
図8の場合、過電流検出期間が短く、クロック信号clkのカウント値が閾値(ここでは10)に達しないタイミングt12において過電流検出信号DET1またはDET2がLowレベルへ立ち下がる。過電流検出信号DET1またはDET2がLowレベルへ立ち下がると、カウンタ1601はカウントを停止してカウント値をリセットし、カウント結果信号CNTはLowレベルとする。
【0057】
これにより、カウント結果信号CNTはLowレベルが維持され、反転信号INV、Q出力信号Qout、ひいては過電流保護信号SocpはHighレベルが維持される。この場合、ロジック制御部9は、過電流保護を行わない。
【0058】
従って、クロック信号clkの周期とカウント値の閾値から決まるマスク期間に比して過電流検出期間(過電流検出信号DET1またはDET2がHighレベルとなる期間)が短い場合、過電流保護信号Socpはマスクされる。例えば、クロック信号clkの周期が1μsで、カウント値の閾値が10である場合、マスク期間は約10μsとなる。
【0059】
これにより、例えば電源電圧VSの起動時に上側スイッチング素子Q1の寄生容量および下側スイッチング素子Q2の寄生容量に流れ込むラッシュ電流により、短い期間の過電流が生じた場合でも、過電流保護が行われることを回避することができる。
【0060】
しかしながら、このような比較例に係る過電流保護回路160の構成であると、オシレータ11が故障した場合に、内部クロック信号CKひいてはクロック信号clkの生成が停止するので、カウンタ1601はクロック信号clkをカウントすることができない。従って、過電流が検出されて過電流検出信号DET1またはDET2がHighレベルに立ち上がっても、カウント結果信号CNTはLowレベルが維持され、過電流保護が行われない。即ち、オシレータ11の故障によって、過電流保護機能が動作しない不具合が生じる。
【0061】
<本発明の実施形態に係るモータ駆動装置および過電流保護回路>
そこで、本発明の実施形態としては、モータ駆動装置および過電流保護回路を下記で説明する構成としている。
【0062】
図1は、本発明の実施形態に係るモータ駆動装置20の構成を示す図である。モータ駆動装置20の上記比較例に係るモータ駆動装置200(
図5)との構成上の相違点は、ウォッチドッグタイマ17を更に備えていることである。また、それに併せ、
図1のロジック制御部91に含まれる不図示の過電流保護回路(後述する
図2の過電流保護回路16)の構成も比較例に係る過電流保護回路160(
図6)と異ならせている。
【0063】
ウォッチドッグタイマ17(クロック停止検出部)は、オシレータ11の生成する内部クロック信号CKを監視し、正常に内部クロック信号CKが生成されている場合はその旨に対応する論理レベル(Lowレベル)の内部クロック停止検出信号CKDTを出力する。一方、ウォッチドッグタイマ17は、内部クロック信号CKの生成が停止し、タイムアップとなるとその旨に対応する論理レベル(Highレベル)の内部クロック停止検出信号CKDTを出力する。内部クロック停止検出信号CKDTは、ロジック制御部91に含まれる過電流保護回路へ入力される。
【0064】
図2は、ロジック制御部91に含まれる過電流保護回路16の構成を示す図である。過電流保護回路16は、カウンタ161と、インバータ162と、Dフリップフロップ163と、AND回路164〜166と、Dフリップフロップ167と、セレクタ168と、を有している。なお、カウンタ161と、インバータ162と、Dフリップフロップ163から第1出力信号生成部が構成され、Dフリップフロップ167から第2出力信号生成部が構成される。
【0065】
過電流保護回路16のうち、カウンタ161、インバータ162、Dフリップフロップ163、AND回路164、およびAND回路165については、上記の比較例に係る過電流保護回路160の構成と同様である。
【0066】
過電流保護回路160との構成の相違点について説明すると、AND回路166には、一方の入力端に内部クロック停止検出信号CKDTが入力され、他方の入力端にAND回路164の出力が入力される。AND回路166の出力は、Dフリップフロップ167のリセット端子(Rバー端子)に入力される。
【0067】
Dフリップフロップ167のD入力端子にはLowレベルである信号Slowが入力され、クロック端子には過電流検出信号DET1またはDET2が入力される。セレクタ168には、Dフリップフロップ163の出力であるQ出力信号Qout(第1出力信号)と、Dフリップフロップ167の出力であるQ出力信号Qout2(第2出力信号)が入力される。セレクタ168は、内部クロック停止検出信号CKDTの論理レベルに応じて、Q出力信号QoutとQ出力信号Qout2のうちいずれかを選択して選択出力信号Sloutとして出力する。AND回路165には、一方の入力端に選択出力信号Sloutが入力され、他方の入力端にON/OFF制御信号CRSが入力される。AND回路165から過電流保護信号Socpが出力される。
【0068】
リセット信号PRSTとリセット信号XRSTの少なくともいずれかがリセット時の論理レベル(Lowレベル)となると、AND回路164の出力はLowレベルとなるので、Dフリップフロップ163はリセットされる。このとき、AND回路166の出力はLowレベルとなるので、Dフリップフロップ167もリセットされる。
【0069】
リセット信号PRSTとリセット信号XRSTが共にリセット解除時の論理レベル(Highレベル)である場合、AND回路164の出力がHighレベルとなり、Dフリップフロップ163は通常動作が可能となる(なお、以下、ON/OFF制御信号CRSはON時のHighレベルであるとする)。このとき、オシレータ11が正常に動作して内部クロック信号CKが正常に生成されていれば、内部クロック停止検出信号CKDTはLowレベルとなり、AND回路166の出力はLowレベルとなるので、Dフリップフロップ167はリセットされる。また、セレクタ168は、Dフリップフロップ163のQ出力端子Qoutを選択して選択出力信号Sloutとして出力する。
【0070】
この状態では、先述した
図7に示すタイミングチャートのように、マスク期間以上に過電流が検出された場合(過電流検出信号DET1またはDET2がHighレベル)、カウンタ161の出力であるカウント結果信号CNTがLowレベルからHighレベルへ切替わり、結果的にDフロップ163のQ出力信号QoutがHighレベルからLowレベルへ切替わる。このとき、セレクタ168から出力される選択出力信号SloutもHighレベルからLowレベルへ切替わるので、AND回路165から出力される過電流保護信号SocpはHighレベルからLowレベルへ切替わる。これにより、ロジック制御部91は、過電流保護を行うことができる。
【0071】
一方、先述した
図8に示すタイミングチャートのように、マスク期間に比して短い過電流が検出された場合、カウント結果信号CNTはLowレベルを維持され、Q出力信号QoutがHighレベルを維持するので、選択出力信号SloutもHighレベルを維持する。これにより、過電流保護信号SocpはHighレベルを維持し、過電流保護は行われない。
【0072】
また、オシレータ11が故障して内部クロック信号CKの生成が停止し、ウォッチドッグタイマ17がこれを検出してHighレベルとした内部クロック停止検出信号CKDTを出力するとする。このとき、リセット信号PRSTとリセット信号XRSTが共にリセット解除時の論理レベル(Highレベル)である場合、AND回路164の出力がHighレベルとなり、AND回路166の出力がHighレベルとなり、Dフリップフロップ167は通常動作が可能となる。また、セレクタ168は、Dフリップフロップ167の出力であるQ出力信号Qout2を選択して選択出力信号Sloutとして出力する。
【0073】
この状態で、
図3に示すタイミングチャートのように、過電流が検出されて過電流検出信号DET1またはDET2がLowレベルからHighレベルへタイミングt21で立ち上がったとすると、そのタイミングでDフリップフロップ167のD入力端子に印加されている論理レベル(Lowレベル)がQ出力端子から出力されるので、Q出力信号Qout2はHighレベルからLowレベルへ切替わる。すると、セレクタ168から出力される選択出力信号SloutもLowレベルへ切替わるので、AND回路165から出力される過電流保護信号SocpもLowレベルへ切替わる。これにより、ロジック制御部91は、過電流保護を行う。
【0074】
このように本実施形態によれば、オシレータ11が故障して内部クロック信号CKの生成が停止した場合でも、過電流保護機能を動作させることが可能となる。
【0075】
<車両への適用>
図4は、種々の電子機器を搭載した車両の一構成例を示す外観図である。本構成例の車両Xは、バッテリX10から電源電圧VSの供給を受けて動作する種々の電子機器X11〜X18を搭載している。なお、
図4における電子機器X11〜X18の搭載位置については、図示の便宜上、実際とは異なる場合がある。
【0076】
電子機器X11は、エンジンに関連する制御(インジェクション制御、電子スロットル制御、アイドリング制御、酸素センサヒータ制御、および、オートクルーズ制御など)を行うエンジンコントロールユニットである。
【0077】
電子機器X12は、HID[high intensity discharged lamp]やDRL[daytime running lamp]などの点消灯制御を行うランプコントロールユニットである。
【0078】
電子機器X13は、トランスミッションに関連する制御を行うトランスミッションコントロールユニットである。
【0079】
電子機器X14は、車両Xの運動に関連する制御(ABS[anti-lock brake system]制御、EPS[electric power steering]制御、電子サスペンション制御など)を行うボディコントロールユニットである。
【0080】
電子機器X15は、ドアロックや防犯アラームなどの駆動制御を行うセキュリティコントロールユニットである。
【0081】
電子機器X16は、エアーコンディショナ、ワイパー、電動ドアミラー、パワーウィンドウ、ダンパー(ショックアブソーバー)、電動サンルーフ、および、電動シートなど、標準装備品やメーカーオプション品として、工場出荷段階で車両Xに組み込まれている電子機器である。
【0082】
電子機器X17は、車載A/V[audio/visual]機器、カーナビゲーションシステム、および、ETC[electronic toll collection system]など、ユーザオプション品として任意で車両Xに装着される電子機器である。
【0083】
電子機器X18は、車載ブロア、オイルポンプ、ウォーターポンプ、バッテリ冷却ファンなど、高耐圧系モータを備えた電子機器である。
【0084】
上記した電子機器X11〜X18のうち、ブラシ付きDCモータを備える電子機器については、適宜、先に説明したモータ駆動装置20の構成を採用することができる。特にISO26262なども策定されている状況では、モータ駆動装置20が備える過電流保護機能は安全性の面で重要となる。
【0085】
<その他の変形例>
なお、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。例えば、過電流保護回路の適用対象については、モータ駆動装置に限らず、例えばLED駆動装置(車載用を含む)なども挙げることができる。
【0086】
また、本発明の異常保護回路は、過電流保護回路に限ることはなく、例えば過電圧保護回路、温度異常保護回路などにも適用可能である。
【0087】
このように、上記の実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。