【課題】電機子の形状不良を改善して、形状不良に起因する諸問題を解消できる電機子の製造方法であって、積層鉄心を構成する鋼板の種類に関係なしに適用できる、汎用性の高い電機子の製造方法を提供する。
【解決手段】積層鉄心6に形成された複数個の磁石挿入孔61a,‥‥61pのそれぞれに、非磁化方向において負の熱膨張率を有する永久磁石を挿入し、その後、磁石挿入孔61a,‥‥61pに樹脂を注入して、磁石挿入孔61a,‥‥61p内で固化させて、永久磁石を積層鉄心6に固定する電機子の製造方法において、第1群に属する磁石挿入孔61a,‥‥61d,61i,‥‥61lに、第2群に属する磁石挿入孔61e,‥‥61h,61m,‥‥61pに注入される樹脂の量よりも、多くの量の樹脂を注入する。
積層鉄心に形成された複数個の磁石挿入孔のそれぞれに、非磁化方向において負の熱膨張率を有する永久磁石を挿入し、その後、前記磁石挿入孔に樹脂を注入して、前記磁石挿入孔内で固化させて、前記永久磁石を前記積層鉄心に固定する電機子の製造方法において、
特定の前記磁石挿入孔に、他の前記磁石挿入孔に注入される前記樹脂の量よりも、多くの量の前記樹脂を注入する、
電機子の製造方法。
【背景技術】
【0002】
IPMモータの回転子のような、積層鉄心の内部に永久磁石を埋め込んだ構造をもつ電機子が知られている。IPMモータは、回転子鉄心の内部に永久磁石が埋め込まれているので、モータの回転中に遠心力で磁石が飛び出すことがなく、機械的な安全性が高い。また、IPMモータは、高効率で高トルクが得られる。そのため、IPMモータは、自動車用、鉄道車両用、その他産業用の動力源として、近年その利用が急速に拡大している。
【0003】
多くの場合、IPMモータを構成する回転子は、積層鉄心に形成された磁石挿入孔のそれぞれに永久磁石を挿入し、その後、磁石挿入孔に樹脂を注入して、磁石挿入孔内で樹脂を固化させて、永久磁石を積層鉄心に固定している(特許文献1,2)。特許文献1には、永久磁石を積層鉄心の磁石挿入孔に挿入した後に、積層鉄心を加温して、その後に、樹脂を磁石挿入孔に注入することが記載されている(第0021〜0025段落)。
【0004】
また、IPMモータを構成する回転子に埋め込まれる永久磁石として、ネオジム(ネオジウム)磁石が知られている。ネオジム磁石は、磁束密度が高く、非常に強い磁力を持つので、ネオジム磁石を回転子に埋め込んで、IPMモータを構成すると、小型で強力なモータが得られる。
【0005】
ネオジム磁石は、磁化(容易)方向において正の熱膨張率を示し、非磁化方向(磁化方向に直交する方向)において負の熱膨張率を示すことが知られている(特許文献3(第0049段落)、特許文献4(第0005段落))。つまり、ネオジム磁石を加温すると、ネオジム磁石は、磁化方向において膨張し、非磁化方向において収縮することが知られている。
【0006】
さて、積層鉄心は、圧延工程を経て製造された薄鋼板(その用途に基づいて「電磁鋼板」、あるいは合金成分に基づいて「珪素鋼板」と呼ばれる)を金型で打抜いて得られたコアシートを積層して構成される。回転子を構成するコアシートは、円形の輪郭を備えている。コアシートの輪郭が真円になるように、金型の輪郭も真円にされている。しかしながら、真円の輪郭を有する金型で薄鋼板を打抜いても、コアシートの輪郭が楕円になることがある。つまり、打抜き後にコアシートに歪みが生じることがある。
【0007】
例えば、特許文献5の第0007段落には、「外周が円形のステータコアシートにおいて、
図9に示すように電磁鋼板の圧延方向では外径寸法が大きくなり、圧延方向に直交する方向では外径寸法が小さくなる場合と、逆に電磁鋼板の圧延方向では外径寸法が小さくなり、圧延方向に直交する方向では外径寸法が大きくなる場合がある。」と記載されている。
【0008】
また、コアシートの歪みに起因する形状不良が生じた積層鉄心を回転電機のハウジングに取り付けると、ハウジングに歪みが生じ、その結果、回転電機に各種の不具合が生じることがある。また、形状不良が生じた積層鉄心をハウジングに焼き嵌めして取り付けると、一部において積層鉄心とハウジングの間に隙間が生じる。そのため、積層鉄心とハウジングの接触面積が小さくなる。その結果、積層鉄心の固定が不十分になるおそれがある。
【0009】
特許文献5に記載の発明は、上記の問題を解決するために、回転電機のハウジングにおいて、打抜かれたステータコアシートの外径寸法が正規寸法より大きくなる部位が当接する位置を非固定位置にして、正規寸法に対する外径寸法の差が小さい部位が当接する位置を固定位置にしている。
【0010】
特許文献5に記載の発明によれば、積層鉄心とハウジングの形状の不一致に起因する諸問題は解決されるかも知れない。しかしながら、積層鉄心の形状不良そのものは改善されない。そのため、積層鉄心の形状不良に起因する問題、例えば、回転子と固定子の間の間隙(エアギャップ)の変動に起因して生じるトルク変動や振動の問題は解決されない。
【0011】
もっとも、積層鉄心の形状不良の発生を抑制することを目的とする発明は、既に出願されている。例えば、特許文献6には、打抜き金型の切り刃の真円度を、無方向性電磁鋼板の伸び率に応じて制御することを特徴とする無方向性電磁鋼板の打抜き方法が開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施形態に係る電機子の製造方法に用いる電機子製造装置の構成を示す平面図である。
【
図2】
図1に記載の電機子製造装置が備える予熱装置の構成を示す正面図である。
【
図3】
図1に記載の電機子製造装置が備える樹脂封止装置の構成を示す正面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る積層鉄心の構成図であって、
図4(a)は積層鉄心の平面図であり、
図4(b)は積層鉄心の側面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る積層鉄心を構成する素板の製造方法を示す説明図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係る積層鉄心の平面図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態に係る積層鉄心の平面図である。
【
図8】本発明の第3の実施形態に係る上型の平面図である。
【
図9】本発明の第3の実施形態に係るプランジャーを動作させるメカニズムとその作用を説明する構成図であり、
図9(a)はプランジャーが樹脂溜の外に引き上げられた状態を、
図9(b)はプランジャーが樹脂溜内に押し込められた状態を、それぞれ示している。
【
図10】本発明の第4の実施形態に係るダミープレートの平面図である。
【
図11】本発明の第5の実施形態に係る上型の構成と作用を示す図であって、
図11(a)は上型の平面図であり、
図11(b)はプランジャーが、上型が備える樹脂溜の外に引き上げられた状態を示す説明図である。
【
図12】本発明の第6の実施形態に係るプランジャーを動作させるメカニズムとその作用を説明する説明図であり、
図12(a)はプランジャーが樹脂溜の外に引き上げられた状態を、
図12(b)はプランジャーが樹脂溜内に押し込められた状態を、それぞれ示している。
【
図13】本発明の第7の実施形態に係るプランジャーを動作させるメカニズムとその作用を説明する説明図であり、
図13(a)はプランジャーが樹脂溜の外に引き上げられた状態を、
図13(b)はプランジャーが樹脂溜内に押し込められた状態を、それぞれ示している。
【
図14】本発明の第8の実施形態に係る樹脂封止装置の構成を示す正面図である。
【
図15】本発明の第9の実施形態に係るダミープレートが備える樹脂注入穴の形状を示す平面図であって、
図15(a)と
図15(b)は、それぞれ、磁石挿入穴と重なる部分の面積が異なる樹脂注入穴を示している。
【
図16】本発明の第10の実施形態に係る樹脂封止装置の構成を示す正面図である。
【
図17】本発明の第10の実施形態に係る上型が備える樹脂注入口の形状を示す平面図であって、
図17(a)と
図17(b)は、それぞれ、磁石挿入穴と重なる部分の面積が異なる樹脂注入口を示している。
【
図18】上記各実施形態に係る電機子の製造方法を適用することによって積層鉄心の歪みが矯正される原理を示す説明図であって、
図18(a)〜(d)は、積層鉄心の歪みが矯正される過程を時系列に沿って示す図である。
【
図19】上記各実施形態に係る電機子の製造方法を適用することによって積層鉄心の歪みが矯正される原理を示す説明図であって、
図19(a)は、磁石挿入孔に充填される樹脂材の量が多い場合の磁石挿入孔の断面図であり、
図19(b)は、磁石挿入孔に充填される樹脂材の量が少ない場合の磁石挿入孔の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態に係る電機子の製造方法について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0029】
(製造装置)
図1は本発明の実施形態に係る電機子の製造装置1の構成を示す平面図である。
図1に示すように、製造装置1は、搬送コンベア2、予熱装置3及び樹脂封止装置4を備えている。また、製造装置1は、コンピュータ100を備えていて、搬送コンベア2、予熱装置3及び樹脂封止装置4は、コンピュータ100に制御されて動作する。
【0030】
(搬送コンベア)
搬送コンベア2は、
図1において製造装置1の左側に配置された図示しない上流工程で製造されて、搬送トレイ5に載置された積層鉄心6を製造装置1に搬入する装置である。製造装置1における処理を終えた積層鉄心6は、搬送コンベア2によって、
図1において製造装置1の右側に配置された図示しない下流工程に搬出される。
【0031】
搬送コンベア2によって、上流工程から製造装置1に搬入された積層鉄心6は、図示しない移送装置によって、搬送コンベア2から予熱装置3に移送される。予熱装置3は積層鉄心6を加温して、予熱装置3の温度を事前に決められた温度まで昇温させる装置である。予熱装置3の詳細な構成については後述する。
【0032】
予熱装置3における加温が完了した積層鉄心6は、搬送コンベア2に戻され、図示しない別の移送装置によって、搬送コンベア2から樹脂封止装置4に移送される。樹脂封止装置4では、積層鉄心6に樹脂が注入充填される。樹脂充填が完了した積層鉄心6は、樹脂封止装置4から取り出され、搬送コンベア2に戻され、図示しない下流工程に搬出される。樹脂封止装置4の詳細な構成については後述する。
【0033】
(予熱装置)
予熱装置3は、
図2に示すように、積層鉄心6が載置された搬送トレイ5を載置する下部加熱部31と、設置場所に固定される固定架台32を備えている。固定架台32には下部加熱部31を上下に昇降させる昇降手段(例えば、ジャッキ)33が固定されている。また、予熱装置3は、昇降手段33により上限位置まで上昇された積層鉄心6(
図2において、破線で示す)の上方に位置する上部加熱部34と、この積層鉄心6を側方から取り囲む側部加熱部35とを有している。この側部加熱部35は、横方向に二分割され、分割された部分を、積層鉄心6を中心として水平方向(
図2において矢印で示す)に移動することで開閉可能に構成されている。予熱装置3が備える各加熱部31、34、35には図示しない電熱ヒータが設けられ、この電熱ヒータにより積層鉄心6を加熱している。なお、前述したように、予熱装置3は、コンピュータ100に制御されて動作する。
【0034】
(樹脂封止装置)
樹脂封止装置4は、
図3に示すように、積層鉄心6が載置された搬送トレイ5を載置する下型41と、積層鉄心6の上に載置される上型42とを備えている。また、積層鉄心6と上型42の間にはダミープレート7が挟持されている。つまり、ダミープレート7の下面は積層鉄心6の上面に当接し、ダミープレート7の上面は、上型42の下面に当接している。なお、ダミープレート7は上型42から積層鉄心6の磁石挿入孔61に注入された樹脂材8が、積層鉄心6の上面で広がって、積層鉄心6の上面に付着することを防ぐ一種のカバーである。ダミープレート7はカルプレートとも呼ばれる。
【0035】
上型42は、積層鉄心6が備える磁石挿入孔61に樹脂材8を注入する樹脂注入用金型であって、積層鉄心6が備える磁石挿入孔61と同数の樹脂溜43を備えている。つまり、上型42には、積層鉄心6が備える磁石挿入孔61と1対1で対応するように、樹脂溜43が配置されている。樹脂溜43は図示しない樹脂供給装置から供給されて、磁石挿入孔61に注入される樹脂材8を一時的に保持する部位である。また、樹脂溜43の底面には樹脂注入口44が形成されている。樹脂溜43に一時的に保持された樹脂材8は、樹脂注入口44を通って、積層鉄心6の磁石挿入孔61に注入される。
【0036】
各樹脂溜43にはプランジャー45が進退自在に取り付けられている。プランジャー45は、樹脂溜43内に一時的に保持された樹脂材8を磁石挿入孔61に向けて押し出す部材である。プランジャー45はばね要素46を介して押さえ板47に取り付けられている。押さえ板47は、アクチュエータ(例えば、エアシリンダ)48によって駆動されて上型42に対して進退するように構成されている。また、アクチュエータ48は、コンピュータ100に制御されて動作する。なお、ばね要素46は、プランジャー45が進退する方向に伸縮するように構成されている。
【0037】
なお、押さえ板47には、上型42が備える全てのプランジャー45がばね要素46を介して取り付けられている。そのため、コンピュータ100に制御されてアクチュエータ48が動作すると、上型42が備える全てのプランジャー45が同時に、各樹脂溜43に対して進退する。
【0038】
ダミープレート7の、上型42の樹脂溜43に当接する部位には、樹脂注入穴71が開口されている。樹脂溜43に一時的に保持された樹脂材8は、樹脂注入口44と樹脂注入穴71を通って、磁石挿入孔61に注入される。なお、各磁石挿入孔61には、上流工程において、永久磁石9が挿入されている。磁石挿入孔61に注入された樹脂材8は、磁石挿入孔61内で固化して、永久磁石9を積層鉄心6に固定する。
【0039】
(積層鉄心)
次に、積層鉄心6の構成と構造を説明する。積層鉄心6は、インナーロータ型のIPMモータの回転子を構成する部品であって、
図4(b)に示すように、複数の素板10を積層して構成されている。また、
図4(a)に示すように、積層鉄心6には、16個の磁石挿入孔61が形成されている。磁石挿入孔61は積層鉄心6の中心を中心とする円周上に配列されている。前述したように、磁石挿入孔61には永久磁石9が挿入されていて、永久磁石9は樹脂材8によって磁石挿入孔61内に固定されている。また、積層鉄心6の中心には積層鉄心6を貫通する軸穴62が形成されている。軸穴62には図示しないIPMモータの回転軸が挿嵌される。
【0040】
積層鉄心6を構成する素板10は、
図5に示すように、帯板状のブランク11から打抜かれて形成される。ブランク11は図示しない圧延機によって製造され、ロール状に巻き取られたコイルの形で、素板10の製造工程に供給される。そして、ブランク11は図示しないコイルから引き出されて、
図5において左から右に移送されて、逐次、加工される。つまり、第1の工程において、ブランク11から磁石挿入孔61が打抜かれ、その後、ブランク11は第2工程に移送される。第2工程では、ブランク11から軸穴62が打抜かれ、その後、ブランク11は第3工程に移送される。第3工程では、ブランク11から外輪63が打抜かれ、第4工程では、素板10がブランク11から分離される。なお、前述したように、ブランク11はロール状に巻き取られたコイルから引き出されるので、ブランク11の長手方向(
図5において左右方向)はブランク11の圧延方向に一致する。また、素板10を積層する工程においては、各素板10の圧延方向が同一方向を向くように、向きを揃えている。つまり、
図4(a)において、積層鉄心6の最上層において、素板10の圧延方向が
図4(a)の左右方向になるように置かれる場合、積層鉄心6を構成する全ての素板10は、圧延方向が
図4(a)の左右方向になるように置かれる。
【0041】
(第1の実施形態)
図6は、第1の実施形態に係る積層鉄心6の平面図である。
図6においては、16個の磁石挿入孔61のそれぞれに、添え字a,b,‥‥pを添えて、磁石挿入孔61のそれぞれを区別している。第1の実施形態に係る電機子の製造方法においては、積層鉄心6が備える磁石挿入孔61を2群に分割する。すなわち、
図6に示すように、磁石挿入孔61a,‥‥61dと磁石挿入孔61i,‥‥61lを第1群としている。磁石挿入孔61e,‥‥61hと磁石挿入孔61m,‥‥61pを第2群としている。なお、第1群に属する磁石挿入孔61は、積層鉄心6を構成する素板10の圧延方向に平行する方向に配列されている。第2群に属する磁石挿入孔61は、積層鉄心6を構成する素板10の圧延方向に直交する方向に配列されている。
【0042】
そして、第1の実施形態においては、第1群に属する磁石挿入孔61に注入される樹脂材8の量を、第2群に属する磁石挿入孔61に注入される樹脂材8の量より多くしている。磁石挿入孔61に注入される樹脂材8の量を調節する具体的な手段については、後述する。
【0043】
(第2の実施形態)
本発明に係る電機子の製造方法は、複数個の磁石挿入孔61を2群に分割するものには限定されない。複数個の磁石挿入孔61を3群以上に分割しても良い。そこで、第2の実施形態においては、
図7に示すように、16個の磁石挿入孔61を、3群に分割する。つまり、磁石挿入孔61b,61c,61j,61kを第1群、磁石挿入孔61d,61e,61h,61i,61l,61m,61p,61aを第2群、磁石挿入孔61f,61g,61n,61oを第3群にする。
【0044】
そして、第2の実施形態においては、第1群に属する磁石挿入孔61に注入される樹脂材8の量が最も多く、第2群に属する磁石挿入孔61に注入される樹脂材8の量が、これに次ぎ、第3群に属する磁石挿入孔61に注入される樹脂材8の量が最も少なくなるようにしている。
【0045】
(第3の実施形態)
磁石挿入孔61に注入される樹脂材8の量を調節する具体的な手段について説明する。
図8は、第3の実施形態において使用される上型42の平面図である。
図8に示すように、上型42は、積層鉄心6が備える16個の磁石挿入孔61にそれぞれ対応する位置に、樹脂溜43を備えている。各樹脂溜43の底部には、それぞれ、樹脂注入口44(44a,44b)が形成されている。つまり、上型42は、16個の樹脂注入口44(44a,44b)を備えている。また、
図8に示すように、16個の樹脂注入口44(44a,44b)の断面積は、統一されていない。一部の樹脂注入口44(44a)の断面積は、他の樹脂注入口44(44b)の断面積より大きくされている。
【0046】
次に、
図8に示した上型42によって、磁石挿入孔61に注入される樹脂材8の量が増減される原理を説明する。
図9(a)に示すように、樹脂溜43aと樹脂溜43b、プランジャー45aとプランジャー45bは、それぞれ同形同寸である。また。プランジャー45a、プランジャー45bと押さえ板47の間に、それぞれ、ばね要素46a、ばね要素46bが取り付けられている。これらも互いに同形同寸であって、これらのばね定数も互いに等しい。また、樹脂溜43aと樹脂溜43bの中に保持される樹脂材8の量も互いに等しい。一方、前述したように、樹脂注入口44aの断面積は、樹脂注入口44bの断面積より大きくされている。
【0047】
このような条件の下で、
図9(a)において図示しないアクチュエータ48を動作させて、押さえ板47を下降(上型42に接近)させると、プランジャー45aとプランジャー45bには、上向きの反力が作用する。この反力には、プランジャー45aとプランジャー45bに押された樹脂材8が、樹脂注入口44aと樹脂注入口44bを通過する時の抵抗が含まれている。樹脂注入口44aの断面積は、樹脂注入口44bの断面積より大きいので、樹脂材8が樹脂注入口44aを通過する時の抵抗は、樹脂材8が樹脂注入口44bを通過する時の抵抗よりも小さい。したがって、プランジャー45aが樹脂材8から受ける反力は、プランジャー45bが樹脂材8から受ける反力よりも小さくなる。そのため、プランジャー45aを樹脂注入口44aに押し込む時に生じるばね要素46aの縮みは、プランジャー45bを樹脂注入口44bに押し込む時に生じるばね要素46bの縮みよりも小さくなる。その結果、プランジャー45bはプランジャー45aよりも遅れて、樹脂注入口44bの中に押し込まれる。つまり、
図9(b)に示すように、プランジャー45aが樹脂溜43aの底面に当接する時に、プランジャー45bは樹脂溜43bの底面に当接していない。そのため、このタイミングにおいて、樹脂溜43bの中には、樹脂材8が残留している。したがって、
図9(a)に示した状態から
図9(b)に示した状態になるまでの間に、樹脂溜43aから磁石挿入孔61(
図9において図示せず)に注入された樹脂材8の量は、樹脂溜43bから磁石挿入孔61に注入された樹脂材8の量よりも多い。このように、樹脂注入口44(44a,44b)の断面積を互いに相違させれば、樹脂溜43(43a,43b)から磁石挿入孔61に注入される樹脂材8の量を互いに相違させることができる。つまり、樹脂注入口44の断面積を調節することによって磁石挿入孔61に注入される樹脂材8の量を調節することができる。
【0048】
(第4の実施形態)
樹脂注入口44の断面積を加減する代わりに、ダミープレート7が備える樹脂注入穴71の断面積を調節することによっても、磁石挿入孔61に注入される樹脂材8の量を調節することができる。
図10は、第4の実施形態において使用されるダミープレート7の平面図である。
図10に示すように、ダミープレート7は、積層鉄心6が備える16個の磁石挿入孔61にそれぞれ対応する位置に、16個の樹脂注入穴71(71a,71b)を備えている。また、
図10に示すように、16個の樹脂注入穴71(71a,71b)の断面積は、統一されていない。一部の樹脂注入穴71(71a)の断面積は、他の樹脂注入穴71(71b)の断面積より大きくされている。この場合も、第3の実施形態の場合と同様のメカニズムによって、磁石挿入孔61に注入される樹脂材8の量は増減される。
【0049】
(第5の実施形態)
磁石挿入孔61に注入される樹脂材8の量を調節する具体的な手段は、第3及び第4の実施形態に示されたものには限定されない。上型42が備える樹脂溜43の断面積を加減することによっても、磁石挿入孔61に注入される樹脂材8の量を増減させることができる。
図11(a)は、第5の実施形態において使用される上型42の平面図である。第5の実施形態に係る上型42も第3の実施形態に係る上型42と同様に、積層鉄心6が備える16個の磁石挿入孔61にそれぞれ対応する位置に、16個の樹脂溜43(43a,43b)を備えている。各樹脂溜43(43a,43b)の底部には、それぞれ、樹脂注入口44が形成されていることも、第3の実施形態と同様である。しかしながら、第5の実施形態の場合は、
図11(a)に示すように、16個の樹脂溜43(43a,43b)の断面積は、統一されていない。一部の樹脂溜43(43a)の断面積は、他の樹脂溜43(43b)の断面積より大きくされている。その結果、一部の樹脂溜43(43a)の容積は、他の樹脂溜43(43b)の容積より大きくされている。
【0050】
図11(b)に示すように、第5の実施形態においては、押さえ板47には、樹脂溜43aに対応するサイズのプランジャー45aと、樹脂溜43bに対応するサイズのプランジャー45bが取り付けられている。
図11(b)において図示しないアクチュエータ48を動作させて、押さえ板47を下降(上型42に接近)させて、プランジャー45aの下端を樹脂溜43aの底面に、プランジャー45bの下端を樹脂溜43bの底面に、それぞれ当接させると、樹脂溜43a及び樹脂溜43bに保持されていた樹脂材8の全量が上型42の下方に押し出される。前述したように、樹脂溜43aの容積は樹脂溜43bの容積よりも大きいので、樹脂溜43aから押し出される樹脂材8の量は、樹脂溜43bから押し出される磁石挿入孔61に注入された樹脂材8の量よりも多い。このように、樹脂溜43の断面積を調節することによっても、磁石挿入孔61に注入される樹脂材8の量を調節することができる。
【0051】
(第6の実施形態)
次に、プランジャー45が上型42から取り出された位置にある場合に、一部のプランジャー45の先端が、他のプランジャー45の先端と比べて、上型42に近いに位置にあるように構成することによって、磁石挿入孔61に注入される樹脂材8の量を調節することができることを示す。第6の実施形態においては、
図12(a)に示すように、プランジャー45(45a,45b)の長さは統一されていない。樹脂溜43aに押し込まれるプランジャー45aは、樹脂溜43bに押し込まれるプランジャー45bよりも長くされている。そのため、
図12(a)において、プランジャー45aの下端は、プランジャー45bの下端よりも上型42に近い位置にある。そのため、
図12(a)において図示しないアクチュエータ48を動作させて、押さえ板47を下げると、
図12(b)に示すように、プランジャー45aの下端が樹脂溜43aの底面に当接するが、この時に、プランジャー45bの下端は樹脂溜43bの底面には届いていない。プランジャー45bの下端が樹脂溜43bの底面に当接する前に、押さえ板47の下降を中止すれば、樹脂溜43bから押し出される樹脂材8の量は、樹脂溜43aから押し出される樹脂材8の量より少なくなる。
【0052】
(第7の実施形態)
押さえ板47とプランジャー45の間に介在するばね要素46のばね定数を調整することによっても、樹脂溜43から磁石挿入孔61に注入される樹脂材8を増減することができる。第7の実施形態においては、
図13(a)に示すように、押さえ板47とプランジャー45aの間にばね要素46aが、押さえ板47とプランジャー45bの間にばね要素46bが、それぞれ配置されている場合に、ばね要素46aのばね定数をばね要素46bのばね定数より大きくしている。この場合に、押さえ板47を押し下げて(上型42に接近させて)、プランジャー45aとプランジャー45bを樹脂溜43aと樹脂溜43bに押し込むと、プランジャー45aとプランジャー45bは樹脂材8から反力を受ける。前述したように、ばね要素46bはばね要素46aよりもばね定数が小さいので、この時、ばね要素46bはばね要素46aよりも大きく縮む。そのため、
図13(b)に示すように、プランジャー45aが先に樹脂溜43aの底部に当接する。そして、
図13(b)に示したタイミングでは、プランジャー45bが樹脂溜43bの底部に当接していないので、樹脂溜43bの内部には樹脂材8の一部が残留している。一方、樹脂溜43aの内部には、樹脂材8は全く残っていない。したがって、
図13(b)に示したタイミングまでに、磁石挿入孔61aに注入された樹脂材8の量は、磁石挿入孔61bに注入された樹脂材8の量よりも多い。そして、プランジャー45bが樹脂溜43bの底部に当接する前に、押さえ板47の下降を停止して、樹脂材8の注入を終了すれば、磁石挿入孔61aに注入される樹脂材8の量を、磁石挿入孔61bに注入された樹脂材8の量よりも多くすることができる。
【0053】
(第8の実施形態)
上記各実施形態においては、上型42の樹脂溜43の底面に、断面積において該底面よりも小さい樹脂注入口44を備える例を示した(
図3、
図8)。しかしながら、樹脂溜43及び樹脂注入口44の形状はこのようなものには限定されない。
図14に示すように、樹脂溜43と樹脂注入口44の断面積を同形同寸にしても良い。つまり、樹脂溜43が上型42を貫くように構成されていて、上型42の上面における樹脂溜43の断面形状と上型42の下面における樹脂溜43の断面形状が等しくなるようにしても良い。
【0054】
(第9の実施形態)
上記第4の実施形態においては、ダミープレート7が備える樹脂注入穴71の断面積を調節することによって、磁石挿入孔61に注入される樹脂材8の量を調節することを示した。そして、
図10において、樹脂注入穴71aの断面積を樹脂注入穴71bの断面積より大きくする例を示した。しかしながら、樹脂注入穴71の断面積が同一であっても、樹脂注入穴71の、平面形において磁石挿入孔61と重なる部分の面積を調整すれば、磁石挿入孔61に注入される樹脂材8の量を調節することができる。例えば、
図15(a)と
図15(b)に示すように、樹脂注入穴71aと樹脂注入穴71bの断面形状を同じにする一方で、平面形において樹脂注入穴71aの磁石挿入孔61と重なる部分(
図15(a)でハッチングを付した部分)の面積を、樹脂注入穴71bの磁石挿入孔61と重なる部分(
図15(b)でハッチングを付した部分)の面積を違えるようにしても良い。このような構成を選択した場合も、第3の実施形態の場合と同様の作用と効果が生じる。
【0055】
(第10の実施形態)
上記各実施形態においては、上型42と積層鉄心6の間にダミープレート7を挟む例を示したが、ダミープレート7は必須の構成要素ではない。ダミープレート7を省くこともできる。例えば、
図16に示すように、積層鉄心6の上面に上型42を直接載置するようにしても良い。また、樹脂注入口44は、その断面積が樹脂溜43の断面積と等しいものや、樹脂溜43の断面積よりも小さいものには限定されない。樹脂注入口44は、
図16に示すように、その断面積が樹脂溜43の断面積よりも大きいものであっても良い。
【0056】
また、第10の実施形態に係る樹脂封止装置4、つまり
図16に示した樹脂封止装置4においては、樹脂注入口44の、平面形において磁石挿入孔61と重なる部分の面積を調整することによって、磁石挿入孔61に注入される樹脂材8の量を調節する。例えば、
図17(a)と
図17(b)に示すように、樹脂注入口44aと樹脂注入口44bが平面形において、それぞれ磁石挿入孔61と重なる部分の面積(
図17(a)及び(b)でハッチングを付した部分)を違えれば、第3の実施形態の場合と同様の作用と効果が生じる。
【0057】
(形状不良の矯正)
最後に、
図18と
図19を参照して、第1ないし第7の実施形態に係る方法によって、積層鉄心6の形状不良が矯正される原理を説明する。
図18(a)は、常温における積層鉄心6の磁石挿入孔61と永久磁石9の形状を示す平面図である。永久磁石9は、ネオジム磁石であって、方向によって磁化容易性能が異なっている。
図18の各図において、X軸は永久磁石9の磁化(容易)軸を示し、Y軸は永久磁石9の非磁化軸を示している。つまり、永久磁石9は、磁化(容易)軸がX軸と一致し、非磁化軸がY軸と一致するように、磁石挿入孔61内に配置されている。また、ネオジム磁石、すなわち、永久磁石9は、磁化軸(X軸)方向において、正の熱膨張率を有し、非磁化軸(Y軸)方向において、負の熱膨張率を有している。そのため、永久磁石9を加温すると、永久磁石9はX軸方向において膨張し、Y軸方向において収縮する。
【0058】
図18(b)は、積層鉄心6を加温した場合の磁石挿入孔61と永久磁石9の形状を示す平面図である。この場合、磁石挿入孔61は、X軸及びY軸方向に膨張する(寸法が拡大する)。永久磁石9は、X軸方向において膨張(寸法が拡大)し、Y軸方向において収縮(寸法が縮小)する。その結果、磁石挿入孔61と永久磁石9の間の隙間が拡大する。特に、Y軸方向の隙間が拡大する。
【0059】
このように、積層鉄心6を加温した状態で、磁石挿入孔61に樹脂材8を注入すると、
図18(c)に示すように、磁石挿入孔61と永久磁石9の間の隙間に樹脂材8が充填される。
【0060】
磁石挿入孔61に樹脂材8を注入した後で、積層鉄心6を冷却して、積層鉄心6の温度を常温に戻すと、磁石挿入孔61と永久磁石9の間の隙間に充填された樹脂材8は固化する。この時、磁石挿入孔61は、X軸及びY軸方向に収縮する(寸法が縮小する)。永久磁石9は、X軸方向において収縮(寸法が縮小)し、Y軸方向において膨張(寸法が拡大)する。つまり、磁石挿入孔61と永久磁石9は
図18(a)に示された形状に戻ろうとする。しかしながら、
図18(d)に示すように、磁石挿入孔61と永久磁石9の間の隙間に樹脂材8が充填されているので、磁石挿入孔61はY軸方向において、内側から永久磁石9に押圧される。その結果、
図18(d)に示す状態における磁石挿入孔61のY軸方向の長さは、
図18(a)に示す状態における長さよりも大きくなる。なお、
図18(d)において矢印付きの太実線は、この時に磁石挿入孔61に作用する押圧力を示している。
【0061】
さて、磁石挿入孔61に注入される樹脂材8の量が多ければ、
図19(a)に示すように、磁石挿入孔61と永久磁石9の間に充填される樹脂材8の量も多くなる。樹脂材8は磁石挿入孔61と永久磁石9の間で、ばねとして作用するが、磁石挿入孔61と永久磁石9の間に充填される樹脂材8の量が多ければ、ばね定数が大きくなる。ばね定数が大きければ、樹脂材8の充填後に永久磁石9が常温まで冷却されて、永久磁石9のY軸方向の寸法が元(つまり、
図18(d)に示す状態)に戻った時に、磁石挿入孔61に作用する押圧力が大きくなる。
【0062】
一方、磁石挿入孔61に注入される樹脂材8の量が少なければ、
図19(b)に示すように、磁石挿入孔61と永久磁石9の間に充填される樹脂材8の量も少なくなる。磁石挿入孔61と永久磁石9の間に充填される樹脂材8の量が少なければ、樹脂材8は磁石挿入孔61と永久磁石9の間で作用するばねのばね定数が小さくなる。ばね定数が小さければ、樹脂材8の充填後に永久磁石9が常温まで冷却されて、永久磁石9のY軸方向の寸法が元(つまり、
図18(d)に示す状態)に戻った時に、磁石挿入孔61に作用する押圧力が小さくなる。
【0063】
このように、磁石挿入孔61に注入される樹脂材8の量を加減すれば、樹脂材8の固化後に磁石挿入孔61に作用する押圧力が加減される。磁石挿入孔61に作用する押圧力が大きくなれば、磁石挿入孔61は大きく拡がり、磁石挿入孔61に作用する押圧力が小さければ、磁石挿入孔61の拡がりは限定される。そして、この現象を利用して、積層鉄心6の形状不良を矯正することができる。つまり、Y軸方向の寸法を大きく拡大したい位置にある磁石挿入孔61に対する樹脂材8の注入量を、他の位置にある磁石挿入孔61に対する樹脂材8の注入量より多くすることによって、積層鉄心6の形状を修正することができる。
【0064】
例えば、第1の実施例においては、第1群に属する磁石挿入孔61は樹脂材8の固化後にY軸方向の寸法が比較的に大きく拡大する。第2群に属する磁石挿入孔61の、樹脂材8の固化後のY軸方向の寸法の拡大量は、第1群に属する磁石挿入孔61に比べて小さい。第2の実施例においても、第1群に属する磁石挿入孔61は、樹脂材8の固化後にY軸方向の寸法が最も大きく拡大する。第2群に属する磁石挿入孔61の、樹脂材8の固化後のY軸方向の寸法の拡大量は、第1群に次いで大きい。第3群に属する磁石挿入孔61の、樹脂材8の固化後のY軸方向の寸法の拡大量は、最も小さい。
【0065】
以上、説明したように、本発明の実施形態によれば、積層鉄心6の内部に永久磁石9を埋め込んで構成される電機子の形状不良を矯正することができる。その結果、該電機子を備える回転電機においてトルク変動等の不具合の発生が抑制され、回転電機の性能が向上する。また、上記実施形態に係る電機子の製造方法は、積層鉄心を構成する鋼板の種類に関係なしに適用できる。
【0066】
しかしながら、本発明の技術的範囲は、上記実施形態によっては限定されない。本発明は特許請求の範囲に記載された技術的思想の限りにおいて、自由に、変形、応用又は改良して実施することができる。
【0067】
例えば、樹脂材8の注入量を変更する単位は、「磁石挿入孔61の群」には限定されない。磁石挿入孔61毎に樹脂材8の注入量を変更するようにしても良い。また、「群」を構成する磁石挿入孔61の個数も任意である。
【0068】
また、上記第1の実施形態においては、「積層鉄心6の素材の圧延方向に対して特定の角度をなす方向」の具体例として、「素板10の圧延方向に平行する方向」と「素板10の圧延方向に直交する方向」を例示した。しかしながら、「特定の角度をなす方向」は「平行する方向」や「直交する方向」には限定されない。「特定の角度」は任意に選択することができる。
【0069】
磁石挿入孔61に注入される樹脂材8の量を調節する具体的な手段は、第3ないし第7の実施形態に示されたものには限定されない。複数個のプランジャー45のそれぞれに専用のアクチュエータ48を備えて、アクチュエータ48の推力や動作ストロークをコンピュータ100で制御して変更するようにしても良い。あるいは、複数個のプランジャー45を複数個の「群」に分割して、各「群」に専用のアクチュエータ48を備えて、アクチュエータ48の推力や動作ストロークをコンピュータ100で制御して変更するようにしても良い。
【0070】
上記実施形態において、樹脂封止装置4に、押さえ板47とアクチュエータ48を1個ずつ備え、樹脂封止装置4が備える全てのプランジャー45が、単一の押さえ板47に取り付けられる例を示したが、本発明の技術的範囲は、このような装置を用いるものには限定されない。樹脂封止装置4は、複数組の押さえ板47とアクチュエータ48を備えていても良い。あるいは、樹脂封止装置4が備える複数個のプランジャー45を複数個の「群」に分割して、各「群」に専用の押さえ板47とアクチュエータ48の組を備えるようにしても良い。
【0071】
上記実施形態においては、上型42を樹脂注入用金型とする例を示したが、本発明の技術的範囲は、上型42を樹脂注入用金型とするものには限定されない。下型41に樹脂溜43等を備えて、下型41が樹脂注入用金型として機能するようにしても良い。つまり、積層鉄心6の下面から、樹脂材8が注入されるようにしても良い。
【0072】
上記各実施形態において例示した上型42、ダミープレート7、プランジャー45の機械的構成や構造は例示である。例えば、上型42が備える樹脂溜43の個数、形状及び配置、ダミープレート7が備える樹脂注入穴71の個数、形状及び配置、プランジャー45の形状は例示である。ばね要素46の形状も例示である。積層鉄心6の機械的構成や構造も例示である。よって、本発明の技術的範囲はこれらによっては限定されない。例えば、ダミープレート7は
図10に示したような、単一の円板には限定されない。ダミープレート7は、1又は複数の隣接する磁石挿入孔61毎に分割されていても良い。複数枚のダミープレート7を上下に積層して、上型42と積層鉄心6の間に挟むようにしても良い。また、第5及び第6の実施形態においては、ばね要素46は任意的な構成要素である。第5及び第6の実施形態においては、ばね要素46を介さないで、プランジャー45を押さえ板47に直接取り付けても良い。
【0073】
第6の実施形態において、プランジャー45の長さを変更することによって、プランジャー45の先端と上型42の間隔を調節する例を示したが、プランジャー45の先端と上型42の間隔の調節は、プランジャー45とばね要素46の間に、別部品を介在させることによって実現されても良い。例えば、プランジャー45とばね要素46の間にアダプターを介在させて、プランジャー45の実質的な長さを延長するようにしても良い。
【0074】
上記実施形態では、「非磁化方向において負の熱膨張率を有する永久磁石」の具体例としてネオジム磁石を例示したが、「非磁化方向において負の熱膨張率を有する永久磁石」はネオジム磁石には限定されない。本発明は、現在において存在する、あるいは将来出現するであろう「非磁化方向において負の熱膨張率を有する永久磁石」を備える電機子の製造に広く適用される。
【0075】
上記実施形態では、電機子の具体例としてIPMモータの回転子を例示したが、本発明が適用される電機子は、IPMモータの回転子には限定されない。本発明が適用される電機子は、固定子であっても良いし、IPMモータ以外のモータが備える回転子又は固定子であっても良い。また、本発明が適用される電機子は、電動機を構成する電機子には限定されない。本発明は発電機を構成する電機子の製造にも適用される。